サロン・セルパンタンの五百日の調教記録──亡国の花と蛇の館 作:ドン・ドナシアン
057 晩餐への招待【第27日】
「セ、セリア様──い、いきそうです──」
すぐ近くにあるレイシアの顔で悲鳴のような声が上がる。
セリアとレイシアは、対面座位の体位で、床に向かい合って座り、脚を大きく開いて互いの脚を交差させていた。腰は双頭の張形を挟んで完全に密着している。
繋がっているレイシアの股間が淫らにうねり舞い、その快感の響きがセリアの局部を激しく揺すりたてる。
レイシアは、すでに頂上に昇り詰めようとしているようだ。
セリアの頬に汗ばんだ頬を強く擦りつけながら、掠れた声で絶頂の合図を求めてきたのだ。
「ま、待って、わたしはもう少しなの──。ちょっとだけ──ちょっとだけ待って──」
セリアは腰を振りながら慌てて叫ぶ。
今日の百合訓練では、レイシアは後手拘束であるが、セリアは拘束されていなかった。主導権はセリアにある。
セリアはレイシアを宥めるように、レイシアの背中に回して支えている腕の力を緩め、レイシアの身体がセリアに乗るようにわずかに体勢をずらした。
張形の先端が深くまでぐっと差し込まれて、一気にセリアも快感を昂ぶらせる。
「ああ、も、もういいかも──。もっと動いて、レイシア──」
セリアはレイシアを抱える腕に力を入れながら声をあげた。
すると、汗びっしょりの顔をセリアの頬に擦りつけているレイシアがくすくすと笑うのが聞こえた。
「ふふ、セリア様は奥が弱かったな……」
レイシアが悪戯っぽく笑って、さらにセリアに体重を預けるようにして張形の角度を鋭くする。そのために張形の先がさらに深くまで子宮口を襲う。
「あ、あああっ、だめええ──」
セリアは激流のような快感に襲われて、レイシアを受け入れている腰をがくがくと震わせる。
「そらそら、いっていいんだよ、セリア様──」
レイシアが嵩にかかったように腰を大きく揺り動かす。
「あああ、ひ、卑怯よ──」
セリアは支えている手を伸ばして、レイシアの臀部に指を持っていった。彼女の弱点のお尻の穴に指を挿入してやるのだ。お互いの汗と大量の愛液でどこもかしこもぬるぬるだ。そのまま入るだろう。
あっという間にセリアの指はレイシアのお尻の中に潜り込んだ。しかも、かなり奥まで届いた。
鈎状に指を中で曲げて奥を擦ってやる。
「んふううっ、セリア様こそ、卑怯──」
レイシアはうなじを持ちあげて、狂おしく身悶えをする。
ただ、その動きが激しく、名状のできない切なさとともに、セリアもまた火のような戦慄に包まれた。
「ああ、レイシア──」
セリアはついに絶頂した。
同時に、レイシアもまた快感の頂上に引きあがったのがわかる。
そのまま鼻先が触れ、どちらからともなく唇を重ねた。
舌を絡め、唾液をすすり合い、しばらくのあいだ獣のような口づけを交わす。
「……ああ、セリア様……」
「レイシア……」
快感による浮遊感が少しずつ落ちてくる。
お互いの肩に顔を預け合い、脱力した身体を支え合う。
いまこの瞬間──。セリアは、ここがサロンの中だということを、ほんのひととき忘れた。
「いやあ、すげえすげえ──。すごかったぜ。おふたりさん──」
「ほんと、愛し合う恋人たちのようだったわ」
「共鳴しやすい双頭張形を使わなくても、普通の双頭で同時に昇天できるしな」
裸身を擦りつけ合って、束の間身体を休めていたセリアたちに、まばらな拍手が飛んだ。
セリアとレイシアが愛し合うのを強要して見張っている女兵たちだ。今日は四人いる。
毎日一日の大半を使って、ずっとやらされている百合愛の訓練であり、セリアとレイシアは部屋の真ん中に敷かれたマットの上でを性愛を強要されていた。
逆らうことも、手を抜くことは許されない。
拒絶には罰──。しかも、自分自身ではなく、相手への罰だ。
この二十日近く、毎日のように激しくレイシアと愛し合わされ、恥辱も羞恥も抵抗も、もはや麻痺しきっていた。
セリアとレイシアがいるのは、二階に与えられたセリア専用の居住区画にある矯正室だった。
この区画には居間や寝室、浴室、厠などがひとまとまりに設けられ、その一角に専用の矯正室も連なっている。セリアたちが互いに愛し合う訓練を課されるようになってからは、レイシアもほとんどこの区画でセリアとともに起居していた。
