全裸のまま私は来た道を戻り、静かにお兄ちゃんの部屋のドアを開ける。
するとなにやらぶつぶつと呟きながら座り込んで何かをしているようだった。
「しくったなぁ……こんなことなら溜め込むんじゃなかった。絶対臭い残ってる……いや、でもさっき部屋入って何も言わなかったよな。意外と匂い残ってない?」
どうやら自分が出したオナティッシュの片づけをしているようだった。
耳に届いてきた言葉に、そんなことはないよと心の中で突っ込む。今更窓を開けても濃厚なスメルはそこら中にしみ込んでいる。だから空気の入れ替えをしても焼け石に水。
よほど慌てていたのか、さかさまになったゴミ箱と大量のオナティッシュが入ったビニール袋とそれら周辺に散らばる丸まったティッシュを見るに、一度にビニール袋へ入れようとしてぶちまけてしまったのだろう。今じゃ必死に散らばったティッシュを掴んでは、ビニールの中へと突っ込んでいる。
私は気づかれないようにこっそり近づき、ビニール袋を掴む左腕に身体を密着させながら集中しているお兄ちゃんの耳元で艶めかしく囁いた。
「なぁにしてるのお兄ちゃん♡」
「うおぉお、っておま、おまえはだか! 何してんだ⁉」
「何って着る物ないもん」
「そうじゃなくてくっつくなってこと!」
ぽっちゃりしているのに時折俊敏な動きをするのは見ていて面白い。
抱きつかれていた腕を慌てて振りほどき、弾かれるように立ち上がって距離をとったお兄ちゃんは、片腕で顔を覆いながら頬を真っ赤にして視線を泳がせていた。
その反応に私の子宮はたまらずキュンキュンと疼いてしまう。お兄ちゃんは視線を泳がしながら、その実、痛いくらいに私の裸体を見つめていた。
頭の項から、唇、鎖骨、おっぱい、へそ、マンコ、未熟な身体を舐めまわすように見ている。それは、明らかに私を女として見ている目だった。
ただ女に耐性の無い童貞だからといってこうはならない。
前世での私とお兄ちゃんはこの部屋でたくさんの思い出を作り、共有してきた。
日常的なことはもちろん。ある日を境に一線を越えた私たちは、貪るように色に狂い始めたことで新たな関係を築いた。全てが初めての事で、新鮮で、気持ちが良かった。それはまるで恋人のようでもあり、ご主人様と奴隷との主従関係のようでもあり、購入者がオナホを使うような人と物のような関係性でもあり。時に移ろい、プレイの内容で変わるこの関係性をなんと言えばいいのか正直な所今でも分かっていない。六畳間の小さな世界で愛を育み、主従の劣情に熱を上げ、物を扱うかのように情交を重ねるお兄ちゃんと私を一言では言い表せなかった。
ただ、互いに知らないことなど何もないと言えるくらいの間柄に私たちは成っていた。お兄ちゃんは私の全てを自分色に染め上げて味わいつくしたし、私もまたそんなお兄ちゃんからの調教を通じて全てを知ることが出来た。
だからお兄ちゃん、隠し事は通用しないよ。取り繕っても無駄。
お兄ちゃんの性癖がどんなものなのか、ぜーんぶ知っているんだから。
「まったく心臓に悪いよほんとう……ええっと、どれがいいかな……これでいいか。はい、洗濯が終わるまでこれ着てて」
いそいそとクローゼットの中の収納箱から取り出した白いTシャツを手渡してくる。
「すっご~い、おっきいね!」
サイズ表にXが記されているそれは、私の身体を遥かに超える大きさだった。下から頭を入れて出そうとするが、大きすぎて中々出口が見当たらない。それらしいところから頭を出してみればそこは裾で、お間抜けな姿をお兄ちゃんに笑われてしまう。
やれやれ仕方ないと言わんばかりの溜息を吐いたお兄ちゃんは、私の着替えを手伝ってくれる。
ようやく本来の出口から頭を出せた私は、胸元を見下ろしてぶかぶかなシャツの端を摘まんでスカートでするように翻してみる。やっぱりシャツというには大きすぎて、その場で回ってみるだけでフワっと広がってしまう。丈は私の膝下まで長さがあり、袖にいたっては長袖のようになってしまっている。
