男性向け18禁小説。純愛と友情とエロ。抜きメイン。タイラズマ+サトの3P描写多し。アズサト、タイラサトの組み合わせもあり。序盤4分の1くらいまではヤンデレ妄想垂れ流し、中盤と後日談がエロ。

拙作「東のモノローグ」と同じ世界線の別ルート(3Pルート)。東と平は大学2年の夏に結ばれ彼氏彼女の仲になるが、お互いが大切すぎて「相手が死んだら自分も死ぬ」とヤンデレ化する。心配になった佐藤は同棲中の二人の間に観測者として自分が入ることで仲を安定化させようとするが…

■キャラ
佐藤:東の親友、ヤンデレーズに巻き込まれる女。感情の起伏が少なく研究一筋だが東を何より心配している。スレンダー体形で誘い受けの理論派。エロい。
東:平の彼女でノリのいいギャル。佐藤の親友にしてヤンデレ1号。平といる時だけ精神が保てる。セックスを奔放に楽しむ感覚派。エロい。
平:東の彼氏。絶倫。1日に何回か出さないと精神の均衡を失う。東が死んだら自分も死ぬ、東に死んでと言われても喜んで死ぬヤンデレ2号。

★プロット/展開/詳細描写/台詞は全て作者作成、校正にAIのべりすとを利用/調教しています。
★本作はハーメルン/Pixivで公開しています。
※ハーメルンは男性本位のエロ、凌辱、鬼畜系も置いてます(あらすじで注意入れてます)

作者:eronosuke
ハーメルン:https://syosetu.org/user/514099/
Pixiv:https://www.pixiv.net/users/125632702/novels


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タイラズマサト ~ヤンデレカップルと観測者の愛情理論~

「ねぇ平。平が嫌じゃなければ今度の土曜日、映画見に行かない?」

大学二年の秋、私――東紫乃はデートの誘いを口にする。何度も脳内で練習したはずなのに、毎回、声が震えてしまう。

 

-----

 

高校を卒業し、大学二年まで拗らせた両片思いが実ったのは、つい最近、夏の海での出来事だ。まさか本当に叶うなんて、夢にも思わなかった。

 

「……ああ。いいよ」

照れ隠しのようにそっぽを向いた平秀司の横顔に、私は心臓を掴まれた気がした。

 

彼氏彼女の関係になり、デート回数が二桁を超えた秋頃――

 

駅前のカフェで課題を広げながら、私はぼんやりと考えていた。テーブルの上の紅茶からは湯気が立ち上り、窓ガラスに結露がにじんでいる。

水滴がゆっくりと流れ落ちる様は、私の思考の散らかり具合にどこか似ていた。

 

「……ねぇ平」

「ん?」

向かいの席でノートパソコンのキーボードを打っていた彼が顔を上げる。相変わらず綺麗な指だ。

「平さぁ……なんで優しいのに、いつも隠そうとするの?」

カップを持つ手が少し止まる。眉間に微かな皺。

 

初デートの時から違和感はあった。いや、「嬉しいけれども腑に落ちない何か」だろうか?

混み合った電車の中。私がバランスを崩しかけた時、咄嗟に支えてくれた腕。その力強さにドキッとしたのも束の間、「……あ、悪い」と言ってすぐに離れた。申し訳なさそうなその表情が妙に印象的だった。

映画館の暗闇でそっと絡ませてきた指もそうだ。温もりを感じた瞬間、「あっ……つい!」なんて言い訳して慌てて引っ込めた。耳朶が真っ赤だったのを私は見逃していない。

 

『……そんなんじゃない』

彼はいつもそう言う。優しさを指摘されるたびに。

『ただの偶然だから、気にしないで』

その言葉の裏に潜む何か――最初は単なる照れだと思った。

高校時代の彼は確かにそういうところがあった。イケメンなのに妙に卑屈で、褒められることを極端に恐れている節さえあった。

中学時代の「陰キャで太っていた自分」へのコンプレックスの名残なのかもしれない。

だからきっと――この大学生になっても続く妙な謙虚さは、その延長線上のものだと。彼らしい可愛げのある欠点だと、そう解釈していたのだ。

 

けれど。

最近の私には、別の可能性がちらついている。

それはもっと深い――優しさそのものを汚してしまうんじゃないかというような、根深い恐怖。つまり……

 

「……自己嫌悪?」

 

ぽつりと言葉が零れた。

平はキーボードを叩く手を完全に止め、ゆっくりとこちらを向いた。その眼差しには驚きが浮かんでいた。核心を突かれた者の怯えにも似ていた。

「……」

沈黙が重くのしかかる。湯気はもうほとんど消えていた。

 

 

-----

 

コーヒーカップの底に溜まった褐色の輪を見つめながら、記憶の糸を手繰る。平が本当の意味で「変わった」と感じたのはいつ頃だったかしら?

 

「平ってさ、高校の頃からなんか気を遣ってる感じしない?」

 

大学一年の夏、私の親友・佐藤葵がそんなことをぼそりと呟いたのが印象に残っている。

当時、平は私たちとは別の大学で新しくできたゼミ仲間たちと馴染もうと必死になっていた頃だ。

 

打ち上げでも、みんなが冗談で盛り上がる輪の中で一人だけ少し距離を取り、相槌を打ちながら場の空気を読んでいた。

「次はどこ行く?」と聞かれれば「みんなが行きたい所でいいよ」と返す。あの笑い方――目尻を下げた微笑み――は確かによく見かけた。でも目はどこか冷めていたような気がする。

 

そうやって周囲との衝突を避け続けた結果――

「平くんて話しやすいよね」「優しい人だよね」

平に対してそんな評価を聞くことは多くなった。けれど、その代償として周囲の他人に対する平の個性は希薄になっていった。

 

私でさえ気づけなかったほど巧妙だったのだ。あの頃の私が感じ取れたのは、せいぜい「平はまだ人とぶつかるのが怖いんかな」という表面的な印象だけ。当時私はまだ彼の深層を覗けていなかった。

 

カップを持ち上げると、ぬるくなった液体が舌にまとわりつく。苦い。ちょうど今の私の心境みたいだ。

 

(……だって、しょうがないじゃん)

 

心の中で弁解しながらも、胃のあたりが重く沈む感覚は消えない。その優しさにつけ込む自分が許せない。

 

そう、平は断らない。いや、断れない。

それは自己防衛本能なのだと思う。拒絶すれば必ず相手を傷つけると信じているから。中学時代に何度も浴びた冷笑や嘲笑。

それが彼の細胞レベルに刻み込まれたトラウマなのだ。彼にとって「ノー」を言うことは平にとって暴力を振るうことと同義なのかもしれない。

 

特にこのフレーズ――

「平が嫌だったらいいんだけど」

 

魔法のような言葉だ。自分の罪悪感を消し去り安全地帯を作る呪文。平に対してその効果は絶大だった。

 

大学に入って二回目のクリスマスイブ。イルミネーションが眩しい街並みを歩きながら、私たちは小さなクリスマスマーケットを巡っていた。

暖かいグリューワインを飲み干した頃には、私の足は疲労で鉛のように重くなっていた。平もそれに気づいていた。

 

「結構歩いたな」

彼がふと疲れたように漏らしたその一言、私にとっては天啓のように響いた。

 

「ねぇ……まだ遊び足りなくない?」

言いながら心臓が早鐘を打つ。

「実は……この近くに、朝まで営業してるホテルがあるんだ。『平が……もし嫌じゃなかったら』さ」

 

その言葉を口にした瞬間、罪悪感が喉までせり上がってきた。でも、言ってしまった以上後戻りできない。平の表情が微かに硬くなるのを見逃さなかった。

 

「……ああ」

一拍の間。

「そんなことない。俺も……もっと一緒にいたい」

 

そう言った時の彼の瞳は揺れていた。期待なのか緊張なのか――あるいは恐怖か。でも最終的にはいつも譲ってくれる。私の願いを叶えてくれる。

 

ホテルの部屋に入るや否や、彼は壁に向かって背中を向けた。「お風呂……入ってくる」と呟く声には明らかに動揺が滲んでいた。私が背後から抱きつくと、その肩が小さく跳ねた。

 

「……嫌だった?」

不安に押し潰されそうで問いかける。

 

「そんなわけない」

振り向いた平の目には困惑と何か熱いものが渦巻いていた。触れ合う肌の温度が確かめられないほど寒くて。だから私たちは抱き合った後、毛布にくるまりながら夜更けまで語り明かした。寝息が聞こえるたびに胸が痛んだ。

 

(ずるい女だな、私)

 

利用しているのは百も承知だ。でも止められない。彼が与えてくれる優しさの隙間に滑り込み続けるしかないのだ。

 

 

窓ガラスに映る自分の顔が歪んで見える。カフェの灯りに照らされた輪郭は、どこか醜い。

 

(平は私のことが好き)

 

それは疑いようのない事実だった。あの穏やかな微笑みの奥に宿る熱。さりげないボディタッチの合間に垣間見える欲情。目が合った瞬間に瞳孔がわずかに拡大する反応。

どれも私が恋愛ゲームで培ってきた知識の産物ではない――彼が自然に滲ませる「好き」の証だった。

 

でもね――

その安心感は砂上の楼閣でしかない。

 

将来を考えると背筋が寒くなる。

大学を卒業して社会に出たら?生活習慣の違いが如実に現れたら?結婚――という言葉すら重くのしかかる未来。

 

(もしも平が私の過去の男性遍歴に耐えられなくなったら?)

(もしも平の優しさが疲弊したら?)

(もしも平の………トラウマが再燃して、壊れてしまったら?)

 

想像するだけで血の気が引く。胸の奥が鋭く痛む。

 

そんな日が来たとしても、私はきっとこう言うだろう。

「ねえ『平が……嫌だったら』私たち別れようか?」

 

ああ――

そうやって平に選択権を預ける卑劣な手口。またやるつもりなの?

狡猾にもほどがある。こんな女が恋人を名乗る資格などあるのか?

 

(優しい彼なら「そんなことない」って言うに決まってる)

(断れない平を利用して縋り付く最低の女だ)

 

自分に唾を吐きかけるべきだ。

けれど実行できない。だって今この瞬間にも……

彼の声を聞きたい。触れたい。彼の中に埋もれて安心したい。

 

愛おしさと嫌悪感が交互に押し寄せ、脳内で渦を巻く。

(それでも手放せないんだ)

(好きすぎるから――)

 

 

***

 

 

平の優しい問いかけが胸を貫いた。

「東?大丈夫?」

 

その声色が――いつもと変わらず温かく、どこまでも無邪気だった。

まるで夕焼けを見つめる子どものような純粋さで私を気遣う。その瞬間、堪えていた堤防が音を立てて崩れた。

 

(私の嘘に気づいてすらいない……)

(こんなにもあなたを騙し続けているのに……)

 

瞼の裏側が熱くなり、睫毛が震えた。そして――

一粒の滴が頬を伝い落ちる。

それを追うように第二・第三の涙が湧き上がり、テーブルクロスに暗い染みを広げていく。

 

「……!?」

 

平の表情が驚愕に変わる。慌てて立ち上がりかけたのを制するように、私は俯いたまま拳を握りしめた。しかし抑制は効かなかった。

 

「うぅ……っ!」

嗚咽が喉を押し広げる。

「ごめんなさい……っ…平ぁ……」

言葉を紡ぐ度に新しい涙が湧く。

「ごめ……ね……」

声が割れて上擦る。周囲のざわめきが遠のいていく。

「ずっと……わたし……」

 

平がそっと隣に座り直した。ジャケットの袖で優しく涙を拭おうとする。その動きにさえ心が千切れそうだ。

「何を謝ってるんだよ……?」

 

彼は何も知らない。私が何に苦しんでいるかも。何に感謝しているかも。どんな矛盾した愛情を抱えているかも。

 

(最低だってわかってる……)

(優しさを盾にあなたの人生に巣食ってる)

(選択肢なんて最初から与えてないくせに)

 

だけど止まらない。

声を押し殺すことなど不可能だった。

 

「う……あぁぁ……っ!」

初めて大声で泣いた。カフェという公共の場だとか羞恥心だとか理性が蒸発していく。ただ溢れるものを解放するしかない。

 

(お願いだから今だけ……)

(弱さを曝け出させて……)

 

平は黙ってハンカチを差し出した。それを受け取る指先がかすかに震えているのに気づいた。彼もどう対応していいかわからないのだ。

 

「……ありがとう」

絞り出した声はひどく掠れていた。

「平が……優しいから……」

言葉が途切れる。

 

その瞬間――彼の眼差しが微かに曇った。

 

 

涙の洪水が少し引いた頃、思考が急速に冷え込んだ。

(これじゃ同じじゃない!昔の男たちと)

 

彼らもよく使った。「お前が良ければ」「嫌なら止めるからさ」と甘い前置き。しかし言葉の裏に潜む圧力。結局最後は私が折れることを知っていたのだ。

今の私は平に同じことを強要している。違うのは、目的が快楽か所有欲か――それだけだ。

 

涙の膜が薄らいだ視界の先に、平の心配そうな顔があった。その優しさが刃のように突き刺さる。

 

(最低だよ……私)

 

そう自覚しながらも、もう後戻りできない沼に足を踏み入れていた。平に抱かれるあの感覚――全身の細胞が喜びに沸騰し、世界が溶けてなくなるあの一体感。

あれを知ってしまった今となっては、別れるという選択肢は物理的に存在しない。生きている実感そのものが消滅するような恐怖が胸を占める。

 

(だって……平がいないと私は…死んじゃう…)

 

死ぬのではなく「死んでしまう」のだ。魂の根幹が枯れ果てる。呼吸の仕方を忘れ、鼓動が止まる錯覚。それは比喩ではなく、確信めいた予感だった。

 

縋るように視線を平の瞳に固定させる。彼の黒曜石のような目に自分の歪んだ顔が映っていた。言葉にならない懇願が喉までせり上がる。

 

『お願い……離れないで……』

 

声に出せず、ただ心の中で叫ぶ。過去の男たちが自分を道具のように扱ったことへの嫌悪感が蘇る。だが今の自分は? 彼らと変わらない。平の優しさという最大の武器を利用して、彼を雁字搦めに縛りつけようとしている。

 

それでも――

この腕を離した瞬間、私は崩れ落ちる。

だから今日も明日も明後日も、私は同じ呪文を唱えるのだろう。

 

(平が望むなら……それでいい)

(たとえそれが嘘でも……)

自己欺瞞と執着の狭間で、東はただ平の存在だけを支えに、歪んだ依存へと深く沈んでいった。

 

 

-----

 

 

涙で霞む視界の中、平の姿がぼんやりと揺れていた。彼の口が小さく開かれる。

 

「……東?」

 

その声に含まれるのは、途方もない困惑と深い憂慮。次に続くであろう「大丈夫か」という言葉を待たずに、東は激しく首を横に振った。

「ちがう……違うの……」

絞り出すような声。しかしそれは届かない。

目の前の男は、しばらく口を開けたり閉じたりを繰り返した後、意を決したように言った。

 

「ごめんな……俺、またなんか変なこと言った?」

自嘲気味に眉が八の字に歪む。

 

「昔から口下手でさ……東みたいに察しも良くないし。だから……傷つけちゃってたら本当にごめん」

平の目が不安そうに東の瞳を覗き込む。そこには明らかな自己嫌悪が浮かんでいた。それはかつての陰鬱な日々を思い出させるような、深い闇を湛えた色だった。

 

(違う……!)

 

胸の内で東が叫ぶ。

(平は悪くない。全部私のせいなのに……!)

しかしその叫びは声にならない。ただ嗚咽が喉を塞ぐ。

 

その沈黙を破るように、平が再び口を開いた。今度はゆっくりと、確かめるように。

「あのさ……東」

彼は一度唾を飲み込み、顔を赤らめた。その仕草がやけに幼く見えて、東の胸を締め付ける。

 

「俺……東のこと……好きだよ」

ぽつりと零れた言葉。不器用な告白。

 

「照れくさくてさ……なかなか言えないんだけど」

耳まで赤く染めながら、それでも彼は東から目を逸らさない。

 

「好きだよ。……愛してる」

最後の一言はほとんど囁きに近かった。けれどそれは確かに東の心臓を打ち抜いた。

 

(違うの!)

(この涙は……)

(あなたの愛を疑ってるわけじゃない!)

(むしろ逆で……)

(私が汚すぎて……こんな綺麗なあなたを独占しようとしてるから……!)

 

心の中で嵐が吹き荒れる。平の純粋な愛の言葉が、まるで研ぎ澄まされたナイフのように東の自己嫌悪を抉る。しかし同時に、その温かさは麻薬のように脳髄を侵食した。

 

(駄目……逃げられない……)

(この温もりなしでは……息もできない……)

 

東は必死で顔を上げた。泣き腫らした目で、平の顔を捉える。精一杯の笑顔を貼り付けた。それは痛々しいほど不格好な泣き笑いだった。

 

「うん……ありがとう」

声はまだ震えている。

 

「私も……愛してる」

その言葉に嘘はない。心の奥底から迸るものだ。だが同時にそれは恐ろしい重みを持っていた。

 

「ずっと……一緒にいてね……平」

最後の言葉を吐き出した瞬間、自分自身の言葉に鳥肌が立つほどの恐怖を感じた。

それは祈りだった。同時に絶対的な束縛の言葉。

 

呪いにも似た響きが、静まり返った店内の空気を切り裂いた。

東は心の奥で慟哭していた。

 

(ごめんね……平)

(でももう……離してあげられないの……)

自分の醜さを自覚しながらも、彼の存在を手放すことができない東。その歪んだ愛情は、彼女自身をも深く蝕んでいくのだった。

 

 

-----

 

 

時間が過ぎ、閉店間際の静まりかけたカフェの片隅で、平と東は向かい合って座っていた。さっきの激情が嘘のように凪いだ空気が漂っているが、東の心の水面には未だに波紋が広がっていた。

 

(わかってる……わかってるよ……)

このままではいけない。健全な関係ではない。東は痛いほど理解していた。だが、平が隣にいてくれるという事実、彼の体温を感じられるという現実が、その理性をあっけなく粉砕してしまう。離れることなど、想像すらできなかった。

 

 

東はゆっくりと席を立ち上がり、テーブル越しに身を乗り出す。そして平の左耳にそっと唇を寄せた。彼の体がわずかに硬直するのが伝わってくる。

 

「ね、平」

吐息が彼の耳朶をくすぐる。

 

「『平が……嫌じゃなかったら』なんだけど」

言い淀み、しかしすぐに畳み掛ける。

 

「今日…私…帰りたくないな」

囁く声は掠れていたが、有無を言わせぬ響きを帯びていた。それは願いであり、命令でもあった。

 

平はピクリと肩を震わせた。驚愕と困惑がその目に浮かぶ。数秒間、何か言葉を探しているようだったが、やがて力なく俯き、長い溜息を一つ吐いた。その吐息はどこか諦めにも似ていた。

 

「……分かった…ウチに…行こうか」

絞り出すような声。そこに拒絶の色は微塵もない。ただ、どうすればいいかわからないという戸惑いだけがあった。

(やっぱり……そうだよね)

 

東は内心で勝利の快哉を叫びつつも、胸の奥がチクリと痛んだ。平は優しさ故に断れない。その優しさにつけ込んでいる。なんて卑劣な女なのだろう。

 

しかし、そんな自己批判もすぐに霧散する。

(大丈夫……大丈夫……)

自己暗示を繰り返す。

 

(平が辛くなったら私が助けてあげればいい)

(私さえちゃんと見ていれば……平は壊れない)

傲慢な庇護者気取り。

 

東は満足げに微笑むと、平の右手をそっと両手で包み込んだ。その温もりこそが、東にとっての唯一の真実だった。

「ありがとう……平」

感謝の言葉は甘美な鎖となる。

 

「これからも……ずっと側にいてね」

カフェの灯りが二人の影を壁に長く伸ばす。外はもう闇に包まれていた。その暗闇の中へ、東は平の手を握り歩み出す。

彼を縛るこの鎖は、同時に自分自身をも雁字搦めにしている。その重さを噛み締めながらも、東の口元には歪んだ笑みが浮かんでいた。

 

(これで……また今日一日は……平は私のものだ)

その独占欲がどこまで彼女を堕落させるのか。東自身にも見当がつかない。

ただ、この歪んだ愛が終わりを迎える時、東紫乃という人格が消滅するだろうという、確かな予感だけがあった。

 

 

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翌日の大学の昼休み。東は弁当箱を開けるのもそこそこに、薬学科の教室を訪れると、隅で読書をしている佐藤の腕を掴んだ。

「ねぇサト!ちょっといい?」

いつになく切羽詰まった東の声に、佐藤は怪訝な顔をしながらも静かに本を閉じた。

 

「何?お腹でも痛いの?」

「違う……!」

東は佐藤の袖を引いて、無理やり中庭の端にあるベンチまで連れ出した。周囲に人がいないのを確認し、ようやく口を開く。

 

「あのね……私…なんか変じゃない?」

「変?いつものアズじゃない」

「茶化さないでよ!本気なんだってば!」

東は拳を握りしめ、声を震わせた。

「平と付き合えて……前よりずっと好きになってるはずなのに、どんどん苦しくなってきて……」

そこからは止まらなかった。平の一挙手一投足に心が掻き乱されること。些細なことで嫉妬や不安に苛まれること。

昔のように気軽に冗談を言えなくなったこと。そして何より、「このままじゃ私、平を壊しちゃうんじゃないか」という恐怖。

 

「付き合う前は、もっと……こう、つらいけどさ、楽しかったはずなのに……。今は平を見てるだけでドキドキして、平が何考えてるか分からなくて怖くて……。私、おかしくなっちゃったんだと思う……!」

涙声で訴える東の言葉を、佐藤は腕を組みながら黙って聞いていた。やがて深い溜息をつき、静かに言った。

 

「私が思うに、単純な話」

「え……?」

 

「アズは平クンに異常に依存してる。勿論精神的にね」

ストレートすぎる佐藤の言葉が、東の胸に突き刺さる。

 

「平クンがいないと呼吸もできないくらい。それって恋愛っていうより、もはや生存本能レベルの執着じゃない?」

淡々とした佐藤の分析は、あまりにも的確だった。東は反論の余地もなく項垂れるしかない。

 

「どうしよう……私…」

「どうしようもこうしようも」佐藤は肩をすくめた。

「自分で気付いたなら第一歩じゃない。でも、私が言えるのはこれくらいかな。『平クンは平クン』であって、あなたの所有物でも精神安定剤でもない。そこを履き違えないこと」

 

「でも……だって……平は私を見ててくれるのに……私が見てあげなきゃ……」

東の声は弱々しく震えた。かつて「私が平を守らなきゃ」と誓った歪んだ使命感が顔を出す。

 

「その『見てあげなきゃ』っていうのが依存の本質だって言ってるの」佐藤は厳しい口調で続けた。

「相手の為に自分が変わるんじゃなくて、自分の在り方に相手を巻き込んでる自覚を持ちなさい」

 

ぐうの音も出ない。佐藤の言う通りだった。

(そうだ……全部……私の都合だ……)

 

東は膝の上で拳を握りしめた。涙が滲むが、今度は悲しみだけでなく、自分への情けなさと怒りが混ざっていた。

 

「……ごめんね。サト。こんな話して」

「別に。友達だし。ただし」佐藤は少し表情を和らげて付け加えた。

「アズが潰れたら意味ないからね。平クンの為とか思う前に、まず自分の足で立てるようにするのが先決だと思うよ」

 

その言葉は冷たくもあり、優しくもあった。東は俯いたまま小さく頷く。

(自分の足で……?)

 

今までずっと、平のことばかり考えて走ってきた。でも、振り返ればそこには東紫乃という個人の姿があったのだろうか?

佐藤が立ち去った後も、東はしばらくその場に座り込んでいた。

 

青い空を見上げる。風が頬を撫でる。当たり前すぎて忘れかけていた感覚。自分の体、自分の思考。

(私は……本当に平が好きなの? それとも……)

 

新しい悩みの種は、以前の悩みよりもずっと根が深そうだった。

 

 

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ベンチの冷たさが、制服越しにじんわりと肌に伝わってくる。佐藤の去った中庭には、午後の穏やかな陽光が注いでいるのに、東の心には鉛のような暗雲が垂れ込めている。

自分の足で立て、と佐藤は言った。そんなことはわかっている。でも、もう手遅れなのだ。

 

目を閉じると、瞼の裏に浮かぶのは平の横顔。真剣な眼差し。不意に見せる不器用な笑顔。コンビニで働く時の少し大人びた表情。その一つひとつが鮮明で、まるで昨日のことのように蘇る。

(どうしてこんなに好きなんだろう……)

 

理由なんてない。ただ、好きなのだ。朝起きても夜眠りに就く時も、常に平が心の中にいる。それがない人生なんて考えられない。もし平がいない世界だったら、私はきっと息もできない。

ふと、数年前に読んだ少女漫画の一幕が脳裏をよぎる。ヒロインが狂おしいまでに愛する相手に向かって叫ぶセリフ。「アンタを殺してアタシも死ぬ! そうすれば永遠に一緒だもの!」

当時は、なんて幼稚な妄想だろうと鼻で笑ったものだ。でも、今の私なら――この焼けつくような激情を抱えた私なら――それを笑い飛ばすことなど到底できないだろう。むしろ、痛いほど理解できてしまう。その絶望と陶酔。生と死の狭間で踊る危うい愛。

 

「……平が死んだら、私も死ぬ」

 

先ほどの台詞を少し見直して、呟いてみる。想像するだけで指先が震えた。胸の奥がぎゅっと締め付けられ、涙が溢れそうになる。でも同時に、奇妙な安堵感も広がる。

だって、それがいちばん「綺麗」なエンディングだから。

 

互いを想い合ったまま、苦しまず永遠になる。なんて完璧な愛の形だろう。

だが、そんなものは理想でしかない。平は生きている。生きて、呼吸をして、時には笑って、時折傷ついた顔をして。そして今、東の傍らにいてくれる。

 

ならば、私が取るべき道は何か。

平が生きている限り、私は彼と共に生かなければならない。そして、平を苦しめる要素は徹底的に排除する。どんな手段を使ってでも。

 

そのためには――

「……私が平にとって、邪魔なものになったら……」

 

その先の言葉は、喉の奥で消えた。だが思考は止まらない。もしも私が重荷になってしまったのなら? 平が私といることで幸せを感じられなくなったら?

その時は――私を殺してほしい。平自身の手で。

 

それは呪いではなく、最高の祝福だった。私が与えられる最大の愛情表現。私が「いた」ことを刻みつける最後の贈り物。

そして何より、私という存在が原因で平が罪を背負うことになれば、それは彼にとって一生消えない十字架になるだろう。

そうなれば、平は私を忘れられない。天国に行けなくなったとしても構わない。地獄の業火に焼かれても構わない。

 

だって私は――もうとっくに壊れているんだから。

 

狂気に満ちた思考が堰を切ったように押し寄せてくる。抑えきれない哄笑が込み上げてくるが、必死に噛み殺した。歯を食いしばり、両手で顔を覆う。

冷たい風が吹き抜けていく。

 

 

-----

 

 

翌日の昼休み。いつもの賑やかな教室とは対照的に、屋上へ続く階段の踊り場はひっそりとしていた。そこに呼び出したのは東だった。

 

「……サト」

振り返った東の顔を見て、佐藤はわずかに眉をひそめた。それは昨日までの途方に暮れた顔でも、泣き出しそうな顔でもなかった。何かを悟ったような、あるいは何かを諦めたような、静かな湖面のような表情だった。だが、その大きな瞳の奥だけが、爛々と赤く燃えているように佐藤には見えた。

 

「なに?連日呼び出して、また相談会?」

いつも通りの平坦な口調で佐藤が問いかけると、東は小さく息を吸い込んだ。

 

「昨日のことなんだけど」

東はまっすぐに佐藤の目を見た。そこには迷いも怯えもない。ただ一点だけを見据えているような、研ぎ澄まされた意志だけがあった。

「よく考えた。うん。色々と考えたんだ。自分の気持ちとか、未来のこととか。それで……やっぱり私、もう無理みたいって思った」

 

「無理?」

 

「そう。平がいない世界なんて……考えられない。私が生きていく意味も価値もない。だから……平と別れることになったりしたら……私は生きていけない」

 

あまりにも直接的な、しかし確信に満ちた言葉だった。冗談や演技ではないことは、佐藤にも痛いほど伝わってくる。背筋に冷たいものが走るのを感じながら、佐藤は努めて平静を装った。

「……つまり、それは……どういう結論なの?」

 

東は薄く微笑んだ。その笑みはどこか儚げで、危うかった。

「簡単な話だよ。そうなったら、私が一人で死ぬか……平に殺してもらうか。それくらい極端な選択肢しか、もう私の中には残ってないんだってこと」

 

「……ッ」

 

佐藤は息を飲んだ。これはもう、「恋愛相談」の域を超えている。狂気の一歩手前、いや、既に踏み込んでいるかもしれない領域だ。

東はそこで一度言葉を切り、自分のスカートの裾をギュッと握りしめた。その指先が微かに震えているのに佐藤は気づいた。

 

「それでね……一つだけお願いがあるの」

 

「お願い……?」

 

東はゆっくりと視線を落とし、そして再び佐藤に向けた。その声は、懇願する響きを持っていた。

「私が……もしも理性を失って……平をこの手でどうにかしようと、心中みたいなことしようとしたら……その時は……サトが私を止めてほしい」

 

「……!」

 

「こんなこと頼めるの、サトしかいない。他の誰にもこんなこと言えない。私を殴ってもいいし、警察に突き出してもいいから……とにかく、私が平に危害を加えようとしたら、何があっても私を止めて」

 

それは切実な叫びであり、歪んだ愛の宣言であり、そして最後の希望を託した友人への重すぎる依頼だった。

佐藤の表情が初めて崩れた。驚愕と混乱、そして深い憂慮が入り混じった色が浮かぶ。

長い沈黙が二人の間に流れた。冷たい階段の壁に反響する自分の鼓動の音さえ聞こえそうな静寂の中で、佐藤はようやく口を開いた。

 

「……それは」

 

言葉を探すように口ごもりながら、彼女は東の揺るがない瞳を見つめ返す。

 

「それは……とても難しい…お願いね」

「……わかってる。だからこそ、サトにお願いしてるんだよ」

 

東は真剣な眼差しで頷いた。

佐藤は一度深く息を吐き出し、そして静かに言った。

 

「わかった。約束する」

 

その短い返事には、様々な感情が込められていた。友人の悲劇を避けたいという願い。目の前の狂気を放っておけない責任感。そして、これから背負うことになるであろう途方もない重圧に対する覚悟。

 

「ありがとう、サト」

東は心の底から安堵したように、ふわりと微笑んだ。その笑顔があまりにも無垢で美しかったからこそ、佐藤の胸は余計に痛んだ。

 

「ねえ、サト」

東の声は、先ほどの切羽詰まった響きから幾分落ち着きを取り戻していたが、代わりにどこか投げやりな、それでいて幼い響きを纏っていた。

 

「私さ、昔『死が二人を分かつまで』ってやつホント憧れてたんだけどさ」

突然の脈絡のない言葉に、佐藤は僅かに首を傾げた。

 

「……永遠の愛の誓い、的な?」

「うん。映画とかドラマとか結婚式とかでさ。そんな風になれたら幸せだろうなって、漠然と夢見てたんだ。健やかなる時も病める時も~ってやつ」

 

東は自分の足元に視線を落としながら続ける。その指先がスカートのプリーツを所在なさげに弄っている。

 

「でもね」

東は顔を上げて、佐藤を見た。その大きな瞳には、先ほどの仄暗い炎のようなものはなく、代わりに諦念にも似た寂しさが浮かんでいた。

唇は微かに弧を描いている。それは笑顔のつもりだったのかもしれないが、泣いているようにも見えた。

 

「今はもう、あれクソだわって思うんよ」

 

「クソ?」

「うん。だってさ」東は一度言葉を切り、確かめるようにゆっくりと続けた。

「それって結局、どっちかが先に死んじゃったら、そこで終わりってことでしょ?私と平の場合、そんな悠長な終わり方になんてできない気がするんだ。どっちかがいなくなったら……もうそこで終わりなんだよ。私にとっては。だからさ」

 

東は肩をすくめる。

 

「『死が二人を分かつまで』なんて、そこから先を考えられないし……そもそも耐えられる自信もない。もっとこう……もっと早く、もっと劇的に、同じところに行きたいって思う。おかしいよね」

 

そう言って、東は本当に泣いているのか笑っているのか判別のつかない表情で鼻をすすった。その姿は痛々しいほど脆く見えた。

 

佐藤はしばらく黙って東の顔を見つめていた。かけるべき言葉を探しているのではなく、目の前の友人が抱える感情の質量に圧倒されていた。恋とはかくも人を変え、狂わせるものなのかと。

 

ようやく発した声は掠れていた。

 

「そうね。その言葉は、少なくとも今のあなたにとっては呪いにしかならないでしょうね」

 

「うん」

東は素直に頷いた。

 

「でも」佐藤は続けた。「その『死が二人を分かつまで』って言葉を、本気で信じ合える相手がいるってことは……ある意味、すごく羨ましいことかもしれないわ」

「羨ましい?」東が意外そうな顔で佐藤を見る。

 

「ええ。例えそれがどんなに歪んだ形であってもね」

佐藤は少し苦笑いのようなものを浮かべた。それはおそらく、自分自身への自嘲でもあったのかもしれない。

 

 

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翌日の昼休み。佐藤は平の大学まで足を運ぶと、中庭の隅にあるベンチに平を呼び出した。周囲に人はまばらで、春先の穏やかな陽光が彼らを照らしていたが、佐藤の表情は硬く、声には有無を言わせぬ圧があった。

 

「平クン、ちょっと時間あるかしら」

「……サト? 珍しいな。どうした、改まって」

平は怪訝な顔でベンチに座る。佐藤の纏う尋常ならざる雰囲気に気づき始めている。

 

「手短に言うわ」

佐藤は前置きもなく切り込んだ。その切れ味鋭い声は、春の日差しを切り裂くようだった。

 

「アズが壊れてる。いや、壊れかけてると言った方が正確かもしれない」

「壊れてる?」

平の眉がぴくりと動いた。その口元がわずかに吊り上がる。「東が?」

 

佐藤は平の軽口には一切乗らず、真っ直ぐに彼の目を射抜いた。

 

