※この作品はR-18です。

サロン・セルパンタンの五百日の調教記録──亡国の花と蛇の館   作:ドン・ドナシアン

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052 特別矯正室【第27日】

「こっちでさあ、大将」

 

 ダンは、広間の右手へ向かって歩き始めた。

 カイネウスたちも、その後に続く。

 そのとき、背後で四人の令嬢の悲鳴が重なった。

 

「あああっ」

「あぎいい」

「ひぎい──」

「んぐううっ」

 

「姿勢を崩すなと言っただろう──。腋の下をくすぐられたくらいで派手に動くんじゃねえ」

 

 男兵のげらげらという笑い声が響く。

 

「さっさと姿勢を戻せ。訓練は終わってねえぞ」

 

 ほかの男兵たちの罵声も飛んだ。

 

「ご、ごめんなさい……。皆様、ごめんなさい……。わたくしのせいで……」

 

 粗相をしたらしい令嬢が、泣きながら仲間たちへ謝っていた。

 カイネウスは振り返らず、その声を背に広間を離れていった。

 

 広間の右端には、石壁に沿うようにして幅の広い階段が設けられていた。

 一般囚が収容されている地下層と、特別囚たちの居室が並ぶ二階を直接繋ぐための階段である。途中に一階やほかの階へ通じる出入口はなく、二つの階層だけを結んでいる。

 そのすぐ横に、大きな鉄扉があった。

 扉の上には、黒い木板へ白い文字で『特別矯正室』と記されている。

 

「ここですよ」

 

 ダンが鉄扉の前で足を止めた。

 

「一般囚の区域に、このような部屋がありましたかしら」

 

 オクタヴィアが札を見上げた。

 

「もとは倉庫だよ」

 

 カイネウスは答えた。

 地下広間で使う予備の拘束具や、壊れた調度品などを置いていた場所だった。長い間、雑多な荷物が積み上げられ、ほとんど使われることもなかった。

 

「……エリナが自分専用の実験室を欲しいと直談判してきたからね。倉庫を空けて、好きに使わせることにしたんだ」

 

 カイネウスは続けた。

 エリナは二十二歳の魔道技師で、サロンで使用する魔道具の開発と魔核の調整を担っている。

 愛らしい外見をしているが、マルティナに育てられた孤児であり、カイネウスが王国を出奔して共和国に移民として入国したときマルティナに一時期世話を受けたことから、血の繋がらない兄妹のような間柄だった。

 極端な魔道具好きであり、カイネウスに言わせれば、女の身体を弄ることにかけては狂っている。

 

「専用の調教室を、あの女にお与えになったのですか」

 

 オクタヴィアの眉が僅かに動いた。

 

「強請られたからね」

 

「強請られたら、専用室を与えるのですか──。一階にも工房があるではありませんか」

 

 オクタヴィアが咎めるような口調で言った。

 

「実際に人体実験をしながらの方がいいと言うんだ。新しい魔道具や矯正方法を作ってくれるのなら、使っていない倉庫のひとつくらい安いものだろう」

 

「でしたら、わたくしにも専用の施設を用意していただけますわね」

 

 オクタヴィアが間を置かずに言った。

 

「君にも?」

 

 カイネウスは彼女へ顔を向けた。

 

「この本館の中ではございません。別棟に、わたくし専用の特別矯正室を設けていただきたいのです」

 

 オクタヴィアは平然と答えた。

 

「まあ。主任矯正官様だけの秘密のお部屋ですのね」

 

 ローランが楽しそうに口を挟んだ。

 

「わざわざ別棟に作るのかい?」

 

「本館は人の出入りが多すぎますもの。矯正の途中で、無関係な者に出入りされては困りますわ」

 

「……無関係の者は、このサロンにはいないんだけどねえ」

 

 カイネウスは苦笑した。

 

「設備の選定も、人員の配置も、すべてわたくしにお任せくださいませ。必要な者はこちらで揃えます。ほかの者の手を借りるつもりはございません」

 

 口調は穏やかだった。

 だが、誰を中へ入れ、誰を遠ざけるかまで、すべて自分で決めるつもりなのだろう。

 

「ずいぶん閉ざされた施設を欲しがるんだね。なにか企んでいるのかい?」

 

