魔境群馬・桐生ダンジョン特区〜底辺ランナーのハクスラ&ハーレム生活~ 作:Potoooooooo
▼桐生ダンジョン特区 移住・就労支援パンフレット
発行:ダンジョン管理局 桐生支部 / アイギス・プライム広報部
ようこそ、夢と希望の最前線!『桐生ダンジョン特区』へ!
■ 桐生ダンジョン特区とは?
日本国内に数多ある、ダンジョン産出資源の確保を目的に設置された特別行政区の一つ、それが『桐生ダンジョン特区』です。 かつて織物産業で栄えた群馬県桐生市の旧市街地を内包する広大な未踏領域からは、現代のエネルギー問題を根本から解決する夢の資源【DM(ダンジョン・マター)結晶】が採掘されます。 飛び抜けて特別なレア資源が産出されるわけではありませんが、地元企業や管理局の絶え間ない努力により、安定した資源供給ラインと、活気のある経済、今最も働きやすい特区として注目を集めています!
■ 君も一攫千金!『ランナー』として活躍しよう!
特区では現在、DM結晶の採掘や未知の生態系の調査を行う探索者、通称『ランナー』を大募集しています。
特区内で活動する業許可を得たランナーには、各種税制優遇が与えられます! 学歴・職歴・年齢は一切不問。必要なのは、あなたの勇気とチャレンジ精神だけ。
採掘したDM結晶は管理局が適正価格で買い取ります。一回の探索で、一般的なサラリーマンの数ヶ月分の収入を得ることも夢ではありません!
■ 万全のサポート体制
「ダンジョンは危険なのでは?」
そんな不安はご無用です。
特区内の治安および浅層エリアの安全確保は、世界最高峰のセキュリティ企業『アイギス・プライム』が徹底して行っています。さらに、現在管理局ではダンジョン内に魔力通信アンテナを整備した『管理区画』(リンク:管理区画MAP)を設けており、安全な狩場を提供しております。管理区画内であれば、万が一HPが0になっても即座に『死』を意味するわけではありません! 特区が誇る『蘇生施設』により、あなたの命は確実に保護されます。
また、探索に伴う疲労や体調不良に対しては、特区内の医療施設で専門のケアを受けることが可能です。最新の『デトックス・ポーション』も完備されており、健康面でも万全のサポートをお約束します。
さあ、あなたも桐生特区で、人生を変える大きなチャンスを掴みませんか?
HOME> 初心者ガイド> 初心者ガイド(桐生)
ダンジョン特区生存wiki:初心者ガイド(桐生)
作成者:名無しの底辺ランナー
【初心者必読】騙されるな! 桐生特区のリアル
あのクソ甘い公式パンフレットを真に受けて群馬のド田舎まで来たいっていうおめでたい
ここは夢と希望の最前線なんかじゃない。特にそこの、脱サラしてランナーで食っていこうとしてるお前。週末にちょっと潜って小銭稼いでいた頃とはわけが違う。
現実に食い潰される前に以下の情報を頭に叩き込んでおくべきだ。
■ 一攫千金のウソと群馬の現実
「一回の探索で数ヶ月分の収入」?
ああ、嘘じゃない。だがそれは、超高額な最新装備を身に纏い、深層に潜れるような一部のエリートランナーだけの話だ。
現実を教えてやろう。
群馬は魔境だ。まず魔力濃度が高い。平均濃度が東京の10倍あるなんて狂ってる。それに魔力嵐も頻繁に起きるんだ。
たしかにそのイカれた環境のせいで、産出されるDM結晶の純度は飛び抜けて高い。だからこそ、偉い奴らはウマい汁を吸おうと、こぞって群馬に人を送り込もうとするってわけだ。
その上で、お前たちが知らなきゃいけないことがある。数ある群馬のダンジョン群の中で、なぜここ桐生が特区の
つまりここは、俺たちのような底辺野良ランナーが、常に命を天秤にかけた泥臭いハクスラを浅層で毎日繰り返して、DM結晶を拾い集めるのにうってつけの場所なんだ。
どうだ? それでも群馬に来たいか? 何? もっと知りたい? そんなお前は次の項目も見ておけ! 絶対だぞ!
