※この作品はR-18です。

サロン・セルパンタンの五百日の調教記録──亡国の花と蛇の館   作:ドン・ドナシアン

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096 五号媚薬と筆責め【第32日】

「使えるものは、そのまま再利用に回せ。衣類は布地を取って、靴や鞄は革と金具に分けろ。どうにもならないものだけ廃棄だ」

 

 アルジェが女兵たちに指示をしている。

 オクタヴィアは、矯正室の中央に繋がれていた。

 両手首は頭上へ伸びる鎖に、両足首は左右へ伸びる鎖に繋がれ、身体をその場から動かすことはできない。

 主任矯正官の黒衣も、もはや原形を留めていなかった。

 長いスカートは腰から下を切り取られ、残っているのは白い小さな下着だけだ。上半身も両腕に黒い袖が残り、切断された布地が胸の左右から垂れ下がっているだけである。

 

 正面の巨大な鏡には、そんな無残な格好で鎖につながれた自分の姿が映っている。

 その目の前では、少し前に新たにやって来た女兵たちが、いくつもの木箱を開いていた。

 中身は、オクタヴィアの私室から運び出された私物だった。

 私服、女文官としての正装、寝間着、下着、靴、鞄。それ以外にも、身の回りの品がまとめて詰め込まれていた。そしていま、その私物の処分が目の前で始められていた。

 

「これは?」

 

「生地はまだ使えるね。切り刻んで清掃布にしな」

 

 私服の一着が床に広げられ、大きな鋏が入った。

 袖が落とされ、襟が切り離される。残った布地も四角く切り分けられ、清掃用の箱へ重ねられていく。

 

「この靴はどうします?」

 

「革を取って、厚いところを枷の当て革に使う。なめして、こいつ用の拘束具に使ってやろうか」

 

「それも面白いですね」

 

 靴が加工処理行きと区分した木箱に放り込まれる。

 今度は、替えの黒衣が取り出された。

 

「これは、いい生地ですよ。残しておきますか?」

 

「いや、細く切って紐に加工しろ。私物は一切残さねえ。ほかの女囚どもと一緒だ」

 

「はーい」

 

 女兵たちが私物の処分を始めてから、まだいくばくも時は経っていないが、部屋に持ち込まれた私物の箱は、あっという間に半分ほどになっている。

 そのときだった。

 

「うっ」

 

 オクタヴィアは息を呑んだ。

 ほとんど唐突といった感じで、身体の芯にずどんと熱いものが響いた。

 痛いほどに疼き、疼くようでむず痒い感覚が、全身に瞬時に拡がったのだ。

 その異常の原因が少し前に塗られた媚薬にあることは間違いない。

 猛烈な──と言っていいほどの性欲の昂ぶりだ。

 

 媚薬は、股間の隅々だけでなく、アナルにも塗られ、最後には乳房にもたっぷりと塗りつけられていた。その三箇所がまるで火で炙られたように燃えだしている。

 しかし、両手を使うこともできず、脚を開かされているために、内腿を擦り合わせて癒やすこともできない。数瞬ごとに、猛烈な疼きが身体を苛んでくる。

 

「おうっ、さっそく腰を使い始めたかい。ちょっと待ちな。もう少しであんたの私物の処分が終わる」

 

 アルジェがちらりと視線を向けて嘲笑した。

 はっとして、知らずに揺すっていた腰を静止させた。

 だが、それもすぐに耐えられなくなる。自制できなくなって、オクタヴィアは両手を吊っている鎖を握り絞めて身体をよじってしまう。

 

「な、なにを……塗ったのよ……」

 

 オクタヴィアは歯を喰いしばりながら言った。

 媚薬なのはわかっていたが、効果の始まりが独特で強烈だった。

 しばらくは耐えられていると思っていたのを嘲笑うかのように、急激な効果をオクタヴィアの身体に及ぼしてきた。

 

「あんたも知っている五号媚薬だ。もしかして、味わうのははじめてかい?」

 

