サロン・セルパンタンの五百日の調教記録──亡国の花と蛇の館 作:ドン・ドナシアン
「わかった──。する──。おしっこをする──。だから、リネアには手を出さないでくれ──」
レイシアは、両側にある二本の柱に拘束されている身体を必死に揺さぶりながら絶叫した。
すると、正面のソファに腰を下ろしていた元帥が、静かに片手をあげたのがわかった。
いまにもリネアへ襲いかかろうとしていた男兵たちが、一斉に手を止める。
「ああ……お姉ちゃん……」
しかし、リネアは拡げられた四肢をいまだにがたがたと震わせている。
余興として散々くすぐられたことが、よほど堪えたのだろう。
それを見て、レイシアは強く唇を噛みしめた。
「じゃあ、してもらおうか。布をしたままで構わない。その代わり、サロンに屈したことを、あの映録球に向かって宣言するんだ。そしたら、小便だ」
いつの間にか傍らまで来ていたアルジェが、レイシアの耳元で言った。
「……宣言?」
レイシアは怪訝そうに首を曲げて、アルジェを見る。
アルジェは口元に笑みを浮かべると、さらに顔を近づけた。映録球に向かって口にする言葉を、ひとつひとつ囁いていく。
その内容を聞くにつれ、レイシアは自分の顔がどんどんと険しくなっていくのがわかった。
「冗談じゃないよ。どうして、そんなこと──」
逆上して声をあげかける。
だが、その言葉は途中で止まった。
元帥と目が合ったからだ。
元帥は横の台から酒の盃を取り、悠然と口をつけている。その顔には、レイシアの反発など最初から予想していたような微笑が浮かんでいた。
そして盃を持っていない方の腕を、ほんのわずかに動かしかける。
それだけだった。
しかし、レイシアにはそれで十分だった。
慌てて口を開く。
「待って──。言う──。なんでも言う。リネアには手を出すな」
レイシアは絶叫するように言った。
元帥の腕が止まる。
とりあえず、ほっと息をつく。
「ほう。じゃあ、記録を開始するわ。合図をしたら、さっき教えた口上を言いな。王都どころか、諸外国の大使まで見るんだから、せいぜい感情を込めておくれ」
アルジェは愉快そうに笑うと、レイシアから離れていった。
「そんな映像が外に出るなんて、わたしなら死を選ぶけどね……。情けないわねえ……」
なぜか、イレーヌが不愉快そうに距離をとる。やはり、どこかで会っていると思う。しかし、まだ思い出せない。
「合図をするから、そしたら口上を開始しな」
正面の映録球の位置に立った女兵が声を掛けた。
レイシアは奥歯を噛みしめた。
改めて自分の姿を意識する。
王国近衛騎士の礼装を上半身に身につけてはいるものの、四肢は左右に立てられたポールのような金属棒へ固定され、大きく拡げられている。下半身を覆っているのは真っ赤な小さな布だけ。クリトリスに繋がれたリングから伸びる細い鎖は、いまはなにも繋がれておらず、力なく床へ垂れている。
全裸よりも恥ずかしい格好だと感じる。
そして、大きく拡げられた脚のあいだの真下の床には、さっき女兵が広げた王国の旗が敷かれていた。
正面には、三脚に据えられた映録球。
礼装も、王国旗も、これから自分が口にさせられる言葉も、すべてが王国を嘲笑するために用意されたものだった。
逃げることはできない。
拒むこともできない。
横へ視線を向ければ、拘束されたリネアが不安そうに自分を見つめていた。
レイシアは一度だけ目を閉じた。
そして、ゆっくりと息を吐いた。
映録球の傍らに立った女兵が、水晶具に手を触れる。
淡い光がその内部に灯った。
「記録を開始するよ」
女兵が告げた。
それまで聞こえていた男兵たちのざわめきが消える。
部屋が静まり返った。
レイシアは正面の映録球を睨むように見つめた。
「……テ、テレオロス王国……近衛団……王太子妃付護衛隊長……レイシア=ベルク……。わたしは、このサロン・セルパンタンで教育を受け……フィロス共和国の接待婦をさせていただくことになりました……。かつて王国と王太子妃殿下に捧げた忠誠を捨て……これよりはサロンの命令に従い……共和国の方々をおもてなしすることを……ここに誓います……。わたしはもう……誇りある王国近衛の騎士ではありません……。サロン・セルパンタンに屈した……一人の接待婦です……。わ、わたしが……喜んで……矯正を受けていること……そして、その誓いの証として、これから……王国の旗に放尿いたします……」
