「————ここは……」
どれだけの時間を寝ていたのかは相変わらず分からない。
ただ目の前に広がる不明瞭でカラフルな空模様が、まだ夢から覚めていないことを知らせてくれる。
微かな違和感を抱いて、私は自分の身体を触る。返ってくるのは柔肌の感触のみ。付着していた体液はもちろん、膨れ上るほど注ぎ込まれていたザーメンは噴き出て地面に池を作っているわけでもなく、あらゆる情交の痕跡が嘘のように消え去っていた。
身を起こしてみればあるはずのモノが無いことにも気が付く。
「どういうこと……?」
長い時間を共にしてきた男の姿が、そこに無かった。塵も残さず、存在そのものが霧散したかのように。
周囲を見渡してもそれらしい影は見当たらない。
巫山の雨とでもいうのか。けれど私がいるのはまぎれもなくココ、おそらく夢の中と思われる場所。夢の中で夢を見るなんて奇妙なことが起こったとは考えづらい。
「……目が回る」
考え事をしたいのに目の前でぐにゃぐにゃと変わられると気になって仕方がない。常に移り変わる模様は境界線や輪郭というものが曖昧で捉え所がなく、どこか空が広がっているようで壁が迫ってきているような感じが気色悪い。
色が混ざり合っていない筆洗器のような色合いが、それに拍車をかけているのも悪さをしている。
「————————」
目を閉じて考えることにする。溜息を吐きながら力を抜きながらその場に寝そべる。
こうすれば空を目に入れずに済む。欲が許されるならもっとリラックスして考えたかった。せめて楽な 姿勢で考え事をしようと考えていた私に想像もしていなかったに包まれる。驚きに目を見開いて、手でそれを掬い上げれば水が溜まっている。暖かい、それもお湯だ。肌から感じる暖かさと指先でなぞる白い人工大理石の感触が、歪なこの浴槽を確かに存在しているモノだと実感させる。
よく見れば見覚えのある浴槽だった。これは私が生前住んでいた家で使っていた物と全く同じにしか見えない。何はともあれ難しく考える前にせっかくの湯船を楽しむとする。
「はぁ~…………————」
肩まで浸かり、じんわりと心の芯まで温まっていくことにうっとりとした息が零れる。
心地よい湯が、私に纏わりついていた不純物を浮かして落としていく。疲労感は無くなり、意識が熱に浮かされていくことで感覚と思考が分かたれて、いつものように集中する姿勢が整う。
目を閉じて、ゆったりとその身を浴槽に預けて、思考の海へ漕ぎ出す。
大前提として、今起きている現象は異常の一言に尽きる。
死んだ自覚のある人が白昼夢を見ているのならさっきまで見ていた夢が私の心残りやヤり残しが反映された夢だったのだと納得できなくもない。
満足するまでセックスが出来たのだ。なら次は目が覚めるなり、地獄で目覚めるなりするって考えるのが自然。
けど実際は夢から覚めることなく、世界の空模様は歪んだまま。私は夢とされる世界に取り残されている状況だ。
死んだ自覚があるのに一向に覚めない白昼夢。
夢の中で繰り広げられた謎の男とのセックス。
そして私が使っていた浴槽が現れたこと。
死んだ後のことなんて誰にも知り得ないので、ここが天国か地獄かも分からない。だから私はこれを死に際の白昼夢だと考えていたけれど、どうやらそうじゃないらしい。私の感じている五感が、快楽がそうじゃないと訴えている。おそらくまた寝て覚めても私はここで目覚めるだろうという確信がある。死後にたどり着く謎の世界、淫靡な夢だから最高だとおもっていたけれど、こうなると話は変わってくる。セックスの出来ない世界にどれほどの価値があるのか、そんなものは無い。さっきまで相手をしていた男が居れば話は違ったかもしれないが、このまま相手が居ないのなら、ここに囚われ続けられるのは悪夢でしかない。セックスの出来ない世界なんて、私にとっては地獄そのものだ。
