※この作品はR-18です。

サロン・セルパンタンの五百日の調教記録──亡国の花と蛇の館   作:ドン・ドナシアン

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022 堕ちるということ【第7日】

「うああっ、ああっ、カイネウス様──やめてぇ──」

 

 カイネウスが、糸で引きあげられている陰核へ、掻痒剤の粘液を含ませた絵筆をゆっくりと這わせた。

 

「ほら、あんまり動かない方がいいよ。動けば自分を苦しめるだけだ」

 

 カイネウスが絵筆で股間をくすぐりながら言う。

 口調だけは優しい。しかし、やることは辛辣だ。

 セリアが身を捩ったことで吊られた糸が強く張り、下腹部へ鋭い激痛が突き抜けた。

 

「あがああっ──」

 

 火を押し当てられたような刺激が、痒みに狂い切った股間を貫いてきた。

 

「ひぃっ──あっ、ああっ──」

 

 だが、同時に狂ったように疼いていた痒みが一瞬だけ消える。

 痛みなのに──。苦しいはずなのに──。

 

 その一瞬の痒みからの解放を、身体が快感として受け入れるのがわかる。

 セリアは脂汗に濡れた顔を震わせた。

 もう、自分が苦しんでいるのか、快楽に乱れているのか、それすらわからない。

 名状し難い痺れが股間から背筋を駆けあがり、頭の奥まで白く焼いていく。

 身体の芯が蕩けていくようだった。

 

「そこを吊り上げられるのは、痛いだろう……? だから、この苦しみを受け入れるんだ……。そうすると楽になる」

 

 カイネウスの穏やかな声が落ちた。

 まるで恋人へ囁きかけるような優しい声音だった。

 絵筆が糸で引きあげられている陰核を優しく弄ぶ。

 

「ひいいっ、ひっ、ひいっ──」

 

 セリアは悲鳴を漏らして悶えることしかできない。

 

「セリーが生き延びるには、このサロンで惨めさを受け入れるしかない……。そうしなければ、君は殺されるかもしれない」

 

 カイネウスが絵筆を脇へ置いた気配がした。その代わりに、小瓶へ指先を浸している。粘度の高い液がぬらりと絡みついたのがわずかに視界に入る。

 

「……やっぱり、僕は筆より指の方が好きかな。淫らなセリーをより深く味わえるからね」

 

 カイネウスの指が優しく陰核を揉み始める。

 

「うああっ、ああ──」

 

 セリアは、狂おしさに呻き声を漏らす。

 

「最初より、随分と敏感になったね.心持ち大きくなった。これからの矯正も、痒み責めと併用がいいのかな。もっとセリーを意地悪に責める方法を考えておくね」

 

 カイネウスが指先で陰核への刺激を繰り返す。

 セリアは激しく首を振った。

 

「や、やめ……っ」

 

「可愛いよ、セリー……。君が昂奮しているのを感じるね。じゃあ、ご褒美だ」

 

 カイネウスが指をお尻の穴にも挿入してきた。しかも、粘液の媚薬が指先に塗られていたのがわかる。挿入された場所がいきなりかっと熱くなった。

 

「ひあああっ、もう許して──許してください」

 

 セリアは身体を突っ張らせた。糸が揺り動き激痛が走る。

 

「んぐうっ」

 

「はは、セリーは面白いね。お尻がこんなに敏感なのはサロンの雌奴隷として見込みがある」

 

 カイネウスが指をお尻の中で曲げて、奥を搔くように動かした.

