「きりーつ! 気をつけ、礼!」
号令と同時にチャイムが鳴る。ホームルームが終わり放課後の時間がやってきた。
子供たちはさようならの挨拶を済ませた途端、待ってましたと言わんばかりに我先にとランドセルを背負い、各々の用事のため群がるようにして下駄箱へと向かっていく。私はその流れに乗ることなく自分の席からその様子を眺めていた。
お天道様は未だ頂点に昇ったばかりで、快晴の空の下で走り回る子供たちは元気を有り余らせている様子だった。
「ん~……はぁ~、やっと放課後だ」
退屈な授業で凝り固まった身体を解すように手を組んで上にグーっと伸ばす。緊張を高めて、身体が伸びきった所で脱力する。
今頃、廊下と下駄箱は帰る子供達でごった返していることだろう。壁越しに聞こえてくる子供達の喧騒とドタドタ鳴る足音が、混雑している様子をありありと頭の中に浮ばせる。
まだ帰らないとはいえわざわざ混雑している人ごみの中を掻きわけてまで移動したくはない。ぶつかって痛い思いするのは嫌だし。
だから少しだけ間を開けてから私は教室を出た。
喧騒の音が落ち着いてから廊下に出てみたけど、予想通り廊下の人込みは既にはけた後で子供の姿がまばらに見て取れた。
日中の喧騒とは打って変わって少し物寂しくも感じる廊下を私は悠々と進んでいく。
学校は終わり、共働きである両親の眼が絶対に及ばない放課後の時間は私にとって唯一自由になる時間と言って良い。前世で大人だった頃はある意味で何でも好きな時好きなことをできた。それと違い、多くのしがらみを抱えるこの身が、唯一そのしがらみから解放されて動ける時間が放課後になる。
そんな放課後で私が専らしている用事は二つあった。
ひとつは噂の真偽を確かめること。
それはお昼に知った大木君のことではない。それよりも前に仕入れた噂を調べようとあらかじめ決めていて、今私はその場所に向かっていた。
「ふ~んふふん、ふふ~ん————♪」
階段を下りながら今回仕入れた噂について考える。この噂がもし真実だったら、私はついに心から望んでいるモノを手に入れられるかもしれない。確証は無い。でもその可能性がある、それだけで私のテンションは天井知らずに上がり、鼻歌を歌いながら目的地へ続く階段を下っていく。
もちろん私が喉から手が出るほど欲しているのは、セックス相手であり、チンポだ。
所詮は噂話。当然ながら確かめてみるまでは真偽のほどは分からないのが常。
だが今回耳にした噂話は、多角的な視点に基づいてたどり着いたひとつの結論だった。複数の噂話がもたらしてくれた情報は、まったく別々のように思えて、意外な点から繋がることがあり、今回の噂話もそうして浮かび上がって形作られたものの一つだった。
最初の噂はなんだっただろうか。思い出そうとすれば直ぐに最初の出来事に行き着いた。ある女の子が帰り道で女の人の悲鳴を聞いたというものだった。これだけならふーんの一言で終わる、実際私も気にも留めなかった噂話だった。けれどその後すぐに聞いた噂話が女の子の言っていた噂話に再び興味を抱かせるきっかけになった。男の子が帰り道でエッチな声を聞いたという噂話は、甘い蜜に虫が惹きつけられるように私をその噂話に引き寄せることになった。トイレで熱弁していた男の子によれば遊びの帰り道、自転車に乗っているとどこからともなく女の人の喘ぎ声が聞こえてきたというのだ。当時、散歩でなんの情報も手に入れられていなかった私はその喘ぎ声への期待を高めていた。もしかしたら私の暇つぶしの遊び相手になってくれる人かもしれなかったし、そうでなくとも後々に楽しめるかもしれない情報は持っておきたかった。
男の子はその声がどこから聞こえてきたのか調べようとしたが、住宅街の暗い道で一瞬だけしか聞こえなかったこととそれ以降は聞くことが出来なかったことで、場所を特定出来なかったことを悔しがっていた。そこで私は考えた、もし日常的にそうした行為を繰り返しているのなら他にも目撃者や聞いた人がいるかもしれないと。
私は調査を開始した。さながら気分は探偵だ。いつものように私は散歩を行い子供たちの声に耳を傾け、時には自分から積極的に話しかけて噂に関わる情報を深堀していった。すると似たような話を幾つも聞くことが出来た。その中には先の女子の姿もあった。女子が聞いた叫び声、男子の聞いた嬌声、そして似たような話の数々、興味深いことにそれらの話はまったく別々の話しのように思えたが、それぞれ聞いたとされる場所が近かったということが判明した。
私は直感に従い実際にその場所へ足を運んでみることにした。これを辿っていった先にきっと私の欲しいものがあると、そう直感が働いたから。
まずはそれぞれの噂のあった声を聞いた場所へ向かってみることにした。公園、住宅街、裏路地、場所も時間もバラバラの場所。その場所を点として、外枠を作るように点と点を繋げて推定変質者の活動エリアとして。場所と時間、それらを考慮して現れるかであろう場所と時間を見計らって、放課後の時間を使い私は練り歩いた。時間が足りなかったら両親から怪しまれないように認識を体調が悪くて寝ていることにして、根気強く喘ぎ声の出処を探っていった。
そしてついに私は、ひとりの男性が女性を躾ている現場を目撃することに成功した。
