サロン・セルパンタンの五百日の調教記録──亡国の花と蛇の館 作:ドン・ドナシアン
「……以上が、現在のサロンの運営状況です」
カイネウスは手元の報告書を閉じた。
長机を挟んだ会議室に、しばし沈黙が落ちる。
会議室の奥となる元帥側にはバルザック元帥、その隣にガレス、さらに暫定政府側の人間としてヴァルデンが座っている。
向かいにはカイネウスを中心に、事務方を取り仕切るローラン、警備隊長であり一般囚の官房長のダン、魔道技師主任のエリナ、そのほか各部門の責任者、または副責任者たちが五人ほど並んでいた。
本来ならば、主任矯正官のオクタヴィアもここにいるはずだ。組織的にはカイネウスに次ぐサロンの責任者であり、元帥を迎えての正式な報告となれば、欠席するような立場ではない。
しかし、オクタヴィアは別棟にいた。
今回のためにわざわざ連れてきた聖女クラウディアを数日前から別棟へ連れ込み、そのまま籠もってしまっているのだ。
カイネウスは、好きにさせることにした。
机上には、収容者数、収容区分、人員配置、物資の出納、施設の稼働状況などをまとめた報告書が人数分置かれている。
カイネウスが概要を説明し、必要に応じてローランが補足するかたちで、ひと通りの報告は終わっていた。
「いくつか確認しておきたいことがあります」
最初に口を開いたのはガレスだった。
「どうぞ」
カイネウスは椅子の背へ軽く身体を預けた。
「まず、収容者の処遇についてです。報告書を読む限り、収容区分の変更、担当者の選定、矯正方針の決定に至るまで、かなり広い範囲が現場の裁量に委ねられているようですが、最終的な決裁はすべて将軍が行っているという理解でよろしいですか」
「重要な案件については、そうなりますね」
カイネウスは答えた。
「王都にある共和国の暫定統治機構との連携要領について教えてください」
「必要があるものについては、事前に報告することにしております」
「では、これまでに事前報告を踏まえて進めた事項については?」
ガレスは間を置かずに訊き返した。
「皆無ですね。これまで必要性を感じたことはありませんので」
「つまり、一度もない。このサロンは、王都に所在する暫定統治機構の管理下にあります。重要な案件については、暫定政府への事前報告を要すると文書で規定されております」
「はっきりしない指摘ですね。具体的にどの案件がそれに該当すると?」
カイネウスは返した。
「その質問自体が問題なのです。なにを重要案件とみなすかまで将軍ひとりの判断に委ねられている。将軍が必要ないと判断すれば、事前報告を要する案件は永遠に存在しないことになる」
ガレスは報告書から顔を上げた。
「現場を知らぬ者に、いちいち判断を仰ぐ方が非効率でしょう」
「効率を理由に監督そのものを排除してよいという話にはなりません。収容者の区分も、担当者も、処遇も、例外措置も、すべて将軍が決める。その判断を覆す者も、検証する者もいない。これでは共和国が将軍に施設の運営を委ねているのではなく、将軍個人が施設を所有し、共和国がそれを追認しているのと変わりません」
ガレスはきっぱりと言った。
「サロンの運営については、サロン管理者として任命されている僕の専管ですよ、それが文書化されてます」
「その通りです。ただ、事前承認は要せずとも、重要案件については事前報告を義務づけてもいます。将軍はそれを一度もしていません」
「同じことを繰り返すのですね。その必要性を感じなかったからです」
「少なくとも、王太子妃の管理については、共和国の暫定統治機構も重要視している事項です」
「……彼女は僕のものです……。誰にも口を出させない」
カイネウスはそれだけを言った。
「サロンは、将軍の私物ではありません」
「……そんなことはわかっている……」
カイネウスは露骨に眉を顰めた。
「制度として見れば、そう評価されても仕方がないと申し上げています。将軍が明日、収容者の扱いをすべて変えると決めても止める仕組みがない。将軍が不在になれば、誰が同じ権限を継承するのかも明確ではない。施設の権限と将軍個人の権限が分離されていません」
