サロン・セルパンタンの五百日の調教記録──亡国の花と蛇の館 作:ドン・ドナシアン
「余興として、このサロンの隷奴と公開性行為をしてもらう。姉と恋人……。君はどっちと性交をしてくれる?」
「姉……? 恋人……? どういうことだ?」
アルトは、目隠しをされたままの顔をカイネウスへ向けた。
「ふふ、質問に答えなさい。聖女様と、あんたの恋人。どっちかひとりと愛し合えるらしいわよ。よかったじゃない」
ローランがアルトから離れて言う。
「聖女様って……姉上のことか?」
アルトの声から、先ほどまでの怒りが消えた。
代わりに隠しようのない動揺が滲んでいる。
そのとき、アルトの肩が小さく揺れた。
「……くっ」
押し殺した呻きが漏れる。
薬剤を塗られた場所に、遅れて異変が現れ始めてきたのだろう。アルトは真っ赤に顔を染めて、双臀をもじもじと左右に揺すり始めた。
股間は信じられないくらいに固く大きく屹立している。アルトが苦悶に歯を喰いしばった。
「どうしたんだ、坊や。やけに腰を振り始めたじゃねえか。いくら男同士でも、色っぽい兄ちゃんが一物をそんなに振りましちゃあ目の毒だぜ」
カイネウスとともに、アルトの正面に来ているダンは腕組みをしながら高笑いする。
「な、なんだ、お前ら──。ここに何人いるんだ──。答えろ──」
アルトは身体を必死に捻りながら叫んだ。
だが、背中側で吊り上げられた両腕と、脚を固定する棒枷が自由な動きを許さない。肌に噴き出している汗が床に滴り始める。
「質問が多いねえ……。クラウディアのことを訊きたいのかい。それとも、僕たちのことを質問してる? もしかしたら、君の股間とお尻に塗ったものの正体を訊きたいのかな?」
カイネウスは小さく笑う。
「く、くそう──、なにを塗った──? 痒い──ああ、痒い──」
アルトは腰だけでは痒みを逃がしきれなくなったのか、肩を揺らし、吊られた両腕を何度も引き下ろそうとした。だが、鎖が短く鳴るばかりで、身体はほとんど動かない。
そもそも、拘束されている身体をいくら暴れさせたところで、痒みがやわらぐわけもない。
掻痒感が尋常でないのは、容易に想像がつく。
いよいよアルトの地獄の始まりだ。
カイネウスは、この痒み責めという責め苦を矯正の最初の段階で行わせるのを基本方針としている。鞭打ちのように身体に傷がつかないうえに、苦しみはおそらく痛み以上だろう。実際の痒みというのは、想像よりも遙かに苛酷なのだ。
しかも、この掻痒剤は魔草が調合された媚薬でもある。
繰り返すことで、サロンに相応しい刺激に敏感な身体に作り変えていくという狙いもあった。
「痒いだろうねえ。まあ、痒み責めは、このサロンの洗礼のようなものさ。君のお姉さんも、恋人も同じ仕打ちを受けている。そうやって、サロンに相応しい淫らで敏感な身体に作り変えていくんだ。しばらく我慢するんだね。どうしても耐えられなくなれば、君の専属矯正官は、さっきのローランだ。彼に頼むといい」
カイネウスは声を掛けた。
「ロ、ローラン……? だ、誰なんだ──。と、とにかく痒いんだ──」
アルトは脂汗を大量に流しながら身体を必死に動かしている。
「ふふ、痒いの、坊や?」
ローランがアルトの耳元でささやく。
アルトはびくりと身体を跳ねさせたが、すぐに激しく顔を上下に動かす。
「痒い──。なにも考えられない──。痒い──。なんとかしてくれ──すぐにだ──」
アルトは狂乱したように叫ぶ。
「まあ、堪え性がないわねえ。仮にも騎士見習いでしょう。もっと我慢しなさいな」
ローランがわざとらしく間延びした物言いをして、目隠しをされた顔を振り乱すアルトを見下ろす。
「が、我慢なんかできない──。ああっ、お願いだ──。拘束を解け──。頼む──」
「まあ、拘束は解かないけど、痒みなら癒やしてあげるわ。お館様とのお話が終わったらね」