ブホ、って声に顔を見上げてみれば露骨に鼻の下を伸ばしたお兄ちゃんが、こっちを見つめていた。私の視線に気づいたらわざとらしい演技で咳き込んで、またいそいそとこっちをチラ見しながらティッシュを拾い集め始めた。
知ってるよ、好きだったよね裸Tシャツ。熱く語っていたよね、大きなシャツに小さな女の子というギャップ。動いた時微かに見える乳首やマンコのチラリズムが最高にエロいって。
その期待に応えるように私はその場で大きく動き始めた。表面上は大きなシャツを面白がって動き回る少女のようにはしゃぐ。飛び跳ね、回り、シャツが空気を含みふわふわと形を変える様を無邪気に楽しむ。至って健全な風景だ。
「ぶっかぶか~、あっはは! これ面白いかも!」
だがお兄ちゃんの目から見たらそうは映らない。
ティッシュを拾い集めようとしていた手は完全にその手を止め。もはやさっきのような体裁を取り繕うようなこともせず興奮して血走った眼は、私の体に釘付けになっていた。
テンポ良くトン、トン、トン——と飛び跳ね続ける。飛び跳ねる度に服はめくれ上がって、お兄ちゃんの眼前でマンコがチラ見えする。着地とほぼ同時にマンコは見えなくなり、また飛び上がることで綺麗なパイパンが現れ、その繰り返しに映りこむ一瞬にお兄ちゃんの興奮は高まり、マンコにまで吐き出す空気が届きそうなくらい鼻息を荒くする。
飛び跳ねていたことで徐々にズレていた服が、ついにズレ落ちる。大きいが故にズレ落ちた服は肩から胸元をむき出してしまい、ぷっくりと勃起した小さな乳首のある乳房が現れる。たまらずお兄ちゃんの口から呻くような声が漏れ出てきた。むき出しとなった乳房にチラ見えするマンコが、交互に映りこむ度に お兄ちゃんは自らのズボンの中で竿の猛りを一層熱くし、テントを張っていく。
お兄ちゃんが私に興奮してくれている。それが嬉しくて、もっと見てほしくて、私は見せつけるように動き続けようとした。
「きゃっ!」
飛んだ拍子に足を絡めてしまい、着地を失敗してしまう。ぐらついた身体は立て直すことが出来ずそのままお兄ちゃんがいる方向へと倒れこもうとしていた。
地面の堅い感触を覚悟して目を閉じるが一向にその感覚は襲ってこない、むしろ柔らかくて暖かい何かに包まれているようだった。
「大丈夫か?」
あんなに興奮していたのが嘘かのように、心配そうにこちらを覗き込むお兄ちゃんの顔がすぐ目の前にあった。転びそうになった私を助けるためにその大きな体で抱き止めたんだと分かった。でもなぜ私が押し倒しているような形になっているのか、お兄ちゃんの体格なら押し倒されることなく受け止められるだろうに。
「ありがとうお兄ちゃん」
そのまま起き上がろうとするが、思い付きでそのまま抱きつき続けることにする。
「おい、なぁ、何してるんだ?」
頭上から困惑したようすの声が届いてくるが、私は無視してより強く抱きつき顔を押し付ける。シャツから匂ってくるお兄ちゃんの匂い、大きなシャツそれ自体からお兄ちゃんの匂いがして全身が包まれているようで良い匂いだったけど。こうして実際に抱きしめられるとまた匂いが一層強く感じられる。
「んー? 何って……匂いを嗅いでいるんだけど」
チン嗅ぎするように鼻を押し付けて、身体から立ち昇る匂いを肺一杯に吸い込んでいく。汗が滲むシャツと胸元との間で蒸れた臭いは、より香しくて、この男臭が私という女をその気にさせる。
「嗅ぐなよ変態みたいだぞそれ」
「良い匂いなんだけどなぁ、お兄ちゃんのに・お・い♡」
「嫌味か! そんなわけないだろ」
「ほんとうだよー、だってほら——」
信じられないような目で見るお兄ちゃんに私はもう一度、肺一杯にその匂いを吸い込んで恍惚とした表情を向けることで、言ったことが真実であることを訴える。
怪訝な目を向けてくるお兄ちゃんだが、真実なのだから仕方がない。