「貴方のせいよ」

「俺の?」

「そう。貴方にゾッコンすぎて、思考回路が焼けちゃってるの。……正直、怖いくらい」

「……」

 

平の表情がが変わり、沈痛な面もちになる。

「具体的になにかあったのか?」

「貴方なしでは生きていけないと言ってる。貴方が死んだら自分も死ぬってね」

 

佐藤は事実を簡潔に述べた。

「冗談じゃないわ。あれは本気よ。あの子の目を見たけどね。濁った瞳の中に狂気の炎が燃えてた」

「……」

 

「しかも厄介なのは」

佐藤は一呼吸置いた。

 

「アズはそれでも『貴方に迷惑かけたくない』って本気で思ってるところよ。その矛盾が彼女をさらに追い詰めてる。私の目から見て明らかに危険域」

平はしばらく黙っていた。その沈黙の中で、彼は何を考えているのだろうか。東への憐憫か、あるいは自己嫌悪自分勝手か。佐藤には判断がつかなかった。だが、彼の次の言葉は予想外だった。

 

「……迷惑をかけたくない?」

ぽつりとつぶやいたその声は、いつもの皮肉っぽさが剥がれ落ちた、妙に素直なものだった。その目に揺れる光は、嘲笑でも好奇でもなく……それは……理解しようとする者の視線のようにも見えた。

 

「それは……東らしいっちゃあらしいかも」

ふっと短く息を吐いた。

 

「肝心なところで東は自分の気持ちを殺して『迷惑にならないように』って一生懸命取り繕ってる」

それはまるで自分自身を語るような、親密な響きを含んでいた。

 

 

-----

 

平の言葉にはこれまでにない真摯さがあった。佐藤はその変化に内心で驚きつつも、彼の次の言葉を待つ。

 

「……でも」

平はふいに俯いた。風が吹き抜け、彼の茶髪がさらりと揺れる。

顔を上げた平の目には、自嘲と諦めと……微かな決意が宿っていた。

 

「多分……俺たちって元々がそういう関係なんじゃないかな。お互いに依存しあってる」

 

「え?」佐藤は思わず聞き返した。

「東は俺がいなきゃダメだし、俺もまた……」

平はそこで一旦言葉を切った。喉の奥で何かを飲み下すような仕草を見せる。

 

「俺の始まりはさ」

ぽつりぽつりと語り始めた彼の声は、普段の軽薄さを失い、深く沈んでいた。

 

「ずっと、周りからどう思われるかしか考えられないガキだったんだよ。中学ん時なんか特に。自分が陰キャでデブでダサくて、それを笑われるんじゃないかって常にビビってた。だから誰にも本音を見せられなくて……全部を殻の中に閉じ込めてた」

 

佐藤は黙って耳を傾ける。佐藤にとっては初めて知る彼の過去の断片が初めて露わになった。

 

「そんな時、東が現れた。アイツは堂々としてて眩しくて……でも一方で、アイツもまたどこか孤独だった。いろんな男と付き合っては別れてって繰り返してたろ?それは多分……自分自身がどう在るべきか探してたんじゃないかな」

 

「過去のダメな恋愛から抜け出したいって思ってただろうし、その象徴みたいな存在が……ちょうど俺だったのかなって」

 

「お互いが『変わりたい』っていう渇望を持っててさ。そんな二人が偶然近くにいたら……惹かれ合うのは当然だったのかもしれない。歪んでたとしても」

 

その言葉には、自嘲の響きよりも諦観と受容が強く滲んでいた。

「だから今更この関係を否定したところで無意味なんだ。東が壊れてるのは俺のせいだし、逆もまた同じだと思う」

 

そして彼は再び佐藤の目を真正面から見据えた。その眼差しは揺るぎないものだった。

「だけど一つだけ断言できることがある」

 

ごくりと唾を飲む音が佐藤の耳にも届く。

 

「俺の東への愛は……本物だ」

 

その声は小さかったが、確かな熱を帯びていた。

佐藤は息を詰めてその告白を受け止めた。頭の中では様々な言葉が巡っていたが、どれ一つとして音にはならなかった。目の前にいる平は、いつもの飄々とした皮肉屋とは別人のように見えた。

 

「……本気なのね」

ようやく搾り出した確認の問いに、平は微かに、しかし確かに頷いた。

 

 

-----

 

 

「それに」平は少し俯き加減で言葉を継いだ。声のトーンがわずかに変わる。「東の考えてること、怖いくらい俺と似てるとこあると思うんだ」

 

佐藤の眉がピクリと動いた。

 

「例えば?」

 

「……」

 

平は一瞬躊躇したが、観念したように口を開いた。

 

「もし東じゃなく、俺が東と死を選ぶようなことになったら……」

 

「え?」

 

佐藤が鋭い声を上げる。

 

「もちろん実行なんてするつもりはないし、東もそんなことしないって信じてる。でもさ、そういう極端な考えは重なってると思うんだよ」

平は乾いた笑い声を立てた。しかしその笑顔はどこか空虚で、悲しみを伴っているように佐藤には見えた。

 

「まるで……」

「空気みたいだなって思うんだ」平の声が静かになる。「いなくなったら生きていけないものなんだよ。お互いにとって」

 

その言葉は、彼のこれまでの皮肉や軽薄さを全て洗い流したかのように澄んでいた。

佐藤は言葉を失いそうになったが、次の瞬間に噴火した。

 

「……!」

勢いよく立ち上がり、ベンチの背凭れに軽く拳を叩きつけた。その音が乾いた中庭に鋭く響く。

 

「あんたらは揃いも揃って!馬鹿なの!?」

怒気を孕んだ声だったが、それ以上に深い憂慮が込められていた。

 

「なんでそうやって自滅方向に突き進もうとするの!アズがヤバイ状態だって言ったそばから、アンタも何を言い出すかと思えば同じことばっかり……」

佐藤はハーッと大きな溜息をついた。肩を落とし、再びベンチにドカッと腰を下ろす。

 

「それで?」

「……だから、もしもの話だ」平は佐藤の剣幕にも怯まず、しかし慎重に言葉を選んでいる様子だった。

「本当に俺が東と死を選ぶような状況になったらさ」

 

彼は佐藤の目をまっすぐ見つめた。

 

「迷わず俺を止めてくれ。絶対に東を守ってくれ。東が幸せになるなら自分はどうなってもいいから」

その眼差しに込められた覚悟と懇願に、佐藤はしばし言葉を失った。だが、すぐに冷静さを取り戻すと、冷ややかな、しかし情のある視線を平に向ける。

 

「……あのね」

 

彼女はゆっくりと言葉を紡ぎ出す。

 

「あんたが言う『もしも』なんて起きないし起こさせない。アズが壊れてるのも、あんたがそんな重い気持ち抱えてるのも知ってて言うわよ」

そして、心底呆れたように言い放った。だが、その口調には僅かながらも温もりが宿っているように感じられた。

 

「あんたらの関係、もっと健全になれないの? 少なくとも『死ぬ』とか『殺して』とかそんな物騒なワードが出なくなるくらいにはさ。こんな危なっかしい恋愛ごっこ、見てるこっちが心臓に悪い」

 

彼女の声には明らかな苛立ちと共に、大切な親友と友人の身を案じる深い感情が滲み出ていた。

 

 

-----

 

 

佐藤は東が言っていた台詞を平に質問する。「平クン、あんたさ『死が二人を分かつまで』ってどう思う」

 

平の顔に一瞬、理解したような表情が走った。そして、その直後。

 

「『死が二人を分かつまで』か……」

彼は鼻で笑った。

 

「クソだな」

吐き捨てるような言葉だった。そこに含まれていたのは侮蔑であり、同時にどこか深い部分で共鳴してしまうような複雑な響きだった。まるで自分たちの関係を客観的に眺め、その異常さに嘲笑しながらも、完全に否定できない何かを感じているようだった。

 

「やっぱりそう来るのね」

佐藤は腕を組んだまま、平の顔を見つめた。彼の反応は予測していた範囲内だ。

 

「アズも同じこと言ってたわよ。死が二人を分かつまでなんてってね。似たもの夫婦じゃない」

その言葉には、呆れと皮肉と……ほんの少しの同情が混じっていた。佐藤の口元がわずかに緩む。しかし、すぐに真剣な表情に戻り、追及の手を緩めない。

 

「愛してるんでしょ?アズのこと」

ストレートな問いかけ。平の肩がわずかに震えた。

 

「……もちろん」

短い肯定だった。だがその声には、先ほどの「本物だ」という告白以上の重みと痛みが宿っていた。自分の言葉が東の破滅を招くのではないかという恐怖。それでもなお東を求めてしまう渇望。相反する感情が平の中で渦巻いているのが佐藤には伝わってきた。

 

「それこそ『死が二人を分かつまで』だと思っちゃうくらいには?」

佐藤の声は静かだが容赦なかった。平の心の最も脆い部分を正確に狙い撃ちしている。

平は一瞬、言葉に詰まった。佐藤の視線が鋭く突き刺さる。

 

「……かもな」

絞り出すように呟いたその声は掠れていて、普段の彼からは想像もつかないほど弱々しかった。その横顔は疲労と諦念で覆われている。

 

「結局のところ」佐藤は静かに続けた。「私はアズの親友だから、アズのために動く。平、あんたも……ちょっとだけ心配してる。だからお願い。アズを傷つけるようなことはしないで」

その言葉には、厳しい忠告だけでなく、ほんの少しだけの友情も含まれているように平には聞こえた。

平はしばらく黙っていたが、やがて小さく頷いた。佐藤の言葉が心に染み入るのを感じていた。

彼女は辛辣な言葉で彼の罪悪感を煽りながらも、その根底にあるのは東への深い愛情と、彼女の親友を救いたいという切実な願いだと理解できた。

 

「……ありがとう」

ようやく口にした感謝の言葉は、か細く、しかしそれでいて心からのものだった。普段の皮肉屋からは想像もつかないほど脆く、そして痛々しい響きを持っていた。その瞬間、中庭の空気が少しだけ和らいだように感じられた。

 

 

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平は佐藤に言っていないことがあった。

(……俺が東を傷つけるわけないだろ)

 

口に出さなかったその言葉は、喉の奥で澱のように沈んでいた。

 

確かに佐藤に「俺が東と死を選ぶような状況になったらさ」と頼んだ。だが東が死ぬ? 冗談じゃない。自分が一番恐れているのはそれなのだから。

 

(……東が俺に死んで欲しいなら喜んで死ぬけど)

 

ふと脳裏に浮かんだその考えに自分でゾッとした。それはあまりにも直接的で、歪んでいて、そしてどこまでも切実な願いだった。

東のためならどんな犠牲でも厭わない。けれどそれは「東がそう望むなら」であって、決して自分の衝動で死にたいわけじゃない。

 

(こんなこと……カッコ悪いから言えなかったけど)

 

平は空を仰いだ。夕焼けが西の空を赤く染め始めている。一人ベンチに座り、佐藤が去った方向を見つめる。彼女の言葉が耳の奥で反響する。『あんたらの関係、もっと健全になれないの?』

健全?そんなもの、俺たちには到底無理な話だ。

 

平は拳を握りしめた。爪が手のひらに食い込む。東の笑顔が目に焼き付いている。あの美しい笑顔。それを壊すことなど絶対にできない。

それなのに、自分の精神の不安定さが、いつか取り返しのつかない過ちを犯してしまうのではないかという恐怖が常に付きまとっている。

 

(……守りたいんだ。本当に)

 

独り言のように呟いた言葉は風に溶けていく。

誰にも理解されなくてもいい。佐藤に呆れられても構わない。ただ一つ確かなのは、東に対するこの執着にも似た感情だけが、本物だということだけだった。

 

そしてその本物の感情が、いつか刃となって東を傷つける日が来ることを、平は密かに恐れていた。佐藤の言う通りだ。

自分たちの関係はあまりにも危なっかしい。まるで綱渡りをしているかのように。どちらかがバランスを崩せば、二人とも奈落へ堕ちてしまうだろう。

 

それでも……平はゆっくりと立ち上がった。もう一度、東に会いに行こうと思った。彼女の顔を見て、声を聞いて、生きていることを確かめたい。たとえそれが一時的な安堵に過ぎないとしても。

 

(……大丈夫だ。きっと、大丈夫だ)

自分に言い聞かせるように繰り返すその言葉は、祈りにも似ていた。平は中庭を後にした。夕暮れの影が長く伸びていく。

彼の心には、東を守りたいという強烈な願いと、自分が抱える危険な感情の間で揺れ動く葛藤が色濃く刻まれていた。

 

そして、その葛藤の先に何が待っているのか——平自身にもまだ見当がつかなかった。

 

 

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佐藤は大学の教室で一人机に向かっていた。目の前の参考書は一行も頭に入ってこない。代わりに脳内を占拠していたのは、――平の告白だった。

 

「……重症ね」

 

ぽつりと呟いた言葉は、空っぽの教室に吸い込まれていく。いや、「重症」という言葉では足りないかもしれない。あれは完全な「病」だ。しかも最悪なことに、双方がお互いを「患者」だと認識していない。

 

佐藤は目頭を揉んだ。つい先日の東の相談内容を思い出す。『平ってね、私のことずっと見てくれてるの!』頬を赤らめながらそう言った親友の姿は可愛らしかった。

が、今振り返ればあれは恋する乙女ではなく、愛する者に監視されていることに喜びを感じる異常者の症状だったのだ。

 

「まさかヤバい意味でも両思いだとは……」

 

医学用語で言えば「双方向精神依存関係」とでも呼ぶべきか。お互いを唯一無二の存在と認定し、他者への関心を一切排除する閉鎖的な生態系。

しかもその基盤となっているのは「死」という究極の破滅願望だ。健全な精神を持つ者ならば耐えられない歪みがそこにはあった。

 

「私、薬学専攻で、カウンセラーじゃないんだけど」

 

そもそもなぜ自分がこんな役割を担っているのだろう。平と東の双方から「相手と心中しそうになったら止めてくれ」と言われている。

第三者介入が必要なレベルなのに、肝心の当人たちがその必要性を理解していないのだ。

 

佐藤は深いため息をついた。冷静な観測者は時に残酷なほど冷静に状況を判断する。

 

(アズは「平がいない世界には意味なんてない」と独占欲と所有欲が強すぎる)

 

(平は「東が幸せになるなら自分はどうなってもいい」と自己犠牲願望と所有欲が入り混じってる)

 

これではどっちが先に壊れるかの我慢比べではないか。しかも奇妙なことに、二人とも相手を大切に思っている点だけは確固としている。その「大切」の形が常軌を逸しているだけで。

 

「このまま放っておくと本当に死人が出る…しかも二人…」

 

佐藤はスマホを取り出した。スクロールした画面にはいくつかの選択肢が並ぶが、センシティブな内容であり、できるだけ自分でとどめたいと思う。

 

佐藤は窓の外を眺めた。夕暮れのグラウンドで部活動生たちが汗を流している。彼らの単純な熱意が眩しく感じられた。あれが健康的な青春というものか。自分たちには永遠に届かない場所のように思えた。

 

「愛」という言葉を分解してみる。古代ギリシャ語ではagape(無条件の愛)、philia(友情)、eros(情欲)といった区別があるという。でも現代の日本語ではすべて「愛」の一語に収束する。この曖昧さが問題の根源かもしれない。

 

「感情なんて化学物質の分泌によって引き起こされる脳の誤作動に過ぎないのに」

 

例えば恋愛初期の高揚感はドーパミン放出による幻覚症状だとでも言えそうだ。依存症のメカニズムとそっくりではないか。東も平も重度の共依存症患者のように見える。

 

「アズの場合、自己肯定感の低さから来る承認欲求を平で満たそうとしてるのかもしれない」

 

東が男性遍歴が豊富だったのは自己価値を確認する手段だったと推測できる。一方で平は……

 

「彼は完璧主義すぎる。今の自分がアズにふさわしくないと常に思い込んでいる。故の自己嫌悪であり自己犠牲…」

 

佐藤はノートを開き図式を描いた。東→平へ矢印、平→東へ矢印。その交差点に「相互依存」「所有欲」「破滅願望」などと書き添える。まさに負のスパイラル。

 

「でも私が本当に理解できないのは……」指が止まる。「どうしてそこまで狂えるのか」

 

佐藤にとって人間関係はリスク管理のゲームだ。距離を置いて観測し、適切な境界線を引く。それが彼女なりの安全策だった。しかし東と平は積極的にその境界線を踏み越えに行く。なぜ?

 

「ああ……そうか」

 

突然閃光が走った。薬学の実験を思い出した。過剰摂取の話だ。少量なら薬になるものが致死量を超えると毒になる。つまり東と平のケースは……

 

「感情の過剰摂取による中毒症状なんだ」

 

佐藤はペンを置いた。これが答えか。二人の歪んだ愛情表現は過剰投与された恋愛ホルモンが引き起こす幻覚だった。

ならば、必要なのはカウンセリングや専門家の介入だろうが、二人は拒絶するだろう。

 

「…親友を見捨てるわけにはいかないわね。私ができることをやれるだけやってみよう」

 

初めて矛盾が生まれた。冷徹な科学者の理性と、温かな友情がせめぎ合う。スマホを握りしめる。

警察・救急・カウンセラー……どれも最終手段だ。まずは根本治療を考えなければ。

 

佐藤は静かに微笑んだ。研究対象が増えただけのことだと定義づける。

もしかすると人間の心という最大の難題を解き明かすチャンスかもしれない。少なくとも退屈はしないだろう。

 

 

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保健室の一角を借り切って行われた「科学的治療会議」は異様な緊張感に包まれていた。

平と東が向かい合い、中央で佐藤がホワイトボードに図式を描いている。青白い蛍光灯の光が三人の顔を冷たく照らしていた。

 

「……それで?」平が低い声で促す。「俺たちの問題を解決する方法って何だよ」

 

佐藤は冷静にボードに矢印を書き込んだ。「基本原理は簡単。薬物依存と同じ」彼女は二人の顔を交互に見る。

「君たちは互いに対する感情を『過剰摂取』している。ドーパミンやオキシトシンが出過ぎて正常な思考ができなくなっている状態」

 

東が眉をひそめる。「ちょっと待ってサト。私は別に何も出して……」

 

「違わないわ、アズ」佐藤は遮るように言った。「アズが平クンを見る目が異常だって何度も言ってるでしょう」

 

「でもそんなことはどうでもいい。今問題なのは『中毒症状』をどうやって抑えるか」彼女はマーカーを強く握りしめた。

 

「感情の断食療法が必要なの」

 

「断食?」東が思わず椅子を引いた。「それってつまり……私たちに別れろってこと?」

 

「違う!」平が突然声を荒げる。「離れたら意味なんてない!東がいない人生なんて……!」

 

「それが問題なのよ」佐藤がため息をつく。「君たちが物理的に完全に離れる必要はない。ただ『感情の交流』の制限は必要」

 

彼女は新たな図式を追加する。「一日30分だけ接触可能にする。それ以上触れ合えば危険信号だと判断する」

 

「ふざけるな!」平が拳をテーブルに叩きつける。衝撃でコーヒーカップが跳ねた。「そんな時間制限じゃ……俺の気持ちは……」

 

「それが中毒症状だって言ってるでしょ?」佐藤が鋭く言い放つ。「依存症患者がアルコールやドラッグを止められないのと同じ。自制心の欠如こそが病気の証拠なの」

 

平は反論する「サト、お前の理論は破綻している。その理論は感情の上限がある場合は有効だが、俺の東への愛は上限なんか無い」

 

佐藤の表情が一瞬で硬直した。その指がゆっくりとホワイトボードの縁をなぞる。「……なるほど。君は感情に『総量』など存在しないと主張するんだ?」

 

「そうだ」平が立ち上がり、背後の壁にもたれた。影が床に伸びる。「東への想いは……毎秒ごとに増していく。昨日より今日、今日より明日の方が強い」

 

「私も!」東が両手を胸に押し当てる。制服のリボンが歪んだ。「この胸の中で沸騰してるみたいに……平への気持ちがどんどん膨らんで止まらないの」

 

佐藤は机の上に散らばったメモを拾い上げながら冷たく言った。「それは典型的な依存症の兆候だよ。『もっと欲しい』という渇望感こそが—」

 

「数式じゃない!」平が突然叫んだ。瞳孔が拡大する。「俺が東を愛するのは……理屈じゃあない!」

 

東も立ち上がった。「理屈とか感情の総量とか……そんなの関係ない!私はただ平と一緒にいたいだけなの!」

 

「座って」佐藤の声は氷のように鋭かった。「私はその感情的な反応こそが君たちの弱点だと言っている」

 

佐藤の拳が震えた。いつもの明晰な頭脳が機能停止する。冷徹な分析家としての仮面が剥がれ落ちていく感覚。

 

「…こんなに言っても…なぜ…分からないの?」

 

声が震えた。ペンが床に落ちて転がる。

 

「アズの気持ちも……平クンの気持ちも……全然数値化できないじゃない!」

 

佐藤は机を叩いた。爪が割れる感触。「私の計算式じゃ説明できない現象だらけ……でもっ!」

 

彼女の目から涙が溢れ出した。白衣の袖で拭う手が間に合わない。

 

「じゃあどうして……私みたいな奴に相談してくるのよ!」嗚咽が漏れる。

 

「数学も薬学も完璧に答えられるのに……人の心だけが理解できない……!」

 

東が慌てて立ち上がる。「サト!?」「触らないで!」佐藤が反射的に手を払った。

 

「あなたたちの感情に巻き込まれたくなかった……なのに……」

平も呆然と立ち尽くす。あの常に冷静沈着な佐藤が泣いている。彼の脳裏に中学時代の記憶が蘇った—教室の隅で一人本を読んでいた少女。

 

「……サトもずっと我慢してたんだな」平の声が優しく変わる。「俺たちの恋愛バカに付き合うのが辛かったんだな」

 

「違う」佐藤が首を振る。「辛くないから……余計に惨めなの!」彼女は膝から崩れ落ちた。

 

「あなたたちには…私みたいな科学者が一番役立たずだって……」

保健室の窓ガラスに雨粒が落ち始めた。室内に雨音が響く。三人の沈黙を打ち砕くのは、佐藤の泣き声だけ。

 

 

 

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雨音だけが響く教室。佐藤の嗚咽が徐々に収まっていく。平と東が近づこうとするが、彼女は首を大きく横に振った。

 

「…観測者」佐藤が呟くと、佐藤の思考回路が加速する。佐藤——論理の化身のような少女が——感情的な爆発の末に解決策を構築する。

 

「三人なら?」涙で腫れた目を上げ佐藤は呟いた。

 

「そう…感情は波。単純な二項関係では共振する。でも第三の要素を加えることで共鳴パターンを変えられるかもしれない」

 

東が首をかしげる。「どういう意味?」

 

「例えるなら」佐藤が震える指で三角形を描く。「あなたたち二人が平行した磁極なら、私が反対側の極として配置されることで中和される」

 

平が腕を組む。「それって……俺たちの恋愛に佐藤が入ってくるってことか?」

 

「物理的に介入するわけじゃない」彼女が否定する。「私が観測者になるの。あなたたちの感情を数値化できなくても観測することはできる」

 

佐藤は深呼吸して続けた。「恋愛に数学を持ち込めなくても友情なら入れる。私があなたたちの感情を観測し、暴走する前に警告を発するバッファーとして機能すれば…」

 

その提案は理にかなっていた。科学者らしい実践的方法だ。しかし同時にあまりにも奇妙な関係性でもある。

 

「つまり」東が確認するように言った。「例えば、私たちがキスしそうになったら、サトが『注意!過剰反応の危険!』って叫ぶの?」

 

佐藤は答える「いや、わたしはあくまで観測のみ。他は好きにしてくれてかまわないわ」

 

「お前、正気か?」平の声は震えていた。「観測者って……俺たちの家に来るってこと?冗談だろ!」

 

「冗談じゃない」佐藤が理性的な瞳を閃かせ冷静に答える「私は二人の感情化学反応を『安全域』で観測する義務がある」

 

「義務って……誰に命令されたの?」東が眉をひそめる。

 

「私が、私に」佐藤の口調には揺るぎがない。「研究対象として適切なサンプル環境を確保する必要がある」

 

平が額を押さえた。「待て待て待て!俺たちのプライベートはどこに行く!?」

 

「残念だけど」佐藤が淡々と続ける。「今の君たちの状態は医学的にも放置不可能。私は『臨床試験監督者』として派遣された医学生見習いとでも思って頂戴」

 

「医学生見習い!?」東が吹き出す。「サトってそんな資格あった?」

 

「ないわ」佐藤は即答する。「けれど私には『友達を助けたい』という使命感がある」

 

「サト、あーいえばこーいうなぁ。まあ、わかった」平が突然肩の力を抜いた。「アズ、サトが決めたことだ。文句言っても無駄だろ」

 

「平クン!」佐藤の顔が輝いた。

 

「ただし!」平が指を立てる。「寝室は別!あと風呂も!」

 

「当然」佐藤が敬礼した。「プライバシー配慮は万全にするわ」

 

東がぽつりと呟いた。「……なんか不思議」

 

「何が?」平が怪訝な顔で振り返る。

 

「サトがこんなに必死なのは初めて見た」東の瞳が揺れる。「いつも他人事みたいに世界を見てた子が……私たちのために泣いてくれた」

 

平の喉が上下した。脳裏にフラッシュバックする光景──泣き崩れる佐藤の姿。

 

「……そうだな」声が掠れる。「サトは変わった」

 

「変わってないわ」佐藤が二人の間に入る。「私はただ……計算式の中に『未知数X』が入ることを許容できるようになったの」

 

雨が三人の肩を叩く。平の心臓が急に速くなった。東と佐藤が並んで歩く姿が妙に新鮮に映る。

 

(まさか……)

 

脳裏をよぎる予感を必死に打ち消す。東の細い指が再び自分の袖を握る感触。今度は故意に。

 

「明日から始まるんだね」東の声が小さく雨に溶けた。「私たちの……新しい関係」

 

 

 

-----

 

 

 

翌朝の雨上がり、平の狭いワンルームマンションの玄関チャイムが鳴った時、平の心臓はすでに警戒アラームを鳴らしていた。

 

「来たみたい」平と同棲している東がキッチンから顔を出す。エプロン姿が妙に板についている。「コーヒー淹れる?」

 

「ああ……」平はソファでぐったりしながら答えた。昨夜の佐藤の突飛な宣言がまだ耳に残っている。「あいつ本当に来たのか…夢じゃなかった…」

 

鍵の音がカチリ。ドアが開くと同時に洗練された香水の香りが漂った。

 

「お邪魔するわ」佐藤が靴箱にハイヒールを揃える。「約束通り、午前八時十分十五秒到着」

 

「細けぇな!」平が飛び起きる。「何だそのギリギリセーフの言い方!」

 

「厳密に言えば三分四十五秒遅刻」佐藤は涼しい顔でバッグを置く。「交通事情を考慮すれば合理的範囲内だけれども」

 

「サトってほんと変わらないよねー」東が苦笑しながらコーヒーカップを運ぶ。「あ、朝ご飯食べる?焼き鮭あるけど」

 

「いただくわ」佐藤が迷いなく食卓に着く。「栄養バランスは理想的ね。卵焼きの塩分濃度は……」

 

「ウチの飯をいちいち分析すんな!」平が叫ぶ。「俺の家が研究所になるとか聞いてない!」

 

 

 

-----

 

 

 

 

朝食後のテーブルで三人が向かい合った。佐藤が白衣を羽織り、クリップボードを取り出す様子はまさに学者然としている。

 

「改めて説明するわ」彼女がペンを走らせる。「私が観測するのは主に以下の三点:

 

① 平くんとアズの生理的パラメータ(心拍数・体温など)

② 日常会話中の情緒指数

③ 特定条件下での反応曲線

 

アズが平くんに触れようとした場合──」

 

「ストップ!」平が両手を挙げる。「お前マジで俺たちのこと実験材料にすんのか!?」

 

「心外ね」佐藤が首を傾げる。「これは救済措置よ。君たちが暴走すれば──」

 

「暴走ってなんだよ!」平が立ち上がる。

 

「そうよ」東が突然遮った。「サトは私たちの監視者じゃなくて観測者なんでしょ?」

 

佐藤の眉が微かに動いた。

 

東が優しく微笑む。「私たちの感情がぶつかりそうな時、サトがいることで、ちょうどいい緩衝材になってくれると、私も思ってる」

 

平は呆気に取られた。東がこんな風に佐藤をフォローするなんて──

 

「それに……」東の指が無意識にカップの縁を撫でる。「実はちょっと安心してるんだ」

 

「安心?」平と佐藤の声が重なった。

 

「うん」東の頬がほんのり赤くなる。「だって……サトがいてくれたら……」

 

言葉が途切れかけた瞬間、佐藤の瞳孔が開いた。科学者が重要な発見をした瞬間の目だ。

 

「今、理解したわ」佐藤の声が珍しく温かい。「これは三者共生システムだということね」

 

平の頭に疑問符が浮かぶ。「は?共生?」

 

「互恵関係よ」佐藤が断言する。「アズは理性/本能変換装置として機能する。私は客観的検証装置。そして君は──」

 

「俺は何だよ」平が不安そうに尋ねる。

 

佐藤はにやりと笑った。「唯一の男つまり『変数』として存在してくれればいい」

 

「基本的に私はいないものと思って自然に過ごして欲しい。私は二人の仲を分かつために来たわけではない」

 

佐藤の突然の発言に、平は思わず息を飲んだ。「二人の仲を分かつためじゃ……ない?」

 

「もちろんよ」佐藤はクリップボードを閉じる。「私の使命は破壊ではなく均衡維持。あなたたちの関係を科学的にサポートするために来てる」

 

東がくすりと笑った。「サトってほんと理屈っぽい。でも嬉しい」

 

「なぜ?」佐藤の問いは純粋な疑問だ。

 

「だって……」東がちらりと平を見る。「平とこうやって自然に暮らせるのって……久しぶりだから」

 

平の心臓が跳ねた。確かに大学二年の秋になってから東が家に押し掛けてくるようになったが「自然な」共同生活と言えるほど馴染んだ日はない。どこかお互いに遠慮がちだった。

 

「わかった」平がゆっくりと頷く。「じゃあ……サト。これからよろしく頼む」

 

「挨拶は結構」佐藤が満足げに宣言しようとする「ではさっそく観測を開始し──」

 

「あーもう硬いのなし!」東が突然立ち上がると、平の腕に飛びついた。「平。いつもみたいにしよ?」

 

「おい!」平の肩が硬直する。「いつもって……あのな……」

 

「なによ?」東が甘えた声で腕を絡める。「一緒にご飯作るだけだよー」

 

佐藤の瞳が鋭く光った。「接触反応レベル1.5……心拍増加率+23%……」

 

「記録すな!」平が赤面する。

 

「これは貴重なデータよ」佐藤が当然のごとく言う。「アズの接近行動に対する平くんの心理的閾値を──」

 

「俺たちは実験台じゃない!」平が叫ぶ。

 

その時東が平の首に腕を回した。ふわりと東の髪から甘い香りが広がる。

 

「……でもさぁ」東の吐息が平の耳元で熱を帯びる。「平も本当は嬉しいんじゃない?」

 

「何がだよ!?」動揺で声が上ずる。

 

「だってぇ…私は…」東がさらに近づく。「こうやってくっつけるのが嬉しいよ?」

 

佐藤が静かに席を立つ。

 

「接触距離0.4メートル……温度上昇中……」彼女の声は淡々としているのに、どこか焦りが滲む。

 

「サト?」東が首を傾げる。

 

「警告」佐藤の声が急に強張った。「この状態を継続すると『臨界点』に到達する可能性あり」

 

「は?」平と東が同時に佐藤を見る。

 

佐藤の唇が震えた。「つまり……このままだと……」

 

沈黙。

 

「サト?」平が怪訝そうに尋ねる。

 

佐藤の頬が赤らんだ。「……アズが大胆すぎて……私の観測能力がオーバーフローするわ」

 

平と東が顔を見合わせて爆笑した。

 

「やっぱりサトは変わってないね」東が涙を拭きながら言う。

 

「サト」平がようやく自然な笑顔を見せた。「お前がここに居てくれると……助かる…かもしれん」

 

「ありがとう………でも記録は続けるわよ」佐藤は断言する。

 

「好きにしろよ」平が肩をすくめる。「ただし変な報告書書くなよ」

 

「大丈夫」佐藤が自信満々に胸を張る。「タイトルは『非線形系における共存確率解析』でいくわ」

 

「なんそれ!?」東が腹を抱える。「もっと普通の名前にしてよー」

 

佐藤の科学者らしい不器用な優しさと、それを包み込む二人の笑い声がワンルームに溢れた。

 

窓の外には秋晴れの空が広がり始めている──三人の奇妙な共同生活の始まりを告げるように。

 

 

 

-----

 

 

 

朝食後の穏やかな空気が一変したのは、佐藤が突然トイレに立った瞬間だった。

 

「……」

平が皿を片付けようとしたその時、背後から柔らかい感触が覆いかぶさってきた。

 

「隙あり!」

東の甘い声が耳元で溶ける。彼女の腕が蛇のように平の腹部を這い、指先がシャツの下に滑り込んだ。

 

「東!?」

振り返る間もなく、彼女の唇が首筋に触れた。湿った息遣いと共に、舌先がゆっくりと鎖骨に向かってなぞっていく。

 

「今日は一段と敏感だねぇ」

東の囁きが脊髄に響く。平の背筋が反り返り、腰に固い熱が集まるのを感じた。

 

「ちょ……待てって……」

抵抗しようとした腕を東が巧みに押さえつける。彼女の膝が平の股間に押し当てられ、ゆっくりと円を描くように動いた。

 

「ダメよ……声を我慢しなくて」

東の手がシャツの内側を這い上がる。乳首を軽く弾かれた瞬間、平の口から「あっ」という声が漏れた。

 

「…いい声」

満足げに笑う東の指が下腹部へと向かう。ジーンズのボタンを外す冷たい金属音が響き始めた時──

 

「戻ったわ」

トイレのドアが開く音とともに佐藤の冷静な声が響いた。

 

東の動きが一瞬止まった。しかし──

 

「続きは後でね」

そう囁いてから彼女は平のジーンズの上から屹立したものを優しく握りしめ、最後に強く揉み込んだ。平の膝がガクッと崩れる寸前で解放される。

 

「あら」

テーブルに戻った佐藤がノートを開きながら眉をひそめた。「心拍数急上昇……酸素飽和度低下……」

 

