その村には、魔女がいた。
魔女は村の外れの十字架に磔にされていた。 魔女は髪の長い若い女で、胸が大きく、村の女の誰よりも肌が白かった。 そして服を着ていなかったから、桃色の乳首も、股間にある女性器も、いつも太陽の下に晒されていた。
トムは、他の子どもたちと共に村の外れまで行き、魔女に向かって石を投げるのが大好きだった。 石が当たるたびに魔女は傷つき、血を流した。彼女は「痛い、やめて」と言ったが、トムを含め、誰もやめなかった。
魔女に対して何をしても、村の大人たちは誰も叱らなかった。 それどころか、魔女を傷つけると、褒められた。
「魔女は、悪い女なんだからね。 魔女には何をやってもいいけど、魔女以外の人には同じことをしちゃいけないよ。 特に女の人にはね」
トムは母親から、そういわれたことがある。
(だけど、魔女はなぜ悪い女なんだろう?)
トムはときどき考えた。
(きっと、魔女が服を着ていないからだ。 村の他の女の人たちは、みんな服を着ているのに。 いつも裸でいることが、魔女がしている悪いことなんだ。 だからみんなは、魔女に何をしてもいいんだ。魔女は悪い女なんだから)
村の大人たちも、魔女を傷つけているのを、トムは何度も見た。 例えば、奥さんと喧嘩して家を追い出されたというジョンソンさんが、悪態をつきながら魔女を殴っているのを見たことがある。 そのときも魔女は「痛い、やめて!」と叫んでいたが、その場を通りかかる他の人は、誰も何もしなかった。 魔女を助けることも、ジョンソンさんを止めることも。 十字架に磔にされた魔女は逃げることも殴り返すこともできず、ただ殴られ続けていた。 魔女が鼻血を出すようになると、ジョンソンさんはやっと殴るのをやめた。魔女の顔に唾を吐き捨てると、ジョンソンさんは去っていった。
ときどき、魔女の悲鳴らしき声が、遠くから聞こえてくることもあった。
「いやあああああ!
」あるいは、
「きゃあああああ」
といった、甲高い、何か恐ろしげな悲鳴だ。
一体何をされているのだろうと好奇心が湧いて、一度トムが魔女のところまで行こうとすると、母親に肩を強くつかまれ、「やめな」と厳しく言われたことがある。
「いいかい。 トム。 ああいう悲鳴が聞こえたときに、絶対魔女のところに行っちゃいけないよ」
「どうして?」
トムは不思議だった。
「それはいつかわかるよ。でも一つだけ教えておくと、ああいう悲鳴が聞こえてくるときは、大抵男の人が、魔女に……」
母親は一瞬、言葉に詰まったようだった。
「魔女に、何かをしているときなんだ。 それはね、今のあんたが、まだ見てはいけないことなんだよ。 だから絶対行っちゃいけないよ。 わかったね。 トム」
トムは渋々頷いた。
魔女を傷つけるのは、男の人がすることが多かった。女の人は、大抵魔女が磔にされている十字架の横を通り過ぎるときは、まるでそこに何もないかのような態度で歩くことが多かった。 そんなとき、女の人たちがちらりと魔女を一瞥すると、そこには嫌悪と哀れみが合わさったような、不思議な目が見えた。
トムの友達のケイトは、大人の女の人たちとは違っていた。 トムや他の子どもたちと一緒に元気いっぱい、魔女に石を投げた。 彼女は魔女の胸のあたりを狙うのがすごく上手かった。 そこは皆の中で、当てたらすごいと言われるところだった。今日もケイトが投げた石が、魔女の豊かな胸のに当たり、魔女は「う……!」と呻き、涙を流した。
「ケイトはすごいなあ。 いつもおっぱいのところに当てて」
トムが素直に感嘆すると、ケイトは自分の胸を誇らしげに反らした。
「まあね。 あんたももっと練習すれば、当てられるようになるわよ。 トム」
トムも負けじと石を投げる。 胸を狙ったけど、魔女の腰のあたりに当たった。
「う......っ!」
魔女の顔が一瞬、苦痛に歪む。
その顔を見て、トムは次に投げるために地面へ伸ばそうとした手を止めた。
「トム」
ケイトが不思議そうな顔をして彼を見つめる。
トムは近頃、こういう変なことがあった。いつもと同じように魔女に石を投げているだけなのに、突然動きを止める瞬間がある。 そして魔女を見つめるのだ。 ケイトはそんなトムを見るたびに、何か言いようのない気持ちが湧き上がるのを感じた。 悲しみのような、怒りのような、恐れのような不思議な気持ち……。 一番不思議なのは、必ずその後で、なぜか魔女に対する怒りが湧き上がってくることだ。 ケイトはただ、面白いから魔女に向かって石を投げているだけなのに、そういう気持ちになった後は、なぜか怒りから魔女に石を投げたくなる。
「......この魔女め! 死んじゃえ!今
もケイトはそう叫び、魔女に石を投げる。 胸に見事に当たった。 魔女はまたうめいた。