吸えば吸う程、この魔性のニオイは私をその気にさせてしまう。こんな短時間しか吸っていないのに、私のマンコはもうねっちょりとした淫らな愛液で濡らし始めている。
前世で徹底的に躾けられた私は、このニオイを嗅ぐだけで簡単に濡れてしまい、お兄ちゃんを受け入れる準備が整ってしまう。
未調教のこの身体にまだお兄ちゃんのサイズは痛いかもしれないが、もうそんなことはどうでも良かった。
「おっ、おいばか、おおっ!」
「はぁ♡ すぅ~♡ はぁ~♡ すぅ~~……んはぁ♡ はぁ♡ はぁ♡」
吐き出される吐息に熱が籠り、深呼吸を繰り返す私は、今や完全に発情した雌と化していた。位置を調節して、自らのマンコがお兄ちゃんのチンポに当たる位置に持ってくる。深呼吸に合わせて身体を上下させることで、衣服越しの素股を行う。
「ふぅ~♡ すぅうぅう♡ ふぅううううう♡ すぅうぅぅうううう♡ んふぅううう♡」
香ばしい男臭にやられて理性が蒸発していく。細かいことも全部かなぐり捨てて、今すぐこのチンポを受け入れられたらどれだけ幸せなことか。あの時、私の処女を奪ったようにまたお兄ちゃんに奪ってほしい。
好き好き大好き、男らしいニオイも完全未使用の童貞極太チンポも愛してるから、早く私に入れてほしい。
「わかった! わかったからちょっと離れて!」
腰を擦り付け愛液を擦りつける私の求愛行動は、残念ながらお兄ちゃんには届かなかったようだった。それも分かり切っていたことだが、やっぱり少し寂しい。
大人の力で簡単に引きはがされた私は抱え上げられて、そのまま横へと優しく降ろされてしまう。起き上がった私に胡坐をかいて背を向けるお兄ちゃんは、興奮した様子を見られたくないようだった。肩で呼吸するお兄ちゃんは深呼吸を繰り返し、興奮して高まった熱を冷まそうとしている。
「はぁ、たく……お前と話してるとドッと体力を持っていかれるよ……」
「ふふっ、でも本当だったでしょ?」
「ああ! お前が汚臭大好きなユニーク人間ってことがな!」
「やった! お兄ちゃんに褒められた!」
「褒めてない! あぁ……なんでこんな振り回されるんだ? 相手は初対面の、しかも女児だぞ……」
なにやらぶつぶつ呟いて思い悩むお兄ちゃんにもう一回抱きつこうとして、ゆっくり近づいていくが、それを察知したお兄ちゃんは座ったままの体勢で信じられない俊敏性を発揮して離れていく。まるでこっちを警戒している猫ちゃんみたい。目には警戒の色がありありと浮かんでいて、全身の毛を逆立てているのが幻視できる。
「もういいから! もう絶対に近づくな!」
「えーどうしてー?」
「どうしてもこうしてもない! お前に抱きつかれると……その、色々大変なんだよ! わかったならもう近づくなよ。そ、そう俺、これから数学の勉強するから、お前は洗濯終わるまで大人しくしてろよ」
私の抗議の声も意に返さず、お兄ちゃんは背を向けたまま机に向かってしまう。
「お兄ちゃ~ん……?」
「…………」
「ふ~ん無視するんだ~」
私が呼びかけてもお兄ちゃんは呼びかけにわざと反応しない。でもそんなんじゃ私の目は誤魔化せない。ポーズだけは立派だね、参考書とノートを開いてペンを握っている、まさに勉強してますって感じだ。でもその開いてある参考書二つどっちも数学とは違う教科だし、当然そんな状態で数学の勉強なんて出来るはずも無くて、握ったペンが動き出す気配は一向に無い。気になってしょうがないのに自分の性欲が私を襲うことで露見することが恐ろしくて、そんな態度をとってしまっている。お兄ちゃんの中にある良識なんてものが、そうさせているんだって、私にはちゃんと分かっている。
大丈夫お兄ちゃんがその気ならこっちにもちゃんと考えがあるから。
「フフフッ——」
その姿勢がいつまで続くのか見ものだね。口をついて出た笑い声に反応したお兄ちゃんは、その肩をビクッと揺らした。
