サロン・セルパンタンの五百日の調教記録──亡国の花と蛇の館 作:ドン・ドナシアン
「ああっ──」
リネアは身震いとともにあられもない声をあげた。
繰り返されている寸止め責めによって、リネアの快感はすでに限界近くまで膨れあがっている。
そこへ媚薬まで塗り込まれたことで、感覚は完全に狂わされていた。
「ほら、これが欲しいだろ?」
ヤンの操る振動する魔道淫具が股間を震わせる。
「でも、絶頂はできないよ。電撃地獄だからね」
同時に、アルジェの指が乳首を執拗に摘み転がし、さらに湿った舌が脇を舐めあげ、そのまま脇腹までゆっくりと滑り降りていく。
「だ、だめえっ──いくっ、いきますっ──」
リネアは頭上へ吊られた鎖を必死に握り締めながら絶叫した。
「ふふふ、まだまだだよ。我慢しな。いこうとしたら電撃が走るよ」
アルジェは嗤いながら、さらに舌先で脇腹を舐め回した。
「それが嫌なら、ちゃんと耐えるんだ」
ヤンもまた笑いながら淫具を押し当て続ける。
振動が敏感になり切った突起を震わせるたび、リネアの身体が大きく跳ねた。
「あっ、あっ──ああっ──」
快楽が一気に膨れあがる。
媚薬で熱を持った身体が、勝手に絶頂へ向かってしまう。
怖い──。
また電撃が来る。
そう思っているのに、身体は止まらない。
「いやああっ」
汗みどろになった手が、ぬるぬると鎖を滑る。
片脚を吊られた身体が震え、腰が勝手に前へ突き出される。
「あはぁっ──」
アルジェの舌が脇腹から胸の横へ這いあがった。
その瞬間、ヤンが振動する魔道淫具を陰核へぎゅっと押しつける。
「んぐうううっ──」
リネアは全身を弓なりに反らせた。
視界が白く弾ける。
腰の奥が痙攣する。
絶頂が、勝手に込みあがってくる。
もういきたい──でもいけないのだ──電撃が襲いかかるはず──怖い──嫌だ──。
だけど、止まらない──。
「あっ──ああっ──」
リネアの腰が大きく跳ねる。
身体がついに絶頂へ到達しかけた。
まさに、昇天寸前だった──。
ばちんっ──。
「ひぎゃああああっ──」
凄まじい電撃が頭を貫いた。快感が一瞬にして電撃の激痛に変わる──。
リネアは絶叫した。
吊られた身体が激しく痙攣し、宙吊りのまま暴れ回る。
「あがああああっ──あああっ──」
凄まじい電撃が頭蓋の内側を暴れ回り、リネアは獣のような雄叫びを上げて宙吊りの身体をのた打つ。
身体が激しく痙攣し、片脚立ちだった腰が制御を失って暴れ回る。
「がっ──ぁっ──あああっ──」
歯が勝手に噛み鳴る。
視界が白く明滅する。
絶頂しかけていた快感が、無理矢理引き裂かれていく。
快楽の頂点へ届く寸前で、脳髄へ直接苦痛を叩き込まれたのだ。
頭の奥が焼き回されるようだった。
両手で握っていた鎖が汗で滑る。
全身の筋肉が勝手に引き攣り、腹筋が痙攣し続ける。
「ひ、ぎっ──ぁああっ──」
喉が潰れそうになる。
それでも電撃は止まらない。
そして、ようやく電撃が止まった。
ぐったりと脱力してしまう。
「はははっ。だから、勝手に絶頂しようとするなって言っただろう?」
ヤンが愉快そうに笑う。
「これを繰り返せば、簡単に絶頂できない身体へ仕上がっていくのさ。身体で覚えな」
アルジェもまた嘲笑った。
「まさに家畜だな」
ヤンとアルジェが、苦悶するリネアを見下ろしながら笑う。
「はっ……ぁっ……」
リネアは涎を垂らしながら荒い呼吸を繰り返した。
絶頂できなかった熱だけが、身体の奥へ取り残されている。
それでも、媚薬で膨れあがった疼きは消えない。
快楽を求めれば、また電撃が来る。
なのに身体だけが、続きを欲しがっていた。
「ああ……」
リネアはあまりもの辛さに項垂れる。
「さあ、じゃあもう一回だ。しっかり我慢しな」
アルジェは笑いながら再びリネアの胸へ手を伸ばした。
「寸止めも地獄──達しても地獄──いつまでも続けてやるぜ。お前に逃げ道はねえ」
ヤンが再び淫具を股間へ押し当てる。
ぶぅん、と低い振動音が地下室へ響いた。