ガレスは淡々と言う。
「ここは僕が作った施設です。僕が責任を持って運営している。それで十分だと思いますがね」
「その考え方こそが問題なのです」
ガレスは表情を変えなかった。
「さらに申し上げれば、アルジェ隊も同じです。彼女たちは共和国軍ではない。政府機関にも属していない。将軍が個人的に雇用している傭兵団ですね」
「そうです」
「その私的な武装集団が、共和国の統治下にある施設で警備、護送、収容者の管理に恒常的に携わっている。戦時中であれば、軍事上の必要から例外的な運用が認められることもあるでしょう。しかし戦争は終わりました。戦時の便宜を、そのまま平時の制度にしていただいては困ります」
「これまでアルジェ隊について問題にされたことはなかったはずですが?」
カイネウスは不満を隠さず言った。
「戦時中だったからです。王国軍との戦闘が続いている最中に、将軍直属の傭兵隊が一部の任務を担っていることと、占領統治が始まったあとも共和国の施設内部で独自の指揮系統を維持していることは、まったく別の問題です」
ガレスは即座に返した。
「彼女たちはここでは共和国軍より役に立っています」
「能力を疑っているのではありません。所属を問題にしています。優秀だから私兵を政府施設に置いてよいという理屈を認めれば、共和国の将軍は誰でも自前の武装集団を持ち、自分の管轄地に配置できることになる」
「問題が起きれば、僕が責任を取ります」
「それでは共和国という国家を置く意味がありません。将軍個人が責任を負うという言葉で済むのであれば、法も指揮系統も必要なくなる。アルジェ隊がここで行ったことは、外から見れば共和国の行為として受け取られます。しかし共和国政府には彼女たちを直接命令する権限がない。その状態を正常とは言えません」
ガレスの声は終始静かだった。
それだけに、言葉は容赦なくカイネウスの痛いところを突いてくる。
「要するに、大佐は僕からこのサロンを取り上げたいわけですか」
「違います。将軍のサロンではなく、共和国のサロンにしろと言っているのです」
会議室の空気が、僅かに張り詰めた。
カイネウスは苦笑気味に周囲を見た。部下たちがどういう表情をしているのかに興味があった。ここにマルティナやアルジェでもいれば話は違っただろうが、ガレスの演説じみた糾弾に対して、まるで存在しないかのように、彼らが静かだったからだ。
サロンの事務方トップのローランは無表情のまま手元の書類を揃えている。
ダンも口を挟むつもりもないみたいだ。
エリナは面倒事には関わりたくないとでもいうように、視線を机上へ落としていた。
「ガレス」
すると、そこでバルザックが声を出した。
「はい」
「そのくらいにしておけ」
「しかし、元帥閣下」
「もうよい。この件については、ここまでにしておこう。必要なことは聞いた。細かな問題については、王都へ戻ってから改めて整理すればよい」
バルザックが議論を打ち切った。
「承知しました」
ガレスは不承不承そうに頷く。
バルザックが手元の報告書を閉じた。
「それでは元帥閣下、このあと少しお時間をいただけますか。別室に休憩の場所をご用意しております。サロンのご滞在のあいだ、個人的なお世話をする者も準備しておりますので」
カイネウスは声を掛ける。
「ほう。個人的な世話……か」
バルザックは意味を察したらしく、僅かに口元を緩めた。
「元帥閣下……」
ガレスが横から低い声を出した。
「なんじゃ? せっかく用意してくれたというのだ。断ることもあるまい」
バルザックは少し愉快そうに答えた。
「私はなにも申し上げておりません。しかし、私も同行いたします」
ガレスは当然のように言った。
「いえ、大佐にはヴァルデンと施設をご覧いただこうと思っています。好きなところを回ってもらって構いません」
カイネウスは柔らかく断った。
「私がいては差し障りでもあるのですか、将軍?」
