サロン・セルパンタンの五百日の調教記録──亡国の花と蛇の館 作:ドン・ドナシアン
「ひっ……ぁっ……あっ……」
掠れ切った喘ぎが、地下室へ細く漏れ続けていた。
リネアは、両手を頭上へ吊られたまま、荒い呼吸を繰り返している。
左脚は天井近くまで開かれたまま固定され、剥き出しの股間には汗が糸を引いていた。
どれくらい続いているのか、もうわからなかった。
絶頂寸前まで追い込まれ──。
申告させられ──。
寸前で止められる。
それを、何度も、何度も繰り返されている。
「あっ……ぅっ……」
いまは刺激は止まっている。
なのに、身体の震えだけが止まらない。
股間の奥が熱い。
腰が勝手に痙攣する。
絶頂へ届かなかった熱が、身体の内側へ溜まり続けていた。
「ほら、また身体が震えてるよ。寸止めした後の方が、よっぽどいやらしい身体してるじゃないかい」
アルジェが面白そうに笑った。
「股は正直だぜ。物欲しそうに糸を引いて、ぱくぱくしてるぜ」
ヤンは淫具と絵筆を持ったまま、リネアに自分の口を開いたり閉じたりして見せつける。
「ああ……」
項垂れているリネアの肩がびくりと跳ねる。
止まっているのに……。
もう触れられていないのに……。
身体だけが、まだ続きを欲しがっていた。
そのときだった。
ぶぅん、と低い振動音が地下室へ響く。
「ひいっ──」
リネアの顔から血の気が引いた。
ヤンが、あの振動具を再び手にしていたのだ。
「や、やだっ……またっ……」
「何回目だったっけな?」
「さあね。二十回を超えたところで、もう数えてないよ」
アルジェが肩を竦める。
「いやあっ……もう、お願い……」
リネアは涙を浮かべながら首を振った。
だが、ヤンは笑いながら振動具を股間へ押し当てる。
「ひあああっ──」
細かな振動が、敏感になりきった突起を容赦なく震わせた。
さらに同時に、柔らかな絵筆が尻の割れ目を這いあがる。
「ぁっ、あっ──だめっ──」
リネアの背が大きく反り返った。
身体が、最初から限界に近い。
幾度も寸止めされている身体は、少し刺激されただけで、腰の奥が痺れ始める。
熱が一気に膨れあがる。
「あっ、ぁっ──」
呼吸が壊れる。
腰が勝手に震える。
もう駄目だ。
また、すぐに来る。
「ほら、ちゃんと申告しな」
アルジェが笑った。
「勝手に達したら、電撃だぞ」
ヤンが淫具と筆で刺激を送り込みながら言う。
「あっ、ぅっ……ひっ……」
リネアは涙を零しながら首を振る。
だが、振動は止まらない。
絵筆も、絶えず後ろを撫で回し続ける。
熱い──。
苦しい──。
頭が真っ白になる。
「あっ──いっ……いきますっ──い、いきそうですっ──」
リネアは身体を震わせながら叫んだ。
その瞬間──。
ぶつり、と振動が止まる。
「あっ……」
快楽だけが途切れた。
身体の奥へ膨れあがっていた熱だけが、行き場を失って残される。
「あっ……あぁっ……」
リネアは呆然と喘いだ。
腰だけが、続きを求めるように震えている。
「ははっ、また止められたな」
ヤンがげらげらと笑う。
「あっ……ぅっ……」
リネアは涙を零した。
もう嫌だった。
絶頂寸前まで追い込まれ……。
叫ばされ……。
止められる。
それを延々と繰り返される。
身体の奥が、熱でおかしくなりそうだった。
「ぁっ……も、もうっ……」
掠れた声が漏れる。
「ん?」
アルジェが愉快そうに目を細めた。
「も、もう許してくださいっ……」
涙を零しながら、リネアは懇願した。
「ん? なにを許すんだ?」
ヤンが笑う。
「犯さずに、身体を弄るだけで許してやってるじゃねえか」
「ああ……」
リネアの肩がびくりと震えた。
