サロン・セルパンタンの五百日の調教記録──亡国の花と蛇の館 作:ドン・ドナシアン
「ああ、痒い……ああ、き、気が狂ってしまいます、カイネウス様──」
レイシアの眼の前のセリアは悲鳴に似た声を張り上げている。
セリアは両手首と両足首はそれぞれ革枷で繋がれた状態で石床に仰向けに倒されており、身体を起こすこともできない。彼女が暴れるたびに枷が軋んで、金具が床を打つ音が部屋に響く。
また、鼻環から伸びる鎖が天井へと繋がっている。顔を背けようとしても、そのたびに鎖が張り、動きは無理やり押さえ込まれる仕掛けである。
長い金髪は乱れ、額や頬には汗が張り付いている。
呼吸は荒く、胸は大きく上下していた。
全身が汗に濡れていた。
身を捩り、必死に拘束から逃れようとするものの、それは叶わない。
「君を助けてくれるのは、いまはレイシアだよ」
カイネウスはそう言うと、部屋の中央に置かれた椅子へ戻っていった。
脚を組み、背もたれにゆったりと身体を預ける。
ただ眼の前で苦しむセリアと、それを見つめるレイシアを眺めている。
まるで裁きを待つ被告でも見守るかのような落ち着きだった。
「うう、くっ、く……」
セリアは首をわずかに曲げて悲痛な表情でレイシアを見てきた。
涙に濡れた瞳がレイシアを見つめる。
セリアは唇を噛んでいる。
なおも耐えようとしているのがわかった。
だが、その震えは次第に大きくなり、やがて諦めたように力が抜けた。
「……ああ、レイシア……」
その表情と声に接した瞬間、レイシアにもセリアの心がわかった。
セリアは理解している。自分がなにを求めているのかも、それによってレイシアになにをさせることになるのかも……。
申し訳なさと恥辱──。
しかし、もはやひとりでは耐えられないという諦め。
様々な感情が入り混じった顔だ。
「レ、レイシア……申し訳ありません……。でも、慈悲を……。お願い。この痒みを……なんとかして。お願いです……」
セリアがぼろぼろと涙をこぼしながら言った。
「ああ、お願いだなんて言わないでください──」
レイシアの胸が痛んだ。
主人であるセリアが、自分に懇願をしている──。
そんなことはさせてはならない。
もう迷う理由など残っていない。
守る決意も、堕ちる覚悟も、もうとっくに決まっている。
「……もういいかな」
レイシアの叫びを聞くと、カイネウスは小さく頷いた。
まるで、その言葉を待っていたかのようだった。
「レイシアの鎖と、膝の棒枷を外してあげて」
静かな命令が飛ぶ。
女兵たちが一斉に動き始めた。後手縛りの縄に繋がっている天井からの鎖と、膝と膝のあいだの棒枷が外される。
レイシアは膝立ちの姿勢から、疲労で脱力している脚に懸命に力を注いで立ちあがる。
股間には、魔道紋の刻まれている双ディルドが挿入されている。外側部分の刺激を内側に伝えるとともに、レイシアの身体や心の動きに伴って変化をする。その外側部分は、これまででもっとも強く高くそそり勃っていた。
レイシアは、よろけながら歩み進んで、セリアの脚のあいだに跪く。
「ああ、セリア様……。どうか……どうか、わたしと一緒に恥にまみれて……。わたしと一緒に堕ちてください──」
「レイシア、ひと思いに──」
セリアの腰は淫らに左右に打ち震えていた。
性器は度重なる淫らな責めと媚薬によって真っ赤に腫れ、しとどに蜜を垂れ流している。激しく収縮し、強い疼きと痒みで苦しんでいるのがわかる。
これが、敬愛し、尊敬をしている王太子妃セリアのもっとも恥ずかしく、秘められた場所……。そう思うと、レイシアの心臓は痛いほどに高鳴った。
レイシアは腰を突き出し、双頭ディルドの先端をセリアの妃部に擦るように突いた。
「ひあっ」
「あああ──レイシア、もっと──もっとです──」
感覚を内側部分にも伝える淫具の効果により、ディルドで突いた刺激がレイシアの子宮近くを抉るように響かせた。一方でセリアは、さらに強い刺激を求めて身を揺さぶる。
もう狂乱していて、我を忘れている感じだ。