こっちに視線を送らなくても音ひとつで私が何をしているのか、分かるくらいに音を出してあげる。
無邪気に、大胆に、それでいて怪獣のように荒らしまわってあげよう。
本棚から本を取り出して、読みもせず相手の注意を逆撫でるかのようにページを捲る音を奏でていく。鳴らし終わった本は、これは用済みと言わんばかりに半ば投げ捨てるように音を立てて地面に置いて、本棚から本が無くなるまでそれを繰り返す。
横目でお兄ちゃんを見てみるが、肩をわなわなと震わせている。実に良い傾向だ。
今度はテレビへと向き直る。
「へぇ~テレビゲームってこんな風になってるんだぁ~……」
テレビを点けてゲームの電源を入れれば、お兄ちゃんが中断した所ですぐゲームは再開される。
どうやらRPGゲームをしているようだった。小さくデフォルメされたキャラクターが四人並び、右下にはおなじみの、たたかう、まもる、道具、にげるのコマンドアイコン。そしてこれまたデフォルメされたであろうドラゴンのモンスターと相対していた。
このゲームはよぉく知っている。異世界から転生した主人公が仲間と共に冒険をして魔王を倒す王道ファンタジーゲーム。この先の未来で幾つもナンバリングタイトルが出る超有名作品だった。
かくいう私もお兄ちゃんからの影響でこのゲームをプレイしていた。最初はお兄ちゃんが勧めてくれて、それからはお兄ちゃんが相手してくれなかったり、私一人だったりしたときにこのゲームをプレイしていた。ハマったのはそれからだ。
前世で大人になってからは、ゲーム自体稀にしかプレイしなかったが、中でも思い出深いこのゲームとナンバリングタイトルたちは良い気晴らしになった。
久々にやるゲームもやり始めれば結構覚えているようで、私はドラゴンのステータスと味方の情報を比較しながら的確にコマンドを選択していった。
お兄ちゃんからすればボタンの叩く音しか聞こえてこないのは、酷くもどかしい事だろう。でも残念、イヤホンが付いているテレビからは音は流れないし、そんなに身を後ろに傾けて聞き耳立てても情報は与えてあげない。
知りたければ意固地になっていないでこっちを見ればいい、そう思ってお兄ちゃんに視線を送るとお兄ちゃんはこっちを振り返ろうとして、丁度目線が交差し合った所で弾かれるように勉強するフリへと戻ってしまう。
そんな態度を見ていると意地でも私に関わらせたくなってしまう。
「ああっ——⁉」
ワザとらしく大袈裟に声をあげてみる。だが今度は一向に振り向く気配が見られない。
そんなお兄ちゃんに分かることは、動転を大いに含んだ私の声色と、慌てて私が電源を落としたカチッっていう音だけだろう。
せいぜい自分のゲームデータが飛んでいないか悶々としているがいい、まぁでも実際はそんな事になってもいなければ私がドラゴンを倒しただけなんだけどね。
このままデータを上書きするのも流石に可哀そうだし、念には念を入れてデータを分けてセーブしてあるから、お兄ちゃんには起動して確認したら心行くまで安心してほしい。
しばらくお兄ちゃんの後ろ姿を見つめ続けるが、まだ動かないので次なる行動へと移る。
これにはお兄ちゃんも平静を保ててはいられまい。
なにせソレはここの家主ですら知らないことで、お兄ちゃん以外の誰も知り得ないことなのだから。
気にしている気配をビンビンに立たせているお兄ちゃんを横目にクローゼットへ近づく。目的のモノはこの中に在る。ここではお兄ちゃんを驚かせたいから、力を使って音を一切出さないようにして、クローゼットの奥へと仕舞い込んであるモノを取りだす。
一見してなんの変哲もない段ボールにしか見えない。けれど開いてみれば宝の山々。お兄ちゃんの性癖が凝縮された漫画本、ゲームの数々が綺麗に仕舞い込んであるのを私は知っている。
その中からお目当ての本を探していく。それがどんなタイトルだったかは覚えていないが、表紙を見れば一目瞭然ではあった。