そう、その発端とも言える男の存在。名前は不明、顔は何故か認識できなかった。けどそそられる肉体美で傲岸不遜だったことは覚えている。後チンコも逞しかった。異常なのは、その精力。一日二日で収まらず、年単位でセックスが出来るのは驚嘆に値する。人知を超え、サルを通り越し、神がかり的性豪だったのは間違いない。異常なのは、それに私が適応していったこと。
時間の経過、というよりも射精されていく度にその異常は顕著になっていった。快楽による精神の摩耗と心身の回復、二つの矛盾が起こっていた。絶頂は私の意識を快楽の炎で炙るのに対して、同時に私の意識を鮮明にしていった。射精と共に襲い来る絶頂の快楽は心身共に摩耗させていったが、同時に腹の奥底から力が湧き上がってくるのだ。
底なしの性欲に無尽蔵の体力、初めての感覚に歯止めが利かずセックスをし続けてしまい気づけばこうして、私は世界に一人取り残されてしまっている。
夢じゃないと薄々感じてはいるが、さっきまでの連続年単位セックスのことを考えれば夢だからと納得するほうが飲み込みやすいのかも。そうすれば夢だからと力技で片づけることも出来る。
「そういえばあの人もこうして何か作っていたような……」
快楽で酩酊していた微かな記憶を辿っていくとそんなことをしていたような気もしなくもない。
空も最初はこんなおどろおどろしい様子じゃなかったように思える。手振りのひとつで輪郭の無い壁に夜空という奥行が生まれて、満天の星で満たしたように見えた。押し倒す時には無かったはずのベッドがあったり。途中から男の愉悦を満たすために多種多様な淫具をいつの間にか手にして使ってもいて、不必要になったら跡形も無く消えていた。おそらく男にとって生み出すことも消すことも部屋の模様替えくらいに容易なことなのだろう。
分からないのは、セックスが終わりに近づくにつれて、物が消え、空は歪み、最後には男が消えてしまったということ。
夢の世界、謎の男、摩訶不思議な力、どれも関係していることは間違いない。
この変遷において重要なのは、おそらく男の意思。少なくとも男が意志を以て何かを望まない限り、世界は今の様相にはならないと考えて良いはず。なら物を消すのも生み出すのも全ては男の意思ひとつで作り出せると考えれる。
この夢は、私が見ている白昼夢ではあるが私の夢ではない。
だからこそ今浸かっている浴槽が、私には異質に思えて仕方がない。
私が干渉し得ない夢の中で、降って湧いたかのように出現した既知の私物。異質としか言いようがない。男が浴槽を望んだわけでもないのに——。
「————……?」
何かが思考の隅で引っ掛かった。
違和感の糸を手繰り寄せていきながら、大きくなっていく違和感の正体を探る。
私の夢ではなく男の世界、男の意思と摩訶不思議な力との関係、衰弱して消えていった男、突如として現れた異質な浴槽、うんざりする模様に何を考えたか、そして私は考え事をするときいつも何処で思案に耽ることを日課としていたか。
「私が望んだから?」
都合よく考えればそう考えられないこともない。でも私は明確な形で望んではいない。
もしかしたら無意識でそう望んでいたのかもしれないと、私は考えた。
もし無意識で作用するのなら意識しても出来るはず。
願い望む。鬱陶しい空と私を隔てて、私に癒しと安心をもたらしてくれる馴染みのある空間。私が願い、望めば目の前にはその空間が広がっているはず。
目を開く。立ち込める湯気に光が仕込むだけで視界は真っ白に閉ざされている。徐々に湯気が落ち着いて晴れることで、馴染みのある浴室の天井を視認する。
違和感の正体。自分の中で決定的にズレていた何かが、カッチリと噛み合う音がした。
「ふぅ…………———」