「それとも、恋人を裏切って犯してもらいたくなったかい?」
アルジェが面白そうに口角を吊りあげる。
「ち、ちがっ……」
反射的に否定しかけた瞬間だった。
ぶぅん、と低い振動音が響く。
「ひああっ──」
股間へ押し当てられた振動具が、敏感になりきった突起を一気に震わせた。
さらに同時に、アルジェの指が乳首を摘み上げる。
もう片方の手が、内腿を撫で上げた。
そして、そのまま湿った舌が脇へ這う。
「ぁっ、あっ──」
リネアの背が大きく反り返る。
もう身体が耐えられない。
幾度も寸止めされた身体は、刺激を受けた瞬間から勝手に快楽へ引きずり込まれていく。
「犯して欲しくなったら、ちゃんと言いな」
ヤンが笑った。
「それまでは、ずっとおあずけだ」
アルジェも乳首を指で転がしながら、リネアを追い詰める。
「やっ……いやっ……」
リネアは涙を零しながら首を振る。
だが、振動は止まらない。
絵筆が尻の割れ目を這う。
アルジェの指先が乳首を転がし続け、さらに舌が脇を舐め回す。
「あっ、ぁっ──ひっ──」
呼吸が壊れる。
もう駄目だ。
熱が一気に膨れあがっていく。
腰の奥が痺れ、身体の芯が勝手に震える。
また来る──。
「ほら、申告しな」
アルジェが嗤った。
「勝手に達したら、電撃だぞ」
「あっ……ぅっ……」
リネアは唇を噛み締めた。
もう嫌だった。
いきそうです、と叫ばされ──寸前で止められる。
それを延々と繰り返される。
身体の奥に溜まり続ける熱で、頭がおかしくなりそうだった。
電撃は怖い。
怖いのに──。
もう、この焦燥感から逃れられるなら、どうでもよかった。
「あっ……ぁっ……」
リネアは必死に口を閉ざした。
言わない──。
もう、言わない。
片脚立ちのまま、全身を突っ張らせる。
快楽は止まらない。
振動が股間を溶かし崩す。
尻を這う筆が、背筋を痺れさせる。
脇を舐める舌が、全身の熱を煽り立てる。
「あっ──ぁっ──」
腰が勝手に跳ねた。
ついに、来る──。
もう止まらない。
リネアは涙を零しながら、必死に声を堪え込んだ。
そして──限界が弾ける。
「あっ──」
絶頂が込みあがりかけた、その瞬間だった。
ばちんっ──。
「ひぎゃああああっ──」
凄まじい電撃が、頭を貫いた。
リネアは絶叫した。
吊られた身体が激しく痙攣する。
片脚立ちだった身体から力が抜け、宙吊りのまま暴れ回る。
「いやあああっ──ああああっ──」
電撃は止まらない。
頭の奥を焼き回されるような衝撃が、何度も脳髄を叩きつける。
視界が白く弾ける。
喉が潰れるほど叫んでも、苦痛は終わらない。
「ぁっ──がっ──ああっ──」
やがて、身体が完全に脱力した。
両手を吊られたまま、ぐったりと宙へぶら下がる。
そこで、ようやく電撃が止まった。
「はっ……ぁっ……はっ……」
リネアは痙攣を繰り返しながら、涎を垂らして喘いだ。
「はははっ。だから、いきそうだと告げろって言っただろう?」
ヤンが愉快そうに笑う。
「お前の頭に嵌まってるのは、ただの電撃具じゃないのさ。絶頂を封じる魔道具だ。絶頂しようとすれば、感知して電撃で潰す仕掛けになってるのさ」
アルジェもまた嘲笑う。
「あっ……」
リネアは眼を見開かせた。
「だから、さっきからずっと寸止めしてやってたんだよ。電撃を食らいたくなけりゃ、絶頂しねえことだな」
ヤンがげらげらと笑い続ける。
「そん……な……」
リネアは唖然となった。
「満足したけりゃ、頭の制御具を外してもらうしかねえって、わかったか?」
「恋人を裏切って、犯して欲しいと言いな。そうすりゃ、外してやるさ」