「いやあああっ──」
リネアは号泣した。
だが、振動は止まらない。
媚薬で敏感になり切った身体が、ほんのわずかな刺激だけで大きく跳ねる。
陰核へ押し当てられた淫具の震えが、直接脳髄まで突き抜けてくるようだった。
「あっ、ぁっ──ひぅっ──」
リネアの腰が勝手に震える。
片脚を吊られているせいで踏ん張ることもできない。
熱に浮かされたように、腰だけが快楽から逃れようともがき続ける。
「ほら、また腰が逃げてるよ」
アルジェが嗤った。
指先が乳首を摘み、ゆっくりと捏ね回す。
さらに舌が首筋を這い、耳の裏を湿らせながら降りていく。
「やっ──そこっ──ぁあっ──」
リネアは鎖を握り締めたまま身体を捩った。
止まらない。
媚薬で熱を持った身体が、勝手に快楽を欲し始めている。
股間を震わせる振動──。
乳房を弄ぶ指──。
脇腹を這う舌──。
それらが重なるたび、身体の奥に溜まり続けていた熱がさらに膨れあがっていく。
「いっ……いやっ……また、いっちゃ──」
リネアは涙を零しながら首を振った。
「ちゃんと耐えるんだな。勝手に達したら、また電撃だぜ。お前にできるのは我慢することだけだ」
ヤンが愉快そうに笑う。
「ほら、どうする? 寸止めして欲しかったら、ちゃんと申告しな」
アルジェもまた、わざとゆっくり乳首を転がした。
「あっ──あぁっ──」
リネアの呼吸が完全に乱れる。
絶頂できない。
なのに快楽だけは際限なく積み重なっていく。
腰の奥が痺れる。
下腹が熱い。
頭の奥まで痺れて、思考が崩れていく。
「だ、だめっ──もうっ──」
それでも責めは止まらない。
「このまま続ければ、また電撃だよ?」
アルジェは耳元で囁きながら、わざとゆっくり乳首を摘み上げた。
「あっ──ぁっ──」
リネアの身体がびくりと跳ねる。
ヤンの押し当てる振動具も止まらない。
ぶぅん、と低い音を響かせながら、陰核を執拗に震わせ続ける。
「ほら、もう限界が近いんじゃないのか?」
ヤンが嗤った。
「やっ……あっ──いやあっ──」
リネアは涙を零しながら首を振る。
だが、身体は誤魔化せない。
媚薬で熱を持った腰が、小刻みに震え続けている。
あと少し刺激されれば、また絶頂してしまう。
そして、その瞬間に電撃が来るのだ。
恐怖で頭が真っ白になる。
「いくうっ、もういきますうっ」
リネアは叫んだ。
しかし、ふたりは今度も愛撫を緩めてくれない。
「どうするんだい? このままだと、まあ電撃だねえ」
アルジェの舌が耳の裏を這った。
「いやああ──それはいやああ──」
リネアは必死に快感に耐えながら叫んだ。
「だったら、サロンへ連れて行って欲しいって頼むんだ。そこで矯正してくれってね。そしたら、サロンに着くまでは開放される」
アルジェが愛撫をしながら、リネアの耳元でささやいた。
サロン──。それがどういうところなのかはわからない。しかし、この苦しみから逃れるのは、もうそれしかないのだというのはわかる。
「い、いやああっ……」
リネアは必死に拒絶した。
だが、アルジェの指先が乳首を捏ね回すたび、腰が勝手に跳ねる。
振動が陰核を擦るたび、身体の奥が痺れていく。
「あっ──ああっ──」
快楽が止まらない。
寸止めされ続けた熱が、身体の内側で膨れあがり続けている。
「ほら、もうすぐだろ?」
ヤンが愉快そうに笑った。
「また勝手に達したら、頭の中を焼かれるぜ」
「いやあっ──」
リネアは鎖へ縋りつくように身体を震わせた。
「どうするんだい? 答えな。地獄を彷徨い続けるのか……。それとも、サロン行きを選ぶのか……」
アルジェがまたささやく。
「いやあっ──もうっ──」
リネアは涙を撒き散らしながら首を振った。
だが、身体は限界だった。
陰核を震わせる振動が、もう何度目かわからない絶頂寸前へ引きずりあげてくる。
「ほら、もう無理だろ?」
ヤンが嗤う。
「また電撃を浴びるかい?」
アルジェの囁きが耳元へ落ちた。
「いやっ……いやあっ……」