ローランは台車から一本の絵筆を取り出して、それで屹立して揺れ動いているアルトの男根の先端を筆先でくすぐる。
「ひぎいいっ、な、なにをするかあ──」
アルトは全身を硬直させて絶叫した。
「ははは、凄まじいなあ」
ダンが哄笑した。
「続きはお話の後よ……。お姉さんのことを訊きたいんじゃなかったの?」
ローランが筆を引きあげて小さく笑う。
「ああ、お、お前ら──殺してやる──ちくしょう──ちくしょう──」
すると、アルトがぼろぼろと涙をこぼしながら泣きだしてしまった。
「まあ、あんたって、やっぱり、被虐の素質があるんじゃないの? これなら、矯正の段階をあげても大丈夫そうね。よかったわ。厳しくいきましょう」
ローランは満足そうに頷くと、今度は手を伸ばして、アルトのお尻の亀裂に筆をすっと動かす。
「あああっ」
アルトが女のような悲鳴をあげて、腰を限界まで前に突き出した。
「君のお姉さんのクラウディアは、このサロンに捕らえている」
カイネウスは、ローランが筆を引き、アルトの狂乱がやや収まるのを待ってから、穏やかに言った。
「う、嘘だ──。姉上が捕まるわけがない──。抵抗軍でお前たちへの反撃の機会を探っている。お前たちが姉上に手を出せるわけがないだろう──」
アルトが肩で息をしながら、カイネウスに向かって叫んだ。
だが、余程に痒いのだろう。目隠しをしている眼の部分の革布は涙で滲んでおり、身体の震えは全く止まらない。顔を狂ったように左右に振り、腰を必死に動かしている。
掻痒感はすでに限界だろう。
しかし、ここから延々と我慢させる。
すると、ある一線を越えることで、その苦痛が被虐の快楽に転じていく。それを与えるのが矯正官たちの最初の役割となる。
「偶然にも聖女と呼ばれていた君の姉上の行方がわかってね。君の姉は抵抗軍と一緒に各地を転々としていたが、サロンの充実のために、罠にかけて捕まえてきた。逃げる兎を捕獲するのは、僕の得意技なんだ」
「はああ──。本当のことなのか──。姉上はどこにいる。ほ、本当に、お前たちに捕らえられたのか──? リネアもなのか?」
アルトが前へ出ようとする。
鎖が鳴り、裸足が石床を擦った。しかし、天井の鎖で引き戻される。
固く勃起している股間の先端からは、媚薬効果により自然に湧き出す精液が発汗のように溢れていた。塗られたものだけでなく、ローランが水に混ぜて飲ませたものも強力な媚薬だったようだから無理もないのだろう。
「ああっ……くそ……。痒い……。き、気が狂いそうだ──」
アルトが泣くような声をあげる。
「残念だが狂いはしない……。君の首の後ろに埋められた魔核がそれを封じる」
カイネウスは静かに言った。
まだ魔核制御による全身の鋭敏化などの処置はしていないが、逃亡防止と自傷防止、さらに発狂防止などの最低限の処置は終わっているはずだ。
「ああ、痒い──お願いです──。早くなんとかしてくれ──」
アルトが身体を揺すりながら叫んだ。
言葉に哀願が混じってきた。堕ちてきた証拠だ。
「ほら、自分のことよりも、ちゃんとお姉さんたちのことをお話しなさい」
ローランが、身体を振り乱すアルトの背後へ指を伸ばして、肛門の部分をかなり強く上下に揉み動かした。
「ああっ、おおっ、おっ、おおっ」
アルトはローランの指にお尻を押しつけるように激しく腰を突き動かした。
しかし、ローランはすぐに指を引いてしまう。
「ああ、止めないでくれ──。頼む──。あああっ」
アルトが指を追うように、腰を後ろに引いている。
「なんて、浅ましい格好だよ、坊や」
それを見てダンが腹を抱えて笑う。
「クラウディアもリネアも、いまはこのサロンにいる。そのうちに会わせよう。しかし、最初はクラウディアとリネアのどちらかだ。どっちにするんだい?」
「ここにだと──? いや、そもそも、サロンとはなんなんだ──? ここはなんなんだ──?」
アルトが身体を暴れさせながら絶叫する。