「いちいち計測すな!」平が慌てて椅子に座る。

「人体反応は記録義務があるわ」佐藤は平然と言う。「特に『制御不能状態』時の生理的変化は貴重な──」

 

「うるさい!」

平が叫ぶ横で、東が悪戯っぽく舌を出した。「ごめんねサト。今ちょっと中断しちゃった」

 

佐藤のペンが止まる。「中断?つまり……再開予定があるということね?」

 

「あったり前でしょ」

東がソファに腰掛けると大胆に脚を組んだ。タイトスカートの裾から白い太ももがのぞく。

 

「サトも見たいなら…見てていいよ…」

東がスカートの裾を指で摘む。布地が少しずり上がり──

 

「それは記録対象ではないわ」

佐藤の声に珍しく困惑が混じる。「でも…純粋に個人的興味を刺激する行為ね」

 

「ここは私たちの家だもん」

東が艶然と微笑む。「同棲カップルのプライバシーくらい守ってほしいなぁ」

 

佐藤の瞳孔が開いた。「『同棲』…なるほど。これは居住権利の主張というわけか」

 

「論点ずれてるだろ!」

平が抗議するが東の細い指がまた首筋に触れる。今度は爪先でゆっくりと皮膚を掻くように。

 

「んっ……」

声が出かかるのを必死で堪える平の様子に、東が嬉しそうに喉を鳴らす。

 

「ねえサト」

東の視線が佐藤に向く。「これ以上は『観測不能領域』になっちゃうかなぁ?」

 

佐藤のペン先が震えた。「理論上…観測不能な範囲は存在しないはずだけど…」

 

「これは理論じゃなくて実践だもーん」

東の手がついに平のズボンの中に侵入した。下着越しに膨張したものを握りしめると、指先で裏側をなぞるように動かす。

 

「うっ……」

平の喉仏が上下に動く。額には汗が滲み始めていた。

 

「心拍数+68%……呼吸深さ減少……」佐藤が機械的に呟く。「これは明らかに性的興奮状態だが……『対象者B』の反応が極端すぎる」

 

「B?」東が首を傾げる。「平はアルファベットなんかじゃないよー」

 

「被験者番号よ」佐藤が白衣を直しながら言った。「感情的なバイアスを排除するための措置」

 

「排除できるわけないでしょ!」

東の手の動きが速くなった。下着の中で亀頭を探り当てると、指先で執拗に擦り始める。

 

「東っ……サトが見てる…やめっ……」

平の声が裏返る。太腿の筋肉がピクピクと痙攣し始めた。

 

「観測データ更新」佐藤がノートに走り書きする。「性器血流量増加……自律神経の混乱……これは急性性欲亢進状態だわ」

 

「難しいこと言ってないで見てみなよ」

東が平の下着から手を引き抜く。指先に透明な粘液が糸を引く。

 

「これが『平』の体温なんだよ?」

そう言って佐藤の方に指先を見せつけると、突然指を自分の唇に差し入れる。チュパッという音と共に舐め取る姿に佐藤の顔が紅潮する。

 

「液体の化学分析が必要ね…」佐藤が震える声で呟く。「でも…これは間接的性交渉行為にあたるのでは?」

 

「だから、違うって」

東が妖艶に微笑む。「ただの『同棲カップル』の日常だってば」

 

その言葉に佐藤の理性が崩れたのか、彼女の指が無意識に自分の胸元に触れていた。

 

 

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東は宣言する「今日は初日なので、平の裸は見せてあげない、私も裸にならない」「サトのお試し期間ってこと」

 

佐藤が息を飲む。「お試し……期間?」

 

東がゆっくりと脚を組み替えた。タイトスカートの裾が僅かにずり上がり、白い太ももの内側まで露わになる。

 

「そう」

彼女が人差し指を立てて佐藤の方へ向けた。「サトは観測者なんでしょ? だったら『観測できないもの』があるのはまずくない?」

 

「確かに……」

佐藤がペンを握りしめる指が震える。「対象者A、Bのデータ収集が私の──」

 

「役割なんでしょ?」東が立ち上がり、キッチンカウンターに腰掛けた。両脚を広げ、白いパンティストッキングに包まれた三角地帯を見せつけるように。「でもね……覗き見だけじゃデータの半分もわかんないよ?」

 

平が俯いている。顔は真っ赤なのに、ジーンズの中の膨らみは東の指による刺激で脈打っている。

 

「東……もうやめろ……」

声がかすれているのは恐怖か期待か。自分でもわからない。

 

「やーめない」

東がくるりと回ると平に背中を向けた。タイトスカートの腰部分から下着のラインが浮かび上がっている。「サトがちゃんと“見る”まで終わらせないもん」

 

佐藤の目が左右に動き回る。ノートのページをめくる手も汗で濡れているのがわかる。

 

「つまり……観測対象外をあえてなくすことで……私の観測力を試すというわけね?」

佐藤の声が微妙に上ずっている。「思考実験としては評価できるかもしれない」

 

「思考実験?」

東がクスクス笑うと、突然平の背後に回り込んだ。両腕を彼の首に巻きつけながら、豊満な乳房を背中に押し付ける。

 

「んんっ……」

平が身をよじる。東の手が再びシャツの下に潜り込んだ。今度は直接肌を撫でる温もりに平の全身が粟立つ。

 

「経験がないサトのために言っておくけど」東の唇が平の耳朶を噛んだ。「私たちね…こういうことする時いつも裸になるの」

 

「はだか……」佐藤の筆が紙面で硬直する。「……それは性的接触におけるスタンダードな形態ではなくて?」

 

「そうだよ?」

東の指が平の乳首を摘み、転がす。平の喉奥から「うあっ」という嗚咽が漏れた。

 

「だけど、今日はサトがいるから、特別にこのままでやってあげる」

東の舌先が平の首筋を這う。唾液の跡が光る。「サトがこれでも恥ずかしくて帰っちゃうようなら……そこで観測は終わり」

「サトは平の裸も私の裸も観測できないまま。まあ、今日は裸になるつもりはないけどね?」

 

佐藤の喉仏が上下する。顔は完全に紅潮し、ノートを持つ手が小刻みに震えている。だが──

 

「データ記録を中断する理由はないわ」

彼女の声は変わらず氷のように冷たい。しかし指はすでに自分のスカートの裾を無意識に掴んでいる。

 

「ふーん」

東の指が平のズボンのベルトに伸びた。「研究熱心で偉いねサト。じゃあ続けちゃおっか?」

 

「東っ……頼むから……」

平が懇願するが、その声は弱々しい。すでに快楽の渦に飲み込まれかけている自分が憎い。

 

「サトを見てて、平」

東がベルトを緩め、ズボンの中に手を差し入れた。今度は下着の上ではなく──直接的な接触が始まった。

 

「ひっ……」

平の腰が跳ねる。東の掌が屹立した竿を握りしめ、上下に動き出す。指の一本一本がカリの部分を執拗になぞりながら。

 

「サトのお試し期間だもん……いつもより、ゆっくりね」

東が囁く。しかし掌の動きは徐々に加速していく。平のジーンズが窮屈そうに盛り上がり、ファスナー部分が歪む。

 

「記録項目追加」佐藤が声を張る。「陰茎硬度+80%……尿道球腺液分泌開始……皮膚温度上昇……」

 

「サトの説明エロすぎるってばー」

東が笑いながら平の耳たぶを噛んだ。「ねえ平?サトの科学用語って感じちゃわない?」

 

「うぅっ……やめ……」

平の歯ぎしりが聞こえる。顔中から汗が滴り落ち、Tシャツの襟ぐりを濡らしていた。

 

「心臓の鼓動が手に伝わる……」佐藤が平の胸を押さえる。「こんなに早い…対象者Bの反応パターンとして記録しないと」

 

「またB?」

東の手の動きが一瞬止まった。「だから、平はアルファベットじゃないんだけど?」

 

「適切な呼称よ」佐藤の声が揺れる。「Aは性的刺激提供者。Bは感受者……この相互作用モデルが観測対象なの」

 

「難しく考えすぎー」東が再び平の竿を握る。「単純に……私の手が気持ちいいから平は泣きそうな顔してるだけだよ?」

 

「涙腺分泌確認」佐藤が震える手で平の目元を拭おうとする。その指先が微かに瞼に触れただけで──

 

「んっ!」

平の身体が弓なりに反った。東の手の中で熱いものが脈打ち、佐藤の驚愕の表情が一瞬だけ映る。

 

「あらら」

東が嬉しそうにズボンの中から手を引き抜くと、指を舐める。「いつもより、ちょっと早いんじゃない平?」

 

「射精の観測に失敗……」

佐藤がノートを閉じる音が虚しく響く。「射精前後の精密データ取得に支障があるわ……これは重要な誤差要素と言える」

 

「誤差じゃなくて」東が平の肩越しにウィンクする。「これが現実よサト。平の全部は私だけのもの。私がこれ以上、カワイイ平をサトに見せたくなかっただけ」

 

佐藤の唇が震えた。

「……記録終了。すこし休憩させて頂戴」

 

そう呟くと彼女は立ち上がる。しかしその足取りは危うく、テーブルの角にぶつかりながら部屋の隅でうずくまりノートを取る背中は小さく丸まっていた。

 

東がの指の間には白濁した液体がまだ糸を引いていた。

 

「お疲れさま平」

彼女が平の肩に顎を載せる。「やっぱりサトにはちょっと刺激が強すぎたみたいだね?お試し失敗だったかな?」

 

平は荒い息遣いのまま動かない。ただ壁に貼られた東とのツーショット写真をぼんやり眺めている。

そこには高校時代の東がはにかみながら平と写っている──思い出の一枚が飾られていた。

 

 

-----

 

 

佐藤がノートを胸に抱え、二人の前に戻ってきた。

 

「お願い……」

彼女の声が床に落ちる。「もう一回……チャンスを頂戴」

 

東が振り返り、勝ち誇った猫のように微笑む。「分かった。けど、今日は一回でおしまい。また明日ね」

彼女の指が平のズボンの外側からペニスを弄ぶ。先ほどの放出の余韻でジーンズ生地が湿っているのに気づき、わざと爪で引っ掻くようにする。

 

「東っ…もっとちゃんと…」平が呻く。さっき放ったばかりなのに──股間の芯が早くも固くなり始めたのを感じていた。

 

「分かってるけどぉ」

東が佐藤を見ながら、平の耳朶を舐めるように囁く。「平は何回でもイケるけどさ……サトのお試し期間だし、一日一回にしよ。今日はさっきのでおしまいね?」

 

囁きが脳を灼く。普段ならあの後すぐ二発目に突入する。東の巧みな指使いが萎えかける前に次の波を起こしてくれて……そして最後にはベッドで彼女の内側へ何度も放出する──

 

「分かった」

平の声が嗄れている。快楽に焼かれた平には佐藤の存在が邪魔だった。なぜ彼女がこんなにも食い下がるのか理解できない。科学的好奇心か?それとも……

 

佐藤が平に一歩近づく。ノートの端が汗で滲んでいる。「平クン、ごめんなさい……」彼女の呼吸が不規則だ。「でも……すごいわね」

 

平が怪訝そうに顔を上げた。佐藤が平の股間を凝視している──その視線は明らかに物理学者のものではない。

 

「生物の雄として…とても強い能力…」

独り言のような佐藤の口調が変化していた。「何度でも射精できるなんて……睾丸内の精子製造速度が常人を遥かに凌いでる可能性が高い…」

 

「……は?」

平の思考が停止する。東の指が止まった。彼女が佐藤を睨んでいる──その瞳孔が開いている。

 

「精子生成速度の個人差は最大で30倍と言われてるけど」

佐藤が平の膝に触れ、滑るように腿を登ってくる。「これほど急速な再充填現象は臨床報告例が極めて少ない……対象者Bの個体特性として詳細記録が不可欠」

 

「なに言って……」

平が言いかけて喉が詰まる。佐藤の細い指がジーンズのチャックに掛かる音。カチカチと金属が擦れる音が室内に響く。

 

「アズ」佐藤が東を見ずに言う。「一日一回までの射精制限は了解したわ。しかし既に24時を周ってる。もう一度、観測精度向上のため射精を依頼するわ」

 

「………却下します。サト、私の許可なしに平に触れないで」

東の声が刃物のように鋭い。だが佐藤は無視してファスナーを引き下げていく。解放された蒸気と共に、萎えかけていたはずの平の竿が佐藤の目前にそそり立った。

 

「生理的反応確認」

佐藤の指が初めて見る異性の脈打つ竿をそっと撫でる。冷たい感触に平の腰が震える。「海綿体膨張率79%……尿道球腺液再分泌開始……」

 

あまりにシュールな状況だった。佐藤の精密な分析が自分の性器に向かう──

 

「次段階に移行するわ」佐藤の声が甘くなった。「口腔による直接刺激が最も効率的なデータ収集方法と判断」

 

「待っ……」

制止の声は遅すぎた。佐藤が跪き、スカートの中から白く細長い脚が露わになる。東が咄嗟に平の首を抱きしめ目を塞ぐと「サトの脚、見ちゃダメぇ」と叫ぶが──遅い。

 

佐藤の唇が平の亀頭を覆った。温かなぬめりが鈴口を包み込む瞬間、「んっ!」という甲高い悲鳴が彼女の喉から漏れる。

 

「サト!?」

平が驚愕する。彼女の唇が竿全体を包み込んでいく。

 

「唾液中酵素成分分析……」佐藤の声が含みを持ちながら響く。「粘膜接触時の神経伝達速度…私の見様見真似の性技に関わらず…予想以上の反応値を記録…」

 

「データ採りながらフェラすんなし!!」

平を抱きしめながら東の罵声が飛ぶ。平の背中に彼女の爪が食い込む痛みさえ快感に変わる。

佐藤のつたない舌先が裏筋を這うと、同時に東の指が射精させじと、竿の根本をぎゅっと握りしめる──異種の快楽が一点集中する。

 

「うっ……くっ……」

平が喘ぐ。佐藤の白衣に覆われた背中が震えている。ノートを開こうとしているのだ。口内射精直前の状態を克明に記録しようと──

 

「ダメ…だ…東…サトの口に出る……頼む……」

平の懇願に応えるように、平を抱きしめながら、精液を漏らすまいと東の手が強く竿を絞る。

だが、佐藤の吸引は止まらない。佐藤が涙をこらえながら喉奥まで迎え入れた瞬間、

 

「んぐっ!」

 

佐藤の鼻腔から熱い吐息が噴き出す。同時に平の全身が硬直した。

 

直腸括約筋の収縮確認!精巣内圧上昇率98%!射精管開放タイミングは……

「射精開始ッ!!!」

佐藤が叫ぶ。佐藤の口から溢れる白濁。彼女がむせながらもノートに書き殴る文字が歪んでいた。

 

「……精液量10.8ml……精子濃度2億8200万匹/ml……色調は濃い白色……」

涙と唾液で汚れた顔を上げながら佐藤が呟く。「…データから分析すると…対象者Bの生殖能力は…人類史上稀有な事例よ」

 

東が平の顔を両手で掴み、強引に自分の方へ向かせる。「だから言ったんじゃん…今日はお試しだって…平ってば、惚けた顔しちゃってさ」

彼女の唇が平の唇を塞ぐ。平の脳裏から佐藤の唇の余韻が消えていく。

 

「でもね」

離れた唇から唾液の糸が引く。「明日からはもっと、ちゃんと楽しもう?お試しの間だけはサトにも平を味わわせてあげる、ね」

 

平は言葉を失った。佐藤が床に這いつくばりながら平の放出後のデータを採取している光景と、東の甘い束縛が同時に襲う──脳が痺れて意識が霞む。

 

その刹那。佐藤の指が不意に平の睾丸に伸び、優しく握った。

 

「驚くべきことね」

彼女の声が恍惚としている。「対象者Bの精巣……もう次の精子製造サイクルが始まってる…」

 

油断をしていた東は、平と佐藤の間に体を入れると佐藤を睨む。その瞳に浮かぶ炎は嫉妬か狂喜か──あるいは両方。

 

 

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静寂が重く垂れ込める。 東は佐藤を睨みつけたまま微動だにしない。その背後で平は震えていた。

佐藤が自身の睾丸を凝視したまま、何かをブツブツ呟き、揉みほぐしている事実は、あまりに現実離れしていた。

 

「通常……」

佐藤の声がかすれている。

「射精後の回復まで少なくとも30分は必要……精巣内の精子製造工場が休止状態に入るから」

 

「俺は休止なんて」

平の声が掠れている。佐藤の細い指が睾丸を軽く揺らすたびに奇妙な疼きが走る。

「そう!対象者Bの精巣はもう激しく活動している……さっき出したばかりなのに……」

 

「そうなのよ!」

佐藤の瞳が蛍光灯を反射してギラリと光る。

「対象者Bの精巣は……射精後わずか数秒で再稼働を始めたわ。しかも製造速度が上がっている……これは完全に特異事例」

 

「一体どういう体の構造に…」

東が佐藤を遮る。その腕が平の肩を抱き寄せる強さは恐ろしいほど強烈だった。

「特異事例だろうがなんだろうが!今日はサトはもうなし、勝手に触っちゃダメ!!」

 

佐藤がゆっくり立ち上がる。彼女の目は夢遊病者のように何かに釘付けになっていた。

「対象者A」彼女が東を指さす。「アズの存在こそが鍵なのかもしれない」

 

「は?」

東の眉が跳ね上がる。平が不安げに二人の間を行き来する視線を追う。

 

「データが示す共通点」

佐藤の指がノートを叩く。「対象者Bの勃起および射精反応は、常に対象者Aが近くにいる条件下でしか発生しない。具体的には──」

 

彼女は東と平の間に割って入ると、無理やり平の股間に触れる。

「──つまり、対象者Aが触れた瞬間から体内のテストステロン値が急上昇。そして射精後も継続して…」

 

「サト、あんたさっきから何様のつもり!!」

東の平手打ちが空を切る。佐藤は寸前で身を捻って避けた。

 

「私は…ただ…観測者として……」誤魔化そうとする佐藤の台詞を遮り、東が吠える。

 

「ふざけないで!平は道具じゃない!!平はこの体質のせいでホントに苦しんでるんだから!サトの実験材料にはさせない!」

 

「サトは私と平の仲を安定させるためにここに来たんじゃなかったの!?」

 

東の叫びが部屋を震わせる。平がその腕の中で小さく震えている。

親友の泣き声を聞きながら、佐藤は静かにノートを閉じた。

 

「……そうね」彼女の狂騒はなりをひそめ、声はすっかり落ち着いていた。

「確かにこれは人権侵害行為だったわ。私の誤りね」

 

「本気で反省して……」

東の非難に、佐藤は深々と頭を下げた。

 

「目先の研究に我を忘れてしまった…非礼をお詫びするわ…ごめんなさい…」

白衣の袖が揺れる。「だけど」

 

頭を上げた彼女の眼差しは氷のように冷たかった。

「これは私の単なる好奇心じゃない。世の理を、生命倫理の境界線を超える可能性を秘めた現象よ。私は諦めない」

 

沈黙が落ちる。

佐藤は鞄を拾い、埃を払う。彼女の表情が微妙に緩んだ──それは安堵か?それとも計算か?

 

「今日のデータは破棄するわ。約束する」

振り返らずにドアへ向かう足取りは意外に軽い。

 

「だけど……」

ドアノブに手をかけたまま、彼女が囁くように呟いた。

「観測は継続させて欲しい。あなたたちが許してくれるなら…」

 

ドアが閉じる音。残されたのは二人だけ。

 

 

-----

 

 

東は額にかかった前髪を気にしながら俯いていた。さっきまでの怒気が嘘のように、細い肩が震えている。

 

「……平」

呼びかけは蚊の鳴くような声だった。

 

「……サトに代わって……私が……謝るね」

 

平は黙って彼女を見つめる。あの激情の主がこんな風に萎れている姿は新鮮で――少し痛々しい。

 

「誤解しないで欲しいんだけどね」

東は床にへたり込んだまま膝を抱える。指先がタイトスカートの生地を無意識に擦る。

「サトは昔から……こうなんだ。一直線って言うか。何かに夢中になるとさ、他が全部見えなくなるっていうか……」

 

平は小さく頷く。確かに佐藤葵という少女はそういうタイプだ。数学の難問を解き明かしたときのあの没頭ぶりは知っていた。

 

「これだと決めたら突っ走っちゃうんだよね」東は天井を見上げた。「普段は『私は観測者よ』みたいな一歩引いた感じをわざと出してるけど……あれって半分ポーズなんだと思う」

 

平の胸の内で何かが軋む。

 

「ちょっと……そんなとこは平に似てるっていうか」

東が不意に視線を戻す。その大きな目が真っ直ぐに平を捉えた。

「そんなサトが……私は好きっていうか……」

 

「……は?」

思わず洩れた平の声に、東の耳朶がみるみる朱に染まる。

 

「あ、いや、違う!恋愛的なあれじゃなくて!」

彼女は慌てて手をバタつかせた。

「サトのそういうガチなとこ!目的に向かってブレない感じは……憧れるし尊敬するってこと!」

 

平は眉根を寄せる。どこか腑に落ちない違和感。

 

「あれ?私何言ってるんだろ」東が頭を抱える。「ホント……サトは困ったヤツだなー……」

ため息がこぼれた。ふわりと香水が鼻腔をくすぐる。

 

「でもさ」彼女が突然身を乗り出してきた。体温を感じるほどの至近距離。「今回はさすがにやり過ぎだよね。後で私もちゃんと叱っておくから。安心して?」

 

「いや……別に……」

平は言いかけて唇を噛む。まだ、何も安心する材料はない。

佐藤のあの冷徹な視線。科学者の指が睾丸を弄った感触がまだ肌に残っている。

 

「ねえ」東の指が平のシャツを摘まんだ。「まだ怒ってる?」

その問いが鋭く刺さる。東自身の佐藤を庇う態度に平は納得できなかった――

 

「……怒る資格なんて」

平の声がかすれる。

「俺にあるのかよ」

 

東の動きが止まった。彼女の目に映る平の姿は――疲れ果てた野良犬のようだった。

中学時代の影が濃く忍び寄る。誰にも選ばれず、選ぼうともしなかった日々の匂い。

 

「馬鹿」

東の吐息混じりの声。彼女が拳を軽く平の胸に当ててきた。ドンッという鈍い響き。

 

「平が一番怒って当然なんじゃん」

その拳がじわじわと押してくる。彼女の指に力がこもる。

「…私が勝手に色々サトを煽って、サトが暴走して……平の大切なとこ、実験みたいに使われちゃったんだよ?」

 

拳が震えている。

平は気づいた。彼女も怒っているのだ――平を実験材料として辱めた佐藤ではなく、佐藤を煽った自分自身に対して。

 

「ごめん」

平の口から零れた言葉は予想外だった。

「東に気を遣わせて……情けねえな」

平はすべてを自分のせいにして飲み込んでしまう。

 

東が目を見開き叫ぶ「違うよ!」

 

今度は拳が平の胸を強く押し返した。

「平は何も悪くない!私が悪いんだ!」

 

彼女の叫びに部屋全体が揺れたような錯覚。平の心臓が早鐘を打つ。それは怒りではなく――彼女の中にある巨大な感情の奔流を垣間見たせいだ。

 

 

-----

 

 

東の拳が平の胸から離れた。その代わりに、汗ばんだ手のひらがそっと彼の手首を掴む。

 

「正直に言うね」

彼女の声は微かに震えていた。

「さっき……私は……サトが平のフェラするの見て……」

言葉が喉に絡む。それでも東は続けた。顔を背けながらも目は爛々と光っている。

 

「すごく……興奮しちゃってた」

 

平の呼吸が止まった。目の前の少女は今、何と言った?

「口ではやめてとか言いながら」東が歯を食いしばる。「平が快感に溶けていく顔見て……私も感じてた」

 

その告白があまりにも直接的で、淫靡で。

「私がサトを煽って…普段お堅いサトと真面目な平が……性的なことしてるの見て」

涙が滲んだ睫毛が煌めく。

「感じちゃってたの!」

 

沈黙が降りる。蒸し暑い部屋に二人の荒い息遣いだけが響く。

 

「俺も」

平の声はかすれた。

「正直……すごく感じてた」

東の目が驚愕で見開かれる。平が東の手を握り返した。その温もりが残酷なほど生々しい。

「東に見られながら、あの真面目なサトにフェラされて」

 

彼の指が東の手の甲に爪痕を刻む。

「俺は東以外の女は知らないけど」声が詰まる。「サトがフェラしたことなかったって位は分かる」

記憶が蘇る。ぎこちない舌使い。不慣れな手つき。なのにあの狂気じみた執着心。

 

「そんなサトが俺のをフェラして」平が呻くように言った。「東が俺のを握ってて……」

額に脂汗が浮かぶ。

「何が何だか分からなくなって……でもすごく気持ちよくて」

 

東の唇が震えた。彼女は泣きそうな顔で笑おうとしていた。

 

「ゴメン」

平が突然頭を垂れる。

「サトの口に……射精して。東の彼氏なのに…」

 

それは東を裏切った罪悪感ゆえの謝罪だった。

 

東がゆっくりと立ち上がった。スカートの皺が床に伸びる陰影を作る。彼女は平を見下ろす位置まで移動し―

「なんで謝るの?」

低い声が部屋を切り裂いた。

「そもそも最初に始めた私こそ最低じゃん」

彼女の踵が硬い床を踏み鳴らす。

 

「平が気持ちよかったなら」東の声が崩れた。「それでよかったことにしない?」

 

平が顔を上げる。そこにあったのは―慈愛に満ちた笑顔だった。

だがその笑顔の奥に潜む深い傷跡を平は見逃さなかった。

 

「だから」東が平の頭にそっと手を置く。

「私たち、もっと正直に話そ?」

 

その指が茶髪を梳く。優しさの裏に潜む支配の兆し。

 

-----

 

 

東は微笑んだまま数秒間沈黙し、それから突如として真顔に戻った。窓から差し込む午後の日差しが彼女の輪郭を金色に縁取っている。

 

「ここまでぶっちゃけちゃったら」彼女の声が急に落ち着いた。「もういいよね」

 

平の背筋がぴんと伸びた。その言葉の重みを感じ取っている。

 

「サトの観測は継続しよ?」

 

東はベッドサイドに腰掛ける。タイトスカートの裾が広がり、艶かしい脚線が露わになる。

 

「どこまでいけるか」

彼女の指が自分の鎖骨を撫でる仕草。

 

「どこまでいっちゃうか分からないけど」

瞳孔が収縮する。獲物を狙う猛禽類の眼差し。

 

「このどんづまりの関係を何か変えられるはずだから」

 

この言葉の意味を平は即座に理解した。これは単なる承諾ではない。契約だ。罠だ。

(だが抵抗する力もない)

 

平は黙って頷いた。それは降伏であり、同時に奇妙な解放感でもあった。

 

東の唇が弧を描く。「ありがと」

彼女の指先が再び平の髪に触れる。その仕草にはもはや躊躇いはない。

窓の外で雲が流れ始めた。夏の終わりを告げる風が吹き始めている。

 

 

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翌日放課後。平のマンションに佐藤が現れた。彼女はドアを叩く前から既に震えていた。ノックの音が金属的な響きを立てる。

 

「入るよ」

佐藤の声がいつもより上擦っている。

 

部屋の中央で東と平が待っていた。カーペットに正座した平の隣で東が仁王立ちしている。

 

「どう?結論は出た?」

佐藤は玄関に立ったまま尋ねる。肩が小刻みに震えている。本心の不安か演技か──東には見分けがつかない。

 

東が腕組みする。「とりあえず一ヶ月継続」

 

「えっ?」意外そうな佐藤の声

 

「でも昨日みたいな暴走はなし」

東の指が空中にバツ印を描く。

 

「ルールをこうね。このルールが飲めないなら帰って」

佐藤が唾を飲み込む。

 

東がカバンから手帳を取り出す。「ルール①」

「平秀司の彼女は東紫乃、ただ一人」

「佐藤はあくまで観測者の役割から逸脱しないことを誓います」

 

佐藤の眉が跳ね上がる。

「ちょ……せめて自由な検証は保証してほし……」

 

「次!」

東の声が佐藤を遮る。「ルール② 観測結果はあくまで佐藤の中に留めることを誓います」

 

手帳をパタンと閉じる音。

「学会への発表や論文で、対象者の名前を少しでも出したら絶交します」

 

佐藤の顔色が「貴重なデータが…」と青ざめる。

 

「でも」東の声が僅かに緩んだ。「ルール③佐藤も女の子だから」

彼女が佐藤に向かって歩き出す。その足取りに隙はない。

「何かあったらすぐ『東』に相談すること」

 

東が佐藤の両肩を掴んだ。驚くほど強い力だ。

「親友として最大限配慮することを東は誓います」

 

平が息を飲む。友情という名の鎖で佐藤を繋ぎ止めようとする必死さが痛いほど伝わってくる。

 

「どう?」

東の問いかけに佐藤は俯いた。長い沈黙の後、微かな頷き。

 

「……了解した」

震える声で佐藤が答える。「でも本当にいいの?こんな条件で」

東は突然笑い出した。その笑い声はいつもの陽気なものではなく──危険なほど甘美だった。

 

「サトの研究意欲がそがれないギリギリの条件を考えたつもりだけど?」

彼女が佐藤の耳元で囁く。

 

「むしろ感謝してほしいんだけどなー」

 

 

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ルール③を聞いた瞬間、佐藤の全身が震えた。

 

(自分が……女として認められている?)

 

涙腺が熱くなった。研究者として客観性を装う日々の中で、自分が"女"であることを忘れるように努めてきた。けれど今――東が"女としての佐藤"を認めたのだ。それだけじゃない。

 

("親友として頼ってもいい"って……)

 

東は私にこんなにも身近な距離を許してくれている。佐藤の喉が詰まった。普段なら決して流れない感情が溢れそうになる。

 

(多分アズは想定しているんだろう)

 

万一の可能性――佐藤が平を男として意識してしまう事態を。ルール③を告げる東の眼光は鋭かった。「それでも私がサポートする」と。

 

(あの一言がどれほどの覚悟か)

 

東の唇がわずかに歪む。「だからこそ」という前置きを感じさせる微笑み。それは彼女としての優越感か? それとも――親友としての覚悟か?

 

佐藤は咄嗟に目を逸らした。今の東の顔を見続けるのは危険だと本能が警告していた。しかしもう遅い。東の体温が佐藤の両肩を包む。

「私たち三人で……うまくやっていこうね?」

 

東の声が震えていた。それは決意の震えだ。

佐藤は黙って頷くことしかできなかった。掌に食い込んだ爪痕だけが、この異常な均衡が保たれることの代償だった。

 

 

-----

 

 

 

東はキッチンに立ち、コーヒーを淹れながら思った。

(やっぱり)

予感は当たっていた。

 

三人暮らし一日目。

佐藤が買ってきたシリアルを朝食に出し、平が皿を並べる。自然な役割分担。

(一週間前ならあり得なかった光景だ)

 

「ミルク入れる?」佐藤が尋ねる。

「いや、ブラックで」平の返答。

息がぴったりだ。

 

東は自嘲気味に笑った。

(気質も性格も何もかも)

 

平と佐藤はよく似ている。 観測力が鋭く、思考が緻密。周囲を分析してから動く慎重派。

(私とは正反対)

 

自分の性格を振り返る。感情で突っ走り、計画性ゼロ。感覚で動くタイプだ。

(だからこそ彼らに惹かれるんだろうな)

 

東は二つのカップに湯気の立つコーヒーを注いだ。一つはブラック、もう一つはミルク多め。

(私は私のままで)

 

それが自分の武器だと信じている。

(彼らの理性が、私の直感を導くなら)

 

平と佐藤がダイニングテーブルにつく。東がコーヒーカップを置く。

(この奇妙な三角関係も……悪くないかも!)

 

東は満面の笑みを浮かべた。これからが彼女の真骨頂なのだから。

「さあ、食べよ!」

 

 

-----

 

 

東は朝食後、コーヒーカップを置きながら突然言い放った。

「ご飯食べたら、朝エッチの時間だよ!」

 

佐藤の手が止まる。シリアルのスプーンが床に転がり落ちた。

「あなたたち……毎日朝っぱらから盛ってたの?」

 

その問いかけは当然だった。理性的な佐藤にとっては理解不能だろう。

「そりゃあ……」平が口を開きかける。

 

「毎日ってわけじゃないけど……」

「日曜の朝以外はいつもでしょ、それって毎日って言ってもよくない?」

東が容赦なく平の弁解を遮った。

 

「いや、でも日曜日は……」

「細かいことはどうでもいいの!」

東がテーブルを叩いた。

「大事なのは私たちの習慣なの! 今日からサトも一緒に参加してもらうんだからね!」

 

佐藤の目が見開かれる。スプーンを拾おうとした指が震えていた。

東の笑みが深くなる。全て計算通りという表情だ。

(さてと……まずは彼女を"教育"する必要があるわね)

 

「そんなの聞いてない……」佐藤が呟く。

 

「今言ったもん」東は舌をぺろりと出す。

 

平が咳払いした。

「東が勝手に決めたんだ。俺は何も知らないぞ」

彼の額に汗が滲む。

 

「あら~平? さっき約束したでしょ?」

東が猫なで声で近づく。

「三人一緒だって」

 

佐藤は目を細めた。この状況を整理しようとしている。……

「生理的に無理」と切り捨てるのは簡単だ。だが同時に……

(貴重な研究サンプルを失うことになる)

 

「わかった」

彼女の声が氷のように冷たく響いた。

 

「ただし」

鋭い眼光が東を貫く。

 

「まずは、じっくりと観測させてもらうから」

 

 

-----

 

 

東は佐藤の鋭い視線を受けながら、ゾクゾクと背筋を駆け上がるものを感じた。

(ああ……この目)親友の前で愛する彼氏と肌を重ねる──この背徳感が快楽の種火となる。

 

「サトはそこで見守っていてね♪」

東の指がシャツのボタンに掛かる。一つずつゆっくりと外していく仕草に佐藤の喉仏が上下した。

 

ブラジャーが滑り落ちると形の良い乳房が露わになる。艶やかな肌に浮かぶ乳輪は桜色。東の目元がわずかに紅潮する。

(親友の前で……恥ずかしいけど……でも……)

 

スカートのチャックが下りる。ストッキングと共に布地が床へ滑り落ちる。

「あっ……」

佐藤の口から微かな吐息が漏れた。

 

東は完全に一糸まとわぬ姿となった。長い脚線美が朝日に照らされ光沢を帯びる。そして……股間から伝う透明な滴。

(濡れてる……まさか……本当に興奮してるの?)

