タイラズマホンニシ ~筋弛緩剤と共有財産~ 作:eronosuke
原作:正反対な君と僕
タグ:R-18 正反対な君と僕 タイラズマ タイラズマホンニシ 二次創作 平秀司 東紫乃 NTR 批評募集 本田梨花子 西奈津美
拙作「タイラズマ ~本田・西プロデュース平攻略戦~」の裏ルート。中盤までは同じ展開なのでそちらを読了済の方は「■裏ルート」まで飛ばしてください。
本田作戦が成功し平と付き合えたにもかかわらず平が手を出してこないことに焦った東が、またもや本田に相談してしまう。平が童貞だから進展しない、私が平を童貞卒業させればオッケーと本田が暴走。佐藤の薬(筋弛緩剤)で動けなくした平をみんなで犯すエロ話。最終的に平を共有財産化するタイラズマホンニシのドロドロルート突入(西はNTR。すまん山田)。東の告白シーンは拙作「東のモノローグ」からのパクり。
■キャラ
本田:自分を不感症と思い込んでいる処女。スペックは高いがヘッポコ脳。性知識は全てエロゲで仕入れている。
西:山田の彼女。山田とBまでは経験済みの処女。本田を崇拝している。ロリ体形。心の恋人と身体の恋人は別腹。平の性欲煽るなら何でも使う女。エロい。
東:(中盤以降)平の彼女。汚れた私なんて平は抱いてくれないんだと思い込みが強い割に、平に女が何人いても自分が一番だったら良しとする度量の大きさ。
平:(中盤以降)東の彼氏。絶倫童貞。出さないと痛くて精神の均衡を失う。何人女がいても東が一番だと考えている。
佐藤:東の親友で薬学専攻。全ての元凶であるチンチン以外身体が全く動かせなくなる夢のような筋弛緩剤を作った女。薬のみ登場。
キャラの性格など性的なストーリー展開にするために、過激に露骨になっています。気になる方は読まないで下さい。
★プロット/展開/詳細描写/台詞は作者が書き、校正にAIのべりすとを利用/調教して書いています。
★本作はハーメルン/Pixivで公開しています。
作者:eronosuke
ハーメルン:https://syosetu.org/user/514099/
Pixiv:https://www.pixiv.net/users/125632702/novels
# 変わりゆく世界
高校二年の夏、私はまるで蟻地獄に足を踏み入れた気分だった。スマホの通知が鳴るたびに胃が縮こまる。
画面を開けば『紫乃元気?久しぶりに会わない?』なんてクズ男からの薄っぺらいメッセージが踊っていて、削除ボタンを押す指が震える。
「またあいつ?」
クラスの女子が私のスマホを覗き込みながら嘲笑う。もう何度目のやり取りだろう。この男とは中学二年の夏の一ヶ月だけ付き合った。
いや、「付き合った」なんて言えないかもしれない。相手が一方的に言ってきて、私が適当に返事をした結果、「付き合う」ことになってしまっただけ。
結局その男は同じグループの別の女の子と付き合って――いや、同時に三人くらいと関係を持っていたらしい。私がそのうちの一人だとバレたのは高校一年の秋だった。
クラス中に広まり、「あんな男でもいいの?」という冷たい視線が突き刺さる。私自身も不思議で仕方なかった。なぜそんな男を受け入れていたんだろう?
「男なんかどうせまたできるでしょ」
「そう簡単に傷つかないし」
「適当に付き合えばいいじゃん」
私はそう自分に言い聞かせてきた。本当は傷ついていたのに。雑に扱われることを当たり前にしていた。だって他に生き方を知らなかったから。
---
事件が起きたのは七月末の放課後だった。掃除当番で一人教室に残っていたとき、例のクズ男から『今どこ?』とメッセージが入った。
私は即座にブロックしようとしたけど、指が止まった。怖かったのだ。無視すれば余計に追いかけてくるし、断ることで過去が無くなることを恐れたのかもしれない。
「……何かあった?」
声の方を向くと平がいた。今日は掃除当番じゃないはずなのに、なぜか戻ってきた。
「別に……」
「嘘つけよ。スマホ睨んで眉間にシワ寄せてるぞ」
平は無造作に近くの椅子に座った。普段ならこんな会話は避けたはずだ。だけどあの日、私は疲れ切っていた。防波堤が崩れたみたいに言葉が溢れた。
「中学の時の男から連絡来てて……二股かけられて自然消滅した奴」
「それって男が最低じゃん」
「だからさ……私ってバカなんだと思う」
「なんでそうなる?」
「一度好きになった人、嫌いになれないんだよね」
自嘲気味に言ったその言葉は、自分で思う以上に胸を抉った。
平はしばらく黙っていた。窓の外から蝉の声がやけに大きく響いていた。
「……それは別におかしいことじゃないと思うけど」
予想外の言葉に顔を上げると、平は真剣な表情で私を見ていた。
「でも……」
「でもじゃない。東が悪いんじゃない。そいつが最低なだけだろ」
「でも毎回騙される私もバカだし……」
「それは違う!」
突然大きな声を出した平に驚いて肩が跳ねた。
「東だけがすり減ってんじゃん!そんな奴らのために悲しんだりしなくていいんだ!」
平の眼差しは真剣そのものだった。怒りの矛先は完全にその男に向かっていた。自分のために誰かがここまで本気で怒ってくれるなんて想像もしていなかった。
「だから…東は……バカじゃない」
「……ありがとう」
声が掠れた。涙腺が緩んでいた。喉の奥が熱くなって言葉が出ない。
平はそれ以上何も言わずに立ち上がった。「んじゃ帰るわ」と背中を向けて歩き出す。
その時だった。世界が急に鮮やかに見えたのは。窓から差し込む夕焼けの赤がいつもより深く濃く輝いていた。廊下の影までくっきり見える。
平の背中がやけに大きく感じられた。それまでの灰色に濁っていた景色が、一気に色彩を取り戻した気がした。
---
あれから何が変わったんだろう?
学校生活は表面的には変わらない。相変わらず男たちからメッセージが来るし、同級生たちはまだ私を軽い女だと思っている。でも私の中で何かが決定的に変わった。
朝、目を覚ました瞬間に「今日は何を着よう」と考える時間が倍になった。鏡の中の自分に少し自信が持てるようになった。
新しいリップを買う時は「似合うかな」と期待する自分がいた。そして何より——平の姿を探してしまう自分がいる。
高校三年生になった春、以前のように気軽に話せなくなっていた。平の横顔を見るだけで鼓動が速くなる。今まで友達だったはずなのに。
「東」
ある日、平が突然話しかけてきた。
「今日コンビニ寄る?新発売のアイス買いに行かない?」
「え……うん!行く行く!」
反射的に答えたあとで頬が熱くなった。こんな風に買い食いに誘われるなんていつ以来だろう?
帰り道、並んで歩きながらふと思った。あの夏の日から私の世界は色を変えた。それはまるで濁った池の水が一気に澄み渡ったような劇的な変化だった。
平の怒りは私の殻を破り、新しい景色を見せてくれた。そして今——その景色の中で彼の存在が日に日に大きくなっている。
でも怖い。今の関係が壊れることが。彼に拒まれることが。だから私はまだ平の隣で笑うふりを続けている。この秘密を胸に抱きしめながら。
# 輝き始めた世界
私が変わったらしい。それも「いい方向に」。自分ではわからないけれど、クラスの女子たちは噂しているそうだ。
「東さん、最近雰囲気違くない?」「なんか可愛くなったよね」
そんな言葉を耳にする度、複雑な気持ちになる。私が昔どんな恋愛をしてきたか知っているのに、今さら「可愛くなった」なんて言うのだ。
でも確かに自分でも感じる変化はある。朝起きるのが苦ではなくなった。制服を選ぶ時間が三分伸びた。鏡を見ながら「今日はどんな表情しよう」と考えるようになった。そして何より——平の姿を探す時間が一日の中で増えた。
「ふぅ、高校生みたいな恋愛したいねぇ、私の経歴は濁りすぎてなにがなんだか」
かつてそう呟いていたスレたOLみたいな私はどこへ行ったのだろう。あの夏の教室で平が私を罵倒する男たちから守ってくれた瞬間から、心の中に巣食っていた古い考えが溶け始めた。
「東だけがすり減ってんじゃん!」
あの言葉が私を縛っていた鎖を断ち切ってくれた。まるで魔法のように。その日から私の視界は一変した。
---
「なあ、東?」
昼休みの教室。平が私の席まで来ると、小声で呼びかける。
「放課後空いてる?昨日言ってたカフェ行ってみたくね?」
平の顔が近くて、息が止まりそうになる。「うん」と答えた声は蚊の鳴くような小ささだった。
休み時間になると、女子たちが寄ってきた。
「東〜!8組の平くんと何話してたの?」
口々に尋ねる友人たちに「カフェに誘われた」と言うと「きゃー!」と黄色い声があがる。恥ずかしさで頬が熱くなる。
「やば!二人って付き合ってるの?」
「そんなわけないじゃん!」
必死に否定するけれど内心は混乱していた。ホントにそんなんじゃないから。
---
放課後のカフェは意外と人が少なく、私たち二人の話し声だけが響いた。
「これ美味いな」
「本当だね」
平がケーキを頬張る様子を見て思わず微笑んでしまう。昔付き合っていた男たちは私の食べ方に文句をつけたり、店員への態度に難癖をつけたりした。
でも平は違う。決して周りを悪く言わない。ただ一緒にいる時間を楽しんでくれる。それだけのことなのに、どれほど心地よいことか。
「そういえばさ、昨日佐藤と話してたら面白いことあって」
平の話を聞きながら、この時間が永遠に続けばいいのにと思った。もう過去の恋愛で得た知識やテクニックなんて役に立たない。今の私にあるのはただ平の笑顔を見ていたいという純粋な気持ちだけ。
---
その夜、ベッドに寝転び天井を見つめながら思った。
「私、平のこと好きなのかな……」
これまで恋愛といえば都合よく使われることだった。愛されることなんて想像もできなかった。でも平は違う。私が傷ついたとき、私のために怒ってくれた。自分のことのように。
スマホを開くと、数人の男からメッセージが来ている。かつてなら「今日会わない?」に即返信していたところだ。でも今は違う。
「もう会えない」
一つ一つ断りのメッセージを送った。震える指で最後の送信ボタンを押す。
これで全部終わった。そして始まった。
翌日の教室で、クラスの女子たちが集まってヒソヒソ話をしている。私の変化に気づいたのだろう。いい方向に変わっていく私に驚いているのかもしれない。
でも今は誰がどう思おうと関係ない。だって私の世界はもう輝き始めている。平という光を見つけてしまったから。
明日からまた平に「おはよう」と言う声はきっと弾んでいるだろう。そして平もきっとそれに応えてくれる。私たちの関係がどうなるかはわからない。でも確かなのは——今の私にとって最高の季節が始まっているということだ。
# 友人たちの視線
「平といるときのアズの百面相面白いよね。ちょっと前までの暗い表情よりよっぽど健康的」—— 佐藤
「アズぱい、平に初恋してるんじゃないかなぁ?いままで見たことないくらい可愛い」—— 鈴木
「僕でも分かるのになぜ平君は気づかないんだろう?でも他人が言うことでもないし」—— 谷
「東が平にねぇ。意外っちゃあ意外だけど、面白い組み合わせだよな」—— 山田
「平も結構アズのこと気にしてると思うけどな。二人とも奥手で見ててじれったいよなぁ」—— 渡辺
放課後の教室で、友人たちが私を肴に盛り上がっている。
「ちょっ……みんな!勝手に人の恋愛分析しないでよ!」顔を真っ赤にして叫ぶと、鈴木が肩をすくめた。
「だって目撃証拠が揃い過ぎてるんだもん。平見るたびに耳まで真っ赤にしてるし」
「あと平君と触れただけで硬直してるよね。わかりやすいと思う」谷が腕を組んで頷く。
「平の方は?」と佐藤が鋭く切り込んだ。全員が黙り込む。
「……うーん」鈴木が腕を組む。「平も多分、アズのこと特別扱いしてると思うんだけどね」
「どういうこと?」思わず前のめりになる私。
「例えばさ」渡辺が得意げに指を立てた。「他の女子にはそんなに話しかけないくせに、アズにはめっちゃ自分から話しかけてるじゃん。それにアズと話す時の顔つきが微妙に優しい」
確かに。平は他の女の子にはほとんど無表情なのに、私と話す時は口角が上がるのだ。
「まぁまぁ、落ち着けって」山田が両手を広げる。「結局のところ本人同士の問題だからな。俺たちにできることは……」
「観察することと応援すること!」鈴木が拳を握りしめた。
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# 平の眼差し
考えてみると不安になる。友人たち全員が気づいているのに、肝心の平には気づかれていない……それって本当なの?
平は人のことを見ている。それは私も認めざるを得ない。教室での会話の端々からもわかる。授業中の教師の表情の変化とか、休み時間の微妙な人間関係の機微とか……誰よりも早く察知している気がする。
「東ってさ」
突然呼ばれて振り返ると、平が立っていた。帰り支度をしながらスマホを覗き込んでいる。
「昨日の数学の問題集、持ってたっけ?」
「え?ああ……うん、持ってるよ」
言いながらも私の鼓動は早く打ち始める。平の言葉が耳の中で反響する。
「借りてもいい?今度一緒に勉強するとき持ってくるから」
一緒に勉強。その言葉に胸が高鳴った。
「もちろん……」
平はいつものように軽く頷き、教室を出ていく。その背中を見送りながら思う。
本当に平は気づいていないのだろうか?
あの冷静な眼差し。いつも周囲を観察しているような鋭い視線。
一度だけ、ふとした瞬間に目が合ったことがあった。その時平は少し目を細め、何かを見透かすように私の顔を見つめていた——そんな気がする。
# 曲解される想い
平の自己評価はよく言えば謙虚——悪く言えば病的なほど低い。それは過去のトラウマが他人を見る目以上に自分を見る目を曇らせていた。
私はこれまで何度か平を褒めたことがある。例えば髪型を変えた時、「似合ってるよ」と言ったら、
「そりゃねーわ。俺みたいな陰キャが急にイメチェンしたらキモいだけだろ」
そう言って鼻で笑った。
私は平の努力をたくさん知っている。けれど言葉にすればするほど、彼はそれを逆の意味で解釈してしまう。
「俺なんかが調子に乗ってるみたいで嫌だろ?」「東は優しいから気を使ってくれてるだけだよな」
最近ではそんな反応を予測してしまい、言葉を選ぶようになってしまった。私の気持ちに気づいて欲しい反面、もし気づいたら——「東は俺なんかを勘違いさせちゃってる」と自己嫌悪に陥るのではないかという不安もある。
# 見えない心の壁
どうして私の思いが100パーセント伝わらないんだろう。伝えたい相手は平しかいないのに。
ホラ気づいてよ。高校三年になってから、私が一度も他の男の話をしていないことに。ドラマの好きな俳優の話すら避けていることに。だって平しか見えないから、平に誤解して欲しくないから。
廊下で誰かが私を呼び止めた時も平が横にいれば必ず振り向かずに歩いていく。友達が冗談半分で「東って彼氏作らないの?」と尋ねてくるのも適当にはぐらかす。なぜなら答えは明白だから。私の視界には常に一人だけ映っている。
授業中、窓際の席の平が外を見ている横顔。体育の時間、走るフォームの綺麗さ。委員会活動中の真剣な表情。全部私の焦点だ。
「東?どうした?」
突然の声に我に返る。目の前に平が立っていた。夕暮れの図書室。二人きり。
「あ、ごめん。ちょっと考え事」
慌ててノートに向かう。でももう何も頭に入らない。平の存在だけが鮮明すぎる。
# 特殊な距離感
私が見る限り、平が女の子と話をするときは二つのパターンがある。
一つは「事務的パターン」。全く知らない相手や興味のない相手に対しては、まるで業務連絡のような簡潔かつ冷淡な口調。最低限の単語だけを並べて会話を終わらせようとする。
そしてもう一つは「親しい友達パターン」。鈴木や渡辺、それから私に対してはタメ口で冗談も交える。知り合いだからこそ垣間見える平の素顔。そこには少しだけ柔らかさがある。
でも本田さんと話す時だけは違った。
委員会活動中に見かける光景。平は本田に対してだけは微妙な丁寧さを保ちながらも、どこか遠慮している様子がある。「本田さん」と丁寧に呼ぶ声には敬意と共に警戒心も混ざっている。
「平くん、資料のコピーお願いできる?」
「わかった。このファイルだよな、本田さん?後でやっとくよ」
平の声音は通常より半音高い。肩の位置も僅かに上がり、背筋が伸びる。明らかに他の相手とは異なる態度。それは敬意なのか恐れなのか……。
「平って本田さんにだけちょっと丁寧だよね」
昼休みのカフェテリアでそう指摘すると、平は飲みかけていた牛乳を吹き出しそうになった。
「そうか?別にそんなことねーし」
嘘をつくときの平はいつも目が泳ぐ。
「でも委員会の時とか……」
「本田さんは……」平は言葉を選んでいる。「なんつーか……近寄りがたいつーか」
# 嫉妬の影
「あの子、うっすら俺のこと嫌いみたいに感じるし」と平はまた自嘲気味に笑った。缶コーヒーの縁を指でなぞる仕草は緊張の印。
「えっ?」思わず身を乗り出す。「本田さんが?」
「多分な」平は小さく肩をすくめた。「あの子、基本西さん以外には塩対応だし」
確かにそれは否定できない。本田さんは基本、西さん以外の人間とは必要最小限しか話さない。でも私から見た、平に対しての態度は……
「でも委員会の資料作り手伝ったりしてるじゃん」
「あれは事務処理だから」平は即答する。「本田さんって、仕事はちゃんとするけど感情はゼロだろ?『これが最後の一枚ですね』みたいな感じで」
私は黙って聞いていた。平の分析は鋭い。本田さんが誰に対しても一定の距離を保つことは事実だ。でも平への態度には……違うものを感じる。
「それにさ」平が続ける。「あの子、目が合わないんだよな、避けてるんだろうけど」
その瞬間、胸の中で何かが引っかかる感覚。平が気づいていないだけじゃないか?
「へぇ……」
「だからさ」平はようやく私の方を見た。「東みたいにガンガン来る相手の方が楽なんだよ」
言葉に詰まる。これは喜んでいいのか。それとも悲しむべきか。
平の机の端に置いてあった東のスマホケースが、夏の光に反射して虹色に輝いている。
# 本心の断層
放課後の図書館。静かな一角で本田さんは一人、参考書を開いていた。西さんの姿はない。珍しい機会だ。
息を吸って一歩踏み出す。
「あの……本田さん?」
振り向いた彼女の瞳は驚くほど冷静だった。まるで魚眼レンズ越しの風景のように現実感がない。
「……なに?」小さな声が漏れる。
「ごめん邪魔しちゃって。ちょっと聞きたいことがあって」
本田さんは微かに眉を寄せた。その瞬間—
「……ああ」
小声で低い呟きが零れる。
「……陽キャリア充ヤリマンツンデレギャルね」
思わず耳を疑う。今なんて?よく聞こえなかったけどスゴイ単語入れてなかった?
「え?」
本田さんはハッとしたように口元を押さえ、目を逸らす。その仕草があまりに人間臭くて意外だった。
「失礼」無機質な声。「あなたのあだ名を思い出したので」
「あだ名……」
「同じクラスの鈴木さんが、たしか、そう呼んでました」
なるほど。確かに鈴木がそんな呼び方をしていた気がする………か?まあいいか。
「それで……何か用事?」
本田さんの問いかけに戻され、思考が途切れる。そうだ、平のことだ。
「あの……本田さんって、平のこと嫌いなの?」
沈黙。
ページをめくる音だけが響く。
# 絶対的孤高
本田さんの反応を待つ数秒間、私は彼女の顔に釘付けになっていた。
本当に完璧だった。整いすぎた輪郭。計算され尽くした睫毛の角度。艶やかな桜色の唇。まさに伝説のアイドル。
それ以上の存在感。目の前にいるのに現実感がなくて、香水のような淡い芳香がふわりと漂ってくるたび、頭の中がぼんやりしていく。
「ねえ」
彼女が突然口を開いた。
「どうして?」
その一言が刃物のように刺さる。質問の意味が理解できなくて混乱する。
「えっと……」
「どうして平くんとのことをあなたに答える必要があるの?」
冷たい論理が胸を抉る。本田さんは参考書に視線を落としたまま続ける。
「あなたは私の友達ではないですよね?」
「そ、そうだけど!ただ気になって……」
「理由は?」
返答に詰まる。本当は平が気にしているから。でもそれを言うべきなのか?
本田さんは溜息一つつきもせず言った。
「プライベートなことです。質問されても困ります」
その言葉は氷のように硬質で、彼女の周囲だけ真空に包まれているようだった。完璧すぎる容姿の奥にあるのは拒絶の壁。私の心臓が不協和音を奏で始めた。
# 崩れる砦
涙腺が勝手に決壊した。東の大きな瞳から大粒の涙が零れ落ちる。視界が滲み、完璧な本田さんの輪郭が歪んでいく。
「……!」
本田さんの眉が僅かに動いた。初めて見る感情の起伏。彼女の長い指が参考書から離れ、机の上でぎゅっと握られる。
「体調が悪いんですか?」
声は変わらず淡々としているのに、目線はしっかり私に向けられている。優しさというより純粋な疑問の色。
「違っ……くて……」
嗚咽を堪えながら必死に言葉を探す。もう限界だった。この一年以上我慢してきた感情が堰を切る。
「平が……好きだから!」
声が震えて掠れた。本田さんの瞳がゆっくりと瞬きする。パチリ。
「……はい?」
その反応がさらに火をつけた。恥ずかしさと混乱で体中の血が沸騰する。
「私!平のことがずっと前から好きなの!本田さんが彼のことどう思ってるのか気になって……だって本田さんって平のこと避けてるように見えるし……でも本当は仲良くなりたいかもって……」
言葉がまとまらない。支離滅裂な告白に自分でも呆然とする。
本田さんはただ黙って私を見つめていた。目をパチクリさせるのではなく、純粋な驚きが広がっていく。
「……ああ」
深い溜息のような言葉が漏れる。
# 属性過多の奇跡
本田さんの表情が一変した。冷たい美貌が崩れ、代わりに浮かんだのは……ニヤリというより「にんまり」という表現がぴったりの微笑み。
「素直になれないツンデレギャルが勝手に周りをライバル視しちゃう展開……か」
声のトーンまで変わっていた。柔らかく甘い、まるでアニメ声優のような声。
「……推せるわ!」
今度は私が目を丸くする番だった。何言ってるの?推せるって……どういう意味?
