※この作品はR-18です。

サロン・セルパンタンの五百日の調教記録──亡国の花と蛇の館   作:ドン・ドナシアン

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006 王太子妃の初矯正【第1日】

「──始めろ」

 

 カイネウスの声が落ちた瞬間、女兵たちの動きが揃った。

 左右、背後、下方に配置された女兵が同時に踏み込み、セリアの身体に一斉に手を伸ばしてくる。肩、乳房、腹部、腰、内腿へと、くすぐるように指を這わせる。

 セリアは息を呑んだ。

 

「──その手を放しなさい……。だ、誰の身体に触れているか、理解しているの……っ──あ……」

 

 思わず身体をのけぞらせる。

 しかし、四肢は上下に引き延ばされ、肩関節と股関節に張力がかかっている。わずかな動きでも肩と腕に鋭い痛みが走る。

 

「く……っ──」

 

 歯を食いしばる。

 女たちの指は執拗に絡みつくように動き、身体の奥からざわつく感覚を引きずり出してくる。胸の奥が締めつけられるように疼き、逃げ場のない身体が反応を強いられる。

 顔を逸らそうとするが、顎は固定されている。視線も動かせない。

 

 胸元に触れていた指が、中心を探るように触れ方を変える。

 腹部をなぞる手がゆっくりと上下し、呼吸の動きに合わせて圧を変える。

 内腿に入った手が、じわりと奥へ触れ、反射的な緊張を引き出す。

 

「……あ……っ、やめなさい……──それ以上は……ゆ、許しません……っ」

 

 声が乱れる。

 だが、言葉は崩さない。

 呼吸が詰まる。

 刺激は確かにある。だが、それ以上に関節へかかる負荷が強い。少しでも身じろげば、肩と腕に痛みが走り、身体の感覚が歪む。

 

「──待て」

 

 カイネウスが言った。

 女兵の手がぴたりと止まる。触れている位置はそのままに、動きだけが消える。

 

「どうしたのだ、将軍? よいところではないか」

 

 横からヴェルデンの声が入る。給仕の女に酒を足させながら、軽く肩をすくめている。

 カイネウスは姿勢を変えないまま、視線だけをセリアへ向けた。

 

「……いまの状態だと、少しもったいないかなと思ってね」

 

 静かに言う。

 

「もったいない?」

 

「苦痛が強すぎて、他の反応が潰れている」

 

「構わんだろう。どうせ、そのうち慣れる。いずれ、その苦痛すら快感と受け入れるようになる」

 

 ヴェルデンが笑う。

 

「それはそれでいいけどね。せっかくだから、もう少しわかりやすくしてあげよう」

 

 カイネウスは軽く息を吐き、視線をわずかに動かす。

 

「アルジェ──少し緩めろ」

 

「はい」

 

 アルジェが即座に応じ、ハンドルに手をかける。

 ゆっくりと巻き取られていた鎖が戻る。上方へ引かれていた腕がわずかに下がり、張力が調整される。

 爪先が床に触れる。体重の一部が戻る。

 

「……っ──」

 

 セリアの呼吸は乱れている。

 完全な解放ではない。だが、先ほどまでの一方的な痛みだけの状態ではなくなる。

 

「そのくらいでいいよ。じゃあ、再開しようか」

 

 カイネウスが言う。

 セリアの背筋が強張る。

 開放されたのではない。とことんセリアを嬲るために鎖を緩めただけだ。それはわかった。

 

「……ま、待ちなさい──。さっきから、わたくしになにをするつもりですか」

 

 息を整えきれないまま、それでも言葉を返す。

 

「ただの矯正だよ。いやなら、拒否すればいい」

 

 カイネウスがくすくすと笑う。

 

「きょ、拒否ですって……? だ、だったら、拘束を解きなさい──」

 

 セリアは声を張りあげた。

 

「その自由はないよ、隷属民セリア……。あなたは常に拘束される。檻の中で休むとき以外はね。それがこのサロンにおける隷属民の掟だ」

 

 隷属民──。

 また、その言葉……。

 

「あなた──自分のしていることが許されるとでも思っているの──。わたくしは王族です──。隷属民とはなんですか──」

 

 カイネウスは答えない。にやにやと微笑むだけだ。

 セリアは一瞬、声を失った。

 

