※この作品はR-18です。

東雲淫子の奇妙なヤり直し   作:ニートン(2)

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何気ない日常6

ガタンゴトンと軽快な金属音を鳴らして快晴な空の下を進む電車が、外の景色を後ろへと流していく。

 

時間帯はまだ街並みを茜色に染めてはおらず、早々に帰宅した私はもうひとつの用事である街の散策をするために電車に揺られて都心へと向かっていた。

 

 目的も無くぶらぶらして街の様子を見て回り情報を集めるのが日課になりつつある私だが、今回は訪問が目的なので散策とは言えなかった。

 

 通勤ラッシュの時間帯はとうに通り過ぎていて、お昼時を過ぎた時間帯ということもあってか電車の中は余裕を持って立っていられるほどスペースがあった。私は出入口近くの金属の手すりに掴まり、車内案内表示器に目的地の駅名が表示されるのを待った。

 

 地元から十数分、駅としてみれば十駅も離れていない距離に目的の場所はある。正確に言えば目的地は複数あって、区内に入る必要があるためもっとも巡りやすい最寄りの駅に降りようとしているのだ。

 

 アナウンスで目的地へ着くことが流れると車内案内表示器にも同様の駅名が表示された。私は降りるために意識をドアへと向ける。

 

 ドアが開いたら真っ先に降りて改札口へと歩いていく。後から降りてきた大人に歩幅の差から抜かされていくが、私は階段で転ばぬよう手すりに手を添えてしっかりと降りていく。

 

「ちょっと計算外だったかも、んく……ゴク……ぷはぁ、ふぅ~生き返る」

 

 大人の頃ならなんてことなかった移動距離も子供の身体だとあっという間に息が上がってしまっていた。学校から家へ、そして家から駅へと移動して、電車揺られて今に至る、と既に多くの距離を移動している。

 

改札を出る前に自動販売機で水を買って、息を整える。火照った身体に冷たい水が冷感を行き渡らせて、疲れた体を少しだけ回復してくれる。

 

「こんなに体力がないとは思わなかった。タクシーを使ったほうがいいかも」

 

 一応確認のためにバリバリと音を立てて自分の子供用財布の中身を開いた。幸いなことにお金は十分な額が財布の中に入っている。今日という日のために溜めていたお小遣いやお菓子代などを全て入れておいたので、距離的から考えても最初の移動にタクシーを使うという選択肢はありだった。

 

 むろん力を使えばあらゆる面からこの問題を解決出来るが、それが常習化してしまったら人生に張り合いも面白みも無くなってしまうのでここぞという時以外は使いたくない。

 

 力を使う理由なんて、おもしろいかそうでないかくらいでちょうど良いのだ。

 

 力があっても使うかどうかは自分が決める。力はあくまでも私という存在に付属している要素にしか過ぎない。道具は道具。自分を人であると自認しているのなら、わざわざ人生を退屈なものに貶める必要はない。

 

「まずはタクシー乗り場に行かないと」

 

 自動販売機の横で休憩を終えた私は、改札口に切符をいれて出て、すぐのロータリーを迷いなく進んでいく。二十年以上の時を遡って姿形が変わっていようとも、前世で慣れ親しんだ最寄り駅の姿は記憶の中に焼き付いている。目を瞑っていてもタクシー乗り場までたどり着くことができる自信がある。

 

 ロータリーに沿って歩くとタクシー乗り場が見えてくる。乗り場には誰も並んでおらず、停車しているタクシーにそのまま乗り込むことが出来た。

 

「なんだ嬢ちゃん一人か。親御さんはすぐ来るのか?」

 

 気のよさそうな運転手だった。私はそんな運転手の問いかけに首を振って答えた。

 

「私一人だけ! ねぇねぇ運転手さん! この場所に行ってほしいのだけどお金は足りるかな?」

 

 私は住所の書かれた紙を手渡して、自分が幾ら持っているのかを財布を広げて見せる。気のよさそうな 運転手は、受け取った紙から住所を確認するとすぐ書かれた場所に思い至ったようだった。

 

財布を手に取ろうと運転手は手を伸ばすが、すんでのところで手を引っ込めて覗き込むようにお金を確認し始める。真面目な人なのだなと思ってしまう。

 

 思案する運転手の頭の中では、目的の場所への距離とそこへ必要になる金額と財布の中身を比べているのだろう。考えていた時間は長くなかった。虚空を見つめていた視線は私へと向き直り、はつらつとした笑顔は問題ないことを言外に伝えてきていた。

 

「これだけあれば足りるだろ。行けるぞ嬢ちゃん」

 

「やった! それじゃ運転手さん、そこまでお願いします!」

 

「シートベルト着けな、怪我されちゃ俺が親御さんに怒られちまうからな」

 

 ルームミラー越しに私がシートベルトを着けるのを確認したら、運転手はタクシーを発進させた。

 

 車内は空調で温度が整っていて、歩きつかれていた体力を回復させるには丁度良い塩梅だった。やっぱりタクシーを選択して正解だったかもしれない。

 