「あの……本田さん?」
「いや待って、ツンデレでかつ天然か」
彼女はうっとりと私を見つめている。その目は宝石のように輝いていた。
「属性過多だけど、いいわね」
彼女は椅子から立ち上がり、私の目の前まで歩いてきた。香水の香りが濃くなる。
「あなたみたいな女の子は原作設定だと必ず報われるのよ」
「原作……?」
「恋愛フラグ多すぎて大変よね」
「フラグ……?」
本田さんが突然両手をぱちんと叩き合わせた。
「いいでしょう!相談に乗るわ!」
東は完全にフリーズした。さっきまでの孤高の女王様はどこへ行った?この陽気なオタクトーク魔は一体……
# フラットな現実
「さて」
本田さんが指を一本立てる。先ほどまでの狂騒的なオタクトークから一転、ビジネスライクなトーンに戻る。
「最初に確認しておくけど」
彼女の声が再び研ぎ澄まされる。
「私はライバルにはなり得ないから勘違いしないで」
東は喉の奥がカラカラに渇くのを感じた。ようやく本題に入るのか。
「私と平君はただの委員仲間よ」
本田さんの目がじっと東を見据える。
「同じ委員なだけで彼のことは男性としては一切見てない」
その断言が胸に刺さる。
「彼は確かに優しいけど……性格的に損してるタイプね。でもそこ止まり」
まるで採点表にチェックを入れるように淀みなく言葉が続く。
「クラスメート以上の気持ちはゼロよ」
明快すぎる回答が重しのように圧し掛かる。期待していたわけではないはずなのに、なぜか空洞が広がる。
「これで最初の質問の答えはOK?」
本田さんが尋ねる。東はただ頷くしかなかった。
# 名付けと属性決定
「じゃあ次ね」
本田さんが次のステップへ移行しようとする。東はまだ喉のつかえを取れずにいた。
「あなたの名前は何だったかしら?」
急に投げかけられた問いに東は反射的に答える。
「東よ」
短く告げると本田さんの目が輝いた。
「決まり!これからあなたはアズアズね!」
東の顔に困惑の色が浮かぶ。そんなあだ名で呼ばれたことなどない。
「ちょっと待って……」
抗議する間もなく本田さんは畳みかける。
「アズアズはツンデレでしょ」
確信に満ちた声だった。まるで公式設定を読んでいるかのように。
「絶対にそう」
東の中で何かがプチンと切れた。
「ツンデレじゃない!」
つい声を荒らげてしまう。
教室に響く自分の叫びに後悔が襲いかかる。本田さんは涼しい顔で肩をすくめた。
# 哲学的ツンデレ論
「ツンデレの定義はね」
本田さんの声が熱を帯びる。
「それはとても広くて……そして深いものなの」
まるで大学教授のように指を組み合わせる仕草が妙に似合う。東は身構えた。
「ツンデレとは」
瞳が危険な光を宿す。
「想い人に素直になれず、本当の気持ちを伝えられない人々の総称よ」
東の胸の奥がざわつく。そういう言われ方すると合っているような…
「私はね」
本田さんの唇が微かに綻ぶ。
「彼らの内面の葛藤や揺れ動きにこそ、深い感動を覚えるの」
窓から差し込む午後の日差しが本田さんの輪郭を縁取り、まるで宗教画のような荘厳さすら感じさせた。
東は圧倒されながらも冷静に分析していた。(こんな風に恋愛を観察するタイプなら……確かにライバルにはならないんだろうな)
その思考がなぜか安堵感を伴っていることに気づく。胸のつかえが少し軽くなるのを感じながら、東は本田の熱弁を聞き続けた。
# 共犯者の誓い
「だから」
本田さんが突然立ち上がった。その動作があまりにも機敏で東は思わず身を引いた。
「アズアズ」
伸ばされた手が目の前に差し出される。
「私たちは同志よ」
唐突な同盟宣言に東の頭が追いつかない。
「私はあなたの恋を応援するわ」
本田さんの手がわずかに震えているのが見えた。
「でも誤解しないでね」
彼女の声が真摯さを帯びる。
「私からは、平くんに何も言わない。絶対に。これは約束する」
東は戸惑いながらも、その目に宿る誠実さに引き込まれていく。
「私も見てみたいの」
本田さんの唇が微かな弧を描く。
「ツンデレギャルが鈍感クール系男を自力で落とすところ」
その台詞に含まれた奇妙な温もりが東の胸を打った。ライバルではない。むしろ理解者として現れた存在。
「だから握手」
催促する本田さんに東は恐る恐る手を伸ばした。握られたその手は意外なほど柔らかかった。
# 予期せぬ訪問者
「ホンちゃーん!お待たせー!」
明るい声と共に教室の扉が勢いよく開いた。振り返ると、セミロングの黒髪を揺らしながら駆け寄ってくる小柄な少女──西だった。
東の目が丸くなる。こんなにも無邪気な表情を見せる西は初めてだ。
「あれ?」
西は東と本田が固く握手している光景を見て足を止めた。
「え……ホンちゃん?1組の東さん?………え?」
困惑の表情を浮かべる西に本田が淡々と答える。
「見ての通りよ」
「いや、全然わかんないよー!」
西の悲鳴のような声に東は思わず口元が緩んだ。これが噂に聞く西と本田の関係か。教室での本田の孤高の姿からは想像できないほど砕けた雰囲気。この不思議な緊張感の緩和が心地よかった。
(面白いコンビだな)
東は思った。学校では常に一人でいる本田が、この小柄な少女といる時だけは別人のように生き生きしている。
西が更に食い下がる。
「ホンちゃんが素を出してるってことは、東さんと仲良しになったんだね?」
「まあ……そういうことになるのかしら」
本田の言葉が曖昧だ。
「アズアズの恋を応援しようと想ってね」
突然の言及に東が赤面する間もなく、
「またホンちゃん、アニメの見すぎだよ」
西の呆れた声が響いた。その純粋な反応に東は思わず吹き出した。
# 揺れる想い、晒される秘めごと
「東さんの好きな人って言うと」
西の言葉が宙を切る。
「平クンだよね」
あまりにもあっさりと断言され、東は息を呑んだ。
「ちょ……ちょっと待って!」
慌てて両手を振る。
「なんで……西さんが知ってるの?」
「え?だって」
西が小首を傾げる仕草が幼い。
「健太郎クンから聞く話だけでも、そんな感じするし」
名前が出た途端、東の脳裏に山田の爽やかな笑顔が浮かぶ。山田め!あの明るい口調で私のことを言いふらしているのか?
「……わかりやすいんじゃないかな?」
冷や汗が背中を伝った。確かに平のこととなると態度に出てしまう自覚はあったが……
「それこそ!」
本田の目が再び輝き出す。
「想い人にだけなぜか恋心が伝わらない現象ってヤツよ」
拳を握りしめて力説する。
「これこそツンデレの神髄なのよ!」
「また言ってる……」
西が頭を抱える様子に東は苦笑した。それでも胸の中は複雑だった。
(やっぱり気づかれてる)
学校中の噂になっているのかと思うと居ても立ってもいられない。けれど——
ふと本田の言葉が脳裏をよぎる。
『平くんに何も言わない』
その約束が、この混乱の中で唯一の救いに思えた。
# 告白までの距離
「二人に相談したいことがあるんだけど」
意を決して切り出した東の声は少し震えていた。佐藤や鈴木のように平と距離が近すぎず、これまであまり関わってこなかった二人だからこそ打ち明けられる気がした。
「どうしたら思いを伝えられるかな」
平の顔を思い浮かべるだけで頬が熱くなる。金色の髪をソバージュにし、いつも堂々とした態度の東紫乃。
誰もが羨む美貌とスタイルを持つ"一軍女子"が今、目の前の机に腕を乗せ、恥ずかしそうに上目遣いで二人を見上げていた。
「ヤバっ!」
突然本田が立ち上がる。
「なにこのツンデレ!アザとすぎる!これで堕ちないヤツいないでしょ!つーか私なら抱いてるわ!」
興奮した様子で叫ぶ本田に西が慌てて袖を引く。
「ホンちゃん!落ち着いて!」
一方西は穏やかな笑顔で言った。
「東さん、すごく可愛いよ」
まっすぐな瞳が東を射抜く。
「そのままの東さんで告白すればいいんじゃないかな」
そのシンプルな言葉が意外にも胸に刺さった。いつも派手な装いと振る舞いで武装してきた東にとって、「そのままの自分で」という提案は新鮮だった。
「……でも」
声が小さくなる。
「振られたらどうしようって思うと怖くて」
西は優しく微笑んだ。
「勇気を出すのも素敵なことだよ」
本田は腕を組んで難しい顔をしている。
「つまり問題はタイミングとシチュエーションよね」
急に冷静な分析家のような口調に戻った。
「王道なら夕焼けの教室とか屋上とか……」
「ホンちゃん、それアニメの見すぎだよー」
西の突っ込みに三人の間に柔らかな笑いが広がった。東は気づく。いつもの騒がしい友人たちとは違うタイプの二人だが、妙に居心地が良かった。
(こんな風に正直になれることもあるんだ)
初めて味わう安心感が東の心を温めた。
# 思い切った告白
東は指先を弄びながら尋ねた。
「二人の経験とか……、もしよければ、参考にしたくて」
西が少し照れたように俯く。
「私が健太郎クンと付き合った時は、最初は相手から言ってくれるのを待ってたの」
両手を膝の上で重ねながら続ける。伏し目がちな表情がどこか愛らしい。
「でも顔を見てたら……なんだか気持ちが盛り上がっちゃって」
頬を染めながらも嬉しそうに微笑む。
「路上を歩いているときに、自分から言っちゃってた」
「すごい勇気だね」東が感嘆の声をあげる。
西は照れくさそうに首を振った。まっすぐ東の目を見る。
「でもね、自分から言うのって不思議と怖くなかったの。だって本心だから」
その言葉に東はハッとする。(私と少し似ているかも)
平からは来てくれないだろうし。(やはり自分からいくしかない)
決意が少しずつ固まっていくのを感じた。
「ホンちゃんはどう思う?」
話題を振られた本田は腕組みをして考える。
# 戦略的アドバイス
本田は肩をすくめて答えた。
「私はうっすらニッシ以外の人間のこと嫌いだから」
真顔で続ける。
「今日、嫌いじゃない二人目ができたけどね」
ちらりと東を見る目は優しさを含んでいた。
「だから自分の経験ではないけど」
椅子に深く座り直し、語気を強める。
「恋愛の攻略法は『己を知り、相手を知り、天の運を待ち、地の利を生かす』だと思う」
西があきれ顔で突っ込む。
「それ、何のゲームのことなの?」
本田は珍しく真剣な表情で反論した。
「全てに通じる真理よ」
指を立てながら説明する。
「アズアズは自分の長所を認識した上で」
東のスタイルを上下に眺める。
「平クンの弱点や求めているものを正しく理解し」
その言葉に東が身を乗り出す。
「平の弱点って?」
本田はにやりと笑った。
「それを調べるのが次なる課題ね」
窓の外を指さす。
「そして告白に最適なスポットで告白する」
さらに身を乗り出し、声を落とす。
「地の利はアズアズと平クンは同じ中学の同級生だったから」
悪戯っぽく目を輝かせる。
「そういうの生かしたほうがいいわね」
東は思わず息を飲んだ。確かに中学時代の思い出なら共有できるものがある。
(でもどんな場所がいいんだろう)
考え込む東の横で西が静かに微笑んでいた。まるで三人の間に新たな絆が生まれていくようだった。
# 心の奥底
自分のために親身に考えてくれる二人を見ていると——
(あれ?また……)
じんわりと目に熱いものがこみ上げてきた。必死に瞬きで誤魔化す。
(私、こんなに弱い人間だったっけ)
自問しながらも指が震える。
(平への気持ちが強すぎて人として弱くなってるのかな?)
かつての自分を思い浮かべる。男に振り回されることなど想像もしなかった、あの強がりな自分。
(少し前までのスレた自分に戻りたい)
そんな矛盾した感情が渦巻く中——
「ごめんね」
思わず口走っていた。
「ほとんど初対面なのに」
堰を切ったように言葉が溢れ出す。
「私、中学の頃、平と同じ学校だったんだけど」
喉が詰まりそうな感覚を堪えながら続けた。
# 過去の告白
東は俯きながら話し始めた。
「あの頃の私は、クラスの陽キャグループにいて」
指先でテーブルの縁を撫でながら続ける。
「近づいてくる男たちと付き合っては別れてを繰り返してた。もう数も分からないくらい」
西が息を呑む音がかすかに聞こえる。でも東はもう止められなかった。自嘲気味に笑う。
本田は腕を組んだまま黙って耳を傾けている。目を閉じて記憶を辿る。
「一度も告白されたこともないし、自分から告白したこともない。いつも何となく始まって、いつのまにか終わってた」
深い溜息を漏らし遠い目をした東が突然顔を上げて西を見る。
「今思うと恋愛と呼べるものじゃなかったけど、当時はそんなもんかと思ってた。…軽薄に聞こえるかもしれないね」
西は首を振った。
「そんなことないよ」
再び俯いて、拳を握りしめる。
「身体も別に大切にしてなかったから、男から見たら都合のいい女枠だった。同じグループで……シャッフルするみたいに抱かれたこともあったかな」
言い終えた瞬間、室内に沈黙が広がった。東は自分の言葉の重さに胸が痛んだ。まるで過去の自分を断罪されているような気分だった。
# 平の変貌
東は天井を見上げた。
「中学の頃の平は、今では考えられないくらい太ってて」
指で空中に輪郭を描くと、懐かしそうな表情が浮かぶ。
「丸くて、クラスの隅っこで漫画を読んでる感じの男の子だった」
目を細めて思い出す。
「私は何となく中学1年から平のことが気になってて、ちょこちょこ話しかけるくらいの仲だった」
両手を軽く広げるジェスチャーをしながら、苦笑いを浮かべる。
「向こうから話に来ることはなかったけど、話すたびに人のことをよく見ていて」
声の調子が変わり、強く言葉を区切る。
「絶対に人の悪口を言わない、優しい平だった」
急に表情が暗くなり、自嘲気味に笑う。
「中学生って陰湿だよね?平がいじめの標的にされて」
テーブルに視線を落とす。突然、西と本田の方を見る。
「引きこもって学校に来なくなったこともあった、勿論私はいじめなんて参加しちゃいないけど」
声が震える。
「助けなかったんだから同罪だよね?」
両手で顔を覆う指の間から見える目が潤んでいる。
「中学を卒業した平が高校に入る前の休みの間、必死にダイエットやファッション誌を読んでるのを見たことがあるんだ」
少し声が明るくなる。突然立ち上がった東は勢いよく椅子に座り直した。
「その時は高校デビューか、頑張れ!って純粋に応援してた」
両手を膝の上に重ね胸に手を当てて呟く。
「まさか同じ高校で、偶然再会した時は見違えるように変わってて」
拳を握りしめ顔を上げる。
「すごく頑張ったんだなって、自分のことみたいに誇らしくなって」
しばらく沈黙があった後、ゆっくりと首を横に振り、悲しそうな表情になる。目に涙が光る。
「でも中身は全然変わってなくて、相変わらず自分に自信がなくて、でも優しくて」
東は両手で顔を覆い、肩を震わせた。
# 世界が変わった日
「それで」
東は言葉を選ぶように少し間を置いた。
眉間にしわが寄り、視線が宙を泳ぐ。
「高校2年の夏に、同級生でボーリングに行ったときに、偶然私が元々いた陽キャグループに会っちゃってさ。さっき言った同じグループでシャッフルするように付き合ったり別れたりしてたやつ」
顔色が青ざめ、声がかすれる。拳を握りしめ唇を噛みながら、震える声で続ける。
「グループの元カレが、雑な感じで私にメッセージを送ってきたんだ。『俺らもう一回やり直そうぜ』的なヤツ、身体目的なのがバレバレのヤツね」
深く息を吸い込む音が聞こえる。目を開けた東の瞳には決意の色が宿っている。言葉を切り、またためらう。
「平に、こんなメッセージ送られても、拒否しない私が悪いのかな?って聞いたら」
顔を上げる東は目が潤んでいる。
「平が『雑に扱われてるんだから怒れよ!東だけがすり減ってるじゃん!』って、代わりに怒ってくれたんだよね」
指の隙間から漏れる声に嗚咽が混じる。
「それから、私の世界が180度変わったの、今までの自分は何だったのかってくらい」
東の頬を涙が伝う。震える声で呟く。椅子から少し身を乗り出す。テーブルに肘をつく東。目が輝き始める。
「ずっと、ずっと平を探してたんだなって、その時気づいたの。平がいるだけで、全部違うんだって」
突然立ち上がる東。両拳を握りしめて宣言する。目に決意の光が灯る。
「だからこそ、今度は私が平を守る番なんだって思った!そのためなら、どんな恥ずかしいことも話せる!」
東は再び席に着き、二人に向かって力強く頷いた。
***
「……だからね」
東は静かな口調に戻った。
「今の私がいるのは全部平のおかげなの」
微笑みが浮かぶ。遠くを見るような目で続ける。
「あの時の平の一言がなかったら、きっと今も誰かにいいように使われていたと思う」
西が小さな声で尋ねた。声が少し震えている。
「でも、そんな大切な人に、どうして自分の気持ちを伝えられないんですか?」
東はため息をつき、目を伏せる。
「それがね……、平ってすごく鈍感なのよ…いや、気づいてるのかもしれないけど」
両手をひらひらさせる。苦笑いを浮かべる。
「けど、私がいくらアピールしても、全然気づかないふりして」
自虐的に笑うと、突然声が大きくなった。
「そりゃそうだよね、私みたいな汚れた女が…平みたいな清い人を好きになっちゃいけないんだ!」
# オタクからの衝撃の告白と抱擁
「ツンデレ女の自虐風自分語り、ごちそうさまでした」
本田の冷静な声が教室の中にクリアに響いた。東は呆気にとられた表情で彼女を見つめ返す。
「まず1つ、あなたは汚れてなんかいない」
本田は真正面から東を見据える。
「人間の肉体なんか所詮、水とタンパク質よ」
「な……何を言って……」
東は困惑したように言いかけたが、本田は手のひらで遮るように言葉を続ける。
「次に」
彼女の指がテーブルをトンと叩いた。
「平クンのことを神聖視しすぎ。彼も普通の男子高校生でしょ」
突然の暴露に東の目が見開かれる。
「オナニーもすればエロ本も読んでるに決まってる、なんならおかずはアズアズかもね?」
「ちょっ!」
東は咄嗟に周囲を見回した。近くに他の生徒はいないが、顔中が火照っていく。
「最後にアズアズ」
本田の声色が急に柔らかくなった。
「私たちに言いたくないこと全部さらけ出してくれてありがとう」
彼女は椅子から立ち上がり、まるで当然のことのように東の横に回り込んだ。
「私はニッシの次にあなたのことを好きになっちゃった」
次の瞬間、本田の長い腕が東の背中に回り込んだ。思いがけない温もりに東の体が硬直する。
「えっ……」
西が小さく驚きの声をあげた。学校では孤高を貫いていた本田の突然の行動に目を丸くしている。
「待って……本田…さん…」
東は顔を真っ赤にして抵抗しようとするが、意外にも強い抱擁に身動きが取れない。
西は慎重に言葉を選ぶ。
「『性的な対象』とまではいわないけど、まず『恋愛対象』として見てもらえるようになろうよ」
東は困惑した表情で二人を交互に見る。思考が追いつかない様子だ。
西は自分の言葉に力を込めた。
「ホンちゃんの言う通り平君だって……その……」
「普通のエロエロ煩悩満載の男子高校生でしょ?」
本田が西の言葉を引き継ぐ。
東はようやく抱擁から解放されると、深呼吸して平静を取り戻そうとした。
「でも……それは今の平は、私のことを女として見てないってことじゃん?」
「そうじゃない」
本田は真剣な眼差しで東を見つめる。
「むしろ逆の可能性もある」
彼女は珍しく優しい微笑みを浮かべた。
「見ているからこそ怖いんじゃない?本当に好きになったら失うのが怖いから」
東の目がわずかに潤んだ。
「それに」
本田は東の髪を軽く撫でる。
「あなたは十分魅力的よ。私だったら放っておかない」
西も勇気を振り絞って言葉を添えた。
「私も……正直最初は平君のことをよく知らなかったけど……今はちょっと見方が変わりました」
三人の間に一瞬の沈黙が流れる。
「ありがとう……」
東はようやく小さな声で言った。
「まさかこんな話ができるなんて思わなかった」
窓から差し込む夕日が三人の影を床に長く伸ばしていた。東の表情はまだ複雑だが、目に見える緊張は徐々にほどけていく。
「さて」
本田がふと立ち上がる。
「明日から作戦会議よ」
東は思わず吹き出した。
「作戦会議?」
「もちろん」
本田は口角を上げる。
「アズアズを最高の彼女にするプロジェクト」
西も嬉しそうに拍手した。
「私も協力する!」
東は少し照れくさそうに、しかし確かな決意を持ってうなずいた。
「ありがとう……本当に」
教室の外では下校時間を告げるチャイムが鳴り始めていた。今日の出来事が新しい章の始まりとなる予感が、三人の心に静かに広がっていた。
# 尊い友情の誓い
深夜の薄暗い自室で、本田梨花子はパソコン画面に映る原稿データを眺めていた。普段ならお気に入りのVチューバ―を見るか、エロゲをプレイしている時間が、今日ばかりは全く集中できない。
「……尊い」
思わず呟いた言葉が虚しく天井に吸い込まれる。先ほどまでの東とのやりとりが何度も脳内で再生される。虚構の世界に生きる自分がリアルでこれほど感情を揺さぶられた経験はなかった。
「ただの陽キャリア充ヤリマンギャルと思っていたけれど…まさか正反対だったなんて…ね…」
言いかけて本田は苦笑した。今日の話で東の誤解は解けたし、悪く言うつもりはない。むしろ逆だ。あれほど鮮烈な光を放っていたのに、一人の男に触れられて脆くも崩れかけていた。それがあまりにも……
「尊すぎる」
再び同じ言葉が零れる。彼女の指がキーボードを弾き始めた。普段なら物語の中でしか使わない言葉が今まさに自分自身の胸の内にある。液晶画面に文字列が増えていく。
『アズアズ×平クン 尊い案件発生』
その下には既に書き出されている詳細な計画表。彼女の脳内で様々なシチュエーションが渦巻いていた。
---
翌朝、教室はすでに喧騒に包まれていた。本田は窓際の席から全体を見渡す。東はまだ来ておらず、西が一人で小説を読んでいる。本田の視線に気づいた西が本から顔を上げた。
「おはよう、ホンちゃん」
「おはよう、ニッシ」
短い挨拶のあと、本田は何か言いたげに西を見つめる。西は彼女の異変を感じ取り、少し首を傾げた。
「何かあった?」
「アズアズのことなんだけど」
本田の声はいつもより柔らかい。
「昨日の話の続きがしたくて」
西はすぐに理解し、周囲を確認した。幸い二人の会話を気にする者はいない。
「平くんのことだね」
「そう」
本田はスマホを取り出し、昨夜作成した計画表を見せた。
---
「すごい……」
午前の授業終了後、屋上のベンチで三人は向かい合っていた。東は本田の計画表を見て絶句している。そこには緻密なスケジュールとフローチャート、東と平を接近させるための巧妙な罠、もとい作戦が描かれていた。
「これは……過保護すぎない?会話分岐Aで平の反応が芳しくない場合は分岐Dにジャンプ…って、なにこれ?」
東は若干引いている。
「何が問題?」
本田は真顔で答える。
「最大限の支援体制よ。恋愛初心者には必要なもの。HowTo本」
西が小さく笑った。
「ホンちゃんらしいね」
「そもそもなんで本田さんがそんなに張り切ってるわけ?」
東は本田を疑わしげに見つめる。
「なぜって?」
本田は一瞬考え込んだ後、真っ直ぐに東を見た。
「面白そうだから」
東は眉を寄せた。
「面白そうって……」
「だって」
本田の瞳が輝いた。
「こんなに熱量のある恋愛関係を近くで見られる機会なんて滅多にないでしょう?しかも片方は私の親友」
東と西は驚いて顔を見合わせた。これまで西以外の人間には一切興味を示さなかった本田が、「親友」という言葉を使ったのだ。
「それに」
本田は続けた。
「もしもの時は私が全力で阻止するわ」
「……何を?」
「貴方が傷つく未来」
その言葉には静かな決意が込められていた。
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昼休み、平は屋上へ続く階段を上がっていた。購買で買ったパンを食べるために少し静かな場所を探していたのだ。屋上の扉を開けた瞬間、風に乗って女子たちの笑い声が耳に入る。
「……なんだ?」
普段人が少ない場所で珍しく賑わっている。好奇心に駆られてフェンスの方へ近づくと、そこに見覚えのある三人が座っていた。東と本田、そして西。
「あ」
思わず声が出てしまい、三人が同時に振り返る。
「平?」
東が驚いた表情で立ち上がった。
「偶然ね」
本田が東の袖をそっと引っ張る。
(計画変更。接触成功)
彼女の無言のメッセージを東は即座に理解した。
「何してんの?」
平は何気なく尋ねた。
「ちょっと作戦会議よ、女子三人だけの秘密会議」
本田が代わりに答える。
「そうそう……文化祭のこととか」
東はぎこちなく笑った。
「へぇ?」
平は少し怪訝な表情を浮かべたが、すぐに理解した様子でうなずいた。
「平くんは……どうしたの?」
西が遠慮がちに口を開く。
「昼飯の場所を探してただけ。邪魔したな」
そう言って平は階段の方へ歩き出す。
「待って!」
東が思わず呼び止めてしまった。
「ここで食べてったら?」
三人が一斉に東を見る。西の目に小さな喜びの色が浮かび、本田は満足そうに微笑んだ。
「いいけど…男一人だとちょっと恥ずいな」
平は少し躊躇った後、諦めたように肩をすくめた。
四人は微妙な距離を保ちながら座り直した。風が吹き抜け、平の茶色い髪が揺れる。
東は彼が座るスペースを作るために少し横に移動しようとしたが、ふとした拍子に肩と肩が触れ合ってしまった。
「あ……ごめん」
「……別に」
平はそっぽを向いた。しかし東は見逃さなかった―彼の耳が微かに赤くなっていることに。
本田と西はこっそり目配せした。こうやって少しずつ平に意識させていこうと。
# 作戦会議開始
放課後の図書準備室は夕日で橙色に染まっていた。三人だけの空間で、本田がテーブルの中央に広げた『本田ノート』に向かってペンを走らせている。
「まずは現状分析から始めましょう」
本田はページを一枚めくり、東を真っ直ぐ見つめた。
「やっぱり恥ずかしいんだけど……」
東は椅子に浅く腰掛け、両膝をぎゅっと閉じて縮こまっている。
「アズアズ、恥ずかしさを乗り越えなければ何も始まらない。自分の強みを把握するのは基本中の基本」
本田は容赦なく言い放つ。
「大丈夫だよ。東さんは素敵な人だから」
西が優しく東の腕に触れた。
「ありがとう……」
東が深呼吸して姿勢を正すと、本田はリストを読み上げ始める。
「まず第一に、圧倒的な美貌による魅力。この学校でもトップクラスね」
彼女は最初の項目に赤線を引いた。
「いや、そんな……」
東は思わず頬を赤らめた。
「事実よ」
本田はぴしゃりと言い切り、次に進む。
「第二に抜群のスタイル。平くんのような健全な男子高校生には致命的でしょうね」
「致命的かどうか知らないけど……」
東はぼそりと言った。
「第三に男性経験の豊富さ。これを逆に利用できれば……」
本田の言葉に東は息を呑んだ。
「待って!それは使いたくないの!今の私にとっては汚点みたいなものだし……平には見せたくない」
東は必死に訴えた。
「東さんが大切にしたいと思うなら、私たちも尊重するよ」
西が静かにうなずいた。
「じゃあ第四項に行きましょう。アズアズ本来の明るく社交的な性格」
本田はわずかに表情を緩めた。
「これこそ問題だよね。平くんの前だと緊張してしまって…」
西が珍しく積極的に口を開いた。
「そうなのよ!平の前だと完全におかしくなっちゃうの。いつもの自分でいられない…」
東は拳を握りしめた。
「だからこそ『作戦C』が必要になるわけね」
本田はノートの隅に何かを書き込んだ。
東が身を乗り出した。
「どんな作戦?」
「それはまたあとで、第五項に戻りましょう。中学時代の共通の記憶。これを自然に会話に出せれば……」
本田は再びリストに戻った。
「ダメ!絶対にダメ!」
東は急に立ち上がった。
「あの時期の平を思い出すと……今でも胸が痛むの」
西が静かに説明した。
「中学時代の平くんは確か太っていて、東さんからも遠ざかってたっていってたよね」
「そう……」
東は窓の外を見つめた。
「あの頃の平も可愛かったんだけど……自分が近づいていかなかったのは確か」
本田が鋭く質問した。
「では第六項はどう?『一番仲のいい女友達』という立場は使える?」
東は複雑な表情を浮かべた。
「使えないこともないけど……」
彼女はためらいながら続けた。
「『女友達』っていう殻を破るのが難しくて……」
西が小さく手を挙げた。
「私が思うに」
彼女の言葉はゆっくりとしているが確信に満ちていた。
「東さんは既に多くの武器を持ってる。でもそれを最大限に活かす方法がわかってないだけ」
本田が大きくうなずいた。
「その通り。つまり問題は技術ではなく実践の場よ」
東は突然決意を固めたように言った。
「わかった……やってみる!私の全部を使って……平を振り向かせる!」
三人は夕日に照らされた顔を見合わせた。作戦開始のゴングが鳴った瞬間だった。
# 平くんの分析
夕暮れの光が徐々に薄れていく中、本田は新たなページを開いた。「敵を知る」と大きな文字でタイトルを書き込む。
「まずは外見から」
本田は几帳面な字で列挙していく。
「身長180cm台。均整の取れた体型。茶髪サラサラヘア。切れ長の瞳。表情に翳りはあるけれど十分にイケメンね」
本田は淡々と続ける。
「ファッションセンスも悪くない。最近の若者のトレンドより少し落ち着いたセレクトが好感度高いわ」
西がふわりと微笑んだ。
「私、平くんの服いつも素敵だなって思ってました」
「実はあれも努力の賜物なのよ」
東が誇らしげに言った。
「中学時代は……まあ言わなくてもわかるわね。高校に入ってから猛勉強したんだと思う」
本田は次に移った。
「趣味は音楽。マイナーなロックバンドが好きでよくアズアズと話題にしてるわね」
「そうそう!私の知らない世界教えてくれてすごく楽しいの」
東の目が輝いた。
「私のプレイリストに勝手に追加しちゃったくらい大好きになっちゃった」
「それ大事なヒントよ」
本田がペンで東を指した。
「共通の趣味という武器があるのに使ってないじゃない」
東はシュンとなった。
「だって……一緒にカラオケとか誘ったら重くないかなって」
西がそっと手を添えた。
「タイミングの問題かもしれまないね」
本田はさらに書き続ける。
「高校一年時に短期恋愛の失敗歴あり。原因は……」
彼女はわざとらしく躊躇した。
「ファッションセンスがなかったから振られたんでしょ?」
東があっさり答える。
「そう」
本田はうなずいた。
「付け加えると、当時は高校デビューしたてで舞い上がっていた。今は完全に別人」
「でも私は中学時代の平も……」
東は言いかけて口をつぐんだ。
西が優しく遮った。
「共通の過去を持つというのは強み。ただ……」
「トラウマになりそうな内容ね」
本田は冷酷に指摘した。
「下手に触ると二人の関係が壊れる可能性もあるわ」
沈黙が流れる。
「他にも弱点はたくさんあるわ」
本田はページを埋め尽くす勢いで書き続けた。
「自己評価が極端に低い。自分に自信がない。すぐに反省してしまう。笑うのさえ下手くそ」
東が突然叫んだ。
「違う!平の笑顔は本当に素敵なの!」
「それが特別な意味を持つということね」
本田は満足げにノートを閉じた。
「あなたに対してだけ見せる素顔。それこそ最大の突破口よ」
夕闇が深まる部屋で三人の少女たちは平の輪郭を描き出していた。最も難しい標的の攻略に向けて—
---
本田はゆっくりとペンを走らせた。彼女の頭脳は計算機のように正確に回転する。
「最後に、天の運(タイミング)と地の利(場所)。これが鍵になるわ」
西が息を飲んだ。
「場所……?」
「ええ」
本田は東をまっすぐ見つめた。
「あなたたち、普段どこで勉強してるの?」
「ファミレス……」
東は小さく答えた。
「それじゃ駄目」
本田の言葉は鋭かった。
「他の客の目、店員の目、BGM。どれも集中力を削ぐ。何より――」
彼女はペンをノートに叩きつけた。
「人の目は『もし何かあったら』という安心材料、逃げ道を相手に与えるのよ」
東が顔を赤らめた。
「な……何かって……!」
「だから密室が必要」
本田は平然と言った。
「平くんの家は行ったことある?」
東は首を横に振った。
「ないよ!だって……あいつ、他人を家に入れたくないタイプだし……」
西がそっと口を開いた。
「それなら東さんの家はどうでしょう?」
三人の間に緊張が走る。
「私の家……?」
東は目を丸くした。
「そう」
本田は東の反応を慎重に見極めながら続けた。
「家族構成は?」
「父と母と私だけ」
東は戸惑いながら答えた。
「週末は二人とも出かけることが多いけど……」
「完璧!」
本田の目が輝いた。
西が小さな声で確認した。
「次の日曜は……ご両親はご在宅?」
東はスマホを取り出し予定を確認した。
「その日は……いない。午前中から買い物で……夜まで帰らない……」
本田の口角が上がった。
「これ以上ないチャンスよ」
東の心臓が早鐘を打つ。自分の部屋で平と二人きり……
想像するだけで頭が爆発しそうになる。
「で……でも!自然に家に誘うなんて無理!」
彼女は必死に反論した。
「簡単よ」
本田は冷静に答えた。
「こう言うの。『今日は財布忘れちゃった!ファミレス代払えないからウチでやろう?』って」
「そんなバレバレな嘘……!」
東は悲鳴に近い声を上げた。
西が柔らかくフォローする。
「平くんなら疑わないと思う。東さんらしい可愛い失敗だと思うはず!」
「しかも」
本田は決定的な一撃を放った。
「あなたたちの最寄り駅同じよね?歩いて行ける距離なんでしょ?」
東は観念したようにうなずいた。
「確かに……駅から10分くらいだけど……」
「もう決まりね」
本田は立ち上がり窓に向かった。
「これ以上ない絶好の機会。神様が作った舞台よ」
薄暗い部屋に月光が差し込む。その光の中で東の顔が複雑に揺れた。
「どうしよう……私…」
彼女の声は震えていた。
西がそっと彼女の手を握った。
「大丈夫。きっと上手くいくよ」
「そうね」
本田は振り返らずに言った。
「ただし一つ条件があるわ」
東と西が同時に息を止める。
「必ず結果報告すること」
彼女は振り向いてニヤリと笑った。
東が俯いていると、本田が突然動きを見せた。
「ダメだったら、一緒に泣いてあげるから」
彼女は真顔になり東をぎゅっと抱きしめた。いつも冷たく尖っていた言葉遣いとは違う、温かい囁きだった。
「本当に……?」
本田は何も言わず、ただ強く抱きしめ続ける。人嫌いの彼女にとって、たった数日の友情でも心を開く価値があったのだ。
西が涙ぐみながら加わり、三人は団子のように固まった。
「私も協力する!絶対成功させよう!」
東の目に再び涙が溢れた。今度は嬉しさからだった。
「ありがとう……二人とも……」
---
翌日の昼休み、7組の教室前を通りがかった平が目にしたのは、どこか晴れやかな表情の東だった。
「平、昼ごはん食べた?」
いつもの日常会話なのに、今日は特別に響く。
「ああ、もう食べたけど…東、7組に何か用?」
(東は1組のはずだけど…?)
