サロン・セルパンタンの五百日の調教記録──亡国の花と蛇の館 作:ドン・ドナシアン
「ああ、どうしたの、レイシア?」
目の前のセリアが驚いたように声をあげる。
だが、すぐにはっとしたように、眼を大きく開いた。
「だ、大丈夫……です……」
レイシアは歯を喰いしばりながら、気力を振り絞ってセリアに笑みを向ける。
だが、女兵たちに愛撫を受けたり、セリアにディルドを舐められて刺激を受けているあいだは、多少は気が紛れていられたのだが、それがなくなってしまうと、もうだめだった。
とてもじゃないが、じっとなどしていられない。
心では平静を装おうとするのだが、腰だけは無意識のうちにうねり、小刻みに震え始める。
「ああ……さっきの……薬ね……。カイネウス様……。どうか、なんとかして……あげてください……」
セリアがカイネウスの顔を見た。
レイシアは、慌てて首を横に振る。
「セ、セリア様──こんな男に、なにも頼んでは駄目だ──」
思わず叫ぶ。
この卑劣漢は、相手の弱みにつけ込むことしかできない男だ。だからこそ、セリア様を頼らせてはならない。
いや、弱みにつけ込むのではない。意図的に弱みを作りあげ、抉り、選択のしようのない状況に追い込んでおいて、さらに選択を迫るのである。
卑怯な男だ。
だが、もしかしたら、セリアはそのカイネウスへの抵抗が薄れているのかもしれない。
特段、セリアがなにかを語るわけではないが、これほどの酷い仕打ちを受けながらも、セリアの眼にカイネウスを拒絶する色が弱い気がするのだ。
レイシアは、それに危機感を覚える。
「あら、だったら、そのまま腰振り踊りをしてる?」
「お姫様みたいに、このまま鍵付きの革帯で封印してしまってもいいのよ」
すると、周りの女兵たちが揶揄いの言葉を向けてきた。
はっとなる。
レイシアのことよりも、こいつらは、セリアにそんなことまでしたのかと驚いた。
いまは、もう媚薬を塗られたお尻の奥は、気が狂わんばかりのむず痒さになっていた。
お尻の入口が燃えだして、そこに無数の見えない虫が這い回っているような感覚だ。
「お、お前たち……は、セリア様をそんな目に合わせたのか」
レイシアは跪いた姿勢のまま、髪を振り乱すように、顔を左右に振る。
目の前でセリアが見ているのはわかっているのだが、そうでもしなければ、もう掻痒感に耐えられないのだ。
「そうよ。それでこのお姫様も従順になったのよ。じゃあ、革帯を持ってきましょうか。股を封印しても、可能な矯正はたくさんあるから、心配しないでね」
女兵たちが笑い、本当にそれを取りに向かうような素振りをした。
レイシアは、さすがに愕然となりかける。
「だ、だめです──。レイシアを助けてあげてください──。あ、あれは……苦しい。死ぬほどに……」
セリアがもつれそうな舌遣いで叫ぶ。
「そうか。だったら、君がなんとかするかい、セリア?」
カイネウスが声を掛けた。
「えっ?」
セリアが顔を横に向けて、カイネウスを凝視した。
「君がなんとかするんだ。そうでなければ、レイシアのアナルに油剤を塗り足してから、今日は封印する。どっちでもいいよ」
カイネウスが女兵たちに合図をした。
女兵のひとりが壁の棚に走るのがわかった。
このまま封印される? まさかとは思ったが、セリアにまでそうしたとなれば、躊躇なくそうするだろう。
さすがに、ぞっとした。
「レイシアを──? そんなことはできません──」
一方で、セリアは声を引きつらせている。
すると、カイネウスが微笑みを浮かべた。
「そうか。確かに、いくら信頼する臣下であっても、汚い尻の穴など舐められないよね。悪かった。じゃあ、レイシアの尻は封印しよう……。君たち、さらに掻痒剤を塗り足してあげて……。いや、後ろだけじゃなく、前にもね」
女兵たちがわっと声をあげてレイシアに群がる。
「や、やめえくれ──」
レイシアは悲鳴をあげた。
もう掻痒感は限界に達していた。
女兵たちが群がる。
レイシアは膝立ちの脚を閉じて、股間を守ろうとしたが、女兵たちは革帯とともに持ってきたらしい棒付きの膝枷を持ち出してきた。
脚を強引に開かせ、肩幅ほどの金属棒の両隊にある膝枷を嵌める。
レイシアは、膝のあいだに金属棒を挟まれて、脚を閉じられなくされてしまった。
「ああ、やめて──。いくらでもします。レイシアの痒みをわたしに取らせてください」
セリアは慌てたように声をあげた。
鼻輪に繋がっている鎖は、いまはカイネウスは握ってない。セリアは左右の手首をそれぞれの足首に繋がれた不自由な格好のまま動いて、レイシアの後ろに回ってくる。
レイシアは、懸命に首を横に振る。
「セリア様──そんなことはしなくてもいいです──。セリア様が受けた苦しみなら、わたしも耐えます──問題ありません」
「いえ、わたしに……わたしにさせて。痒みをとります。さあ、遠慮しないで」
セリアの行動を邪魔する者はいない。
女兵たちも、レイシアの周りからすっと離れる。
レイシアは唇を噛んだ。
セリアに、ここまでさせてしまう──。
抗わなければと思う。
だが、その言葉は続かない。
お尻の奥は狂いそうなほど痒い。