 そんなことを考えていたら運転手が語り掛けてきていた。

 

「それにしても子供一人でタクシーに乗るなんて、よっぽど行きたい所なんだな」

 

 その言葉に昔を思い出す。どれも掛け替えにない大切な思い出、そんな昔を懐かしみながら、しみじみと私は答えた。

 

「むかし……お世話になっていた人に会いに行くんだ」

 

 それからも運転手と私との他愛の無い会話は続き、目的地まで退屈のしない時間を過ごさせてもらった。

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

「はいこれお釣りね。道中気をつけるんだぞ、知らない人についていっちゃだめだぞ?」

 

「はーい、おじさんも送ってくれてありがとう!」

 

 互いに手を振り合い、私は発進する車が曲がり角を曲がるまで見送る。

 

 最後の最後まで随分とお節介な運転手だったけど、そのお陰で気まずい無言に苛まれることも無かった。

 

 車が曲がり角を曲がって消えたら私は手を振ることをやめる。

 

「懐かしい……」

 

 振り返った先の光景に感慨深さを吐き出しながら、私はそこへ近づいていく。

 

 運転手が思ったよりも近くに降ろしてくれたこともあって、私が目的地とする建物は既に目と鼻の先にあった。

 

 施設全体を囲う石壁に茶色く暖かみのある建物。庭は子供たちが元気よく遊べるようにと広く作られている。愛と真心で子供たちを護る、そして子供たち皆の帰るべき家であれという意味と願いを込めて〝愛護の家〟、それがこの施設の名前だった。

 

 私は誰に声を掛けるまでもなく入り口の門を通って不法侵入していく。

 

 この時間帯なら子供たちは学校などに行っていて居ないし、職員たちの仕事内容を把握している私なら彼らの視線を潜り抜けて入れる自信があった。

 

 それにしても人の姿が見当たらないのはなぜなんだろう。そう思ってから、私は思い当る節があって施設の外から窓ガラスを覗き込んでみる。すると予想通り職員の人たちは職員会議をしているようだった。

 

 私がここに来た理由。それは前世でお世話になった男性職員たちの様子を確かめることだった。

 

 お世話になった男性の人たちが見える。過去といっても私がここに来る事になるのは数年後のことなので、今の彼らとの面識は無い。それでも私は知っている。思い出の中の彼らと見比べて、少々老け込むことを除けば記憶のままの彼らがそこにはいた。施設長の伊藤さん。保育士の遠藤さんと南さん。指導員の松永さん、森永さん、佐々木さん、五十嵐さん、森本さん、高橋さん、関さん。

 

至って普通で皆元気そうだった。

 

「…………はぁ」

 

 それだけ確認できたらそれで良かったのに、彼らを見ていたらなんだか郷愁に駆られてしまい、思わず足を思い出深い場所へと向けてしまっていた。

 

 愛護の家と名付けられている本館から離れてすぐの所に職員たちが利用する職員寮が存在する。アパート染みた外見の職員寮こそ、親戚中の家をたらい回しにされて行き着いた私の家とも言える場所だった。

 

 私はここに住んでいたことがある。

 

 職員寮に住んでいたというのもおかしな話だ。当時の私の年齢なら個室が与えられてしかるべきだったのに、そうじゃないことに私は何の疑問も抱かなかった。当然と言えば当然なのかもしれない。まともに学を積み重ねず、人とのコミュニケーションをセックスだけに依存してきた当時の私からすれば、当然の帰結と言えた。

 

 それが今では少なくとも一般的に考えればおかしいと考えられる自分の成長に感動すら覚える。この感動を誰かと分かち合えないのが残念でならない。

 

「うわぁ~懐かしいなあ! よくここで青姦もしたなぁ……あの部屋じゃ一日中犯されたこともあったっけ……」

 

 だがそれをおかしいと思わなかったからこそ、この思い出の数々がある。

 

 職員寮に入り、階段を昇っていくだけで当時の淫靡な記憶が蘇ってくる。楽しかった思い出、ただ毎日のように犯されているだけで満たされていた生活の日々が、走馬灯のように駆け巡っていく。

 

 始まりは些細なフェラチオからだった。挨拶代わりに施設長へしたことを皮切りに、私がここへ来た理由を含めて男性職員全員に情報が広まり、気づけば全員と関係を持つようになっていた。

 

 セックスをしてあっという間に打ち解けた私は、それからも男性職員たちと隠れてセックスを楽しんだ。私としてはそれだけで十分だったけど、施設長を含めた全員が、いつしか女性職員から隠れてすることに煩わしさを感じるようになっていた。

 

 その煩わしさは、いつしか施設長を断行させるにまでなった。

 

 言いがかりや失敗を理由に施設から女性職員全員を追い出し。新たに雇い入れる職員は、自分たちの考えと同調出来る人だけが選別されていった。最終面接は口封じの意味も兼ねて私とのセックスが行われ、無事ヤりとげられた人だけが面接を突破することになった。

 

 こうして表向きは行き場のない子供達を保護し愛する施設なのに対して。その裏では毎夜セックスの狂乱に溺れる職員と私との愛の巣窟と化していった。

 