佐藤の胸が早鐘を打つ。

 

「……始めるよ」

平が小さく呟き、ジャケットを脱ぎ始めた。抵抗は見せないが諦めの色が濃い。シャツを脱ぎ捨てると鍛え上げられた上半身があらわになる。

(彼の裸……初めて見た)

佐藤の瞳孔が開いた。腹筋のラインが美しい。隆起した胸筋に血管が透けて見える。

「筋トレしてる?」

思わず口走る。

 

平は苦笑いしながらベルトを緩める。

「高校の頃までは剣道やってたんで……」

 

ジーンズが床へ落ちると佐藤は目を見開いた。薄く引き締まった臀部。そこから伸びる長い足。

(……綺麗な身体)

女としての本能が疼く。研究対象として 観測すべきなのに──視線が外せない。

 

東が平に抱きついた。

「ふふ……サトったら私たちの裸に見惚れてる?」

彼女の指が平の頬を撫でる。その仕草だけで佐藤の心臓が跳ねた。

平のペニスが緩やかに勃ち上がる。

 

(すごい、すぐに、あんなに大きくなるものなの……?)

佐藤の理性が崩れ始める。机の上の 観測メモ用紙を握りしめる手に力が入った。

 

「記録……取らなきゃ……」

しかしペンを持つ手が震える。股間に集中する熱に彼女自身気づいていなかった。

 

東は平の下腹部に跪き、その指がゆっくりと彼の屹立を包み込んだ。長い中指が裏側を這い上がる。親友の前で──その背徳感がさらに彼女の手つきを艶かしくする。

 

「ふふ……見てサト」

東の吐息が熱を帯びる。

「平のここ……他の男たちと比べ物にならないのよ?」

 

佐藤の喉がゴクリと鳴った。確かに──標準以上の長さと太さ。しかも根本から先端までほぼ均一に膨張している。

「比べ物にならないほど長くて……大きくて……固いのよ?」

 

平の耳朶が赤く染まる。嫉妬の炎が胸の中で燃え上がった。(東が過去の男と比べている)その事実だけで胸が締め付けられる。だが同時に佐藤の視線が──。

 

(見られてる……あの冷静な佐藤に……)

 

羞恥と興奮が入り混じる。東の巧みな手技に加え、親友の凝視が彼の性感帯を刺激する。

「っ……東…」

声が上擦る。

 

「初めて見るのが平のだと」

東は唇を舐める。

「サト、これからの男に満足できなくなっちゃうかもね?」

 

佐藤の瞳孔が収縮する。彼女の理性が警鐘を鳴らす。

(こんなものを……見てしまったら)

 

一方で 観測者としての好奇心が暴走する。指先でメモを取る動作が無意識に速くなる。

(直径約5cm……全長は22cm以上…日本人男性平均の1.8倍以上…)

科学者の目と女の欲望が交錯する。

平のペニスがさらに硬度を増す。青筋が浮き上がり始めていた。

(やばい……いつもより……)

 

自覚すればするほど血流が集まる。

佐藤の眼差しに晒されるという異常な状況が麻薬のように効いていた。

 

「じゃあ……フェラから 観測してみて、サト」

東は平の前に跪き、その唇が亀頭に触れる。湿った感触に平が僅かに身を捩らせた。

「っ……東…」

 

彼女はゆっくりと頭を沈めていく。深い喉奥まで飲み込むその動きに佐藤の目が釘付けになる。唾液と粘膜が絡み合う音が静かな朝のキッチンに響く。

「見て……こうやって……」

東の口元から溢れた唾液が顎を伝う。

「ゆっくり……出し入れしながら……舌で……」

 

佐藤の筆記が狂ったように加速する。

「口腔内の温度36.8℃前後……舌の接触圧力平均0.2kPa……」

 

その冷静な 観測報告が却って卑猥さを増幅させる。平のペニスが脈打ち始めた。

「っ……くっ……」

 

東の動きが変わる。浅く咥えたまま鈴口を舌先で掘るように舐める。その繊細な動きに佐藤の眉が寄る。

 

「サト……もっと近くで見たら?」

東が視線を送る。「口に出して……どうなってるか説明してみて」

 

佐藤は躊躇いながらも一歩踏み出した。鼻腔を満たす性臭。それは決して不快ではなく──

「アズは現在……陰茎冠周囲を重点的に刺激してる……舌先を尖らせて……小刻みに……」

 

説明しながら彼女は自分の脚の間が熱くなるのを感じていた。スカートの裏地に触れる部分が湿り気を帯びる。

「っ……私の膣の膣分泌液の分泌を確認……」

 

東がくすりと笑う。フェラを中断し、口角に泡立った唾液をつけたまま。

「あれ?サトったら……自分の説明もしちゃうの?」

 

その挑発的な瞳が光る。「観測者失格じゃない?」

佐藤の頬が朱に染まる。

 

「私はただ……客観的事実を……」

嘘だ。自分がどれだけ淫らな状態なのか自覚していた。 観測記録用紙を持つ指が震えている。

 

「あらら〜」東が意地悪く微笑む。「サトの『研究』って……すごく実践的で客観的なのね?」

その言葉が佐藤の理性を粉々に砕く。彼女は俯いたまま 観測を続けた。

 

「現在……アズの口腔内のpH値は低下傾向……平クンの尿道球腺液との混合比率約4:1……」

その合間に彼女は必死で呼吸を整える。酸素を求め肺を膨らませる度に──胸の奥底で何かが弾けそうになる。

 

 

-----

 

 

平の膝が微かに震えた。限界が近い。東の巧みな舌使いと佐藤の凝視──二つの要素が神経を極限まで研ぎ澄ます。

「くっ……! 東……!」

東は喉の奥まで受け入れるように頭を深く沈めた。次の瞬間、平の全身が弓なりになる。熱い奔流が彼女の口腔を満たした。

「んっ……!」

東は慣れた様子で受け止める。喉が上下し、最初の波を飲み干す。しかし途中で動きを止め、口元に残った白濁液を見せつけながら佐藤に向き直った。

 

「サト? 昨日はすぐに吐き出してたでしょ?精液の味や喉ごしを分析する必要はない?」

彼女の唇から糸を引く液体。挑戦的な瞳が光る。

佐藤のペンが止まった。喉の渇きが急に意識される。唾液が口中に湧く。理論と理性は既に崩壊していた。彼女はふらりと近づくと──

 

「……分析材料としては十分だわ」

そう言い訳しながら東の唇に自分のそれを重ねた。

 

「!?」

驚きの声は平から漏れた。親友同士の突然の口づけ。互いの舌が絡み合い、白濁した液体が共有される。東の舌が佐藤の歯列をなぞる。その味覚信号が佐藤の脳内で爆発する。塩味と苦味と──微かな甘み。

(昨日はそこまで気が回らなかったけどこれが……射精されたばかりの精液の味……)

彼女は目を閉じたまま喉を鳴らした。嚥下音がやけに大きく響く。

 

「ん……」

最後の一滴まで吸い取り、唇を離すと銀糸が橋を作った。

 

東は満足げに微笑む。「どう? 分析結果は?」

佐藤は赤い舌を見せながら答えた。

 

「精子濃度は…健康な一般男性の平均値1600万匹/mlの10倍は優に越えてるわね」

その科学的な報告に東が吹き出す。「ぷっ……サトらしい!要は一発で孕むレベルのメチャ濃厚精液ってわけね!」

 

「その割には、毎回中出ししてもらってるのに、全然当たらないなぁ?」と東

 

「確率論ね。試行回数を増やせば近似値に収束するはず。嫌いな言葉だけど、運ってやつかもね」と返す佐藤。

 

 

平は呆然と立ち尽くす。親友二人の行動があまりに衝撃的すぎて思考が追いつかない。ただ下半身の余韻と射精後の虚脱感だけが現実だった。

 

 

-----

 

 

東はぺろりと佐藤の唇を舐めながら訊いた。

「サトって今のがファーストキス?」

 

佐藤は実験器具を片付けながら答える。

「唇同士のキスはそうね。でもキスっていうなら…昨日の平クンのペニスが初めてかも」

「へ?」平が目を丸くする。

 

佐藤は昨夜のフェラチオの際「データ採取……」と言いながら、平のペニスを咥える前に先端にキスを浴びせていた。

東が甲高い笑い声をあげた。

「あっはっは! サトったらあの時、そんなことしてたの?」

「あくまで研究の一環だから」佐藤は涼しい顔で言う。

 

しかし平の股間は正直だった。東とのキスの余韻と佐藤の意外な初体験情報が重なり、再び充血が始まる。

(俺のペニスが……佐藤のファーストキス……)

想像しただけで先端が濡れる。東が鋭い視線で気づいた。

 

「平! サトのファーストキス発言で興奮してる!?」

嫉妬の炎が彼女の瞳に灯る。昨夜のことを思い出したのか、東の頬も紅潮している。

次の瞬間、彼女は平に飛びかかるようにして唇を奪った。強引なキス。舌を押し込み、平の舌を吸い上げる。

 

「んっ……!?」

驚いた平の目に映るのは、親友同士が絡み合う奇妙な三角関係。そして股間の昂ぶりは最高潮に達していた。

 

 

-----

 

 

東は平の頭を両手で掴むと、強引に唇を押し当てた。「順番逆になったけど、キスの 観測ね」

言い終えるや否や舌を侵入させた。平の歯列を丹念に舐め上げ、抵抗しようとする彼の舌を絡め取る。ぐちゅりと唾液が泡立つ音が室内に響いた。

佐藤はメモ帳を握りしめ、目の前で行われる行為から目を離せない。

 

「唾液分泌量……通常時の約4倍増加。体温36.8℃から37.2℃へ上昇」

淡々とした口調とは裏腹に、彼女の太腿の内側は明らかに湿っていた。

東は一旦唇を離すと、垂れた涎を拭うことなく言った。

 

「サト? 何を興奮してるの?」

その言葉に佐藤が頬を紅潮させる。

 

「だって……アズのキスみてると……私の膣から愛液が止まらなくなるの……」

科学者としての矜持を保とうとする佐藤の声が震えた。

 

東が目を細める。

「サトったら変態じゃん!」

楽しそうな笑い声が寝室に響いた。

 

平のペニスは完全に勃ち上がっていた。東の熱い舌に蹂躙されながら、視界の端に映る佐藤の姿──スカート越しでも分かる秘部の湿り気が興奮を加速させる。

「っ……くっ……」

呻き声と共に腰が浮く。

東が唇を離し、唾液の糸を引かせながら宣言した。

「平も興奮しているんだね。でもまだダメ」

彼女は佐藤の方へ向き直る。

 

「次はサトのキスの時間だから」

佐藤は困惑した表情を浮かべたが、東は続けた。

「サトのファーストキスは私が貰っちゃったね」

 

その言葉に佐藤の頬が赤らむ。

「次のキスは平としたい? 正直に言ってみて」

科学的探求心が勝ったのか、あるいは別の感情が芽生えたのか──佐藤は少し考え込んだ末に小さく頷いた。

「…平クンと…試してみたい」

 

「なぜ?」東が促す。

「異性とのキスが……同性に比べてどのように違うのか……」

その答えに東は満足そうに微笑んだ。

 

東は佐藤の頭を掴むと、まるで獲物を捕らえるように強引に引き寄せた。

 

「ゴメンね、サト」

 

その謝罪は予兆だった。次の瞬間、東の唇が襲いかかる。先ほど平にしたのと同じ──いや、それ以上の激しさで舌を押し込み、口腔内を隅々まで蹂躙する。

佐藤は目を見開き、抵抗しようとするが叶わない。1回目のキスが終わり、わずかに息継ぎを許したのも束の間──

 

「2回目ね」

 

再び唇が塞がれる。東の舌が佐藤の歯列をなぞり、縮こまった舌を探り当てる。唾液が溢れ出し、顎を伝って滴った。佐藤の腰から力が抜けそうになる。

 

「3回目……」

 

東は唇を離さずに数える。その目は完全に狩人のそれだった。恍惚と支配欲が混ざり合い、狂気じみた輝きを放っている。

 

「ゴメンね」とまた囁く。「平とキスさせてあげるけど、それは10回目以降にしたいな」

 

「……え?」佐藤の混乱した声。

 

「平の中であなたのキスが『特別な思い出』になるのがイヤなの、佐藤の中でもね」東は薄く笑った。「だから9回目までは私が奪うから、ゴメンね」

 

宣告とともに4回目のキスが降ってくる。5回目。6回目。佐藤の意識が溶けていく。平は呆然と立ち尽くしていたが、その目は佐藤の秘部へ向けられていた──スカートの奥が濡れて色を変え始めている。

 

「んっ……や…」佐藤の抗議の声は唾液に呑まれた。

 

7回目。8回目。東の左手が佐藤の腰に回り、右手で頭を固定する。呼吸すらコントロールされる拷問のような愛情表現。佐藤の膝がかくんと折れかける。

 

「あと1回……」

 

東の吐息が熱い。最後の一回で全てを喰らい尽くすかのように舌を捻じ込む。佐藤の背中がびくりと跳ねた。快感と屈辱とが入り混じった涙が頬を伝う。

 

長い沈黙。ようやく東が顔を離した時、佐藤は支えなしでは立っていられないほどだった。唇は腫れ上がり、焦点の合わない目で天井を見つめている。東はその顎を持ち上げ、満足げに嗤う。

「さて……10回目からは平の番よ? でも気をつけてね。もし私よりも素敵なキスしたら……」彼女は平に向かって艶やかな笑みを浮かべた。「嫉妬で殺しちゃうかも♪」

 

 

-----

 

 

平はため息をひとつつくと、ふらつく佐藤の肩に腕を伸ばした。佐藤の実験ノートが散乱する部屋で、彼女はついに限界を迎えたように見える。

 

「無理すんな……」

 

そう呟いて抱き寄せると、佐藤は抵抗しなかった。むしろ彼の胸に体重を預けるようにもたれかかる。東の執拗なキスによって潤んだ唇が目の前にあった。

 

(こんなこと……)

 

迷いが胸をよぎる。親友同士の実験という建前。しかし佐藤の細い体が腕の中で震える様子を見ると、平はもう理性を保てなかった。

 

そっと額に口づける。まずは優しく。佐藤の瞼がピクリと反応するのを見て、今度は耳朶に。くすぐったそうな声が漏れた。

 

「……もっと」

 

かすかな要求が平の動きを促す。佐藤の実験ノートが床に滑り落ちた。ページを繰るペンが転がっていく。科学者の冷静さはすでに消えていた。

 

唇と唇が触れた瞬間、佐藤の全身から緊張が解けたのが分かった。平は慎重に舌を差し入れる。東の荒々しさとは対照的な、ゆっくりとした探索。佐藤の閉じたまぶたが安堵に緩むのを感じる。

 

(これでいいんだよな?)

 

確認するように抱擁を強める。佐藤は応えるように背中に手を回してきた。

 

「すごい……体温上昇……心拍数……正常範囲外……」

 

途切れ途切れの報告の中に本心が混じる。

 

「安心する……この優しさ……」

 

それは実験結果ではなく、少女の率直な感想だった。

 

一方で東は壁際で腕を組んでいた。佐藤の身体が平に完全に委ねられている。かつてないほど無防備な親友の姿──白衣を着崩し、膝をつきながらキスを受け入れる姿が眩しく映る。

 

(なんて綺麗なんだろう)

 

科学者が感情に溺れていく過程の儚さ。純粋すぎる信頼を平に捧げる友情と愛情の境界線。その清らかさは東の胸に鋭い痛みを走らせた。

 

(もっと奪えば良かった)

 

刹那に湧いた欲望に自分で驚く。優越感と敗北感が交錯する奇妙な恍惚感。親友の幸せを願いつつも、独占できない苛立ち。

 

ふたりのキスは深まりゆく。佐藤の喉から嗚咽のような声が漏れる。平の手が彼女の髪を撫でる仕草があまりにも自然すぎて。

 

(すごく素敵。これが最後じゃないよね?)

 

東は苦笑した。嫉妬なんて馬鹿らしい。この光景は何度見ても飽きることがないだろう。

三つの異なる鼓動が重なり合う午後の静寂。密室はいまや言葉を失った感情たちの避難所と化していた。

 

 

-----

 

 

平の優しいキスに身を委ねる佐藤の横顔を、東は恍惚と眺めていた。科学者として完璧を装ってきた親友が、いまや無防備に感情を露わにしている――その落差があまりにも美しすぎる。

 

(私のものにしてしまいたい)

 

衝動が全身を貫いた。東は音もなく歩み寄る。

 

「…サト…全部見せてほしいな」

 

囁きは甘美な脅迫。佐藤のブラウスのボタンを一つ。二つ。金属音が微かに響く。それでも佐藤は気づかない。平との触れ合いに魂ごと浸っている。

 

三つ目のボタンが外れた時、スカートのジッパーが下降し始めた。滑らかな布地が床に滑り落ちていく。平の胸板に押し当てられた佐藤の乳房が、息づくように上下している。

 

「ん……ふぅ……」

 

深い溜め息と共に唇が離れる。そこでようやく彼女が現実を捉えた。

 

「え?」

 

視線を落とした佐藤の瞳が恐怖に見開かれる。剥き出しになった白い肌。かろうじて残ったのはストッキングのみ。股間に食い込んだ薄布だけが最後の砦となっていた。

 

「アズ! 何を……!」

 

叫び声が震える。反射的に両手が胸を隠す。

 

「ごめんね、興奮しすぎちゃって」東の笑みには計算された狂気が滲む。「でも科学の名のもとにデータ収集は必須なんでしょ?」

 

平はその場に立ち尽くすしかなかった。庇おうにも佐藤自身が羞恥で硬直している。汗ばんだ首筋が月光に浮かび上がる。

 

「平クン……見ないで…」

 

佐藤の哀願が虚空に消える。彼女はさらに小さく丸まっていった。指先が震えるのを抑えきれず、爪が食い込むほどに皮膚を押さえつける。その隙間から零れる鎖骨の陰影が痛々しい。

 

 

-----

 

 

「サトったら裸になるまで気づかないんだもん」東の嘲笑が暗闇に溶ける。「そんなに平のキス良かった?」

 

佐藤の肌がさらに紅潮した。平の腕の中で体をよじるものの、もはや逃げ場はない。

 

「だって……平クンのキスが……」

 

「サトって、いつも私が平のこと相談するたびにさ、大上段からあーすればいい、こーすればいいって偉そうに言ってたよね?」

 

科学者の誇りが剥がれていく。論理的思考が機能停止する。

 

「理論と実践は違うってことだね」東は佐藤の頬を両手で挟み、視線を固定させる。「どう? 実際に自分がやられてみると」

 

涙の膜が揺れた。蛍光灯の下で、佐藤の裸体が石膏像のように浮かび上がる。

 

「こんなの習ってないもの」

震える声が洩れる。理論武装を解かれた少女の純粋な戸惑いだった。

 

「サト、それ煽りすぎ」東の哄笑が破裂する。「平を見てみなよ」

 

佐藤の視線が恐る恐る動く。そこには平の姿があった。彼の裸の下半身が――明らかに先ほどより更に膨らんでいる。

 

「平クン……ダメ……見ないで……」

 

全身が炎のように熱くなった。

 

「どうして……?」

 

研究者は本能で理解していた。これは測定不能な未知の領域だと。

「教えてあげようか?」東が佐藤の背中に冷たい手を這わせる。「サトの裸に興奮してるんだよ」

 

 

-----

 

 

「お願い……アズと比べないで……」

 

佐藤の嗚咽が部屋に響く。彼女は必死に自分の体を隠そうとする。確かに客観的には東と比べると――

 

顔は塩顔で彫りが浅く、髪も男の子のように短い黒髪の短髪。眼窩の奥に光る瞳だけが特徴的。東の豪奢な金髪、華やかな美貌とは対極にある控えめな造作。

胸も尻も起伏に乏しく、肋骨が浮かぶほど痩せた体は科学的精密さの象徴だった。東のような豊満さは欠片もない。

 

「違うんだよ」

 

東の指が佐藤の顎を持ち上げる。涙で曇った視界の向こうで、平が下半身を屹立させ立っているのが見える。佐藤は恐怖で体を硬直させた。

 

「男っていうのが分かってないなぁ、サトは」

 

ため息と共に東が説明を始める。

 

「あのね、完璧すぎる肢体よりむしろ――」

 

平のペニスが限界を超えて張りつめていた。視界が歪むほどの興奮。佐藤の白い肌が非常識なまでに色っぽく映る。

 

「こういう慎ましさの方が……」

 

佐藤が息を呑む音。東の爪が彼女の鎖骨をなぞる。

 

「ぐっとくるものがあるの」

研究データを引用するような口調が逆に扇情的だった。平の理性の糸がぷつりと切れた瞬間、佐藤の肩が跳ね上がった。

 

 

-----

 

 

平は内心で困惑していた。東の肢体こそが自分の理想そのものだ。柔らかな曲線、完璧なバランス。抱き慣れた感触には安堵さえ覚える。

 

だが今――

 

「サトのせいでこんなんなってるんだけど、どうしてくれる?」

 

低く呻くような声が出た。自分でも驚くほど冷たい響きだった。目の前の佐藤の体はまるで少年のように細く、肋骨が浮き出している。

小さな乳房は申し訳程度に膨らんでいるだけ。凹凸のない体形は確かに「ロリータ」と形容すべき代物だ。

 

なのに――

 

(俺は何を考えている?)

 

ペニスが鋼のように固くなり脈打っている。視線が逸らせない。東の完璧な肉体とは全く異なる禁断の果実。清潔感のある科学者の無防備な裸体が妙に背徳的だった。

 

「処女のサトに聞くこと? きちくー」

 

東の笑い声が響く。佐藤は完全にパニックになっていた。震える指先で必死に乳房を覆い隠しながら、涙声で呟く。

 

「嘘だ……平クンが……こんな私なんか……」

 

鏡を覗き込むように自分の貧弱な体を再認識する。肋骨の浮いた胸。薄い脂肪しかない腰周り。研究者として磨き上げてきた頭脳と引き換えに失われた肉体的魅力。

 

「何かの間違いだよ……」

自嘲気味に呟く佐藤の声は震えていた。

 

 

-----

 

 

「サト、両手で俺のペニスを扱いてくれない?」

 

平の声は奇妙に落ち着いていた。命令ではない。しかし拒否できない圧力があった。

 

「そんなことしたら……」

 

佐藤の声が引き裂かれるように震えた。

 

「胸や……あそこが……丸見えになっちゃう」

 

涙で視界がぼやける。東の冷笑が背後に迫る。

 

「じゃあ、サトはここまでかな? 帰っていいよ」

 

心臓が凍りついた。実験データが失われる。研究者としての誇りが土足で踏みにじられる。

 

「待って……」

 

絶望の中、決断の時が来た。羞恥心と研究の成果を天秤にかける。室内の冷たい空気が肌を刺す中、佐藤は震える指でそっと胸元を隠していた手を下ろした。

 

全裸となった佐藤の体が露わになる。痩せた肩、浅い胸の谷間、折れそうな腰。東のように豊満さは欠片もなく、あどけない少年のような体躯だった。

 

「サト、ホント綺麗」

 

東の言葉に偽りはなかった。純粋な賞賛がそこにあった。無防備で清廉な科学者の裸体が月光に晒されている光景は確かに美しかった。

 

平は息を殺して佐藤の右手を取り、自身の固くなった部分へ導いた。

 

「じゃあ、ここを握って」

佐藤の小さな指が恐る恐る触れると、平の体が微かに震えた。

 

 

-----

 

 

佐藤の指が触れた瞬間だった。冷たい実験器具に慣れた掌が、熱くて堅い異物の存在に戸惑う。

 

(こんなに……固い?)

 

鉄の棒のように熱を持ち、脈打つ物体。生物学の教科書で見た図と現実が結びつかない。

 

「もっと強く握っていいよ」

 

平の低い声が耳元に響く。戸惑いながらも佐藤は言われた通りにする。握れば握るほどその生命の躍動を感じた。

 

一方で東は椅子に凭れたまま足を開いていた。長い指が秘所を撫でるように蠢く。ピンク色の花弁が潤いを増していく過程が目に見えるようだった。

 

「サト……ほらこっちも見て」

 

佐藤が視線を上げると、親友の頬が桜色に染まっていた。細い指先が陰核を円を描くように刺激している。淫靡な湿った音が微かに室内に響く。

 

「あ……っ」

 

東の唇から零れる吐息。佐藤は自分の手が親友の彼氏の雄を弄んでいる現実と、眼前で繰り広げられる親友の自慰行為の矛盾に思考が混乱した。理性的な判断能力が崩壊していく。

 

(これが……快楽?)

 

理性では否定しようとしても肉体は正直だった。平の股間を握る自分の掌から伝わる温度と鼓動。まるで生き物と対話しているような奇妙な一体感。

 

「サト……手が止まってるよ」

 

平が喘ぎながら言った。彼の額には汗が滲み、眉間に深い皺が刻まれている。歯を食いしばった表情は苦痛と陶酔の狭間で揺れていた。

 

「ご……ごめんなさい」

 

慌てて上下運動を再開する佐藤。ぎこちない動作に伴い平の呼吸が荒くなる。もどかしさと同時に何かが頂点へと押し上げられていく感覚。

 

(俺が…サトに……)

 

かつてクラスメイトだった少女。共に過ごした放課後の記憶。高校時代で同じ教室で学んだ日々。今その彼女の小さな手が自分の最も脆弱な部分を握っている現実。

 

「気持ちいいかい……?」

 

佐藤が突然訊ねた。研究対象を 観測するような冷静な口調に微かな甘さが滲む。

 

「ああ……すごく……いい」

 

嘘偽りない返答。たどたどしい手の動きだからこそ予測不可能な刺激が生まれる。計算式では割り切れない肉体の反応。

 

(俺は……彼女を利用してる?)

 

倫理観と本能の衝突が脳内で火花を散らした。その一方で東の嬌声が徐々に高まっていく。

 

「もう少し速くしてみて」

指示を与えながらも平自身の限界が近かった。佐藤の掌に包まれた剛直は灼熱の杭となって欲望の奔流を待ち構えている。

 

 

-----

 

 

冷たい蛍光灯の下で、佐藤は現実離れした状況にいた。かつて親友の恋愛相談に耳を傾けていた自分を思う。相手が東の彼氏だと知っていてもなお。

 

(私……何をしているんだろう)

 

疑問符が頭の中で渦巻く。しかし指先は意志とは裏腹に動いていた。固く張り詰めた肉塊をリズミカルに扱く感触。皮膚の下で脈打つ生命の躍動。

 

「ふぅ……っ!」

 

平の喉奥から獣のような唸り声が漏れた。全身の筋肉が緊張で硬直している。佐藤はその反応を見て首を傾げた。まだ足りないのか?

 

「もっと……速く……」

 

掠れた声での要求。佐藤は忠実に速度を上げる。無知ゆえの過ちだとは気づかずに。東はその様子を愉しそうに眺めていた。頬杖をつきながら微笑む。

 

(サトったら……可愛いわねぇ)

 

既に秘所を濡らしていた指をさらに深く潜り込ませる。淫らな蜜音が佐藤の手の動きと同調する。平の表情が歪む瞬間を見逃さなかった。

 

「サトー?そろそろかも〜♪」

 

警告ではなく期待に満ちた声色。その時だった。佐藤の好奇心が不意に働いた。

 

(射精ってどんな感じだろう……?)

 

科学的好奇心が先走った。何も知らないまま亀頭の先端に顔を近づける。漂う男性特有の匂い。静寂を破ったのは突如の叫びだった。

 

「あ……っ!」

 

平の腰が跳ね上がる。次の瞬間—

 

ドピュッ!

 

勢いよく飛び出した白濁液が佐藤の顔面を直撃した。睫毛に引っかかる粘着質な液体。鼻腔を刺す独特の臭い。思わず目を閉じる佐藤の瞼にも温かい滴が何度も伝う。

 

「わぁ!サトすごーい!平が顔射なんて珍しいわよ」

 

東の黄色い声が響く。当の本人は呆然としていた。未知の感触に戸惑う佐藤。髪の毛まで垂れる白濁液を拭うことさえ忘れていた。

 

「ごめん……制御できなくて……」

 

平が俯き加減に謝る。解放感と共に襲ってきた罪悪感。そんな彼に佐藤は静かに問いかける。

 

「それはいいけど…これ……どうやって洗えばいいの?」

研究者のように淡々とした口調だった。

 

 

-----

 

 

 

「……これ……」

 

佐藤は困惑しながら顔に付着した粘着質な液体を両手で拭った。半透明の糸を引くそれを眺めながら東に尋ねる。

 

「これどうすればいいの?」

 

東は妖艶な笑みを浮かべた。舌で唇を舐めながら答える。

 

「私ならさっきみたいに迷わず飲んじゃうかな〜だって平のだもん♪」

 

真実だが軽い挑発を含んだ示唆だった。佐藤は眉をひそめたが、純粋な好奇心が勝った。

 

「毎回飲むものなの……?」

 

無知ゆえの素朴な疑問。東が肯定する前に佐藤は実行に移していた。指先に溜まった白濁液を口元に運び、躊躇なく飲み込む。

 

「う……ん」

 

喉を通る違和感。生臭い風味。思わず顔をしかめる。

 

「やっぱりあんまり美味しいもんじゃないね」

 

苦笑しながら首を振る佐藤。その無垢な行動があまりにも危うく見えた。平は再び下半身に血が集まるのを感じていた。萎えかけていたペニスが急速に硬度を取り戻す。

 

「え……また大きくなってる?」

 

驚きと疑問が入り混じった佐藤の声。東の口元が鋭く歪んだ。

 

「あらあら〜平ったら私の時より夢中じゃない?」

 

責めるような視線を平に向ける東。その目は笑っていない。冷たい圧力が室内に充満した。

 

「いや違うって!これは単なる生理現象で……!」

 

必死に言い訳する平。しかし股間の主張は明らかだった。東は立ち上がり、裸のままゆっくりと歩み寄る。

 

「わかってるよね?私というものがありながら……」

 

指先が平の顎を持ち上げる。至近距離で睨みつけながら

 

「次は私を可愛がってもらう番よ」

 

東の声は幼子の強がりのように聞こえ、平の喉仏が上下に動いた。

 

「平ぁ……」

 

東の声は嗚咽に響きを伴い、平の耳に残る。

 

三人の関係性が、予想外の方向へと流れていく予感がした。

 

 

-----

 

 

冷たい蛍光灯の照明が、佐藤の顔に撒き散らされた白濁液を浮かび上がらせていた。東はその光景を瞳孔の奥まで焼き付けるように見つめながら、心の奥底で別の映像を再生していた—かつて鏡に映る自分の姿を見つめていたあの日々を。

 

(私も……あんな風に汚れることから始まった)

 

初体験の相手は顔すら思い出せない。ただベッドサイドランプが投げかける影だけが脳裏に残っている。あの日の自分と今の佐藤が重なって見えた。違うのは一点—目の前にいる男が「平」かどうかだ。

 

「……本当に平だったら」

 

声に出せない呟きが胸の内で渦巻く。もし平が自分の顔に精を浴びせてくれたなら—想像しただけで背筋に甘い痺れが走った。それは暴力的なまでの被支配欲だった。

あの男らしい骨格の腕で押さえつけられ、抗えぬまま汚されるイメージ。そんな倒錯した願望が、今の平に対する愛情と共存していた。

 

(馬鹿みたい)

 

自嘲の笑みが唇を歪める。平は決して私に対してそんなことはしない。だからこそ彼女は狂おしいほど平を選んだのだ。「普通の恋愛」をしてくれる男を。清潔で優しくて—どこまでも理想的なパートナーを。

 

しかしその理想が歪む時、嫉妬という醜い怪物が鎌首をもたげる。

 

(平ったら私の時より夢中じゃない?)