「古城セルパンタンは知っているね? もともとは、君たち王国の城だ」
「セ、セルパンタン……。知っている」
「いまは共和国のサロンとして蘇った。王族や上級貴族、騎士、女官──それに、その縁者たちを収容する場所だ。身分への誇りも、忠誠も、人との繋がりも、ここで少しずつ作り替えていく。そして最後には、サロンから与えられた役割を、自分から受け入れるようにするのさ」
「役割──? な、なんだ──?」
「接待婦だよ。つまりは娼婦だ。君の場合は男娼になるのかな。君のお姉さんも恋人も、このサロンで高位高官用の従順な接待婦になってもらう。そのための矯正を受けてもらっている」
「ふ、ふざけるな──。この建物に、姉上とリネアがいるのか──?」
「いる」
「どこだ──。彼女たちをどうした。怪我をさせたのか?」
アルトは矢継ぎ早に大声をあげる。
そして、腰を引き、脚に力を込め、どうにか痒みをやり過ごそうとしている。額には大量の汗が浮かび、呼吸はかなり荒くなっていた。
「質問が多いね」
「答えろ──。……ああ、だめだ……。とても考えられない……。頼む。なんとかしてくれ……。なんとかしてください……。痒い……痒いんだ……あああ……」
アルトがいよいよ悲痛な声をあげだした。
そして、またもや、しくしくと泣き始める。
「こりゃあ、もう会話になりそうにないですぜ、カイネウスの大将」
見物の態勢のダンが狂乱しはじめたアルトを眺めながら笑った。
「そうみたいだね」
カイネウスも肩を竦める。
「ああ……痒い……痒い──。お願いだ……どっちでもいい。誰でもいい……。なんでもする。この痒みをなんとかしてくれ……」
アルトが悲痛な声で叫んだ。
「ほら、お姉ちゃんと恋人……。どっちと性交をするのか答えなさい。そしたら、ちょっとだけ痒みを癒やしてあげるわよ」
ローランがアルトの耳元でささやいた。
しかし、アルトは「痒い、痒い」と繰り返すばかりで、もうまともに反応をしなくなった。
カイネウスは、ローランに視線を向けて小さく頷く。
ローランが軽く息を吐いた。
「仕方ないわねえ……。じゃあ、ちょっとだけ気持ちよくなったら、ちゃんと答えるのよ」
ローランがアルトの股間に手を伸ばして、怒張をぐっと力を込めて掴んだ。
「うわああっ」
アルトが悲鳴をあげて懸命に腰を振り出す。
痒みを癒やそうとしているのだろう。
「ははは、こいつ、ローランの手でせんずりを始めやがったぜ」
ダンが手を叩いて大笑いした。
しかし、アルトにはその嘲笑が耳に入っている気配はない。
狂ったように、ローランに怒張を掴まれたまま腰を動かす。
「ひ、ひあああっ」
そして、いきなりアルトの股間から白濁液が噴射をして前に飛んできた。
あっという間だ。
カイネウスは慌てて、身体を横に避けてやり過ごす。
「あら、ごめんなさい、閣下」
ローランが笑いながら、アルトから手を離す。
「あ、ああ……だ、だめだ……。まだ痒い……痒い……」
しかし、アルトが項垂れたのは一瞬だけだ。
すぐにまた身体を激しく震わせ始めて、股間の一物も再び勃起してしまう。
「すげえ効き目だなあ……。こりゃあ、この坊やも堪らねえだろう」
ダンが感嘆の声をあげる。
「明日までに一気に作りあげるわ。大丈夫……。こいつは大抵のことをしても心が折れやしないわ。多分、被虐癖があるのよ。間違いないわね」
ローランが指をアルトのお尻に持っていく。
そして、一気に奥まで指を貫かせたようだ。
「うあああっ、もうやめてくれ──」
アルトが全身を弓なりに硬直させて泣き叫ぶ。
「馬鹿ねえ……、まともに会話もできないから、ちょっとは痒みを癒やしてあげてんじゃない。痒ければ、あたしの指を締めつけなさい。ちょっとは違うでしょう──。ところで、どっちなの? クラウディア? リネア? どっちとセックスをするの──?」
ローランがアルトの耳元で言った。