一方東は心の中であの決戦の日を想像していた。
(来週の日曜日……ついに……)
顔が熱くなり慌てて机に向かう。
「おい東」
平が突然声をかけた。
「どうした?顔赤いぞ」
「なっ!なんでもないわよ!!」
反射的に拳が出てしまった。
西がつられ笑いをしている。
本田は無表情で読書中だが、ページをめくる指が微妙に震えていた。
平の頭上には大量の疑問符が浮かんでいた。
(こいつら最近変じゃないか……)
特にあの西が笑っている理由がわからない。
その日の授業中、東はノートの隅に小さくハートマークを描いていた。
(成功させてみせる……絶対に!)
### 運命の日曜
待ち合わせ場所のファミレス前に、東は三十分早く到着していた。何度も鏡を見て姿を確認する。
ワンピースの裾は膝上で少し透け感のある素材。それに春らしいカーディガンを羽織っている。本田が「これが最大限の挑戦よ」と選んだコーディネートだ。
「やっぱり派手すぎたかな……」
髪を直しながら呟いた時、
「お待たせ」
背後から声がした。振り返ると平が立っている。制服ではない私服姿が新鮮だった。
「よ、よー」
声が上ずる。
平の視線が東の全身を一巡りした。明らかに普段と違う装いに戸惑っているようだ。
(効果はあり……?)
「じゃあ入るか」
平が店の扉を開けようとした瞬間、東が急いで腕をつかんだ。
「待って!」
声が裏返った。
「どうした?」
平が眉をひそめる。
深呼吸を一つ。練習してきた台詞を思い出そうとする。
「ゴメン!集まってもらって悪いんだけど……」
喉がカラカラだ。
「実は……財布忘れちゃったの!」
「え?」
平の目が丸くなった。
「だから今日は……私の家で勉強会にしない?」
言い切った途端、耳まで赤くなるのを感じた。
平は数秒黙った後、「俺が貸そうか?」と言い出した。
(そのパターンは……想定内!)
「ウチの家訓で人から絶対に借りるなっていうのがあって……」
「じゃあ、おごるよ」
「え……?」
予想外の返事に頭が真っ白になる。
(そんなの想定してない……!)
脳内で本田が怒鳴る声が聞こえた気がした。
『計画外のこと言われたら即座に切り返しなさいよ!』
「えーっと、その場合は……そのー」
言葉が出てこない。両手をバタバタさせる。スマホを見たりしている。
「奢ってもらうのも家訓で……」
完全にパニック状態になった東を見て、平が吹き出した。
「そんなに慌てることか?」
笑い声に安心感を覚える。
「分かったよ。じゃあ東の家にお邪魔するよ」
その言葉に東の心臓が飛び跳ねた。
「ほ、本当!?」
「ああ」
平は肩をすくめて答えた。
### 商店街の影で
本田はカメラをバッグにしまいながら西の袖を引いた。
「よし、危なかったけど最大の山場は越えたし、ここからは二人のプライベート。撤収しよ」
西がスマホ画面を見せる。そこには盗聴器からの音声が表示されていた。
『東?なんか今日の格好違くない?』
『そ、そう?たまには気分転換にね』
本田はにやりと笑った。
「良い感じね」
「ここまでは完璧ね」本田が囁く。
「東さんならきっと大丈夫だよ」西が小さな拳を握った。
本田は一息つくと「がんばれアズアズ」と呟くと、「じゃあ、せっかくだから久しぶりにニッシとデートとしゃれこもうかな」と西の手を取り、商店街に消えていった。
---
### 東の家の前
「ここだよ」
玄関を開けながら東は必死に平静を装った。
「お邪魔します」
平があまりにも普通に上がるので拍子抜けする。
「親は?」
廊下で立ち止まる平に東は早口で答えた。
「今日は二人とも遅いから大丈夫」
階段を上がる足が震える。告白まであと十数歩のところで──
「そのワンピース似合ってる」
突然の言葉に東は踊り場で転びそうになった。
「な……何言ってんの!?」
必死に壁に手をつきながら叫ぶ。
平は真顔で続けた。
「いや、いつもと雰囲気違ってて落ち着かないけど……良いと思う」
心臓が爆発しそうになる。これは罠なのか?それとも計算?
「とにかく部屋行こう!」
東は逃げるように階段を駆け上がった。
### 東の部屋にて
「飲み物とってくるね!」
部屋に入るなり東は叫んでキッチンへ逃げ込んだ。
冷蔵庫に頭をぶつけながら必死に深呼吸する。
(告白のタイミング……タイミング……)
テーブルでは平が無造作に荷物を広げている。
その姿を見るだけで全身が熱くなる。
東は決意を込めて部屋に戻った。
### 勉強開始から30分
カチッ、カチッ……
壁掛け時計の秒針が妙に大きく響く。
教科書を開いてから30分。
東は問題を解きながらも、ページをめくるふりをして本田のメモを脳内で再生していた。
**告白タイミングは生き物とはいえ**
**勉強会が始まってすぐは下の下**
**できれば30分程度勉強をしたのち**
**自然と休憩の流れから切り出すのが吉**
(あと15秒……)
無意識に指が机の縁をトントン叩いている。
「これ分かる?」
平が唐突に数学の問題を指差した。
(しまった!まだ30分じゃないのに!)
「えっと……ここの公式を使うんだよ」
慌てて説明する声が裏返る。
「aを移項して……yに代入して……」
平はじっと見つめたまま動かない。
その視線が首筋に刺さる感覚。
(早く次の問題行って!)
「なるほど」
平がようやくペンを持ち直した時──
ピピッ!
スマホのタイマーが30分経過を告げた。
「あ!」
反射的に声が出る。
「どうした?」
「いや……その……」
(ついに来た!)
東は急いでペットボトルを開けた。
「ちょっと休憩しようか!」
### 休憩タイム
「コーヒー入れるね」
台所に向かう足取りが浮いている。
カップを準備しながら深呼吸。
(このタイミングだ……)
湯気越しに平の横顔が見える。
窓辺で伸びをするその姿さえ絵になる。
「はいどうぞ」
コーヒーを置きながら隣に腰掛ける。
### 感情の頂点で
(……よし)
東はゆっくりと顔を上げた。
本田の作戦ノートの最終頁が脳裏に浮かぶ。
**《告白の条件》**
**最も重要なのはあなたの気持ち。**
**気持ちが最大限に高まっていること。**
**平の目をじっと見て、自分の気持ちを確かめなさい。**
平がコーヒーカップを持ち上げる一瞬──
目が合った。
(今だ)
鼓動が耳を打つ。
手の中のカップが汗で滑りそうだ。
「……平」
声が小さすぎて自分でも聞き取れない。
「ん?」
平がこちらを向く。
いつもの斜に構えた表情ではなく、
不思議そうな子どものような目だった。
その瞳に映る自分を見つめ返す。
胸の奥底から何かが溢れ出してくる。
(これが……好きってこと)
息を止めても抑えきれなかった。
「私……」
### 決意の告白
東は一気に言った。
「ずっと平のこと好きだった」
声が震えないように噛み締める。
「……」
平の手からコーヒーカップが滑り落ちそうになる。
寸前でキャッチしてテーブルに置いた。
沈黙が部屋を満たす。
東は自分の鼓動で耳が潰れそうだった。
(言うべきことは言った……!)
本田のノートの最後の一行を思い出す。
**《告白後の最適行動》**
**相手の反応を待つのではなく**
**あなた自身の言葉で最後まで貫きなさい**
「中学の時から……」
涙が滲む。
「一緒にいると……すごく安心するの」
窓から差し込む夕陽が平の輪郭を金色に縁取っていた。
その光景が永遠に記憶に焼きついていく気がした。
### 感情の奔流
東の告白は止まらなかった。
「私は……平のことが好き」
一語ごとに涙がこぼれる。
コーヒーカップを持つ平の指が微かに震えた。
「平のことが大好き」
喉が詰まる。声が掠れる。
それでも止まらない。
「平のことを愛してる」
胸の奥から言葉が噴き出した。
抑えきれない感情が洪水のように溢れる。
「平を見てるといつも胸がドキドキする」
膝の上に置いた手が震えていた。
爪が掌に食い込む。
「平の声を聞くと切なくなる」
目を閉じて深呼吸する暇もない。
「平と手が触れるとたまらなくなる」
東は無意識に平の方へ身を乗り出していた。
「平に私をずっと見ていてほしい」
「平のことをずっと見ていたい」
### 予想外の展開
言葉が途切れた瞬間、部屋に静寂が落ちた。
平は呆然と東を見つめている。
その表情から驚きと混乱が読み取れた。
「……マジか」
ようやく絞り出した声は擦れていた。
「冗談とかじゃなくて?」
東は首を横に振りながら必死に答えた。
「冗談なんかじゃない……本当に好きなの」
### 勇気の代償
告白した後に襲ってきた恐怖に身を縮める。
もし拒絶されたら?
もし今まで通りの友達でいたいと言われたら?
それでも東は視線を逸らせなかった。
平の瞳の奥にある何かを探るように。
(もう戻れない)
心のどこかで冷静な自分が囁く。
長い沈黙の中で時間が止まったような感覚。
### 感情の爆発
平の沈黙に耐えられず、東の口が勝手に動き始めた。
「ここまで言っちゃったら、もういいや」
諦めに似た響き。
「中学校の頃の平」
「今と違ってぽっちゃりしてたよね」
思い出し笑いが漏れる。
「でもね」声に力を込める。「あの頃の平も、スゴく可愛いって思ってた」
窓から差し込む午後の光が東の涙で歪んでいた。
平は無言で東の言葉を受け止める。
「高校一年に入る前、身体鍛え始めて茶髪に染めて」
「イケメンに変わってく平を見て強いなって思ってた」
声が震える。
「高校三年になって少しずつ明るくなっていく平が眩しかった」
東は顔を両手で覆った。
「高校三年で平と同じクラスになった西さんが妬ましかった」
指の隙間から嗚咽が漏れる。
「平と同じ生活環境委員の本田さんと話す平を見て嫉妬で狂いそうだった」
### 激昂と告白
突如立ち上がった東が平に迫る。
「平と一緒に登下校する時」
目の前に立つと平の顔が赤くなっているのがわかった。
「毎日何時間もかけて化粧して髪セットしてるんだよ?知ってた?」
東は自分の姿を誇示するようにゆっくりと回った。
「完璧な角度で笑いかけられるように鏡で練習してさ」
そして急に声が小さくなった。
「高校3年の学園祭で2ショット写真ねだったよね?そこから距離置かれて怖くなったから、ずっと気持ちを押し殺してた。ずっとずっとずっと」
崩れるように椅子に戻った。
「私のすべては平で占められているの」
### 深淵の告白
深呼吸をして東は続けた。
「それでね」声がかすれる。「私の一番の自己嫌悪」
再び涙がこぼれる。
「中学から高校1年の頃」
「好きでもない男たちに抱かれていた自分」
手が震える。
「流されるまま抱かれて別れてまた抱かれて」
「好きという感情もなかったのに」
俯いて額を押さえる東。
「こんな汚れた私が平を見ると胸が高鳴るの」
突然顔を上げて平を見据えた。
「おかしいよ、平のせいだよ」
怒りに近い感情が東の目を潤ませる。
「今までの私はこんなじゃなかった!」
「ぜんぶ、ぜんぶ、平のせい!」
### 後悔と懇願
突然我に返った東は両手で顔を覆い蹲った。
「ごめんなさい……私…こんなの……」
嗚咽が部屋に響く。
長い沈黙。
東の肩が小刻みに震える。
平はゆっくりと立ち上がり、テーブルを挟んで向かい合った。
「東」
優しい声。
「顔上げてくれよ」
平はそっと手を伸ばし、東の肩に触れた。
「そんな風に自分を責めるのはやめてくれ」
東が恐る恐る顔を上げると、平の目に映る自分の姿が見えた。
### 心の解放
平の言葉に東は目を見開いた。
「俺も……苦しかったんだ」
声が震える平。
「中学の頃から……俺も」「東のこと見てた」「たまに話しかけてくれるのが嬉しかった」
東の心臓が早鐘を打つ。
「でも……」平は辛そうに続ける。「クラスの中心で輝いてる東とは住む世界が違うって……」
俯きながら言葉を選ぶ平の姿に、東は中学時代の記憶が鮮明によみがえった。
「高校一年で付き合った彼女にフラれて……『思ってたのと違う』って言われて……それ以来」
東が当時知らなかった平の傷。
「だけど東だけは……変わらず接してくれて……ずっと感謝してた」
### 共鳴する想い
「東の過去なんて関係ない」と平は真剣な眼差しで言った。
「だって、東は東だから」
東の胸に熱いものが込み上げる。
「東の方から言わせてゴメン。俺の方こそ、早く言うべきだったんだ」
平が一歩近づく。
「東、俺と付き合ってくれますか?」
### 過去を超えた絆
東の涙腺が崩壊した。
「本当に……?」
嗚咽混じりに尋ねる。
「私のこと……受け入れてくれるの?」
平が優しく頷く。
「東が好きなんだ」
迷いのない声。
「過去も含めて全部」
東は震える手を伸ばした。
「私も……ずっと……好きだった」
二人の指が触れ合う。
「中学から好きだった」
「高校から好きだった」
時を超えた想いが重なる瞬間。
### 新たな旅立ち
「これからは……」
平が言いかけて止まる。
東がその続きを紡ぐ。
「一緒に歩いていこう」
初めて握る手のぬくもりに未来を感じながら。
長い間胸に秘めていた想いがようやく形になる瞬間だった。
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# 後日談:報告会
翌日の月曜日、屋上のベンチに座る三人。本田が西の手を握りしめながら、「アズアズの恋の行方はどうなったの?」と尋ねる。
「あのね……」東は恥ずかしそうに髪を耳にかけた。「昨日、告白したの」
「ふーん」と本田がノートを閉じる。
「……OKもらった」と東が小さな声で付け加えた。
「おめでとう」西が控えめに微笑む。
「それでね、本田ノートのおかげで上手くいったの!自分の過去を全部さらけ出して……平に受け入れてもらえて……二人には感謝してもしきれない」
本田は意地悪く笑った。「それだけ?」
「え?」東が困惑する。
本田が手元のスマホを「ポチッとな」と操作する。「私は……平のことが好き」
告白の言葉がスピーカーから流れる瞬間、東の顔から血の気が引いた。
「えー、盗聴器Offにする約束だったじゃん!」東が飛び上がる。
「ごめんごめん」本田が平然と言い訳する。「あの盗聴器On/Offのスイッチ付いてないやつだったらしくて」
「嘘つき!知ってたくせに!」東が叫ぶ。
「だって」本田が西の肩に頭を乗せる。「ニッシが『東さんたちうまくいくかな?心配』って言ってたから」
西が顔を赤らめる。「そんなこと……言ったっけ?」
「言ったよ〜」本田が嬉しそうに西の頬をつつく。「だから友情のために仕方なく証拠を集めたわけ」
「証拠って何よ!」東がスマホを取り上げようとするが、本田に避けられる。
「もう一つ聞かせてあげる」本田がまた画面をタップする。「東の方から言わせてゴメン……俺と付き合ってくれますか?」
「やめてぇぇぇ!」東が悲鳴を上げる。
暫く悶え続けていた東だが、思い直したように、そして、照れくさそうに言った。
「でも本当にありがとう。あのノートも……こんな風に茶化してくれるのも」
本田がわざとらしく驚いた表情を作る。「あれ?褒めてくれるの?」
「今日は特別」東が腕を組む。「でも次に盗聴したら……」
「わかってる」本田が両手を挙げる。「平クンに言っちゃうんでしょ?」
「当然!」
屋上に穏やかな風が吹く。東は昨日までの苦しみが嘘のように晴れやかな気持ちになっていた。
「ところで」東が思い出したように尋ねる。「なんで私だけ恥ずかしい目に遭わされるの?」
本田と西が顔を見合わせる。
「それは」本田がウインクした。「アズアズが一番面白いからに決まってるでしょ」
「ひどーい!」東が叫ぶ。
三人の笑い声が青空に響いた。
# 重い女と呼ばれて
西が真剣な表情で東を見つめる。「それにしても同じクラスになっただけで、私が妬ましいって、東さんの独占欲って…」
「そうそう」本田がニヤリと笑う。「私も同じ委員会なだけで、狂いそうなほど嫉妬されるなんて、夢にも思わなかったわよ」
「もうやめてぇ!」東が両手で顔を覆う。東は再び赤面しながら2人に対して「私ってやっぱり重い女かな?」と問う。
西と本田は顔を見合わせる。
「正直言うとね」西が慎重に言葉を選びながら言う。「最初は少し怖かったかな。でも……」
「でも?」
「東さんのそういうところが平くんを惹きつけたんじゃないかな」西が優しく微笑む。「それに私、東さんみたいに素直に気持ちを表現できる人、素敵だと思う」
本田がわざとらしくため息をつく。「まあニッシだから甘いよねー。私は断言するよ。アズアズはめちゃくちゃ重い、つーか怖い」
「ひぃっ!」東が肩を震わせる。
「でも」本田が指を一本立てる。「その『重さ』こそがアズアズの魅力だと思うよ」
「どういうこと?」東が怪訝な顔をする。
「考えてみなよ」本田が真剣な表情になる。「男って単純だからさ、『この人には自分しかいない』と思わせたら勝ち。軽い女より断然有利」
西がそっと本田の手を握る。「ホンちゃんの言う通りかも。平くんは東さんの真っ直ぐな気持ちに救われたんだと思う」
「でも……」東が不安そうに言う。「重すぎる女って捨てられやすいって聞くけど……」
「それも事実」本田がうなずく。「だからこそバランスが必要なんだよ。ニッシと私の例で言うなら……」
本田が西の肩に腕を回す。「毎日LINE送ったり電話したりするのは重いかもしれないけど、それでも私たちの場合はお互いを求め合ってるから問題なし」
西が少し赤くなりながら付け加える。「それに東さんは平くんに対して常に誠実で素直だから。平クンにとって重いと感じさせない程度の愛情表現を学べば……」
「完璧ね」本田が締めくくる。「今日から『重い女卒業プロジェクト』始動だ!」
東は複雑な表情で2人を見る。「私をいじるのが楽しいだけでしょ?」
本田と西が同時に吹き出した。
「バレちゃいました?」西が舌を出す。
「まあね」本田がウインクする。「でもアズアズが幸せそうで嬉しいのは本当」
風が優しく吹き抜ける中、東は深呼吸した。確かに自分は重いのかもしれない。でもそれが平を引き寄せたという事実は否定できない。
「ありがとう」東が静かに言う。「これからは適度な重さを目指すよ」
「そうだね」本田が突然真面目な顔になる。「今度のデートは盗聴しないでおくから安心して」
「それは当たり前!」東が反撃する。
三人の笑い声が午後の屋上に響き渡った。
# 後日談:人間って案外面白い
本田はその夜、昼間の東の百面相を思い出していた。東紫乃──山田の友人だから顔だけは知っていた。
スクールカースト上位の陽キャギャル。悩みなんて何もないつまらない人間だと思っていた。でも全然違った。
内に秘めた焼き尽くすほどの情熱と外に出せない悲しいくらいの脆さ。自分が勝手に想像していた東とは全く違う魅力的な人物だった。
正直、東は危うい。茶化したけれど、平に振られたら死を選ぶ可能性があるほど平にイカれている。それは東の魅力ではあるし、平の方も東にメロメロな現状だとそこまで心配しなくていいかもしれない。だけど……
(親友として)
この言葉が自分の中で奇妙に響く。西以外に向けられたことのない感情。もう少し東の危うさを何とかしてあげたいと切に思う。そんな自分に驚きを感じる。
スマホを手に取り、メッセージアプリを開く。西のアイコンをタップしようとして──ふと止まる。
『ねぇニッシ』
『今度の日曜、アズアズ誘ってどこか行かない?』
送信ボタンを押す前に一瞬躊躇する。自分の領域を超えた提案。いつもなら西との二人だけの時間を最優先にするのに。
『いいね!』数秒後に届いた西の返信に少しほっとする。
スマホを枕元に置き、天井を見つめる。窓から差し込む月明かりが床に淡い光を落としている。
(私が勝手に想像していた東とは全く違う魅力的な人物だった)
その言葉が頭の中で繰り返される。そう、人は表面だけでは測れない。西だって最初はただのクラスメートだった。何度も声をかけられて次第に心を開いていった。
そして今、東という新たな存在が自分の中に入ってきた。拒否反応はない。むしろ──興味深い。
「ホンちゃんって時々冷たいよね」
かつて西に言われた言葉が甦る。あの時は否定した。でも今なら理解できる。自分が世界に対して作り上げてきた殻。それを破ったのは紛れもなく西だ。そして今、東という存在が更なる亀裂を入れている。
「私、変わってるのかな」
声に出して言ってみる。返事は当然ない。けれど胸の中では確かな変化を感じていた。
明日からも学校はある。東とは教室が離れているから普段顔を合わせることはない。でも次の休み時間にトイレで遭遇したら?