また、この矯正室の周りには用途の知れた道具がいくつも置かれており、壁際に女兵たちが控えて、セリアたちの様子を眺めていたのである。
見られることには、とうに慣れた──そう認めてしまうことには抵抗があったが、少なくとも、彼女たちの視線に怯えてレイシアから離れようとはもう思わない。
「大丈夫、レイシア……苦しくない?」
レイシアの両腕は背中側へ回されて縛られているので、自由に使えるのはセリアの方だけだった。
セリアは、レイシアの髪へ指を差し入れて、汗に濡れた銀髪を耳の後ろへ払ってあげる。
「これくらい、なんでもありません。これでも騎士もどきですから」
レイシアが白い歯を見せた。
「……騎士もどきじゃないわ……。あなたは、わたしの大事な騎士よ……。抜くわね……」
セリアの腕の中にいるレイシアから少しずつ腰を離していく。
レイシアの中から張形が抜けると、セリアは手で自分の股間から残っている半分を抜いた。セリアだけでなく、レイシアの股間からもかなりの愛液がまとまってどろりと垂れ落ちる。
「ああ、ありがとうございます……。でも、もう騎士の顔ではないでしょう……、騎士は主君にこんなことはしません……」
セリアが小さく笑う。
「なら、恋人かしら」
セリアはくすくすと笑った。
「これで、正常位、騎乗位、後背位、対面座位は完成ね。次は立位もやっとこうか」
「一応は側位もさせとく? でも、派手さはないか」
「まあ、立位だけでいいんじゃねえか。セリアが縛られて、レイシアが自由なやり方もやらないといけないし」
「ふたりとも拘束されているやつもね」
女兵たちがお互いに話し始めた。
やがて、レイシアが縄尻を掴んで強引に立たされる。女兵たちが天井にある滑車に繋がっている鎖をおろして、レイシアの後手の縄に接続し始めた。
「よし、次は立位だ。そろそろ、媚薬も切れてきたろ? 塗り足してやるよ」
台車が寄せられて、そこに乗っている小瓶が取られる。
セリアは思わず身震いしてしまった。
「ああ、お願いです。少しだけ休憩を……。朝から続けざまでくたくたで……。水も飲ませていただけませんか」
セリアは哀願した。
「ひぎゅううう──」
次の瞬間、鎖で後手を繋がれかけていたレイシアが悲鳴とともにその場に崩れ落ちた。
見ると、女兵のひとりが白い懲罰杖を握ってレイシアに向けていた。魔道の電撃を放つ細い棒であり、それでレイシアの身体のどこかを突いたのだろう。
「ああ、ごめんなさい、レイシア──。お許しを──。申し訳ありません──」
倒れたレイシアにしがみついて抱き起こす。
セリアの犯した罰はレイシアに──。
レイシアの罰はセリアに──。
これもまた、この二十日ほどずっとされていた躾だ。
セリアはそれを忘れて、訓練を拒絶するようなことを口走ってしまった。だから、レイシアに罰が与えられたのだ。
「口答えするんじゃないよ──。ほら、立て──」
女兵のひとりが乱暴にレイシアの縄尻を掴んで立たせる。
「ああ、わかりました……。それとごめんなさい、レイシア」
セリアはレイシアに謝罪する。
「大丈夫……ですよ……。ちっ、お前ら加減しろよ──。ちゃんとやってんだろう。せめて、セリア様に水をあげてくれよ」
レイシアがよろける脚を踏ん張って立ちながら、縄尻を取る女兵に小さく悪態をついた。
「ちゃんとやるのは当たり前じゃない。水は次の立位が終わってからよ。ちゃんと一緒にいくのよ……。ほら、媚薬よ」
レイシアの股間に、刺激臭のある油剤が塗られていく。
「くっ」
レイシアが歯を喰いしばるような仕草をした。
そのとき、戸を叩く音がした。
女兵たちが一斉に顔を向ける。
開いた戸口に人影があった。廊下側の扉にもたれるようにして腕を組んでいる見慣れた隻眼の女兵──アルジェだった。
「あっ、アルジェ隊長──」
「お帰りなさい──」
女兵たちが手を止め、揃って頭を下げる。
「いつ戻ったんですか?」
「少し前だよ」
アルジェが腕を組んだまま答えた。
「お館様もご一緒ですか?」
「聖女もね。いつもの引き回しの途中だったんだが、あの主任矯正官に奪われちまったよ」
アルジェは苦笑を浮かべている。
聖女──。
その呼び名だけで、誰のことなのかわかった。
フォルクス伯爵令嬢のクラウディアだ。