 

「あああっ」

 

 息も止まるような快感の槍が貫き、セリアはがくがくと全身を震わせる。

 

「ひあああっ──もう許して──許してください──」

 

 セリアは身体を突っ張らせた。

 吊られた糸が揺れ、またもや激痛が下腹部を貫く。もうなにがなんだかわからない。

 

「んぐうっ──」

 

 視界が白く弾けた。

 痒い──。

 苦しい──。

 

 なのに。

 次に糸が引かれる瞬間を、身体のどこかが待っていた。

 

 激痛が走れば、一瞬だけ痒みが消える。

 その瞬間だけ、救われる。

 

「いや……いやぁ……」

 

 セリアは涙を零した。

 痛みを望み始めている。

 そんな自分が恐ろしかった。

 

「そんなに乱れるなんて、やっぱり可愛いね……。大丈夫だよ。ちゃんと息をして……」

 

 カイネウスの声が耳元で優しく響く。

 その声音に、セリアは一瞬だけ目を見開いた。

 

 昔──。

 まだ少女だった頃。

 侯爵家の別荘に近い川で溺れて、偶然に助けられた山の猟師小屋で熱を出したセリアへ、あの少年は同じような声で囁いた……。

 

『大丈夫だ。ちゃんと息をしろ』……と。

 

 土の匂い。

 獣毛の敷物。

 火の爆ぜる音。

 熱に浮かされた意識の中、優しく背を撫でてくれた温もりだけは、いまでも忘れられない。

 

「ああっ……」

 

 その面影が、一瞬だけ目の前の男へ重なった。

 だが次の瞬間──。

 吊られた急所へ鋭い刺激が走る。

 

「あがああっ──」

 

 幻想は粉々に砕け散った。

 息も止まるような刺激に、セリアは全身を痙攣させる。

 

「糸吊りにも慣れてきたかな。じゃあ、もう少しだけ頑張ろうか」

 

 すると、カイネウスの手が、張り詰めた糸へ触れた。

 

「あ……っ、や、やめ──」

 

 ぐい、と──さらに引かれる。

 

「あがああっ──」

 

 骨まで砕けたかと思うほどの衝撃だった。

 激痛と快感が一気に頭の芯まで突き抜ける。

 

「いぎやああっ──お許しを──お許しをおおっ──」

 

 セリアは絶叫した。

 

「駄目だよ、セリー。これは、素直になれない君への罰なんだ」

 

 カイネウスは優しく言った。

 

「ひぎいいいっ」

 

「ごめんね。もう少しだけ頑張ろう」

 

 さらに糸が引かれる。

 

「ひがあああっ──」

 

 セリアは宙吊りにされた脚を激しく震わせた。

 だが動くたびに、吊りあげられた急所へ痛みが返ってくる。

 

「素直になります──っ、素直になりますからあっ──」

 

 涙と涎を零しながら、セリアは懸命に叫んだ。

 

「お願い──もう、楽にしてください──.犯して──わたくしを犯して──」

 

 違う──。

 本当は、そんなことを言いたいわけではない。

 

 犯してほしいなどと。

 楽にしてほしいなどと。

 自分から求めるなど、あってはならない。

 王太子妃としての矜持が、まだ胸の奥で悲鳴をあげていた。

 

 だが、もう耐えられない。

 痒い。

 苦しい。

 痛い。

 この責めから逃れられるなら、もうなんでもよかった。

 

「ああっ……ぅ、ぅうっ……」

 

 涙がぼろぼろと零れ落ちる。

 セリアは、自分が壊されていくのを感じていた。

 

「うん、いい子だ。少しだけ素直になれたね……。だったら、この罰にも意味がある」

 

 カイネウスが微笑む。

 そして、限界まで引かれた糸が固定された。

 セリアは荒い呼吸を繰り返した。

 喉が潰れ、肺が焼けるように熱い。

 全身が痙攣し続けている。

 

 もうこれ以上はない──。

 そう思った瞬間だった。

 カイネウスの指先が、張り切った糸を軽く弾いた。

 

「あぎいいいいっ──」

 

 声にならない絶叫が迸った。

 視界が真っ白に染まる。

 背筋が跳ねあがり、全身が硬直した。

 

「セリー、もっと苦しんで……。そして、その苦しみを快感に変えるんだ……。それが堕ちるということだ」

 

 カイネウスが乱暴に糸を繰り返し弾く。

 

「んぎいいっ」

 

 セリアは悶絶した。

 そして、次の瞬間、セリアの意識は一気に暗闇へ沈んでいった。

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