いつもなら無視していた。でも今は──声をかけてみたくなる自分がいる。
ベッドサイドランプをつけ、机に向かう。ノートを開き、久しぶりにペンを持つ。いつものように西との思い出を綴ろうとして──気づけばページいっぱいに東の様子が描かれていた。
「これはこれで面白い」
自分の創作意欲を刺激する新たなキャラクター。そしてそれは二次元ではなく実在する人間だ。
ペンを止め、ふと考える。
親友として──もう少し付き合いの幅を広げてもいいのかもしれない。だけど、いまはアズアズを見ているだけで面白いから、もう少し後で、ね。
カーテンの隙間から朝日が差し込み始めている。新しい一日の始まり。本田梨花子の内側で何かが確かに変わり始めていた。
# 後日談:恋愛の温度感
西もまたその夜考えていた。東の告白と平の返事。盗聴で人の告白シーンを聞いてしまったことの罪悪感も大きかったけど、ホンちゃんが東さんに盗聴していたことをぶっちゃけたことで気が楽になってしまった。それにしても、同じクラスや委員になっただけで、妬んだり、嫉妬できる東の情熱ってすごいなと素直に思う。
自分は健太郎君と付き合っているけれど、健太郎君の沢山いる女友達に対して嫉妬の思いを抱いたことは一度もない。
ベッドに寝そべりながら天井を見つめる。窓の外は暗闇が広がり、部屋の中には自分の呼吸音だけが響いている。健太郎君の屈託のない笑顔を思い浮かべる。クラスの人気者で誰とでも気軽に話せる彼。自分はそんな彼の特別な存在になれたことが信じられないくらい嬉しかった。でも……
(私は健太郎君が他の誰かと楽しそうに話していても気にならない)
むしろ自分の知らない健太郎君を見ることができて嬉しくさえ感じる。これが西奈津美の恋愛温度なのだろうか。淡白すぎるのか、それとも……
西は更に考える。自分と山田のことを。奥手な自分が山田に対しては手を繋いだのも、キスをしたのも自分からだった。しかし、それ以上には踏み込めずにいる。
正確には山田から一度そんな雰囲気になったが、自分が断ってしまった。「まだ今じゃないと思う」と。あの時、そのまま流されてもいいと思ったけれど、最終的には断ってしまった。
(私って本当に欲がないんだろうか)
東さんのように狂おしいほどの情熱を持っていないことに寂しさを感じる。でも同時に安堵感もある。あんなに激しく誰かを想える強さと弱さ。どちらも自分にはない。
(もしあの時山田君を受け入れていたら……)
想像してみる。きっと幸せなはずなのに、なぜか怖い。自分の知らない何かになるのが怖いのかもしれない。あるいは単に準備ができていないだけなのか。
ベッドの上で小さく丸くなる。自分の胸に手を当ててみる。鼓動はいつも通り規則正しく打っている。東さんが語った「胸が苦しくて息もできない」という言葉を思い出す。
(私の胸はそこまで激しく高鳴らない)
それは嘘ではない。健太郎君のことは大切だし愛しているけれど、それは穏やかな湖のように静かな感情。それもまた恋愛の形なのだろう。
(東さんはもっと複雑なのかな)
あの人は情熱の海に溺れそうなほど沈んでいくタイプ。自分は湖の水面に映る月を見上げて満足するタイプ。どちらが正しいというわけではなく、ただ違うだけ。
再びベッドに倒れ込み、天井を見上げる。
「私もいつかあんな風に燃える日が来るのかな」
西は東の告白を想いだす。「中学から高校1年の頃、好きでもない男たちに抱かれていた自分、流されるまま抱かれて別れてまた抱かれて」。
セックスしたことがない自分には想像もできないけれど、自分の思い人にそんなことを告白した東の強さは分かる。そしてそれを受け入れた平の強さも。
「平クンは『東の過去なんて関係ない。だって東は東だから』って」
ベッドの上で仰向けになりながら、東と平の言葉を反芻する。西にとっては考えも及ばない世界。自分だったら……?そう考えてみるけれど、答えが出ない。
テレビドラマやネット記事で見る「初体験」の話。多くの女の子が悩んだり不安だったりする中、西自身は特に何も感じていなかった。
健太郎君のことは好きだし、いつかはそういうことも……とは思っているものの、急ぐ必要はないと感じていた。
(やっぱり私は普通じゃないのかな)
昔の東さんのように「流されるまま」になれたら楽なのかもしれない。でもそれは自分の意志ではなく、単なる受動的な選択。自分が求めるものではない。
ふと机の上に置いた山田とのツーショット写真に目が留まる。去年の文化祭での一枚。恥ずかしそうな自分と照れくさそうな彼。
(健太郎君は本当はどう思ってるんだろう)
時々見せる真剣な眼差し。優しい手の温もり。あの時に「まだ今じゃない」と言ったのは確かだけれど、それがずっと続くとは思っていない。
「私もいつか東さんみたいになるのかな」
独り言が零れる。東さんのような激しい情熱を持てる日が来るのだろうか。それとも、この穏やかな水面のような恋心こそが自分の形なのだろうか。
枕元に置いたスマホが震える。山田からのメッセージだ。
「明日図書室来る?新しく入った本があるんだって」
短いけれど、自分のために時間を割いてくれているのが伝わってくる。
「行く!」即座に返事を打ち、ついでにスタンプも添える。既読マークがつき、「良かった。じゃあ放課後な」という返事。
(そういえば平クンと東さん、今日から付き合い始めたんだよね)
クラスの皆はまだ知らない。東さんが自分のために打ち明けてくれた秘密。それを守るのが今の自分の役目。
「恋愛って本当に難しい」
天井に向かって呟く。東さんの悩みも平クンの戸惑いも全部理解できた訳ではない。けれど、それでも彼らは前に進もうとしている。自分の足で歩こうとしている。
西はゆっくり起き上がり、机に向かう。明日提出の宿題がまだ終わっていなかった。ペンを手に取りながら考える。
(私は私なりのペースで進めればいいんだ)
急ぐ必要はない。健太郎君も自分も互いを尊重しながら、お互いのペースで進んでいければそれでいい。
窓の外から見える月明かりに照らされながら、西は静かに決意を新たにした。自分の恋の形を見つけ出す旅はこれからだ。
# 後日談:第31回 平ともっと進展したい会議 by 本田
「……で、今日は何よ」
本田の声には明らかな苛立ちが含まれていた。カフェのテーブルに向かい合う東は、髪をいじりながら小さな声で話し始める。
「今日の平は……朝のホームルームの時に、私の答案用紙に"○"って書いてくれて……」
「はぁ?」
本田の声が一段と低くなる。
「それで?」
「えっと……それで……その"○"の書き方がすごく綺麗だったんだ……線が滑らかで……」
「馬鹿なの?」
本田の率直すぎる物言いに、東は頬を膨らませた。
「だってぇ〜!平の書いた字を見るのなんて滅多にないし!しかも私の答案に"○"なんて!」
「そりゃテストなんだから"○"くらい書くでしょ。で、それ以外の進展は?」
「あ、あと!」
東の瞳が輝いた。
「帰り道でさ、平が『東って髪の毛サラサラだよな』って言ってくれたんだ!髪を褒められたの初めてかも……!」
本田は天井を見上げて溜息をついた。告白から一ヶ月。進展といえばこれが限界だ。いや、むしろ後退していると言ってもいいかもしれない。5年前の東は男をとっかえひっかえしていたはずだ。それが今は小学生並みの初恋をしている。
「ねえアズアズ」
「なに?」
「あんたさ、本当に平クンと付き合ってるわけ?」
「え!?も、もちろん付き合ってるよ!昨日だって電話したし!」
「どのくらい?」
「えっと……30分くらいかな?」
「30分電話して何話したの?」
「明日の授業のこととか……」
「他には?」
「……学校帰りに寄り道する場所決めたりとか……」
本田はコーヒーカップを両手で持って一気に飲み干した。もう限界だった。
「あのさ、あんたたち本当に高校生カップルなの?昭和初期の許婚じゃないんだからさぁ!」
東はシュンとして俯いた。
「だってぇ……」
「だってじゃないよ。好きなんでしょ?進展したいんでしょ?」
東の目に涙が浮かんだ。
「うん……大好き……だから傷つけたくないし……迷惑かけたくないし……」
「だから小学生レベルになっちゃうの?」
「ごめん……」
本田は溜息をつくと、突然立ち上がった。
「よし。作戦変更ね」
「え?」
「アズアズが主導権握るの諦めた。もう無理だ、100年かかる」
「そんなぁ!」
「代わりに、平クンがアズアズを意識する方法を考える」
本田の目が鋭くなった。
「まずは物理的接触から。手繋ぎは基本中の基本」
「で、でもぉ〜」
「やるしかないの!」
本田は東の腕を掴んだ。
「明日から一週間かけて平クンの手を握る練習をする。最初は肩が当たる程度から始めよう。それから肘が当たる。次に手の甲が触れ合う。そして最後に握手くらいまで」
東は真剣な表情で聞き入っていた。
「これでどうなるの?」
「平クンだって健康な男子高校生だよ?いつも近くにいるアズアズの肌の感触を意識しないわけない」
本田は東の耳元で囁いた。
「それで気づいたら手を繋いでる。これが現代の恋愛テクニックよ」
東の顔が明るくなった。
「本田さん!ありがとう!」
「でもね」
本田は厳しい顔に戻る。
「これはアズアズが変わるチャンスでもあるの。平クンに甘えるのもいいけど、もっと堂々としなさいな。あの頃みたいに」
「あの頃?」
「あんた中学の頃『どうせ男なんてみんな同じ』って言ってたんでしょ」
東は赤面した。
「そ、それは若気の至りで…あの時代なんて戻りたくないし…」
「わかってる。でもあの頃の度胸はどこ行ったって言ってるの」
東は黙り込んだ。確かに昔の自分は違っていた。相手を試し、自分の価値を確かめるために男と寝ていた。でも今は違う。平だけは特別だ。
「ちなみに私が平クンの立場だったら」
本田はコーヒーを一口飲んだ。
「こんな幼い彼女を持ったら重荷に感じると思う。大事にしすぎて前に進めなくなる」
「……重荷……?」
「そう。可愛くて仕方ないからこそ手を出せない。壊れそうで怖い」
東の目に再び涙が浮かんだ。
「どうすればいいの……?」
「簡単よ」
本田は微笑んだ。
「自信を持って。あなたは魅力的だってことを忘れないで」
東はゆっくりと顔を上げた。
「……わかった」
その夜、東は久しぶりに鏡の前に立った。高校生になってから何度も変えた髪型。でも平が好きだと言ってくれるのは今のロングウェーブ。
(私らしい姿を見せてあげなきゃ)
携帯を取り出し、平にメッセージを送る。
『明日一緒に帰ろう?』
返信はすぐに来た。
『ああ、いいよ』
東は深呼吸して続けた。
『それと……ちょっと話したいことがあるんだ』
翌朝。8組の教室に入る東の背筋は昨日よりも少し伸びていた。友人の本田が小さく微笑む。
教室の平に向かって、東は小さな勇気を振り絞った。
「おはよう!」
平も振り向いて、
「おはよう」
そう言った時、東はほんの一瞬、自分の指先を平の袖口に触れさせた。
# 第31回 本田の独り言
夕暮れの帰り道。本田は一人、自宅への道を歩いていた。東と別れた後の静かな時間。スマホを手に取り、履歴をスクロールする。
(アズアズって本当にめんどくさいタイプだなぁ……)
思わず苦笑してしまう。頭の中で東の様々な側面が浮かんでは消えていく。
- 陽キャギャルでツンデレでヤンデレ
- 見た目完璧、身体も完璧、ファッションセンス良し
- 性格も明るく前向き、親しみやすい
- 男性経験豊富で性の技術も達人級だが、そんな自分を自己嫌悪している
- 恋人の前だと借りてきた猫のように大人しくなり言動が幼くなる
「ふぅ……」
思わず溜息が漏れた。
「どこの漫画のキャラだよ……」
心の中でツッコミを入れながらも、スマホの画面に目を落とす。そこには東とのLINEのやりとりが残っていた。
『本田さんありがと!明日頑張ってみる!』
『うん!だって平がいるなら何でもできる気がする!』
「まったく……」
本田は眉をひそめた。東が自分を頼ってくることに悪い気はしない。むしろ、こんなにめんどくさい相談を聞いてあげられるのは自分しかいないだろうという優越感さえあった。
けれど同時に――
(できの悪い妹を持った気分にもなる)
見た目は完全に逆なのだが。東の方がずっと華やかで派手なのに、なぜか本田の方が落ち着いている。西が二人を評して「まるで姉妹みたい」と言ったのも納得だ。
(それにしても、あんな美人がねぇ……)
家に着くと、玄関を開けて靴を脱ぎながら考え続ける。
(なんでまた平に惚れたんだろう?)
客観的に見れば、平はただの男子高校生だ。確かに容姿は整っているが、特に秀でた才能があるわけでもなく、社交的なわけでもない。東のような女性が選ぶには地味すぎる相手だ。
(でも……)
思い出すのは昨日の会話。
「平と会うとね、こう……世界が輝いて見えるの!」
東の瞳はキラキラと輝いていた。あれほど生き生きとした東の姿を見たことがなかった。
(あそこまで変わるなんて……)
階段を上がりながら思う。東が変わったのは単に恋をしたからだけではない。自分を変えたいと思ったからだ。今までの流されがちで軽薄な自分から卒業して、一人の男のために真摯になろうとしている。
(そんな彼女を見てると……)
部屋に入り、ドアを閉める。制服をハンガーにかけると、ベッドに倒れ込んだ。
(私も少しは頑張らないといけないかも)
スマホを取り出し、SNSをチェックする。西からのメッセージが届いていた。
『明日放課後空いてる?写真部の新作見てほしいんだけど』
本田はすぐに返信した。
『了解!でも今日は疲れちゃったから早めに帰るね』
送信ボタンを押してから、ふと考える。
(ニッシだって頑張ってるんだよね……)
ニッシもまた成長している。引っ込み思案だった少女が今では写真部の中心的存在だ。山田との関係も少しずつ進展しているらしい。
(みんな変わっていく……)
天井を見上げながら呟く。
「私も変わらないとな……」
そう言っても、本田の場合は一体何を変えればいいのだろう?
完璧なルックスとスタイルに比例するように他人との壁を作る性格。
「……私こそ変われるのかな?」
スマホを枕元に投げ、布団をかぶる。
(まぁいいや。今はとりあえずアズアズの恋愛を応援しよう)
そう決めて目を閉じると、脳裏に東の嬉しそうな顔が浮かんだ。
(あの子があんな風に笑えるようになったんだもん……きっと平クンも幸せ者だよね)
そんなことを考えながら、本田は眠りに落ちていった。明日は東の手つなぎ作戦成功を祈りつつ――そして自分の将来についても、少しだけ考える時間を持つことになるのだろう。
-----
■裏ルート突入
手つなぎ作戦失敗後、何もないまま半年が経過していた。
教室の隅で三人が円陣を組むように椅子を寄せていた。東が机に額を押し付けながら呻くように話し始める。
「……全然ダメなの」
鼻水をすすり上げる音が鳴った。
「付き合って半年よ……手も繋いでくれないの!」
本田は冷めた紅茶を啜りながら東の旋毛を見下ろしていた。西は心配そうにタオルを差し出している。
「デートもただの勉強会だし……家まで送ってくれても玄関まで来ないんだから!」
「……それで?」
本田の淡々とした声が刺さる。
「このままじゃ……いつまで経っても……」
言いかけて東が真っ赤になる。「Hできないじゃない!」
爆発した東の言葉に本田が「まあそうでしょうね」とあっさり同意する。
「初心者の平クンが自分から誘うわけないでしょ」
「うぅ……」東が机に突っ伏したまま顔を埋める。
「だって私……昔は遊び人だったから……」
突然東が嗚咽を漏らし始めた。
「今さら平に……純な女の子みたいな扱いしてほしいとか…抱いてとか…言えない……」
泣き声が高まっていく。
「落ち着いてよ」
本田がテーブルを軽く叩いた。
「何回も言ってるけどさ。あなたみたいな子なら男なんて選り取り見取りでしょ?いっそ別の男に行くとか…」
「ちがうの……」東の声が震えていた。
「私には平だけなの……私の全部を受け入れてくれたの……」
顔を上げた東の目は赤く腫れあがっていた。
「こんな女を……平が……」
---
本田はふと何かに気付いたように目を見開いた。
「似てるわね……」
東が怪訝な顔をする。
「あのゲームのヒロインにそっくり」
西が「あ!」と声を上げた。
「昨日のエロゲのこと?」
「そう」
本田の口元が僅かに歪んだ。
「『ツンデレギャル攻略大作戦』っていうタイトルなんだけど」
東が身を乗り出した。
「そのヒロインも同じ悩みだったの?」
「ええ」本田が携帯を取り出し画面をスクロールする。
「『私は経験豊富なのに……彼は初めてで、俺なんかって言ってくる……』」
読み上げる本田の声に西が身を縮めた。
「まるで今の東さん…」
「しかもね」本田が笑みを深めた。
「このルートは簡単にはクリアできないの」
---
西が緊張した様子で唾を飲み込んだ。
「ホンちゃん、このルート攻略するにはどうすればいいの?」
本田はゆっくりと携帯の画面を閉じた。
「まず、主人公の童貞を卒業させなきゃいけないわ」
東が椅子から飛び上がる。
「え!?」
「彼の女友達の中から協力者を募って」
本田の目が鋭く光った。
「無理矢理にでも経験させてあげる必要がある」
「そ……それは……」東が青ざめる。
「だってアズアズが言う通り、彼は経験不足だから」
本田の声には確信があった。
「このままじゃ一生童貞のまま死ぬかもしれないわね」
---
「でも…現実だと…誰がそんな役目を……」東が絶望的に呟く。
「現実でも可能かもしれない、けど条件があるわ」
本田の口調が急に厳しくなった。
「第一に平クンに恋愛感情を抱かない人」
東と西が同時に息を飲んだ。
「第二に性的快感を感じず性に執着しない人」
本田が指を一本立てた。
「第三に平クンが生理的嫌悪感を持たない程度の容姿の人」
机の上で拳を握りしめた東が必死に首を振る。
「そんな都合のいい人がいるわけ……」
「ここにいるわ」
---
沈黙が教室を支配した。
「え?」
東の声が裏返った。
「ホンちゃん?」
西が恐る恐る尋ねる。本田が長い髪を耳にかけながら言った。
「私なら全ての条件をクリアできるわね」
「嘘でしょ……」
東が震える声で否定する。
「あなた処女でしょ?」
本田が冷静に答えた。
「確かに私は男性経験はないけれど」
西の喉がゴクリと鳴った。
「私は平クンに性的魅力を感じない。その上不感症だし。オナニーしても何も感じないわ」
本田の目に決意が宿っていた。
「それに、何より、あなたたち以上に冷静に判断できると思う」
---
東が立ち上がった。
「でも……あなたの初めてが……」
「別に構わないわ」
本田の声は意外にも穏やかだった。
「どうせ将来誰かと結婚するでしょうし。練習にもなる。さっきいったように不感症だし」
「そういう問題じゃなくて!」
東の叫びに西が両手を広げて制止する。
「落ち着いてください東さん」
本田が優雅に髪を払った。
「それに考えてみて」
二人が息を潜める。
「彼はこれまでずっと女性経験ゼロだった」
「はい」
「突然私が現れたとして、一晩で慣れると思う?」
東が唇を噛む。
「だから私は最初の練習台になるつもり」
本田の表情に微かな寂しさが走った。
「その後はあなたの番よ」
---
東が椅子に崩れ落ちた。
「ごめんなさい……私が弱いから……」
「謝らないで」
本田が珍しく柔らかな微笑を浮かべる。
「私もニッシやアズアズのためならなんだってするもの」
西が俯いたまま小さく頷いた。
「でも……本当に大丈夫かな?」
「心配無用よ」
本田が机に両肘を乗せ、顎を支えた。
「私って実はこう見えてもSなの」
東の目が丸くなった。見るからにSなのだが口には出さない。
「えっと、SMのだよね?」
「ええ。彼が泣き叫んでも徹底的に教え込んであげる」
西が慌てて口を開く。
「でも……暴力的なのは……」
「安心して」
本田の口元に薄い笑みが浮かんだ。
「ソフトなSMよ。傷はつけないから」
すべてエロゲで学んだ間違った知識だったが、突っ込むものは誰も存在しなかった。
---
東が青ざめた顔で本田を見つめた。
「それってつまり……」
「彼を動けなくした上で、失神するまでイカせてあげるつもり」
西が目を閉じた。
「ホンちゃーん…想像しただけでゾッとするんだけど……」
「冗談よ」
本田が軽く肩をすくめる。
「本当はこんな風に進めるの。処女膜も破らせるつもりはないわ」
本田が紙に箇条書きで説明し始める。
1. 『あなたの彼女、東さんが最近悩んでるの』と平クンを私の家に呼ぶ(両親は海外旅行中)
2. 飲み物(コーヒーとか)に筋肉弛緩剤を混ぜる(薬は佐藤さんから受領済み)
3. 服を脱いで全裸になる(童貞なのでこれだけで勃起するはず)
4. 動けない間に本番挿入(処女膜破らないように浅めに、童貞だから気づかないはず)
5. 射精後すぐに平クンを返す(動画を撮っているから口外無用と脅す)
「これで彼は無事童貞卒業、性の経験値もアップ。自信もついてアズアズと合体間違いなし!」
東が頭を抱えた。
「それ完全に犯罪よ!」
---
「世間にバレなければ問題ないでしょ?平クンが警察に駆け込むとも思えないし」
本田が澄ました顔で言い放つ。
「法律で禁止されているけど……」
西が小声で抗議する。
「でもね」
本田が突然真剣な表情になった。
「これは正義の行いなの」
「え?」東が呆然と本田を見つめる。
「彼を永遠の童貞の鎖から解き放つための」
「あと、あなたたちの幸せのために」
西が小さな声で指摘する
「ホンちゃーん、そっちが目的でしょ?」
「冗談よ」
本田が自信満々に宣言した。
「この件についてはすべて私に任せて」
---
本田の計画は完璧に見えた。しかし一つだけ疑問が残った。
「待って」
東が手を挙げる。
「もし平が拒否したら?」
本田が小さく笑った。
「拒否できるわけないわ」
「なぜ断言できるの?」
「彼は私の見た目に弱いはず」
西が不思議そうに首を傾げる。
「どうして分かるの?」
「観察結果よ」
本田が静かに答える。
「アズアズと付き合う前、彼は明らかに私を見ていた瞬間があった。同じ委員だから二人になる機会は結構あったしね」
東が思い出したように目を見開く。
「そういえば……確かに…そう…かも?」
「つまりね」
本田が勝利を確信したように言った。
「この作戦は最初から成功しているの」
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# 続・平童貞卒業作戦
「いらっしゃい」
扉を開けた本田が完璧な笑顔で迎えた。
「悪いわね、急に来てもらって」
「いや……」
平は緊張しながら靴を脱ぐ。
「東のことが気がかりで……」
玄関を上がった瞬間、平の背筋に悪寒が走った。
何かがおかしい。
本田の家の匂い──柑橘系の爽やかな香りに混じって、微かに漂う甘い毒のような気配。
---
「コーヒー入れるわね」
本田がキッチンへ向かう後ろ姿を凝視する。
長い黒髪が滑るように揺れる。
華奢な体つきなのに、妙な威圧感があった。
(…なにか不穏な空気だ)
不安が交錯する。でも、相手はあの本田梨花子だ。
無機質で冷徹な女子生徒。動機が見えない。
---
「どうぞ」
差し出されたカップから湯気が立つ。
「熱いから気をつけて」
「ありがとう」
一口啜る。芳醇な香りと温もりが喉を滑り落ちる。
「美味しい……」
「よかった」
本田が席に着く。
「それで……東さんの悩み事なんだけど」
「うん」
次の言葉が出る前に、足元がふらついた。視界がぼやける。膝が笑い始めた。
「あれ……?」
椅子に座っているのに立てない。腕を伸ばそうとしても力が入らない。
本田が立ち上がり、ゆっくりと近づいてくる。その瞳に光はなかった。
「さすが佐藤印の即効性。薬の効き目が出てきたみたいね」
冷たく響く声。
「な……なにを……」
舌がもつれる。思考が混乱する。
「安心して」
本田が指先でコーヒーカップを押しやった。
「殺したりしないわ」
---
「どういう……こと……」
かろうじて声を絞り出す。
「東さんと約束したの」
本田が淡々と説明する。
「あなたを童貞から卒業させてあげるって」
言葉の意味が脳内で暴れ回る。理解できない。理解したくない。
「そんな……なんで……」
「理由なんて必要?」
本田が平の襟を掴み、引き寄せた。甘い吐息がかかるほど接近する。
「ただの善意よ」
「……嘘だ」
---
「服、脱がせるわね?」
命令口調。抵抗しようとするが、指一本動かせない。本田の細い指が平のベルトに伸びる。
カチャリという金属音。ズボンがするりと下ろされる。
「ちょっ……待っ……」
言葉にならない。本田の表情は変わらない。まるで業務処理のように無関心だ。
「嫌なら叫びなさい」
冷静な忠告。
「でも、両親は三日間いないから助けは来ないわ」
下着に手がかかった瞬間、平の中で恐怖が爆発した。
「やめろっ!!」
しかし声は蚊の鳴くような大きさ。
# 続・平童貞卒業作戦
「なっ……!?」
平の目に涙が滲む。四肢は鉛のように重く、意識だけが鮮明だ。
本田の指が下着を引っ掛ける感触が皮膚に直接伝わってくる。
「頼む……やめてくれ……」
呻き声が漏れる。本田は一瞥もせず、淡々と作業を続ける。
布切れが肌を擦る音だけが室内に響く。
---
「これ以上抵抗すると怪我するわよ」
低い警告とともに本田の指先が首筋に触れる。
冷たい。氷のような感触。
「筋肉弛緩剤は神経に作用してるの」
講義のように説明する本田。
「だから痛みを感じる前に動かなくなる」
言葉通りだった。
右腕を持ち上げようと試みるも、筋肉がぴくりと反応するだけ。
まるで自分の体じゃないみたいだ。
「アズアズのために……」
本田が呟くように言う。
「彼女があなたのことで悩んでいたから」
平の耳がピクリと動く。
「東…が…?」
---
「そう」
本田が顔を上げる。その表情に一瞬だけ迷いが見えた気がした。
「『平くんが抱いてくれない』『経験豊富な私なんて平は抱いてくれないんだ』って」
心臓が跳ね上がる。(それはつまり……)
期待と恐怖が同時に押し寄せる。東が自分のことを気にかけていた?それともこれは罠か?