そこはもう私が生前に浸かっていた浴室になっていた。だが想像力が足りなかったのか、細かな物は何一つ置かれていない寂しい浴室になっている。
首を横に向けて、がらんどうなカウンターに意識を集中する。
目を閉じて、開けばそこにもまた馴染みのあるシャンプーなどが据え置かれている。だから次は馴染みの無い物を創造する。
目を閉じて、掌に意識を傾けていくと感触が返ってきた。目を開けば、掌に可愛いアヒルの玩具が乗っかっている。
「ふふ……可愛い」
手を沈めればアヒルはそのままぷかぷかと浮かび、指で弾くとアヒルの玩具は悠々と湯船の海原へ漕ぎ出していった。
そして自分の視界を掌で覆うように隠せばあら不思議。手をどけてみれば最初に浮かべた一匹の後ろに三匹のアヒルの子が追従するように浮かんでいる。
力を使えば使う程に私の中で起こっていた大いなる変化を自覚していく。その確かな手ごたえは、まるで最初からこの力が自分の一部だったかのように馴染むようだった。
玩具はそのままにして、火照った頭を冷やすためにお風呂から上がる。
自らに宿った大いなる力。こんな面白いことをみすみす逃す私じゃない。
遊び心が擽られた私は、さっそく力で濡れたからだから水を拭い去り、髪を乾かす。ドライヤーなんて使わずとも一瞬で乾いてしまう。
「やみつきになっちゃいそう」
浴室の扉を通る際には、既にバスローブを羽織っているなんて演出をする。想像通りの出来栄えに鏡の前で感嘆の声を漏らしてしまう。
まるで幼子が夢見る魔法そのものだ。過程を省略して面倒の一切を取り除き、望めばあらゆる事象を現出させることができる。
こんなに何でも出来てしまうのだから、ついつい童心に帰って色々やりすぎてしまった。
「家でこんなに豪華なのは初めてね」
脱衣所の先に新しくリビングを創造して、そこに豪華な食事を用意した。光源はキャンドルだけのこだわりに贅沢の限りを尽くした料理の数々。そしてその料理に合わせるために取り揃えたお酒が、私を歓迎してくれる。
料理もお酒も力によって常に適切な温度に保たれている。どれだけ長く楽しんでもおいしさが損なわれることは決してない。
席に着いて、力による見えざる手が給仕のようにお酒を注いでくれる。よく冷えたシャンパンがグラスに満ちるのを待って、誰もいない虚空へ向かっていただきますと言った。
食前酒のシャンパンが仄かな炭酸と酸味としぶみの調和した味が、食欲を促進させる。
次のワインが注がれるのを横目に、ナイフとフォークを手に取った私はどれから手を付けるべきかと悩む。
ここに煩いマナー講師はここにはいない。コース料理に似た顔ぶれであっても前菜から食べる必要は無い。好きな物を好きなだけ好きなように食べて良い。品位というものを軽視しているわけではないが、こ こは私の家だ。誰かが見ているわけでもないのだから堅苦しくする必要もない
気ままに自由に食欲を満たすためだけに終始しても良いのだ。
キャンドルの火に照らされながら食事を始める。まずはそれぞれを一口ずつ食べる。ポタージュ、カルパッチョ、ブルスケッタ、タルタル、魚のソテー、ステーキ、スパゲティー、自分好みの味に舌鼓を打つ。
続けてゆっくりと一品ずつ楽しむ。料理を手前にまで引き寄せて、ワインと合わせて食べる。どうやらこの力は漠然としたイメージでも叶えてくれるらしい。ステーキを食べる際、私は食べ合わせに適したワインをと願った。するとどこからともなくワインがグラスと共に現れて、私が何かせずとも見えざる手が注いでくれた。脂身の少ない綺麗な赤身のレアステーキは、しっとりとした肉質ながら噛むほどに仄かな甘みと肉本来のワイルドな味を両立させた一品。そこに赤ワインを含めば口いっぱいに人がるベリーの果実味が肉の味をより一層引き立ててくれる。