息が止まるような思いで、レイシアは示された言葉を口にする。
もう何もかも捨てて、わっと泣き出したくなったが、必死に耐える。
元帥はじっとレイシアを見ている。その左手はいまにも合図を送り出すために、動き出しそうに見えた。
俯いて眼を瞑る。
尿意を耐えていた股間の力を緩めようとした。
「ならんわ──。顔をあげて眼を開けよ。閉じれば、気絶するまで、妹をくすぐりで折檻する」
元帥が左指でこつこつと手摺りを叩いた。
はっとしてレイシアは顔をあげた。
羞恥に顔を伏せることも許さないのか……。
屈辱に血が凍りそうになる。
レイシアは、正面の映録球を睨みつけながら、股間の力を完全に抜いた。
生温かいものが股間に喰い込んでいる布に拡がり、次いで大量の奔流となって真下の床に落ちていく。
「いまだよ」
そのとき、アルジェが声をかけた。
左右から女兵がふたり寄ってきて、放尿中のレイシアの下半身から赤布を取り去る。赤布は腰の左右で紐で結ぶ形式であり、あっという間に解かれるとともに、左右に引き破られたのだ。
受けとめるものがなくなったレイシアの放尿は、今度はクリトリスからぶら下がっている鎖に伝って床の王国旗に向かって堕ちていく。
「ああ、なにするの──」
思わず叫ぶ。
しかし、一度始まった放尿が途中で止まるわけもなく、レイシアは映録球の前で立ったまま、脚の下に放尿を続けるしかなかった。
やがて、死ぬよりも辛いと思った屈辱が終わる。
「ははは、途中の取り乱しようが傑作だったよ。いい映像が記録できたさ」
アルジェが大笑いした。
周囲の男たちも喝采している。
そのとき、歓声と野次に混じって、わずかな泣き声が耳を捉えた。
レイシアは声の方へ顔を向けた。隣に拘束されているリネアだった。
リネアは力なく項垂れ、「ごめんなさい……お姉ちゃん」と言いながらすすり泣いていた。
レイシアは奥歯を噛みしめた。
「謝るな、リネア。お前が謝ることじゃない。わたしが勝手にしたことだ……」
それだけは、震えない声で言った。
「さて、すっきりしたところで、アナルセックスの番ね。さっきも言ったとおり、どっちかにアナルセックスをしてもらうわ」
イレーヌが宣言するように言った。
彼女はいまは元帥の隣のソファへ戻り、脚を組んだままこちらを眺めている。
「そうじゃな。では、どちらにしてもらうか……」
元帥が相好を崩して言った。
「選ぶ必要はない──。わたしがする──」
レイシアは間髪を入れずに答えた。
そして、挑むように元帥たちを睨みつける。
「ほう、よいのか……?」
元帥は面白そうに肩を竦めた。
そのまま視線を、周囲を取り囲んでいる男兵たちへ向ける。
「……ところで、さっきのリネアの失禁当ての賭けじゃが、全問当てたのは、結局何人じゃ?」
「へへへ。それが、全問正解は、ひとりもおりませんで」
大勢の男たちの中から、代表らしい年配の男兵が頭を掻きながら答えた。
「なんじゃ。不甲斐ないのう。せっかく三十人でよいというのに、百人も集まっておるのじゃぞ。では、三回のうち二回正解した者は?」
「それなら五人おりますぜ、閣下」
「五人か。ならば、わしとカイネウス、それにその五人を加えて七人じゃな。レイシア、七人をアナルで相手することになるが、よいか?」
「な、七人──?」
レイシアは思わず絶句した。
さすがに想像していた人数ではなかった。
「……僕は結構ですよ、閣下」
そのとき、カイネウスがいつもの穏やかな笑みを浮かべたまま口を挟んだ。
「なんじゃ。つまらんのう」
元帥は不満そうに鼻を鳴らした。
だが、すぐに周囲の男たちを見回して口元を緩める。
「……ならば、あと四人増やすか。切りのいいところで十人じゃ」
その言葉が落ちた瞬間、男たちの間からどっと歓声があがった。
我先にと声を張りあげる者までいる。
「さすがに、ひとりで十人は無理だろう。ふたりとも、アナルセックスは未経験だ。二人いるんだし、五人ずつにすればいいじゃないかい」
すると、アルジェが笑いながら口を挟んだ。
そして、レイシアとリネアを交互に眺める。
「あああっ──」
リネアが慟哭するような声をあげた。
レイシアはぐっと奥歯を噛みしめる。
そして、すぐに顔をあげた。