セリアは、さっと血の気が引くのを感じた。
ついに、彼女まで……。
王国が滅びてもなお、地方で抵抗を続けていた有名な伯爵令嬢だ。
女性ながら軍師として戦場に加わり、治療術を使えることから、人々から聖女と呼ばれ、王国の残党にとって精神的な支えになっていた女性である。
そのクラウディアを捕らえるために、カイネウスがこのサロンを離れていたのは教えられていた。
彼女まで、このサロンへ連れてこられてしまったのだと思った。
セリアは思わずレイシアの顔を覗き込む。
すでに後手の縄を天井から下ろされた鎖へ繋がれていたレイシアも、険しい顔になっていた。
だが、その表情とは裏腹に、頬は赤く染まり、太腿を落ち着かなげに擦り合わせ始めていた。
先ほど塗られた媚薬が、もう効き始めたのだろう。
「えっ、あのオクタヴィア女史に?」
女兵のひとりが驚いた声を上げる。
「……ああ、でもまだこっちには来ていませんよ。クラウディア用の部屋もあたしたちが準備しましたけど、まだ誰も入ってません」
さらにひとりが言う。
ここへ連れてこられてから、セリアにもようやくわかってきたことがある。
以前、鼻輪をつけられて歩かされたときに見た、大勢の令嬢たちが収容されているのは、このサロンの地下だ。
一方、セリアが収容されている二階は、特別囚人と呼ばれる隷奴たちの区域らしい。
地下のように大勢をまとめて収容するのではなく、二階では特別囚ひとりひとりに、居間や寝室、浴室、厠、専用の矯正室などを備えた居住区画が与えられている。
それぞれの区画は互いに切り離されており、廊下へ出なければ、ほかの特別囚と顔を合わせることもない。
セリア自身、廊下へ出されることすら多くない。
移動するときには必ず女兵が付き、行き先も決められている。そのため、同じ二階にどれほどの特別囚がいるのか、いまだにわからなかった。
目の前のレイシアとは、この二十日ほど、ほとんど一緒に過ごしている。
ただ、ヤンという男から個別の矯正を受けるときだけは、ここを離れ、隣にあるらしい本来のレイシアの矯正室へ連れていかれていた。
そのレイシアでさえ、ほかにどんな特別囚がいるのかは知らないという。
そもそも、自分たち以外にもすでに誰かが収容されているのか。
それとも、まだほかには誰もいないのか。
そんなことさえ、セリアにはわからなかった。
だが、少なくともひとつはわかった。
どうやら、クラウディアもまた、自分たちと同じ特別囚として、サロンに収容されたらしい。
「いや、あいつの初期矯正は別棟だ。女兵も何人か向こうへ回された」
アルジェは肩を竦めた。
「別棟? どの別棟ですか?」
「古い囚人棟だな。拷問室を使うって言っていたらしいぞ。オクタヴィアに付くことになった女兵たちが、あれこれと運び込まされている」
「なんで、わざわざ向こうでやるんです? この二階で不足なんですかねえ」
「いや、見ていた男兵によれば、お館様に食って掛かってたらしいぞ。それで、自分に好きにやらせろって談判したらしい」
「ええ──? なんですか、それ。あの女史、勘違いしてませんか? ここはお館様の城なのに」
不満そうにその女兵が言った。ほかの女たちも面白くなさそうな顔をしている。
オクタヴィア──。
一度だけ見たことがある。十日ほど前だっただろうか。あの黒衣の冷徹そうな女を、そばにいた女兵がそう呼んでいた。
「おい、それより、訓練は中止だ──。こいつらに、とりあえず身体を洗わせろ。それから準備がある。おまえら四人はそっちへ回れ」
「準備?」
女兵たちが顔を見合わせる。
「なんの準備です?」
「お館様だ。今日の晩餐に、そいつを呼んでる。その支度だ」
アルジェが顎をこちらへ向ける。
セリアは眼を大きくした。
晩餐──?
「晩餐って、なにすんですか? このふたりになにか余興でもさせるんですか?」
「ばーか、晩餐と言えば飯だろ。食うんだよ。晩飯を」
アルジェが呆れたように言った。
「飯って、誰が食べるんです? あたしらですか?」
「なんで、お前らが食うんだよ。ふざけんなよ。セリアと食うそうだ。レイシアもついでに連れて来いって言ってる。ドレスを着させるんだ。そっちの着付けは別のやつを送るから、お前らは晩餐の準備をして、そのまま給仕もやれ」
セリアは耳を疑った。
カイネウスとセリアが晩餐?