リネアは必死に涙を零しながら叫ぶ。
「だったら、言いな」
「わ、わかりましたっ──あたしをサロンに連れて行ってくださいっ──」
リネアはついに叫んだ。
「ほら、自分からお願いするんだよ……サロンで矯正してくださいってね」
アルジェが畳みかける。
「サ、サロンで矯正してください──お願いします──」
リネアは叫び続けた。
そのあいだも、胸を揉まれ、敏感な股間の上側の突起を振動で刺激されている。
「なら、ご褒美だ……」
ヤンが嗤いながら顔を寄せる。
「……自分から口づけしな。ちゃんと従うって証明するんだ」
ヤンがリネアの顔に顔を寄せてきた。
わけがわからないまま、リネアは首を捻って、自らヤンに唇を押し当てていた。
絡み合って舌を吸いあげる──。
アルト以外の男へ、自分から唇を重ねている──。本来なら、あり得ないことだった。
だが、もうリネアの思考は、快楽と恐怖でぐちゃぐちゃに崩れ始めていた。
「ほら、ちゃんと従えたじゃないかい」
アルジェが嗤った直後だった。
がらがら、と天井の滑車が鳴る。
吊り上げられていたリネアの身体が、ゆっくりと降ろされ始めた。
「あっ……ぁっ……」
リネアは荒い呼吸を繰り返した。
いつの間にか、重りで引きあげられていた左足首の枷も外されている。
だが、もう脚に力は入らなかった。
媚薬で熱を持った身体は、なおも疼き続けている。
絶頂できなかった快楽だけが、身体の奥へ溜まり切っていた。
やがて、両足が床へ触れる。
「ぅっ……」
しかし、立てない。
膝が崩れ落ち、そのままリネアは床へ倒れ込んだ。
両手首には、なお手枷が嵌まったままだ。
荒い呼吸を繰り返しながら、リネアは仰向けに転がった。
その脚のあいだへ、ヤンが立つ。
「さて……我慢できたご褒美をやろうか」
ヤンは嗤いながら自分のズボンに手をかけた。
ずるり、とズボンの腰帯が緩む。
ズボンと下着が少しずつ下げられていく。
「ああ……」
リネアは呆然とそれを見つめた。
ついに犯されるのだ──。
熱に浮かされた頭で、ぼんやりとそう理解する。
もう抵抗する力も残っていない。
その瞬間だった。
「ぎゃあああっ──」
突然、ヤンが絶叫した。
身体を大きく跳ねさせ、その場へ崩れ落ちる。
「っ──」
リネアは眼を見開いた。
ヤンの背後に、険しい表情のアルジェが立っていた。
右手には、白い棒杖状の魔道具が握られている。
先端から、ばちばち、と小さな火花が散っていた。
「な、なにすんだよっ──」
ヤンは尻を押さえながら振り返った。
下半身は半ば露出したままだ。膝まで下がったズボンと下着が引っ掛かった無様な格好だった。
「なにすんだ、じゃないよ──」
アルジェが怒鳴る。
「あたしたちの任務を忘れたのかい?」
「へっ……任務?」
「こいつに自分からサロン行きを願わせる。それがお館様のご命令だったろうが」
アルジェは冷たい目でヤンを睨みつけている。
「お、お館様って……。ちょ、ちょっとくらい味見したっていいだろ。ここまでやって、お預けとかひでえぜ……」
ヤンは不満そうに呻く。
「やかましいっ──」
アルジェが一喝した。
「やかましいって、お前……」
「サロン行きが決まった以上、こいつの生殺与奪は全部お館様のものだ。勝手に手を出すんじゃない──」
「ちぇっ……」
ヤンが舌打ちする。
「犯したきゃ、お館様の許可を取ってからにしな」
アルジェは吐き捨てるように言った。
「あっ……ぁっ……」
リネアは床へ転がったまま、そのやり取りを呆然と見上げていた。
助かったのかどうかも、わからない。
身体はまだ狂いそうなほど疼き続けている。
絶頂できないまま溜まり切った快楽が、逃げ場を失って腹の奥で暴れ回っていた。
熱い──。
苦しい──。
なのに、まだ身体は続きを欲しがっている。
「あぁっ……」
サロンという場所に連れて行かれる……。
そこに行くと、自分で口にしたのだ……。
その事実だけが、ぼんやりと頭の奥へ沈み続けていた。