 カイネウスは柔らかく訊ねた。

 

「企むなど、人聞きの悪いことを仰らないでくださいませ。鞭も使わず、傷一つつけずに、あの聖女もどきを短時間で従順な雌へ仕上げるだけですわ」

 

 オクタヴィアが薄く笑った。

 聖女もどきとは、クラウディアのことだろう。

 具体的に何をするつもりなのかは口にしない。だが、別棟と専用設備を要求する以上、すでに方法も必要な人員も決めているに違いなかった。

 

「まあ、いいよ。好きに作るといい」

 

 カイネウスは肩を竦めた。

 

「ありがとうございます、カイネウス様」

 

 オクタヴィアが満足そうに頭を下げた。

 

「ただし、三日後には元帥が来る。そのときには、クラウディアを余興として出すからね」

 

 カイネウスは言った。

 

「承知しておりますわ。それまでには、相応しい姿へ整えてお見せします」

 

 オクタヴィアは迷いなく答えた。

 

「いいんですか、大将?」

 

 ダンが呆れたように口を挟む。

 

「成果を出してくれるなら、それでいいさ」

 

 カイネウスは答えた。

 

「成果なら、必ずお見せいたしますわ」

 

 オクタヴィアが静かに微笑んだ。

 その笑みを見ても、なにを考えているのかまではわからない。

 

「まあいいや……。それじゃあ、先に魔道技師殿の成果をご覧ください」

 

 ダンは軽く鉄扉を叩いてから、取っ手へ手をかけた。

 重い扉が、ゆっくりと開いていく。

 媚薬特有の甘い香りと、むっとするほどの女の匂いが襲ってきた。

 カイネウスは、ダンに続いて特別矯正室へ足を踏み入れた。

 

 室内には、全部で五人の令嬢がいた。座椅子へ固定された二人と、その周囲に配置された三人だ。

 扉の外まで漂っていた濃い女の匂いが、さらに強く鼻をつく。

 その正体は、部屋の中央に並べられた二脚の座椅子へ括りつけられている二人の若い令嬢だった。

 

 ほかの三人もそうだが、座椅子の二人は衣服を身につけていない。

 背もたれを僅かに後方へ傾けた大きな座椅子へ腰掛けさせられ、両腕を頭上へ伸ばした姿勢で固定されていた。手首だけでなく、二の腕と肘の近くにも革帯が巻かれ、腕を下ろすことはできない。

 額にも幅の細い革帯が掛けられ、頭を背もたれへ固定されている。

 胸の下と腹部、腰にも幅広い革帯が渡され、上半身を捩ることも、座面から身体を浮かせることも許されていなかった。

 両脚は膝を深く曲げたまま左右へ大きく開かされている。

 膝と足首は、それぞれ座椅子から伸びた脚台へ固定され、爪先まで外側へ向けられていた。

 

 二人の顔のすぐ横には、背もたれから伸びた細い金属棒がある。

 その先には小さな香炉が吊るされ、赤く燻る香から絶えず白い煙が立ち昇っていた。甘く濃厚な香りが、二人の鼻先を包むように漂っている。

 媚薬の香に違いない。

 二人の頬は赤く火照り、額や首筋には汗が浮かんでいた。

 口は苦しげに開かれ、荒い呼吸を繰り返すたび、濡れた唇が小さく震えている。視線も定まらず、どちらも明らかに平静を失っていた。

 股間はまるで小尿をもらしたかのように、大量の愛液がその下の座面を汚している。

 

 そして、右側の令嬢には、さらに異様なものが取りつけられている。

 大きく開かされた脚の間から、三本の細長い金属針が突き出していた。

 鈍い銀色の針が局部に差し込まれたまま、僅かな振動を残して揺れている。

 

 二人の身体には、さらに何本もの細い魔導線が繋がれていた。

 胸元や腹部、腰に貼りつけられた小さな魔石から伸びた線が、座椅子の背後を通って壁際の計測台へ集められている。

 計測台には、薄い魔石板や細い指針、目盛りを刻んだ円盤が幾つも並んでいた。

 魔石板の表面には二人の身体反応を示しているらしい光の波が浮かび、荒い呼吸に合わせるように絶えず細かく揺れている。

 計測台の向こうでは、白い作業着をまとった小柄な女の頭が、並んだ魔石板のあいだを行き来するように動いていた。

 