 アルジェが応じる。

 五号──。

 サロンで使用する媚薬類の効能は、主任矯正官だったオクタヴィアの頭にすべて入っている。もちろん、自分が使われる側になったことなど一度もない。

 一号から三号までは、痒みを主体として女囚を苛む薬だ。それに対して、四号と五号は、性欲そのものを強烈に昂らせることを目的としている。

 なかでも五号が怖ろしいのは、その強烈な効き目だけではない。

 持続時間だ。

 三号などの掻痒剤は、比較的短い時間──数刻で効果が薄れ始める。しかし、五号による発情は数日にわたって続く。そのあいだに繰り返し矯正を施し、昂ぶりと快感を身体に覚え込ませる。それが、この薬の本来の使い方だった。

 それを、こいつらは自分に使ったのだ。

 

「さて、そろそろ、あんたの股も涎を流し始めたようだね。どうだい、オク。もう苛めて欲しくなったんじゃないかい。木箱にはあんたの私物だけじゃなく、淫具だってたくさん持ってきた。好きな張形で慰めてやるよ」

 

 アルジェが笑う。

 はっとなって、身体を見下ろした。

 切断された上衣部分の布が被さっているだけの乳房は、恥ずかしいばかりに充血して尖端がそそり勃っている。股間はわけのわからないうちに熱い蜜を噴き出して、白い下着に大きな丸い染みを作りあげてしまっていた。

 

「冗談を言わないでよ──。淫具なんて使ったら承知しないわよ」

 

 オクタヴィアは声をあげた。

 

「身体はそうは言ってないみたいだけどね。ところで、まだ質問に答えてないじゃないか」

 

「質問……?」

 

 オクタヴィアは眉間に皺を寄せた。

 

「男ひでりが何年かってことさ。さっさと言いな」

 

 アルジェの言葉に、再びかっと頭に血が昇る。

 

「そ、そんなこと答えるわけないでしょ──。こんなことをするのはやめなさい──。わたしは王都政府から派遣されている主任矯正官よ。あんたらのカイネウス殿がこんな好き勝手したら、必ず処断されるに決まっているでしょ。いますぐに、これを外しなさい──」

 

 オクタヴィアは、四肢を引っ張っている三本の鎖を揺すりながら叫ぶ。

 

「まだまだ元気だねえ。その調子だよ。じゃあ、それを合図にしようか」

 

 すると、アルジェが冷笑的な笑みを浮かべたまま言った。

 

「合図?」

 

「張形で犯されたくなったら、さっきの質問に答えるんだ。最後に男とセックスをしたのは、何年前ですってね」

 

 アルジェが声をあげて笑う。

 周りの女たちが一斉に噴き出した。

 オクタヴィアの中のなにかがぶち切れる。

 自分でもなにを口走っているのかわからない悪態をアルジェに叫び続けた。思いつく限りの罵詈雑言をアルジェに──そして、ここにはいないカイネウスにぶつける。

 

 やがて、息継ぎができなくなり、オクタヴィアは口を閉じた。

 気がつくと、肩で息をしていた。

 すると、アルジェがくすくすと喉の奥で笑うような音を鳴らした。

 

「……いいだろう。じゃあ、そろそろ、サロンの洗礼を味わってもらおうかい、オク」

 

 アルジェの指示で集まっていた女兵たちの中から四人が立ちあがる。その四人以外は、まだオクタヴィアの私物処分の作業を続けている。アルジェ自身もソファに腰をおろしたままだ。

 だが、オクタヴィアは眼を見開いた。

 オクタヴィアの周りに集まってきた四人の全員が、手に絵筆を持っていたのだ。

 

「じゃあ、この辺からいってみる?」

 

 囲んだ四人のひとりが、まだ残っている上衣の襟の隙間から筆を差し入れて、後ろから首の付け根をすっと筆先で撫でてきた。

 

「あっ」

 

 おぞましいというよりは、不快なくすぐったさに、オクタヴィアは身震いした。

 

「〈魔核〉で感度十倍だものね。効くでしょ?」

 

 そう言った女兵が、ふと思いついたように仲間のひとりへ眼を向けた。

 

「その前に、眼も塞いじゃおうか」

 

「ああ、それがいいね」

 

「なっ──」

 

 オクタヴィアが声をあげたときには、ひとりが後ろへ回り、別のひとりが黒い布を手にしていた。

 