「まさか。先ほどのご指摘もありましたからね。せっかく政府側から来られたのです。報告書だけではなく、実際の運営状況もご自分の目で確認していただいた方がよいでしょう」
カイネウスはさらりと返した。
「ガレス、行ってこい。せっかくの機会だ」
バルザックも促す。
「元帥閣下がそう仰るのであれば……」
ガレスがようやく引き下がった。
「俺が案内いたします、大佐」
ヴァルデンがガレスに声をかける。
「承知した。では、ヴァルデン殿、よろしく頼む」
ガレスがやっと立ちあがった。
一方でカイネウスは、バルザックを会議室のすぐ隣にある小さな接待室に案内した。
部屋には装飾らしい装飾はほとんどない。
壁際に小卓がひとつ置かれているほか、目につく家具といえば三脚のソファだけだった。
中央には、ひときわ大きく豪華な一人掛けのソファが据えられている。その左右には、それぞれ中央のソファに対して直角になる向きで二人掛けのソファが置かれ、互いに向かい合う配置になっていた。
「こちらへどうぞ」
バルザックが中央のソファへ腰を下ろす。カイネウスはその左手側、中央のソファへ身体を向ける位置にあるソファへ腰掛けた。
「すまんな。あいつは、お主と共和国政府の取り決めを知らんのだ」
一転して、バルザックが眉を下げて言った。
「構いませんよ。僕がこのサロンを渡されて好き勝手をしている。そんな声が蔓延しているのは承知しています。実際、その通りですしね」
カイネウスは喉の奥で笑った。
「暫定統治機構の連中には、そなたが王国の良家の令嬢や令夫人を集めて、そなたひとりだけいい思いをしているという羨みもある。それが、そのままサロンへの批判に繋がっているところもあるのだろう。ガレスは堅物だがな」
バルザックが苦笑のような表情になる。
「彼はずいぶんと攻撃的でしたね。僕は彼に恨みを買った覚えはないんですけど」
カイネウスも苦笑する。
「そなたは移民だ。それでいて、今回の王国滅亡においては最大の功労者でもある。共和国で生まれ育った者からすれば、面白く思わぬ者がいても不思議ではない。そういうやっかみを持つ者は、ガレスに限らず少なくないぞ」
「なるほど。まあ、せっかくここまで来てもらったんです。彼にも少しくらい愉しんでもらいましょう」
カイネウスは右手を軽く上げて、奥へ合図を送った。
気配は感じさせないが、しっかりとこちらを見張っているはずだ。
すぐに奥側の扉が開く。
最初に入ってきたのは、女兵隊副隊長のアグネスだった。
三十歳。背が高く、すらりとした身体つきをしている。
もっとも、アグネスはアルジェたちのような傭兵らしい軍装ではない。淡い色の上衣に足首まで隠れるスカートという、王都の役所にでもいそうな女性官吏を思わせる服装をしている。
女兵隊の副隊長ではあるものの、アグネスが戦場で剣を振るうことは滅多にない。
隊内では連絡、調整、物資、人員管理などの裏方を担うことが多く、必要とあれば身分や服装を変えて敵地へ潜り込む。諜報や潜入任務については、アルジェも全面的に信頼している女だった。
そのアグネスに続いて、軍装姿の女兵がふたり入ってくる。
さらに、その後ろから五人の若い令嬢たちが姿を現した。
ミレーヌ、ノエラ、エステル、リディ、フローラ──。
今回、バルザックの身の回りの世話をさせるために選んだ五人である。
もともとは一般囚として収容されていた娘たちだった。
だが、今回の接待が終われば一般囚から正式に引き上げ、準特別囚として特別囚たちの身の回りの世話をさせるつもりでいる。
そのための準備も、すでにエリナに任せてあった。
五人の身体には魔核が埋め込まれ、魔工術を用いた幾つかの肉体調整も施されている。
カイネウスに言わせれば、少々愉快な仕上がりだった。
元帥にも気に入ってもらえるだろう。
五人は緊張した面持ちで、それぞれ盆や酒瓶、果物、菓子、そのほか接待に使う品々を抱えている。
まだ拘束具の類はつけていない。
服もきちんと着せていた。
ただし、普通の令嬢が人前で着るようなものではない。
五人とも肩から腕を大きく露出する袖のない短いドレス姿だ。色は五色──。白、赤い赤、淡い青、黄色、淡い緑色。
