※この作品はR-18です。

サロン・セルパンタンの五百日の調教記録──亡国の花と蛇の館   作:ドン・ドナシアン

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074 恋人たちの堕天【第28日】

「ついでだ。ここにも塗ってやるよ」

 

 ヤンが後ろから脚のあいだに手を伸ばして、さっきの射精で力を失っていた男根に手で掻痒剤を塗りたくりだす。

 

「ああ、そこだけは、やめてくれ──」

 

 アルトは狼狽して声をあげた。

 しかし、足首のあいだに棒枷を嵌められ、両手が背中で後手縛り──。さらに、男たちに押さえられて、アルトには抵抗の手段がない。

 掻痒剤には、痒みだけでなく、身体を疼かせる媚薬成分が混じっていることは、もう肌身でわかっている。そのうえで一物を愛撫され、ヤンの手の中で男根は固くなり、どうしても口から喘ぎ声が出てしまう。

 

「ははは、こんなものだろう。じゃあ。色男──。のたうち回りな」

 

 ヤンがアルトをほかの男兵とともに押さえながら、平手で高尻を強要されているアルトをの尻たぶをぱちんと叩いた。

 アルトは顔をしかめる。

 

「ああ、だめだ──またっ」

 

 そして、効果は瞬時に現れた。

 アルトは襲い掛かってきた尻穴の痒みに、必死になって拘束されている身体を揺さぶる。

 

「しっかりしなよ、兄ちゃん。恋人が見てるぜ」

 

「まあ、無理もねえけどな」

 

 すると、左右からアルトを押さえるふたりの男兵が、面白がってアルトの太腿を手のひらで撫でさすり、指先で男根の先端やお尻の穴をとんとんと軽く突いたりしてくる。

 そのひとつひとつが淫靡な責めとなり、アルトに切ない被虐の欲情を沸き起こす。

 

「く、くそう──もう殺せ──。ひと思いに殺してく──お願いだ──」

 

 アルトは逆上して叫んだ。

 

「ああ、わかりました。アルトのお尻を犯します。ですから──」

 

 そのとき、リネアの泣き声混じりの焦った声が背後から聞こえた。

 

「リネア──。いやならいい──。しなくていいんだ──」

 

 アルトは身体を捩った。だが、押さえつける男たちの腕はびくともしない。

 

「……違うの……アルト、あたしもまだ苦しい……。一緒に堕ちて……。あたしと一緒に堕ちてよ。お願いだから……」

 

 背後から聞こえるリネアの泣き声が、さらに大きくなる。

 

「リネア……」

 

 その悲痛な声を聞き、アルトは抵抗を止めた。

 

「ほら、恋人がああ言ってるじゃねえか。どうするんだ?」

 

 腰側を押さえつけているヤンが笑う。

 アルトは、床に押しつけられている首をわずかに振った。

 

「わ、わかった……僕も堕ちる……。君と一緒に、このサロンの地獄に落ちる……。わかったから……もう、好きにしてくれ」

 

 アルトは意を決して言った。

 

「いい覚悟よ。じゃあ、リネアの拘束は解いてあげるわ。でこの双頭の張形でアルトを犯しなさい」

 

「はい……」

 

 背後で、金具の外れる音がした。

 続いて、ローランがなにかをリネアへ手渡すら気配もする。リネアの息を呑む声が聞こえた。

 

「リネア、自分のを刺激して楽になろうとしては駄目よ。この双頭の張形でアルトを犯しなさい。楽になるのは一緒によ」

 

「……わかりました……」

 

「これを使うのよ」

 

「え……。それ……」

 

 リネアが息を呑んだ。

 だが、そこから先の言葉が続かない。

 ぬちゃ、と粘り気のあるものを掌で伸ばすような音がした。

 続いて、なにかを擦り合わせるような湿った音。

 

「ひっ」

 