「待ちなさい。そんなもの必要ないでしょ」

 

「はいはい。ちょっと動かないでね」

 

「やめなさい──」

 

 顔を背けようとしたが、左右から頭を押さえられる。

 

「やめろっ。離しなさい──」

 

 オクタヴィアは激しく頭を振る。

 しかし、黒い布は眼の上を覆い、後頭部できつく結ばれた。

 視界が完全に消えた。

 

「外しなさい。これを外しなさい──」

 

 オクタヴィアは鎖を鳴らして身体を捩った。

 四肢を拘束されていることなど、つい先ほどからなにも変わっていない。それなのに、眼が見えなくなっただけで、急に自分の置かれている状況がわからなくなって怖くなってしまった。

 

「ちょっと、外して。聞いてるの?」

 

 返事はない。

 

「……ねえ」

 

 オクタヴィアは頭を左右へ動かした。

 四人がまだ自分の周囲にいることだけはわかる。

 だが、誰がどこに立ち、何をしようとしているのかは、もう見えなかった。

 すると、再び筆が、首筋を襲ってきた。

 

「ひああっ」

 

 同じ刺激のはずなのに、まったく違っていた。

 くすぐったさを越えた刺激が、性感に響いてきたのだ。

 大きな波が一気に湧き立ち、それだけで股間が新たな蜜を滲み出させるのがはっきりとわかってしまった。

 動揺して恐怖が走る。

 たった首にひと擦り受けただけで、こんなに淫らに反応をしてしまうとは……。

 ならば、もっと性感帯に近いところを責められれば、自分はどうなってしまうのか……。

 これが〈魔核〉制御による性感開発の力──。

 ぞっとする。

 

「……ふふふ。魔核で快楽線を開いたまま、長く刺激を受け続けると、もう戻されても、身体が戻らないんだよね」

 

「うーんと、淫乱な身体に仕上げてあげるね、主任矯正官様」

 

 今度は、筆先が耳たぶ、そして、耳の中に襲いかかってきた。

 

「ひんっ」

 

 反射的に顔を横に向ける。

 しかし、そこには別の筆が待っていて、反対の耳をくすぐられる。

 咄嗟に顔を逸らすけど、そこにも絵筆だ──。

 視界がないため、備えられないし、逃げられない。女兵たちは何度も、耳を絵筆でなぞり返してくる。

 

 だめだ──。

 反応をしすぎると、そこを集中的に責められる。

 オクタヴィアは、必死に平静を装おうとした。

 だが、左右の耳を同時にくるくると絵筆で撫ぜ回してきた。

 

「ああ、だめえっ」

 

 オクタヴィアは、身体を激しく跳ねさせてしまった。

 

「知っているかしら、矯正官様? 耳が弱い女は性感が豊富で淫乱だってこと」

 

 女兵のひとりが小さく笑って、また耳を筆でくすぐってくる。

 

「んんっ」

 

 だめだ──。

 弱点を見せまいとして、懸命に歯を喰いしばるが、微細な刺激が脳の中心にまで甘美なうねりとなって、燃え広がってくる。

 そして、また耳に筆──。

 

「あああっ、あんたら、し、しつこいわよ──」

 

 オクタヴィアは思わず怒鳴った。

 

「あら、じゃあ、別のところがいい?」

 

 絵筆が喉に触れ、上衣が切り裂かれているあいだから胸の谷間を通り抜けて、胴から腹部、臍へ滑らせて、下着にかかる寸前までなぞって離れる。

 

「くっ」

 

 声を洩らしかけて、オクタヴィアは必死に口を噤み、身体をわずかに震わせた。

 オクタヴィアは猛烈な疲労感に見舞われていた。

 とてもではないが、反応を我慢できる感触ではない。

 明らかに身体の状態は異常だった。〈魔核〉の影響もあり、媚薬の効果もあるのだろう。乳房は張り詰め、尖りきった乳首が布に擦れるだけで、痛いくらいに疼く。

 下着に包まれている股間がやるせないほどに熱かった。

 

「もういい。着ているものを、全部剥ぎとりな」

 