襟元は胸元へ向かって深く切れ込み、脇も大胆に開いている。そのため、少し身体を動かすだけでも、上からも横からも胸元の輪郭が覗いてしまう。
丈もひどく短い。
裾は太腿の半ばより上にあり、五人とも脚の大部分を惜しげもなく晒していた。
靴が履かせておらず、裸足である。
五人の表情には隠しようのない緊張が浮かんでいた。
少し前まで貴族の娘として暮らしていた者たちが、いまは共和国軍元帥の前へ、この格好で接待役として立たされている。
それだけでも十分に屈辱的なはずだ。
「元帥閣下、女兵隊副隊長のアグネスでございます。ご滞在中の接待について、わたしが取り仕切らせていただきます」
アグネスが一礼する。
「よろしく頼むよ」
バルザックは上機嫌だった。
「さあ、ノエラ」
アグネスが名を呼んだ。
「はい」
五人の中からノエラが一歩前へ出る。
彼女の手は、長い黒色の棒状魔道具があった。
ノエラはそれを両手で持ち、バルザックへ差し出した。
「こちらをわたしたちにお使いください。手元の切替器で機能を変更できます。電撃を発生させることもできますし、先端を振動させることもできます。また、表面に細かな綿毛を発生させ、刺激用の道具として使用することも可能です」
ノエラは感情を見せず、淡々と説明した。
バルザックは黒棒を受け取り、手元を眺めた。
「ほう。これ一本でそこまでできるのか」
「はい。強さも数段階で調整できます」
「面白いものを作るな」
バルザックが機嫌よく笑った。
「エリナの玩具ですよ。あれは便利なものを作るときほど、妙な機能を付けたがりますから」
カイネウスは補足した。
「では、五人とも順に元帥閣下へご挨拶を」
アグネスが命じた。
五人の表情がさらに硬くなる。
カイネウスはそれを面白く眺めた。
ただ名前を名乗るだけではない。自分がかつて何者であったのか。そして今、このサロンでどのような身体に変えられているのか。それを自分の口で説明させるよう、あらかじめアグネスには言ってある。
ひとりが──ミレーヌが前に出て、バルザックのすぐ前に立つ。
彼女が持っていたものは、アグネスとともにいた女兵がいったん受け取った。
「ミレーヌと申します。旧テレオロス王国ラシェル子爵家の娘でございます。王都では貴族学校に通っておりました」
そこまでは、普通の令嬢らしい挨拶だ。
問題はここからだ。
ミレーヌは一度口を閉じた。
「続けなさい」
アグネスが静かに促した。
「は、はい。現在は一般囚として収容され、魔道技師主任エリナ様の実験対象となっております。魔核によって身体の一部の肉体感度を大幅に高められ、さらに分泌機能についても通常とは異なる調整を受けております」
言い終えるころには、頬が赤くなっていた。
カイネウスは思わず口元を緩めた。
「ほう、貴族学校の学生だったのか。共和国は王都を制圧したあと、旧王国の貴族を対象とした学校をすべて閉鎖させた。そなたたち旧王国貴族には、もはや教育を受ける権利も認められておらん。残念に思うか?」
バルザックが意地悪く訊いた。
「いいえ。わ、わたしたちはすでに貴族としての身分を剥奪されております。共和国に従属する隷属身分ですので、教育を受ける権利がないのは当然のことだと理解しております」
ミレーヌは少し言葉を詰まらせながらも、淡々と答える。
「自分でそう言えるようになったか」
「はい。わたしはもう子爵令嬢でも、貴族学校の学生でもありません」
ミレーヌは顔を伏せずに答えた。
その声にはまだ僅かな震えが残っている。
カイネウスには、それで十分だった。
「一部の肉体感度を上げられたと言ったか?」
「はい……。乳房を……ク、クリトリスのように敏感にされております」
「乳房を?」
バルザックが一瞬眼を見開いたかと思うと、好色な笑みを浮かべて、さっき渡された黒棒の先端をすっとミレーヌのドレスの横の隙間に差し入れた。
すでにぶるぶると激しく振動させている。
それを乳房の裾に当てた。
「ひっ、ひああっ」