暗がりの路地裏で青姦ボテ腹セックスしていたことや、私がそれをオカズにオナニーしちゃったことは横に置いておいて、私はその老齢に差し掛かった男性とボテ腹妊婦が噂の声の主なのかを確かめるべく、その後の行動を追っていくことにした。
結果から言えば噂の叫び声や嬌声の出処は、件のお爺ちゃんと性奴隷とされる女性たちとのセックスで発せられる声だということが分かった。彼らの青姦をするときの活動範囲が、ぴったりと子供達の噂話で出てきた場所と一致したら、もう疑いようもない。
因みに彼らといったのは、お爺ちゃんの相手をする女性が日替わりで複数人確認できたから。
でもまぁ、それはともかくとして。同じ声でも聴く人によって感じ方が違ったのは、ませていたかそうではなかったかの違いでしかなかった、というわけだ。
こうして噂は真実だった、でお終いにならないのがこの話の面白いとこ。
関わってくるのがひとつの噂話。
先生たちの間でひとつの噂話がもちあがった。
妊娠を切っ掛けに産休に入った養護教諭の代わりに入ってきた志村茂泰しむらしげやすの家に美人な女性が出入りしているのを見たという噂話。入ってきたばかりの先生にセンセーショナルな話題、誰もが気になり興味津々だった。純粋に興味を抱く人もいれば、産休に入った先生も出入りしていることを聞いてふらちな真似をしているんじゃないかと嫉妬を向ける人もいた。入ったばかりで人間関係も築けておらず、当の本人が穏やかな性格なのを良いことに先生たちは面白がって、あれやこれやある事ない事を面白がって喋っていた。
そんなある日の事、たまたまその話を耳にした志村先生本人が説明をしたことで、この話の実態は知れ渡ることになった。
ことの実態は、家も大きく家事の手が回り切らない志村先生が個人で雇っている家政婦が出入りしているという単純な理由だった。前任の養護教諭が出入りしているということについても引継ぎの時に知り合い、互いに困っていたことについてアドバイスが出来たから、その手助けとして暇な折を見つけて窺っていただけだと説明したらしい。
この話を聞いて、先生たちの中に在った興味と関心は一気に心の中から消し去ることになった。
話を俯瞰して見れば、ただひとりの先生の家に家政婦が出入りしているだけであり。たまたまその中に前任の養護教諭の姿もあって、相談事でアドバイスを貰いに行っているだけという話。
けれど、ボテ腹妊婦と青姦セックスしていたのが志村茂泰でその相手は前任の養護教諭だったとしたら話の見え方は変わってくる。保健の先生はその定年期間近な歳に似合わず女性を囲い込み、家の外に嬌声が聴こえるほどハッスルするだけにとどまらず。定期的に女を連れ出しては調教に励んでいたということになる。
それが真実であることは、最初の夜に私が目撃しているし、家を特定したその後にも男と性奴隷たちとの情交を見学させてもらっている。噂から見えてきた人物像は穏やかで優しい保健の先生なんかじゃなくて。毎夜飽きることなく女を喰らう好色家であり、雌を躾けるご主人様、それが男の正体であり本性。
正体を知ったその日から、私の胸はぜひ私もそのご相伴にあずかりたいという気持ちで一杯だった。
階段を降りきれば、すぐ横にシムラ先生が務める保健室がある。
私は保健室の扉に手をかけて開けようとするが、悩ましい声を出しながらすぐに手を引っ込めてしまった。
「ただ問題がなぁ……」
俯いた視界に入ってくるのは幼い自分の身体。
保健室の前で柄にもなく思い悩むのは、ひとつの懸念が私の中にあって、それが保健室の扉を開けさせることをためらわせていた。
シムラ先生が毎夜飽き足らず女を抱くほど好色家なら問題ないのでは、と思うかもしれない。そこは問題ないのだ。むしろその性欲の全てが私に向いてくれることこそ望んでいる。
私の中にある懸念というのは、そんな女好きのシムラ先生が幼い私の体に興味を向けるのかという話。 そもそも私という存在は先生の守備範囲内に入っているのだろうか、という事。
もし入っていなかったら、当然ながら見向きもされない。ゼロにいくら数字をかけてもゼロのまま変わらないように、守備範囲外の対象にそもそも欲情する人なんていない。
興奮してチンポおっ立ててもらわないと私が困ってしまうのに。計画している幼女肉体調教オナホ化計画が頓挫してしまうじゃないか。それは嫌だ、絶対にダメだ。計画に相応しい逸材、またとないチャンス、こんな巡り合わせそうそうないのだから逃さない他ない。
なんだか子供の身体になってから何に対しても不安や心配事が付きまとってくるようになった気がする。前世ではもっと何となくで物事を決められていたような気がするのに。
心の中に巣くう漠然とした不安が私にそうさせるのかもしれない。
「…………んま、いっか。悩んでいても仕方ないし」
悩んでいても始まらない。当たって砕けるの精神でいこう。そう私は自分に言い聞かせる。
それにここには興味があるのかを確かめにきたのだから、もし私の体に興味が無かったとしても他にヤりようはいくらでも考え付く。その後の事を考えるのは、そうならなかった時に考えればいい。
「失礼します」
その不安の根源から目を逸らして、私はノックをしてから保健室へ入った。