レイシアも一緒らしい。なにをさせられるのか……。
セリアは、眉をひそめた。
横を見る。
レイシアも意味がわからないらしく、セリアを見返していた。
「はあ。そりゃあいいですけど……。でも、なんでわざわざ服なんか。裸で喰わせればいいじゃないですか」
女兵のひとりが返した。
「お館様のご命令だ。とにかく、お前らは、そいつらを風呂に放り込んだら、三階に行け──。そこでお館様の指示を受けろ」
アルジェが女兵たちをぐるりと見回す。
「えっ、三階?」
「二階の専用室じゃないんですか?」
「そもそも、三階って、あたしらが入っていいんですか?」
女兵たちの声が重なった。
それまで気楽に笑っていた四人の顔から、完全に笑みが消えている。
三階──。
この館へ連れてこられてから、セリアはまだ一度も、その先へ足を踏み入れたことがなかった。そもそも、三階があるというのもいま初めて知った。
「入っていいから言ってるんだよ。余計な心配してないで、さっさと行け。向こうで指示があるだろ」
アルジェが追い払うように手を振った。
「はーい……。じゃあ、おふたりさん。今日はここまでだってさ」
「急いで。風呂、風呂」
女兵たちも、慌ただしく動き始めた。
レイシアの後手の縄を吊り上げかけていた鎖が外される。
「こいつの縄は、妃殿下が外してやんな。こっちは三階の準備があるから」
女兵のひとりはそう言い捨てると、もう台車の片づけを始めていた。
「おい、お前ら、待て」
アルジェがセリアたちを呼び止めた。
セリアたちは振り返った。
「お前らには二刻やる。身体だけじゃなく髪もきちんと洗って整えろ。お互いに手入れしておけ。二刻後に別の女兵を寄越す。そいつらがお前らの準備を手伝う。あとは従え」
アルジェがセリアたちに言った。
「……準備?」
「ああ。さっき言っただろう。お館様がお前にドレスを準備する。その着付けだ。ほかにも髪を結って、化粧して、その他諸々だ。それが晩餐じゃねえのか……。ああ、本当に面倒くせえなあ」
アルジェが大きく息を吐いた。
「さあ、行った行った。時間ないんだから」
ひとりの女兵がセリアたちを追い立て、矯正区域から居住区画側へ続く扉が開けられた。
セリアは、追い立てられるように、まだ後手に縛られているレイシアの肩を支えながら矯正室を出る。
背後で扉が閉まり、かちりと鍵の掛かる音がした。
すぐに、魔道錠が重ねてかけられたのがわかった。
扉の向こうから、女兵たちの慌ただしい足音が遠ざかっていく。
セリアとレイシアは、しばらくその扉を見つめていた。
やがて、どちらからともなく顔を見合わせる。
「……なんなんですかねえ?」
レイシアが困惑したように言った。
「……わからないわ。とにかく、身体を洗いましょうか」
セリアもそう答えるしかなかった。
この居住区画には専用の浴室がある。浴槽には、魔石具によって常に温められた湯がたっぷりと張られており、いつでも使うことができるのだ。
「あ、あの……セリア様……」
不意にレイシアが身じろぎを始めた。
「なあに?」
「その……それより先に、早く縄を……」
後手に縛られた腕を動かそうとしながら、レイシアが落ち着かなげに身体を揺らす。
「ああ、縄ね……。ごめんなさい」
「とにかく、さっき塗られた薬が……もう、かなり……」
レイシアの顔は真っ赤になっていた。
どうやら、女兵が訓練を続けるつもりで塗り足した薬が、いよいよ本格的に効き始めたらしい。
あの薬は、身体を昂らせるだけではない。
耐え難い疼きや痒みまで引き起こすのだ。
しかも、今日は、レイシアだけが塗り重ねられている。
レイシアは後手を縛られているため、自分ではどうすることもできない。
しかし、その様子を眺めているうちに、セリアの口元へ小さな笑みが浮かんだ。
セリアもレイシアも、このサロンで淫らな矯正を受け始めて随分になる。お互いに信じられないくらいに淫らな身体になったのを感じている。
だから、レイシアの困り果てた様子を見ているうちに、セリアの胸にちょっとした悪戯心が湧いてきた。
「ふふ……どうしようかな」
セリアはにっこりと微笑んだ。
「セリア様?」
レイシアが眉をひそめた。
「ねえ、たまにはいいわね。わたしがレイシアを洗ってあげる。そうしましょう。二刻もあるし」
「え……?」
「縄を解くのは、それからにしましょうか」
セリアの口から笑い声が漏れてしまった。
「冗談はやめてください。もう痒くなっているんです。早く洗わないと……」
レイシアが真っ赤な顔で訴える。
「あら。だったら、すぐ浴室へ行きましょうよ」
セリアは楽しそうに答えた。
「いや、その前に縄を解いてください」
「大丈夫よ。ちゃんとわたしが洗ってあげるから」
抗議するレイシアには構わず、セリアは後手を縛っている縄を掴んだ。
「さあ、行きましょう」
「ちょっと……」
レイシアは抗議するような口調で訴える。
でも、抵抗はそんなに強くない。
セリアは、困り果てた様子のレイシアを連れて浴室へ向かった。