その瞬間、ミレーヌは悲鳴のような声をあげて喘ぎ悶える。
両膝をその場で崩しそうになり、慌てて真っ直ぐに立ち直した。
「ほう、これはすごいな。たいしたことはしておらんぞ」
バルザックが笑いながら、振動する棒の先でぐいぐいと彼女の乳房に押し続ける。
「んんんっ、んああっ、あああっ」
ミレーヌの乳房は、通常の十倍以上の感度に引きあげられているとエリナには教えられていた。しかも、魔核を使ってクリトリスの感覚に直結されている。彼女にとって、乳房を刺激されるのは、クリトリスを愛撫されるのを全く同じなのだ.いや、感度を鋭敏にされているために、それ以上だろう。
「あ、ああ──だ、だめっ、た、立って──立っていられません……。あああっ」
ミレーヌが身体を震わせながら激しく身悶える。バルザックは振動する棒の先で乳房の横を動かし、先端に当て、あるいは反対の乳房に移動したりする。
それでも、ミレーヌは、振動する棒を避けようとはせず、必死に脚を踏ん張っている。
「いくときには、ちゃんと閣下の許可を頂くのよ。無許可で達しないようにね」
列の横に立つアグネスが静かに告げた。
「ああ、い、いきそうです──、か、閣下──ご、ご許可を──」
ミレーヌが切羽詰まった声をあげた。
「わかった。いけ」
バルザックがぐいと強く棒の先を押しつけた。しかも、振動を最大限にして、乳首付近に押し当てたのがわかった。
「あああっ、いくうっ、いっちゃいます──」
ミレーヌががくがくと腰を痙攣させて快感の頂天に到達する。
その刹那、身につけさせていたドレスの乳首部分が一瞬にして丸く濡れ、それでも阻止できなかった母乳が布越しに両方の乳首から飛び出す。
「おお、こりゃあ、すごいのう。母乳か」
バルザックが棒をミレーヌから離して大笑いした。
「ほら、ちゃんと説明をしなさい」
アグネスが絶頂したばかりで、まだ小刻みに膝を震わせているミレーヌを叱咤した。
ミレーヌは慌てて、口を開く。
「……はあ、はあ、はあ……。ぜ、絶頂すると……男の方の……射精の代わりに……母乳を……噴き出すように……肉体変化……していただきました」
ミレーヌが説明する。
少し前まで貴族学校で礼儀作法でも学んでいただろう娘が、いまでは共和国軍元帥の前で、自分に施された身体改造について報告している。
なかなか悪くない趣向だろう。
「いいじゃろう。あとでもっと遊んでやろう。では、次──」
バルザックが言い、アグネスが次の令嬢を促した。
さっきのノエラという娘だ。
彼女が持っていた荷をまた女兵に預けて、ミレーヌと入れ替わって前に立つ。
ミレーヌは、荷を受け取り直して列に戻っている。
「……ノエラと申します。旧王国の騎士爵家の娘であり、私自身も騎士として勤務しておりました。現在は一般囚として収容され、ミレーヌ様と同じように絶頂とともに母乳を射精する肉体変化をしてもらいました」
ノエラはミレーヌほど表情を崩さなかった。
それでも、自分の身体を改造されたと元帥の前で説明することを快く思っているはずはない。
「お前も、乳房が敏感なのか?」
バルザックが笑う。
「い、いえ……母乳を噴き出すのを除けば……普通です……。でも、手と足を切断されております。そのような身体の女を抱くのがこのお好みのお方に愉しんで頂けると思います」
ノエラが説明する。
「四肢を切断だと? 普通に立って動いておるではないか、腕もおかしなところはないがのう」
バルザックが首を傾げた。
「いえ、これはエリナ様につけていただいた、義手と義足です。戦闘能力そのものは以前より高くなっています。ただし、サロンの方々のご命令によって人工肢は機能停止、または取り外しが可能です」
そこまで言って、ノエラは口を閉じた。
「なるほど。騎士をそのまま作り替えたわけか」
バルザックが興味深そうにノエラを見る。
「護衛としての役割も果たしますよ。戦闘用の特別肢ですから。おそらく、並の男騎士が束になっても、かなわないかもしれません」
