サロン・セルパンタンの五百日の調教記録──亡国の花と蛇の館 作:ドン・ドナシアン
「ああ、こんなの……こんなのひどい……」
リネアのすすり泣く声が地下室へ響いていた。
両手首は前手錠により革枷で繋がれ、そのまま天井から垂れる鎖へ接続されている。
両腕は頭の上へ引かれたまま固定されており、満足に身動きも取れない。
この姿勢では、脚が開いても、スカートを押さえることすら不可能だった。
さらに左足首にも革枷が嵌められていた。
そこから伸びる鎖は天井の滑車を通り、反対側へ三袋の砂袋が吊り下げられていた。
左脚が、容赦なく上へ引っ張られる。
脚へ力を込め続けているのに、鎖は少しずつ左脚を持ちあげようとしていた。
鎖は絶えず、左脚を上へ引き剥がそうとしていた。
少しでも力を抜けば、その瞬間に脚が大きく持ちあがりそうだ。
リネアは右脚一本で床を踏み締めながら、必死に左脚を下へ引き戻していた。
「んっ……ぐっ……」
内腿が痙攣する。
膝が震える。
もう感覚すら曖昧だった。
スカートの中には、もうなにも穿いていないのだ。
失禁で濡れた下着は、先ほど自分で脱いでいる。
スカートは膝丈だ。脚が大きく開けば、布は捲れあがる。
そうなれば、自分がどんな姿を晒すのかくらい、リネアにもわかっていた。
「ほう、なかなか頑張るじゃないかい。一応は、恋人に操を守ろうとしてるんだろうね」
正面の椅子へ腰掛けたアルジェが、面白そうに口角を吊りあげる。
「まあ、いずれは股を開くことになると思うがな」
横に立つヤンも笑った。
その言葉に、リネアの身体がびくりと震える。
ヤンは先ほど、笑いながら言ったのだ。
脚が上がり、無様に股を晒したら、そのまま犯す、と。
「あっ……ぁ……」
呼吸が浅くなる。
嫌だ──。
そんな姿を見られたくない。
こんなところで、股を開きたくない。
アルト以外の男に、身体を見られたくない──。
「んぐっ……ぅっ……」
リネアは歯を食いしばった。
左脚へ必死に力を込める。
震える内腿を締め、どうにか脚を下へ押し戻そうとする。
だが、限界だった。
ぷるぷると震えていた左脚が、ついに床から浮く。
「あっ……」
爪先だけが、かろうじて床を擦った。
必死に足先を伸ばす。
だが、鎖は容赦なく左脚を引きあげていく。
「あっ、いやっ……いやあっ……」
膝が開く。
スカートが腿を滑り落ちるように捲れていく。
冷たい空気が、剥き出しになった内腿へ触れた。
「ああっ……どうしよう……どうしたらいいの……」
リネアは涙を零しながら首を振った。
左脚はさらに引きあげられていく。
もう止められない。
「助けて……助けて、アルト様……」
ここにはいない恋人の名を、リネアは震える声で呼んだ。
一度開いた脚は、もう戻せなかった。
「ああああっ──」
左脚が、一気に真横まで持ちあがる。
さらに、そのまま頭の近くまで引きあげられた。
反対側の砂袋が床へ落ちきり、どすん、と重い音を立てる。
リネアは片脚立ちのまま、左脚だけを大きく天井へ吊りあげられた格好になっていた。
「あっ……ぁ……」
上げられた側のスカートは、完全に内腿の付け根まで捲れあがっていた。
下腹部へ直接、地下室の冷たい外気が触れる。
「ついに、股を開いたか。ならば、もうこれは不要だな」
ヤンが笑った。
そして、足音が背中側の壁に遠ざかっていく。
棚を漁る音が響いた。木箱を持ちあげる音──。続いて、金属同士が触れ合う乾いた音が地下室へ響く。
「……な、なにを……」
リネアは涙で濡れた顔を向けた。
戻ってきたヤンが木箱を足元へ置く。
その中から取り出されたものを見た瞬間、リネアの顔から血の気が引いた。
裁ち鋏だ──。
「あっ、いやだ──」
リネアは悲鳴をあげた。
ヤンが鋏をスカートの裾へ当てたのだ。
「や、やめてえ──っ」
逃げようとして身体を捩る。
だが、両手を吊られ、片脚立ちのまま大きく股を開かされた格好では、満足に身動きすら取れない。
鋏が布へ食い込んだ。
じゃきじゃきと布が裂けていく音が響く。
「ああっ──」
リネアは絶望の声をあげた。
容赦なくスカートが切り裂かれていく。
腰布は引き剥がされるように切断され、床へ落ちた。それだけじゃなく、ヤンは斬り刻んでとりさった布にも鋏を入れて、細かい布片にしてしまった。
「これで、ここから逃げれねえ。この物騒な場所で下半身丸出しでは歩けねえからな」
