ビーストマン一族が打ち倒されても、魔軍の侵略は止む事はない。
今日も、街の中央、大手銀行ビル手前の広場で魔法少女の孤独な戦いは続いていた。
「く……!」
『無様な姿だな、セイントキャリバー・ツクヨミ!』
広場の中央で、刀を杖のようにして膝をつくのは現役最強魔法少女、セイントキャリバー・ツクヨミ。
そんな彼女を見下ろすように勝ち誇るのは、呪術魔軍幹部“千手のテンタクル”。青い鎧姿の隙間から、本隊である無数の黒い触手をあふれさせるテンタクルは、ボロボロの魔法少女を前に勝ち誇っている。
「くそ……」
『おっと、妙な気を起こすなよ、ツクヨミ。お前が俺に武器を向けた瞬間、人質のガキどもはオダブツだ! それでもかまわないというなら話は別だがな?』
そういってテンタクルが杖で床をここんと叩くと、空中にいくつもの映像が投影される。
そこには、まだ幼い子供達が、どことも知れない場所に拘束されている様子だった。檻の中に閉じ込められた彼らの周囲には、不気味な魔蟲が這いずり回っている。
早い話が人質である。テンタクルの意思一つで魔蟲は子供に襲い掛かり、その命を奪うだろう。
今も魔法少女のバックアップである自衛隊が全力で人質の場所を捜索しているが、発見にはまだ至っていない。
「卑怯者め……っ」
『けっけっけ、誉め言葉だなあ?』
射殺さんばかりの視線を浴びても、絶対的優位にあると確信しているテンタクルは動じない。彼は見せつけるように中継映像を展開したまま、ジリジリとツクヨミににじり寄った。
『まずはその物騒な剣を折り、その装束をひっぺがし! 衆人環視の中で思う存分可愛がってやろう……くくく! 安心しろ、俺はビーストマンどもと違ってテクニシャンだ。すぐに天国をみせてやる』
「く……この、外道めが……!」
怪人に嫌悪を露にしながらも、ツクヨミはその場を動かない。少しでもこの怪人の機嫌を損ねれば、子供達の命はない。耳元のインカムからは人質を無視して攻撃しろとの指示が出ているが、彼女はそれを無視した。
少しでも時間を稼げば。その間に、自衛官達が人質を発見し、救出してくれれば……その一心で堪えるツクヨミに向けて、シュルシュルとテンタクルが触手を伸ばした。
『さあ、お楽しみタイムだ……!』
「うぅ……っ!」
迫る触手に、ツクヨミが硬く目を閉ざす。
その時だった。
「セイントミラー・ショット!!」
突如として、無数の魔力弾がその場に降り注いだ。
それは正確にテンタクルの触手を撃ちぬき、さらに本体へと着弾する。
『うごべばあ!?』
衝撃に吹っ飛んでひっくり返るテンタクル。ツクヨミははっと顔を上げて、声が聞こえてきた方向に目を向けた。
そこには、一人の魔法少女が立っていた。
青いドレスの上から白いエプロンドレスを羽織り、脚には丸みのある可愛らしいローファーブーツ。髪は金のツインテールで、瞳はエメラルドのような碧眼。うさ耳のついたカチューシャをぴょこん、とさせてコンパクトを手にする、その少女の名は。
「人の夢は世界の未来……セイントミラー・アリス! ここに見参!」
「君は……新しい魔法少女!?」
『なんだとお!?』
驚嘆するツクヨミとテンタクル。そんな二人にアリスはビシッと決めポーズをとると、高らかに宣言する。
「私が来たからにはもう大丈夫! 悪者め、覚悟しなさい!」
「ま、まってくれ、まつんだ! 奴は人質を取っている、迂闊に手を出したら、子供達が……!」
『ケケケ、そういう事だ。何人こようが同じこと! それともてめえに、人質を見殺しにする覚悟があるのかな!?』
例え戦力が増えても状況は変わらない、そう嘲笑うテンタクルに、アリスはしかしコテン、と首をかしげて見せた。
「人質? なんのことかなー?」
『何?』
「自分で出した映像見て見なさいよ。人質なんて、どこにいるの?」
言われてはっとして映像に目を向けるテンタクル。そこには空になった檻と、射殺された魔蟲の姿が映るばかり。
『げげえ!? ガキどもが全員いない!?』
驚嘆するテンタクル。同時に、ツクヨミのつけたインカムに自衛官からの連絡が入った。
『聞こえるか、ツクヨミ。こちらで人質五人を無事救出した』
「……5人? 人質は4人だったはずでは……」
『奴が本当の事を言っていなかったという事だ、ずるがしこい奴だ。礼なら、そこに居るセイントミラー・アリスとやらに言ってくれ。彼女の情報で、無事に人質を救出できた』
はっとしてツクヨミが顔を上げると、その視線を受けてアリスがにこやかに笑う。彼女はツクヨミの元まで歩いてくると、手を伸ばして彼女を引っ張り起こした。
「そういう事ですから、もう遠慮する事はありません! 先輩の力、存分に見せて下さいね」
「……ああ!! 礼を言う!」
『ち、畜生! 人質なしでも、お前らになんぞ負けないぞ……!』
策を破られたテンタクルが、ムキになって攻撃魔術を二人に向かって繰り出す。それを二手に分かれて回避する二人。
「人質が居なければ、お前なんか! 食らえ、聖剣雷轟、ホーリー……キャリバー!!」
「私も! 行きますよ、必殺、セイントミラーフォース!!」
『ぐわああ!?』
二人の魔法少女によって撃破される怪人テンタクル。その爆発を背に、二人の魔法少女はグッと友情の握手を交わした。
「セイントミラー・アリスといったか。これからよろしく頼む」
「はい、先輩!!」
こうして、ここに新たな魔法少女が生まれた。
不思議な力を持つ、新戦士セイントミラー・アリス。
心強い仲間を得て、セイントキャリバー・ツクヨミはこれからの戦いに思いを馳せるのであった。
だが。
「(ふふふ、これでデビューはバッチリ。ブラボールさんのお願いを叶えるためにも、これからも頑張らないとね)」
期待の新人とされる少女。
彼女の本当の秘密を、今だ、知る者は居ない……。
あとがき
という事で、魔法少女★セイントミラー・アリス、第一部完結です。
魔法少女の謎とか魔界が亡びそうになってる理由とか物語としての謎はまだまだ残されていますが、本筋である「魔法少女がえげつない快楽調教で快楽堕ちする」という本筋は書けましたので作者的には満足しました。
いかがでしたか?
久しぶりに書きましたが官能小説はやっぱ難しいですね。息遣いとかリズムとか単調にならない言葉遣いとか。これからも精進したいと思います。
せっかく完結したので、良かったら感想とか評価とか頂けるとうれしいですー。
ではでは。