カイネウスが付け足す。それもまたエリザの趣味だ。強靱な女騎士が合言葉ひとつで四肢をもがれて無力になるのが面白いのだそうだ。
まあ、よくわからんが……。
「なるほどのう。ではあとで可愛がってやろう。四肢を外して、掻痒剤をたっぷりと股に塗ってやろう。どんな風にもがき苦しむのか愉しみじゃ」
「お、お手柔らかにお願いいたします……」
バルザックの言葉に、ノエラの顔が完全に引きつっていた。
三人目はエステルだった。
「エステルと申します。旧王国伯爵家の五女でございます。二十二歳。王都では教師をしておりました。現在は実験補助を務める一方、わたし自身にも魔核による感覚制御処置が施されております。快感に対して、自分の意思では絶頂できないよう肉体制御され、許可があるまで、絶頂寸前の状態を維持するよう調整されています」
「王国の元女教師か。つまりは、許可なく絶頂できん、快楽袋ということか。愉しみじゃ」
エステルについては、資料を改めて読んだが、二十二歳にして女教師として一人前なだけではなく、幾つかの学術的な研究成果も出している大変な才女だった。
その彼女がいまは、エリザの狂った人体実験の犠牲者だ。
気の毒だとは思う。
「リディと申します。旧王国の男爵家の娘です。十八歳です」
四人目のリディは、明らかに緊張していた。
声もほかの三人より少し小さい。
「……王国滅亡前までは、婚約者がいたようです。行方知れずになっており、こいつはここに収容されてしまいましたが」
アグネスが付け足す。
「……現在は魔核による身体感覚の改変を受けています。身体のほぼすべての場所が、通常より遥かに強く刺激を感じるよう調整されています」
最後のところだけ早口になった。
「わかりやすく言いなさい。全身性感帯の女だと──」
アグネスが横から付け足す。
「は、はいっ──。全身性感帯です──」
リディアが叫ぶように言った。
「全身性感帯?」
バルザックは面食らっている。
「最初のミレーヌの全身版ですね。身体のあちこちが鋭敏になっていて、例えば、指先だけで達してしまうようにされているようです」
カイネウスは言った。
「これも興味深いのう」
バルザックの相好が完全に崩れた。
「最後」
アグネスが言った。
「フローラと申します。旧王国の男爵家の娘です。実家と関係のある商家で働いておりました。現在は、魔核と魔工術による身体構造そのものの変更実験を受けています」
フローラはそこで言葉を止めた。
カイネウスには、その先を言いたくないのがよくわかった。
「具体的に」
アグネスが淡々と命じる。
「……はい。男性と女性、双方の身体的特徴を持つように改変されています」
フローラは顔を真っ赤にして俯いた。
「ほう。つまりは、男性器を持つということか……。お前のような可憐そうな外見で、立派な一物をもっておるのか? 見せてみよ」
バルザックが大笑いして声を上げた。
「あっ、いえ、興奮したときだけで……。いまは普通で……」
フローラは真っ赤になっている。
「エリナに任せておくと、こうなります.僕もまだ見てないですけど、実際に確かめた女兵たちによれば、快感とともに立派なものが生えてくるようです。射精もできるらしいですよ。愉しみ方は千差万別でしょう」
カイネウスは苦笑した。
「そりゃあ、いい。すぐに見るのも惜しいわ。あとでゆっくりと見聞するか」
バルザックが手を叩いて言った。
五人が再び並ぶ。
乳房を鋭敏にされて母乳射精改造を施された子爵令嬢のミレーヌ──。
やはり母乳射精を施されるとともに、四肢を切断されて義手と義足に入れ替えられた女性騎士のノエラ──。
伯爵令嬢であり教師で、自分では絶頂できずに、快感を蓄積する体質となったエステル──。
婚約を控えていた男爵令嬢で、全身性感帯にされてしまったリディア──。
性的快楽により男根が股間から生えてくる商家で働いていた男爵令嬢のフローラ──
カイネウスは、五人の赤くなった顔を順に眺め、最後にバルザックを見た。
「よい馳走だ、将軍」
バルザックがにやりと微笑む。どうやら喜んでいるようだ。
接待の導入としては、上出来だろう。