サロン・セルパンタンの五百日の調教記録──亡国の花と蛇の館 作:ドン・ドナシアン
張形が股間に貫き、ゆっくりと律動を開始する。
長く焦らし抜かれた挙げ句に始まった、股間への直接の刺激は、あまりにも濃密で鮮烈な歓喜の一撃だった。
「はあ、はっ、ああっ」
白い閃光が身体の中心に差し込み、全身を覆い尽くしていく。
しかし、昇りつめそうになると、女兵たちは巧みに責めを緩やかにして、オクタヴィアが感覚を飛翔させようとするのを巧みにかわしてしまう。
そして、しばらく待って、また再開するのだ。
それを繰り返されている。
だから、駆け抜けた快感のうねりが引いていかない。そのまま身体の隅々、手足の先まで充溢してそのまま立ち去ってくれない。
「こっちはどうなの?」
すると、予期していなかったアナルにも張形をいきなり挿入される。
やはり、潤滑油を塗ってあり張形は、奥まで一気に貫かれた。
「ああっ」
オクタヴィアは思わず甘い声をあげてしまった。
「ふふ、やっぱり後ろが感じるんだね。自慰のときにいつも遊んでいるだけあるよね」
アナルに挿入された張形でぐるぐると抉られる。内襞のすべてを余すことなく擦るように張形が回るように動かされる。
身体が大きく弾んだ。
抗うこともできなかった。
潤滑油と汗と、さらに股間から流れる樹液によってまみれているアナルは、なんの抵抗もなく張形の律動を許してしまう。
「こっちよりも、後ろが感じるんじゃないの、主任?」
さらに前側の張形も激しく動かされる。
言葉を口にしようとするが、うまく喋れない。まるで思考する力が停止してしまったかのようだった。
だが、女兵が口にした一言が気に掛かる。
いつも、アナルで自慰をしている──?
どうして……。
「前よりも、後ろが感じる変態女には、こっちはいいか」
前を犯していた女が張形をすっと抜いた。
しかし、後ろに貫かれている張形では、右に左にと内襞を強く擦られる。
「おおおっ」
オクタヴィアは、拘束されている両手に身体を預けるようにして、背中を弓なりにした。アナルから次々に沸き起こる鮮やかな感覚に、芯から官能を燃えあがらせてしまう。
「おっと、こっちもお預けだ」
だが、すっとアナル側の張形も抜かれてしまった。
またしても、達しようとしていた絶頂感が、行き場をなくして、ぐるぐるとオクタヴィアの中に横溢していく。
「ああ、どうしてよ──」
オクタヴィアは悲鳴をあげてしまった。
「ははは、約束は守ってやっただろう。張形は使ってやった。しかも二本もね」
アルジェの哄笑が響く。
オクタヴィアは歯噛みした。
だが、俯いていた顔をあげる。目隠しをされている眼をアルジェの声のする方向に向けた。
「も、もう十分でしょう──。こんなことをして、なにが面白いのよ──」
逆上して叫ぶ。
怒りは続いている。しかし、いまはその憤怒よりも、やり場のない欲情に気が狂いそうだった。
しかし、戻ってきたのは、アルジェの哄笑だ。
「別に面白くてやってるわけじゃないさ。これも任務だからしているだけだ。高慢ちきな女官を、このサロンの雌に堕とせって依頼でね。それをお館様が引き受けただけさ」
「なにを言っているのよ、お前──」
思わず言葉を返すが、背中に流れる冷たいものが途切れることはない。
もしかして、これは単に、サロンの主人であるカイネウスが自分に逆らう矯正官を見せしめにしようというのではなく、もっと大きな陰謀の一環なのか?