 

挑発的な言葉は全て虚栄心の仮面だった。本当は震えるほど怖かったのだ。平の視線が佐藤の無垢な横顔に釘付けになっている瞬間に。佐藤の方が、過去に囚われ続けている自分よりも魅力的ではないか—そんな恐怖。

 

(私が本当に欲しいのは……)

 

視線を床に落とす。平とのセックスは何度繰り返しても最高の快楽と愛情を与えてくれた。他の男たちでは毛筋ほど感じなかった快楽を平との交わりは感じさせてくれた。しかし、心は完全には満たされなかった。わずかに残った過去の後悔だった。

 

(初めての私をあげたかった…)

 

口に出せない願望が心臓を締めつける。清らかな身体で迎え入れたかった。平の硬くなったものを恥じらいながら受け止めたかった。そして「痛い」と泣きながらも「嬉しい」と囁くような初体験を—。

 

(どうして過去に戻れないのよ)

 

拳を握りしめる。爪が掌に食い込む痛みすら無感覚だった。時間は不可逆だった。自分の中の処女性は、とっくに消え失せてしまった。残るのは経験者としての余裕と—それ故の深い孤独だけ。

 

「平ぁ……」

 

無意識に呟いた名前が震えていた。平の目には困惑と興奮が交錯していた。その純粋な欲望がまた新たな葛藤を生む。この男のために自分を全てさらけ出したのに、どうしても「最初」だけは与えられないという残酷な真実。

 

 

-----

 

 

突然、東の華奢な肩が小刻みに震え始めた。佐藤の純粋な表情が鏡のように自分の過去を映し出し、抑え込んでいた感情の堤防が崩れた。

 

「……っ!」

 

嗚咽が漏れた瞬間、涙腺は決壊した。宝石のような涙が長いソバージュヘアを伝い、床にぽたぽたと落ちる。

 

「平ぁ……ゴメンなさい……」

 

しゃがみ込む東を平は慌てて支えた。熱い体温と震えが直に伝わってくる。

 

「どうした?東……」

優しい声に余計涙が溢れる。自分の汚れた過去を知られたくない—その恐れが全身を貫いていた。

 

「少しずつでいいから……話して?」

 

平の大きな手が頭を撫でる。その温もりに封印していた言葉が堰を切った。

 

「あのね……サトを見てたら……ずっと、ずっと私が思ってきたことがぶり返してきて……」

 

「え……?」

 

佐藤がぎくりと硬直した。東は泣き笑いで続ける。

 

「もうどうしようもないのにね……私は平に自分の全部を上げたいの」

 

絞り出すような本音が室内に響く。

 

「でも過去の私は……上げられない」

 

俯いた睫毛に涙が光る。

 

「私の処女も……ファーストキスも……何も……」

 

平の息が詰まった。東と初めて結ばれたときも同じことで不安定になった東。東が初めてでないことなど自分は気にもしていないし、そのことは東に告げている。

 

しかし、東の中ではずっと消化できずドロドロと溜まり続け、佐藤をきっかけに表面化したのだと理解する。

 

「でもサトは……私にないもの全部持ってる」

 

震える指が佐藤を指す。

 

「ファーストキスは私が意地悪で奪っちゃったけど……」

 

佐藤の頬がかすかに赤らんだ。

 

「サトの心は…体は…ずっと清らかなまま」

 

羨望と罪悪感が入り混じった声色。

 

「私……気づいてた。サトに昔の私を重ねてた」

 

悲痛な懺悔が続く。

 

「そんなのサトに失礼だよね?最低だよね?でも止められないの!」

 

突然叫ぶ東に平は息を呑んだ。

 

「平とサトって……私がいない方が仲良いでしょ?お互い似てるしね」

 

自嘲めいた微笑みが泣き顔で歪んだ。

 

「こんな汚い私、いなくなった方が……いいのかなぁ?」

 

絶望的な呟きの続きは遮られた。平の両腕が強く東を抱き寄せ、唇を塞いだ。

 

「そんなこと言わないでくれ」

窒息するようなキス。温もりと酸素が混ざり合うなかで、平の心臓の鼓動だけが荒く響いていた

 

 

-----

 

 

 

佐藤は泣き崩れる東に無言で近づくと、東の右手の人差し指と中指をしゃぶりはじめる。

佐藤の動きは静かすぎるほどだった。涙に濡れた東の指を小さな唇がしっかりと捉え、水音だけが無機質に響く。

東は平の腕の中で身を捩るが、佐藤の手がしっかりと掴んで離さない。

 

「ちょ……何して……サト……」

 

言葉が出ない東。佐藤の目は燃えていた。

佐藤はある程度、東の指が唾液で濡れたことを確認すると、自分の膣に迷いなく、東の指を突き入れる。破れていく佐藤の処女膜。

 

「ふぅ……ん…っ!」

 

鋭い痛みに佐藤の眉間が寄る。東の細い指が柔肌をかき分けた証に、薄紅色の雫が足の間から滴り落ちた。指先を伝う温度を感じながら東は絶叫した。

 

「だめぇ!サトの大切な初めてが……こんな形で……!」

 

平が目を見開いて固まる中、佐藤は唇を噛んで続ける。血の匂いと鉄の味が口中に広がった。

 

「ねえアズ?これで今のアズとおんなじになれた?」

 

歪んだ笑みが顔を歪ませる。佐藤自身により強引に指先が更に奥へ導かれる東。痛みの強さに佐藤の息が荒くなった。

 

「違う……違うんだよアズ!」

 

東の指が膣内で踊るように蠢くたび、佐藤の腰が跳ねる。破瓜の証が太腿を伝う。それでも彼女は止まらない。

 

「身体なんかただのモノじゃん!こんな膜一枚でアズの価値が変わるわけない!」

 

震える声が空気を切り裂いた。

 

「アズの昔のことなんて、全部知ってるわけじゃない……けど……」

 

佐藤が東の指を膣からゆっくり引き抜く。ぬめる朱色に彩られた指先が白い指輪のように見えた。

 

「アズが自分で自分を汚いって決めつけてるのが許せない!」

 

佐藤の頬に新たな涙が伝う。膝がガクガク震え、鮮血の滴がタイル床に円を描いた。

 

「アズの指……すごく熱い……これがアズだよ」

 

崩れそうになる佐藤の腰を平が咄嗟に支えた。呆然とする東の視界が涙で滲む。

 

「ごめん……サト……全部、私が間違ってた……」

 

初めて感じる友人の体内の熱と痛み。それを自分の指が覚えさせたという現実が東を打ち砕いた。

 

「大切な……大切な友達なのに……私…」

 

血塗られた自分の指を見つめ、東は嗚咽を漏らす。平がそっと彼女の肩を抱いた。佐藤の足元に広がる朱殷が、白い床で鮮烈なコントラストを描いていた。

 

 

-----

 

 

佐藤の破瓜の血はまだ止まらない。床に小さな血溜まりを作っていく様を東は震える瞳で見つめた。自分の指が引き起こした結果だ。

 

「サト……血が……」

 

「気にしないで。生理より全然少ないよ」

 

平が持ってきたティッシュ箱を受け取り、佐藤が淡々と拭う。痛みに顔を歪めながらも声一つ上げない。

 

「ねえアズ」

 

佐藤が血まみれの指を包むように握る。

 

「私たち、今こうしてる」

 

東の目に涙が盛り上がる。どれだけ後悔しても親友の処女喪失を介助したという事実は変えられない。

 

「アズは自分の昔を『汚い』って言ってるけど……」

 

佐藤が東の掌を見つめる。

 

「この手は綺麗じゃん」

 

傷ひとつない滑らかな皮膚。かつて男たちを拒みきれなかった柔肌。

 

「それにね」

 

佐藤が東に寄りかかる。東の巨乳が佐藤の控えめな胸を受け止める。

 

「私が処女だったかどうかなんて関係ない」

 

平が二人の傍らに立ち尽くす。三人の呼吸が一つの空間に溶け合っていた。

 

「私は今、処女膜がなくなったかもしれない、それって肉体だけのものだよ?私が自分を処女だと思ってたら私はまだ処女だと思う」

 

佐藤の告白に東がはっと顔を上げる。血の気の引いた唇が震える。

 

「だから私の中では『まだ処女』なんだ」

 

東の胸に頭を預けた佐藤が顔を上げる。

 

「アズの中にもきっと『まだ処女』があるでしょ」

 

東の指先が微かに光る。佐藤の血と涙が乾きかけていた。

 

「それを信じて」

 

佐藤の瞼が閉じられる。東の鼓動が佐藤の耳朶を打つ。窓から差し込む夕陽が、三人の影を壁に焼きつけた。

 

 

-----

 

 

平が血で汚れた床を拭き終えるまで東は一言も発さなかった。親友の勇気が全身に浸透していくのを感じていた。

 

東はもう二度と後悔しない、後ろを振り返らないと決めた、親友にここまでさせてしまった自分にそんな資格はない。

 

(もう逃げるのは終わりだ)

 

頭を軽く振ると、長く伸びたソバージュヘアがさらりと舞った。

 

「さっすがサト、私の親友!」

 

久しぶりにこぼれた笑顔は偽りなき光を放っていた。佐藤の眉が安堵で緩む。二人の間に言葉以上の絆が再び結ばれていた。

 

「ねえ平」

 

東が顔を上げる。琥珀色の瞳が鋭く輝いていた。

 

「サトとセックスしようよ、今からホントのセックスを」

 

突然の宣言に佐藤が跳ね上がった。

 

「ちょ……!」

 

東の肘を掴んで制するが、東は悪戯っぽく舌を出す。

 

「だってサトも興奮してるでしょ?さっきからずっと股間モジモジしてたし」

 

平が苦笑しながら佐藤を見る。確かに破瓜の直後であるにもかかわらず、股部分がうっすら湿っていた。

 

「違う……これは…その…急な生理で……」

 

「嘘つき〜サトのカラダ正直すぎ♪」

 

東が佐藤の細いウエストに手を回す。佐藤の耳元で囁く。

 

「もうサトのこと好きすぎて変になっちゃうんだけど……平と三人ならもっと凄いことできそうだと思わない?」

 

佐藤の頬が真っ赤に染まる。視線が泳ぐが東から逃げられない。

 

「私は……アズを前に向かせるためにしただけで……平クンとセックスとか……考えたこと…ないし……」

 

しどろもどろになる佐藤を見て、平と東は顔を見合わせて噴き出した。

 

「バレバレなウソはやめてよね♪」

 

東が佐藤を抱きしめる。部屋の蛍光灯が二人のシルエットを浮かび上がらせた。

 

「じゃあ三人でする?それとも私と二人?」

 

「どっちも恥ずかしい……」

 

「サトらしいや」

 

東の笑顔に佐藤の緊張が溶けていく。平がそっと近づいた。

 

「三人なら俺も安心だ」

 

その低い声に佐藤が小さく頷いた。

 

 

-----

 

 

「まずはサトの準備から始めよう」

 

東の口調は冷静そのものだった。

 

「待ってアズ……3人だし……」

 

「それが興奮するんじゃない?」

 

東の指が鎖骨をなぞる。佐藤の身体がピクリと跳ねた。

 

「女の身体は女が一番わかるって言ったでしょ?」

東の唇が佐藤の左耳を含む。舌先が耳の溝を這い回る。

「んっ……ふぅ……」

 

佐藤の息が浅くなる。東の右手が乳房を覆い、優しく揉みほぐしていく。

「サトの胸……小さいけど綺麗だよね」

 

「やめて……アズに見られてるだけで恥ずかしいのに……」

 

「恥ずかしいって言うわりにはここは正直だよ?」

東の爪先が佐藤の乳首を摘まむ。硬くなった蕾が指の腹で潰される。

 

「ひっ……!」

 

佐藤の腰が弓なりに反った。平がそっと東の反対側に跪き、佐藤の唇を塞ぐ。

 

「んっ……むぅ……」

 

平の舌が佐藤の歯列をなぞる。佐藤の腕が無意識に平の背中に回る。

「サト、俺の顔だけ見てて」

 

至近距離で見る平の瞳に吸い込まれそうになる佐藤。清潔感のある茶髪に触れたくなる衝動を抑えきれず、指が平の髪に絡む。

 

(綺麗な顔……)

 

東の嫉妬混じりの笑みが佐藤の脇腹に降りていく。

「サトったら平の髪まで触っちゃって♪」

 

佐藤の体温が急上昇する。親友の彼氏であるはずの男の髪に触れている罪悪感が快感を倍増させる。

 

「違う……これは……」

 

「わかってるよ~」

東の舌が佐藤の臍を抉る。

 

「サトだから許す!平っていい男っしょ?」

 

佐藤の腹部が波打つ。東の唾液が冷たく腹筋を濡らす。

「で、次はここ……」

 

東の指が白い大腿を優しく掴み、開かせる。

 

「やぁ……見ないで……」

 

「綺麗な太腿じゃない」

 

東の舌が佐藤の内股を這い始める。佐藤の脚が震える。

「んんっ……そこはダメぇ……」

 

「まだこれからだよ?」

 

東の指が佐藤の股間に触れる。薄い布地越しに熱い湿り気を感じる。

「こんなに濡れてる……やっぱりサトも楽しみにしてたんだね」

 

佐藤の頬が焼けるように熱い。

「違うってば……アズぅ……」

 

「嘘つき♪」

東の指がショーツの中に滑り込む。ぬるりとした感触に佐藤が身を捩る。

 

「ほら平も見てるよ?」

 

平が佐藤の唇から離れ、上半身裸の佐藤を見下ろす。東の舌が佐藤の膝裏を舐めている光景に息を呑む。

 

「サト……きれいだ」

 

佐藤の瞳が潤む。親友の彼氏に裸を見られている恥辱と喜びが入り混じる。

「お願い……見ないで……」

 

東の指が佐藤の秘所を弄ぶ。蜜穴を探るように蠢く。

「見ないわけないでしょ?三人でするって約束したじゃない」

 

佐藤の足指がぴんと伸びる。東の爪先が膣口の襞を掻き分ける。

「ひゃあんっ……!そこ……弱い……」

 

「知ってたよ♪」

東が微笑みながら指を進めると、佐藤の背中が弓のように反る。

「だってサトのカラダ……大体分かっちゃったもん」

 

平が佐藤の肩を押さえつけ、汗ばんだ額に口づけを落とす。

「サト……俺と東で気持ちよくしてあげるから」

 

東の舌が佐藤の鼠径部をなぞり上げる。佐藤の喉が喘ぐ。

「やめて……もう無理ぃ……」

 

「まだまだこれからだよ?」

 

東の指が深く沈み込む。佐藤の呼吸が止まる。

「ほら……奥の方……ヒクヒクしてるよ?」

 

「やだぁ……そこ……だめぇ……!」

 

佐藤の叫びと同時に東の指が引き抜かれる。透明な糸が滴り落ちる。

「はぁ……はぁ……アズぅ……」

 

涙目の佐藤が懇願するように東を見上げる。

「こんな……恥ずかしいのに……なんでこんなに気持ちいいのぉ……?」

 

東が優しく佐藤の髪を撫でる。

「それがサトなんだよ」

 

平が佐藤の唇を再び塞ぎながら囁く。

「サトは素直になればなるほど可愛くなる」

 

佐藤の目に新たな涙が溢れる。それは羞恥ではなく幸福の証だった。

「アズ……平クン……ありがとう……」

 

三人の吐息が混ざり合う室内で、佐藤の新しい扉が開こうとしていた。

 

 

-----

 

 

東の宣言が佐藤の鼓膜を貫いた。

「じゃあ、あらためて。サトの初めて、やりなおそ」

 

佐藤の指が東の手首を握りしめる。

「待ってアズ……それは……」

 

「大丈夫だよサト」

東が佐藤の頬を両手で包み込む。

「サトの『まだ処女』を平が奪ってあげて」

 

「いやいやいや!」

佐藤の声が裏返る。

「私なんかがダメでしょ……アズも一時の感情でそんなこと言ってるとまた後悔するよ……」

 

平と東の視線が交錯する。東が微かに頷いた。平が佐藤の大腿を左右に押し広げる。

 

「やめて平クン!本当に私なんて……」

佐藤の抵抗が空中分解する。東が佐藤の首筋に噛みつく。

「痛っ!」

 

「サト……もう我慢できないって顔してるよ?」

平の昂りが佐藤の入口に触れる。佐藤の全身が硬直する。

「助けてアズ……これ以上は……」

 

「助けるよ?」

東の指が佐藤の乳首を捻る。佐藤の声にならない悲鳴。

「ずっと一緒にいたサトの初めて……もう一度私たちに頂戴?」

 

「違うの……私の初めてはさっきアズに上げたからもう……」

平の先端が侵入を始める。佐藤の背中が弓なりになる。

「やめてぇ……こんなのダメェ……!」

 

「ダメじゃないんだよサト」

東の舌が佐藤の耳孔を犯す。

「友達として…親友として…サトにありがとうを伝えたいんだよ」

 

平が一気に腰を沈める。

「ああぁぁっ!裂けるッ!」

 

佐藤の体内で何かが砕け散る。東の指が佐藤の結合部に触れ、二度めの破瓜の血を拭い舐めとる。

「見てサト……サトのホントの"初めて"……」

 

「いやぁぁ!汚いッ!」

佐藤の目尻から涙が飛び散る。平の動きが緩やかになる。

「痛くない?サト……」

 

「ううん……もう少し…強くしていいはず」

東が佐藤の代わりに答え、佐藤の瞼にキスを落とす。

「でしょ……サトの本音……」

 

佐藤の拳が東の背中を叩く。

「酷いよアズ……こんな騙し討ちみたいなこと……」

 

「でも気持ちいいんでしょ?」

東が佐藤の乳房を揉みしだく。佐藤の口から嬌声が漏れる。

「正直に言ってごらん?サトはどうされたいの?」

 

「もう……知らない……」

佐藤の爪が平の肩に食い込む。

「こんな変態みたいなことしてるのに……なんでこんなに幸せなのよぉ……」

 

「そうだよねサト」

平が佐藤の髪を梳く。

「俺と東でサトを幸せにするって決めたんだから」

 

「ああっ!平クンの……中が……すごい……」

後ろから東に抱かれている佐藤の膣壁が収縮する。平の動きが加速する。

「東に抱かれながらのサト……最高に綺麗だ……」

 

「平クンっ……私の中……そんなに……」

佐藤の頬を涙が伝う。東がその涙を舐め取る。

「泣いてる暇はないよ?まだ序盤なんだから」

 

「もう無理ぃ!壊れちゃうぅ!」

佐藤の絶叫が車両に響く。東が佐藤のクリトリスを擦り上げる。

「ここも一緒にいじめてあげるね」

 

「ひゃあんっ!」

佐藤の爪先が跳ね上がる。平の抽送がさらに深く鋭くなる。

「東……そろそろ限界かも……」

 

「じゃあ特別なプレゼントだよ♪」

東が体勢を変えると佐藤の口に、自分の膣口を押し当てる。

「サト……平の精液と同時に私のも飲ませてあげる?」

 

「んむっ!んんんっ!」

佐藤の目が白黒する。三人の呼吸が完全に同期する。

 

「出すよ……サトの中に……」

「私もイく……サトのお口の中で……」

 

「んんんっ!!」

佐藤の身体が海老反りになる。二つの液体が同時に放出される。東の愛液が佐藤の舌を覆い尽くし、平の精液が子宮口に打ち付けられる。

 

「ごめんね……サト……」

東が佐藤の頭を撫でる。

「でも……これで三人……同じになれたよね?」

 

佐藤の喉がゆっくりと上下する。東の愛液を飲み干す音。

 

「アズ……平クン……」

涙声が二人を繋ぐ。

 

「……最高の初めて……ありがとね」

静寂が三人を包み込む。部屋の窓ガラスに映る三人の影はもはや別々の存在ではなかった。

 

 

-----

 

 

事後――三人は床に座り込んでいた。佐藤は赤く腫れた瞼を擦りながらジト目で二人を睨みつける。

 

「あんたらねぇ……」

佐藤の声がかすれている。

「初めてがこの体験って……性癖歪みまくりなんだけど!」

 

「でも気持ちよかったでしょ?」

東が髪をかき上げる。佐藤の拳が東の肩を叩く。

 

「うるさい!」

佐藤の耳まで真っ赤になる。

「私にこんなの覚えさせた責任とってもらうからね!」

 

平が苦笑しながら佐藤に水筒を渡す。

「サト……ごめんな」

 

東が突然立ち上がり、胸を張る。

「勿論!そのつもりだよサト」

両手を大きく広げて宣言する。

「ようこそ、こちら側の世界へ」

 

佐藤が呆然とする中、東が悪戯っぽくウィンクする。

「これからの人生、最高に狂ってて、楽しいことしかないかもよ?」

 

「アズ……あんたって人は……」

佐藤が頭を抱える。平が静かに佐藤の横に座り直す。

 

「俺からも、よろしく」

平が佐藤に手を差し伸べる。

「いままで……そしてこれからもずっと」

 

佐藤の目に小さな涙が浮かぶ。

「馬鹿じゃないの……二人とも……」

 

震える手で平の掌を掴む佐藤。東が二人の手を包み込む。

 

「それでこそサトだよ」

東の声に珍しい優しさが滲む。

「明日からも仲良くしようね?」

 

佐藤がゆっくりと頷く。窓から差し込む夕日が三人の輪郭を溶かしていく。歪んでしまった性癖と共に、新しい日常が始まろうとしていた。

 

 

 

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次の日の朝。

 

「おはようサト!」

大学の教室で東が飛びかかるように抱きつく。昨日までとは違う距離感にクラスメイトが驚く。

 

「アズ!人前でそんなことしないでよ!」

佐藤が東を押し返すが、その表情は柔らかい。

 

「だって約束したじゃん?責任取るってさ」

東が悪戯っぽく笑う。佐藤の頬が火照る。

 

 

 

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東と平は佐藤の3人は大学に授業後に待ち合わせた図書館で、窓際の席で東が大学の宿題を進めながらつぶやく。

 

「信じられないよね……」

 

向かい合って座る平がノートから顔を上げる。

「何が?」

 

「私の最初の考えだとさ」

 

東がペンをくるくると回す。

「平を自分のモノにして、自分が平のモノになる計画だったのに……結局サトまで巻き込んでさ」

 

佐藤が鞄を整理しながら鼻で笑う。

「それで?今更後悔してるってわけ?」

 

東が満面の笑みを浮かべる。

「ううん。全然違うよ」

 

目を輝かせて続ける。

「今までは平が死んだら私も死ぬ!って感じだったけど……」

 

東の指が机の上で三角形を描く。

「これからは『平もサトも死んだら許さない』になっちゃった」

 

平が突然笑い出す。

「それなら俺も同じだよ」

 

東の三角形に指を重ねる。

「もし二人がいなくなったら……怖くてたまらないな」

 

佐藤が額に手を当てる。

「馬鹿二人……」

 

長いため息。

「これでよかったのかしら?私だけ巻き込まれたって感じじゃない?」

 

東が椅子を転がして佐藤に寄りかかる。

「そう思う?本当に?」

 

佐藤が窓の外を見る。

「……認めたくないけど」

 

髪を耳にかける仕草。

「東とも……平クンとも離れるなんて想像できない」

 

平の表情が和らぐ。

「そうなんだ」

 

東に向かって微笑む。

「これって最高の展開じゃないか?」

 

東が突然立ち上がり佐藤に抱きつく。

「でしょでしょ!私たち三人で最強!」

 

「ちょっと!人が見てるって!」

佐藤が抵抗しながらも耳を赤くする。

 

「見えるものを見せるって言うじゃん」

 

平が二人を見て静かに呟く。

「サトも東も……大切なんだ」

 

沈黙の中、佐藤がぽつりと言う。

 

「結局」

二人を見つめる眼差し。

「私が一番弱かったみたいね」

 

東が佐藤の腕を引っ張る。

「帰ろ!今日は私の家でお泊まり会!」

 

平にウインクする。

「サトの初恋記念日に乾杯しなきゃ!」

 

佐藤の頬が再び紅潮する。

「ばっ……!変な記念日つけないでよ!」

 

口では否定しながらも足取りは軽い。

三人並んで歩く帰り道。夕焼けが彼らの影を長く伸ばす。当初の歪んだ計画からは想像もつかない安定した関係が芽生えていた。

それは傷を舐め合う関係ではなく、互いを守り支え合う新たな絆だった。

 

 

-----

 

 

平の部屋の玄関ドアが閉まる。

「おじゃまします」

 

靴を脱ぐ佐藤の言葉に、東が眉を上げる。

「違うでしょ?」

平も苦笑い。

「サトらしいな」

 

佐藤が困ったように口を尖らせる。

「いや……だって……」

 

東が佐藤の腕を引き寄せる。

「こういう時は『ただいま』って言うんだよ」

 

「……ただいま」

佐藤の呟きに平の肩の力が抜ける。

 

リビングのテーブルで缶コーヒーを開けながら東が宣言する。

「さて!お試し期間終了ということで」

指を鳴らす。

「色々本格的にルール決めていこーよ」

 

佐藤が訝しげにカップを見つめる。

「本格的に……何を?家事の分担とか?」

 

平がコーヒーカップを取り落とす。

「ぶっ!」

慌てて拾い上げる。

「サトはどこまで純情なんだよ……」

 

東が突然身を乗り出す。

「エッチする順番と相手決めだよ!」

佐藤の目が丸くなる。

 

「はぁ?」

缶コーヒーを握り潰しそうになる佐藤。

「ルールって聞いて、そんな話にならないでしょ普通!」

 

「普通じゃないから!」

東が髪をかきあげる。

「私たち三人で一つの家族みたいなもんでしょ?」

 

平が頭を掻きながら溜息をつく。

「まあ……そういう流れになると思ったけどな」

 

佐藤が立ち上がろうとする。

「待って待って!落ち着いて話し合おう!」

必死に止めに入る東。

 

「まず冷静に!昨日のこと忘れたの?」

佐藤の声が上ずる。

 

「だからこそよ!」

東が佐藤の手を取る。

「私たち三人の関係は既に既成事実があるからこそ」

 

真剣な眼差し。

「ちゃんとルール決めておいたほうが安心でしょ?」

 

平がスマホのスケジューラーを開く。

「例えば週末は必ず三人で愛し合って過ごすとか……」

画面を見せる。

「こんな感じで予定を立てておくのは?」

 

佐藤が呆然と平の手元を見つめる。

「信じられない……」

小さく首を振る。

「あなた達二人とも……本気なの?」

 

東が突然佐藤を強く抱きしめる。

「本気だよ」

耳元で囁く。

「サトのこと大好きだし」

 

平が静かに立ち上がる。

「俺も同じ気持ちだよ」

佐藤の肩に手を置く。

「昨日までの自分たちに戻れないくらい」

 

佐藤の体が小刻みに震える。

「……もう戻れないのね」

諦めたような呟き。

「分かったわ……でも」

 

「何?」

東と平が同時に尋ねる。

 

佐藤が深呼吸する。

「まずは私が……理解する時間をちょうだい」

真っ赤な顔で続ける。

「エッチの順番とか…相手とか…いきなり言われても……」

 

「もちろん!」

東が嬉しそうに跳ね上がる。

「まず説明から始めようか♪」

 

平がキッチンからチョコレートケーキを持ってくる。

「デザート食べながら話し合おうぜ」

三人の前に皿を並べる。

 

「それにしても…こんなことになるなんてね…」

佐藤がケーキをフォークで切り分けながら眉を寄せる。

 

 

 

------

 

 

 

「つまり……平クンは特殊体質ってこと?」

 

東が小声で答える。

「そう。絶倫体質っていうか……一日数回は『放出』しないと精神的に不安定になるの」

声を潜める。

「昔ね、平の男友達にこのことがバレて笑い物にされたことがあって」

 

平が窓の外を見つめる。

「もう過去の話だ」

拳をぎゅっと握りしめる。

 

「だから皆には内緒ね」

東が佐藤の指を掴む。

「サトだけ特別に教えてるんだから」

 

佐藤がゆっくりと頷く。

「わかった……でもそれとエッチの順番がどう関係するの?」

 

平がゆっくりと口を開く

「東、サトの負担にならないようにしたいんだ…」

 

東が楽しそうに目を輝かせる。

「私は毎日、何回も平に抱かれてるけど、楽しいよー」

 

平の腕に頭を乗せる。

「正直体がきついときもあるけどさ」

 

熱っぽい視線。

「……平に求められるのは単純嬉しいし」

 

平がつらそうに、そして、照れ臭そうに俯く。

「東のおかげで助かってる……」

 

東があっけらかんと笑う。

「だから平が一人暮らししてるこの部屋は私にとって天国みたいなもの」

 

佐藤がフォークを止める。

「つまり、私も一日に何回も抱かれる可能性があるってこと?そのルールを決めたいと…」

 

「そうだよ」

東があっさり認める。

佐藤の頭の中で様々な情報が繋がっていく。

 

「でも……」

 

東が真剣な表情になる。

「サトにはサトの人生がある」

 

佐藤の手を両手で包む。

「私が勝手に決めることじゃない」

 

真摯な眼差し。

「だから自分で決めて?」

 

佐藤が静かにコーヒーを飲む。

「……少し考える時間をもらってもいいかな」

 

「もちろん!」

東がにっこり笑う。

「サトのペースでいいんだから」

平も安堵したように肩の力を抜く。

 

窓の外では雨が降り始めていた。佐藤はその雨粒を眺めながら考える。

(今まで経験したことのないことばかり)

(でも……)

指輪のように光る自分の左手を見る。

(拒絶する理由もない)

 

佐藤の小さな変化に気づいた東が優しく微笑む。

「いつでも私たちのところへ来ていいんだから」

 

平も安心したように頷く。

三人の間に新しい種類の空気が流れていた。

 

 

-----

 

 

東が佐藤の肩を軽く叩く。

「サトが考えている間」

笑みを浮かべる。

「自由に私たちを見ていていいからね」

 

平が顔を赤らめる。

「俺も……見たいなら見てくれ」

指を擦り合わせる。

「東が言った通り……俺たちは全部さらけ出すつもりだから」

 

佐藤はソファの背もたれに体重を預け、天井を見つめる。

(二人の関係性)

(私が知らなかった平クンの一面)

(そして私が……)

 

東が佐藤の膝に手を置く。

「焦らなくていいんだよ」

声を柔らかくする。

「急かしたりしないから」

 

佐藤が深呼吸する。

「しばらく……様子を見させてもらえる?」

目を閉じる。

「アズと平クンの普段の生活も」

少し言葉を選ぶ。

「……セックスも含めて全部見てみたい」

 

平が驚いたように東を見る。東は小さく頷き、佐藤の手を握る。

「歓迎するよ」

優しい声で続ける。

「何でも質問して」

平も佐藤の反対の手を取る。

「俺たちの全部を見て判断してくれ」

 

三人で夕食の準備をしながら佐藤がつぶやく。

「不思議だよね」

野菜を切りながら目を細める。

「昨日までの私だったら考えられない選択」

 

東がフライパンを振りながら笑う。

「でも選んだのはサト自身だよ?」

平が冷蔵庫から食材を取り出す。

「どんな結論が出ても受け入れる」

 

夜が更け、それぞれの部屋で眠りにつく前。佐藤が廊下で東と平に告げる。

「明日から……見せてもらうね」

静かな決意を込めて。

「私の知らない二人の世界を」

 

東が佐藤を優しくハグする。

「楽しみにしてる」

平も微笑む。

「明日の朝食から一緒に作ろう」

 

 

 

 

-----

 

 

 

 

佐藤は二人の家に泊まり始めてから三日目の夜を迎えていた。ソファで東が淹れたハーブティーを飲みながら、リビングの窓際から月明かりを見つめていた。

 

「サト?」

 

平が静かに声をかける。東もキッチンから戻ってきて佐藤の横に座った。

 

「考え事してた」

 

「私たちのこと?」

 

東の問いかけに佐藤は深く息を吐く。

 

「うん。二人のこと」

 

三日間で見た光景が佐藤の頭の中で整理されていく。

 

 

 

-----

 

 

 

朝の甘いキスから始まり、分刻みでスケジュールをこなす学生らしい昼間。

そして夕方からの家族のような共同作業——食事の準備から片付けまで。

夜になると情熱的な愛の営みが始まる。東が平クンをリードするようにも見えるし、平クンが東を押し倒すようにも見える。

どちらにしても互いが互いを求め合い尊重し合う姿は美しかった。

 

それに平クンの絶倫ぶりは本当にすごくて。毎回、最後の方は東も息絶え絶えのようになっている。

確かに1人では負担が大きすぎるかもしれない。

 

(でも…なにより…)

 

佐藤は思い返す。昨日の夕食時に東がふと言った言葉。

 

『たまに怖くなるの。平といる今が幸せすぎて…』

 

東はワイングラスを揺らしながら続けた。

 

『平がいなくなったら私生きていけないと思う』

 

平は東の手を握りながら静かに答えた。

 

『俺も同じだ。東がいない世界なんて考えられない』

 

素直にお互いに気持ちを伝えられるようになったのは一歩前進。

しかし、二人の表情は、幸福の中に潜む脆さや不安のようなものが見え隠れしていた。

 

 

佐藤は次に考える。まずは二人のこと。

 

 

東紫乃。私の親友。数え切れないほどの相談会が思い浮かぶ。何でも明け透けに相談にくる彼女。今や私は忘れっぽい本人以上に詳しくなっているかもしれない。

 

自分の感情をストレートにぶつけてくるアズは、正反対の性質の私にとって圧倒的に眩しかった。

 

アズの感情の源泉を知りたい。理解したい。そして、同じ感情を共有してみたい。ずっと思ってた。

 

これは友情?それだけではないようなもどかしさを感じる。

 

 

平秀司。親友の彼氏。高校の頃は斜にかまえた男の子だと思い込んでた、大学に入ってアズから平の中学時代の話を聞くまでは。

フィルター抜きで高校時代を思い返すと、一歩引いた立ち位置から軽薄そうに見えて細心の注意で相手を傷つけないよう会話をしていたと理解する。

 

私のように元から感情が薄いのではなく、心の中で感情を押さえつけ続けて、出来上がったのが今の平だ。

 

平が隠している感情、おそらくアズの前だけで見せる感情。私はそれを知りたいと思ってしまっている。

 

これも友情?まだ恋愛とは言えないまでも、確実に友情以上へと変質している気がする。

 

 

佐藤は最後に考える。自分のこと。

 

 

佐藤葵。私。感情を抜きにして客観的に物事をみるのは得意だと思っていた、つい最近までは。

 

平に無邪気な笑顔を送るアズを見ていると、胸がざわめく。

 

アズに安心したような顔をみせている平を見ると、鼓動が早くなる。

 

いけない、これでは第三者ではなく当事者の観点での 観測になってしまう。

 

特に、二人に抱かれている自分の思索は滑稽な程、千々に乱れてしまう。

 

 

 

これから私は元のような一人に戻れるだろうか?

 

今まで通り、研究と一人思考の海に溺れるような毎日が送れるだろうか?