肉を主役とした良いワインのチョイス。まさに私好みと言える。分かったことは、厳密に事細かく決める必要はないということ。これは良い発見かもしれない。
その後も一品ずつ選んで、それに合う赤か白のワインを合わせて順繰りに楽しんでいく。
おいしい料理についついお酒へ手が伸びてしまい、生前では考えられないペースで進んでしまいテーブルの一角が空き瓶で溢れかえることになってしまう。
景観が気になったらその都度、不必要なものを消して、足りなければ足していく。そうして心の赴くままよく食べ、よく飲み、大いに楽しむことで私は、私への理解を深めていく。
「ふう……ご馳走様でした」
豪華な食事を堪能した後は、デザートの時間。食器と空き瓶を手の一振りで消して、入れ替わる様にガラスの器に盛られたミルクジェラートが現れる。
ジェラートを舐めて、紅茶でお腹を冷やさないようにしながら、私は一冊の本を創造する。絵も題名も無い真っ白な本。私はページを捲り、読み進めていくことで私自身に起きた事の詳細を把握していく。
力の習熟が進み、私自身に起きた大いなる変化を完全に自覚することで、私はこの力の全貌を理解するに至った。まさしく全能の力。際限の無い力は、私が望めばその全てを形にしてくれることだろう。知ろうとさえすれば私の認知機能は次元を飛び越えて、時間軸に囚われることなく過去、現在、未来の全てを見通すことが出来る。見てしまえば私に備わった力は、真実を零れ落とすことなく私へ刻印する。
今回、私に巻き起こった事の詳細を知るだけなら力を使い見るだけで良い。それだけで私は容易く理解するだろう。
なんだか味気ないな、そう思った
力は過程の一切合切を省略する。望みという起点は、真実という結果しかもたらさない。
面倒の一切を取り除いたそこに楽しむというという概念は無い。神の如き力を得た今、時間に囚われる必要が無いというのなら、わざわざ人の域から外れた事をする必要もないのではないだろうか。
だからこうして、わざわざ情報を本へと落とし込んで読んでいるのは文字を読み、目で追い、知識を仕入れる、それらの過程を楽しんでいることに他ならない。
「ふ~ん……―——」
力で情報を得るのとは違う。目で文字を追い、読み、理解して、ページを捲る。体の動作と思考という意識が連動することで読み応えという満足感を得る。このプロセスは私にとってとても大切な信念にも関わってくる。面倒や手間は人が満足を得る過程において、私はなくてはならない要因だと考えている。セックスでも同じだ。
快楽を得るためだけなら薬をすれば事足りてしまう。もっとも効率よく最大の快楽を得るドラッグ、効率という点においては強制的に幸せ漬けにする薬には敵いっこない。
脳から分泌される成分は、接種者に幸せや気持ち良さをもたらす。厳密に言えば同じ快楽であることに違いは無いのかもしれない。
でも、愛憎や欲望、ひいては過程の全てを取り除き得た快楽にどれだけの価値があるのだろうか。打つだけで味気もない。単純化された行為に人生の彩も生まれない。過程が無ければそれを楽しむ余地も無い。価値など生まれるはずがないのだ。
だがセックスは違う。
一見してただ原始的で快楽を貪っているだけのように見えて、その本質は居合わせた人によって千差万別。人の欲望や愛憎によってその色を変える。
セックスという一言に内包されているプレイは多様性に富んでいる。気持ち良くなる、その一点を目的にしながらそこに行き着くまでの手間を惜しまず、様々な快楽の形を追求することは非効率的極まりないが、そこから得られる趣味趣向が反映された快楽は、当人たちにとってこの上ない満足感であることに違いは無い。
だからセックスには価値がある。
欲望に従って精を放ち潮を吹く。たとえ後で後悔するとしても人々はそこを目指さずにはいられない。だって、絶頂とは幸せの頂なのだから。