そんな私に与えられた役割というのが男性職員用の性処理係というものだった。

 

 いつでもどこでも男たちのため込んだ性欲を解消させる生きたオナホ、それが私。男の精を飲み干し、身体で受け止めることを一種のコミュニケーションと思って楽しんでいた私にとって、セックスはなんら苦ではなかった。むしろもっともっと、とさらに多くの快楽を望んでいた。

 

 やがて性処理係としての活動に邪魔になる要因は徹底的に排除されていった。中でも生活空間を共有したことは、性処理係として一番貢献できた要因だったと確信が持てる。

 

 本来なら私には個室が与えられるはずだったけれど、性処理係がいつでも使えないというのは問題だとして、例外的に職員寮に住めるように施設長が取り計らってくれたのだ。それからというもの日中は子供達の目から隠れるように男性職員達の性処理を行い。夜になれば私に与えられた個室という名のヤリ部屋に全員が集まって、長い時には明日の朝まで犯され続けたこともあった。そんな毎日に負けないくらいイベント事の時には力をいれて、着物やサンタ服といったイベントに因んだコスプレをしてエッチなゲームをして、セックスを楽しんだ。

 

「ほんとうに楽しかった……」

 

 自然と帰るべき家というのは、ここなんだと思うようになっていた。

 

 他にもいろいろな思い出がここにはある。

 

 思い返すには、今ある時間じゃ到底足りないくらいに。

 

 沁み込んで拭いきれないほどの淫臭がここからも香ってくるはずなのに、今じゃもうそれも思い出の中に残るのみ。

 

 それはそうだ。もうここは私の知っている時代じゃない。今が過去で私がここに来ていないのなら思い出の出来事が起こっているはずもなければ、これから先も起こることはないのだから。

 

 もうここは私の帰るべき家じゃないんだと、どうしようもなくそれが分かってしまって。懐かしく思っている気持ちと同じくらい、残念でならない気持ちで一杯になる。

 

「そろそろ出よっと」

 

 感傷に浸りすぎるのもよくない。それに長居しすぎた。今頃は職員会議も終わって施設の中も職員が歩き回っているはず。階段から乗り上げて施設を見渡してみれば、歩き回っている職員たちの姿がちらほらと見える。

 

 これ以上ここに居て、不法侵入がバレたりなんてしたら、昔に内緒で外出した時と同じように大目玉を喰らってしまう。

 

「でもそれはそれで……ふふっ、ちょっと楽しいかも」

 

もしそうなったら懐かしくて笑っちゃうかもしれない。でも、もう怒られるのは前世だけで懲り懲り。

 

 気を取り直して、私はまず職員寮から出て、それから人目の付かない死角を通って施設の中を歩き始めた。

 

 職員っていうのは動線っていうのを意識しているんだと、誰かが言っていたのを覚えている。誰がどの仕事をしていてどこを歩くかを皆がある程度は把握していたと。だからどこにどう隠れてシていれば周りから見られないっていうのも男性職員たちは熟知していたわけだ。

 

 そして、この施設の中で誰に目にも触れず青姦をしていた私もまた、その死角を熟知していると言えた。

 

 私は誰かに見られることなく門から出ることに成功する。

 

 最後に私は施設へと振り返って、小さく頭を下げてから呟いた。

 

「今までお世話になりました」

 

 あの時に言えなかった言葉は誰に聞かれることもなく風に溶けて消える。

 

 これでいい、と丁度顔を上げた視線の先で職員の一人と視線が交差した。

 

 向こうもこちらに気が付いて、近づいて来ようとする。

 

 あれは保育士の南さんか、子供を見ると放っておけない質なのは相変わらずのようだ。

 

 ふと、ここの子に戻ればいいじゃないと考えが過った。

 

 ここの子に戻ればまた前世と同じように楽しい日々が待っているのは、前世で証明されている。だったらヤり直せばいい。ヤり残しがあったまま死ぬのはもう嫌だって言ったのは自分だ。このまま前世と同様にセックスに耽る毎日を送れれば退屈な日常からすぐにでも脱却できる。

 

何気ない日常の全てを捨てて——。

 

「はぁ~……」

 

 先走った思考を元に戻すため盛大に溜息を吐いた。

 

 欲求不満も極まれば思考を乱すんだなと痛感する。

 

そのまま注がれる視線を振り切るため身を翻して私は歩き出す。

 

 ことここに至って、私は直面している問題がそう単純なものではなくなっていることを実感していた。

 

 最初は街を散策している時に感じ取った違和感を払拭するためだった。そのためにココに来たのに、違和感は無くなるどころかむしろ大きくなって、私の中にもやもやをとした後味の悪い感情を残すことになっている。

 

「こういう場合は納得がいくまで調べないと気が済まないのよね」

 

 自分の中で明確に形となりつつある疑問。それが確かなものかどうか確証を得るためにあと一か所、自分にとって因縁のある場所へ向かおうとしていた。

 

 もとい、その場所に住む人物に会うために。

 

 

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