 それにしても……。

 やはり、似ている。

 顔の傷で印象は大きく変わっている。それでも、眼差しや声の響きに、どうしても記憶を刺激されるものがあった。

 

 ──カイン。

 

 十年以上前、初めて恋を知った少年。

 一瞬だけ、その名が胸の奥に浮かぶ。

 だが、否定した。

 あり得ないのだ。

 カインは死んだのだ。父の命によって、殺された。

 ならば、似ているだけなのだろう。

 そうでなければ、おかしい。

 セリアは胸の奥に残った違和感を振り払った。

 

「続けて、アルジェ」

 

 カイネウスが指先を軽く動かした。

 その一言で、女兵たちの手が再び動き出す。

 四方から同じように、だが、先ほどよりも確実に身体へ入り込む。

 

「あっ、もう、やめなさい──」

 

 セリアの身体がびくりと反応し、思わず悲鳴をあげる。

 拘束している鎖が小さく鳴った。

 全身のあちこちに伸びた女兵たちの手が、先ほどよりも確実に、深く、セリアの身体に入り込む。

 肩から胸へ、腹部から内腿へ──指先が逃げ場を塞ぐように配置され、間を置かずに動く。触れられているというより、絡み取られている感覚だった。

 

「……っ、やめなさい──それ以上は許しません──」

 

 言葉は保とうとする。だが、呼吸がそれに追いつかない。

 胸が上下するたび、指先がそれに合わせて圧を変える。逃げようと力を入れれば、その反応に合わせて別の場所に触れられる。

 動きがすべて読まれている。

 

「……あ……っ、ああ……」

 

 喉の奥で音が漏れる。

 身体の内側から、熱がせり上がってくる。

 

「あなた方テレオロス人は二級民だが、このサロンに収容されるのは、さらに隷属民に区分されたものだ……」

 

 そのとき、カイネウスが軽く言った。

 耳に入る。しかし、女たちの愛撫が邪魔で頭でうまく処理できない。

 すると、何人かの刺激が指ではなく絵筆のようなものに変わった。穂先の柔らかいところで股間の茂みをくすぐられ、乳首をはかれる。

 その刺激に別の女の指が混ざる。

 

「くあっ、ああっ」

 

 戦慄のような身震いが襲う。

 

「……あなたももう隷属民……。立場も出自も関係ない。一切の権利を持たない最下位の階級だよ」

 

「……違う……わたくしは……っ」

 

 逃げ場がない。四肢は固定され、逃げるための動きそのものが刺激に変わる。

 いくら悶えても──この責めを防ぐ手段は、なにもない。

 肉体はすでに、制御を失いかけている。

 

「……やめなさい──やめ……っ」

 

 言葉が続かない。

 内腿を襲っていた指が、わずかにクリトリスに位置を変える。

 

「んくうっ」

 

 その瞬間、身体が跳ねる。

 鎖が鳴る。

 

「──っ」

 

 息が止まる。

 胸を押さえていた手が、呼吸の止まりを逃さず圧をかける。

 腹部にあった手が、収縮を確かめるように指を沈める。

 逃げようとした動きが、そのまま反応になる。

 

「……ま、待ちなさい──わたくしは──」

 

 言葉が崩れる。

 止めようとしているのに、身体が止まらない。

 

「ここは──ただ閉じ込める場所じゃない」

 

 カイネウスがさらに続ける。

 

「……選民意識の高い連中を、まともに使えるように矯正するための場所だ」

 

 内腿に触れていた指が、わずかに動く。

 

「……王侯貴族だった人間ほど、手間がかかるからね」

 

「……っ」

 

 セリアの身体が跳ねる。

 脚が震える。

 指先から逃れようとした動きが、逆に絡め取られていく。

 

「……っ、や……やめ……っ」

 

 呼吸が乱れる。

 どこに力を入れても、そこに触れられる。

 どこを逃がそうとしても、そこを捕まえられる。

 

 限界が近い。

 拒もうとするほど、深く引きずり込まれる。

 理解している。

 それでも止められない。

 

「矯正が終われば、このサロンで、僕たちフィロス人の慰安に使われる」

 

 カイネウスが言う。

 

「あ、ああ……。い、いあ……ん……?」

 