頂の先は果ての無い下り坂が伸びている。絶頂の後に余韻があるように頂に留まることは出来ない。人生において時が止まってくれず過ぎ去るように幸せもまた徐々に過ぎ去っていってしまう。そうであっても幸せでありたい、居続けたいと思うのが人の性。
なら後はスるしかない。悲しきことかな、二つともそれは変わらない。
だから次なのだ。頂に居続けることはむりだとしても次また登ることはできる。セックスをすればまたそこに至ることが出来る。
重要なのはそこだ。本を読み進めていく視線は必要な情報だけを抜き取っていき、後は余計なものとして歯牙にもかけず流していく。
パタンと本を読み終えた本を閉じて、ジェラートの最後の一口を食べる。
腹の底、熱く興奮した子宮から喜びが込み上げて来る。くつくつと喉を鳴らし、抑えきれない喜びの感情に噴き出して、大きな笑い声を上げてしまう。こんなにうれしいことは無いと笑い、自らが知った事実に胸を高鳴らせる。
「あっははははははっ——!」
笑いながら創造したベッドに飛び込み、バスローブがはだけることもお構いなしに笑い転げて、全力で喜ぶ。
「——あっはは! はぁ……はぁあ、ふふふっ……はぁっ……やった……んぅ、はああっ……また、あっ、わたし……はぁっ、あっ……セックスぅ、んぅっ、できるっ、んああっ……!」
昂る気持ちに我慢できず私はオナニーを始める。既にマンコはじっとりと濡れていて、指を当てれば白くどろっとした本気汁が手をぐっしょりと濡らす。
無く子供をあやすようにまずはゆっくりと撫でる。円を描く動きが陰唇の形を変えながら快楽を促し、時折触れるクリトリスからの痺れるような刺激が、喜びと相まって快楽をより甘美なものにする。
こんなに嬉しいことはない。
事の顛末、未だ残る謎、全てが些細な問題だ。
来世なんか目じゃない。死に際の後悔も、もうセックスができないという恐怖も、全てを杞憂に終わらせることが出来る。だって私が望めば世界はそう変わると知ったから。
「んぅうぅうっ、んあ、はぁっ……あっ、あふっ……あんっ、ああっ、はっ……ふぅっ、んうぅっ……はっ、はっ、はっ、はッ! あっ、んぁあぁあぁあっ!」
しがらみからの解放は指の動きをより激しくさせる。垂れ流し続ける本気汁が指とマンコの間でかき混ぜられて、ぐちゃぐちゃと淫らな水音を出し始める。左右に激しくこすり合わせる指の動きにたまらず私は腰をひくつかせて、愛液は伝って滴り落ちて大きな染みを作っていく。
望めば叶う、それはその事実が一気に絶頂へと昂らせた。
「いくぅっ、いくっ……いっっっくぅぅぅぅ!」
絶頂で閉じようとする本能を抑え込み、ガニ股の姿勢を維持したまま絶頂に至った。
絶頂が私の中の喜びを祝福し、えもしれぬ多幸感で満たしてくれる。けどこれじゃ終われない。この感情を落ち着かせるのにたった一回のオナニーなんかじゃ落ち着くことはできない。
この力にきっと際限は無い。私の発想の如何によってはどんな世界をも形作ることができる。
そう、どんな世界であっても実現できてしまう。
尚も動かし続ける手によって、噴き出し続ける潮はシャワーのようにシーツへ降り注ぎ、染みをより大きくしていく。妄想をオカズにしながらオナニーを続ける。
そしたらどんな世界が良いだろうか。膨れ上がる妄想はとどまることを知らず、膨れ上がる妄想に比例して性欲もまた私の中で激しく燃え上がっていく。
私は膣内へ指を挿入して、抽挿を始める。愛液で塗れた二本の指は膣へすんなりと受け入れられる。出し引きする動きで肉襞を刺激し、快楽に緩急をつけるために指を奥へ突き入れたら指をうねらせて、膣をほぐしていく。
「んんんんっ、うっ……ふぅっく、おおっ、おっ、んああっ、あっ、あっ、あひぃっ!」
二本でしていたのを三本に増やし、限界まで突き入れて穿り回す動きに膣全体が痺れたような感覚に襲われる。