いまのアルジェの物言いは、そうとれないことはない。
「くっ」
そのときだった。
じわじわと、身体を苛む痒みが前と後ろの穴に襲いかかってきた。
張形に塗られていた三号媚薬だと悟る。
本当に塗っていたのだ……。
「ほう、五号と三号の併用効果が始まったかい。こっからが地獄だね。まあ、十日も経てば、刺激欲しさに、尻舐めでもなんでもやる雌ができあがるさ。あんたがどこまで理性を保てるか知らないけどね」
アルジェがせせら笑う。
かっとなる。
「あ、あんた……。ひ、卑怯よ……。わ、わたしは、ちゃんと言ったのに……」
見えないアルジェを睨む。
自慰のことを口にすれば、三号媚薬を混ぜることはないと言ったのだ。だから恥を忍んで口にした。
三号と五号の媚薬併用は危険だ。ほかならぬ、矯正官でもあるオクタヴィア自身がそれはわかっている。
「ああ、ちゃんと言ったね。嘘をね」
「嘘──?」
オクタヴィアは思わず返した。
「自慰は、このサロンに来てから毎晩だ、指を使うというのは本当だけど、場所は専ら後ろばかり。クラウディアに関わるようになったときでさえ、夜には自慰をしてから寝てたな、厳格で生真面目そうな女官のあんたが、アナルで自慰をする映像はなかなかの品物だったよ」
「映像──?」
オクタヴィアは唖然となった。
「ちゃんと映録球で記録してある。今夜からしばらく毎晩流してやるよ。檻の中で自分の自慰の姿を眺めながら寝るといいさ」
ほかの女たちも一斉に笑いだす。
はったりを口にしている雰囲気も、驚いている気配もない。集まっている女兵たちの全員がこのことを承知している様子だ。
どういうことなのか──?
「わたしの私室に映録球が隠してあったということ? そんなはずがない。魔道具の探知もしたもの。異常はなかったはずよ」
「種明かしをすれば、あんたの扱う魔道具には細工がしてあった。首にある魔核を使えば、実際には魔道具が動いてないのに、動いているように、あんたに認識させるのは簡単だ。実際には、あんたの私室には、あらゆる監視具が張り巡らせてあった……。あんたも知っている通り、このサロンの特別囚は四六時中、監視されているし、記録もされている。当然の措置だろう」
「ついでに、あんたの食事や飲み物には、全部微量の媚薬も入っていたのよ。サロンに来てから自慰の数が増えたのは、それが理由でもあるのよ」
アルジェに次いで、ほかの女兵が付け足した。
オクタヴィアは衝撃を受けた。
魔核のことはともかく、サロンに来てから身体の昂ぶりが収まらないのは自覚していた。このサロンの淫靡な熱に当てられたせいだと思い込んでいたが……。
「ちょっと待ちなさい──。まるで、わたしが最初から特別囚になると決まっていたような口ぶりじゃないの──」
「当たり前だろう、もしかして、魔核って、さっき埋められたとでも思っているのかい? あんたが魔核を埋められたのは、まだ王都にいるときだ。恨むんなら、あんたを玩具にすることを願った王都の連中にしな。よくわからないけど、取り引きの一環らしいよ」
「どういうことよ──。一体全体、なんのことよ──。言いなさい──」
オクタヴィアは絶叫した。
「こりゃあ、あたしとしたことが、お喋りがすぎたね。じゃあ、屈服の時間だ……。おい、再開しな」
アルジェが告げた。
すると、いきなりオクタヴィアの秘裂に、張形が再びあてがわれた。
「ああ、いやあっ」
裸身をおののかせながら、オクタヴィアは深い快感の旋律に打ち震えてしまった。
緩やかな出し入れを繰り返しながら、張形は入口から深層部までを繰り返し打ち抜いてくる。
自制は不可能だった。オクタヴィアは声を放っていた。
媚薬に苛まれている身体に、歓喜のうねりが襲いかかってくる。
だんだんと拡大していく掻痒感が癒えるのも気持ちよかった。肉襞のひとつひとつが甘美感に貫かれるかのようだった。
「はい、終わりだ」
しかし、またもや、昇りつめそうになったときに、突然に張形を抜かれてしまう。