そして、アルトのお尻の中に挿入していた指を少しだけ激しく動かした。
「ほおおおっ」
アルトが身体を弓なりにして奇声をあげる。
ローランは指を抜く。
アルトの身体が完全に脱力する。
「そら、ちょっとは落ち着いたでしょ。カイネウス様に申しあげなさい。あんたが公開性愛をするのは、あの聖女と恋人のどっちなの?」
「……はあ、はあ、はあ……。あ、姉上と、そんなことができるわけないだろ──」
アルトが肩で息をしながら大声をあげる。
ただ、少し刺激を受けて、多少は表情がまともになっている。
「だったら、リネアだね。決まりだ──。君の矯正がひと段落したら連れてこさせよう。公開性交の練習だ。リネアはすでに生娘じゃないけど、君はまだ童貞だろう?」
カイネウスはアルトに告げる。
「リ、リネア……。ああ、本当に彼女までここにいるのか──。どうしてだ──。彼女はただの薬師見習いだ──。平民だぞ──」
「だが、レイシアの妹でもある。セリア付の護衛のね。僕たちがそれを把握してないとでも?」
「ああっ、くそおっ──。リネアは関係ないだろう──」
アルトが鎖を激しく鳴らした。
「関係ないかどうかを決めるのは僕たちだ。レイシアと姉妹で接待婦というのは、かなり需要があると判断した。すでに、サロンの矯正を開始している。順調にサロンに馴染んでいると報告を受けているよ」
「あああ──リネアになにをした。答えろ。あの子になにをした──」
「まだ、新しい生活へ馴染ませている段階だ。拒絶や恐怖を薄くし、命令された役割を受け入れられるようにしている」
「馴染ませるだと──」
アルトの声が低く震えた。
「毎日、男兵を替えながら身体の関係を持たせている。人数は日に三人ほどかな」
一瞬、アルトの動きが止まった。
言葉の意味を理解するまで、僅かに時間がかかったようだった。
「……三人?」
「そうだ。だから、君よりも遙かに経験者だ。君にも頑張ってもらわないとね」
「き、貴様──」
アルトが悲痛な声をあげた。
また、気がつくと、アルトの身体の悶えは再び激しいものになっていた。痒みが蘇ってきたのだろう。股間は少し前に精を放ったとは思えないくらいに固く勃起している。
「くっ……ああ……。と、とにかく……リネアにそんなことをさせるな。いますぐやめさせろ。あの子は関係ない。僕をどうしようと勝手だ。だが、リネアには──」
「もちろん、君にも矯正を受けてもらうよ。でも、それと、リネアのことは関係ない。彼女はすでに、サロンの女囚だ」
「あああ──、こ、殺してやる──。顔を見せろ。僕の拘束を解け──」
アルトは我を忘れたように喚き続けた。
「ふふ、また興奮してきたかしら? でもそれだけ元気なら、まだ大丈夫ね。掻痒剤を塗り足してあげるわね。どっちがいいかしら。やっぱり、お尻にする?」
ローランが台車の上の壺に右手を浸す。引きあげてどろりとした油剤にまぶされた指をアルトの尻の穴に貫かせた。
「あああっ、もうやめてくれ──。やめてええ」
アルトが女のように悲鳴をあげる。
「君が望むなら、すぐにリネアを連れてきてもいいよ……。ローラン、二人揃って面倒も見られるだろう?」
カイネウスがローランを見た。
「まあ、いいけど。あたしにセックス指導は無理かな。男同士なら指導できるけど」
ローランがアルトの尻の奥に油剤を塗り足しながら苦笑した。
「なら、アルジェの班から何人か派遣するよ。あいつらはなんでもできる。つがいの隷奴に仕上げてくれ」
「わかったわ。でも、それだけじゃあ勿体ないわよ。この坊やには、多分、被虐の性質もあるわ。鍛えれば、お尻で男も受け入れられるようになると思うの」
ローランが指を抜いて笑う。
アルトはがくりと脱力している。
「だったら、そのリネアっていう姐ちゃんに、この坊やの尻を腰に固定させた張形で犯させればいいんじゃねえか。うちの新入りがやっていたみてえによお」