 

 

……………もう…無理。知ってしまったから。他人の肌の固さと柔らかさ。触れる温もりを。

 

 

となると、結論はとうの前に出ていた。

 

 

 

 

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「サト……」

 

平が心配そうに覗き込む。佐藤は突然立ち上がり、リビングの中央に歩み出た。

 

「二人とも」声が少し震える。

「私はこれまでずっと一人で生きてきた。人間関係も必要最小限に留めてね。それは自分がそうしたいから、してきた」

 

東が不安そうな表情で佐藤を見上げる。

「知ってるよ。でも、出来るなら……」

 

「でも今は違う」佐藤は東の言葉を遮ると深呼吸して続けた。

「三日間ここにいて思ったんだ。二人の関係は本当に素晴らしい…けれど危うい」

 

平が眉をひそめる。

「どういう意味だ?」

 

佐藤は両手をぎゅっと握りしめた。

「お互いを想いすぎてる。前にも言ったけどやっぱり依存し合っているみたい」

 

東が身を乗り出した。

「そんなこと……!」

 

「分かってる」佐藤は小さく笑う。「愛情があるからこそなんだよね。でも……それじゃあ、もし何かあったとき……」

 

言葉を詰まらせる佐藤に二人が息を飲む。

「もし何かあったら?」東が恐る恐る尋ねた。

 

「……二人とも壊れちゃう」佐藤はゆっくりと言葉を選ぶ。「それくらい深い繋がりを持ってる」

 

長い沈黙の後、平が口を開いた。

「じゃあどうすれば……」

 

佐藤は決意を込めて言った。

「だから……私も入れて」

 

二人が驚いた顔で見つめる中、佐藤は続けた。

「……私たち三人ならバランスがとれると思う」

 

「三人で……?」東の声が震えた。

 

「そう」佐藤は静かに頷く。「アズと平クンの関係を壊すつもりはない。むしろ強化したいんだ」

 

平が困惑した表情で佐藤を見つめる。

「…それはサトにとってどうなの?義務とか責任感?」

 

「いいえ。私も……二人が欲しいから。これは本心」佐藤の顔が赤くなる。

「正直言うと……最初はホントに 観測するだけのつもりだった。でも今は違う。私もこの関係に加わりたい」

 

東がゆっくりと立ち上がる。

「本当に…?サトが入ってくれるの…?ずっと…?」

 

佐藤は首を縦に大きく振ると「それに、二人の世界は狭すぎる。もっと広い視野が必要だと思う」

 

平が考え込むように目を閉じた。

「確かに……俺たちは二人だけで完結しようとしすぎていたかもしれない」

 

佐藤は大きく息を吸い込んだ。

「だから……お願い」彼女は珍しく懇願するように言った。「二人も私のことを受け入れてほしい」

 

沈黙が訪れる。東と平は互いに視線を交わし、そして同時に佐藤の方を向いた。

 

「サト……」東の目に涙が浮かぶ。「ありがとう」

 

「俺たちを選んでくれて」平の声も震えていた。

 

佐藤が両手を広げると、二人が駆け寄ってきた。三人は長い抱擁を交わし、佐藤の瞳からも涙が溢れ始めた。

 

「これから……三人で新しい関係を作っていこう」東が言う。

 

「そうだね」平が優しく答える。

 

佐藤は二人の背中に腕を回しながら小さく呟いた。

「やっと……私の居場所が見つかった」

 

その夜、三人は初めて同じベッドで眠りについた。翌朝、目覚めた彼らの表情には新しい種類の安堵が広がっていた。

 

「おはよう」平が二人に微笑みかける。

「おはよう」東が応える。

「おはよう」佐藤も恥ずかしそうに言った。

 

朝陽の中で三人の新しい物語が始まろうとしていた。

 

 

 

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その日の夜、三人はリビングのテーブルを囲んで座っていた。カップに残ったコーヒーの湯気が立ち上る中、東が突然切り出した。

 

「結局、こうなったじゃん。じゃあ夜のルール決めるよ」

 

佐藤は思わず紅茶を吹き出しそうになり、慌てて口を押さえる。

「ちょ……ちょっと待ってアズ。心の準備が…」

 

「もう待たないよ」東は平然と続けた。「これから三人ですることなんだから、ちゃんと決めておかないと」

 

平は新聞から顔を上げずに言った。

「俺は二人の判断に任せる」

 

「そういうわけにはいかないでしょ」東がぴしゃりと言い放つ。「サトは初心者なんだから、ちゃんと説明しないと」

 

佐藤は頬を真っ赤にして俯いた。

「私は東ほど経験も体力もないから……一日に何度も相手はできないよ」

 

東は小さくため息をつく。

「わかった。それは配慮する。他には?」

 

「それに……」佐藤は言いよどみながら自分の体を気にするように視線を落とした。「私の顔や身体ってアズと比べて貧層だから……平クンも面白くないだろうし……」

 

「サト……」東が苦笑いを浮かべる。「だから、それって平を煽ってるって!もしかして、気づいてやってる?」

 

佐藤は慌てて顔を上げた。「え?私、何も……」

 

突然平が新聞を畳み、「もう限界だ」と立ち上がった。佐藤の横に立ち、彼女の肩をつかむと、「そういうの言われると我慢できなくなるんだけど」と低い声で言った。

 

「平クン……」佐藤は真っ赤になって視線を泳がせる。「ごめんなさい……」

 

東がため息をつきながら、「ほら見たことか」と両手を広げる。「サトは自分の価値を全然わかってない。性格も、身体も全部ね。平はサトのことすごく気にしてるよ」

 

「でも私……自信なくて……」

 

「あのさ」平が佐藤の耳元で囁いた。「昨日の夜、サトが寝てるとここっそり見ちゃったんだけど……すごく綺麗だったよ」

 

佐藤の全身から湯気が出るように真っ赤になる。「な……なに言ってるの……!」

 

東が椅子から立ち上がり、「まずは初日はシンプルに行こうよ」と提案する。「今夜は三人でシャワー浴びてからベッドに行く。それでサトの緊張もほぐれるんじゃない?」

 

平は既に我慢できない様子で「そうだな」と佐藤の手を引こうとする。

 

「平クン待って!」佐藤が必死に抵抗する。「まずは……まずは順序を踏んで……」

 

 

-----

 

 

「サトってさぁ」東が首を傾げる。「いつから平『クン』って呼ぶようになったっけ?」

 

佐藤は驚いたように目を見開いた。「え?」

 

「高校の時は平って呼び捨てだったよね?」東は探るような目で佐藤を見る。

 

一瞬の沈黙の後、佐藤は観念したように溜息をついた。

 

「それはそうでしょ」彼女は頬を染めながら説明した。「親友の彼氏を呼び捨てなんて……そんな距離感バグってるようなこと、アズに失礼だし。アズの思い人が平クンだってわかった時からクン付けしてるよ」

 

平が静かに新聞を置いた。「そういうことか」

 

「そういうことかじゃないでしょ」東は親友の気遣いに目を細めた。「じゃあ、もうそれなしね。元に戻そ。平って呼び捨てでいこう。高校に戻ったみたいで楽しいでしょ」

 

「ちょっと待って!」佐藤が慌てて両手を振る。「そんな……今更『平』だなんて……」

 

「恥ずかしい?」東がクスクス笑う。「それとも単純に言いづらいだけ?」

 

「両方!」佐藤は真っ赤になって叫んだ。「だって……高校の時はただの同級生だと思ってたから……」

 

「じゃあ今は?」

平が穏やかに訊ねる。

 

「今は……」佐藤は言葉に詰まり、ついには両手で顔を覆ってしまった。「言えない……」

 

東と平は顔を見合わせて笑った。

 

「焦らなくていいよ」平が優しく言う。「俺も少し戸惑ってる。サトみたいなタイプがこういう状況を受け入れてくれるなんて…なんていうか…」

 

「奇跡みたい?」東が補う。

 

三人は一斉に笑い出した。リビングに温かな空気が満ちていく。

 

佐藤はようやく決心したように深呼吸して言った。

 

「平……」

 

小さな声だったが、平には十分聞こえた。

 

「なに?サト」彼は嬉しそうに返事をした。

 

「今夜から……よろしく」彼女は再び真っ赤になって目を伏せた。「あと……アズも」

 

東は親友の肩を叩きながら言った。

「サトったら!ちゃんと呼べたじゃん。偉い偉い」

 

「うるさい」佐藤は小声で抗議したが、その口元は微かに緩んでいた。

 

「じゃあ、ということで一件落着ね」東が両手を打ち鳴らした。「お風呂はいろ」

 

「え?」佐藤が困惑した表情を浮かべる前に、東はすでに佐藤の袖を引っ張っていた。

 

「ちょっとまって」佐藤は抵抗しようとするが、「心の準備が」という言葉が口から出る前に、東はまるで熟練の戦士のように佐藤の服を脱がせ始めていた。

 

「ひぃっ!」佐藤の悲鳴が廊下に響く。

 

平は浴室の入り口で足を止め、「こんな時の東には反抗するだけで無駄だぞ、サト」と冷静に忠告すると、自分は黙々と服を脱ぎ始めた。

 

「サトの身体は私が洗ったげる」東はバスルームの扉を開けながら宣言する。「サトは私の身体をあらうこと!これ決まり!」

 

「待って!せめてスポンジで!」佐藤が最後の抵抗を試みるが、東の勢いは止まらない。

 

「サトの身体触ってて気持ちいんだもん。サトが悪い」

 

東は石鹸を素手に取り、泡立て始めると躊躇なく佐藤の背中を撫で始めた。佐藤の肌は驚きと冷たさで鳥肌が立っている。

 

「や……やめ……」佐藤の抗議は途切れ途切れになった。東の指先が彼女の鎖骨を辿り、肩甲骨へと滑っていく。その動きには奇妙な優雅さがあった。

 

「ほらほら」東は楽しそうに笑いながら「サトって本当に綺麗な体してるね。無駄な脂肪がないし、筋肉も適度についてる」

 

「やめて……アズ……」佐藤の声が震える。「そんなこと言わないで……」

 

平は二人のやりとりを眺めながら湯船に身を沈めた。温かいお湯が肩まで来る。

 

「サトも早く入って来いよ」彼は声をかけた。

 

東の手が徐々に下りていき、佐藤の腰のラインをなぞる。「すごいな~サトの骨格。美術品みたい」指先が佐藤の脇腹をくすぐり、「ひゃっ!」という短い悲鳴が上がった。

 

「アズ!お願いだからやめて!」佐藤は顔を真っ赤にして懇願する。

 

東の目が一瞬鋭くなった。「怖い?」その問いに佐藤は答えられなかった。

 

「そうじゃなくて……恥ずかしいだけ……」佐藤は小さな声で認めた。

 

東は少し力を緩め、「ごめん。でも本当のこと言ってるだけ」と言いながらも手は休めなかった。今度は彼女の腕を優しく撫で始め、「サトの肌って透き通るみたいで触り心地最高なんだもん」

 

佐藤の息が荒くなってきた。「アズ……変態すぎる……」弱々しい抗議だった。

 

「ほら見て」東は鏡の方を指さした。「私たちの姿が映ってるよ」

 

佐藤は恐る恐る視線を向ける。鏡の中には泡にまみれた自分と、それを愛おしそうに洗う東の姿が映っていた。

 

「ね?」東が囁く。「素敵でしょ?」

 

佐藤は何も言えず、ただ頷くしかなかった。

一方、湯船の中で平は静かに 観測していた。彼の顔には薄い笑みが浮かんでいる。三人の奇妙な共同生活が始まろうとしていた。

 

 

-----

 

 

佐藤は鏡越しに自分を見つめた。その瞳に映る姿—起伏の乏しい身体は確かに女性らしい曲線を欠いていた。胸も尻も僅かな脂肪が纏わりついているだけで、東のように豊満ではない。

 

東の裸体がすぐ横にある。その対比は残酷だった。東の乳房は重力に逆らうほど高く盛り上がり、腰は官能的にくびれ、お尻は完璧な半球を描いている。全てが「女」という性を主張しているようだった。

 

ふと平の視線に気づく。湯船の縁に肘をついた平は、鏡を通してこちらを眺めていた。その目は好奇心に満ちていた。

 

「どうせ……」

 

佐藤の声が震えた。感情の堰が崩れる音がした。

 

「どうせ貧相な身体だと思ってるんでしょ?平!」

 

最後の言葉が吐き出される前に涙が溢れた。口をとがらせた佐藤は、かつての高校生の自分に戻っていた。

 

平は一瞬驚いた表情を見せたが、すぐに微笑んだ。「サトの身体も、俺は好きだよ」

 

その言葉は嘘偽りなく響いた。高校時代と同じく素直な態度で。

 

「ほんとに?」東が茶化すように口を挟む。「でもサトって意外と気にしいなんだよね」

 

そして東は佐藤の耳元に唇を寄せた。「艶やかな黒髪も綺麗だし、薄い唇はキスしたくなるし……」

 

東の指が佐藤の胸元を撫でる。小さな膨らみをなぞりながら、

 

「乳首の感度なんてすごいじゃん?平もきっと夢中になるよ」

 

さらに指が下腹部へと滑っていく。

 

「まだ使い込んでないけど、サトのここ、すごい締め付けだったし……」東の声が甘く蕩ける。「絶対平を虜にできると思うけど?」

佐藤の顔が真っ赤に染まり、腰がわずかに震えた。湯気に曇る浴室の中で、三人の呼吸だけが響いていた。

平は静かに立ち上がり、佐藤へと歩み寄る。温かい湯気の中、新たな関係の始まりを感じさせる瞬間だった。

 

 

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平は湯船から立ち上がり、水滴が鍛えられた体を伝い落ちる。

 

「東にはずいぶん前に言ったけど」平は恥ずかしさを振り払うように一気に話し始めた。

「俺は絶倫体質で、何回も射精しないと痛いほど張り詰めて、精神にも体調にも悪い影響が出ちまう」

 

佐藤は平の絶倫体質は何回も見ていたけれど、平本人から改めての告白に目を見開いた。

東と佐藤は言葉もなく見つめあった。平の顔は真っ赤だった。

 

「だから昔から日に何度も自慰をするようにしてた」彼は続ける。「正直、抜く時のおかずは色んなものを使ってきたよ」

 

浴室の蒸気が三人を包み込む。平の声が熱気の中に溶けていった。

 

「こんな自分が言うのもおこがましいけど」平は佐藤に向かって微笑んだ。「女の人はそれだけで魅力的だと思うんだ」

 

佐藤の目が潤んだ。

 

「胸が大きかろうが小さかろうが、顔が大人びてようが童顔だろうが、その人それぞれの良さがある」

 

東が笑みを浮かべる。平の正直さに安心したようだった。

 

「勿論、かわいいとか綺麗とかは思うんだけど、それだけじゃない」

 

佐藤の目から涙がこぼれた。その表情を見て東が佐藤の肩を抱く。

 

「平ってば」東が笑いながら言う。「急に哲学的になっちゃって」

 

平は照れくさそうに頭を掻いた。「ただ思ったことを言っただけだ」

佐藤は小さく笑い、初めて平の目をしっかりと見た。三人の間に新しい理解が生まれた。

 

 

「まあ、それはさておき」平は突然調子を変えた。彼は湯船から完全に立ち上がり、佐藤と東を見下ろす位置に立った。

 

「今の自分は」平はおどけた様子で左手を伸ばし、東の腰を軽く抱き寄せた。「本能に忠実で、金髪のエロい身体した彼女と」

 

そして右手で佐藤の細い肩を掴み、「黒髪が似合うロリータ体型の真面目女」と続けた。「が、おかずとして最高だな」

 

「このぜいたくものー!」東が笑いながら平の胸板を両手で叩いた。その動作は「デュクシ」と呼ばれる彼女特有の照れ隠しの攻撃だった。

 

佐藤は目に溜まった涙を拭いながら、「平って」震える声で言った。「ロリコンの気もあるんだ…救えないな…」その言葉と共に彼女は思い切ったように平の腰に強く抱きついた。

 

三人の距離が物理的に縮まる中、浴室には笑い声が満ちていた。異なる個性を持つ彼らが一つの場所で共鳴し始める瞬間だった。

 

 

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東が突然提案した。「じゃあサトのコンプレックスも一応解消したとして」彼女は泡に覆われた手を伸ばした。「せっかくお風呂に入ってるんだから3人で洗いっこしよ」

 

平と佐藤が顔を見合わせる中、東は既に行動を開始していた。

 

「サトは平の身体を洗ってあげて」東は微笑んだ。「平は私の身体を。私は引き続き佐藤を担当ね」

 

三人はそれぞれの役割に従った。佐藤が恐る恐る平の前に膝立ちになると、泡に包まれた手で平の胸から腹へと優しく撫でていく。

 

「こっちも」東が佐藤の背後に立ち、佐藤の薄い背中を丁寧に洗い始めた。

 

佐藤の手がゆっくりと下へと滑り降りる。「痛くしてない?平?」彼女はおっかなびっくりペニスに手を伸ばした。まだ慣れない感触に震えながら、両手でそっと上下に洗っていく。つたない手つきが逆に新鮮で、平のものは徐々に固くなり始めた。

 

「大丈夫だよ」平は優しく答えたが、その声には僅かな緊張が混じっていた。

 

一方で平は慣れた手つきで東の腰を抱き寄せた。泡立った手で東の豊かな胸を鷲掴みにし、もう一方の手はソープを使わずに彼女の秘部を探り始める。

 

「んっ」東が小さく声を上げた。「今日も上手いね平!気持ちいーよ」

 

彼女の腰が自然に揺れ始めると、佐藤が洗う平のペニスもそれに反応するように跳ねた。

 

「サトってホント全身柔らかいよね」東は体を快楽でよじらせながらも、佐藤の背中を丁寧に磨き上げていた。「体形含めて犯罪的!これロリコンじゃなくてもヤバイって!」

平の指が東の内側を擦るたび、彼女の息が荒くなっていく。浴室内には三つの異なる吐息が交錯していた。

 

 

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身体を洗い終えた三人は湯船に向かった。平が選んだ賃貸物件は広々としたバスルームが売りだったが、それでも三人で同時に入るのはギリギリだった。

 

「せまくね……?」平が呟いた。

 

「大丈夫だよ!」東が明るく言い、先に浴槽に入った佐藤の後ろに身を沈めた。「ぎゅうぎゅうの方が楽しいって!」

 

結果として、一番小さい佐藤が先頭に座り、平がその後ろから佐藤を包み込むように腕を回した。そして東が平の背後に立ち、三人がピッタリと繋がるように湯船に入った。

 

「うわっ、動きにくい!」東が足をぱちゃぱちゃさせながら笑った。「でもおもろー!」

 

佐藤は落ち着かない様子で肩をすくめた。「効率わるいと思うんだけど……」

 

「そりゃそうだけど」平が佐藤の耳元で囁いた。「東に言わせると『効率ばっかり求めてちゃ人生潤わない』だってさ」

 

佐藤は苦笑した。「確かに理屈は分かるけど……」

 

「文句言ってないで楽しもうよ!」東が後ろから平の頭を両手で包み込んだ。「こんな贅沢ないって!」

三人分の体温で湯船が少し波打つ。平は佐藤の細い肩に顎を乗せながら、「まぁ、たまにはいいかもな」と呟いた。

 

 

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東が一番後ろでニヤリと笑った。「じゃあ、そろそろいいかな?平」

 

平は長い溜息をつくと、東が考えていることはお見通しだと言わんばかりに小さく頷いた。「分かったよ」

 

彼の手が素早く動いて佐藤の小さな胸元に伸びる。指が泡の中に埋もれるように彼女の乳房を捉えた。

 

「さっすが平」東が嬉しそうに言った。「以心伝心、味心ってね」

 

彼女の「イヤらしい笑い」が湯気の中で響いた。

 

「え……」佐藤が身を竦ませた。「ちょっ……平?」

 

驚きと混乱で頬が赤くなる。湯船の中で身動きが取れず、手足を前にバタバタさせるしかない。平の腕に挟まれた佐藤は逃げ場を失っていた。

 

「完全な隊列だね!」東が明るく宣言した。「作戦通りってわけ!」

 

平は佐藤の耳元で囁いた。「ごめんサト。東の作戦に乗っちまった」

佐藤は口をパクパクさせながら、二人の顔を交互に見つめた。三人の関係はますます複雑になりつつあった。

 

 

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平の左指が佐藤の乳首を捉え、右指が湯の中で柔らかく彼女の秘部を押す。彼の技術は的確で無駄がなかった。

 

「はぁ……」佐藤が身を捩る。

 

東は巧みに平の背中を支えながら、左手で平の乳首を摘み、右手は容赦なく平のペニスを前後に扱きはじめた。彼女の腰が平の背中で揺れ、疑似角オナニーのように擦りつけられる。

 

「平……んんっ、そこは……だめ……」

 

佐藤の声が浴室に反響する。閉ざされた空間で逃げ場のない快感に身を任せるしかなかった。

 

「サトぉ」東が熱っぽく囁いた。「その声、誘ってるみたいにしか聞こえないよ。天然のタラシなんだから。しかも……」彼女は平のペニスをさらに強く握った。

「サトの声聞いて、平のココ、すごく固くなってるし……妬けるんだけどぉ」

 

平は佐藤の耳元に唇を寄せた。佐藤にしか聞こえない声量で「佐藤の身体、どこ触ってもホントに気持ちいい」彼の声は危険な甘さを帯びていた。

「病みつきになったらどうしてくれるの?」「どこでも触らせてくれるんだよな?」

 

びくりと震える佐藤の反応に平は満足げな表情を浮かべた。その瞬間—

 

「あー!なんかサトに言ったなー!」東が声を荒げた。「平のバカ!このエロ平!」

三人の熱気が湯気と混ざり合い、浴室は新たな種類の蒸し暑さに包まれていった。

 

 

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「さっさと抜いて頭を冷やさせてあげる、エロ平!」

 

東の声が湯気に溶けた。彼女の手が猛然と平のペニスを扱き上げる。スピードはあるのに痛みは与えない絶妙な角度。痛みと快感の境界線を知り尽くした動きだった。

 

「東……」

 

平の声が掠れた。彼女の愛情を感じながら、左手で佐藤の乳首をひねり上げた。右手の中指が湯の中で軽く彼女の膣口を押し広げる。深く挿入はせず、優しく刺激するだけ。

 

「あっ……」

 

佐藤の身体が弓なりに反った。熱い液体が佐藤の背中を滑り落ちる。平の精液だ。彼は佐藤への配慮を忘れていなかった — 挿入ではなく、ただ背中に出すことで彼女を守ったのだ。

 

その優しさに佐藤は安堵し、同時に罪悪感と興奮がないまぜになった感情に襲われる。倒錯した状況なのに、不思議な解放感に軽いエクスタシーを感じてしまった。

 

「二人とも……」

 

東の声が震えた。彼女は二人の肩越しに両者を見つめている。三者の愛情が一つの空間で混ざり合う光景に彼女は感極まっていた。

 

「ずっと……こうしたかった……」

 

東の涙声とともに、彼女の腰が大きく震えた。平の広い背中に対し、佐藤の小さな背中へ向けて—二人の繋がりを目撃しながら、東は盛大に潮を吹いた。

 

熱い液体が弧を描き、佐藤の華奢な肩を伝っていく。湯船は彼らの欲望で溢れかけていた。

 

 

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軽くシャワーで洗い流した三人は、ようやく湯船から脱出した。

 

「もう湯船は入らないわよ」佐藤が警戒した声で言うと、二人は思わず笑ってしまった。

 

「そんなこと言っても、また明日も入ることになるだろ?」平が肩をすくめた。

 

「まぁね」東はタオルで髪を拭きながら、満足げに微笑んだ。

 

浴室のドアを開けた瞬間、東の表情が輝いた。

 

「ねぇ二人とも!見てこれ!」

 

脱衣所の棚に、東が用意した新しいバスタオルが並んでいた。それぞれ色違いで、名前入りだ。

 

「私たちだけのタオルだよ!」

 

佐藤は恥ずかしそうに俯いた。「こういうのは……」

 

「こういうのがいいんだよ!」東が遮るように言った。「たかがお風呂に入るだけで、こんな楽しいイベントになるなんて思わなかった!」

 

平は壁に寄りかかりながら小さく笑った。「俺も最初は不安だったけど……」

 

「でも今は違うでしょ?」東が二人の間に割って入った。「私は3人で暮らす生活が楽しくてたまらないんだから!」

夜はまだ始まったばかりだった。

 

 

 

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東が平の部屋に戻ると、狭いシングルベッドを眺めて眉をひそめた。「これじゃ無理よね」佐藤が申し訳なさそうに言った。

「私なら床でも——」「ダメに決まってるだろ」平があっさり否定する。「三人で一緒に住むって決めたんだから」

 

「そうだよ」東が付け加えた。「サト一人を床で寝かせるなんて選択肢はないの」

ベッドを畳んで部屋の隅に追いやり、代わりに大きめの布団を敷く。三人で使える大きさの布団を用意していたのは東だった。「こういうことも想定済みなんだ」平が苦笑する。「さすが東」

 

「当然でしょ!」東は胸を張った。「じゃあレイアウトだけど——」

 

佐藤を中心に右に東、左に平。完璧な川の字の完成だ。

 

「平が真ん中じゃないの?」佐藤が呆れた顔で尋ねる。確かに恋人同士なら平が中心のはずだ。

 

東は「今日はサトを愛したいんだもん」と即座に言い、佐藤の胸に顔を埋めるように正面から抱きついた。柔らかな胸の感触と温もりに佐藤の心臓が跳ね上がる。

平も同じタイミングで「右に同じ」と答えると、佐藤の背中から手を回す。

 

前門の親友・東、後門の親友の彼氏・平。二人に挟まれた佐藤は目を閉じ観念する。「お願い……優しくして」

その言葉に東は顔を上げた。「また煽るー」彼女の目はすでに欲望に潤んでいる。平も同様だった。

 

「じゃあまず私が——」東が佐藤のパジャマのボタンに手を伸ばした瞬間、「いや待て」と平が止めた。「順番を決めておこう」

「順番?」佐藤が驚いた声を上げる。「どういうこと?」

「三人で楽しむならルールが必要だ」平の低い声が佐藤の耳朶を打つ。「まずは東がサトを攻める。次に俺がサトを責める。そして最後に三人で——」

「そういう計画なの?」佐藤は抵抗しようとしたが、二人に固定された今、逃げることは不可能だった。

「ごめんねサト」東の声には謝罪の色よりも期待が滲んでいた。「でも約束したでしょう?二人のものになってくれるって」

 

佐藤の返事を待たずに、東の唇が佐藤の鎖骨に触れた。熱い吐息と共に舌がゆっくりと這い上がってくる。一方で平は佐藤の首筋に唇を当て、右手で太ももをまさぐり始めた。

 

「ちょ……ちょっと待って……」佐藤は懇願するように声を絞り出した。「心の準備が……」

「その準備を今整えているんだよ」東が微笑みながらパジャマのボタンを一つ外す。「怖がらなくていいよ。私たちが全部教えてあげるから」

 

佐藤の視界がぼやけた。これから始まる未知の体験への恐怖と、それを上回る好奇心が渦巻いている。彼女の肌は既に赤く染まり、呼吸も浅くなっていた。

 

「本当に……優しくしてくれる?」佐藤の問いかけに二人は同時に答えた。「もちろん」

その言葉を最後に、三人の夜が始まった。優しさという名の檻の中で、佐藤は徐々に理性を失っていく。彼女の身体が覚え始めた新しい感覚は、もう後戻りできない場所へと導いていた。

 

 

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「それじゃ、始めよっか。私たちの初夜を」東が佐藤の顎に指を添え、優しく顔を上げさせた。次の瞬間、東の唇が佐藤の唇に重なる。

予想以上の勢いに佐藤が目を見開いた瞬間、東の舌が歯列を割って侵入してきた。湿った音が暗い部屋に響く。

 

「ん……ふっ……」佐藤は抗う間もなく東の舌使いに翻弄される。東は巧みに佐藤の舌を絡め取りながら、右手を佐藤のパジャマのボタンに掛けた。一つずつ外していく指先の動きがやけに鮮明に感じられる。

 

同時に平の手が佐藤の脚の間に入り込んだ。パジャマの短パンと下着の中に指を忍ばせると、クリトリスを探し当て、円を描くように優しく撫で始める。その感触に佐藤の身体がピクリと反応した。

 

「やぁ……っ!」佐藤が思わず口を開くと、東はその隙を逃さず舌をさらに奥へと送り込んだ。唾液が絡み合う水音が耳障りだ。東の舌は執拗に佐藤の口内を探索し続け、歯の裏側や軟口蓋まで舐め尽くす。

 

乳首への攻撃も容赦なかった。東は両手で佐藤の両乳房を掴むと、人差し指と親指で左右の乳首を摘み上げた。最初は軽く揉む程度だったが、徐々に力を込めて円運動を始める。

 

「んんっ!」佐藤の腰が浮き上がる。東の爪が乳首の先端を擦るたびに鋭い快感が走る。一方で平の指はもっと大胆になっていた。クリトリスを指の腹で転がしながら、中指をゆっくりと膣口に沈めていく。

 

「痛かったら言って?」平が佐藤の耳元で囁く。その声は低く落ち着いているが、息遣いには明らかな興奮が含まれていた。佐藤は何度も首を振る。痛いどころか—。

 

「すごく……ああっ!」佐藤の言葉は途中で切れた。東が右の乳首を親指と中指で強く捻り上げたからだ。その痛みと甘さが混ざった感覚に、佐藤の腰が勝手に前に突き出てしまう。

 

「あらあら〜」東が嬉しそうに笑う。「佐藤ったら乳首弱いのね」そう言いながら左手で左の乳首を弾く。指先が先端に触れるたびに、佐藤の背中が弓なりに反る。

 

後ろから平の指が二本に増えていた。一本は膣内で優しく壁を押し広げ、もう一本はクリトリスに集中して刺激を与え続ける。平の指の動きは精密で、的確に佐藤の感じるポイントを捉えていた。

 

「だめ……そこ……触っちゃ……ああんっ!」佐藤の喘ぎ声はどんどん大きくなる。平が指を出し入れするたびに、粘着質な音が部屋に響いた。佐藤の秘裂からはすでに透明な蜜が溢れ出していた。

 

東は攻撃をエスカレートさせた。右の乳首を口に含むと、舌で転がしながら甘噛みする。「ひゃあっ!」佐藤の全身に鳥肌が立つ。左右非対称の快感が脳を混乱させる。

 

「サトは本当に敏感だね」東は満足げに囁きながら、左の乳首も同様に責め始める。歯の先端で引っ掛けるような刺激を与えつつ、舌で舐め上げる。「こんなに可愛いサトを見られるなんて……」東の吐息が胸の谷間を滑り落ちていく。

 

平の指の動きも変わってきた。一本は深いところまで侵入し子宮口を優しく圧迫し、もう一本は浅い部分の敏感なスポットを擦り上げる。加えてクリトリスへの刺激も休まない。三点同時攻撃に佐藤はもう限界だった。

 

「もう……許して……イッちゃう……!」佐藤の声は震えていた。この快感に飲み込まれたら本当に戻れない。そう確信した瞬間、東が乳首に吸いつき強く吸い上げた。

 

「んああっ!!」佐藤の身体が硬直し、全身に電気が走るような衝撃が走る。平も絶頂のタイミングを見計らっていたかのように、クリトリスを強く押し込みながら膣内の指を深く挿入した。

 

「ああああっ!!!」佐藤の叫び声とともに、股間から熱い液体が噴き出す。潮吹きだ。布団が温かく湿っていく。

 

絶頂を迎えた佐藤の身体は痙攣し続けた。東が唇を離すと、銀色の糸が二人の間を繋いでいる。東の唇は佐藤の唾液で光っていた。

 

「すごい……サト」東の目は潤んでいた。彼女も興奮で息が荒くなっている。「こんなに感じてくれるなんて……」

 

平は指をゆっくり引き抜くと、佐藤の背中にぴったりと密着した。「まだ終わりじゃないよ」と囁きながら、首筋にキスを落とす。その温もりだけで佐藤の膣が再び収縮するのがわかる。

 

「こんな気持ちいいこと……私知らない」佐藤は呟いた。涙が頬を伝っている。「もう……絶対…戻れない…どうしてくれんの?アズ?…」その言葉に東と平は視線を交わし、共犯者のような笑みを浮かべた。

 

「戻らなくていいんだよ」東が佐藤の涙を指ですくい取る。「ずっと私たちと一緒にいればいい」

 

平も同意するようにうなずいた。「佐藤を一人にはしない」

 

三人の体温が溶け合い、布団の中は蒸し暑いほどになった。佐藤の理性は完全に崩壊し、ただ快楽だけを追い求める獣のような本能だけが残されていた。

「次はどうしてほしい?」東が挑発的に問いかける。

 

佐藤は息も絶え絶えに答えた。「もっと……もっとして……」

その言葉に東と平の目が妖しく光った。彼らの本当の目的はこれからだった—。

 

 

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佐藤の全身が余韻で微かに震えている中、東が艶やかな笑みを浮かべた。「ねえサト」東の声は甘く蕩けていた。「サトって一日最高何回イったことあるの?」

 

快楽の波にまだ囚われていた佐藤は、一瞬思考が追いつかなかった。

自慰のこと?そんなこと聞かれたら……恥ずかしさで全身が熱くなる。しかし理性が溶けきった状態では嘘もつけなかった。

 

「……3回……かな」佐藤は小さく呟いた。「一度だけ……朝に1回、夜に2回したことある……かも」

 

その正直な答えに東と平は顔を見合わせて意味深な笑みを交わした。東は佐藤の耳朶に唇を寄せると、舌先で軽く舐めながら囁いた。

「じゃあさ」東の息遣いが耳にかかるたびに佐藤の身体がピクリと反応する。「今日の夜で記録更新しようよ」

 

「……え?」佐藤の頭がようやく東の言葉の意味を理解すると、顔面が火を噴くように真っ赤になった。

「そ……そんな……もう2回もイってるのに……これ以上なんて……もう十分だから……」

 

懇願するような声に東は冷たく微笑んだ。その笑顔の裏に潜む捕食者のような欲望が恐ろしいほど魅力的だった。

「だからこそだよサト」東の指が再び佐藤の乳首を弾く。「もっともっと気持ちいい世界を知ってほしいんだ」

 

後ろから平の腕が佐藤の腰に回され、さらに強く引き寄せられた。平の身体が密着することで、背中に固いものが当たっているのに気づく。それは……

 

「サト……」平が囁きながら佐藤の手を取り、自分の下半身へと導いた。張り詰めたものに触れた瞬間、佐藤の瞳が見開かれた。

 

「え?」佐藤の指がその硬さを確かめるように動く。「どうして?今の会話で立つ要素あった?」

 

その率直すぎる質問に東は噴き出した。「あはは!サトったらやっぱり天然のタラシだよね!平がサトのことどれだけ思ってるか分かってないんだから!」

 

確かに佐藤は理解できなかった。なぜ自慰の回数を教えただけで平がこんなに興奮しているのか。混乱する佐藤を見て東が補足する。

 

「だってさ」東は佐藤の鼻先に人差し指を立てた。「サトが『一日三回イった』って聞くだけで想像が膨らむでしょ?どんな風にイったのか……どのくらい可愛く喘いだのか……それを知ったら我慢できなくなるよ」

 

説明を聞いても納得できない佐藤は首を傾げた。「……平は私の自慰を想像して……こんなになってるってこと?」

 

「そうだよ」平が低い声で肯定する。「佐藤が一人でしてる姿を考えただけで……」

 

「ちょっと待って!」突然東が甲高い声で割り込んだ。平の股間に置かれた佐藤の手を引っ張り離す。「黙ってたけど、平もずるい!私はまだ一回もサトに触られてないのに!」

 

嫉妬に燃える東の目に佐藤は驚愕した。「ごめんなさい……つい固さが気になって……」佐藤が謝ると東は頬を膨らませた。

 

「謝らなくていいから」東は佐藤の手を両手で包み込むと、自分の胸元に引き寄せた。「それよりもっと大事なことがあるでしょ?」

 

東が視線で促す先にはまだ硬さを保つ平の股間があった。そして今度は東自身の下腹部にも明らかに変化が現れていた。

 

「続き……しようよ」東の声は切羽詰まって震えていた。「私たち全員まだまだ満足してないでしょ?」

 