「だから私が一肌脱ぐことにしたの。これはギャグじゃないわよ」
本田が平の上で馬乗りになる。細い脚が大腿骨を締め付ける。
「そう。アズアズと私が決めたこと。童貞を卒業させてあげる」
---
「もう説明はいいでしょう?」
本田がブラジャーに手をかける。白い肌が徐々に露わになっていく。(こんな状況でさえ……美しい……)
現実逃避じみた感想が頭をよぎる。しかし股間に感じる冷たい視線で我に返る。
「いやだ……」
最後の抵抗。言葉だけで精一杯だった。
本田の動きが止まる。
「あら?」
首を傾げる仕草は猫のよう。
「まだ理性残ってるのね」
---
次の瞬間。本田が振り返り、枕元のクマのぬいぐるみに目をやる。
「ちなみに」
声のトーンが変わる。
「この会話と映像は全て録画してるわ」
血の気が引いた。
「何を言って……」
「そこのぬいぐるみが盗撮カメラになってるの」
指差す先には巨大なクマのぬいぐるみ。赤いボタンの目が異様に輝いている。
「ちゃんとアズアズに共有するためにね。隠し事はなし」
冷酷な宣告。
(そんな……ホントに東もこのことを知って……?)
平の視界が歪む。
「彼女に全部見せるの」
本田の声が遠くから聞こえる。
「あなたがどう喘いでたかも…ね」
# 続・平童貞卒業作戦
平の目に決意の色が浮かぶ。
「頼む、聞いてくれ」
掠れた声が部屋に響く。
「俺は確かに童貞だ。でも……」
本田が動きを止める。平の瞳を見つめたまま、微かに眉をひそめる。
「絶倫体質なんだ…何度射精してもすぐ勃起して…」
息も絶え絶えに告白する。額に汗が滲む。
「しかも……勃起すると股間が痛くて仕方ないんだ」
言いづらそうに歯を食いしばる平。本田の表情が微かに動く。
「出さないと精神がおかしくなっちまう」
平の声に切迫感が宿る。
「だから東の前では……普通でいられるように…性欲を抑えていたんだ。手も繋がないのは、少しでも性欲をかき立てないようにって…」
静寂。本田の唇が僅かに開く。
---
「フッ……」
突然、本田が噴き出した。予想外の反応に平が困惑する。
「あはは!そんな嘘ついてもダメよ」
彼女が腹を抱えて笑い出す。目尻に涙を浮かべながら。
「それってなんのエロゲ?まさかこのセリフを言う日が来るなんてね」
嘲笑うような問いかけ。
「勃起すると痛いとか……」
クスクスと笑い続けながら。
「本当なんだ!信じてくれ!」
平の顔が真っ赤になる。懇願するように叫ぶ。
---
「ハイハイ、わかったわよ」
本田がようやく笑いを収める。しかし目は笑っていない。
「証拠を見せてもらうしかないわね」
彼女の手が平の股間に伸びる。指先がそっと触れると—
「うっ!」
鋭い痛みが走る。平の全身が弓なりに反り返る。
本田の目が僅かに見開かれる。
「驚いた…ゴメンなさい…痛いのは本当みたいね」
「でも、計画は変更しないわ」
彼女がゆっくりとペニスを握りし、冷たく告げる。
---
「やめてくれ!」
平の叫びを無視して、
本田が下半身を持ち上げる。熱を持った秘裂が近づいてくる—
「ちなみに私の処女膜は上げないわよ」
宣言しながら腰を落とす。
「その手前までを楽しませてあげる」
亀頭が濡れた襞に触れる感触。そして—
「うあぁっ!」
挿入されたのは浅瀬まで。それでも灼熱感が脳天を貫く。
「これ以上は」
本田が舌なめずりをする。
「あなたが耐えられないでしょ?」
# 続・平童貞卒業作戦
本田の腰が規則的に上下を繰り返す。リズムは機械的で温度を感じない。
彼女の瞳には一切の情熱が灯っていない。
「ふぅ……」
小さな溜息ひとつ。本田にとってこれは作業にすぎない。
膣壁の狭さとペニスの角度、長さを計算しながら、
「んっ……」
無表情で処女膜までの距離を往復させる。
一方の平は地獄だった。
「ああっ!」
一度、二度と射精が本田の中を満たす。童貞卒業とはほど遠い屈辱。
「2回連続、10秒持たなかったわね」
本田が腰を持ち上げる。
「早すぎよ、元童貞クン」
冷たい嘲笑が部屋に響く。
「もっと持久力を鍛えなさい」
指先で平の乳首を弾く。
「そんな調子じゃ彼女を、アズアズを満足させられないわよ」
---
平の顔が羞恥で染まる。
だが—
「……なに?」
本田の目が丸くなる。
固く勃起したペニスが本田の入り口で脈打っている。萎える気配はまったくない。
「だから言ったろ」
平が荒い息の下で呟く。
「絶倫だって……」
本田の唇が弧を描く。
「面白いわね」
腰を沈める速度を上げる。
「私と平クンの勝負ってわけね」
亀頭がまた浅瀬をこする。摩擦で平の背中が仰け反る。
「うっ……!」
三度目の波が来る。
「まだまだよ」
本田が不敵に笑う。
「三回くらいじゃ負けを認めないわ」
# 続・平童貞卒業作戦
五回目の射精が終わった時、本田がようやく違和感に気づく。
腹部に広がる鈍い痛み。そして膣内に溢れる粘液に赤が混じっている。
平の人間離れした大量の膣内射精により、精液の圧迫で自分の処女膜が破れていることに気づく。
「あーあ」
ため息混じりの声。
「せっかく計算して、膜の手前までにしてたのに」
平の目が驚きに見開く。その表情に本田の唇が歪む。
「でも……こうなったら仕方ないわね」
宣言と共に腰を深く沈める。ぐぷりと湿った音。亀頭が未踏の領域へ侵入する。
「んっ……」
本田の喉から漏れる声。
「膜……ないんだから…奥まで…」
呟きながらさらに奥へ進め—
次の瞬間。視界に星が飛んだ。
「え?」
本田自身が呆然とする。熱い楔が子宮口を突く感触。背筋を走る未知の衝撃。
「なん……で…」
思考が追いつかない。
不感症のはずなのに。性に何も感じないはずなのに。
「気持ち……いい?」
声に出た疑問符。
# 続・平童貞卒業作戦
「ウソ!絶対に認めない!」
本田の叫び声が部屋に響く。だが—
身体は正直だった。腰が勝手に上下運動を始めている。
「止まって……」
命じても止まらない。
「なんで……こんな……」
混乱と快感が交錯する。不感症のプライドが崩壊していく。
「平クン!」
突然の矛先。
「早く腰を止めなさい!」
平は困惑する。
「俺、指一本動かせないんだけど」
その言葉に本田の顔が青ざめる。
「だって……あなたが動かしてるんじゃないの?」
震える声。
「薬……効いてるし」
平が弱々しく呟く。
「本田さんが勝手に……」
「違う!」
本田が必死に否定する。しかし腰の動きは加速するばかり。快感の波が彼女を飲み込もうとしている—
# 続・平童貞卒業作戦
「やめて……お願い…止まって…止まってよ…」
本田の悲鳴は懇願に変わる。自分の意思とは裏腹に腰が跳ねる。
貪欲に平のペニスを飲み込み続ける身体。快感の波が彼女を容赦なく襲う。
「こんなの……嘘よ……」
本田の頬を涙が伝う。なぜ?今までどんなオナニーでも感じなかったのに。
妄想すら無意味だったのに。よりによって……
「ごめんなさい……アズアズ…」
親友の名を呟く。その罪悪感が逆に快感を煽る。背徳の蜜が脳内を満たしていく。
「ああっ……」
腰の動きが止まらない。欲望が理性を塗り潰す。
盗撮カメラのレンズが視界に入る。東と西が見ている。
「アズアズ……」
彼女の唇が震える。
「ごめん……わたし……」
本田の顔が平に近づく。柔らかい唇が重なる。
# 続・平童貞卒業作戦
キス──これがキスなのか。
本田の唇が震えた。体温を感じる皮膚の接触。初めて知る他人の感触。アニメや漫画で飽きるほど見てきたシーンが今、自分の現実になっている。
ふと見上げた平の顔。サラサラとした茶色の髪が額にかかる。
長いまつげが影を作る。整った顎のライン。そこには確かに魅力があった。
今まで気づかなかった── 平 秀司という男の輪郭。
潤んだ瞳がこちらを見つめている。それは単なる生理的反応ではなく、本田梨花子を映した瞳だった。
「……っ」
心臓が早鐘を打つ。これは何だ?単なる性的興奮とは違う。もっと深く、もっと切実な何か。
虚構の知識だけでは足りない。このリアルな感覚は何?
「平くん……」
初めて彼を呼んだ気がした。声が甘く震えていた。
# 続・平童貞卒業作戦
「どうすれば……」
思考が渦巻く。親友たちに見られているこの状況。淫らな姿をカメラに晒しながら、なおも止められず狂ったように動く自分の腰。
本田の脳裏を走馬灯のように巡る選択肢。
言い訳?謝罪?弁解?
全て無意味だと悟った瞬間──
「こうするしかない」
いつぞやのエロゲのシーンが本田の脳裏に鮮やかに蘇る。
「ニッシ!アズアズ!見てる〜?」
カメラに向かって両手を広げ、指を広げる。
ダブルピース。腰は上下に激しく動き続け、平のペニスを膣で締め上げる。
「ヤバ過ぎなんだけどぉ!平クンのチンポぉ!」
カメラに媚びた笑顔。もはや羞恥など微塵もない。虚構の世界で培った演技力が炸裂する。
「ニッシぃ、私って実はドSじゃなくて、ドMだったのかなぁ?」
挑発的な言葉を紡ぎながら、平の耳元で囁く。
「平くん……もっと激しくして……」
# 続・平童貞卒業作戦
平の身体が痙攣する。
「だから……動けないって……」
呻き声とともに熱い液体が本田の中に放出される。
「あん!また出したぁ♡ 平クンって私を孕ませたいの?」
媚びた声で笑いながら本田が口づけする。舌が絡まり合う濃厚なキス。
虚構世界で培ったテクニックが今ここに活かされる。
カメラに向かって挑発的な視線。
「アズアズぅ、ゴメンねぇ。私も女だったみたい」
汗ばんだ額に貼りつく前髪を掻き上げる。
「チンポには勝てなかったよ」
東の反応が気になる。画面越しに伝わってくる驚愕と嫉妬。西の戸惑いも手に取るようにわかる。
「でもさ」
平の肩に顎を乗せる。
「これって友情試練じゃない?」
その言葉に画面越しの東の震える姿が見える。
「どういうこと?」
「私たち三人の絆」
本田が妖艶に微笑む。
「これを乗り越えてこそ本物になるんじゃない?」
# 続・平童貞卒業作戦
本田の唇が歪む。確信に満ちた微笑み。
「ねえ、ニッシぃ?」
カメラに顔を近づける。
「今この動画見てオナニーしてるでしょ?」
画面の向こうで西が息を飲む気配。震える指が画面を押す音さえ聞こえそうだ。
「ねえ、アズアズぅ」
視線を東に向ける。
「あなたの膣(なか)、もうぐちゃぐちゃでしょ?」
その言葉に東の全身が赤く染まる。画面越しでも伝わる恥辱と興奮。涙ぐんだ瞳で画面を凝視している。
「ほら」
平の腕を引き寄せながら。
「本当の絆ってこういうものじゃない?」
本田の指が結合部分をなぞる。白濁した粘液が糸を引く。
# 続・平童貞卒業作戦
鍵が開く音が響いた瞬間—
「っ!?」
本田の腰の動きが止まった。平の視界の隅で、ドアノブが回るのが見える。
ドアが勢いよく開いた。
「本田さん!」
東の鋭い声。汗と涙で化粧が崩れた顔が鬼のように歪んでいる。
その後ろで西が震えている。セーラー服の裾を握りしめた指が白くなっている。
むせ返るような性臭。粘膜が擦れ合う音だけが場を支配する。
「あ……」
平は言葉を失った。無防備すぎる状況だった。腰は繋がったまま、精液と愛液にまみれた下半身。
筋肉弛緩剤により、指一本動かせず、抵抗もできずに—
「お前たち……何で……」
喉がカラカラに乾く。理性が警鐘を鳴らす。これはマズい———!次の瞬間、東が叫んだ。
「私の……私の平に…よくもっ…!!」
# 続・平童貞卒業作戦
本田は微笑んだ。その笑みは優雅で、どこか残酷なまでに完璧だった。
「アズアズ、どうしたの?作戦通りでしょ?」
指先で平の頬を撫でる。
東の顔色が変わった。震える拳が握りしめられる。
「平クンの中で、私は永遠に刻まれちゃった。初めて寝た女として、ね」
西が息を飲む音が響く。本田の背中越しに見える光景に目を奪われる。
平は無力だった。筋肉弛緩剤の効果で指一本動かせない。眼球だけが必死に東の方へ向けられる。
「東…本当に…これが……目的だったのか?」
絞り出すような声。喉が乾いて痛む。
本田が平を無視しゆっくりと腰を動かす。湿った音が静寂を破る。東の瞳に憎悪の炎が灯る。
「アズアズ。あなたにとって平クンが特別な存在なら、この瞬間を喜ぶべきでしょう?」
ベッドが軋む。汗と欲望の匂いが充満する部屋。
「みんなで共有しましょうよ」
本田の言葉に西が後退る。足が震えている。
「間違ってる……こんなのは……」
平の声がかすれる。
# 続・平童貞卒業作戦
「もとはと言えば!あなたが悪いんでしょ、平クン!」
本田の声が怒りに震える。突然の豹変に場の空気が凍りついた。
「この立派なモノでさっさと彼女を—アズアズを抱いてあげていれば!」
再び腰を打ちつけ始める。肌がぶつかる乾いた音が部屋に響く。
「私もこのペニスの感触を、快楽を……」
喘ぎ声と共に言葉が途切れる。東の肩が小刻みに震えている。
「あなたへの感情も抱かずに済んだのに!」
鋭い眼差しが平を刺す。涙が頬を伝い落ちる。
「アズアズはずっと待ってたのに!」
平は目を見開いた。予期せぬ告白に思考が停止する。
西が壁に背を押し当て、怯えた表情で見つめている。
両手で耳を塞ごうとしているが、指の隙間から悲劇的な光景が漏れてくる。
「お願いだから…もう止めて、本田さん…」
東がか細い声で呟く。涙が床に落ちる。
「もう……見たくない……」
# 続・平童貞卒業作戦
本田の指が東を指した。冷酷な微笑みが浮かぶ。
「じゃあ、その蜜はなに?アズアズ?」
視線が東の太腿の間に移る。
「思い人が逆レイプされているのをみて、なんで、涙だけじゃなく、股間まで濡らしてるの?」
東の顔が赤く染まった。否定しようとする唇が震える。
「ち……違う……」
だが否定の言葉は弱々しい。自分の体の裏切りに愕然とする様子が見て取れる。
本田がゆっくりと上体を起こす。結合部を見せつけるようにして。
「認めなさいよ」
平の視界に東の姿が映る。スカートの裾を握りしめた指が白くなっている。足元に小さな水滴が光っている。
「自分が愛した男が他の女に奪われる様を見て……」
本田の声は囁くように甘い。
「あなたも興奮してるんでしょ?」
西が小さく悲鳴を上げて後ずさる。両手で顔を覆いながらも指の隙間から見ている。
平の視線が東から離れられない。筋肉弛緩剤の効果で声も出せない。ただ歯を食いしばる感覚だけが残っている。
# 続・平童貞卒業作戦
本田の視線が今度は西を捕らえた。冷たい刃のような瞳が少女を貫く。
「ニッシもよ」
その声は氷のように冷たく澄んでいる。西はビクッと肩を跳ねさせた。
「指の隙間から物欲しそうに見て」
本田が嘲笑う。
「さっきも動画見ながらオナニーしてたんでしょ?」
西の頬が燃えるように熱くなる。壁に背中をつけたまま後ずさろうとするが、もう後ろはない。震える唇を開こうとするが、声が出ない。
「ニッシも」
本田の口角が上がった。
「このまえ山田といい雰囲気になった時に、処女卒業しておけばよかったね」
言葉がナイフのように突き刺さる。平の視界の端で西が崩れ落ちるのが見えた。床に座り込んだまま膝を抱え込む。
「どうして……」
西の声がかすれる。
「どうして私まで……」
東がハッとしたように西を見る。二人の視線が絡まる。
本田は満足そうに微笑んだ。ゆっくりと腰を動かし始めると同時に、左手を伸ばして西の腕を掴む。
「あなたも参加するの…いいえ…したいでしょう、ニッシ?」
平の目が驚愕に見開かれる。筋肉弛緩剤の効果で言葉も出ない。ただ口を無意味に開閉させるだけだった。
「見せて…ニッシの処女喪失シーン」
本田の声が低く響く。
「私とアズアズの前で」
# 続・平童貞卒業作戦
西の手が震えながら制服のボタンを外していく。頭の中では山田の笑顔が繰り返し浮かんでは消えていった。
(アレ?私何で脱いでるんだろう?)