「ああ、セリア様──レイシアは……」
「なにも言わないで──、もう……わたしと……一緒に堕ちて──」
レイシアは息を呑んだ。
その言葉は、まるで赦しのように聞こえた。
守れなかった騎士──。
王都を失った敗残兵──。
主人を救えなかった護衛隊長──。
そんな自分を、セリアはなお傍らに置いてくれる。
共に堕ちるという言葉が、なぜか嬉しかった。
「……はい……」
レイシアはついに腰を押し出して、覆い被さるようにセリアの腰と自分の腰を重ね合わせていく。下腹部と下腹部が接し、乳房と乳房が上下で強く触れ合う。
最初はうまく挿入箇所がわからなかったが、やがて先端がわずかに挿入されたことで場所がわかる。
レイシアは、一気に奥まで貫かせた。
「ああっ」
「ひああっ」
セリアとレイシアは一緒に昂ぶった声をあげてしまった。
ついに、セリアを犯したのだ──。
羞恥と狼狽──そして、感慨がレイシアを包む。
もう以前の主従には戻れない。
それでも、この人を救えるのなら──。
レイシアは静かに目を閉じた。
「ああ、感じます……あなたを……。これ、これはなに? ああ、これは──」
「わ、わたしも、セリア様を感じます──」
繋がった瞬間に、不思議な感覚がレイシアを襲った。セリアもなのだろう。
セリアの受けている感覚がディルドを通じて、レイシアに伝わる。おそらく、レイシアのものもセリアに伝わっているのだろうと思う。ディルドを挟んで、ふたりに感覚が溶け合って混ざり合う感覚が襲いかかり、それだけでレイシアは全身が溶けてしまいそうになった。
じっとしていても、頭が痺れるような快感が伝わる。
「レ、レイシア──舌を──舌を吸って──。さ、さっき、気持ちよかったの──」
セリアが感極まったように言う。
自分だけでない、セリアもこの行為に酔ってくれている。
そう思うと、レイシアは感動のようなものが込みあがり、身体を折ると、セリアの唇に自分に唇を重ね合わせた。
しばらく、唇を重ね、舌を絡め合う。
そのあいだ、最初は遠慮がちだったセリアの動きが次第に淫らなものになっていく。乳房を強くこすり、繋がっているディルドをセリアから動かしてくる。
「あっ、セ、セリア様──そんなにされたら……」
「ご、ごめんなさい……だって、我慢できなくて……」
ディルドの刺激により、疼くような快美感がレイシアに襲いかかる。耐えきれず、レイシアからも腰をうねるように動かす。
「そのディルドは、快楽が溶け合うように作られている。相手の昂奮を感じるはずだよ。声を掛け合って一緒にいくんだ。できなければ、できるまで繰り返させるからね」
カイネウスが声を掛けた。
一緒に……。
その言葉がレイシアに刻まれる。
「レイシア、もうだめです──、い、いってしまいます」
そのときセリアが昂ぶった声をあげた。
「わ、わたしも──いきます──」
レイシアも声をあげた。
そして、お互いに腰を揺さぶりながら、ついに快感の極みに達していく。
セリアもまた、同じ絶頂へ達しようとしている。
ともに快感の絶頂に達し、身体の震えを肌と肌で伝え合いながら、汗みどろの裸身をのけ反らせ合った。
「……ああ……レイシア……」
「セリア様……」
しばらくのあいだ、身体を密着したままじっとしていた。
そのあいだも、ディルドは繋がっているので、激しかったセリアの股間の収縮がだんだんと弱くなっていくのが伝わる。それに伴って、肩でしていたセリアの呼吸が次第に整っていく。
レイシアは、愛おしく身体の下のセリアを見る。
陵辱され、恥辱にまみれさせられ、尊厳という尊厳を踏みつけられながらも、やはり、セリアは気高く美しい……。
それに変わりはない。
「よくやった。拘束を解いて、夕方までは休ませてあげるよ。そのあいだに食事をして、身体を洗い、寝るといい。でも、夜にはまた相対責めの訓練だからね。サロンの客をもてなす余興のために、しっかりと愛し合える仲になってもらうよ」
カイネウスの声が部屋に響いた。