佐藤は二人の欲情した瞳を見比べながら悟った。この夜は始まったばかりだと。

 

 

 

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「サト」東の声には鋼鉄のような決意が宿っていた。「これからは一人で自慰なんて空しくてできなくなるほど、サトの身体に私たちのこと教え込んであげるから」

 

その言葉に佐藤の背筋が凍った。それは警告ではなく約束だった。逃げることなど許さないという宣誓だった。

 

「女はね」東は平が指を抜いたばかりの佐藤の膣口に唇を寄せた。舌先がまだ余韻に震える花弁に触れると、「ひゃっ!」という悲鳴と共に佐藤の身体が跳ねる。「何回でもイけるの、コツはあるけどね」

 

東の指が再び動き始めた。今度は平と上下が入れ替わり、平が佐藤の背後から覆いかぶさるように抱きしめる。

平の大きな手が佐藤の乳房を優しく包み込んだ。指先が柔らかな丸みをたどりながら、親指が敏感な突起を転がし始める。

 

「やっ……ぁん……」佐藤は新たな快感の波に身悶える。乳首からの鋭い刺激と同時に、下半身には熱い吐息を感じる。東が佐藤の脚を広げ、股間に顔を埋めていたのだ。

 

「サトのここ……すごい綺麗」東の吐息が花芯にかかる。「私が全部味わってあげるね」

 

東の指がクリトリスを優しくはじいた。同時に舌が膣口に滑り込み、内壁を探るように動き出す。

平の乳首愛撫も巧みで、爪の先でかりかりと刺激したり、指の腹で円を描くようにこねたりと飽きさせない。

 

「んぁ……っ!」佐藤の口から漏れるのは最早嬌声ではなく泣き声に近かった。「また……来る……やっ……だめぇ……!」

 

「だめじゃないでしょ」東が囁く。「2回もイった後だから、敏感でしょ?でもそこから先があるの」東の舌が深く入り込む。平の指が乳首を摘み上げる。二人の連携が完璧すぎる。

 

佐藤の視界に星が飛ぶ。「や……また……いっちゃう……っ!」

 

「や……待って……もう……許し……て…」佐藤の言葉は途切れ途切れになり、意味を持たない喘ぎに変わる。だが平の指は止まらず、東の舌は執拗に弱点を攻め続ける。

 

「サトってすごく感じるんだな」平の囁きが耳朶を打つ。「男友達に胸触られて、こんなにビクビクしてエッチな体だな」

 

「ひぅっ!」その言葉だけで軽い絶頂が走る。快感の波が引く前に次の一撃が来る。

 

「佐藤の敏感でロリータな体」平の唇が佐藤の耳輪を舐める。「俺は好きだな」

 

「いやぁ……!」拒絶の言葉とは裏腹に、膣壁が収縮し新たな蜜が溢れ出す。

 

東の舌先が探るように動いていたが、突然一点に集中した。「ここだ」東の囁きは確信に満ちている。「サトの弱点見つけたよ」

 

佐藤の下半身が跳ね上がる。今までとは異なる深い快感が脳天まで突き抜ける。「そこっ……やめ……ああぁ!」

 

「Gスポットね」東の声は勝利を確信していた。「今日はここで何回イけるかチャレンジだね」

 

東の舌先が確実なリズムで一点を叩く。平の指は乳首を執拗に弄び続ける。佐藤の意識が薄れかけた時、平の声が現実へと引き戻す。

 

「佐藤のエッチな顔見てたら」平の吐息が耳穴に吹き込まれる。「佐藤の膣にペニスを入れたくなったんだけど」

 

「お願い……」佐藤は嗚咽混じりに懇願した。「もう……許して……」

 

だが平の言葉は容赦なかった。「責任取ってもらうからな」「もう我慢できないから」平の声が熱を帯びる。

「生でいれたら絶対そのまま中で出すから」「サトの狭い膣から精液が溢れても何度も何度も注ぎ込むからな」

 

「だめっ……そんなことっ…妊娠しちゃう…から…あぁーっ!」

 

佐藤の身体が弓のように反り返る。東の舌が加速し、Gスポットへの攻撃が苛烈になる。平の指は乳首を摘み上げるたびに新たな火花を散らす。

 

佐藤の頬に温かいものが伝った。自分が涙を流していることに気づく。口元が緩んでしまい涎が垂れていることも。

身体が自分の意志ではないように痙攣し、収縮と弛緩を繰り返す。もう何回目の絶頂かわからない。おそらく3回どころか、十、二十ととっくに二桁を超えている。

 

「……ああぁ……」佐藤の視界が徐々に暗くなっていく。これまでの人生で経験したどんな快楽よりも鮮烈で暴力的な悦楽が、彼女の全てを飲み込もうとしていた。

全身の神経が剥き出しにされたような感覚の中で、東と平の存在だけが確かだった。

 

この二人以上の誰がこれから彼女の前に現れるだろう? きっと誰も敵わない。今日この夜が、彼女の快楽の基準を作ってしまったのだ。

佐藤は最後の意識の片隅でそう思った後、完全に闇の中に沈んでいった。それは恐怖よりも安堵に似た感覚だった。

 

 

 

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静寂が部屋を支配していた。佐藤は微かに息をしながら布団の上で眠りについている。その姿はさっきまでの淫らさが嘘のように穏やかだった。

 

東は満足げな表情で佐藤の閉じた瞼をそっと撫でた。「作戦成功、可愛かったよサト。愛してる」

 

平は呆れたように肩をすくめる。「俺が言えたことじゃないけどさ。起きてるときに言えばよかったんじゃないか?東のことだから別に照れてるわけじゃないだろ?」

 

「違うわ」東はタオルを取り出し、佐藤の濡れた肌を優しく拭き始めた。「起きてるサトに言ったところで信じてくれない。頭いいから理性が邪魔する」

 

「だからって……気絶させるまでやることないだろ」

 

「私は一生サトを手放したくないの」東の手つきは聖母のように優しい。「当然平もね」

 

佐藤の額に浮かんだ汗を拭いながら東は続ける。「だからサトの初夜が山場って決めてた。中途半端に堕とすとそのあとで常識って言う絶望が襲ってくるから」

 

「常識?」平が眉をひそめる。

 

「そう」東の眼差しは冷たく光る。「サトの中の『これが普通』っていう常識。私たちみたいな歪んだ関係は異常だって叫ぶ心の声」

 

「なるほど……」平が納得したように頷く。

 

「だからサトが何も考えられなくなるくらい」東の指が佐藤の唇に触れる。「常識を壊す必要があった」

 

タオルを置いて立ち上がった東の目には狂気が宿っていた。

 

「これからのサトの常識は私たちが作ればいい」東は平に向かって微笑む。「私たちの常識はサトと3人で育んでいけばいい」

 

「それって……洗脳じゃないか」

 

「愛よ」東の声は氷のように冷たい。「真実の愛は相手を縛るものでしょう?」

 

平は「それでサトが幸せになれるかな?」

 

「もちろん」東の笑顔が歪む。「私たちは一つになるの。サトは私のもの。平も私のもの。そして私は……」東の言葉が空中に溶ける。

 

平はしばらく黙っていたが、やがて諦めたようにため息をついた。「まぁ……もう引き返せないよな」

 

「そうよ」東は佐藤の枕元に戻り、静かに囁いた。「私は決めたの『死が三人を分かつまで』ってね」

 

その言葉と共に東が見せた笑顔は、狂気と慈愛が奇妙に融合した凄絶なものだった。

 

 

 

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「で、これはどうしてくれる?」平は苦笑しながら自分の硬くなった股間を指さした。下腹部を示す仕草がどこか滑稽だった。

 

東は気絶した佐藤を見て小さく肩をすくめた。「残念だけど、今日はサトは無理ね」彼女の声には一抹の寂しさがあった。「意識がない子に無理強いするのはね」

 

「だろうな」平はソファに深く座り直し、「で?」と促すように東を見上げた。

 

東は艶然と笑うと、パジャマを脱ぎながら平の膝に跨った。「代わりに私が相手してあげる」彼女の瞳が挑発的に輝く。「平もサトに入れたかっただろうけど、今日は私で我慢して」

 

その言葉に平は一瞬固まった。やがて溜め息をつくと、「馬鹿なこと言うなよ」と呟いた。「サトはサト、東は東だろ?」

 

「……え?」東の笑みがわずかに崩れる。

 

平は無造作に東の腕を掴むと、一気に体勢を変えた。東が抗う間もなく、背中をソファに押し付けられ、両脚を開かされる。

 

「東、どれだけ俺といると思ってんだ」平の声には珍しく怒りが滲んでいた。「俺が誰を見てるかわかってないの?」

 

東の目に驚きが広がる。

 

平の手が彼女の頬を包み込んだ。「俺にとって東は東なんだ。サトもサト、代わりになんかしてない」

 

「……」東は言葉を失った。自分の内心の不安を的確に指摘され、胸が疼く。

 

「東、愛してる」平の顔が迫る。「平—」

 

その言葉が終わる前に東の唇が塞がれた。平の熱い舌が侵入し、東の口腔を蹂躙する。同時に平の硬く膨らんだモノが東の濡れた秘所に押し当てられた。

 

「んっ!」東の喉から呻きが漏れる。抵抗しようとしたが、平の瞳を見た瞬間、すべての力が抜けた。そこに映るのは紛れもない真剣な愛情だった。

 

「わかってたよ……」東の声は震えていた。「ごめん……私の方が平のこと束縛してたかも」

 

「言えよ」平の動きが緩やかになる。「東も言えよ」

 

東の瞳に涙が浮かんだ。「……愛してる」その言葉は風船のように脆く破裂しそうな声だった。「平のこと……ずっと……」

 

次の瞬間、平の腰が深く沈み込んだ。

 

「あぁっ!」東の身体が弓なりに反る。待ち望んだ痛みと快感が脊髄を駆け上がる。「平……もっと……!」

 

平のストロークが激しくなる。佐藤の眠る寝室のドア越しに漏れる吐息。二人の交わりはいつになく熱を帯びていた。

 

東の手が平の背中に爪を立てる。「ダメ……今日は……もっと強く……!」

 

「言われなくても」平の口元に悪戯っぽい笑みが浮かぶ。「東からこんなに求めてくるなんて珍しいからな」

 

「バカ……」東の罵倒は甘い。平のリズムに合わせて腰を動かす。「平が……あんなこと言うから……!」

 

互いの汗と体温が溶け合う。東の内部が平を包み込み、締め付け、解放を乞う。

 

「もう……ダメ……イっちゃう……!」東の声が上擦る。

 

「一緒に」平の声も切迫していた。

 

二人の身体がほぼ同時に跳ね上がり、東の膣内で平が爆ぜる。熱い奔流を感じながら東の意識が薄れていく。

 

平の唇が彼女の額に触れる。「東……」

「愛してる」それはどちらの言葉だったのか。

窓の外で夜明けの兆しが始まっていた。

 

 

 

-----

 

 

 

朝の光がカーテン越しに差し込み、佐藤はゆっくりと目を開けた。頭の中を駆け巡る昨夜の記憶—十を優に超える絶頂の波が脳裏に焼き付いている。自分の身体の反応が信じられなかった。あれほど激しく……。

 

「……最悪」

 

佐藤は枕に顔を埋めながら呟いた。記憶は断片的で曖昧だが、身体には確かにその余韻が残っている。腰の違和感と喉の渇きが昨夜の出来事を物語っていた。

 

リビングでは既に平と東が朝食の準備をしている。佐藤が階段を降りてくる音に二人は振り向いた。

 

「おはよ〜サト!」

 

東の明るい声に佐藤は一瞬固まる。

 

「よく寝られた?」平もコーヒーを淹れながら聞く。

 

「……」佐藤は言葉を探すように二人を見つめた。頬が徐々に熱を帯びていく。

 

「何が起きたか覚えてる?」東がニヤリと笑う。

 

「当たり前でしょ」佐藤の声は掠れていた。「あんな……」

 

言葉に詰まった佐藤は視線を逸らし、テーブルに着いた。そして意を決したように顔を上げる。

 

「二人とも」

 

「うん?」平と東が同時に首を傾げる。

 

「一生許さないから」

 

その言葉とは裏腹に、佐藤の表情は柔らかかった。頬を紅潮させながらも微笑む彼女の眼差しはどこか挑戦的だ。上目遣いのその瞳には複雑な感情が渦巻いていた。

 

平と東は顔を見合わせた。

 

「まったく……」

 

「サトってホントに」

 

二人の声が完全に重なる。

 

「タラシだよね」

 

「はぁ?」佐藤が眉をひそめた。

 

東がコーヒーカップを掲げる。「こんな風に3人で朝を迎えるのは初めてね」

 

「そうだな」平はパンを切り分けながら答える。

 

佐藤はカップを受け取りながら溜め息をついた。「正直、頭が追いついてない……昨日のこと」

彼女の声はいつもより小さい。「でも……」

 

言葉を選ぶように彼女は続けた。「二人のことは……嫌いじゃない…と…思う」

 

「そういうとこだよ」東が佐藤の肩を叩く。

 

「何が?」

 

「天然のたらしっぷり」平が苦笑しながらパンを佐藤の皿に載せる。「自覚なしに人の心を掴む才能」

 

「意味わからないんだけど」

 

佐藤の抗議に二人は笑いを堪えきれず吹き出した。佐藤はさらに頬を膨らませるが、その姿すら可愛らしいと二人は思う。

 

「これからどうするつもり?」突然佐藤が真剣な顔で尋ねた。

 

東はパンにバターを塗りながら答えた。「明日から冬休みよ。つまり……」

 

「つまり?」佐藤が身を乗り出す。

 

平がコーヒーカップを持ち上げて宣言した。「今日から毎日ここで過ごすことになるな」

 

「え?」佐藤の目が丸くなる。

 

「だって」東がウィンクする。「今、サトを一人にするのも心配だし」

 

「そうそう」平も頷く。「それに……」

 

彼の視線が東と交錯する。

 

「それに?」佐藤が催促する。

 

「サトがどんなに嫌がっても」東が佐藤の手を握った。「私たち離れられない運命だから」

 

平も反対側の手を掴む。「東は本気だ。覚悟してくれ」

 

佐藤は呆れたように天井を見上げた。「本当に最悪」

 

だがその表情は笑みを隠しきれていなかった。

 

「さて」平が立ち上がる。「大学に連絡して今日は休むって言っておくか」

 

「賛成」東が即答した。「じゃあもう三学期までゆっくりできるわね、今日は何しよっか」

 

佐藤は両手を二人に掴まれたまま、ふと思いついたように言った。「ねえ……」

 

「何?」二人が同時に振り向く。

 

彼女は恥ずかしそうに俯きながら続けた。「もう一度…昨日みたいに…今から……」

 

言葉が宙に浮いた。しかし三人の間には確かものが共有されていた。

 

朝食の席はいつもより賑やかに、そして温かさに満ちていた。窓の外では雪が舞い始めていた。

 

 

 

 

 

## 後日談:佐藤の決意

 

リビングの空気が緊張感で満ちていた。午後3時過ぎ。東が友人と買い物に出かけた後、佐藤は平を呼び止めた。

 

「平、少し話がある」佐藤の声はいつもの淡々とした調子だが、眼差しは鋭い。

 

平は洗濯物を畳む手を止めずに聞き返す。「何だ?」

 

佐藤はソファに腰掛けると、深呼吸を一つ。「昨日のことだけど」

 

平の手が僅かに止まる。「ああ……」

 

「アズと平に新記録を作られた」佐藤は事務的な言い方で続けた。「今まででぶっちぎり。もう他は考えられないくらい、私の限界を突破させられた」

 

窓の外では陽が傾き始めている。佐藤の長い影が床に伸びていた。

 

「それで?」平はようやく彼女の方を向いた。

 

佐藤は真っ直ぐに平を見据えた。「私はアズと対等の立場になりたい」

 

「対等?」

 

「そう」佐藤は立ち上がり、部屋を歩き始めた。「アズと私は親友。でも昨日みたいなことが続くなら、私は彼女に依存しているだけになる」

 

佐藤の足音だけが静寂を破る。「それは私の美学に反するし、歪みすぎてる」

 

「なるほど」平は洗濯物を傍らに置き、ソファに腰掛けた。

 

「やられっぱなしは趣味じゃない」佐藤の言葉に力が籠もる。「だから……」

 

彼女は平の目の前に立ち止まった。「私を鍛えてほしい」

 

「鍛える?」

 

「私はアズに対して性経験が少なすぎる」佐藤の率直な告白に平は少し驚いた様子を見せた。「今まで性欲もほとんどなかったし、そもそも恋愛も分からなかった。まあ恋愛は今もだけど」

 

佐藤は窓の外を見つめる。「つまり、アズは私が知らない世界を知っていて、それを楽しんでいる。昨日のあの経験で……私もようやく気づいた。それは否定できない事実として受け入れるべきだと」

 

「サト……」

 

「私はアズを傷つけたくない。彼女を守りたい」佐藤の声が少し震えた。「そのためには私も近いレベルまでは行きたい。男性がどうすれば悦ぶのか、アズはどうしたら気持ちよくなれるのか」

 

彼女は再び平に向き直った。「平が知っていることを全部私に教えてほしい」

 

「ちょっと待て」平は手を上げた。「それは……」

 

「もちろん恋愛とかそういう話じゃない」佐藤が先回りするように言った。「ただの知識と技術の問題。平と彼氏彼女の関係になるつもりはないから」

 

「でも……」平は言葉を選んでいた。

 

「アズには私からちゃんと話をする」佐藤の決意は揺るがない。「これはアズを守るためでもあり、私自身の尊厳を保つためでもある」

 

しばらくの沈黙。平は佐藤の真剣な表情を見つめていた。そこには迷いも恐れもない。

 

「分かった」平がついに頷いた。「サトが東と話をしてから、もう一度話をしよう」

 

佐藤の目が僅かに見開かれた。「本当に?」

 

「ああ」平は小さく笑った。

夕暮れの光が佐藤の横顔を優しく照らしていた。彼女の決意は固く、その瞳には新たな可能性への期待が輝いていた。性経験の乏しさを逆手に取り、知識と技術で対等を目指す—それは佐藤らしい合理的な選択だった。

 

 

 

 

 

## 後日談:対等な絆

 

夜も更けていた。東の部屋で二人きり。佐藤は膝を抱え、ベッドサイドに座っていた。東は鏡台に向かって化粧水をつけている。

 

「話があるの」佐藤の声は低く、だが芯があった。

 

東は振り返らず、「何?ルール③」とだけ答えた。その背中は妙に落ち着いていた。

 

ルール③『佐藤も女の子だから、何かあったらすぐ『東』に相談すること。親友として最大限配慮することを東は誓います』

 

「うん、ルール③」佐藤は指を弄りながら口を開いた。「私、決めたんだ」

 

東の動きが一瞬止まる。「何を?」

 

「東」佐藤は深く息を吸った。「アズの横に立ちたい」

 

「え?」

 

「依存じゃなくて、対等に。だから……」

 

佐藤は顔を上げた。「平を私に貸してほしい」

 

東はゆっくりと鏡越しに佐藤を見つめた。驚いた様子はなかった。

 

「理由は?」東の問いは柔らかいが鋭かった。

 

「私があまりにも無知だから」佐藤は正直に告げた。「昨日のことがあった後、思ったんだ。このままじゃいけないって。アズは私が知らない世界を知っていて……」

 

「怖かった?」東が優しく問いかける。

 

佐藤は素直に頷いた。「少しね。でもそれ以上に、このままじゃアズに引っ張られてばかりだって気づいたの」

 

東は化粧水の瓶を置き、佐藤の隣に腰掛けた。暗い部屋の中で、窓からの月明かりだけが二人を照らしていた。

 

「実はね」東は微笑んだ。「そんな気はしてたの。あの日—私の指がサトの処女を奪っちゃった時に」

 

佐藤の頬が赤くなった。「そうかな……」

 

「うん」東は佐藤の手を取った。「私もサトにまだ言ってないことがあるの…」

 

東は一瞬躊躇した。「私にとって、とっくの前にサトは欠けたら生きていけない存在になってたってこと」

 

「え?」

 

「それは支配とかじゃなくて」東の声が少し震えた。「私もどちらか一方が依存する関係は嫌だった。それでもサトを一生自分から離れないようにって突っ走っちゃったけどね」

 

佐藤は黙って聞いていた。

 

「ごめんね」東は申し訳なさそうに呟いた。「こんな関係になっちゃって」

 

突然、東は佐藤を強く抱きしめた。香水の甘い香りが佐藤の鼻をくすぐる。

 

「だから、平とのことはサトが好きにしていい」東の声は耳元で響いた。「私たちは元から対等なんだから」

 

佐藤は戸惑いながらも腕を回した。「ありがとう……アズ」

 

「ただし、これは女の勘だけど」東は少し身体を離し、佐藤の目を覗き込んだ。「平と二人きりの時間が増えれば、おそらくサトは平に惚れちゃうと思う」

 

「え?」佐藤は驚いた。佐藤にはまったくそんな気はなかったから。

 

「人間は計算じゃなく本能だから」東の笑みには僅かな切なさが滲んでいた。「そして、もし平もサトに惚れたら……」

 

「そんなことは……」佐藤はあるはずないと言おうとして東の言葉に遮られる。

 

「その時は」東は冗談めかして肩をすくめた。「私は平を取り返すように頑張る」

 

月明かりの中、二人の笑い声が静かに部屋に広がった。友情と愛情と欲望が入り混じった、奇妙だが確かな絆。

 

「いいね」佐藤も笑顔を見せた。「それじゃあ……明日から始める?」

 

「うん」東は立ち上がった。「平には私から話しておく。心配しないで」

 

佐藤も立ち上がり、窓辺に佇む東の横に並んだ。二人の影が重なり合う。未来に何が待っていようとも、この瞬間の信頼は確かだった。

 

「対等の関係って難しいけど」東が囁いた。「サトとなら作れそうな気がする」

 

「うん」佐藤は頷いた。「頑張ろう」

夜風が二人の髪を撫でていく。窓の外では星が輝き始めていた。

 

 

 

 

 

## 後日談:平等の条件

 

朝焼けが窓から差し込む平の部屋。床に散らばった漫画雑誌を踏みしめながら、佐藤は壁に背を預けて立っていた。昨夜、東とした話をしに来たのだ。

 

(サトが平に教わることが目的なのに……なんで私まで呼び出されたんだろ)

 

東の頭の中は疑問符でいっぱいだった。昨日の佐藤の決意は本物だ。てっきり「平と二人きり」だと思い込んでいたのに、私が当たり前のように呼びだされたは予想外だった。

 

(まあいいか、サトに何か考えがあるのかもしれないし、隠しごとみたくしたくなかったのかもしれない)東は自分に言い聞かせる。

 

「サト、話って?」平が不思議そうに佐藤を見つめていた。茶髪が朝日に透けて金色に輝いている。

 

佐藤が口を開く「そうね。じゃあ……始めるわね」

 

東がクスクス笑い出した。「ねえサト、緊張しすぎじゃない?もっとリラックスしなよ」

 

「緊張なんて……」佐藤は否定しようとしたが、喉がカラカラなことに気づいた。指先も微かに震えている。

 

(これが不安なのかな)佐藤は内心苦笑いした。(東が言う対等とか依存とか、そういう哲学的な話よりも単純に……)

 

「平」佐藤は深呼吸して名前を呼んだ。「私に性行為を教えて。それと……」

 

続けて東の方を向く。「アズも私に教えてくれるわよね?」

 

一瞬の沈黙。東と平が顔を見合わせた。

 

「え?」東が少し驚いた声を上げる。「平と二人きりじゃないの?」

 

「勿論二人きりで教わることもあると思うけど…」佐藤は素直に言った。「でも三人を否定してるわけじゃない」

 

東の顔に理解の色が広がっていく。「つまり……場合によっては私とサト、二人きりでも?」

 

「うん」佐藤は頷いた。「私は結果としてアズの横に立てればいいの。そのためには平だけに教わる必要もないし」

 

そこまで言いかけて佐藤は舌を出した。「それに」

 

「それに?」

 

「昨日みたいな……」佐藤は少し赤くなって俯いた。「平だけだと物足りなくなるかもしれないし」

 

部屋に笑いが溢れた。東と平が同時に吹き出したのだ。

 

「やっぱりサトには敵わないな」東が目尻の涙を拭いながら言った。

 

平が近づいて佐藤の肩に手を置いた。「そうだな……俺たちがサトに勝てるわけない」

 

三人が円陣を組むように集まった。東が佐藤の頬に手を添える。「これからどうするの?」

 

「まずは基礎から」佐藤が答えた。「セックスの基本テクニック……」そこで言葉を切った。「あとキスとか愛撫とか……全部教えて欲しい」

 

「わかった」平が微笑んだ。「俺にできることは全部教えるよ」

 

東が加わる。「私も協力する。サトの夢なら応援するしかないからね」

 

「ありがと」佐藤は二人を交互に見つめた。「これで平等な関係になれるかな」

 

三人の間に穏やかな温かさが満ちていった。初めて感じる種類の繋がりだった。恋愛でも友情でもない何か。

もしかしたら依存でも支配でもなく—互いを尊重しながら成長していく関係の形かもしれない。

 

「ところで……」平が話題を変えた。「最初はどうすればいい?」

 

佐藤が答える前に東が割り込んだ。「じゃあ最初のレッスンは……」

 

「レッスン?」二人が声を揃えた。

 

東が誇らしげに胸を張る。「そうだよ!こういうのはカリキュラムをきちんと組まないとダメ!」

 

「そんな大事にしなくていいのに……」佐藤は呆れながらも嬉しそうだった。

 

平が笑いながら提案した。「でも悪くないアイデアだな。実際に教える側としても分かりやすいかも」

 

「じゃあ決まり!」東が手を叩いた。「サト専用・特別エロエロ講座スタート!」

 

こうして奇妙な三角関係が始まった。誰もが主導権を持たず、誰もが教え子であり教師であった。この日から三人の新たな日常が始まろうとしていた。

 

 

 

 

## 後日談:平の憂鬱

 

シャワーの湯が僕の背中を伝っていく。蒸気の中で目を閉じると、ここ数週間の出来事が走馬灯のように浮かび上がってきた。

 

あの日、佐藤に「性行為を教えてほしい」と言われた時から何かが変わった。

 

---

 

「はぁ……」バスローブ姿で鏡の前に立ち、自分の顔をじっと見る。つい最近まで「教えている」つもりだった。佐藤の頬はいつも赤く染まり、細い身体は俺の動きひとつで硬直していた。

あの無防備さが妙に背徳的だった。「俺が何も知らない女の子を犯してる」―そんな歪んだ快感があったのは事実だ。

 

「でも今は違う」独り言が漏れる。

 

最近の佐藤は別人のようだ。いや、最初から別人だったのか? 彼女が本来持っていた才能が開花したと言うべきだろうか。

9:1で圧倒していたバランスが少しずつ崩れている。最初は抵抗してばかりだった彼女の指先が、今は俺の急所を探るように蠢いている。

 

「平……そこ……」

 

今朝の練習で漏らした佐藤の声を思い出す。まだ完全な優位はないが、7:3くらいにはなるかもしれない。そんな予感がした。

 

---

 

約束の時間より少し早くラブホテルに着いた。エントランスで待っていると、佐藤の姿が見えた。黒髪が湿っている。

 

「お待たせ」彼女が低い声で言った。

 

「いや。俺も今来たところ」平静を装いながら答える。

 

部屋に入ると、佐藤はベッドに腰掛け、膝の上で両手を組んだ。今日は彼女主導の"特訓"だった。互いの身体を知り尽くした相手とするセックスではない。未知の領域を開拓していく行為なのだ。

 

「今日はどこか試してみたい部位とかあるか?」平が尋ねる。

 

「そうね」俺は考える彼女の腕を際に取った。「首筋はどうだ?」

 

「えっ?」佐藤が身構える。

 

ゆっくりと彼女の襟をずらし、白いうなじに唇を這わせた。彼女の肩がわずかに震える。無垢だった頃の佐藤なら悲鳴を上げただろう。今は違った。彼女の指が僕の腰に巻きつき、微妙な圧力をかけてくる。

 

「平ぁ……」彼女の息が荒くなった。

 

「敏感なんだな」耳元で囁くと、彼女は小さく頷いた。こんな小さな発見が嬉しかった。かつては一方的に奪うだけだった行為が、今は共に探究する行為に変わっている。

 

ふと東の言葉を思い出した。『平ってホント贅沢だよね。昔の佐藤が恋しいなんて』

 

確かに贅沢だ。あの頼りなく震える少女をもう一度抱きたいと思ってしまう。けれど今の佐藤も悪くない。むしろ興奮さえ覚える。この均衡が崩れる過程を楽しみたいと思った。

 

「次はサトの番だ」そう言って僕はベッドに仰向けになった。「どこを試してみたい?」

 

佐藤の表情が一瞬迷いに曇ったが、すぐに決断したように目が光る。「じゃあ……」彼女の手が俺の腹筋を滑り始めた。

 

 

 

-----

 

 

 

天井を見上げながら思う。昔の無垢な佐藤を恋しく思う自分がいた。しかし今は違う。今の佐藤も魅力的で、新しい一面を見つけるたびに嬉しい。

この曖昧な境界線がいつまで続くのかわからない。けれど今はそれでいい。

 

佐藤の指先が俺の脇腹に触れた瞬間、全身に電流が走った。彼女が小さく笑う声が聞こえた。「平って意外と弱いのね」

 

「いや……サトの触れ方が上手くなっただけだろ」

 

嘘ではない。彼女の指先は以前よりずっと繊細に動いていた。まるで楽譜を読むピアニストのように正確に。

 

「今日はここで終了」彼女が突然宣言した。「明日からまた次のステップだね」

 

「了解」起き上がりながら言う。「いつかサトの方が先生になっちまうかもな」

 

「そうなったら交代制にしましょ」佐藤は冗談めかして笑った。

 

服を直しながら思う。これもひとつの関係の形かもしれない。支配と服従ではなく、教え合う対等な関係。かつて俺が望んでいたものとは違うけれど、今の方がずっと心地いい。

 

ホテルを出る時、「また明日ね」と佐藤が言った。「今度は東も呼ぶわ」

 

「ああ」頷く。「3人での"授業"だな」

 

夕暮れの街並みを歩きながら、ふと考えた。3人の関係はこれからどう変わっていくんだろう。無邪気な東に知識を与え続けながら、佐藤と共に新しい快楽を発見していく日々。そしていつか完全に対等になったら……

 

その時、平は初めて思い描いた。新しい関係性を。

「まあ、それはその時だな」呟きながら空を見上げる。雲一つない青空が広がっていた。

 

 

 

 

 

## 後日談:東の野望

 

鏡台の前に立ち、私は自分の姿をじっくりと眺めた。大きな胸に引き締まったウェスト、ぷりんとしたヒップライン。これは私の武器の1つだと思っていた。でも—

 

「ねぇ、アズ。この角度だとどうなるの?」昨日のラブホテルで佐藤が囁いた言葉が脳裏によみがえる。「こっちだとどう反応する?」

 

佐藤の指先が私の身体を滑るたびに、鳥肌が立った。今まで感じたことのない鋭い刺激だった。彼女の動きには明確な目的があり、効率的で計算されていた。まるで科学者のように。

 

---

 

「8対2かぁ……」独りごちる。

 

最初は9.5対0.5くらいで圧勝していたのに。今では佐藤の"特訓"がかなり実を結んでいる。彼女は単にテクニックを学ぶだけでなく、原理原則を把握しようとしていた。

 

「理論と体験の融合」って奴だろう。数学や物理を極めた頭脳を性技に応用する。こんな使い方をするなんて……まぁ私たちがそうさせちゃったんだけど。

 

---

 

スマホの画面をスクロールしながら溜息をつく。SNSには若いモデルたちが露出度の高い服でポーズを決めている。みんなプロポーションは抜群だ。でも……

 

「私だって負けてない」言い聞かせるように呟いた。

 

これまで性行為といえば本能任せだった。雰囲気に任せて流れのままに。でも佐藤は違う。彼女は相手の反応を分析し、データとして蓄積していく。

 

例えば昨日のこと。「平がこう言う時はどういう気持ちなのか」「東のこの動作は何を意味しているのか」—全部記録して検証するらしい。まるで研究論文でも書いているみたい。

 

---

 

窓際の椅子に腰掛けると、いつか夜のことを思い出した。

 

「東は東だよ」

 

平の言葉は真実だと思う。彼は確かに私を一番愛している。それは常々感じてるし、心から信じてる。でも……

 

「もしサトの方がエッチが上手になったら?」恐怖に似た想像が頭をよぎる。

 

私に残るのはこの身体だけじゃない?大きな胸に引き締まったヒップ、それだけが魅力になる日が来るんじゃないか?

 

---

 

立ち上がり、クローゼットの中の下着を見つめた。どれを選ぶか。色?形?素材?