「──いや、わたしが受ける。十人でいい──。その代わり、リネアは部屋に戻してくれ──。もう、この子には手を出さないでくれ──。頼む──。後生だ──」
レイシアは、周囲のざわめきを押し退けるように叫んだ。
「無理だよ。魔核で快感と肉体保護は調整してやるけど、繊細さの欠片もねえ粗雑な連中だ。閣下はともかく、こいつら含めて十人は無理だよ。半分ずつにしときな」
すると、アルジェが呆れたように言った。
「うるさい──。やると言ったらやる──。十人でいい──」
レイシアは絶叫した。
「うーん、確かにそうだねえ。いきなり十人は無理かな。五人くらいなら、魔核で身体を守れるとは思う。でも、さすがに十人はねえ……」
カイネウスも口を挟む。
レイシアは、怒りで身体を震わせた。
「わたしがいいと言っているのだ──。いい加減にしてくれ──。さっさと十人で犯せばいい。アナルでもなんでも受けてやる」
レイシアは怒鳴った。
「そこまで言うなら、試してやりましょうよ、閣下」
すると、イレーヌが口を挟んだ。
「試す?」
元帥がイレーヌを見る。
「どうせ、アナルセックスの前に、薬剤浣腸で尻穴をきれいにしなければならないのです。たっぷりと、レイシアに注いで耐えてもらいましょう。十分に我慢できると判断できれば、十人を相手にしてもらうことにして、妹は戻しましょう」
イレーヌが言った。
レイシアは唇を噛み、その提案を黙って聞いた。
「なるほど、いいじゃろう……。ならば、リネアも受けよ。排泄液の量はレイシアの半分にしてやろう。その代わりに、姉よりも長く耐えよ。しかし、半分でしかないのに、不甲斐なく姉よりも先に糞便を漏らせば、やはり半分の男を受け持て」
元帥が言った。
レイシアは、その条件のことを思考する前に、元帥が口にしたことに驚いた。
「待ってくれ──。さっきから言っている“かんちょう”とはなんのことなんだ──?」
声をあげた。
聞き間違いでなければ、排泄液とか、糞便と口にしたと思ったが……。
かんちょうとは、“浣腸”──?
まさか──。
このサロンに来てから、用を足すのも女兵たちの前だった。だが、これだけの男たちの前で排泄をするなど、想像もできない仕打ちだ。
あり得ない──。
「どうということもないわね。腸の中に強力な排泄液を入れて、溜まっている大便を全部出させるのよ。こちらでは、そういう処置を浣腸と呼んでいるの。もちろん、入れたからといって、すぐに出していいわけじゃないわ。今回はあんたが十人を相手にできるかの試しなんだから、できるだけ長く耐えてもらうことになるけれど」
イレーヌは、レイシアの顔色が変わっていくのを楽しむように微笑んでいる。
「な、なんだと……」
唖然となった。
やはり、こいつらは、これだけの人間の前で、レイシアに排泄をさせようというのか──?
「そんな顔をしないでよ。さっき十人でもなんでも受けるって、あれだけ威勢よく啖呵を切ったじゃない。だったら、気絶するまで我慢してごらんなさい。排泄液はいくらでも足してあげるから」
イレーヌが平然と言う。
「レイシアの脚のあいだの国旗は、そのままでよいぞ。元王国近衛の女将校が、小便だけでなく、大便まで旗に垂れる。その滑稽な姿も映録球に記録するからのう」
元帥が声をあげて笑った。
排泄姿をまた、映像記録する?
レイシアは耳を疑った。
「……仕方ない……。アルジェ、浣腸具の嘴管を入れる前に、潤滑剤へ掻痒剤を混ぜてやってくれるかい。痒みを強くしておけば、液剤を注入される苦痛も、そのあとのアナルを繰り返し犯される苦痛も、痒みが癒える快感の方が勝るだろう。せめてもの情けだよ」
カイネウスが静かに言った。
「わかりました。強烈な掻痒剤を潤滑剤として使いますね。丁度、準備していたものがあります」
アルジェが言った。
すぐに、背後に台車のようなものが運ばれてきた。
横のリネアも、怯えるような泣き声をあげている。
アルジェがレイシアとリネアの真ん中のやや前に立ち、ひとりずつ女兵がレイシアとリネアの後ろに位置した。
「……じゃあ、レイシア、始めるわよ」
後ろに立った女兵がくすくすと笑った。
潤滑油を塗っているらしき指が、レイシアのお尻の中に深く貫いてきた。特に抵抗もなく、レイシアの尻はその指を受け入れてしまう。
「あ、ああっ」
レイシアはびくんと激しく身体を仰け反らせて、喉をしぼる。
排泄器官へのおぞましいたぶりが、いよいよ始まったのだ。