石を魔女に当てるのに疲れると、みんなはそれぞれの家に帰っていった。
その夜、トムはベッドに入っても、眠ることができなかった。 魔女のことをどうしても考えてしまい、眠れないのだ。魔女の体のいろんな部分のことや、石を当てられたときの魔女の顔の歪み方、何度か聞いたことがある遠くからの悲鳴……。 それらの全てが、トムを不思議な気持ちにさせた。 心だけでなく、体まで変になった。 体の一部が、妙に熱いのだ。
何かを「出したい」とトムは思った。 それは、おしっことは違うものだ。 そして「出したい」と思うとき、なぜか魔女の姿を思い浮かべた。 十字架に磔にされ、日の光の下に晒された魔女の全身を……。 豊かな胸。 金色の豊かな長い髪。 白い肌。 足と足の間に見える、あの、不思議な場所……。
トムは、こっそり家を抜け出した。 我慢できなかったからだ。 でも何に我慢できないのか、トム自身にもよくわからなかった。
もう夜も遅く、村は寝静まっていた。 月の光だけが照らす村を、トムは走った。 行先は、魔女が磔にされている十字架があるところだ。
だけどそこには、トムが想像していなかった光景が広がっていた。十字架の周りに、人が何人かいたのだ。 みんな、男の人だった。 その中の一人を、トムは知っていた。 昔はよく一緒に遊んでもらっていた、ハリー兄ちゃんだ。
ハリー兄ちゃんが魔女にしていることが、トムには理解できなかった。 トムは叫んだ。
「ハリー兄ちゃん!何しているの?!
」ハリーはトムを見た。
「お。トムか」
疲れた声色だった。 沢山運動して疲れている人のような、疲れた、でも興奮した声色だった。
「お前もこっちに来いよ。 一緒に楽しもうぜ。 やり方を教えてやるからさ」
「何を? 何をやっているの?」
「○○○〇だよ。 ああ、お前にはまだわからないか。 でもいつかわかるよ。気持ちいいぞ」
○○○〇という単語の意味が、トムにはよくわからなかった。 ただ、恐ろしいと感じた。
「許して......。 もうやめて……」
と苦しむ魔女の姿が恐ろしかったし、魔女が苦しむ姿を見てハリー兄ちゃんやその場にいる三人の男の人たちが笑う姿も恐ろしかったし、ハリー兄ちゃんが魔女に対してやっていることも、わからないのになぜか恐ろしかった。
「やめなよ。 兄ちゃん。 魔女は嫌がっているじゃないか。 苦しんでいるじゃないか。 やめてあげてよ」
「何言っているんだよ。 トム、お前だって他の子どもたちと一緒に、この女に石を投げているだろ? 同じことだよ。 こいつは、俺たちを気持ちよくさせるためにここにいる女なんだからな!」
トムは、体が震えた。ハリーと男の人たちが魔女に対してやっていることを見て、恐ろしさだけではない感情が湧いてきたからだ。 家の寝床で感じた不思議な気持ちが、なぜかより強まってきた。 体の一部が、なぜか熱くなってきた。 トムは不思議だった。
(どういうこと?なんで...... なんで、固くなっているの? 僕は、僕は今…… おしっこをしたいわけじゃないよ)
「ぼうやもこっちに来いよ。やり方を教えてやるからさ」
男たちは笑った。 トムはしばらくその場に立ち尽くし、葛藤したが、やがて踵を返し、家まで走って帰った。 恐ろしさから逃げたかったからだ。
トムは家に帰り、ベッドに潜り込んだ。 だけど気持ちが静まらなかった。 翌朝、トムは今まで感じたことがない感触を覚えて、目を覚ました。 …… 汚れていたからだ。 ズボンの一部が、汚れていた。 その汚れは、これまで見たことがない、白濁したねばつく汚れだった。
その朝から、トムは、魔女に石を投げるのをやめた。
*
その朝から、数年が経った。 ハリー兄ちゃんは結婚した。
その年の、収穫を祝う祭りが近づいてきた頃、トムの父親がトムを前にして、厳かな顔で話をした。
「トム。 お前も、この村の大人がみんな知っていることを、知るべき年になった。 祭りの後で、村長の館に来なさい。 そこで、男たちだけの宴がある」
祭りは、盛況だった。 村人たちは太鼓や笛の音に合わせて、手を取り合って踊った。男も女も、都市よりも子供たちも一緒になって踊り、豊作を祝った。 トムは、幼馴染のケイトと手を取り合って踊った。 踊った後、ケイトがトムに「好きよ」と言った。 トムも「僕も好きだよ、ケイト」と返した。 結婚しようと、二人は約束した。
祭りの後、トムは村長の館に来た。 そこには村長と、トムの父親と、村の男たちがいた。 ハリーもいた。 みんな、トムよりも年上だった。
そして、男たちが囲む中心に、魔女がいた。
魔女は、十字架にいるときと同じく、全裸だった。 胸を両手で隠し、脚をしっかりと閉じて座っていた。 全身が震えていた。
トムは驚いた。 父親が話しかけてきた。