困惑が頭の中を駆け巡る。自分の意思とは無関係に動く手を見つめる西。
(ホンちゃん、ヤダ、助けてよ、止めてよ)
懇願するような瞳で本田を見上げる。潤んだ瞳には涙が溜まりかけていた。
本田はその様子を見て優雅に微笑んだ。腰の動きを止めることなく、冷ややかな口調で囁く。
「大丈夫よニッシ」
声は不釣り合いなほど穏やかだ。
「山田には黙っててあげるから」
西の動きが一瞬止まる。その言葉が呪文のように響く。
「健太郎くん……」
小さな声で呟く。スカートのファスナーに手をかけると、かちゃりと金属音が室内に響いた。
東が息を飲む音が聞こえる。平の顔が歪む。筋肉弛緩剤の効果でわずかに首を動かすことしかできない。
西の白い肌が徐々に露わになっていく。幼児体型の少女が羞恥に全身を紅潮させていく様は痛々しくもあり官能的でもあった。
「ホントに……これで…いいのかな?…ねぇ、ホンちゃん?」
西の声はかすれていた。最後の下着に手をかけたところで躊躇する。
「いいに決まってるじゃない…私がニッシの嫌がることをさせると思ってるの?…私はニッシの背中をそっと押しているだけよ」
本田が嘲るように笑う。結合部を見せつけるようにして平の上で腰を上下させる。
「みんなで楽しめばいいのよ」
冷たい視線が三人を射抜く。
「平クンも喜んでくれてるわよね?」
平は何かを叫ぼうとするが喉から漏れるのは掠れた呻きだけ。本田が意地悪く腰を深く沈めると平の反応が変わる。筋肉弛緩剤に侵されてなお感じる快感に身をよじる。
西が再び動き始めた。最後の布切れを床に落とす。生まれたままの姿になった少女は壁に背を預けて立ち尽くす。
「さあ、ニッシ」
本田の声が響く。
「こっちにおいで」
平の横に置かれたクッションを叩く。西の脚がゆっくりと動き出した。それは自らの意思ではないようで、まるで夢遊病者のようにおぼつかない足取り。
「健太郎くん……ゴメンね」
誰にも聞こえないほど小さな声で謝罪する西。それでも足は止まらない。平の隣へと歩み寄っていく。本田の唇が残酷な笑みを浮かべた。
「準備はできたみたいね」
# 続・平童貞卒業作戦
「ニッシ、結局さ。山田とはどこまでいってるの?」
本田の問いかけに西の瞳が揺れる。言葉を選ぶように唇を舐めると、意外なほどあけすけに話し始めた。
「キスと服の上から軽く胸を触られたぐらいで……あとは太ももを撫でまわすくらい」
室内の空気が凍りつく。平の横顔が苦痛に歪む。
「ディープキスは?」
本田の鋭い質問に西は首を横に振った。赤くなった耳朶を指で弄りながら小さな声で付け加える。
「舌入れるのは頭がフワフワするから苦手だって言った」
平が必死に目線で抗議するが、本田は意に介さない。逆に嬉しそうに腰の動きを速めると甘い吐息を漏らした。
「だってさ、平クン。ニッシは処女よ。責任重大ね?」
笑いかける本田の目が狂気を帯びている。西の裸体を舐めるように見回しながら続ける。
「ニッシの身体見て。まるで小学生みたい」
平の目の前で西が震える。両手で胸を隠そうとするが、本田の視線に阻まれて無防備なまま。
「ツルペタで柔らかくって。ヤバいよね?」
嘲笑が室内に響く。平の心臓が痛いほど脈打つ。
「でも大丈夫」
本田の唇が危険な弧を描く。
「18才だから。合法ロリってやつね」
西の足が震え始めた。壁際に追い詰められた小動物のように怯えながらも動けない。
「ニッシ」
本田の声が粘つく。
「こっちに来なさい」
西がゆっくりと近づいてくる。瞳に恐怖を宿しながらも抵抗する術はない。
「ほら」
本田の手が伸びる。西の細い腕を掴むと自分と平の結合部に導いた。
「わかる?これが平クンなの」
平の目の前で西の指が未知の感触に触れる。少女の体がビクッと跳ねた。
「山田は、平クンがこんな太いなんて知らないでしょうね」
残酷な囁き。平が声にならない叫びを上げる。
「ニッシにもこれから全部教えてあげる」
本田の声が遠くなる。平の意識が闇に沈みかけた時—
西の体が本田によって引き寄せられる。拒絶の言葉も虚しく、
「ひぃっ!」
小さな悲鳴と共に無垢な身体が奪われていく音が静かな室内に響き渡った。
# 続・平童貞卒業作戦
西の腰が強引に引き寄せられる。本田の指が骨盤をがっちり掴み、容赦なく押し下げる。
「ひっ!」
悲鳴が上がる。濡れそぼった秘裂に剛直が触れた瞬間、西の全身が硬直する。無数の毛穴から汗が噴き出す感覚。
「やめ……」
懇願の声は本田の一瞥で打ち砕かれる。
「ニッシったら」
冷笑が響く。
「私と平の見て、すごく濡らしてたのね。ホント、エッチなんだから」
冷たい指が西の内腿を這う。すでに溢れる蜜液を確かめるように。
「知ってたのよ?」
嘲笑が刃のように切り刻む。
「山田との関係も、アナタからキスして愛撫も要求してたんでしょ?」
平の目に映るのは惨劇だった。大切な友人の彼女が自分のペニスによって無慈悲に引き裂かれていく。
「ああっ……!」
鈍い痛みとともに亀頭が埋没する。西の目から涙があふれ出す。
「処女膜なんて関係ないわ」
本田の声が囁く。
「だって山田に捧げるつもりなんて元からなかったんでしょ?」
ゆっくりと腰を沈めるよう命じられる。西の震える指が平の太ももを掴んだ。
「ごめんなさい……健太郎くん」
その言葉に本田の哄笑が重なる。
「可哀想に。彼が見たら何て言うかしら?」
平の頬を熱いものが伝う。
# 続・平童貞卒業作戦
本田の手が西の細い腰をがっちり掴んだ。
「良かったわね、平クン」
冷たい笑みを浮かべながら残酷に上下させる。
「薬のせいにできて」
西の背中が弓なりに反り返る。結合部から漏れる淫猥な音が室内に響く。
「こんな幼い身体を無理やり犯してるなんて」
本田の指が平の頬をなぞる。涙が零れ落ちていた。
「夢のようじゃない?」
一方的な律動の中で西の表情が歪む。健太郎の笑顔が脳裏を過ぎる。
「や……やめて……」
震える声で訴えかけるも虚しく――
「ニッシも少しは自分で動いてよ」
本田が嘲笑を浴びせる。
「これじゃ全自動の性処理マシーンじゃない」
その言葉に西の肩が震える。
「健太郎……くん……」
嗚咽混じりの呟き。本田の手がさらに強く押さえつけた。
「おや?もうイキそう?」
冷たい視線が平に注がれる。
「いいわよ」
残酷な宣告。
「今日は特別サービス」
西の身体が激しく揺さぶられる。
「思いっきり出してあげなさい」
平の目が見開かれた。筋肉弛緩剤に侵された身体が僅かに跳ねる。絶望の中での反応だった。
# 続・平童貞卒業作戦
「中はダメ!」
西の叫びが破裂する。
「妊娠しちゃう!」
本田の笑みが深まる。
「だからいいんじゃない」
腰を最後まで押し付けた。
「本能のスリル」
西の目が見開かれる。平の背筋に恐怖が走る。
「当たるも八卦」
その言葉とともに
「当たらぬも八卦ってね!」
迸る衝撃。平の身体が意思とは無関係に痙攣する。
「ごめん……」
呻きが漏れる。絶望の中での解放。本田の唇が弧を描く。
「平クン」
冷酷な問いかけ。
「私とニッシ」
西の胎内に残る熱を感じながら。
「どっちの処女膣が良かった?」
# 続・平童貞卒業作戦
「見てごらん」
本田がゆっくりと立ち上がる。汗に濡れた完璧な肢体が月光に輝く。
「自分で言うのもなんだけど」
堂々と両腕を広げた。
「均整の取れた身体してるでしょ?」
平の視線が釘付けになる。その芸術品のような曲線美に。
「それとも」
冷笑が浮かぶ。
「ニッシの幼児体形がお好き?」
西の背中が震える。未熟な肢体を晒された恥辱。平の心臓が痛む。無垢な彼女を弄んだ罪悪感。
「でもね」
突然の方向転換。
「アズアズにエロボディには負けるけどね」
挑発的なウィンク。東の瞳が凍りつく。
「さぁ次は誰?」
狂気が充満する室内で――
# 続・平童貞卒業作戦
目の前で繰り広げられる地獄絵図。先ほどから東の思考はずっと停止していた。
「作戦……」
声が掠れる。
「だったはず」
当初の目的は平を誘惑し、自信を付けさせるすること。全て自分の判断だった。
「本田さんの暴走も」
喉がカラカラになる。
「西さんの凌辱も」
震える指先が口元を覆う。
「私が……招いた」
平の絶望的な叫び。西の泣き声。本田の嘲笑。
「平ぁ」
嗚咽が溢れる。
「ゴメンなさい」
肩が激しく震えた。
「全部」
涙が頬を伝う。
「私が……悪いの」
膝から崩れ落ちる。
# 続・平童貞卒業作戦
本田は満足そうに微笑むと、西の身体を平から引き離した。繊細な手つきで制服を整えながら、唇を寄せた。
「ホラ、アズアズ」
湿った吐息が西の耳元にかかる。
「ここまで来たら、もう選択肢なんてないんじゃない?」
振り返った本田の瞳が妖しく光る。艶のある微笑が浮かぶ。
「あなたが始めたゲームよ。今度はあなたの番」
東は呆然と座り込んだままだった。冷たい現実が突き刺さる。
「さぁ、平クンのサードバージン、奪っちゃいなさいよ」
指先が東の顎を持ち上げる。嘲笑が溢れる。
# 続・平童貞卒業作戦
東はふらつきながら平の傍らに跪いた。震える指先が平の頬に触れる。
「平ぁ、私なんでこうなのかな…」
涙声が震え、声が詰まる。
「私がやること、すべて間違っちゃう」
俯いた睫毛に涙が溜まる。平の閉ざされた瞼に触れながら嗚咽が溢れる。
「いままでもずっと。そして、多分これからも全部」
東が身を乗り出した。震える唇の温かい感触が重なる。長いキス。
「でも…好きなの!でも…愛してるの!…ごめんねぇ」
目を開けた平が見たものは——涙で歪んだ笑顔。
# 続・平童貞卒業作戦
「最初っから、それをやってれば、こんなにこじれなかったのに」
本田は壁にもたれて天井を見上げ呟く、独り言のように。冷たく現実的な視線。
西は唇を噛み締めた。自分も傷ついたのに— 目の前の東の方が痛ましく見えた。
「そうだよね。ここまできちゃったら、あとは進むだけだよね」
決意に満ちた表情で東の声が震える。制服のボタンに手を掛ける。
(そうよ。ここまで来たら、私も最後まで付き合ってあげる)
本田は意図的に口元を緩め、瞳に危険な光を宿す。
「さすがアズアズ!スクールカースト最上位の女ねぇ」
「平クン、みて!あなたの麗しの彼女の裸だよ?」
布擦れの音が響き、東の白い肌が現れる。
# 続・平童貞卒業作戦
平の視界の中で東の裸体が揺れる。その輪郭はぼやけていたが—
「東…綺麗だ」
平の声が掠れる。中学時代の彼女が脳裏をよぎる。
窓辺で本を読んでいた東。放課後の帰り道で無理やりスマホを見せた東。卒業式に泣きそうな顔をしていた東。
「平…ずっと…私のこと見てたでしょ?」
東の手が平の頬に触れる。瞳が潤んでいた。
「あらあら妬けるわねぇ。初めての女の前で見せつけてくれるじゃない」
本田の笑みが鋭くなる。東の背中越しに近づき指で鎖骨をなぞる。
西は床に座ったまま目を逸らさなかった。同じ感想を持つ平が少し羨ましい。(東さん、綺麗…)
自分の下腹部を押さえる。(私ってこんなに性観念がおかしい女だったんだな)
さっきまでの恐怖が嘘のように消えていた。痛みよりも奇妙な解放感が残るだけ。
西の中では処女を失ったことは、道路でこけたくらいの衝撃しかいまや感じていなかった。
『処女膜なんて関係ないわ』『だって山田に捧げるつもりなんて元からなかったんでしょ?』
西の脳裏で先ほどの本田の言葉が蘇る。
(そうだ…ホンちゃんの言う通りだ…私にとって、処女なんてどうでもよかったんだ…)
# 続・平童貞卒業作戦
「私は二人と違って、初めてを上げられない」
東の膝が震えていた。平の胸板に両手をつき、ゆっくりと跨ぐ。
「それに、平の初めてももらえなかった」
熱い吐息が漏れ、涙が頬を伝う。
本田の目が輝く。西は息を飲んだ。こんな東は見たことがない。
「間違いだらけの私だけど…今感じてる気持ちは間違いじゃない」
東の身体が沈んでいく。
平の意識が覚醒する——しかしそれはもう遅すぎた。彼が声を出す前に、
「ああっ」
東の叫び声が上がった。平のペニスが根元まで飲み込まれていく。
「見なさい。これが本当の性愛ってものよ」
本田が西の耳元で囁く。西は呆然と二人を見つめた。自分の行為など比べものにならないほど——
(あれが…本当のセックス…)
東の髪が乱れる。腰が動き出す。
# 続・平童貞卒業作戦
平の右手が僅かに動いた。麻痺した神経を無理やり操るように指が伸びる。
「東、無理しないで」
声がかすれる。その手が東の太ももに触れた。皮膚が熱い。
「大丈夫。痛くなんてない…痛くてもいい」
東の腰がさらに沈む。平の胸に垂れた汗が光る。結合部から蜜が溢れる。
「平に与えられるなら、何だっていい」
荒い息遣いに、本田が壁際で腕を組む。
「ふーん、これが本気のセックスってわけ?」
西は床にへたり込んだまま動けない。
「俺の方こそ」
平の左手もゆっくり上がる。
「ゴメン。ずっとこうしたかったのに、皆を巻き込んで……」
東の背中に触れる。快楽と罪悪感の狭間。ペニスが脈打つ。
東の腰の動きが激しさを増す。
「でも、いまだけは、東のことだけ考えるから」
平の言葉が切迫する。涙が混じった視線に東の身体が仰け反る。
「うん。私だけを見て。私だけを愛して」
震える声で平の首筋にしがみつく。次の瞬間——
「ああっ!」
東の中が収縮する。熱いものが弾けた。平の全身が硬直する。時間が止まった。
***
数秒の静寂。喘ぎ声だけが響く。
「んんっ……出ちゃったね。本当に私のことだけ考えて、愛してくれた?」
東の肩が小刻みに震える。指が平の頬に触れる。涙が零れる。
平の返事はない。ただ深い呼吸を繰り返している。
「パチパチパチ〜!大成功ね!」
本田が突然拍手を始めた。
「あ、あの……終わりました?」
西は我に返ったように立ち上がり、視線を逸らしながら言う。
# 続・平童貞卒業作戦
「作戦は結果としては大成功だけど、これからどうする?」
本田が三人に向かって真顔で言った。指先が空中をなぞり、室内の空気が変わる。
「私は正直、アズアズにも平クンにも惚れちゃってる。完全に誤算だけど」
本田が微笑みながら話す言葉に、東の眉が吊り上がる。
「二人が許すならこのまま関係を続けたい。それなんてエロゲ?っていうでしょうけど」
目を細める。突然の爆弾発言に西が固まっている。
「私は……健太郎クンと付き合ったままがいい。別れるなんて考えられない」
西が恐る恐る手を挙げる。
「……けど、たまに平クンを貸して欲しい……かな?……東さんと平クンが良ければだけど?」
深呼吸一つ。頬を紅潮させて続ける。
「平はモノじゃないけど…全部私のせいだし…平がよければ……」
東はため息をつき、視線を逸らす。結論を丸投げされる平。
「あのさぁ!俺まだ全然動けないんだけど……」
平が麻痺した身体で呻く。
本田が突然笑い出し、平の額に指を当てる。
「じゃあ、平クンを一番多く射精させた女の言うことを聞くってことで」
計算するような表情。
「私はすでに、5回?6回だったかな?」
西が飛び上がった。
「ええーそれはずるいよー」
東も食いつく。
「そんなの本田さんが有利に決まってるじゃない!」
本田が平に抱きつき耳元で囁いた。
「早いもん勝ちだからねー」
東の拳が震える。
「ちょっ……本田さん!」
西が慌てて割り込む。
「そ、そんなのダメだよ!公平に決めようよ!」
本田が不敵に笑う。
「でも、みんな平クンと関係を持ちたいんでしょ?」
室内に重い沈黙が落ちた。
「…………」
「…………」
「…………」
三人の視線が平に集まる。
「あのさ」
平が弱々しく言う。
「それって決定事項なん?」
---
結果報告:
一位:東「愛だよ」(最終的に10回の膣内射精を記録)
二位:本田「エロゲ理論を過信しすぎたわね」(8回)
三位:西「健太郎くんへの罪悪感と経験不足かな」(4回)
決定事項:
- 東: 平の正式な恋人として関係継続
- 本田: 平の同意のもと、自由意志による性行権獲得
- 西: 山田との関係継続+週一回の平との性行権獲得
平のコメント:
「もう二度と筋弛緩剤は使わせない……絶対にだ……」
# ホンちゃんの異常な愛情
---
## 後日談:禁断の欲望
「はあっ……」
本田梨花子の指が鏡面仕様のバスルームの壁を滑る。湯気に曇ったガラスに映るのは、陶器のような肌と完璧なラインを持つ自分の裸身。だが今、その視線は別の場所に釘付けだった。
(また……平クンのこと思い出しちゃった……)
膝が震える。壁に背中を預けて立つのがやっとだ。右手が自然と下腹部へ伸びる。そこには、つい数日前まで完全に閉ざされていた領域—処女膜のあった場所—が確かにあった。
「あっ……」
爪先が触れただけで甘い電流が走る。本田は初めて理解した。これまで感じていた「不感症」は単なる無知だったのだ。適切な刺激と心理的準備さえあれば……
「すごい……こんなに……濡れるものなのね……」
指をゆっくりと粘膜の入口へ滑らせると、すでに溢れ出していた潤いが音を立てた。
(初めて見たとき……平クンのアレ……)
記憶が鮮明に蘇る。制服のズボンの隙間から現れた怒張。臨戦態勢でもない状態のそれが、それでもなお暴力的な存在感を放っていた。
(最初は怖かった……こんな大きいのが入るわけないって……でも……)
本田は唾を飲み込んだ。恐怖よりも好奇心と探究心が勝った瞬間のことを。慎重に腰を落とし、亀頭が裂け目に触れた感触。痛みと同時に脳天を貫く奇妙な衝撃。
「ああ……痛いの好きかも……」
膣口がきつく抵抗するのも束の間、異変が起こった。突如として激しく脈打ち始めた平のペニス。そして—噴出した大量の精液。まるで火山の噴火のように。
「ふふ…… 処女膜……平クンの精液で…溶けちゃった……」
本田の指が浅く襞を掻く。かつて塞いでいた薄い皮膚は今や跡形もなく、代わりに熟れた肉襞が待ちわびるように蠢いていた。
(平クンの精子が……直接……私の膜を侵食して……破壊していった……)
記憶の中の光景が官能を増幅させる。吐き出された精液が内側から処女膜を圧迫し、ついには裂け目を開く一部始終。医学用語で「化学性貫通」と呼ばれる現象だろうが、本田にとっては永遠に忘れ得ぬ快楽だった。
「はぁっ…… すごく……熱かった……」
指がさらに奥へ潜る。粘膜が吸い付くように締め付ける感触は新しい玩具を手に入れたような愉悦感を本田にもたらした。
(だって……あの射精量よ? 高校生が一晩で6回も?)
思考が飛躍する。一般的な男子の射精量は約0.5~5ミリリットル程度。平の場合、1回当たり少なく見積もっても10ミリリットル以上。それだけの濃厚な液体が直接膣内へ注がれれば—
「私の膜なんて……破けて当然よね……」
鏡の中の自分が妖艶に微笑んでいる。以前の本田ならありえない姿だ。性的なことを口にすることすら汚らわしいと感じていた少女が、今や自らの指で秘所を探り、その過程を詳細に分析している。
(すごいわ……平クン……)
彼女の脳裏に浮かぶのは、事件後の平の姿。麻痺薬の効果で身動きできず、焦点の合わない目で虚空を見つめていた少年。それなのに下半身だけは獣のように猛り狂っていた矛盾。
「あんな才能を埋もれさせちゃダメよ……」
指が突然奥深くまで突き入れられる。
「んあっ!」
予期せぬ刺激に腰が跳ねる。バスルームに響く水音が、彼女の内部で起こっている暴動を如実に物語っていた。
(アズアズ……あなたの彼氏……最高よ……)
東紫乃の困惑した顔を思い出す。親友でありライバル。今回の件で複雑な立場にある少女だ。でも—
「私が一番早く見つけたのよ? 彼の……本当の価値を」
本田の爪が壁を引っ掻く。大理石が傷ついたように微かに悲鳴をあげた。
「それに……」舌先が唇を舐める。「平クンだって満更じゃないみたいだし」
事件当日のことを思い出す。無抵抗な状態で3人の女性に凌辱されながらも、平の肉体は確かに悦んでいた。射精のたびに見せる恍惚の表情。瞳孔の拡大。心臓の鼓動の加速。
(あの顔……忘れられないわ……)
指が2本に増えた。内壁を擦る音が浴室中に響き渡る。
「はあっ……もっと……強く……」
本田の額から汗が流れ落ちる。普段の冷静沈着な姿からは想像もつかない淫靡な表情だ。完璧に整えられた長い髪が肩にかかり、濡れて重くなった。
(平クン……次はいつ会えるかしら……)
計画はすでに進行中だった。まずは東と平が一緒に登校する時間帯を特定すること。そして彼らの乗る列車のルートを把握すること。偶然を装った接近が最も効果的だという結論に至っていた。
(もう少し待てば……年末の学校行事がある……)
クリスマス前に行われる全校集会。各クラスの委員長がステージに上がる恒例行事だ。本田と平は共に生活環境委員—つまり—
「同じ壇上に立つ機会があるのよ……」
そう呟く本田の瞳が危険な輝きを帯びる。観客の前で繰り広げられる密かなやり取り。視線だけで交わされる禁断のメッセージ。
「楽しみね……みんなが知らないところで……」
指が突然止まる。緊張と緩和を交互に繰り返した膣が今度は収縮し始めている。オーガズムの波が忍び寄る気配。
(平クン……見てる? あなたのせいで私は変わったのよ……)
鏡に映る自分が恍惚の表情で喘いでいる。
「あ……イッちゃいそう……」
足ががくがく震える。腰が弓なりに反り返る。本田の美しい顔が歪む。
「はあっ……あっ……平クンッ……!」
絶頂の叫びと共に膝が崩れ落ちた。タイル床に座り込みながらも手は離れない。余韻を味わうように優しく円を描く動きが続く。
---
翌朝—
「本田さん、今日も綺麗ですね」
廊下ですれ違った男子生徒が畏敬の念を込めて呟く。その通りだと本田自身も思う。昨晩の行為のおかげか、肌は透き通るような光沢を帯び、髪の一本一本まで天使の輪が浮かんでいる。香水は一切つけていないのに仄かな花の香りが漂う。
(やっぱり違うわ……)
昨年までの自分とは決定的に何かが変わっていた。それは女性ホルモンの分泌量かもしれないし、心の奥底から湧き上がる生命力そのものかもしれなかった。
「おはようございます」
本田が振り向くと同時に教室のドアが開いた。そこに立っていたのは—
「あら? 平くん」
驚いたような声を上げる。しかし内心では緻密に計算された偶然だ。東と一緒に登校する平の時間帯を調査し、そのタイミングで廊下を歩いていたのだ。
「おはよう、本田さん」
平の顔がわずかにこわばる。事件以来初めての正面からの遭遇に緊張しているのがわかる。
「委員のことで少し話したいんだけど……」
言いかけた平の腕が本田によって掴まれる。その動きがあまりに自然だったので男子生徒は一瞬言葉を失った。
「大事な話は個室でしたほうがいいわね」
低く抑えた声。平は混乱した顔で周囲を見るが、すでに廊下にはほとんど人が残っていない。
「ちょっと待って—」
抗議しようとする平の耳元に唇を寄せ、本田が囁く。
「アズアズには内緒? それとも共有?」
瞬間的に平の表情が凍りつく。東に知られることを極端に恐れている証拠だ。
「わかったよ……どこで話す?」
諦めたような口調で同意する平を見て、本田は小さく微笑む。罠にかかった獲物の気持ちが少しだけ理解できた気がした。
---
「平くん」
体育用具室の鉄製ドアが重く閉ざされる音。本田の指が錠前の音を立てて施錠すると、部屋は密室となった。埃っぽい匂いと柔軟剤のような甘い香りが混ざり合う。
「ここなら……ゆっくりお話できるわね」
本田はゆっくりと平の方へ歩み寄る。制服の襟元から覗く喉元が妙に白く見える。窓から差し込む冬の陽光が彼女の輪郭を黄金色に縁取る。
「本田さん……一体どういうつもりなんだ?」
平の声には明らかな警戒感が滲んでいる。壁際まで後ずさりした彼の背中にバレーボール籠が当たる鈍い金属音がした。
「どういうつもりって…」本田の唇が不敵に吊り上がる。「このまえのアレのこと?それともあなた自身のこと?」
彼女の視線が平の下半身に注がれる。それを感じ取ったかのように平は無意識に両脚を閉じる仕草を見せた。
「俺は何も……」
「嘘つき」本田の一言が鋭く切り裂く。
一歩前に踏み出す本田。ハイヒールの踵が床板を打つ乾いた音が部屋に反響する。
(完璧な間合いで近づいてくる……)
平の本能が警告を発する。しかし逃げ道は塞がれている。背後は体育倉庫の壁。前方は圧倒的な存在感を放つ本田梨花子。
「ねえ平くん」本田の吐息が届く距離まで接近すると、彼女の声が甘く変化した。「本当に東さんのことしか見えてないの?」
挑発的な問いに平が言葉を詰まらせる。その隙を突いて本田は右手を伸ばす。細く長い指が平の顎を捉え、顔をぐいと持ち上げた。
「教えてあげましょうか?」
至近距離から見据える本田の瞳は妖しい輝きを帯びていた。
「あなたの本当の欲望を」
(これが……)
平の中で何かが確信に変わる。東に対する淡い憧れとは明らかに異なる衝動——支配されることへの期待感。恐怖と紙一重の快楽予兆が脊椎を走り抜ける。
「だめだ……こんな……」
拒絶の言葉を紡ごうとした瞬間、本田の唇が彼の耳朶に触れた。
「平くんはホントに気づいてないのね」彼女の囁きが鼓膜を直接舐める。
本田の左手が蛇のように平の脇腹を這い上がり、「あなたの中にある獣性に」
指先が鎖骨の窪みをなぞり、制服越しに平の胸元へ滑り込む。布地の下で硬くなった乳首を探り当てると、爪先で軽く弾いた。
「っ!」
本田の囁きが平の意識を貫く。甘く蠱惑的な吐息とともに、言葉が毒のように染み込んでいく。
「平クン……」彼女の指が平の頚動脈を探るように滑る。「注いでくれたあなたの精子、まだ私の中で泳いでいるんだよ?」
耳たぶを撫でる舌先の感触。背筋に冷たい電流が走る。
「想像してみて」囁きはさらに深みを増す。「つい最近までろくに話もしたことなかった同級生女子の股の間——」
本田の指が平のズボンのジッパー部分にそっと触れる。
「誰にも見せちゃいけない秘密の場所に」
圧迫するように掌全体で覆う。
「平クンの精子がいっぱいいっぱい入ってるんだよ」
平の呼吸が荒くなる。思考が追いつかない。なぜこんな状況になっているのか。なぜ目の前にいるのはあの高嶺の花である本田なのか。
「やめてくれ……」必死に抵抗する言葉も虚しく、本田の腕が蛇のように絡みついてくる。
「本当は嬉しいんでしょ?」彼女の唇が再び耳元へ。「東さんに独占されてるふりをしながら……別の女の子にこんなことされる興奮」
本田は突然手を離すと、悪戯っぽい笑みを浮かべた。「この前の平クンは筋肉弛緩剤で動けなかったからノーカンだよね」
その言葉に平の目が丸くなる。
「今日こそは」彼女は艶めかしい動作で制服のボタンに手をかけた。「平クンから触ってほしいな」
シャツのボタンが一つずつ外されていく。白い肌が徐々に露わになる様子が扇情的だ。
「自分の意思で、ね」
挑発的な眼差しが平を射抜く。断るべきだと理性が叫ぶ一方で、本能が抗えない誘惑に引き込まれていく。
「やめろ……」声がかすれる。
「やめない」本田は断固とした口調で言い切った。「だって平クンの体は正直なんだから」
平の手が無意識に動く。抗いきれずに伸びた指先が本田の胸に触れた瞬間—
「ほらね?」彼女の勝ち誇った笑み。「これがあなたの選択」
「ちなみにね」本田が甘い声で囁く。「男の人の手に触らせるのは平クンが初めてなのよ?」
その言葉に平の鼓動が跳ね上がり、理性が揺らぐ。
