サロン・セルパンタンの五百日の調教記録──亡国の花と蛇の館 作:ドン・ドナシアン
「いやあああっ──やめてください──やめて──いやああああっ」
ケイの叫びが響く。
女兵たちの手が、同時に動く。
両肩を押さえ込まれ、背を引かれ、布に手が入る。
引き裂く方向へ力がかかる。
縫い目が耐えきれず、乾いた音を立てて弾けた。
ケイが身につけていた布が裂ける。
胸元が露出する。
さらに別の手が裾に入り、横へ引く。
抵抗が消えたところで、再び裂ける。
「いやあああっ──見ないで──やめてください──お願い──いやああああっ」
ケイの身体が前後から固定される。
必死に抵抗しているが、ケイは動けない。
なにもかも順に剥がされていく。
ついに、布片一枚残らずに引き剥がされた。
彼女の肌が完全に晒される。
「ああ、やめてください──ケイに手を出さないでください──彼女には罪がありません──」
そのあいだも、セリアは必死に声を張り上げ続けていた。
だが、左右に残った女兵に肩を押さえられ、踏み出すことができない。
力をかけても、位置は変わらない。
すると、女兵がひとり、ケイの背に回るとともに、手錠が外される。
ケイの裸身に、すぐに縄が回された。
両腕が後ろへ回されて、水平に束ねさせられた両腕に縄がかけられる。
結び目が締まる。
さらに縄が胴へ回され、両腕が完全に胴体に固定される。
ケイの小さな乳房の上下にはしっかりと縄が喰い込んでいた。
「いやああああっ──離して──離してええっ──やめて──助けてください──いやああああっ」
ケイの膝が崩れて、地面に落ちた。
身体が震え続ける。
「地下の男囚牢に放り込んでこい」
アルジェの声が落ちる。
女兵ふたりがケイの腕を掴み、強引にその場に立ちあがらされた。
「やめてください──彼女はただの下働きです──恨みなら、わたくしにしなさい──」
セリアは絶叫した。
そのとき、言葉の終わりを待たず、アルジェの口元が歪むのが見えた。
彼女の手が上がる。
引かれかけていたケイの身体が止まる。
「そうかい。なら、責任を取ってもらおうか。その一枚は、自分で脱ぐんだ」
アルジェの酷薄な声が響いた。
周囲の視線がセリアに集まるのがわかった。
腰に残された最後の布へ──。
周囲の空気が変わる。
視線が増えている。
女兵だけではない。
外縁に、男の視線が混ざっている。
距離は保たれている。
だが数が違う。
すべてが、こちらに向いている。
「……約束は守りなさい……」
セリアは短く言う。
手を下ろす。
残っていた布を掴む。
抵抗は成立しない。
引く。
布を足首から抜き、地面に置く。
完全に露出した。
「処女じゃあるまいし、小娘みたいに震えるんじゃないよ。お前たちは、もっと酷いことをしてきたんだ」
アルジェが嘲笑した。
低いざわめきが広がる。
視線が刺さる。
耐えられずに、セリアは両腕で胸を押さえ、身体を折った。
しゃがみ込んで片脚を引き、下を隠す。
両手は乳房を固く隠している。
「妃殿下が身につけていたものをまとめろ。指輪と髪留めもだ」
アルジェが言った。
手際よく、周りから破れた布が回収されていく。
さっき奪われた王家の証の指輪や髪飾りとともに、集められたものが大きな布に包まれた。
「お館様のところに、先に持っていけ」
アルジェの指示に、ひとりの女兵が包みを抱き抱えて、輪の外に駆けていった。
一方で、ケイは背後で小さく泣いている。
声はもう細い。
アルジェが目の前に立つ。
同時に、数名の女兵が再びセリアを囲んだ。
はっとした。
背後のひとりが縄束を持っていたのだ。
「さあ、両手を後ろに回しな」
アルジェの低い声が落ちる。
セリアは顔をあげて、アルジェを睨んだ。
「なぜ、まだ縛るのですか──。必要ないではありませんか。こんな姿では逃げられはしません」
しゃがみ込んで身体を縮めたまま声をあげた。
片膝をついて股間を隠し、両腕は胸をしっかりと押さえている。
「身体を隠そうとする、その手が邪魔だからさ」
アルジェが言う。
「あ、当たり前じゃありませんか」
「だが、一糸もまとわせずに、恥を晒させながら、連れて来いという命令だ」
視線が落ちる。
押さえている腕へ。
「命令って……。誰のですか?」
「お館様だ」
アルジェは即答だった。
「お館様とは?」
「このサロンの主人だよ。すぐお会いすることになる」