ヤンが笑う。
一方で、剥き出しになった下腹部へ、地下室の冷たい外気が直接触れる。それがリネアの羞恥を誘う。
「あっ……ぁ……」
リネアは震えた。
もう隠すものがない。逃げ出すこともできない。
片脚を天井近くまで吊りあげられたまま、股間も尻も完全に晒されていた。
「おう、それにしても、後ろまで丸見えじゃねえか。恥ずかしくねえのかよ」
ヤンがげらげらと笑いながら言う。
「まったくだね。若い娘のくせに、少しでも羞恥があるなら、股を閉じな」
正面の椅子へ腰掛けたまま、アルジェが面白そうに口を開いた。
「ぅっ……ぅうっ……」
リネアは涙を零しながら必死に脚へ力を込める。
だが、左脚はぴくりとも下がらない。
三袋の砂袋が、容赦なく脚を吊りあげ続けている。
どれだけ力を込めても、もう脚は下がらない。
股も、尻も、完全に晒されていた。
しかも、両手を吊られているせいで、隠すことすらできない。
涙が次々に頬を伝い落ちた。
「きっと、俺に犯されたいのさ。まあ、アルトとかいう青二才よりも満足させてやるよ」
ヤンがさらに箱から取り出したのは、柔らかそうな毛の束ねられた絵筆だった。
それを曝け出している股間の亀裂にすっと這わせていく。
「ひいいっ──」
柔らかな毛先が、裂け目をなぞる。
その感触だけで、腰が跳ねた。
「なんてことをするんですか──やめて──やめてください──」
リネアは全身を弓のように逸らせて泣き叫んだ。
「そういえば、お前、生娘かい?」
そのとき、アルジェが訊ねてきた。
「そうだな。それを最初に訊いとくか」
ヤンも絵筆の悪戯を中断して、リネアの顔を覗き込んできた。
「そ、そんなこと……」
さすがに、そんなことに返事はできない。
だが、次の瞬間、凄まじい衝撃が頭に襲いかかった。頭に嵌められている金属環が強い電撃を発したのだとわかった。
見ると、アルジェは、あの操作具をリネアに向けていた。
「いやああ──やめてええ──」
リネアは電撃の苦悶に両手を吊り上げられたままのたうち回る。
やがて、やっと電撃が止まった。
「ぁっ……はっ……はっ……」
痙攣していた身体が、糸の切れた人形のようにぐらりと揺れる。
リネアは両手を吊りあげられたまま、荒い呼吸を繰り返した。
唾液が口の端から糸を引いて垂れ落ちる。
「質問には即答しな、家畜。それとも、また身体で覚えたいかい?」
アルジェの冷たい声が響いた。
「あっ……」
リネアの肩がびくりと震える。
見ると、アルジェは操作具をすっと持ちあげていた。
あの楕円体の魔道具が視界へ入った瞬間、リネアの背筋を恐怖が駆け抜ける。
また来る──。
そう理解しただけで、膝が震えた。
「きっ……生娘です──。まだ、処女です──」
リネアは慌てて叫んだ。
「へえ?……つまり、本当にまだ男を知らねえんだな」
ヤンが口角を吊りあげた。
「なら、よかったじゃないかい。そのヤンが忘れられない初体験にしてくれるよ」
正面の椅子へ腰掛けたまま、アルジェが愉快そうに笑う。
「そういうことだ。任せな、お嬢ちゃん」
ヤンは再び裁ち鋏を取りあげた。
「あっ……いやっ──」
リネアは反射的に身を捩る。
だが、片脚を吊りあげられた格好では逃げようがない。
鋏が今度は上衣へ食い込んだ。
じゃき、じゃき、と布を断ち切る音が響く。
「やめてえっ──」
ブラウスが次々と切り裂かれていく。
裂けた布が胸から滑り落ちる。
さらにヤンは残った布にも容赦なく鋏を入れ、細切れにして床へ撒き散らした。
「ああっ……」
リネアは慟哭した。
ついに、何一つ身につけていない。
股を開かされたまま、全裸で吊られている。
「胸は小振りだけど、いい身体じゃないかい? 本当に生娘かい?」
アルジェが笑った。
「……はい……」
リネアは羞恥に項垂れながら、かすかに頷いた。
アルトとは、そういう雰囲気になりかけたことは何度もある。
だが、真面目な彼は、結婚するまでは駄目だと言って最後の一線を越えようとしなかった。
そんなアルトを、リネアはますます好きになったのだ。
「そりゃあ、そいつも馬鹿なことをしたものだ。こんな可愛い恋人を、先に奪われるとはな」
ヤンが笑った。
「あっ──」
次の瞬間、柔らかな感触が尻の奥をくすぐった。
絵筆だった。
「ひいっ、いやあっ──」
リネアはうなじを大きく仰け反らせた。
柔らかな毛先が、無防備に晒されたそこを撫で回してくる。