「どう?私のオッパイの感触?」
本田が平の手をさらに強く押し付ける。柔らかな膨らみが指の間に収まり、温もりと弾力が手のひらに伝わってくる。
「あ……」
無意識のうちに平の手が動いていた。本能が理性を追い越すように。
鷲掴みにした乳房の上で指が蠢く。そして—
「痛っ!」
本田の悲鳴にも似た喘ぎ。平の親指と中指が、偶然にも彼女の左胸の先端を挟んでいた。
「ごめん!そんなつもりじゃ……」
慌てて手を引こうとする平に対し、本田は妖艶な微笑みを浮かべる。
「ううん」彼女の目が潤んでいる。「続けて……」
平の指先が本田のブラホックを探り当てる。慣れない手つきでそれを外すと、レースに包まれた二つの膨らみが解放された。
「真昼間の学校で裸にするなんて」本田の声が媚びた甘さを帯びる。「平クンって意外と大胆なのね」
その言葉に後押しされるように、平の手は自然と制服の裾を持ち上げていた。スカートが床に滑り落ちる音が妙に官能的だった。ついに彼女の素肌が完全に露出する。
「どう?」本田が挑戦的に問う。「私の身体?東さんやニッシと比べてみて?」
平の視線は釘付けになった。陶磁器のような肌に浮かぶ桜色の蕾。均整の取れた肢体は確かに芸術品のようだった。
「すごく……エッチだ……」
思わず口から漏れた感想は、自分でも情けなくなるほど単純だった。それでも本田は満足げに微笑む。
「そう?」彼女の瞳が妖しく輝いた。「エッチなんだぁ。じゃあ……」
一歩踏み出した本田が両手を広げる。
「そんなエッチなからだ好きにしていいよって言ったら?」
平は無言で手を伸ばした。むき出しの本田の胸を両手で掴み、強引に揉みしだく。
「……っ」
本田が小さく息を飲む。平の指は予想外の反応を見せた乳房の柔らかさに震えながらも、次第に力を込めていった。その動きには計算も技巧もない。ただ欲望に突き動かされるだけの荒々しさがあった。
乳首が固く尖っていく。それを目にした平は本能のままに唇を寄せる。歯で軽く噛んだ途端—
「んっ!」
本田の腰が僅かに跳ねた。反射的に身を引こうとする彼女を平は腕で強く引き寄せた。互いの体温が急激に上昇していく。
「……あら」
本田の声に微かな驚きが混じる。平はそのまま彼女の背後に手を滑らせ、スカート越しにお尻を鷲掴みにした。
「情熱的ね」
彼女の笑みが歪む。その表情には余裕があった。
「素敵よ、平クン」
平は容赦なく本田の下着に手をかけた。薄い布地が指にかかる瞬間—
「ちょっと」
抗議する本田の声。しかし平は聞く耳を持たなかった。引き下ろしたパンティが片足首に絡まる様が異常に淫靡だった。
「前戯もないわけ?」
本田の抗議に対し平は唸るように答えた。
「……濡れてんだろ」
事実だった。秘部を確かめるまでもなく、そこは既に熱く湿っていた。本田自身も驚くほど準備ができている。
「ふっ……」羞恥に頬が火照る。「ずるいじゃない……」
文句を言いながらも本田は平の肩に顔を埋めた。密着した肌から伝わる鼓動が自分のものか相手のものかも分からない。
平の手が彼女の腰を抱く。そして—
挿入の瞬間、本田の全身が硬直した。だがそれは痛みによるものではない。むしろ逆だった。
(これは……)
熱く硬いものが体内に入ってくる感覚。しかも今回は違う。昨夜のように無理矢理ではない。相手が自らの意思で欲しているのだ。
「っ……はぁっ」
堪えきれず漏れる吐息。平の動きが徐々にリズミカルになる。結合部から粘液質な音が響き始めた。
(すごい……)
本田は恍惚とした表情で平の動きを受け入れた。単なる肉体的な快楽以上の充足感が全身を満たしていた。
「平……くん……」
掠れた声で名前を呼ぶ。それに応えるように平の動きが激しさを増す。
(あぁ……)
本田は心の中で叫んだ。(これが……女の悦び……)
本田は平の耳元に唇を寄せた。熱い吐息と共に囁かれる言葉が麻薬のように鼓膜を侵す。
「どう?」声には意地悪な優越感が滲む。「あなたの恋人、アズアズの親友の膣の締まりは?恋人と比べちゃう?」
平の喉がゴクリと鳴った。否定できない事実が鋭い刃となって胸を刺す。
「いつも教室ですまし顔の同級生女子の中は気持ちいい?」
本田の声は挑発的だ。平は何も答えられない。代わりに彼女の細い腰をさらに強く引き寄せる。
「学校の中で交わっちゃうなんてアズアズと経験ある?」
「……ッ」
最後の一撃が決定打となった。平の全身が痙攣し、本田をきつく抱きしめたまま—
「あ……っ!」
突然の熱い奔流に本田が背筋を弓なりに反らす。膣壁が無意識に収縮し、新たな快楽の波が彼女を飲み込んだ。
「もっと……」
本田の指が平の髪を弄ぶ。甘い命令に応えるように再び抽送が始まる。今度は先ほどより激しく—
「んっ……ふぅっ……」
平の無言の反復運動が続く中、本田は恍惚とした表情で天井を見上げた。東、西と過ごした教室を思い出す。あの純粋な友情が今の背徳的な行為と奇妙に融合していく。
(アズアズ、ニッシ……見て…)
彼女は友人に向けて心の中で呟いた。(これが本当の私……)
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平はようやく息を整えた。短時間で3回の射精を行った疲労感が全身を包む。一方の本田は余裕の表情で微笑みかけてきた。
「満足した?平クン」
彼女の問いかけに答える代わりに、平は無言で床に落ちた制服を拾い上げた。まだ熱を持つ自分の股間を抑えながら。
「あなたの精子がたっぷり入った子宮でこの後の授業を受けるのね」
本田の言葉が耳に残る。まるで呪文のように。
「彼女の親友に中出しした最低な平クン」
甘く冷たい声が平の心臓を締め付けた。
「私は好きよ」
最後の言葉と共に本田は立ち上がった。まだ濡れた秘部を気にする様子もなく、平に口づけすると、
「じゃあ、また後で」
そう言って体育用語室を先に出る本田の背中を見送りながら、平は窓の外をちらりと見た。
そこで、西と目が合った。
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体育用具室から出てきた本田と目が合う。本田は西に向かって小さく微笑むと「放課後」という言葉を唇だけで伝えた。西は黙って頷く。
午後の授業中も西の思考は混乱していた。
(平くんとホンちゃんの……あんな姿を見てしまった)
体育用具室で見てしまった光景—汗ばんだ肌に浮かぶ筋肉の凹凸、苦しげに歪んだ眉間の皺—が脳裏に焼き付いて離れない。
放課後、屋上へ向かう階段で西の足取りは重かった。屋上の扉を開けると夕日が眩しい。そこに立っていたのは本田ではなく平だった。
「……平くん」
予期せぬ人物に声が裏返る。
平の声は低く乾いていた。「本田さんから聞いた。『ニッシが放課後、屋上で』って」
西の頬が火照る。確かに本田がそう伝えたのは事実だが—
「あの……私…」言葉を探す西を遮るように平が一歩近づいた。「今日、体育用具室でのこと見てただろ?俺のこと軽蔑したよな…」
「違う!」思わず大声が出る西。西は俯いたまま言葉を探した。
「まず謝らせて。ホンちゃんの家でのことは……本当にごめんなさい」
3人がかりで犯された日のことを想いだし、絞り出すような声に平の眉が寄る。
「西さんが謝ることじゃないだろ」彼はゆっくりと言葉を選んだ。「本田さんに無理やりされたことだし……君も…ある意味被害者だ」
「そうなんだけど」西は顔を上げた。頬を紅潮させながら続けた。「違うの」
沈黙が二人の間に落ちる。西は深呼吸をして再び話し始めた。
「私は健太郎クンと付き合ってるし、あの時まで……初めてだったのに」震える指で制服の裾を握りしめる。「なのにあの後、全然落ち込んでないことに気づいちゃった」
平の目が見開いた。彼女の告白は予想を超えていた。
「むしろ……解放感?みたいなものを感じてた」西の声が小さくなる。「私って性道徳がおかしいのかな?今もさっきホンちゃんと……してる平クンを見て、私もしたいって思ってる」
西の目に涙が溜まり始めた。恥ずかしさと混乱で肩が震える。
「私……健太郎クンのこと好きなのに……こんな…汚れてる…のかな…」
平は西に向かって寂し気に笑いかける。
「同級生の女子3人と関係持っちゃった俺が言えることなんてないけどさ」
「西さんは、ずっと純だと思う。俺なんかが汚せない、清らかな心を持ってる」
西は突然平に飛びついた。震える両腕が彼の胸に回される。
「違うよ!違うんだよ!」叫ぶように訴える西の声は屋上に響いた。「それは私を見てない!ちゃんと私を見て!」
平の困惑した表情が彼女の視界に入る。
「違うの……健太郎クンを好きでいながら」西の声が濡れた。「身体は平クンを求めてる。これが私の真実なの」
平の腕が微かに揺れる。何か言おうとして口を開けかけたが……
「だから……」西の顔が近づく。夕日に照らされた睫毛が揺れる。「抱いて?お願い?身体だけでいいから」
彼女の囁きは甘美な毒のようだった。平の首筋に唇が触れる温もり。「平クンを頂戴?」
---
西は平の腕の中で小さく身を捩らせた。「ホンちゃんが言ってたんだけど、平クンってロリコン趣味があるんだよね?」
「何……!?」平が顔を赤らめて否定しようとした瞬間、西は既に制服のリボンを解いていた。シャツのボタンが一つずつ外されていく。
「私、小6で成長が止まっちゃって」彼女の声は自嘲と期待が混ざり合っていた。「こんな身体なんだけど?どう?そそるかな?」
純白のブラジャーが露わになった。乳房の膨らみは僅かで、ほとんど平坦と言ってもいいほどだった。それでも乳首だけは硬く尖っているのが薄布越しにも判る。
「西さん……やめ—」
言い終える前に西は平の膝に跨がっていた。小柄な身体が彼の大腿に乗る感覚は不思議なほど軽かった。
「平クン大きいね」西の吐息が平の首筋にかかる。「私の顔が胸にも届かないや」
小さな手が平の鎖骨をなぞる。まるで確かめるように—
「ねぇ」彼女の目が潤んでいた。「さっきまでホンちゃんと……してたよね?」
西の挑発に平は息を飲んだ。細い腕が平の首に絡みつく。小さな顔が至近距離で上目遣いを向けている。
「ホンちゃんには上げるのに、私にはくれないの?」甘い毒のような問いかけ。
平は返事をしなかった。代わりに視線が泳ぐ。夕闇の屋上で二人の影が一つになる。
「平クンって女から迫られないと何もできない人?」西の声は責めるようでいて哀願に近かった。「だったら私とおんなじだね?」
最後の一言が平の自制心を砕いた。大きな手が西の肩を掴む。勢い余って壁に押し付けられた彼女の背中が微かに喘いだ。
「どうなってもしらないからな!」耳元で囁かれた言葉は脅しにも聞こえた。
西は静かに瞼を閉じた。長い睫毛が震えている。「どうにでもして欲しいから……こうしてるんだよ」
その言葉を最後に、二人の世界が溶け合った。西の小さな身体が平の腕の中に収まっていく。最初は抵抗するような緊張感、次第に弛緩していく筋肉。互いの体温が混ざり合い、境界線が曖昧になっていく。
平の手が西の背中を撫でる。細い脊椎の感触。少女のような柔らかさと女の円やかさが同居する奇妙な身体。
「痛くない?」低い声が西の耳を擽る。
「ん……大丈夫……」吐息混じりの返事。彼女の小さな手が平の広い背中に爪を立てる。「もっと……強くして」
痛みと快感の狭間で西の腰が踊る。平の動きに合わせて揺れる身体は小舟のよう。不安定なのにどこか安定している。屋上に響く水音と粘膜の擦れる音は秘密の儀式を思わせた。
「あぁ……平クン……」彼女の声が高まる。「気持ちいい……」
「西さん……」平の声は掠れていた。西の額に汗が滲む。
彼女の指が平の髪に絡みつく。幼い容姿とは裏腹の成熟した仕草。「私の中…平くんので…いっぱいになっちゃってる」自虐的な台詞に混じる喜び。
「あぅっ!」
突然の悲鳴に近い嬌声。平が角度を変えたせいだ。西の小さな身体が弓なりに反り返る。
「そこっ!そこ……当たってる!」西の足が宙に浮く。平の胴に巻きついた両脚が限界まで伸びている。
「ここ?」
平の問いに西は激しく頷く。言葉にならない呻き声が喉から漏れる。結合部から溢れる蜜が彼女の太ももを伝い落ちる。
「すごい……平クンの……おっきくて固い……」彼女の呟きは熱に浮かされていた。
平の額からも汗が滴る。西の体内で脈打つ感覚。小柄な身体を貫く圧倒的な質量。理性と本能がせめぎ合う。
「西さん……」
呼びかけに応えるように彼女は目を開けた。潤んだ瞳が平を捉える。
「平クン」西の声が甘く囁く。「健太郎クンも知らない私の子宮。ここに精子を出したい?」
平は返事できずにいた。西の白い指が自らの下腹部を愛おしそうに撫でる。その仕草には幼さと淫靡さが奇妙に同居していた。
「ふふっ」突然彼女が笑った。「健太郎クンはそもそもここも知らないけどね」
西の視線が二人の結合部へと落ちる。細い指先が平の陰茎を咥え込んだ部分をなぞる。そこは充血して膨らみ、透明な蜜で濡れていた。
「ねえ平クン」西の目が潤んでいる。「友達の彼女に中出ししてみたい?」
突然の直球に平の動きが止まる。西は続けた。「私はされてみたい。ドロドロにとけて、1つになってみたい」
彼女の吐息が平の鎖骨にかかる。小さく震える身体は熱を帯びている。
「ねえ平クン」西の声が切なくなる。「中出ししようよ。絶対気持ちいいよ。だからお願い」
平は無意識のうちに西を強くかき抱いていた。熱く脈打つ感覚と共に、自身の欲望が爆発するのを感じる。
「……っ!」
短い吐息が西の耳元で漏れる。次の瞬間—
**どくんっ……どぷ……っ**
西の胎内で何かが弾けた。平の腰が痙攣するように震え、粘り気のある液体が注ぎ込まれていく。西の小さな身体が弓なりに反り返った。
「ああっ……!」
熱い奔流が彼女の内側を満たしていく。子宮が焼かれるような感覚。同時に—胸の奥が鈍く痛む。
「悪い。山田」
平の囁きが西の鼓膜を揺らした。その言葉がトリガーとなり、
**ギュゥゥッ!!**
西の膣壁が反射的に収縮した。残滓まで搾り取るように—平のペニスを締め上げる。
「うん……ゴメンね……健太郎クン」
震える声で西は呟いた。汗ばんだ肌を密着させたまま、視線を合わせることはない。ただ互いの呼吸と鼓動だけが共有されている。
「こんな……悪い彼女だけど……」
涙が溢れそうになる。それを誤魔化すように—
「……よろしくね」
唇が歪んで微笑みを作る。虚ろな笑顔。それは罪の重みと奇妙な解放感が同居する表情だった。
---
「ありがと」
西はそう言うと滑らかに平の膝から降りた。白い太腿の間から滴る跡を慌てて拭い去る仕草を見せながらも—もういつもの控えめな西に戻っている。
「ほら平クン」西は平の前に立ち、屈託ない笑顔を浮かべた。だがその目だけが妙に澄んでいる。
「また今度ね」
そう言って身を乗り出し、平の額に軽いキスを落とす。接触は一瞬だったが確かな温もりが残った。
「今度」
彼女は続けた。声には無邪気な期待が滲む。
「東さんと平クン。私と健太郎クンで……」
言葉を選んでいるような間が挟まれる。
「ダブルデートしようよ!絶対楽しいと思うなー」
屈託ない天使の笑顔。しかしその奥には別の光が宿っていた。
「……そうだな」
平は呆然と西を見上げた。脳裏に焼き付いたのはあの瞬間の西だ—山田への謝罪と快楽の狭間で痙攣していた彼女の表情。
「機会があれば」
言葉は虚ろに響いた。西の二つの顔が重なる。天使と悪魔の狭間に立つ少女を前に、平はただ立ち尽くすことしかできなかった。
---
物陰からそっと身を引く影。フェンス沿いの死角に溶け込むように立つのは本田梨花子だった。艶やかな黒髪が風に揺れる。
「……ふぅっ」
深いため息が漏れる。薄手のスカートの裾がわずかに捲れ上がり、白い腿が覗く。だがそれ以上に異様なのは、指先が湿り気を帯びていることだった。
「……ニッシ」
低く呟く声。視線は遠ざかる二人の背中を追っている。平の腕に軽くもたれるように歩く西。どこから見ても仲睦まじいカップルのように映る姿だった。
「恐ろしい子……」
眉間を寄せながら、本田は独りごちた。
「天然の男たらし……魔性の女ね。山田、頑張れよ…」
自嘲気味な笑みが唇を歪める。指先をそっと離すと透明な糸が伸びた。冷たい感触にぞくりと震える。
「……私も大概だけどね」
風が吹き抜ける屋上で、本田は一人佇んでいた。遠ざかる二人の姿を見送りながら。
-----
東は廊下の窓辺にもたれていた。昼休みの喧噪が遠く響く。
「……何やってんだろう私」
指先が無意識に前髪を弄る。昨日の屋上での出来事が頭を巡っていた。本田と西の大胆な誘惑。そして平の困惑した表情。
(なんで私が我慢してるんだろう)
胸の奥で小さな苛立ちが渦巻く。確かに本田と西を巻き込んだのは自分だ。でもそれはあくまで……
「平のこと……好きなのに」
呟きは誰にも届かない。視界の端で茶色の髪が揺れた。平が歩いている。本田と西が並んで笑いかけている。三人の距離は驚くほど近い。
「ねえ平クン!」
本田の甘い声。西が腕に絡みつく仕草。平は曖昧な笑みを浮かべている。
「……ずるいよ」
喉の奥が熱くなった。平の袖を掴んだ本田の指。西の華奢な肩。彼女たちの方がずっと平に近い位置にいる。
(私だって触れたいのに)
爪先で床を叩く。かつては何でもできたはずだ。彼氏ができれば振り回し、別れれば次の男を探していた。なのに今の自分は……
「何もできない」
彼女なのに。彼女であるはずなのに。本田と西に対する申し訳なさが足枷になっていた。罪悪感という名の檻。その中で平が少しずつ遠ざかっていく。
「……許さないからね」
小さく呟くと東は廊下に背を向けた。背筋を伸ばし、堂々と歩き出す。
(もう迷わない)
窓ガラス越しに三人が振り向いた気がした。だが東はもう立ち止まらない。
吹っ切れた東は強い。自分の武器は3人の相談会で明らかになっている。
『美貌と高校生離れした豊満な身体』『男性経験からくる性技術』『中学から培った平への愛』
これらを有効的に使い、平を自分から離さない。二人への罪悪感はこの際置いておく。
二人を平から引き離したりはしない。自分の方が二人より平に近づければいいだけだから。
-----
放課後の教室には夕陽が差し込んでいた。平が窓際の席で数学のノートを開いている。そこへ本田と西が軽やかな足取りで近づいてきた。
「平クン!テスト範囲教えてくれない?」
本田の声が弾む。彼女は既に平の隣に座っていた。
「あ……俺もよくわかんないけど」
平が困ったように頭を掻く。
「じゃあ一緒に調べようよー」
西が机に両肘をついて身を乗り出す。スカートの裾がわずかに捲れ上がった。
その時―
「邪魔するわ」
ドアが開き、東が入ってきた。髪をかきあげながら教室の中央に立つ。金色に近いソバージュヘアーが夕日に輝いている。
「あれ?東さん」本田が驚いたように振り向く。
東はゆっくりと平の席に向かって歩き出した。ハイヒールの音がカーペットの上でも妙に響く。
「あんたたち」
口元に冷笑を浮かべながら、東は平の目の前に立った。長い睫毛の下から鋭い眼差しが平を射る。
「何してるの?」
「いや……テスト勉強……」平が視線を落とす。
東は椅子に腰かけている本田と西を一瞥し、それからゆっくりと平の正面に屈み込んだ。膝が床につき、豊満な胸がテーブルの縁に乗る。
「ねぇ」甘い吐息が平の鼻先にかかる。「私のことも構ってくれる?」
平の瞳がわずかに広がった。東の胸元が襟口から覗いている。淡いパープルのブラジャーのレースが影を作っていた。
「東……何言ってんだよ」
平が慌てて視線を逸らす。耳が赤くなっている。
本田と西が驚愕の表情で東を見つめた。東は気にする素振りもなく、さらに体を傾ける。
「あれ?平もこういうの好きなんだ?」甘い声音が耳朶に触れる。「中学の時から見てたよね?私のこと」
指先が平の鎖骨あたりをかすめる。中学時代の記憶がフラッシュバックする。毎日のように廊下ですれ違っていたあの頃。制服の下にこんな肉体が眠っていたなんて――
「っ!やめろって!」平が思わず叫ぶ。
東は嬉しそうに微笑んだ。その指が今度は平の太ももの上に乗る。
「怖がらなくてもいいじゃん」彼女はささやいた。「私たち、カレカノなんだから」
西が息を飲む音がした。本田は目を見開いたまま硬直している。4人しかいない教室の空気が一瞬で変わる。東の瞳が妖しく光る。
「それに……」
東の唇が平の耳に近づく。熱い息がかかった。
「平が本当に欲しいもの……」
東の指がスッと移動し、平のズボンの縁をなぞる。
「私は持ってる。今から教えようか?」
---
東は教室のドアまで早足で駆け寄るとカチャリと閉まる音。東の細い指が鍵を回す姿が逆光に映し出される。その指が今度は平の肩に触れた。
「おい……ここ学校だぞ」平の声が震える。汗ばんだ制服のシャツ越しに東の体温を感じていた。
「そうだね」東はさらりと言って平の膝の上に跨った。重みがゆっくりとかかり、スカートの中の柔らかな太腿が平の脚を挟み込む。彼女の腰が微妙な角度で沈み、下半身に圧迫感が走った。
「東……やめろって」平が顔をそむける。
「なんで?」
東の囁きが耳に届く。吐息が首筋を撫でるように滑り落ちていく。香水でもないのに甘い匂いが鼻腔を刺激する。
「私たち付き合ってるじゃん?」
その指先が平のネクタイを緩め始めた。小さな金属音と共に第一ボタンが外され、第二ボタンへと指が伸びる。
「ちょっ……東!」
突然の出来事に固まる本田と西。西の頬がみるみる紅潮し、その手がスカートの端をぎゅっと握りしめている。本田は眉をひそめながらも、目をそらせずに見つめていた。
「アズアズ……それはちょっと……」本田が言いかける。
東はちらりと本田の方を見たが、すぐに平に視線を戻した。
「ねぇ平?思い出せる?」東の顔が至近距離まで近づく。唾液に濡れた唇が僅かに開き、「私の身体。中学の時からずっと……」と言葉を紡ぐ。
平の目が泳ぐ。確かに中学の頃から意識していたのは確かだった。だがまさか東の方から—。
「でも今は……」言葉を探している間に東の手が動いた。平のベルトに指がかけられる。
「待て!待てって!」平が慌ててその手を掴む。
東は残念そうに小さく溜息をつき、「なんだぁ……やっぱりダメ?」と言いながらも、指を平の手首から腕へと這わせる。その動きは確実に男の弱い部分を知っていて—
「でも平だって欲しかったんでしょ?」
東の指先が平の背骨をなぞる。背筋に鳥肌が立つ。そして彼女の手はそのまま平の首筋へと滑り上がり……
西の呼吸が荒くなっている。その指が無意識に自分の制服の袖をつまんでいる。本田がそんな西の様子に気づき、ハッとする。
「私は平が好き」東の声が変わる。甘くて危険な色香を漂わせながらも、「私ね……ずっと待ってたんだよ?」と囁く。
平は困惑したまま動けない。ただ息が荒くなっていくのを感じるだけだった。
東の唇がゆっくりと近づいていく。
---
キスは突然だった。東の唇が押し当てられた瞬間、平の思考が停止する。温かいものが口腔内に侵入してくる——東の舌。粘膜が擦れる感覚に背筋が粟立つ。
「んっ……」東の喉奥から洩れる微かな音。舌が器用に平の歯列をなぞり、その奥深くへと潜り込む。
そして次の瞬間——どろりとした液体が送り込まれてきた。唾液。濃厚で甘ったるい粘液が喉を伝わり落ちていく。ゴクリと飲み込む音が鳴り響く。
「っ……!」
平は反射的に東を押し退けようとするが、その腕を東の指ががっちりと掴んで離さない。本田と西の視線を感じる。本田は目を見開いたまま呆然と立ち尽くし、西は口元を手で覆いながらも釘付けになっている。
東の唇がようやく離れた。銀色の糸が二人の間に橋を架けていた。
「制服って便利だよね?」東の声は掠れている。その指が平のズボンのファスナーへと滑り落ちる。カチン、と軽い金属音。「だって……全部脱がなくてもさぁ」
平の抗議は間に合わなかった。冷たい指先が膨張した塊を掴み出す。ズボン越しでも脈打つ熱量が伝わってくる。そして——
「ほらっ……」
東の声と共に鈍い摩擦音。布地がずれる感触。刹那の空白の後、灼熱の粘膜に包まれた。東の体内へ。
「……っ!」
平の息が止まる。脳天に突き上げる快感の波。東の腰がわずかに揺れるたびに粘膜が蠢き締め上げてくる。目の前で揺れる東の顎。細い首筋を汗が伝っていく。
「ねぇ……見えるでしょ?」東が本田と西に向かって囁く。その微笑みは淫蕩そのものだった。「端から見たら仲のいいカップルがイチャついてるだけだよね?」
本田は唇を噛みしめた。西はもはや俯いている。だがスカートの裾を握りしめる指先が震えている。その視線は東のスカートの膨らみに釘付けだ。
「でも実は……」東の腰の動きが速まる。グチュリ、グチュリと湿った音。「平と私、繋がってるんだよ?こんな風に」
平の掌の中で東の臀部が弾んでいる。柔らかく張りのある丸みが波打つ度に結合部から蜜が滴る。
「……やめろ……」平は辛うじて呟いた。
東の動きが止まった。彼女の瞳に浮かんだのは苛立ちか哀しみか。どちらとも取れる複雑な光を湛えながら、東は再び唇を寄せた。今度は優しいバードキス。
「平って私に『好き』って言ってくれないよね。いつだったか、最初に言ってくれたっきりでさ」彼女の声が直接鼓膜に響く。「でもいいんだ……だって平のここは正直だもん」
東がまた腰を打ちつける。今度は深い。根元まで沈み込む感触。
平の視界が霞む。理性の箍が緩み始める。東の胸元から溢れる熱気。彼女の汗と香水が混じった甘い匂い。そして何よりも——この密着感。
「……あ…」西がかすれた声を発した。その指が自分のスカートの下に忍び込んでいることに気づく。本田が目配せすると西は慌てて手を引っ込める。
「気持ちいい?」東の囁き。「私も……すごくいい」
東の内部が収縮する。平の神経が一本一本剥き出されるような鋭い刺激。
「私……本当に好きなの」東の声が震える。「中学の頃からずっと……平のこと……」
その言葉と共に東の体全体が弓のように仰け反る。絶頂の予兆。平は最後の自制心で東の肩を押す。
「待てって……!」
東は拒まなかった。ただし彼女は平から離れずにその肩に顎を乗せた。二人の息遣いが重なる。
「……平が私のこと……好きなら」東の吐息が首筋をくすぐる。「今ここで……好きって言ってくれたら…きっと…もっと」
平は答えない。ただ荒い息を整えることだけに集中する。
東が平の胸に顔を埋めると、制服の襟元に熱い湿り気が広がった。震える声が平の耳朶にかかる。
「……熱い……すごく……平のこと感じるよ」
東の指が平の制服のシャツを強く握りしめる。爪が食い込む痛みさえ心地よかった。
「本田さん、西さん」東が顔を上げると、涙の跡が乾きかけていた。「二人とも……それぞれ大事にしてる想いがあるのはわかってる」
その視線が二人を行き来する。本田は眉をひそめ、西は小さく肩を震わせた。
「強制なんてしない。お願いもしない」東の声は穏やかだった。「だって……大切な友達だから。親友だと思ってるから」
一呼吸置いて続けた言葉には切実さが滲んでいた。
「でも……今だけは」東の瞳が潤んで光る。「平に……私のこと、感じてほしいの」
本田の奥歯がギリッと鳴った。(純情ギャル?ヤリマン?ツンデレ?ヤンデレ?)様々な属性が脳内で渦巻く。(こんなの反則じゃないのよ!)