「ああっ」
オクタヴィアは、思わず抗議するような声をあげた。
「大丈夫だよ。今度は、あんたの好きな尻責めだ、また寸止めまでだけどね」
今度はアナルに張形が再び貫いてきた。
「ふあああっ」
オクタヴィアは歓喜の声をあげた。
ゆっくりと律動が始まる。
だが、深かったのは最初の一打だけだ。二打目からは次第に浅い位置に張形を引きあげていき、抜きそうになっていく。
「うあっ、ま、待ちなさい──」
オクタヴィアは我を忘れたように叫んだ。
もう、なりふり構っている場合ではない。
しかし、またしてもあっさりと抜かれてしまう。
「ああ、そんなあ──」
オクタヴィアは打ちひしがれた。
同じことをしばらく繰り返された。
前を数回律動されて、すぐに引きあげられる。
次の後ろを張形に貫かれて、また抜かれる。
律動は数回だけなので、達してしまうことはない。
だが、法悦はあがったところからさがってはくれない。
そのままあがったところから再開されて、またあがり、そして止められる。
しかも、それだけに気をとられていると、筆で乳首や背中、耳や首を刺激されるのだ。どこに襲いかかるかわからない筆もまた、いまは脅威だ。
これをひたすら繰り返された。
もう頭がおかしくなりそうになる。
「ああ、もういい加減にしてよ──」
ついに、オクタヴィアはもはや恥も外聞も捨てて泣き叫んだ。
もう快感を極め、エクスタシーに見舞われそうになったのは二十回を超えている。
しかし、最後の快感だけが与えてもらえない。
前後に貫かれる張形の律動は非常に遅い。
しかし、それでも喜悦は四肢の隅々にまで圧倒的な勢いで流れ渡ってくる。
前の張形が律動を止めれば、間髪入れずに後ろに張形が突きたてられる。後ろが抜かれれば、再び前に張形を挿入される。
息つく暇もない。
これが相手が男であれば、こんなに遅い律動を続けることなどあり得ないだろう。
欲望のまま、とっくに激しく始めたに違いない。
だが、責めているのは女だ。
女はいくらでもこれを続けていられる。
百合責めに卓越している女兵隊の女ならではの淫靡な拷問だ。
まさか、自分が身をもって味わわされるとは、夢にも思わなかった。
「ああ、もう許してよ──」
息も絶え絶えになって、オクタヴィアは声を洩らした。
全身は大量の汗にまみれていた。目隠しの下では目尻から、涙がにじんでいるのがわかる。
「許してじゃないんじゃないかい、主任。いかせてじゃないの?」
「そうそう。ちゃんと素直にならないと、ずっとこのままよ」
前後から張形を操っている女兵ふたりが笑う。
もう、逡巡している余裕もない。
「ああ、いかせて──、もういかせてください──」
気がつくと無我夢中になって懇願していた。
「ちゃんと言いな──。サロンの特別囚のオクは、おまんこが欲しいってね。それで、今日は終わりにしてやるよ」
アルジェの声が飛んでくる。
そのあいだも、前が抜かれ、後ろが刺激され、また抜かれて前に戻っている。
だが、ここでアルジェの言葉のままのことを口にすれば、この身を焼け焦がされるような焦れったさと、切なさで火のついたような責めを、やっと終わってもらえる──。
もう、それしか考えられなかった。
「そ、そうよ──、欲しいわ」
「それだけじゃわかんないわ、オク。アルジェ様に、ちゃんと言えって命令されたんでしょう?」
「そうそう、魔核と媚薬で苛まれている身体を焦らし抜かれて、頭がおかしくなっても知らないわよ」
「だけど、すごいわね。この格好でお尻にまで愛液が流れてるんだもの。それだけ感じてるのよ」
「確かに、少しは恥を知りなさいよ、主任」
オクタヴィアを囲んでいる兵たちが嘲りの言葉を繰り返す。
屈辱感と屈服感を増大させるためにやっていることだとはわかる。しかし、それでも、いまのオクタヴィアには、被虐の陶酔が身体に染みわかってくるのがわかる。
もう、どうでもいい。
これ以上、焦らされたら本当に狂ってしまう。