見守っていたダンが口を挟む。
ローランがぽんと手を叩いた。
「まあ、面白い──。絶対にいい余興になるわ。でも、三日後に間に合うかしら」
ローランが眼を輝かせた。
「い、いやだ──。リネアにこんな姿を見せないでくれ──。頼む──」
アルトは絶叫した。
カイネウスはアルトを無視して、ローランに向かって口を開く。
「できる範囲でいいよ。リネアを合流させるのは明日でいいかい、ローラン」
「そうねえ。ちょっと段取りが急すぎるけど、つがいに仕上げるなら仕方ないわね。三日間ね。やってみるわ」
ローランはそれまでの笑みを消し、真面目な顔で大きく頷いた。
カイネウスも満足そうに頷き返し、軽く片手を上げる。
「……じゃあ、続けてくれ、ローラン。しばらく見てから行くけど、そのときは見送りはいいから」
カイネウスはダンを促して、出口の扉の前で再び見物の態勢になる。
振り返ると、ローランはすでにアルトのそばへ戻って、これから始める矯正の手順を確かめるように拘束具や台車へ視線を巡らせていた。アルトは再び「痒い、痒い」泣きながら、またもや激しく身体を揺らし、いつの間にか嗚咽を漏らしている。
カイネウスは少しその様子を見守った。
ローランがちらりとこっちを見たが、カイネウスはそのまま続けるようにと、手だけで合図をする。
「ああ、痒い──もう我慢できない──。まだ痒いんだ──」
アルトが声をあげている。
「ふふふ、痒みを癒やしてあげるから、食事をしなさい。全部食べ終わったら、ご褒美にまたお尻を弄ってあげるわね」
ローランがアルトに告げた。
「頼む──先に、お尻に指を入れてくれ──。あああっ」
アルトは一層激しく身体を震わせて涕泣している。
「だったら、いつまでも腰を振ってなさい。その気になったら言うのね。鎖を緩めてあげるわ」
「わ、わかった──食べる──。ああ、痒い──助けてくれ──かゆいいっ」
アルトがかちかちと歯を鳴らしながら掠れた声をあげた。
ローランが魔道操作具でアルトの腕を吊っている鎖を緩めていく。アルトは倒れるようにその場に跪いた。ローランはアルトの顔の前に台車から取り出した粥状の食事の入った丸皿を置く。
「食べなさい。終わったら目隠しを外すわ。そして、お尻を張形で犯してあげる。大丈夫よ。一番小さいものから始めるからね」
食事の入った丸皿を上体を屈めたアルトの顔の下へ置き直し、優しい手付きで頭を撫ぜた。
アルトはすすり泣きのような声をあげつつ、大人しく皿に舌を伸ばす。
すると、ローランが静かに立ちあがった。
床に置かれた皿へ、犬のように顔を近づけて食事をするアルトの背後に回り、台車に置いていた絵筆を再び持って、アルトの尻たぶの亀裂を上下にくすぐり始めた。
「ひああっ、な、なにをするんだ──」
アルトが上半身を跳ねさせて絶叫した。
「食事を止めないのよ──。食事、用便、睡眠──ありとあらゆるものをあなたは、これから快感と結びつける生活をするの──。そうやって、心と身体を作り変えるのよ──。食べないと終わらないわよ。慣れなさい──」
ローランは筆でアルトの尻穴の上をくすぐり続けている。
「……容赦ねえな、あいつも……」
横のダンが小さくささやいて声を殺して笑っている。
「ひいっ、ああっ、や、やめてくれ──ああ、頼む──こ、こんなの無理だ──ああっ──」
アルトは必死に腰を動かして筆を避けようとするが、ローランは棒枷の棒の部分を踏みつけて、アルトが腰を避けるのを許さない。ローランは容赦なく、アルトの尻穴に筆を動かし続けている。
「あっ、ああっ……」
諦めたのか、アルトは真っ赤になった顔を丸皿に埋めると、再び丸皿に舌を伸ばす。
そのあいだも、ローランによるアルトの尻穴への筆責めは続いている。
どうやら、ローランなら任せて問題ないようだ。
そう判断したカイネウスは、小さく頷くと、今度こそ扉へ手をかけた。