西は息を呑んだ。山田への申し訳なさと同時に、あの堂々と感情をぶつけられる姿への羨望が胸を刺す。(東さん……きれい……)
東の視線が平に戻る。唇が僅かに歪んだ。
「ね?平ぁ……」涙ぐんだ声が甘く震える。「私のこと……好き……かなぁ?」
その問いは脆く崩れそうで、それでいて奇妙な確信を宿していた。平の体温が伝わる肌を通じて、言葉以上のものを求めていることが痛いほど伝わってきた。
---
平は無言だった。言葉が野暮に思えた。ただ腕を伸ばし、東の華奢な背中を掻き抱く。骨格ごと溶かしてしまうような熱量で。汗で滑る制服越しに互いの鼓動が交錯する。
「嬉しっ……!」東の嗚咽が平の喉元に押し付けられる。「嬉しいよぉ……平ぁ……」
喘ぎ声が甘ったるく変化していく。平の腰が東の内側を叩くたびに、教室の空気が蜜のような粘性を持つ。二人だけの宇宙がそこにあった。本田が微かに呻き、西の膝がガクッと折れる。彼女たちの視線も絡めとられていた。
「……ッ!」
平の脊髄を駆け上がる衝撃。堰を切ったように放たれる熱流が東の深部を貫く。同時に東の四肢が硬直し、それから弛緩した。
「熱っ……い…」東が呆然と呟く。「平の……全部……入ってきてる……」
結合部から溢れた滴りが平の腿を伝う。窓から差し込む午後の日差しが汗まみれの二人を黄金色に縁取っていた。
本田が床にへたり込み、西が慌てて支える。二人の視線は逸らせなかった。それは単なる性交ではない——魂が交わる儀式だった。
東がゆっくり身を離す。銀糸のような繋がりが途切れると同時、
「好きだよ……」口にした二人の愛の言葉が教室に響いた。
-----
結局のところ、私たち4人の関係は大きくは変わらなかった。私は平の彼女のまま。親友の本田さんと西さんと、「あーでもない、こーでもない」と相談会を開く日々。
「今日は月曜だし……」
「木曜は私が担当で」
「じゃあ水曜は西さんね!」
そんな会話が日常になった。
違いと言えば、横を見ると壁掛けカレンダーに記号が書かれているのが見て取れる。ハートマークは私、星マークは本田さん、月マークは西さん。そして、太陽のマークが平。
4つ並んでいたり、3つだったり、時には2つだったりするけれど、それは愛の印だ。みんなで決めた愛の印。
まだ私と平の2つマークが圧倒的に多いけれど──油断はしない。いつでも全力が、私、東紫乃の信条だ。
* * *
放課後、屋上のフェンスにもたれかかる平の横に並びながら、ふと思う。彼は何も変わっていない。いつも通り無愛想で、少し目つきが悪くて、でも優しくて……。
「ねえ平?」
「なんだよ」
「私たち、これからもずっとこうやって続いていくのかな」
「さあな」
平は空を見上げたまま答えない。相変わらずの塩対応。でもわかってる。これは照れ隠しだ。
「でも……」平が突然ポケットから小さな箱を取り出した。「これやる」
開けてみると……指輪だった。ちょっと安物っぽさがあるけど、ちゃんと小さくダイヤの輝きがある。
「……っ!?ちょ……平!?まさか!?」
動揺する私に背を向けながら、ボソリと言う。
「……みんな平等にって建前は守るけど。これだけは譲れない」
平の耳が赤くなっているのに気づいて、胸がいっぱいになる。
「……バカ」
抱きついた私に押されてバランスを崩しながらも、しっかり受け止める腕の中。平の匂いがする。暖かい。
* * *
私たちはこんな風に、時に近づき、時に離れて──うまい具合の四角形を探し続けるだろう。ね、平?
「……ふん」
「もー!なんでそこで照れるわけ!?」
「うるさい」
それでも彼の腕はしっかり私を抱きしめている。
これが私たちの形。歪で、変で、でも愛おしい、狂った四角形。
どこまでも続いていけそうな気がした。春風に乗せて、笑顔が宙を舞った。
### エピローグのその後で:月の女。西
**西のモノローグ**
私は完璧にこなしていた。自分がこうまで普通にふるまえることに自分自身ビックリしていたのだ。
健太郎クンと育む愛と平クンと育む快楽は完璧なバランスで両立していた。
朝、鏡の前で平クン好みのちょっと幼い感じの下着を選ぶ。淡いピンクのレースに小さなお花があしらわれたもの。まるで健太郎クンには見えない秘密の鎧を纏うように。
学校に行けば健太郎クンは笑顔で迎えてくれる。「おはよう!」と彼の声が廊下に響く。私も「おはよう」と返す。仲のいいカップルだと思われているだろうし、事実だ。
昼休みは二人で同じベンチに座って手作りのお弁当を広げる。健太郎クンの笑顔が眩しい。あぁ好きだなぁと心底思う。これは嘘じゃない。嘘ではないのだ。他にも真実があるだけ。
夜になると体育用具室に向かう私の足取りは軽いようで重い。水曜日は私の番。合鍵で鍵を開け、体を滑り込ませて再び施錠する。
もう見なくてもできる所作だった。薄暗い倉庫の中で待つ平クンの影が月明かりに浮かぶ。
「健太郎クン」私は平クンに抱きつきながら言う。「ゴメンね。私の身体は平クンから離れられないの」
この言葉は嘘じゃない。でも健太郎クンへの想いも嘘じゃない。この二つが同時に存在することが私にとっては普通になってしまった。
「だから、今日も犯して?」私は平クンの目をじっと見つめる。「友達の彼女の子宮を独占して?ね、平クン?」
その瞬間だけは全て忘れる。健太郎クンの笑顔も、東さんとの友情も。ただ欲望に溺れる獣になるのだ。
次の日の朝、何もなかったかのように健太郎クンと手をつなぎながら登校する。
子宮の中で熱く揺れる精液以外、昨夜の痕跡は全て消しきれているはずだ。無意識にお腹を撫でる私。
でも私の心はざわめく。健太郎クンの大きな手のひらが私の手を包む温もりを感じながら、昨日の冷たいマットの感触を思い出すから。
「奈津美ちゃん?」健太郎クンが不安そうに顔を覗き込む。
「あっごめんなさい!ちょっとぼーっとしてた」また嘘をつく。
---
週末はデートの予定が入っていた。映画を見て食事をして公園を散歩する。
典型的なデートコースだけれど、健太郎クンと過ごす時間はかけがえのない宝物だ。
夕暮れのベンチで彼の肩に頭を預けると、世界がふわりと和らいで見えた。
視線の先に月が大きく見えていた。健太郎クンは「すげーでっかい満月!綺麗だな」と感動している。
私も同じ月を見ながら「うん、すごく綺麗。…………次の月の日はいつだったかな?」と零してしまう。
健太郎クンは不思議そうに「次の満月って30日後じゃないの?いや……あ、そっか、何でもない」と気まずそうな顔をする。
どうやら健太郎クンは月経周期と勘違いしているようだ、そっか。お姉さんいるもんね。
私も恥ずかしそうな顔を作ると「………うん」と誤魔化し、健太郎クンにしなだれかかる。
(ゴメンね健太郎クン)心の中で謝りながら、次の月の日が早く来ることを恋願い、私の思索は溶けていった。
### エピローグのその後で:星の女。本田
**本田のモノローグ**
親友の彼氏との禁断の交わり。いまとなっては回数すら分からない程、抱かれた記憶。不感症をうたっていた私は遠い過去の自分だった。平とアズアズを中心とした四角関係はずっと続いている。いまさら抜け出すことなんてできやしない。
昔の自分は孤高だった。一人で一生きていけると思っていた。ニッシに出会い、女二人も悪くないと思い始めていた。でも、今は無理だ。焦がれるような快感と胸の疼きを知ってしまったから。
幸いにも親友のアズアズは懐が広い—というかちょっと頭がイかれているところがあり、彼氏を半ば共有財産のようにすることを認めてくれている。「共有財産」という言葉にぞくっとする。
正直、まだ抜け駆けできなくもないと思っているけど、アズアズとの関係も壊したくないから、ずるずる現状維持を選ぶ私。私は弱くなったのかな?
今日は星の日、私の日だ。平に抱かれながら耳元で何を囁こうか。平に刺さるワードをエロゲをプレイしながら探す私。『ご主人様』『奴隷』『堕ちました』……ありきたりな台詞が画面を埋める。
「違うんだよなぁ……」
彼が反応するのはもっと生々しくて、もっと愚かで、もっと卑しい言葉たち。『お願いです……奥の方に出してください……』『私だけを見て欲しいんです……』『あなたの為ならなんでもしますから……』
画面の向こう側の架空のキャラクターが発する言葉たちに眉をひそめる。こんな陳腐な言葉じゃ平は満足しない。もっとリアルな、もっと切実な痛みを伴う言葉でないと彼は喜ばない。
「まあ、いいか」
今は何も考えずに、平の、そして、アズアズの愛に溺れていたい。枕に顔をうずめながら考える。
あの日、私が提案したあの計画が全てを変えてしまった。それとも私の中に眠っていた何かを見つけただけなのか。
窓の外は既に夜。時計の針が進む音だけが部屋に響く。明日は私の番。どんなふうに彼を誘惑しようか。甘く囁けばいいのか。それとも少し強気に迫ればいいのか。
考えてるうちに眠りに落ちた。夢の中で平が私を抱きしめていた。アズアズの姿はなく、私と彼だけの世界。幸せだったがすぐに違和感に気づく。ここには誰もいない。これが本当の私の望みなのか?それとも……
目が覚めた時、既に朝日が昇っていた。カーテンの隙間から差し込む光が眩しい。ベッドの上で起き上がり、スマホを確認する。メッセージアプリを開くと平からの通知が一件。
『今日、19時』
簡潔な文面なのに心臓が高鳴る。待ち合わせ場所も指定されていない。つまりいつもの場所—体育用具室。体育の授業がない日の午後、そこは私たちだけの秘密基地になる。
「……了解」
短い返信を送り、服を選び始める。今日は少し挑発的なものを選んでみようかな。黒のレース入りブラと紐パン。アズアズだったらあからさますぎて絶対着ないタイプ。平はどう反応するだろうか。
準備を終えて家を出る前に鏡を見る。茶色の長い髪を束ねながら自分の表情を確かめる。微笑みが自然に浮かんでいる。これが私の現在地—孤独でもなく完全な幸福でもない、歪んだ均衡点。
学校へ向かう途中でニッシと出会った。「おはよ〜」と彼女が挨拶してくる。少し気だるげで疲れた様子だがその目は輝いている。
「昨夜もすごかった?」と冗談っぽく言ってみる。
ニッシは夢見る表情で小声で返す。「…うん…まだ入ってるみたい…多分私の子宮…半分くらい平クンので満たされてる…」
彼女はお腹を押さえて歩き始めた。昨夜は彼女の番だ。きっと素晴らしい夜だったのだろう。
放課後のチャイムが鳴る。部活に行く生徒たちの賑やかな声を聞きながら席に着いたまま待つ。教室には徐々に人が減っていく。そして最後の一人が出て行くと立ち上がる。
体育用具室までの廊下は静寂に包まれていた。扉に辿り着くとすでに鍵が開いていることに気づく。中に入ると平が背を向けて立っていた。
「来たか」
振り返ることもなく彼が言う。声に含まれる緊張感にドキッとする。
「……来たよ」
後ろから抱きつくと彼の体温を感じた。「秀司……今日は特別なことしてあげるね」
(二人きりの時は名前呼びをすることで私を強く印象付けてやる)
彼の首筋に唇を這わせながら囁く。「アズアズには内緒でね……」
一瞬だけ躊躇した後、彼はゆっくりと振り向いて私の肩を掴む。そしてそのまま強く押し倒してきた。
反転する視界の中で、用具室の窓から星が綺麗に輝いていた。
私は目を閉じて彼に身を任せる。そう、今日は星の日、私の日なのだから。
# 後日談:西、1cmの愛
## 西のモノローグ
私は処女を喪失する瞬間を克明に覚えていた。いや、もっと正確に言うならば——自分の膣口を始めてペニスが通り抜けた瞬間を。
最初は恐怖しかなかった。あの巨大なものが本当に自分の中に入るのか、という原始的な恐怖。けれどそれは予想以上に鮮烈な体験になった。
自分の小さく幼い膣口がペニスの先端で押し広げられ、カリ首が膣口を通過していくそのコリコリとした感触。
膜が破られる痛みよりも鮮明に覚えているのは、この通過の瞬間だった。あれ以来、私の身体はその感覚を忘れることができなくなっていた。今ではホンちゃんに感謝しかない。
*****
繰り返す平クンとの情事で、私は気づいた。平クンの3つの弱点に。
まずは身体。平クンのペニスには弱点がある。それは大きく張り出したカリ首だった。この部分を擦られると、平クンは蕩けてたまらない表情になるのだ。可愛い。
(じぶんとおんなじだ)と私は内心で微笑む。私が最も感じる場所は膣口——ちょうど平クンの弱点であるカリ首が当たる場所だった。
膝立ちになり、私の膣口に平クンのペニスをあてがう。ゆっくりと腰を沈めると、彼の表情が変わる。その変化を見て取って、私は悪戯っぽく囁く。
「ねぇ、平クン。知ってた?自分の弱点」
彼は荒い息を吐きながら、焦点の合わない目で私を見上げている。
「私の膣口の輪っかで……」
指で自身の入口を示す。ピンク色の粘膜が充血して赤くなり、ヒクヒクと震えている。
「平クンのカリ首をキュッキュッって絞ってあげるね」
天使のような微笑みを浮かべて宣言すると同時に、腰を上下させる。カリ首が膣口を通過したギリギリの位置で止まり、また引き戻す。1cm程の微細な動きだけれど、効果は絶大だ。
「どう?私の輪っか?気持ちい?」
問いかけながらも返事など期待していない。平クンの全身が硬直し、喉から低い呻き声が漏れている。快感に耐えるために拳を握りしめている姿が可愛らしい。まるで小さな男の子みたい。
さらに追い打ちをかけるように、「ほらぁ、どんどん締めちゃうよ」と囁きながら動き続ける。1cmだけの往復運動。膣口だけで与えられる刺激なのに、これほどまでに彼を追い詰めることができるなんて!
平クンの腰が小刻みに震え始めると、「もう出ちゃいそうなの?まだ早いよぉ」と意地悪な言葉を投げかける。もちろん止めるつもりはない。むしろ速度を上げていく。
カリ首が私の膣口を通る度に感じる「コリッ」とした感覚。それこそが至福の瞬間だった。何度も処女を喪失している錯覚に陥る。
自分の身体がこんなに淫らな器官だなんて思わなかった。でも今はその事実すら愛おしい。
ここで2つ目の弱点。平クンは背徳感に弱い。だから私は、平クンの友達の彼女という自分の立場を、彼の快感を煽る道具として使用する。
「ねぇ…このまま…ここでイこっか…ここから子宮まで精子届くかな?…友達の彼女の子宮…届いたら孕んじゃうかもね?」
小さな声で囁いた瞬間、平クンの腰が跳ね上がった。膣口にカリ首を引っ掛けたままドクンドクンと脈打つペニスを感じながら私も絶頂を迎える。二人分の熱気が体育用具室内に満ちていく。
私は最後の一滴まで絞り出すように、射精中のペニスのカリ首を膣口で締めあげながら執拗に腰を小刻みに振る。1cmを意識しながら。
ペニスの痙攣が収まると私は荒い呼吸を整えながら平クンの上に崩れ落ちるように身体を預ける。汗で濡れた肌同士が触れ合う感触が心地よい。
「私の輪っか……すごいでしょ」と彼の耳元に唇を寄せる。
まだ固いままだね。私の膣内で膨張したままの平クンを感じる。まるで私の中の空間すべてを支配するかのように。
「平クンの、まだ固いままだね。もっかい、やってあげる」
再び膝立ちになり、小さな円を描くように腰を上下させる。膣口だけで与える刺激——それは私が見つけた最大の武器だった。
3つ目の弱点。平クンはロリコンでシスコンだ。ホンちゃんに言わせると『彼、弱点属性多過ぎね』だ。だから、私は自分の身体を最大限に活かす。
「私の膣口って筋が一本まっすぐな穴でしょ?まるで小学生みたい」自分で言いながら少し悲しくなるけれど、それを逆手に取るのが今の私。
確かに自分の性器は未成熟だ。身長も伸び悩み中学女子の平均にも満たない。胸も小さく凹凸の少ない身体。同世代の女の子たちと比較すれば明らかに幼い。
「身体がちっちゃいから仕方ないんだけど、いままでは嫌だったの」
鏡を見るたびにため息が出た。なんで成長しないんだろうと。でも今は違う。この幼い容姿も膣の形状もすべてが平クンを悦ばせるための武器なのだ。
「でも平クンって、私の膣の形、幼くて好きでしょ?よく見てるもんね?もしかして、妹サンと入ってたお風呂とか想像してた?」
図星だったようで彼は少し顔を赤らめている。スゴく可愛い。
「私が小学生からずーっと、変わらないこの筋に平クン、入れちゃってるんだよ?」
本来なら守られるべき年齢の女の子の体に侵入しているという罪悪感と背徳感を煽る。
「どう?小学生の膣を好き放題つかってる平クン?」
さらに追い打ちをかける。「今度、ランドセルしょってあげよっか?」
(想像してみて。放課後の体育用具室。ランドセルを背負った小柄な少女が膝立ちで……その姿だけで興奮するでしょ)
「それでさ、お兄ちゃんとか、言ってあげよっか?」
さらに耳元で囁く。彼の体が僅かに震える。ダメ押しの一撃を与えられるかもしれないと思った矢先——彼が突然叫んだ。
次の瞬間には私が床に押し倒されていた。天井を背景に彼の顔が見える。紅潮した頬と潤んだ瞳。理性と欲望が交錯する表情だ。「いいよ」と私は囁き返す。
今夜もまた新しい記憶が生まれるだろう。私と平クン、お互いにとって忘れられない一夜になることは間違いない。
将来、健太郎クンに抱かれる日が来たとしても、ここまで性癖をさらけ出したセックスは出来ないって思うとちょっと切ない。
「お兄ちゃん……きて」
そう言った瞬間、再び彼のペニスが侵入してきた。いつもより激しい動き。余裕のない彼の表情を見る限り演技ではないらしい。
私も余裕ぶってたけどやっぱり最後は平クンに主導権握られちゃうみたい。
仕方ないかと思いながらも腰の奥底から湧き上がる快楽の波を受け止め続けた。
# 後日談:本田、西への贖罪
## 本田のモノローグ
ニッシの処女を自ら喪失させたこと――あの決断は本当に正しかったのだろうか?
毎晩ベッドに横たわり、天井のシミを数えるたびに思い出す。あの日の出来事が脳裏に焼き付いて離れない。私の手によって処女を失ったニッシの表情。涙と混乱に満ちたあの瞳。
あの時はそれしかないと思った。私が平との初めての性行為で見せた醜態――あの浅ましく欲望に溺れた姿は、ニッシの中にある理想の本田像を粉々に打ち砕いたに違いない。そう思った瞬間から恐怖が始まった。
ニッシは私の意地悪にすら気づかないほどピュアで純だ。あの純真無垢なニッシが、私が快楽に喘ぐ醜い一面を目の当たりにしたら……絶対に幻滅される。そう確信した。
だからあの場で私は即決した。ニッシを私のところまで堕とすと。あの場を逃せば、ニッシは二度と私にあの天使のような笑顔を向けてくれないだろう――そんな強迫観念に駆られたのだ。
計画は功を奏した。少なくとも表面上は。ニッシは私とアズアズと一緒に平を共有することに同意した。だが、それも誤算だった。予期せぬ副作用が発生したのだ。
ニッシがNTR(寝取られ)という嗜好に開花したのは完全に計算外だった。はじめはただの遊びだったはずが、いつの間にかニッシは積極的に平との関係を楽しむようになった。そして何より問題なのは――
「ホンちゃん、昨日の平くんとのこと聞かせてほしい?」ニッシが無邪気に尋ねる。「すごく気持ちよかったんだよ~!やっぱり心と身体は相性が違うんだね~」
私が望んだ堕落とは違う方向へ突き進んでしまった。ニッシは今や恋人以外の男とのセックスという行為そのものを楽しんでいる。
「ニッシ……」私は言葉に詰まる。「最近ちょっと平と遊びすぎじゃない?」
ニッシは不思議そうな顔をして首を傾げる。「でもホンちゃんが教えてくれたことだよ?自分の欲望に素直になっていいって」
そうだ。確かに私が教えたことだ。でもこんなはずじゃなかった。私はただニッシと今まで通りの関係でいたかっただけなのに……
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# 西の答え
「ねぇ、ニッシ」私は慎重に切り出した。「最近……山田とはどうなの?」
ニッシはカフェのテーブルに置かれたアイスティーのストローをゆっくり回しながら、きょとんとした表情を浮かべた。「え?健太郎くんのこと?」
以前は違った。水族館デートに行ったとか、雨の日に傘をさしてくれて嬉しかったとか、そんな些細な出来事を嬉しそうに報告してくれた。私たちは週に一度はこうしてお茶を飲みながら恋バナをするのが習慣だった。
「うん……前に比べて何も話さないなと思って」私はコーヒーに目を落としながら言った。「何か変わったこととかない?」
ニッシはしばらく沈黙した後、かすかに微笑んだ。「特になにも変わってないかな。健太郎クンとは上手くいってるよ」
「そっか……」私は少し安心したような落胆したような複雑な気持ちになった。
「でもね」ニッシが急に口を開いた。「健太郎くんに抱かれてる自分はちょっと想像できないかなぁ」
「どうして?」思わず聞き返してしまう。
ニッシはストローをくわえて氷を軽く噛む音を立てた。「ん〜難しいな〜言葉にしにくいんだけど……」
窓の外を眺めながら西は続けた。「なんか気づいちゃったんだよね。自分の中の自分というか……私の性道徳ってめちゃくちゃ低いんだって」
「性道徳?」私は眉をひそめた。
「うん」ニッシは頷いた。「佐藤さんに言わせると『ポリアモリー』ってやつみたいだけど。複数の人を色んな愛し方ができる、みたいな」
その言葉に私は内心で頭を抱えた。まさかニッシがそんな専門用語まで使うなんて……
「でもね、ひとつだけハッキリしたことがあるの」ニッシは突然私の方に身を乗り出した。「私のなかでさ、心の恋人と身体の恋人って両立しないんだって気づいたの」
「両立しない?」
「そう!」ニッシは輝くような笑顔で言った。「私にとっては健太郎くんは心の恋人。一番大切な存在なんだけど……」
言葉を切り、彼女は少し恥ずかしそうに頬を染めた。「でも、身体の相性っていうか……そういう部分は平くんと全然違うんだよね」
私はコーヒーカップを持つ手が震えるのを感じた。「それで……いいの?」
「うん!」ニッシは迷いなく答えた。「むしろ気づけてよかったかも。だって私ずっと自分に嘘ついてたんだもの。好きな人は一人だけだって決めつけて……でも本当は自分の気持ちに正直になれなかった」
ニッシの言葉に私は返す言葉もなく黙り込んだ。目の前の少女はまるで別人のように見え始めた。かつての純真無垢なニッシの面影はそこにはなく、代わりに自信に満ちた新しい西がそこにいた。
「それにね」ニッシが静かに付け加えた。「ホンちゃんが教えてくれたことで、私、本当の自分を見つけられた気がするの」
その瞬間、胸が締め付けられるような痛みを感じた。私が犯した罪が彼女を変えた。そしてその変化は取り返しのつかないものになってしまった。
「ありがとう」ニッシが突然言った。「ホンちゃんがいなかったら、こんな風に思うことさえできなかったと思う。ホント、ホンちゃんと友達でいられて良かった~」
私は何も言えなかった。ただ小さく頷くことしかできない私に向かって、ニッシはさらに笑顔を向けた。「これからも色々教えてね!」
窓の外では秋の風が街路樹を揺らしていた。私たちの友情は変わらずそこにあったが、その中身はもう二度と戻れないほどに変わってしまっていた。