 二脚の座椅子の周囲には、ほかにも三人の裸の令嬢がいた。

 一人は左側の座椅子のすぐ前に立っている。

 もう一人は右側の令嬢の開かれた脚の近くへ膝をつき、金属針へ指先を添えていた。

 そのふたりについては、後ろ手で両手首に手錠を嵌められている。

 残る一人には拘束はない。二脚の真ん中に立って、両手に小さな容器をひとつずつ持っている。

 さらに、五人全員の陰核には同じ細い金属環が嵌められていた。環から伸びた魔導線も操作台へ繋がり、エリナが個別に刺激を与えられる仕組みになっているようだった。

 

「じゃあ、三回目いくわよ」

 

 部屋の奥から、弾んだ女の声が聞こえた。

 カイネウスは、そちらへ眼を向ける。

 操作台の奥にいた、白い作業着をまとった小柄な女が立ちあがる。

 肩口で切り揃えられた淡い栗色の髪に、丸みを帯びた頬と大きな瞳。

 魔道技師のエリナだ──。

 

 エリナは、カイネウスたちを認めたが、軽く会釈をしただけで、すぐに計測具に向き直る。薄い魔石板に浮かぶ二本の光の波を見比べ始めた。

 片手で円盤を僅かに回して、おそらく二人の魔核へ送り込む魔道波の強さと共鳴のずれを調整しているのだと思う。

 三人の令嬢も遅れて入口へ気づき、怯えたように動きを止めかけた。

 

「そのままでいいわ。見学しているだけだから、持ち場を離れないで」

 

 エリナが計測具へ向き直ったまま命じた。

 

「……左は乳房の感度を三段階上げてあるわ。日常生活をどうにか送れる限界ね。二人とも乳腺の活性化と魔核の連結は安定しているから、三回目はさっきより多く出るはずよ」

 

 エリナが声を張る。

 座椅子のふたりだけでなく、周囲の三人もびくりと裸身を揺らす。

 

「特に採取係。すべてとは言わないけれど、できるだけ多く受けなさい。刺激係と連携して、二人が同時にならないようにすれば取れるはずよ。失敗と見なしたら、三人揃って股間の金属環へ電撃だからね」

 

 エリナが真ん中で両手に容器を持っている令嬢に怒鳴りつけた。

 

「ひんっ、わ、わかりました」

 

 その令嬢が怯えたように身体を竦ませた。

 

「フローラ様、わたしたちがうまくずらしますので、最初はミレーヌ様から」

 

「そうですね。ノエラ様に使われているお針は強力ですもの。多分、揺らした途端にいってしまわれると思います」

 

 座椅子の左右についていた二人の令嬢が、容器を持つ娘を励ますように声をかけた。

 

「も、申し訳……ありません……。さっきから……不甲斐なくて……」

 

 股間に長い針を刺された右側の令嬢が、泣きそうな顔で口を挟んだ。

 媚香を嗅がされ続けているためか、息も絶え絶えで、言葉を発するだけでも苦しそうだった。

 

「わ、わたくしも……、できるだけ……が、我慢します……。ですから……、ノエラ様をお先に」

 

 左側の令嬢も必死に声を出している。

 

「いけません、ミレーヌ様……。先ほど決めた……順番で……参りましょう。先にお済ませください……。リディ様……、最初は……魔針には……触れないように……お願いいたします」

 

「わかりました、ノエラ様。ミレーヌ様がおいきになったら、魔針を舌で思い切り弾きます。それまではなんとか耐えてください……。エステル様もそれでよろしいですか?」

 

「承知いたしました。わたしは、できるだけ早く、ミレーヌ様をお刺激いたします」

 

「相談はまとまった? 反応する時機をずらすのは構わないけれど、刺激そのものは止めないで。二人の反応を同じ計測具で比較しているんだから。では、三回目を始めるわよ。始めて」

 