「……それが隷属民に与えられた役割だよ……」

 

「あっ」

 

 セリアは昂ぶった声を張りあげた。

 いきなり、セリアの前後の女兵がしゃがみ込み、前から女の羞恥の源と、後ろの穴を舌で舐め始めたのである。

 

「ば、ばかなことは──やめなさいっ」

 

 セリアは悲鳴をあげた。

 身体が大きく跳ねた。

 声にならない音が喉で潰れる。

 

「うあっ」

 

 セリアはうなじを大きくのけぞらせた。

 腰から背中にかけて、じんと切ない快感が走る。

 視界が一瞬、白く飛ぶ。

 

 身体が限界まで反れてぴんと張る。次いでがくりと脱力した。

 鎖が強く鳴り、固定された四肢がわずかに震え続ける。

 数瞬、時間が止まったように動かない。

 

「……っ……なに……を……」

 

 遅れて呼吸が戻る。

 自分の身体が何をしたのか、理解が追いつかない。

 

「結構、あっという間だったね、セリア妃。仮にも王族と名乗るなら、もっと我慢してみたら?」

 

 カイネウスが、肘をついたままその様子を見ていた。

 

「仕込みがいがあるな」

 

 ヴェルデンも陽気な声をあげた。

 

「これがサロン・セルパンタンだ──。矯正は毎日行われる、隷属民セリア」

 

 カイネウスが静かな口調で言った。

 セリアは肩で息をしながら、自分が晒してしまった醜態に歯噛みした。

 

「──だが、これで終わりか? 随分と大人しいな、将軍。これではただ弄んだだけだろう。王族を堕とすには、まだ足りんのではないか?」

 

 すると、ヴェルデンがカイネウスの横で軽く肩をすくめて笑った。

 視線は前方へ向けられている。拘束台に固定されたセリアの身体がその先にある。

 

「まだだよ。これは導入に過ぎない。ここでの扱いと自分の立場を認識させる必要がある。それが曖昧なままだと、矯正は効率が悪い」

 

 カイネウスは姿勢を変えず、視線だけをセリアへ向けて言った。

 

「随分と手間のかかる話だな」

 

 ヴェルデンが鼻で笑う。

 

「王侯貴族だった人間ほど、手間がかかる」

 

 カイネウスは短く返す。

 

「……は、恥を知りなさい……ふたりとも……」

 

 セリアの指先がわずかに震える。絶頂したばかりの身体はまだだるい。しかし、脱力したくなる身体を懸命に耐え、毅然としてふたりを睨む。

 

「恥を知るのはあなたの役割だ、隷属民セリア……。……アルジェ、次に進め」

 

 カイネウスが言った。

 

「はい」

 

 女兵たちの動きが変わる。

 

「首環を嵌めて、前屈の体勢で固定しろ」

 

 カイネウスの指示が落ちる。

 女兵が一斉に動いた。首元へ手が入り、金属の環が嵌められる。同時に、そこから伸びた鎖が床側の固定具へ繋がれた。

 同時に両手首に繋がっている鎖を緩められながら、首の鎖が床側に引っ張られていく。上体が前へ折れる。

 

「くっ、な、なにを……」

 

 腰を支点に背中が押し下げられて首は床側へ引かれ、上体が前へ折られる。腕の拘束は緩められているが、体勢を崩すこほどではない。

 前屈した格好のまま動かすことができなくなってしまった。

 

 その状態のまま、拘束台が動かされる。台座自体がもともと動かせるようになっていたようだ。車輪がからからと床を転がり、カイネウスたちのすぐ前に移動させられた。しかも、向きが変えられ、前屈したセリアの尻側が、カイネウスたちに向けられる。

 

「こ、こんなこと……」

 

 お尻の穴を男たちの目の前に晒すという、息も止まるかのような浅ましい格好をさせられ、さすがに真っ赤に火照った顔を左右に動かして悲鳴をあげた。

 

「ほう、妃殿下の尻の穴か。まさか、そんなものが見られるとはな」

 

 ヴェルデンが愉しそうに声をあげた。

 その声があまりにも近く、セリアは憤怒と口惜しさに歯ぎしりした。

 

「アルジェ、痒み油を塗ってやって。尻の穴にね」

 

 すると、カイネウスが事も無げに言った。

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