 リネアがまた小さく息を詰めた。

 アルトには、背後でなにが行われているのかまではわからない。

 ただ、リネアの反応だけで、それが彼女にとって嫌な意味を持つものだということはわかった。

 

「……アルト……ごめんなさい……」

 

 リネアがさらに近づく気配を感じた。彼女の声は震えている。

 やがて、柔らかな両手がアルトの尻たぶの横にそっと触れる。

 アルトは眼を閉じた。

 もう、覚悟は決めている。

 身体から力を抜く。

 

 せめて、リネアには怖がらせたくなかった。

 自分を傷つけているのだと思わせたくもなかった。

 

「大丈夫だよ、リネア……。僕は、もう大丈夫だから……」

 

 アルトは掠れた声で言った。

 

「潤滑油は十分よ。最初だから犯すだけでいいわ。演出不要よ。ただ貫きなさい──」

 

 ローランがリネアに告げている。

 

「ううっ」

 

 アルトは呻いて、身体をわずかにのけぞらせた。

 痒みで気が狂いそうになっていた尻穴に、張形が入りこんできたのだ。わずかな痛みと、それを圧倒する快感が襲いかかる。張形の表面で肛門の中の粘膜が擦られて、痒みが小さくなっていく。

 

「あっ、あっ、アルト──」

 

 リネアの下腹部がぴたりとアルトの臀部に押しつけられたのがわかった。

 

「その道具は少し特殊なのよ。外側に加わった刺激が、反対側にも伝わる仕組みになっているの。せっかくだもの、二人で楽しみなさい」

 

 ローランの声が背後から聞こえた。

 ただ、リネアはしっかりとアルトのお尻に股を密着させたまま、動こうとはしない。

 

「リネア、そのまま止まっていたって、お坊ちゃんは楽にならないわよ。怖がらないで、ちゃんと動かしてあげなさい」

 

「は、はい……」

 

 リネアは返事をした。

 しかし、やはり次が来ない。

 

 アルトは歯を食いしばる。

 先ほど一瞬だけ和らいだ痒みの苦しさが、またじわじわと戻ってきたのだ。

 

 早く……。

 頼むから、早くしてくれ。

 そんなことを考えている自分自身が信じられなかった。

 それでも、もう耐えられない。

 

「ああ、頼む、リネア──」

 

 掠れた声が漏れた。

 

「えっ?」

 

「もっと……ちゃんとやってくれ──」

 

「あっ、はいっ」

 

 リネアが慌てた声をあげた。

 直後、止まっていた張形の動きが始まった。アナルを貫いていた張形が外に引き出されていく。

 

「おっ……おおっ……」

 

 思わず声が出る。

 駄目だ──。これは気持ちよすぎる──。

 そして、入ってくる。アルトは吠えるような声をあげた。

 背後からはリネアの荒い息遣いも聞こえてくる。淫らな喘ぎ声も──。

 しばらくのあいだ、リネアによるアルトの肛姦が続いた。

 

「あ、ああもう我慢できない──」

 

 やがて、アルトは声をあげて、股間に込みあがったものを一気に解放させた。

 名状のできない快感が頭の芯まで貫いたかと思うと、腰の前で屹立していた股間に熱いものが通り抜ける。

 

「おっ、おおっ」

 

 気がつくとアルトは股間から激しく白濁液を続けざまに噴き出させてしまっていた。

 

「はい、そこまで。いったん抜きなさい」

 

 ローランが命じた。

 背後でリネアが動き、やがてアルトのお尻からずぶずぶと張形が離れていく。そこでも、またアルトは情けない声を出してしまった。

 

「へへ、なかなか面白かったぜ。可愛いお嬢ちゃんが兄ちゃんの尻を犯して、兄ちゃんが女みたいに喘ぐのはよお」

 

 ヤンが嘲笑の口調で言った。ほかの男兵ふたりも笑っている。

 しかし、アルトにはもう反抗の心はほとんどない。ただ荒い息をしたまま顔を伏せている。

 