 エリナが怒鳴った。

 座椅子の左右に控えていた二人が、それぞれ担当する令嬢へ身を寄せた。

 左側の令嬢についている娘は、乳房に舌を這わせだし、右側についていた娘は、ノエラの開かれた脚のあいだへ顔を寄せた。

 

「ひああっ」

 

「あああっ」

 

 座椅子のふたりがたちまちに淫らな声をあげ始めた。

 二人の令嬢が舌による刺激を始めた瞬間、座椅子へ固定された二人の身体が大きく跳ねた。

 革帯が軋み、脚台へ固定された膝がびくびくと震える。

 とりわけ、左側の令嬢の反応は激しかった。

 

「あっ、あああっ……」

 

 胸元へ顔を寄せた娘は、舌先だけを使っているのではない。

 頬や唇まで押し当てるようにして、左右の乳房へ交互に顔を埋め、その柔らかな膨らみ全体を揺さぶっていた。

 刺激を受けるたび、左側の令嬢の背が座椅子から浮きかける。

 だが、胸の下から腰までを締めつける革帯に阻まれ、逃げることも身を捩ることもできない。

 

「ああっ……ひあっ……だ、だめええっ……」

 

 喘ぎ声は次第に大きくなり、呼吸もさらに速くなっていく。

 頭上へ固定された両腕は小刻みに震え、指先が空を掻くように何度も開閉していた。

 

「二人とも、魔核を使って乳腺を作り替えてあるのよ、カイ。本来なら母乳の出ない身体でも、刺激を受ければ十分な量を作って、外へ噴き出せるようにね」

 

 いつの間にか計測台を離れていたエリナが、カイネウスのすぐ横へ立っていた。

 エリナは、血は繋がってはいないが、兄妹のように気安い関係だ。カイネウスのことも愛称で呼ぶ。

 

「へえ、つまり、絶頂すると母乳が噴き出すってこと?」

 

 ローランが面白そうに訊ねた。

 

「男と違って、女は射精しないでしょう。だったら、代わりに母乳でも噴き出したら面白いんじゃないかと思ってね」

 

 エリナは悪びれもせずに答えた。

 

「いかにも、あんたらしい発想ね」

 

 ローランが含み笑いを漏らした。

 

「それだけでは、ただ母乳が出るようになっただけよ。左側の被験体には、さらに乳房全体の感度を陰核並みに引き上げてあるの」

 

 エリナは、激しく身体を震わせている左側の令嬢へ眼を向けた。

 

「なんだそりゃ? つまりは、あの姐ちゃんは、乳房がクリトリスみたいに敏感ってことかよ」

 

 ダンが感嘆の声をあげた。

 

「陰核よりもずっと大きな場所だから、受け取る快感も巨大になる。その快感が頂点に達した瞬間、乳腺を一気に収縮させて、溜めた母乳をまとめて噴き出させるというわけ」

 

 エリナは、自分の成果を披露するように得意げに言った。

 

「待ちなさい──。その肉体改造について、矯正室には事前の報告が届いておりませんけれど」

 

 オクタヴィアが不満そうに口を挟んだ。

 

「まだ報告を上げていないもの。あとで出すわ」

 

 エリナは座椅子へ眼を向けたまま、あっさりと言い返した。

 

「あとで済む問題ではございません。囚人の肉体へ恒久的な改造を施したのであれば、実施前に主任矯正官へ報告するのが当然でしょう」

 

「結果が出るかもわからない段階で、いちいち書類を作る方が無駄でしょう。成功したんだから、これからまとめればいいのよ……。どうしても納得がいかないなら、元に戻そうと思えば戻せるけど」

 

 エリナは取り合おうともしなかった。

 

「そういう話ではないでしょう──」

 

 オクタヴィアの眉が険しく吊り上がる。

 

「まあまあ。その話はあとにしようよ。でも、元には戻さなくていい、面白いからね」

 

 カイネウスは二人の間へ穏やかな声を差し挟んだ。

 

「しかし、カイネウス様。このような公私を混同した馴れ合いを許していては、いずれ共和国政府にまで害を及ぼしますわ」

 

 オクタヴィアが厳しい眼を向けた。

 

「覚えておくよ」

 

 カイネウスは、それだけ答えた。

 その直後だった──。

 一際大きな嬌声を上げ、左側の令嬢が全身を硬直させた。

 