「これから、村の男たち皆で、順番に魔女と〇〇〇〇をする。 最初は村長が、次は一番若いお前の番だ。トム」
もうトムは、〇〇〇〇という言葉の意味を知っていた。 前に、ハリー兄ちゃんたちが魔女に何をしていたのかも、もう知っていた。 かつて、魔女に石を投げていたときにしばしば感じた、魔女に対する自分の不思議な気持ちが一体何であるかも知っていた……。
でも、まだわからないことがあった。
「父さん。魔女っていったい何なの? 魔女は一体どんな悪いことをして、十字架に磔にされていたの?」
「誰も知らない。 魔女は、この村ができたときから、ずっと十字架に磔にされていた。 何も食べず、何も飲まないのにずっと生きている。 そしてずっと年を取らない。 美しい若い女の姿のままだ。 私も子どものときは、他の子たちと魔女に石を投げていた。 その頃から、魔女は今と同じ見た目をしていた」「
そんな人間、いるわけがない」
「そうだ。 だから魔女は人間ではないのだろう。人間でないことが、魔女の罪なのだ」
ハリーがトムに話しかけた。
「トム。 お前は前、俺と友達たちで魔女に〇〇〇〇をしていたところを見たよな」
トムは頷いた。
「あのとき、魔女としたことが、俺にとって初めての〇〇〇〇だったんだ。今の妻と結婚するずっと前に俺は魔女と〇〇〇〇をした」
「この村の男は、みんなそうだ」と父親が続けた。 「最初はみんな、魔女に石を投げる遊びに夢中になる。 やがて、魔女の体の美しさに気づくようになり、欲望を抱く。 その欲望を、身動きできない魔女にぶつける。 だが、いくら〇〇〇〇をしようとも、魔女が子どもを産んだことは一度もない。そして魔女ではない、まともな女を妻にし、男の子を妻が産めば、その子がまた魔女と〇〇〇〇をする。 これは摂理だ。 村の男たちに女の体を教えることが、魔女の役割なのだ「
そして、石を投げられたり、殴られたりすることも、魔女の役割だ」
とハリーが加えた。
「そして、収穫を祝う祭りの晩に、こうして集まった村の男たち全員と〇〇〇〇をすることも、魔女の役割だ」
村長が、話しかけてきた。
「一年でこの夜だけは、魔女は十字架から降ろされ、館へと連れてこられる。 村の男たちは今宵、日々の労働の疲れをこうやって癒す。 だから、女たちは皆魔女を嫌う。 自分の夫が、こうやって魔女と〇〇〇〇をすることが、女たちには気に入らないのだ。 今宵だけではない。村の男はいつでもどんなときでも、魔女と〇〇〇〇をすることができる」
トムは、ときどき魔女の悲鳴を聞いたことを思い出した。 母親が、絶対に見に行ってはいけないと言った理由も、理解した。
「いつでもどんなときでもしてもいいのなら、どうして今夜、わざわざみんなで集まるの?」
「絆を深めるためだ。みんなで同じ時間に魔女と○○○〇をすることで、村の男たち同士の絆を深め、次の一年間、協力して村を維持するためだ」
言い終えると、もはや語るべきことはないと、村長は沈黙した。
村長は、魔女の体を押し倒し、脚を開こうとした。
魔女は、「いやあああ!」と叫び、抵抗したが、他の男たちが魔女の体を押さえ、村長が○○○〇をするのを手伝った。
トムも魔女の脚を押さえつけることで、それに参加した。 魔女の脚は、綺麗だった。
村長が終えた後、トムは次に○○○をした。 魔女の体をこんなに間近で見るのは初めてだった。 石を投げていた時よりもずっと、魔女という存在と繋がることができた気がした。 だけどそれよりももっと、村の男たちと繋がる気持ちを、トムは感じることができた。 父親とも、村長とも、ハリーとも、他のどの男とも、心の奥底の部分で、一つになれた気がした。
その夜は、村の男たちみんなで、魔女と○○○をした。 魔女は最初は悲鳴を上げて涙を流し、嫌がっていたが、そのうちそれは収まり、おとなしくされるがままになっていた。
とても楽しい夜だと、トムは感じた。
*
次の日の朝、トムはこれまでの人生の中でもっとも、すっきりした気持ちだった。
その年の秋が暮れる頃、トムはケイトと結婚をした。 次の年には子供が生まれた。 男の子だった。 トムはその子にジョンという名前を付けた。
大きくなったジョンは、みんなと一緒に村の外れに出かけるようになった。 十字架に磔にされた魔女に石を投げに行っていることは、聞くまでもなくわかった。 ずっと昔と同じように、魔女は十字架に磔にされていた。 トムが石を投げていた頃と、全く変わらない美しさを保っていた。
ときどき、トムは一人で、魔女のところに行くことがある。 そして、嫌がる魔女に、トムがしたいことをした。 そんなときいつも魔女は「きゃあああ」という甲高い悲鳴を上げる。子どもの頃にトムが何度か聞いたのと、同じ悲鳴だ。 それを耳元で聞くたびに、トムは思う。
この村の女の中で、魔女が一番美しい。