 

選択肢が多いというのも悩ましい。昔は適当に選んでいたのに、最近は細かく吟味してしまう。平に喜んでもらうためではなく、佐藤との比較材料として。

 

---

 

冷蔵庫を開けながら苦笑する。「これじゃまるで恋敵みたい」

 

実際そうなのかもしれない。平を独占したいという気持ち。そしてそれを押し殺してきた罪悪感。今さら噴き出すなんて……

 

「ばかみたい」

 

携帯が鳴った。佐藤からのメッセージだった。

 

『明日の特訓プラン送るね。あと、アズの新テクも試させてもらえない?』

 

添付ファイルを開くと詳細な計画書があった。ページ数は数十枚。汗をかいた紙の匂いがしそうなほど緻密な資料だ。

 

『もちろん!』返事を打ちながら思う。

 

勝つか負けるかじゃない。どんな状況でも平を喜ばせたい。そのための手段は一つじゃない。本能型の私も、理論型のサトも、それぞれの役割がある。

 

---

 

「でも明日は!」

 

拳を握りしめる。負けられない戦いじゃない。でも負けたくない。自分の価値を確かめるためにも。

 

平がいつまでも私に夢中でいてくれるよう。そして佐藤との関係も壊さないよう。未来のために今日を生きる。それが私の「野望」なのかもしれない。

 

「さて、私も特訓開始!」鏡に向かって自信を持って微笑みかけた。「美人は何やっても映えるものよ」

 

窓を開けると風が吹き込んだ。東の新しい一日が始まる。

 

 

 

 

 

 

## 後日談:佐藤の結論

 

机の上に散らばったノートを眺める。そこには数字とグラフがびっしりと書き込まれていた。平の脈拍数の変化、呼吸のパターン、瞳孔の拡大率……すべてのデータがそこにあった。

 

「ここまでやったのにね」

 

溜息をつきながら椅子にもたれる。半年前から始めた"特訓"。最初は『東に近づければ、東と対等になり、平ももっと喜ばせられるかもしれない』そんな気持ちで始めたはずが——

 

---

 

「サトのテク凄いね!」

 

東が褒めてくれるたびに嬉しさと同時に違和感が湧いた。技術的には確かに上達している。

平のペニスを握る力加減。ストロークのリズムと緩急の付け方。鏡の前で何度も練習した表情管理。すべて平好みに完璧に近づいている。

 

だけど……

 

---

 

「東!」

 

平の叫び声がいつも最後に行き着くのは彼女だった。

 

初めは単なる偶然だと思った。でもデータを集めるうちに明白になった事実——

 

* 平の射精回数:東との場合約8回、私との場合は約5回

* 射精までに要する時間:東相手だと10〜15分、私だと20〜30分

* 復活までの時間:東だとすぐに硬さを取り戻すが、私だと最低5分はかかる

 

統計学的に明確すぎる差だった。倍ちかく離れている。

 

---

 

「やっぱり身体のせいかな……」

 

不安が頭をよぎったこともある。私はスレンダーだし胸も控えめというかほぼない。東のようなダイナミックな体型ではない。平の、一般的な男性の好みは明らかにそちら側だろう。

 

だから試してみた。照明を暗くして視覚情報を遮断する実験。目を閉じた平の反応を比べてみたのだ。

 

それでもやはり勝者は常に東だった。

 

---

 

「やっぱりなにかの変数だよね」

 

パソコンを開きデータベースを更新する。新たな仮説を入力しながら思った。

 

これは身体の問題ではない。もちろん見た目の影響はあるけど決定的ではない。東と私の違いは他にある。

 

---

 

コーヒーを飲みながら考え続ける。技術面では追いついたはず。理論も知識も深い。でも平を狂わせる何かが足りない。

 

そこで気づいた。東が言っていた言葉を。

 

「私はただ素直に平を楽しんでるだけ」

 

そうか——

 

---

 

「完璧主義」の文字を画面に打ち込む。そこが私の弱さなのだ。計算し尽くすあまり余裕を失っている。

 

東のように素直に感じることができない。

 

そして何より大事なことは——

 

「好きだからしてる」その単純な事実。

 

東は常にそれを忘れずにいた。テクニックは二の次。まずは心で抱擁すること。それこそが平にとって最高の媚薬かもしれない。

 

---

 

データを保存して席を立つ。窓を開けると朝陽が差し込んできた。

 

「好きの総量ならアズに勝てるはずもない。勝とうとするのはやめようかな」

 

呟きながら微笑む。もう競争じゃない。私たちはただ互いを愛しているだけ。それが全てなのかもしれない。

 

「でもね」

 

デスクに戻りノートを手に取る。

 

「データ収集は続けてもいいよね」

 

パラパラとページをめくりながら思った。知ることは楽しい。特に愛する人たちのことなら尚更だ。

 

「それに」

 

笑みを浮かべながら次の実験計画を練り始める。

 

「これだけは負けたくないの」

 

それは確かにある種の愛の深さ。あるいは愛情表現の多様性。恋愛ではないかもしれないが、確かな愛がそこにあった。

終わりはない東との「対決」はまだまだ続きそうだ。

窓の外では小鳥がさえずっていた。新しい一日が始まろうとしている。

 

 

 

 

 

 

## 後日談:結局平に聞いてみた

 

テーブルを挟んで向かい合った三人の間に重い沈黙が流れる。東が口火を切った。

 

「あのさ平……単刀直入に聞きたいんだけど」

 

「なんだ?」

平はコーヒーカップを持つ手が止まった。

 

「なんで私の時の方が……早くイくし、沢山イくし……復活も早いの?」

ストレートすぎる質問に平は思わず吹き出したコーヒーを拭った。隣の佐藤は無表情ながらも耳まで赤くなっている。

 

---

 

「まぁ……」

 

平は頭の中で考えを巡らせた。技術は大差ない、どころか佐藤の方が自分のツボを突いてくることが多い。だから技術じゃない。

 

大きく2つある答えのうち、最も大きいものは明らかだった。東は愛する彼女だ。対する佐藤は大好きな女友達。愛は確かにあるが種類も量も違う。

 

けれど平は久々に自分の思考を冷静に制御していた。佐藤に感情面の差を正直に言えば彼女を傷つける。だから選んだ答えは——

 

「東は俺が中学の頃からの付き合いだからかな。中学の頃の憧れの君みたいな」

「えー時間だけー!」東が不満そうに頬を膨らませた。

 

佐藤はじっと見つめた後、小さな溜息をつく。

「つまり……逆転できないってこと?」

 

平は苦笑いして肩をすくめた。

「もう1つの答えは当てたら教えるよ」

 

その瞬間、二人の脳裏に同じ答えが閃いたらしい。東と佐藤は顔を見合わせた。だが東が先に口を開く。

「じゃあ今日も証明してもらうわ」

「待って今日は私が最初」佐藤も食い下がる。

 

平は両手を上げて降参のポーズを取りながら笑った。

「どっちからでもいいけど……」

「いや待って順番決めよう」東が立ち上がった。

「ジャンケン?それとも……」佐藤の目が光った。

 

いつもの調子に戻った三人。悩みや疑問があっても夜は必ず来る。そして明日もまた笑いながら過ごすのだろう。

「さぁ行くぞ!」平が勢いよく立ち上がった。

「おっしゃー!」東も続いて拳を突き上げる。

「ちゃんと記録取るからね」佐藤が冷静にメモ帳を広げる。

賑やかな夜が始まりそうな予感とともに、平は静かに願った。

この幸せな日々がずっと続きますように——と。

 

 

 

 

 

 

## エピローグ:佐藤の起死回生

 

### 愛情の総量

 

「……やっぱり私には勝ち目がない」

 

深夜のノートに涙のようなインク跡が滲む。技術も知識も蓄積してきた。けれど肝心なものが足りない——愛。

 

「だってアズは中学時代から平を見つめ続けている。私は高校で出会っただけ。年月が違う」

 

時計の針が午前二時を指す。東の部屋からは微かに笑い声が聞こえてくる。今頃また二人で睦み合っているのだろう。嫉妬よりも虚脱感が募る。

 

「平の言った『中学からの付き合い』という言葉……本当は違うことくらい私にもわかる」

 

彼は敢えて触れなかった核心——感情の質と量の差。それは科学的法則のように覆しようがない事実だった。

 

「でも……だからといって諦められない」

 

ペンを握る指に力が入る。

 

「愛情の総量で敵わないなら別の角度から攻めればいい」

 

そう呟いた瞬間、頭上に蛍光灯が灯るように閃きが走った。勝算はゼロじゃない。

 

---

 

### 佐藤の新しい計画

 

翌朝、朝食の場で提案した。

「ねぇ、アズ……ちょっと相談があるの」

「どうしたの?急に改まって」

東は焼きたてのパンを頬張りながら首を傾げる。

「私との勝負を保留にしたいって言うの?」平が珈琲カップを持ち上げた。

「保留なんて生ぬるいわ」

「どういうこと?」東の瞳が好奇心で輝く。

「私はアズと平の間に入るつもりはない」

「え?」平が驚きの声を上げる。

「私は……」佐藤はゆっくりと言葉を選ぶ。「私はアズを攻略する」

 

東の手からフォークが落ちた。

 

「攻略って……?」

「文字通り」佐藤は真摯な眼差しで二人を見る。「私はアズの悦楽を徹底的に分析する。快感の頂点を記録し解析する。そのプロセスにおいて……私はアズの一部になれる。アズを通して平を愛するわ」

 

東は混乱した表情を浮かべたまま紅潮していく。

「よく分からないけど……サトが私を気持ちよくさせるってこと?」

「簡単に言えばそう」

 

平は眉を寄せながら口を開く。

「で……その結果、俺はどうなるわけ?」

「何も変わらないわ」

「変わらない?」

「そう」佐藤は挑発的な微笑みを浮かべた。「アズと平は恋人同士のまま、アズと私のデータがただ増えていくだけ。ただアズは変わっちゃうかもね?」

 

その言葉に東と平は同時に息を飲んだ。

 

---

 

### 最初の実験

 

「準備はいい?」

薄暗い寝室で佐藤は東の肩に手をかける。東は緊張と好奇心が入り混じった表情で頷いた。

「記録開始」佐藤の指が防水型タブレットの画面を滑る。「心拍数上昇……呼吸周期増加……体温0.5度上昇」

「な……なんか緊張するなぁ」

「自然体でいいから」佐藤は静かに指を這わせる。「ただ私を感じて、アズ」

 

平はリビングでニュースアプリを眺めながら耳を澄ます。廊下越しに微かに聞こえる声の質が変わり始めた。

 

時折東の悲鳴が割り込む。

「サト!そこダメだって言った……っ!」

「駄目じゃないでしょ。イイんでしょ?」

「でもっ……」

「ほら、ここの数値が反応してる。アズの口が、私のキスを欲しがってるのがデータでも分かるわ」

「ちょ……そんなの記録しないでぇっ!」

「ダメ、詳細なデータが必要なの」

「そんなこと言われてもぉ〜!」

 

平はスマホを伏せると立ち上がり台所へ向かう。冷蔵庫から缶ビールを取り出しプルタブを開けた瞬間—

 

「ああああああっ!!!!」

 

東の地響きのような絶叫に手が止まる。慌てて廊下を駆け戻る途中でドア越しに聞き取れた声。

 

「サトすごい……こんな感覚初めて…かも…」

「そろそろ記録容量が……」

「サトちょっと待って!まだイッてる途中なのにぃっ!」

「波形が安定しない……採取方法を再考する必要が……」

 

平は呆然と壁に背中を預けた。あの冷静沈着な佐藤が東の研究に熱心すぎて頭がオーバーフローを起こしているらしい。俺には止められないな。

 

「平〜っ!助けて〜っ!」

「これは……マジで命の危機かもしれないんだよ~っ!」

「冗談じゃなくて本気でヤバいってば〜っ!」

「女同士だからエンドレスに続くしさぁ〜っ!」

 

平は小さく笑うと踵を返した。

「勝手に楽しんでくれ」

「裏切り者ぉ〜っ!」

「この実験の有用性を示さなければ……」

「もういいから休憩させて〜っ!」

 

缶ビールを一口含むとほのかに酸っぱい。きっとこの先毎晩同じ味を噛み締めることになるだろう。

 

---

 

### 新しい均衡

 

三週間後の夕食時。

 

「サト、成果はどう?」平は東が作ったオムライスを頬張りながら尋ねる。

「素晴らしいわね」佐藤は白衣姿でノートを広げた。「これまで観測できたピークは92%だったが現在99%まで到達可能」

「あのね……」東はスプーンを持ち上げたまま半泣きの表情。「ほとんどイキっぱなしで拷問レベルなんだけど……」

「正確には刺激パターンの最適化による快楽最大化」佐藤は誇らしげに胸を張る。

「要するにサトの責めが的確でエグいってことだろ」平が自嘲気味に割り込む。「俺の出番はなくなったってことでもある」

「それは誤解」

「どうして?事実だろ?」

「これから二人同時のパターンも試したいから」

「嘘でしょ!?」東が椅子から飛び跳ねる。

「平の持久力、回復力と私の精密刺激を組み合わせれば理論値100%を超える可能性があるわ。快楽には上限がないかもしれない」

「サト……これ以上はお願いだから勘弁してぇ……」

 

佐藤は少し寂しげな笑みを浮かべた。

「私はただ……あなたたちの輪の中にいたいだけなの…ずっとね」

 

その瞬間、平と東が顔を見合わせる。言葉の奥に潜む孤独を理解したようだった。

 

「分かったよ。でも毎回記録されるのはなぁ」

「当然デジタルデータは記録、保管し続けるけど…」

「親友とのハメ撮りが趣味とは業が深いな、サト。…今度2人のやつ見せて」

「公開禁止!断固拒否!」

「将来的には研究資料として学会にも……」

「それはやめてぇ~!」

「分かってるルール②違反でしょ、冗談よアズ」

 

佐藤の目尻に涙が光る。それは悲しみではなく達成感の涙だった。ついに自分だけの居場所を見つけたのだ。

 

「明日は三人で実験するわ」佐藤は決意を込めて宣言した。「新規パラメーター追加で120%を目指しましょう」

「そんなバカな、話が勝手に進んでる……」東が青ざめる。

「まぁまぁ」平は軽く肩を叩く。「これも大切な思い出になるさ」

「思い出だけで終わって欲しいよぉ〜!」

 

窓の外では宵闇が深まっていく。三人の奇妙な三角関係は新たなフェーズへと移行した。かつての不安や対抗心は溶け合い、互いの弱点すら価値となる新しい世界へ—

 

佐藤はノートを閉じながら誓う。

「私は絶対に負けない……彼らと共に生きるために」

 

その夜もまた長い実験と共に東の悲鳴が轟こうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

---

 

 

 

 

## エピローグ後の後日談:東の嫉妬

 

## 東のモノローグ。

 

 

私はあえて嫉妬を隠さない。

 

自分の中に鬱屈とした気持ちを溜め込みがちな性格であることをよく知っているから。

 

だから私は、「平、サトばっかり可愛がってずるい!」とか「サト、私より先に平との赤ちゃん作っちゃヤダよ!」とあっけらかんに言う。

 

溜め込んでもいいことなんて一つもない。勿論性欲もね。

 

 

だから私は全力で今を楽しむことにしているんだ。でも、でもね。あれは予想外だったなぁ……。

 

 

ある日の夜、サトが珍しく私と二人でエッチしたいと言ってきた。勿論即OKしたよ。

 

シャワーを浴びてワクワクしながら、全裸でベッドに座って待っていた私の後ろから、サトが同じく全裸で抱きしめてきた。

 

 

サトは耳元で「今日は私がアズの後ろ、犯すね」と言いながら双頭ペニスの片側の先端を自分の膣に入れ、もう一方の先端を私のアナルにあてがってきた。

 

私は媚びるように、しかし期待するように「サト、そっちはまだ初めてなの……。だから最初は平に上げたいんだけど……?」と懇願するとサトは天使のような微笑みで笑い、

 

 

「私の処女はアズに上げたよね?だからアズの処女も私に頂戴」

 

 

そう言って先端をアナルに突き入れてきた。

 

 

「んんっ!」

 

冷たいシリコンの感触が肛門の輪を押し広げる。サトの体温で温まった部分はすでに滑らかなのに、裏側は浴室の空気に晒されていたのか少し冷たい。それが逆に意識させられる。

 

 

「やっ……痛っ……サト待って……」

 

必死に振り返るとサトの顔がそこにあった。いつもの冷静さとは違う、獲物を見つけた獣のような鋭さと興奮が滲んでいる。

 

「大丈夫。ゆっくりやるから」

 

 

嘘つき。彼女の声にも余裕なんてない。明らかに自分の欲望に従って動いているだけだ。

 

膣内の玩具がサトの呼吸に合わせて脈打つ。いや、それは彼女の子宮が震えているせいだ。私の中に押し込まれるほど彼女の内部でも同じ振動が生まれているはずなのに。

 

 

「力を抜いて」

 

サトの手が肩を押さえつけながら優しく撫でる。矛盾した動作に混乱する。もっと丁寧にしてくれたら安心できるのに。けれど……

 

 

「サト、これ以上は無理だよ……」

 

 

言い終える前に彼女が体重をかける。ずぷり。半ば強引に第一関節分くらい飲み込んだ感触があった。押し開かれる痛みと不快感。腸壁が押し上げられて胃が気持ち悪い。

 

 

「ふぁ……サト……お願い……休憩させて……」

 

 

返事のかわりに彼女が顔を寄せてきてキスをした。舌を絡めながら右手で私の胸を揉みしだく。左指はクリトリスへ伸びていき、円を描くように優しく愛撫してくる。

 

 

「あっ……そんなことしたら……んぅ……」

 

 

意識が分散した瞬間を見計らってさらに深く挿入された。二度目の侵入はさっきよりスムーズだったものの抵抗感は変わらない。むしろ腸内の空気が押し出されて変な音がする恥ずかしさの方が勝る。

 

 

「ねぇ……なんか音してるよぉ……」

 

 

小声で訴えればサトが唇を離して笑った。「可愛い。気にしないで」

 

 

そのまましばらく静止して慣らそうとしてくれるけど緊張感は消えない。何より肛門の痛み以上に不安が募っていく。もしも途中でサトが我慢できなくなったら?

 

 

「ねぇサト……私の中でまだ激しく動いちゃダメだよ……?」

 

恐る恐る確認すれば意外な返事が返ってきた。

 

「どうしようかな」

 

 

挑発的な目つきと共に腰を軽く前後に揺らす。ほんの僅かな動きなのに凶悪な刺激となって襲ってくる。内臓を直接擦られる感覚。吐き気とも違う違和感と排泄感の入り混じった未知の領域へ押し込まれていく。

 

 

「待ってまって待って待って!!まだ早いって!!」

 

 

悲鳴に近い叫びも届かないらしい。サトの瞳孔は完全に開いて獲物を狩る狼みたいだ。いつも理性的な彼女からは想像つかない獰猛さにゾクッとする反面恐怖心もある。

 

 

「そんなに怯えなくていいよ。私はただ……」

 

そこで一旦言葉を区切り耳元へ口を寄せる。

 

「アズを全部欲しいだけ」

 

 

低い囁きと共に一気に貫かれた。

 

「―――っ!!」

 

 

衝撃的な質量が腸管を満たしていく。サトの下腹部から伸びる疑似ペニスが丸ごと納められる瞬間まで抵抗なく侵入してきた。そして停止した。

 

 

「全部入っちゃったね…アズのお尻に…」

 

彼女の息が首筋にかかる。汗ばんだ肌同士が吸い付くように密着していて熱い。私は放心状態だったけどサトの鼓動が背中越しに伝わってくるのを感じていた。

 

 

「動かしていい?」

 

許可なんて求めなくてもわかっているくせに聞くところが憎らしい。でも今は拒否権を持ってないのも事実。

 

 

「……ゆっくり……にして……ね…?」

 

 

それが精一杯の譲歩だった。彼女の膝の上でM字開脚させられ拘束されているような状況では選択肢も少ない。

 

そして最初のひと突き。

 

「あああっ!!」

 

 

予想外に深い。入口付近で擦られただけかと思いきや鋭角的に折れ曲がった形状によって直腸奥まで届いているみたいだ。しかもサトの方は自分の膣内にも同じモノが入り込んでいるわけで……

 

 

「サト……苦しくないの……?こんな……奥まで……」

 

 

質問への答えは喘ぎ声だった。

 

「大丈夫……アズの中あったかくて……気持ちいい……」

 

そう言ってさらに深く押し込みながら腰使いを大胆にしていく。

 

 

「やっ!サトやだぁ!そこ当たって……当たってるからぁ!」

 

 

背中側の壁を押し潰される度に脳髄まで響くような振動が走る。痛みと快楽の境界線が曖昧になる中で確実に身体は順応しつつあった。

 

 

「あっ……なんだか……変な感じがする……」

 

 

初めは異物感ばかりだったのに次第に疼きが伴ってくる。腸壁越しに膀胱と子宮口を交互に叩かれているせいだろうか。いつしか息遣いが荒くなり始めている自分に気づいたときにはもう手遅れだった。

 

 

「アズ……声変わってきてる……気持ちいいんでしょ……?」

 

後ろから両手で胸を掴まれ揉みしだかれる。先端を指先で捏ねくり回しながら唾液で湿らせるように舐められるのが堪らない。

 

 

「ふぁ……ダメぇ……サトそれヤバイよぉ……」

 

否定しても身体は正直だ。指先一本動かせずされるがままだというのに蜜壷からは絶えず雫が溢れてシーツへ垂れている。

 

 

「ほら見て……私の中もこんなに濡れてるよ」

 

サトの股間へ目線を導けば確かに透明な粘液が糸を引いていた。そしてその源流は私自身でもあるという事実にも気づく。結合部から滴るそれはどちらの分泌物なのか判別不可能なくらい混ざり合っていて……

 

 

「私たち……つながってるんだね……」

 

うっとりとした呟きと共に最後の一撃を放つような勢いで押し込まれる。これまで以上の深度で腸内最奥部をノックされた瞬間火花が散った。

 

 

「ん゛お゛ッ!!」

 

汚い声が出たと思った刹那全身を電流が走り抜けていった。足の先までピンと伸びきったまま硬直する。何も制御できない感覚の中で唯一わかるのは強烈な解放感だった。

 

 

「すごい締め付け……初めてのお尻でイっちゃったんだ……」

 

サトの声も上擦っている。明らかに限界を迎えつつある様子だけど止める気配はないようだ。むしろ逆効果だったようで動きが加速する。

 

 

「私も……そろそろ限界かも……一緒に……イこ……?」

 

懇願される必要なんて無かった。今さら拒む理由もないし何より私も終わりを求めている。

 

 

「来てぇ……サト来てぇぇ!!」

 

叫ぶと同時に強く抱きしめられる。皮膚と皮膚の境目もなくなるほど密着した状態で上下運動が始まる。腸内の温度とサトの体温と興奮で発汗量が増加するにつれ室内湿度が上昇していく錯覚を覚えるほどだった。

 

 

ラストスパートに入る直前サトが囁いた。

 

 

「愛してる……アズ……」

 

私も同じ言葉を返そうとした矢先に突き上げられた。

 

「あァァアッ!!!」

 

絶頂寸前まで押し上げられた直後サトも果てたらしい。膣内の玩具を通じて伝わってくる痙攣を直接受け取りながら私も二度目の頂点に達した。

 

 

 

-----

 

 

私は意識が朦朧とする中で「サトばかり可愛がっちゃダメ」と言っていた自分の台詞を思い出した。

 

いま、全力でサトに可愛がられている私のこの矛盾した発言に自分でも呆れる。でも今はそんなことどうでもいい。

 

 

サトとキスしたくて、後ろを振り向いてサトに懇願する。「サトぉ、キスして……お願い……」と最大限媚びた声が出るように、サトに上目遣いを送る。

 

この瞬間だけは理性なんか関係ない。ただ目の前の快感だけを求めている。

 

 

サトは「アズ……あなた散々私に煽ってるとか天然のタラシとかいうけどさぁ……ホント、アズって」と言いながら唇を強引に奪ってくれた。

 

柔らかな唇の感触が心地よくてつい夢中になる。互いの舌が絡み合い唾液が混ざる音だけが響く。後ろからサトの腕が胸に伸びてきて乳首をつまみ上げる。それだけで全身が痺れるような快感が走った。

 

 

「ふぁ……サト……もっと……」

 

 

その時だった。

 

 

「ホント、東、煽りすぎだよな」

 

 

低い声が聞こえたかと思うと、突然膣に強引にペニスが突き込まれた。よく知っている感覚—平だ。サトとのキスに夢中になっていたせいで前から来てた平に全然気づかなかった。

 

 

思った瞬間、前から平が強引にピストンを開始して私の膣内を好き放題かき混ぜる。後ろからは私にキスをしたままサトがアナルを人工ペニスでかき回す。

 

もう何が何だかわからない。上下左右から襲いかかる刺激で思考回路がショート寸前だ。

 

 

「ちょっ……待って……サトも平も……急すぎ……って!」

 

 

抗議の声も虚しく二人の動きは止まらない。前から後ろからリズムの違う抽送を受け入れるたびに頭の中で星屑が飛び散る。特に平の突き方は容赦がなく奥深くまで抉ってくる感じがして怖いくらいだ。

 

 

「ああんっ!サト!平!どっちもダメぇっ!」

 

 

「ダメじゃないだろ?」平が耳元で囁く。「こんなに締め付けておいて」

 

彼の言葉通り私は無意識に収縮を繰り返していたらしい。サトの方も負けてない。短い黒髪を揺らしながら腰を使い、時折クリトリスまで弄ってくるからたまったものじゃない。

 

 

「サト……そこ弱いからぁ……」

 

 

泣きそうな声で訴えても聞き入れてもらえなかった。むしろ嬉しそうに笑みを浮かべながら執拗に攻めてくる。そんな彼女の姿に背徳的な興奮すら覚えてしまう自分が恨めしい。

 

 

「平……もっと激しくしてあげて……お願い……」

 

サトが切羽詰まったような声で頼み込む様子は新鮮で驚いた。彼女も相当昂ぶっているみたいだ。そして平もそれに応える形でピッチを上げる。

 

 

「サト……お前もエロすぎ」

 

彼は苦笑交じりに言うと突然、私越しにサトの肩を掴んで引き寄せると、サトにキスをする。

 

 

「あー、サトずるーい。私も平とチューしたい!」と私は抗議の声を上げるが、嬌声混じりの甘え声なので全然迫力なんて出ない。

 

むしろ自分でも恥ずかしくなるくらい媚びた声が出てしまって顔が火照るのが分かる。

 

 

サトは私を後ろから抱きしめたまま楽しそうに笑う。「アズ、この前言ってたよね?私より先に赤ちゃん作らないでって?」と耳元で囁いてくる。

 

 

その言葉にゾクッと背筋が震えた。確かに言った。でもまさかこんな展開になるなんて思ってなかった。

 

 

「じゃあさ、今作っちゃえばいいじゃん?ねぇ平?」とサトが平に目配せを送る。平は私を見て眉間に皺を寄せている。けれどその瞳の奥には明らかな欲望が燃えていた。

 

 

「ほらアズ、私の前で子作り見せてよ。私、アズとキスしながら、アズが孕む瞬間見たいなぁ」とサトが私の口内に唾液を流し込みながら言う。冷淡な口調とは裏腹に興奮しているのが伝わってくる。

 

 

「お前ら二人とも煽りすぎだしエロ過ぎなんだけど!東、本気で孕ませていい?」と平が呻くように言いながらさらに腰の動きを激しくする。もうそろそろ限界だろう。彼の呼吸が速くなっている。

 

 

「平…ダメ……サトに受精するとこ見られちゃう」と我ながらわざとらしい甘え声を出しながらも二人がピストンしやすいように本能的に腰の位置を調整してしまう自分に呆れる。

 

 

「アズー!あんたのこんな姿、絶対他のやつらに見せちゃダメだからね」と嫉妬混じりに後ろからピストンしてくれるサト。彼女の爪が私の背中に食い込む痛みさえ快感に変わる。

 

 

「ホントだな。一生俺たちの前だけでしか見せるなよ東」と前からフィニッシュに向けて強引に腰を動かす平。その命令口調が妙に似合っていてドキドキする。

 

 

「うん……ずっと……一緒……だから」と息も絶え絶えな私に前後から二人がほぼ同時に体液を放出してくれた。サトの愛液と平の精液が私の中で混ざり合っていく感覚。

 

ああ……幸せ。こんな風に愛されるのが私の運命なんだと思えてくる。

 

 

「アズ……大丈夫?」とサトが優しく頬を撫でてくれる感触。でも私はもう言葉を紡ぐことができなくて。

 

「疲れただろ……ゆっくり休めよ」と平の掠れた声だけが遠くから聞こえてくる気がした。ああ、なんだか眠くなってきた……

 

 

完全に意識を手放す前に二人の囁き声がかすかに耳に入った。

 

「やっぱりアズったら最高」「俺らには勿体無いくらいだな」「絶対離さないよね。ねえ平」「当然だろ」「私たち三人なら……きっと」

 

そんな会話の断片と共に私の意識は深い闇の中へ沈んでいった。

 

 

目覚めた時どんな朝を迎えるのか想像もつかないけれど、少なくとも今夜だけは世界一幸せな女の子なのだと信じて疑わなかった。

 

 

 

 

-----

 

 

 

 

 

 

# エピローグ後の後日談:佐藤のコンプレックス

 

 

私は自分の身体に自信がない。常に隣にいるのがプロポーション抜群のアズだから当然なんだけど。

 

 

私は鏡の前に立ち、自分の裸身を見つめる。

 

小さすぎる胸、薄っぺらな腰、幼児体型とも呼べる私の身体。

 

幻影のアズと比較してしまう。あの整った顔立ちにバランスの取れた肢体。何より彼女が持つ自信。

 

 

「サト、あんた鏡見たことある?私が男ならメッチャ抱きたい身体No.1なんですけど」

 

疑っちゃうけどアズは本心で言ってくれてるとは思う。でも本当にそうなのかな。

 

 

ベッドに戻ると、平がいたずらっぽい笑みを浮かべて私の身体をマジマジと見ていた。

 

「サトってエロいよな。自分で思ってるよりずっと」

 

「うるさい、エロ平」

 

 

腕を掴まれ引き寄せられると、優しくキスが与えられた。布団の中で肌が触れ合う。

 

彼の温もりが伝わってくると同時に、言い訳できない気持ちよさに身体が反応してしまう。

 

 

「また私のことからかって……」

 

「からかってないよ。本気でそう思ってる」

 

 

その言葉に嘘はないように思える。

 

平は私を抱きしめながら優しく背中を撫でる。くすぐったいけど気持ちいい。

 

 

「サトの身体って本当に不思議なんだよな。見るからに細いのに触ると柔らかくて……体温も高くて気持ちいい」

 

 

そんな風に言われても素直に喜べない自分がいる。

 

結局私はアズと比べてしまうから。

 

 

平が続ける。「俺はサトの身体の方が落ち着くんだよな。東みたいな体型も勿論好きだけど、サトはどこか安心できるっていうか」

 

 

それは褒め言葉なのか微妙なラインだったけど、なぜか少し嬉しかった。

 

平の手が私の腰に回され、そのままゆっくりと引き寄せられ、平と座位で繋がった。

 

 

「サトの乳首って敏感だよな」

 

平が耳元で囁く。その言葉に反応するように、自分の小さな胸の先端が固くなるのを感じる。

 

 

「軽く摘まんだだけですごく固くなって、もっともっとって触ってほしそうに主張してる」

 

 

「イヤぁ……そんなことない……」

 

 

自分の意思とは裏腹に、声が甘くなってしまう。身をよじる動きは拒否ではなく、むしろさらなる刺激を求めているように見える。

 

 

「可愛い声出すじゃん」

 

平の指先がさらに執拗に乳首を刺激してくる。舌先で転がされると、もう我慢できない声が溢れてしまう。

 

 

「あっ……やだっ……」

 

 

そうするとますます平が調子にのるのは分かってるのにね。

 

 

「次はこっち」

 

平は私の背中に手を回し、優しく抱き寄せる。そして耳元で囁いた。

 

 

「サトの、このすっぽりと収まる上に全身柔らかくて最高に抱き心地よくて、俺は好きだよ」

 

 

言葉も出ない。

 

私はアンタの抱っこちゃん人形か!と抗議の声を出したいんだけど、抱きつぶされ、蕩ける快楽に身体を震わせてしまう。ただひたすら平の腕の中で溶けていく感覚だけが残る。

 

 

「でもなにより」

 

平はさらに深く私を貫いた。

 

 

「サトの膣って欲張りだよな。突き入れるとすごく抵抗して痛いくらいなのに、抜こうとすると逆に物欲しそうに食いついてくるんだから」

 

 

その言葉に反応するように、私の身体はさらにきつくペニスを締め上げていく。

 

 

「あっ……ダメぇ……」

 

 

「ダメって言いながら締め上げてくるなんて……本当にサトってエロいよな」

 

 

「違うの…体が…勝手に……」

 

 

言葉にならない言い訳をしながらも、私の身体はますます熱くなっていく。

 

 

そして次の瞬間、平は大量の精液を容赦なく私の子宮へと流し込んだ。

 

 

「サトの子宮に沢山俺の精子が流れ込んでいってるけど?感じてる?東とどっちが先に孕むかな?」

 

そんなことを言われると……

 

恥ずかしさと共に何故か少し嬉しい気持ちが湧いてくるし、身体は勝手に平のペニスを締め付けている。

 

 

私は上目遣いで「平のよわよわ精子で妊娠なんかしないよ~だ」って平を睨んでるんだけど

 

多分今私すごい蕩けた顔してるんだろうな……

 

これじゃ平の嗜虐心そそっちゃうじゃん……

 

分かってるのに煽る口調が止められない「ホラ、出来るもんなら何回でも種付けしちゃえばいいじゃん」

 

この後、何回犯されるんだろ。期待が膨らみ、私は唾を飲み込んだ。

 

私の膣内で平のペニスがまた硬くなり始めているのを感じる。

 

これからまた始まるんだろうな。何度も何度も平の気が済むまで。

 

「ねえ平、できたら産んだげる、からさ。………好きだよ、勿論友達としてね」

 

平の耳元で媚びた本心を吐く私。ああ、膣内に熱い放出を感じる。もっと、もっと出して、平。

 

 

-----

 

 

平の膣内射精も5回を越えたあたり、私は平にかじりつきながら朦朧とした頭で考える。

 

それにしても、平は遠慮なしに私の膣内に何度も射精してくる。

 

最初は量と回数は多いけど種なし?って疑ってたんだけど

 

精子の活きはよく運動量も半端ないことはデータが証明している。

 

 

これじゃあ、すぐに私もアズも妊娠しちゃうだろう。

 

と考えつつ、ピルやゴムはしない私たち。全てを自然に任せている。

 

アズの赤ちゃんならすごくかわいいだろうし、アズも私の子供早くみたいなーと言ってくれる。

 

 

大学生活と子育ての両立は難しいかもしれないけど、私たちが協力し合えば何とかなるだろう。

 

平はそんなこと気にしなくていいとか言ってるけど。

 

 

そんなことじゃないだろ、お前は早くアズにプロポーズしろよ、と私はヤキモキしてる。

 

アズも平も「3人だし、結婚とか形にこだわらなくいいんじゃない?」って。私ばっかりが焦ってる気がする。不公平。

 

 

アズはいつもマイペースだ。平だってガンガン攻めてくるだけ。

 

なのに私だけがこんなに悩んでるなんてズルい。

 

 

まあ仕方ないか……私は二人の事が大好きだし…愛してる…と思う。

 

何より三人でいる時間が居心地良いのは確かだから。

 

 

でもやっぱり……

 

ちゃんと将来のことも考えて欲しいなあ。

 

今度、多重婚できる国調べてみようかな?何事も備えあれば憂いなし、だよね。

 

平の6回目の射精を奥深くで受け止めながら、私の思索は千々に解けていった。

 

 


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