「あああああっ──」

 

 次の瞬間、両の乳首から白い母乳が勢いよく噴き出した。

 一度では終わらない。短い間隔で何度も連続して放たれ、左右から次々に白い筋が走る。

 

「ひゃっ……」

 

 容器を持った令嬢は慌てて両腕を伸ばした。

 最初の数射は胸元や腹へ浴びたが、それでも逃げず、左右の容器を噴き出す先へ必死に合わせていく。

 母乳はなおも立て続けに噴き続けた。

 容器の縁や底を白い液体が次々に叩き、飛沫が令嬢の頬や肩へ散る。

 

「と、取れています……。なんとか採れました」

 

 令嬢は全身を母乳で濡らしながらも、最後まで両手を離さなかった。

 やがて連続していた噴出が弱まり、途切れた。

 左の令嬢側は、噴き出た母乳があちこちに飛び散っている。

 

「すぐに容器を変えて──。魔針を揺らして、右の被験者を絶頂させなさい」

 

 エリナが大きな声をあげた。

 

「はいっ」

 

 右側の令嬢についていた娘は、それまで股間へ顔を伏せて拘束された令嬢の陰部を舐め続けていたが、僅かに顔を上げると、突き出した三本の魔針を舌先で代わる代わる弾き始めた。

 三本の魔針が舌先で弾かれた瞬間、右側の令嬢の眼が大きく剥かれた。

 

「ああああああっ──」

 

 拘束された身体が激しく跳ね上がる。

 頭上へ伸ばされた両腕が震え、背中と腰が革帯へ何度も叩きつけられた。脚台に固定された膝も大きく揺れ、座椅子全体が軋んだ音を立てる。

 令嬢は息を継ぐこともできないまま声を上げ続け、焦点の定まらない眼を大きく見開いている。

 

「魔針ってのは、あの股間に刺さっている長い針のことか」

 

 ダンが令嬢の激しい反応に視線を向けながら訊ねた。

 

「そうよ。胎内の感覚が集中している場所へ直接当てて、刺激を送り込むの。あれを使われて絶頂を耐えるのは不可能ね。魔針を激しく動かすほど、何度でも際限なく絶頂させられるわ」

 

 エリナが平然と答えた。

 

「また、愉快なものを作ったわねえ」

 

 ローランが感心したような声を上げた。

 その直後、右側の令嬢が再び大きく身を反らした。

 

「あああああっ──」

 

 激しく震える身体に合わせるように、両の乳首から母乳が勢いよく噴き出す。

 短い間隔で何度も白い筋が走り、座椅子の前へ次々に飛び散った。

 

「フローラ様、こちらです──」

 

 刺激係の令嬢が声を上げる。

 

「は、はいっ」

 

 容器を交換したばかりのフローラが、急いで右側へ回り込んだ。

 両手の容器をそれぞれの乳房の前へ差し出し、絶え間なく噴き出す母乳を必死に受け止めていく。

 勢いに追いつけず、いくらかは胸元や腕へ浴びた。

 それでもフローラと呼ばれている令嬢は怯まず、噴き出す向きに合わせて容器を細かく動かし続けた。

 

「取れています……。こちらも、取れています……」

 

 震える声で報告しながら、最後の数射まで逃さないように両腕を伸ばす。

 やがて噴出が弱まり、白い雫へ変わって途切れた。

 フローラは母乳に濡れた身体のまま、二つの容器を胸元へ引き寄せた。

 どちらにも、まとまった量が溜まっていた。

 

「よくやったわ。すぐに印をつけて試験台へ置いてきて」

 

「はい」

 

 フローラが、二つの容器を落とさないよう胸元へ抱え、部屋の奥へ駆けていった。

 エリナは満足そうにその背中を見送っている。

 それから、思い出したようにカイネウスへ顔を向けた。

 

「ところで、カイ。お願いがあるんだけど」

 

 先ほどまで令嬢たちへ怒鳴っていたものとは打って変わり、妙に甘い声だった。

 

「今度はなんだい?」

 

 カイネウスは苦笑した。

 

「両性具有って、知ってるよね、カイ」

 

 エリナが愛らしい笑みを浮かべた。

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