ヤンとアルジェも愉快そうに口角を吊りあげる。
「い、いやあっ──それだけはいやあっ──」
リネアは泣きじゃくりながら、必死に首を横へ振った。
嫌だった。
そんなことを口にした瞬間、自分が壊れてしまう気がした。
アルトを裏切りたくない。
こんな連中に抱かれたくない。
なのに──。
身体だけは、まだ続きを求めている。
寸止めで残された熱が、腰の奥で疼き続けていた。
「まだ頑張るつもりかい。しぶといねえ」
ヤンが足元の箱へ道具を戻した。
代わりに取り出したのは、小さな硝子瓶だった。
「あっ……な、なにを……?」
訊ねるリネアの声は震えていた。
ヤンは答えず、瓶の蓋を開けた。
甘ったるい匂いが地下室へ広がる。
中に入っていたのは琥珀色の粘液だ。
ヤンは、そのまま指へ粘液をたっぷりと垂らして、剥き出しになった乳房へ塗りつけた。
「ひっ……」
ひやり、とした感触が肌を撫でる。
さらにヤンの指は、開かれた股間へ伸びた。
「あっ、いやっ──」
ぬるりとした指先が、無防備な裂け目をなぞる。
「や、やめてくださいっ──」
リネアは涙声で叫んだ。
だが、ヤンは笑いながら、指で粘液を塗り広げていく。
「処女だって言ったからな。生娘でも痛くねえようにしてやるんだよ。どうせ、そのうち犯して欲しいって言うだろうしな」
「ひっ、ひいっ──そ、そんなこと言いませんっ──」
リネアは必死に叫んだ。
「その調子だよ。しっかり抵抗しておくれ。あの女騎士の妹が、簡単に堕ちたら面白くないしね」
正面で腕を組んだアルジェが嗤う。
ヤンが後ろへ回り込む。
次の瞬間、尻の割れ目へ冷たい感触が走る。
「そ、そこはいやですっ──」
ヤンの指が、粘液を塗り込みながら尻の穴をなぞった。
さらに、ぬるり、と指先が中へ侵入してくる。
「ひああっ──」
リネアは腰を大きく震わせた。
尻の奥を指で掻き回される。
経験したことのない感触に、背筋が痺れた。
「恋人は犯してくれなかったみたいだが、触りっこもしてねえのか? 尻の愛撫も未経験か?」
「あ、当たり前っ──あっ、ああっ──もうやめてえっ──」
リネアは悲鳴をあげながら身体を捩る。
「さて、こんなもんだろ」
ヤンがようやく指を引き抜いた。
「まあね。あの慎み深そうな王太子妃も、この媚薬で堕ちたんだ。この小娘なら十分さ」
アルジェが愉快そうに笑う。
「ああ……」
リネアは息を呑んだ。
王太子妃──。
それは、セリア妃のことなのか。
あの高潔だったセリア妃まで──。
だが、思考はそこまでだった。
「あっ──ぁっ──」
次の瞬間、凄まじい疼きが身体を貫いた。
乳房が熱い──。
股間が疼く──。
尻の奥まで、ずきずきと熱を持って脈打ち始める。
「ひあっ──な、なにこれっ──」
塗り込まれた場所すべてが、狂ったように疼き出した。
熱い──。
疼く──。
身体の奥が、勝手に快楽を求め始めている。
「ああっ──いやっ──ぁっ──」
リネアは理性も忘れ、狂ったように腰を振った。
片脚を吊られたままなのに、腰だけが勝手に快楽を求めて動く。
「おやおや、自分から腰を振り出したよ」
アルジェが笑う。
「じゃあ、寸止め責めの再開といこうか」
アルジェの手が、再び胸へ伸びた。
「自分で申告して寸止めされるか、電撃を浴びて寸止めされるか、好きな方を選びな」
ヤンも、あの振動する棒を股間へ押し当てる。
「ひあああっ──」
リネアは絶叫した。
媚薬を塗られる前とは、まるで違う。
少し触れられただけで、快楽が一気に頭まで突き抜ける。
「あっ、ぁっ──ああっ──」
頭が真っ白になる。
もう、自分がなにを叫んでいるのかすら、わからなかった。