 アルジェの声が響いた。

 筆が引き、じゃきじゃきと上衣が切断されていく。すぐに布が離れて汗に濡れた肌に外気が触れる。

 

「下は少し名残を惜しむ仕掛けにしようか。切り込みだけ入れておくよ。よがって腰を振れば、下着が落ちるからね。多分、人生最後の下着だ。できるだけ頑張りなよ」

 

 女兵が笑いながら、下着の横に鋏を入れるのがわかった。

 下着の締めつけがなくなり、辛うじて汗と体液で肌に張り付いているだけになる。

 

「じゃあ、こんなのはどう?」

 

 絵筆の先が左の腰骨を撫ぜあげてきた。

 思わず腰を捩りそうになり、なんとか自制する。

 しかし、耐えてじっとしている分、ずしんとした重い性感が下腹部の中心に響いてくる。

 それが繰り返されて、確実に性感を掘り起こしてくる。

 

「ほぐっ」

 

 腰骨を襲っている筆とは別の筆が、左右の脇を同時に襲ったのだ。

 

「いやああっ」

 

 さすがに必死に身体を捩って、絵筆を避けようとした。

 次の瞬間だった。

 股間に張り付いているだけだった下着が落ちて、足下でびしゃんという音がした。

 とんでもない量の愛液を下着に染み込ませていたのだとわかって、オクタヴィアの全身に羞恥が走る。

 

「ははは、ご開帳だね」

 

 そのとき、目の前の女兵がすっと腰をおろした気配を感じた。

 覆うものを失ったばかりの股間に舌が襲ってきた。

 クリトリスに口づけをするように口に含まれて、舌で転がされる。

 

「ほおおっ」

 

 峻烈な衝撃が五体を貫いてきた。

 オクタヴィアは瞬時に、絶頂に向かって快感を飛翔させてしまう。

 自制をしようとしても自制などできない。

 オクタヴィアは、絶息するような快感に、全身を打ち震えさせる。

 おぞましい媚薬の効果もあり、一気に炎を噴き出したかのように下腹部が熱くなって、左右に割られている太腿が硬直して、身体がぶるぶると痙攣した。

 

「さあ、お預けよ」

 

 しかし、それでさっと女兵の顔が股間から離れてしまった。

 だが、あとひと息だったのだ。

 オクタヴィアは堪らない焦れったさに、首を激しく左右に振る。

 

「な、なにをするのよ──。どうしてやめるのよ──」

 

 思わず悲鳴のような声をあげてしまう。

 

「あら、もっと続けてほしかった? だったら、アルジェさんに、詫びを入れたらどうなの。そして、どうぞ張形で犯してくださいと頼むのね」

 

 周りの女たちだけでなく、部屋の女兵たちの全員が哄笑したのが聞こえた。

 屈辱で身体が熱くなる。

 いま自分はなんというはしたないことを口走ってしまったのか……。

 

「な、なんでもないわよ──」

 

 慌てて声をあげる。

 すると、またしても女兵たちの嗤い声が部屋に響いた。

 

「そうなの。じゃあ、あんたがその気になるまで、筆責めを続けるわね。のたうち回ってちょうだい」

 

 今度は舌ではなく、筆がクリトリスを襲った。さらに亀裂を押し広げるように筆先が股間を抉り、もう一度敏感な陰核を摩りあげる。

 

「ひうっ、ひああっ」

 

 峻烈な刺激に、オクタヴィアはすくみあがって悲鳴をあげた。

 魔核で感度を上げられていることもあり、筆のもどかしい刺激でも、オクタヴィアは絶頂するほどの快感のせり上がりを覚えた。しかし、あと一歩が足りない。

 

「油断しないのよ。後ろにも筆はあるのよ」

 

 背中の中心を絵筆がくすぐり、そのままお尻の亀裂を割って通り抜けていく。

 

「あああっ」

 

 オクタヴィアは身震いとともに、あられもない声を放ってしまった。






【作者より】

 ぺりえ様の「媚薬+生殺し責め」のリクエストにより構成してます。オクタヴィア篇の主題になると思います。

 責め苦のリクエストがあれば、感想欄からお寄せください。必ず採用できるとはお約束できませんが、検討いたします。
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