骨の奥まで痺れるような奇妙な感覚だった。
逃げたくても逃げられない。
片脚を吊られたままでは、身体を捩ることしかできなかった。
「尻穴をくすぐられると、切ない気持ちになるだろ。そして同時に前を責められれば、もう身体は抵抗できねえ」
ヤンは笑いながら、別の道具を取り出した。
そっちは細い棒だった。
先端だけが丸くなっている。
「あっ……それ、なにを──」
直後、ぶぅん、と低い音が響いた。
「ひっ──」
棒の先端が細かく震えている。
それが、剥き出しになった股間の突起へ押し当てられた。
「ひあああっ──だめええっ──」
リネアは絶叫した。
細かな振動が、敏感な場所を容赦なく震わせる。
しかも後ろでは、絵筆が絶えず柔らかく尻を弄び続けていた。
「ははは、これは効くだろう。フィロスの魔道具は大したもんだ。こんな面白い淫具まである」
ヤンが楽しそうに笑う。
「ひいいっ──あっ、ああっ──」
リネアは全身を震わせた。
細かな振動が、敏感な場所を絶え間なく震わせ続ける。
しかも後ろでは、絵筆が柔らかな毛先で尻をくすぐり続けていた。
逃げられない。
閉じられない。
止められない。
快楽だけが、身体の奥へ強引に流し込まれていく。
「あっ、ぁっ──や、やめっ──」
腰が勝手に震える。
呼吸が乱れる。
脚から力が抜けていく。
身体が熱い。
頭まで痺れていく。
「おやおや、もう限界かい?」
アルジェが椅子へ腰掛けたまま笑った。
「いいかい、家畜。イきそうになったら、ちゃんと口で申告するんだ。勝手に達したら、電撃五十回だからね」
「あっ……」
リネアの身体が強張る。
そんなことまで、自分から言わなければならないのか──。
だが、振動は止まらない。
後ろを撫で回す絵筆も、容赦なく羞恥を煽り続けている。
「あっ、あっ──だ、だめえっ──」
熱が一気に込み上げてきた。
腰の奥が痺れる。
全身が震える。
もう止まらない。
「い、いきそうですっ──ごめんなさいっ──」
リネアは涙を流しながら叫んだ。
その瞬間だった。
ぶつり、と振動が止まる。
「あっ……」
快楽が消えた。
絵筆も離れる。
絶頂寸前まで膨れあがっていた熱だけが、身体の奥へ取り残された。
「あっ……ぁ……なん、で……」
リネアは呆然と喘いだ。
身体が、続きを求めて震えている。
だが、ヤンはげらげらと笑った。
「いきそうになったら言えとは言ったけど、いかせるとは言ってねえんだよ──。さて、続けるぞ──」
ヤンがげらげらと笑った。
「あっ……ぁ……」
リネアは両手を吊られたまま荒い呼吸を繰り返す。
絶頂寸前で止められた熱が、身体の奥へ残り続けていた。
そのときだった。
「じゃあ、あたしも参加しようか」
アルジェが椅子から立ちあがる。
「あっ……」
リネアの身体がびくりと震えた。
ヤンは再び振動する淫具を股間へ押し当てながら、後ろでは絵筆を滑らせていく。
「ひっ──」
リネアの背が跳ねた。
さらにアルジェの手が胸へ伸びる。
指先が乳房を包み込み、揉み上げる。
もう片方の手が、敏感になりきった突起を転がした。
「いやあっ──」
リネアは涙を零しながら首を振る。
だが、刺激は止まらない。
「いきそうになったら、ちゃんと言うんだよ。勝手に達したら、電撃の罰だからね」
アルジェが胸を愛撫しながら耳元で囁く。
「もっとも、いきそうになったら寸止めするけどな──」
ヤンも笑う。
淫具の振動が股間を溶き崩していく。お尻に加わる筆が切ない疼きを生む。それが全身に拡がり、リネアを追い詰める。
「ひいいっ──ぁ、あっ──」
リネアは全身を震わせた。
快楽が次々に押し寄せてくる。
胸も──。
股間も──。
後ろも──。
もう、どこを責められているのかもわからない。
身体が熱い。
息が苦しい。
頭が真っ白になる。
「やっ──だめえっ──」
リネアは必死に首を振る。
だが、快楽は容赦なく膨れあがっていく。
身体がそりかえり、身体が痙攣する。
「ひいいっ、い、いきます──いきそうです──」
リネアは身体をがくがくと痙攣させながら、堪らず叫んだ。
その瞬間だった。
すべての刺激が、一斉に止まる。
「ああっ……」
リネアは呆然となった。
身体だけが、続きを求めて震えている。
だが、熱はどこにも行き場がない。
「ははは、家畜の気分になってきたかい?」
アルジェが嘲笑した。