「くっひぃいぃいぃいっ! んおおぉ、も、もっとぉ……んふぅ、もっとぉっ!」
もっと深くイクためにもさらなる刺激を求めて指を伸ばす。
「おおおお、んおお、おおおおおっ♡♡ づよいぃぃ♡ ぎもじよずぎでとぶっ、ほおぉおぉおぉおっ♡ とんじゃうっ♡ とぶ……いっぐっっ!」
さっきからずっと擦られ続けて、切なく勃起するクリトリスも指でつまみ上げて、扱き始める。高まっていた快楽は容易に弾けて、再び私は絶頂した。
緊張した筋肉が身体を仰け反らせて、足ピンしながらも私の手は止まらない。
快楽に焼かれた私の脳が、もっともっとと快楽を強請って指を突き動かすからだ。
「きもちいよぉ♡ ˝おっ、オナニーやめられないっ♡ あああっ♡ マンコもぉおっ♡ ˝あぁあぁあっ♡ クリチンポもぉおぉおっ♡ どっちも気持ちいぃいいのぉおおおっ♡」
興奮と度重なる愛撫で肥大化したクリトリスは、しごくという表現が適切なほど真っ赤にそそり立ち、男根を扱くかのように摘まみ上げた指二本が、高速で上下に動いている。
扱かれるクリトリス。指を三本をも受け入れてGスポットを穿られ続けるマンコが、絶えず私の脳髄に快楽を送り込んでくる。
本能から体をよじり逃れようとするが、私の意思がそれを許さない。ひくつき快楽で痙攣する身体を手マンとクリオナニー押さえつけて、絶頂までの階段を駆け上がっていく。
「˝んあああああっ♡ ˝ああああああっ♡ あっ˝あ˝あ˝あ˝あ˝あ˝あ˝あっっっ!」
目の前がチカチカする。前後不覚に陥り、自分の呼吸が止まっていることに気がついた。
「——ッ————ぁっ——カッ——————……˝はあああぁッ、はあぁッ、はぁっ、はっ、はっ、はっ……すぅ……はぁ、はぁ、はぁ……——」
仰け反って硬直していた体も力が抜けることで柔らかいベッドへ沈みこんでいく。静かなリビングに私の乱れた呼吸音だけが耳に届いてくる。
興奮も一旦は落ち着きを見せて、私は深呼吸をして乱れた呼吸を整える。
「ふふっ、んっ、フフフフフフッ……あぁ……やっぱりオナニー気持ちいぃ……——」
絶頂直後の虚脱感が、体全体を包み込む多幸感へと移り変わっていく。じんわりと広がっていく幸せの 温もりに私の口角はだらしなく緩んでいる。
しだいに性欲で燻っていた熱も引き始めて、暴走気味だった思考も正常に回り始める。オナニーでうやむやになっていた、世界を意のままに出来る力について、私は十分に慮る必要があると考えていたけど、思い直すことにした。
「はぁ~あ、答えは既にあったのね」
力によって漫然と得た情報がどれだけ視野を狭めていたのかを痛感した。所詮は切り取った情報に過ぎないということ。それが真実だと疑わず、その本質から目を逸らすことになった。
もし本当にこの力を使えば世界を意のままに出来るのだとしたら、考える必要なんて無かった。それはこの力を使い始めた時、既に判明していたことだった。
ただ願えば良い。希うことで力は取りこぼすことなく、私の無意識すら読み取って願望を叶えてくれる。
だったら私は願おう。
このまま睡魔に身を委ねて、ありったけの願いを込めて変革を願う。
私が私でいられる世界を。
私が在りのままでいられる世界を。
生前よりも性に寛容な世界で。
もっと淫らでふしだらな営みに溢れていて。
道徳によって変態性が淘汰されない。
私が恋焦がれた色欲に彩られた日々が送れる世界を。
私は切実に願う。
目が覚めたその先に理想が叶っていることを夢見て、私の意識は暗く深い底へと落ちていった。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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