「やめなさい、ヤン──。まあ、見世物としては悪くないわね。でも、次はもっと魅せることに注意しなさい。リネアは坊っちゃんの前に行きなさい」

 

「はい……」

 

 足音がアルトの背後から離れ、そのまま頭の方へ回ってくる

 

「すぐに、もう一度いくわよ」

 

 ローランは淡々と言った。

 

「もう、一度……? なあ、待ってくれ。少し休ませてくれ」

 

 アルトは思わず言った。

 

「却下。矯正への反撥の罰は、リネアに受けてもらいましょうか」

 

「えっ?」

 

 アルトの前へ回りこもうとしていたリネアの尻たぶに、ローランが腰から抜いて、素早く伸ばした黒い棒杖の先端が触れた。

 

「あぎいいっ──」

 

 リネアの膝から力が抜け、その場で身体が崩れる。

 

「やめろ──。僕が言ったんだ」

 

「だからよ。あなたが弱音を吐けば、つがいであるこの子が払う。覚えておきなさい」

 

 アルトは歯を食いしばった。

 

「リネア、立ちなさい。こっちへ来て」

 

 ローランは、何事もなかったように次の指示を出した。

 リネアがアルトの顔の前に立つ。

 彼女の股間には、やはり双頭の張形の半分がしっかりと嵌まっていた。亀裂の外側はそこから伸びた張形がリネアの股間から生えたようにそそり勃っている。

 ねらねらと体液で光っている。

 

「次に入る前に、綺麗にしてもらいなさい。そのまま二回目よ。今度はもっと、見せ方にも気をつけてね……。リネアはもっと積極的に動きなさい。それと喘ぎ声は意識して派手に。そっちが見栄えするから」

 

 ローランは事も無げに言った。

 だが、アルトは思わず眉をひそめる。

 綺麗にするだと──?

 

 一瞬、意味がわからなかった。

 だが、床に押さえつけられていた顔を引きあげられ、眼の前にリネアが立たされたことで、アルトにもようやく、なにを求められているのかわかった。

 このまま口できれいに舐めとれと言っているのだ。

 たったいままで、アルト自身の肛門の中に入っていたものを……。

 

 さすがに憤怒が込みあがる。

 奥歯を噛みしめた。

 そして、拒絶の言葉が喉まで出かかった。

 

「あっ……うぅ……」

 

 そのとき、リネアが小さく身を震わせた。

 首を傾げた。

 ふと見ると、リネアの顔も首筋も赤く染まっている。息は荒く、落ち着かないように身体を何度も捩っていた。

 アルトは、はっとした。

 

 まだ痒いのだ──。

 自分はさっきのことで、少しは楽になった。

 だが、リネアは違う。

 あの気が狂いそうな痒みが、いまも身体を襲い続けているに違いない。そういえば、この双頭の張形をローランがリネアに渡すとき、潤滑油を塗らせている気配がした。

 おそらく、掻痒剤をそのまま使わせたに違いない。

 

 そう気づいた瞬間、喉まで出かかっていた拒絶の言葉が消えた。

 もう迷わなかった。

 アルトは口を開いた。

 そして、自分からリネアの股間から突き出ている張形を口に受け入れた。

 

 ──一緒に堕ちよう。

 

 心の中で、もう一度そう声を掛けながら……。

 

「ああ、アルト、そんな──」

 

 頭上からリネアの震える声が降ってきた。構わず、アルトは舌だけでなく口全体を使って、張形を強く擦った。

 

「あっ、ああっ、あああ、アルト──」

 

 リネアが激しく身体を震わせた。

 アルトは返事の代わりに眼を閉じた。激しい口吻はそのまま──。いや、一層強くする。

 リネアの反応がさらに大きくなる。

 

 もう言葉にする必要はなかった。

 

 ──一緒に堕ちる。

 さっき交わしたその言葉だけが、二人のあいだに残っていた。






【作者より】
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