間を置かず、言葉が続く。
「まさか……この格好で、しかも縛って、そこまで連行しようというのですが?」
屈辱に身体が震えた。
何者かはわからないが、あの不気味な館の中でセリアを待っているのだろう。そこまで素っ裸で……。
「そう言ったよ……。それとも、従わないかい?」
視線がセリア背後に流れる。
後ろのケイの泣き声が大きくなった。
「卑怯です……」
セリアは歯ぎしりする。
「……お前たちよりもましだ」
アルジェが冷たく言った。
「……言っておくけど、特別扱いを受けているのは、あなただけだ」
さらに、アルジェが返す。
「わたくしだけ……」
セリアは眼を細めた。
「そうだ。だから、男どもは、あんたには手を出さない。だが……」
言葉が切れる。
「ケイは別だ」
静かに落とす。
背後の泣き声がわっと大きくなる。
セリアは一度眼を閉じた。
一瞬だけ呼吸を止める。
「……ケイには、もう手を出さないでください」
言い切る。
両腕を胸から外して、背中に回す。
すぐに、後ろの女兵に両手首を掴まれた。
背中の中央で引き寄せられ、左右の手首が交差させられた。
縄がかかって手首に巻かれる。
固く締まる。
さらに巻かれて、固定される。
縄が下へ回り、さらに腰をなぞり前へ抜ける。
そのまま引き上げられる。
乳房の下にかかる。
強く締められる。
息が止まる。
さらに上へ。乳房の上に回る。
引かれる。押し上げられる。
胸の形が変わる。
縄が背へ戻る。
結びが固められる。
全体が固定された。
もう、一切、両腕を動かせない。
腕も、胸も、逃げ場がない。
「立たせろ」
身体が引きあげられた。
もう羞恥の部分を隠す自由もない。
周りの男兵たちから歓声のような声が一斉にあがった。
「さすがは王族だねえ。いい身体だ」
後ろで縄尻を取られているセリアをアルジェが舐めるように見た。
セリアは、羞恥に火照る顔を横に捻り、息詰まるような屈辱に耐えた。
「さて、妃殿下には、特別な牽引具を準備したよ」
すると、アルジェが手を後ろに伸ばした。
女兵が一本の紐をその手に置く。
アルジェがその片側の端末を持って、いきなりセリアの鼻先に近付けてきた。
セリア眼をを見張った。
紐の先端についていたのは、糸のように細い本の小さな輪っかだった。だが、魔道具だ──。
セリアにはそれがわかった。
しかし、なんの魔道具なのかまでは想像できない。
「なんだかわからないだろうね。お館様があんたのために準備したものだ」
アルジェがその場に身を屈ませた。
そして、その輪をセリアの股間に押しつけてきた。
「あっ、なにをするのです──」
セリアは声をあげた。
さっきの輪っかがセリアの股間にあるもっとも敏感な突起に吸いつくように密着してきたのだ。
しかも、ぎゅっと陰核の根元に喰い込んでくる。
「ああ、やめなさい──。そ、それを外しなさい──」
セリアは狼狽して叫んだ。
しかし、そのときにはもう完全に、あの小さな輪に急所を締めあげられてしまった。
「ああっ」
セリアは火傷をしたかのような感覚に襲われ、昂ぶった声をあげた。両側を掴んでいた女兵が手を離す。
「嫌です──これはいやあ──」
セリアは輪から逃れようと、必死に身を揉み、狂気するように腰を揺さぶった。
すると、すでに立ちあがっているアルジェがぐいと、輪に近い紐を握って上に持ちあげた。
「ひぎいいいっ」
激痛にセリアは悲鳴をあげた。
「さて、折角の牽引環だ。ご披露代わりに、ここで”フィロス共和国万歳”を叫んでもらおうか」
アルジェが思い切り、紐を上に引っ張りあげる。
針で刺されたかのような痛みが股間に走る。
「あぎゃああっ、やめえええ──」
セリアは後ろ手に拘束された身体を懸命に爪先立ちにさせた。
だが、容赦のないアルジェは紐もさらに上に吊り上げる。
「フィロス共和国、万歳だ──。聞こえないのかい──」
アルジェが紐をあげながら、耳元で怒鳴る。
「ひぎいいっ、フィ、フィロス共和国──ば、ばんざいっ」
「声が小さい──」
股間が吊り上げられる。
「んぎいいっ──ば、ばんざいいいっ──フィロス共和国──ばんざいいいいっ」
「もっと大きな声だよ」
「フィロス共和国──ばんざいいっ──。ひぎいいいっ」
セリアは絶叫しながら泣き叫んだ。
その声に、フィロス兵たちの嘲笑が重なっていった。