いまはもう、誇りや羞恥、セリアへの申し訳なさよりも、その苦しさの方が勝っている。
膝立ちのレイシアのお尻に顔を埋めるように押しつけてきたセリアの舌先がすすっと、レイシアのお尻の穴をなぞりあげてきた。
「ひいっ、ああっ」
レイシアは喉を押しあげるように身体を伸ばしながら、声をあげた。
これまでの焦燥と掻痒感が小さくなる──。
その凄まじいまでの快感に、とてもじゃないが反応を隠すことはできなかった。
「レ、レイシア──も、もっとお尻をこっちに突き出して──。届かない──」
セリアが焦ったように声をあげる。
「あ、ああ、申し訳ありません──」
レイシアは自己嫌悪に陥りながらも、セリアの顔に向かってお尻を押しつける。
一度味わってしまうと、もう耐えるのは不可能だった。
それだけじゃなく、セリアの鼻に嵌まっている鼻輪の固い金属の感触が気持ちよくして、反射的にそこにお尻の穴を向けてしまう。
「んんっ、んあっ……だ、大丈夫よ……。もっとくっつけて──。遠慮しないで──」
セリアはレイシアに声を掛けてくると、またレイシアのお尻に顔を押しつけて舌先を激しく動かしてくれる。
もう駄目だ──。
レイシアは痒みが癒えていく感覚の拡がりに、恍惚となりかけた。
もはや、その救いを拒むことは不可能だった。
「あっ、ああっ、セ、セリア様──その鼻輪が気持ちいい──もっと擦って──」
自分がなにを喋っているのかも自覚できない。
レイシアは、本能のまま声をあげて、セリアにお尻をさらに押しつける。
すると、セリアが鼻輪を強く押しつけて、激しく擦ってくれる。さらに舌でこじ開けるようにお尻の穴に挿入してくると、舌全体を使って忙しく、穴の中を動き回らせてきた。
塗られた媚薬を舐めとろうとしているかのようだった。
「あっ、あああっ、あああ──」
もう我慢できなかった。
セリアがレイシアごときのために、そこまでしてくれる──。
快感よりも、その事実がレイシアを燃えあがらせた。
「あ、ああ、セリアさまあ──」
レイシアは感極まって、膝立ちの裸身をのけ反らせた。
「は、はいっ、あっ、あ、ああ──」
背後のセリアが苦しげな息遣いで喘いでいるのがわかった。
首を捻って後ろを見る。
いつの間にか、カイネウスがセリアの背後から、お尻に顔を密着させて舌を動かしている。
レイシアが味わっている排泄の場所で受ける快感を、セリアもまた味わっているのだと知った。
それを認識したとき、それまでつもりに積もっていた情欲の熾火が一気に火を拭いた。
「お、おおおっ──セリア様ああ──」
喉の奥から深い喜びの悲鳴が迸った。
アナルの中では、いまだにセリアの舌が暴れてくれている。全身が溶け出すかのような気持ちよかった。
貫いた快感の貫きを、レイシアは躊躇することなく受け入れた。
「いくううっ──」
レイシアは、セリアの舌の快感に、ついに身体を弓なりにして快感を飛翔させた。
後ろでは、そのセリアもまた、カイネウスの愛撫に抗することはできずに、快楽を極めさせていた。
セリアの舌が離れる。
まだ、お尻のむず痒さは残っていた。
だが、かなりましだ。
レイシアは、後手縛りに繋がっている鎖に、上体を委ねるように倒しながら、肩で荒い息をする。
すると、セリアの悲鳴が突然に響き渡った。
「あっ、セリア様に、なにをしている──」
声をあげた。
いつの間にか、セリアに女兵たちが群がり、さっきレイシアのお尻に塗られたのと同じ掻痒剤を、今度はセリアの股間に塗っていたのだ。
悲鳴をあげたのは、それに対するセリアの抵抗だ。
「大丈夫だよ、セリア……。さっきは君がレイシアを助けた。今度はレイシアが君を助けるはずだ。それだけの話さ」
セリアは肩を押され、その場で仰向けに倒された。
両手首と両足首はそれぞれ左右で繋がれたままであるため、姿勢を整えることもできない。膝を曲げた状態で脚が開き、無防備な格好になった。
「あっ、いやです──」
思わぬ姿勢にさせられ、セリアは狼狽して身をよじった。
だが、不自由な拘束のため、身体を丸めることも、脚を閉じることもできない。
「安心するといい。少なくとも、君を見捨てる騎士ではないはずだ」
カイネウスはセリアの鼻輪に繋がる鎖を手に取った。
そのまま天井から垂れている鎖へと繋ぎ直す。
金属音が響き、鎖が張った。
「ああっ──」
セリアの顔がわずかに上へ引かれる。
床に仰向けになったまま、首だけが固定されたような格好になる。
「ああ、なんてことを……。まだ、セリア様を苦しめるのか──」
レイシアは声をあげた。
だが、セリアは少し離れた場所に転がされてしまったので、もうレイシアにはなにもできない。
また、セリアはしばらくは落ち着かない様子で身を捩っていたが、やがて表情が変わり始める。
眉が寄る。
呼吸が浅くなる。
最初は小さな違和感だったものが、次第に無視できないものへと変わっていく。
「ああ。痒い──」
セリアが唇を噛み、身体を震わせた。
そして堪えきれなくなったように、再び身をよじり始めた。
「ああ、セリア様──」
レイシアは、取り乱し始めたセリアの姿に、思わず鎖を鳴らした。