オクタヴィアは観念した。
そして、またもや、責めたてていた張形がすっと引かれた。今度は、次の張形がなかなか襲ってこない。
「ううっ、駄目よお……」
オクタヴィアは呻きを放って、見えない張形を探すように、身体を彷徨わせる。
「オクが素直にならないと、絶頂寸前のまま、ずっとお預けだ」
前側の張形を操る女兵が、股間のごく入口に近いところで、張形を出し入れさせる。
「うああっ、ああっ、うああっ──。も、もっと奥まで──」
怖ろしいほど峻烈で、焦燥感に満ちた刺激だった。
必死に張形を追い掛けるように、腰を前に突き出す。
だが、すっと張形は遠ざかっていく。ほんの入口に尖端が当たっているだけ──。なんとか快感を得ようと、懸命に腰を動かす。
そんな浅ましい姿に、哄笑が起きるが、もう気にならない。
でも足りない──。快美感は走るのに、同時に苦悶を呼び起こす焦れったさが襲いかかるだけだ。
「ほら、まだ焦らしたりないのかい?」
その張形がすっと抜かれてしまった。
「ああ、ごめんなさい──。もうしてください──。特別囚のオクにおまんこをして──。おまんこしてええっ」
熱にうなされたように、オクタヴィアは泣きじゃくるような声を放って、腰を揺すり動かす。
もう自分でもなにを喋っているのかわからない。
「じゃあ、あたしと口づけできるかい、主任」
女兵のひとりが揶揄うように言った。
顔のすぐ前に女兵のひとりの顔を感じる。
なにも考えられない。
オクタヴィアは、唇に柔らかいものを感じると、夢中になって舌を滑り込ませて、体内に疼く欲情をぶつけるように、相手の舌を絡め取った。
欲望のまま口づけを続ける。
しばらくして、女兵の舌が離れていく。
オクタヴィアは、半ば放心状態になった。
周りでは、女兵たちがくすくすと笑っている。でも、なかなか張形を使ってくれない。
「……ああ……。い、言われたとおりにしたわ……。だ、だから最後までお願いよ──」
オクタヴィアは声をあげた。
「……ふふ、どうやら、堕ちたね、主任」
「よくできました」
前後から張形が差し込まれた。
「ああっ──あああ──」
オクタヴィアは、待ちに待っていた刺激に、愉悦の声をあげて身体を痙攣させた。
しかし、なぜか律動がない。
それどころか、ひんやりとした革の圧迫があり、股間をなにかで包まれてしまった。
腰の後ろで金属音がして、強い締め付けを腰に感じた。
動顛してしまう。
張形を挿入されたまま、封印をされてしまった気配なのだ。
目隠しが外される。
オクタヴィアは、眼を見張った。
「な、なによこれ──?」
オクタヴィアは声をあげた。
腰に嵌められていたのは、細い革帯の下着だった。いわゆる〈貞操帯〉だ。しっかり股間に隙間なく喰い込んでいる。おそらく、後ろで魔道のロックもされたと思う。
「ど、どういうことよ──」
オクタヴィアは驚いてしまった。周囲の女兵たちを……、次いで、ソファに座ったままだったアルジェを見やった。
「いやあ、ご苦労さん、主任。ちゃんとお強請りが言えてお利口さんだ。宣言のとおりに今日の矯正は終わりだ。なかなかよかったよ」
アルジェがわざとらしくその場で拍手をした。
その態度に、頭に血が昇った。
「お、終わりってなによ。だって、わたし……終わってないわよ」
思わず叫ぶ。
すると、アルジェたちが一斉に爆笑した。
「がっかりしたとでも言いたいのかい? サロンの女囚の掟を覚えてるかい。望みは口にしろ──しかし……。その次は?」
アルジェが笑いながら言う。
「……しかし、その望みが叶うとは……限らない……」
オクタヴィアは呆然と口にした。
「そういうことだ。もう夕方だ。今日の矯正は終わるよ。わかっているとおり、排泄は決められている時間しか許さない。今夜はなしだ。貞操帯で封印しているしね。死ぬ気で我慢しな。明日の朝には放尿も許可してやる。しっかりと溜めておくといい」
アルジェが言った。
オクタヴィアは愕然となってしまった。