■ 税制優遇という名の搾取システム
公式がドヤ顔でアピールしている《税制優遇》。
確かにランナーの税金は安い。だが騙されるな。
特区の生活では、税金なんかメじゃないくらいに【ボッタクリ価格の消耗品費】、【特区内の異常に高い住居費(安全確保代)】、そして何より【治療費】が重くのしかかってくる。
手元に残るのはその日を生き延びるための端銭だけ。借金が雪だるま式に増えていく奴のほうが圧倒的に多い。公式が謳う活気のある経済っていうのはそういうカラクリだ。
■ アイギス・プライムは俺たちを守らない
公式パンフにデカデカと載っているグローバル企業『アイギス・プライム』。あそこの金髪の氷の女王様が率いる重武装部隊は、確かにクソ強い。
だが勘違いするな。奴らが守るのは富裕層(VIP)と高純度結晶の輸送ルートだけだ。
俺たち底辺ランナーがストリートのギャングに襲われようが、ダンジョンの浅層でモンスターの餌になろうが、奴らは冷たい目で見下ろして通り過ぎるだけだ。才能のないゴミは自己責任ってのが、あのメガコーポの基本理念だからな。
■死に戻りシステム
管理局が膨大な予算と人員を割いて維持管理している『管理区画』のお陰で、俺たちは命をベットしやすくなっているのは事実だ。HPがゼロになっても、お前が
そして重要な現実を教えてやる。蘇生はタダじゃない。
大企業の保険がない俺たち野良ランナーにとって、その費用は絶望的なまでに高額だ。最初は安い? 冗談キツいぜ。回数を重ねるごとに身体の再構築リスクが上がり、費用は雪だるま式に跳ね上がっていく。蘇生代を返すために無理して潜り、また死んで闇金(『キリジョウ』とかだ)の借金奴隷に落ちる奴を何人も見てきた。
さらに最悪な仕様がある。死んで蘇生しても、体内に溜まった『魔力酔い』の毒素は一切リセットされない。
むしろ強制的な細胞再生で負荷がかかり、起きた直後にヒート状態が悪化することすらある。デスルーラなんて甘い考えは今すぐ捨てろ。蘇生代とポーション代の二重苦で首を括りたくなければ、絶対に被弾しない立ち回りを身につけるんだな。
■ 『デトックス・ポーション完備』の真実
これが一番重要だ。ダンジョンに潜り続けると、瘴気によって遅かれ早かれ必ず《
公式が謳う【最新のポーションによる安全な治療】が受けられるのは、それこそメガコーポのエリートか、大金持ちだけ。本物の純正浄化液なんて、オークションで天文学的な値段で取引されてる代物だ。
俺たち底辺に手が届くのは、ストリートに出回っている安価な一時緩和剤、通称”クリアブルー”だけ。だが気をつけろ。あれの効果は気休め程度で、常用・過剰摂取すると内臓に深刻なダメージを与える。つまり俺たちが稼ごうとすればするほど、瘴気の代謝が追いつかなくなって、最終的には腰を振るだけの猿になってドロップアウトってワケだ! しかもそれは最悪じゃない。最悪は死体袋行きだ。ま、遅いか早いかの違いだけかもしれないがな。
追記(重要):
最近は、”ピュア”って名前の危険な一時緩和剤まで出回ってる。こいつはゴミだ。ちょっと気分がよくなるがそれも一瞬。一度手を出せば、魔力酔い以上に悲惨な末路を辿って廃人行きだ。
こいつの流通は俺たち底辺にとっても死活問題だから、対策を練る必要がある。ギャングとクソコーポどもに対抗するために、お前の力が必要かもしれない。
■ 結論
ここまで読んだのか? お前正気か?
群馬は厳しい環境だ。確かに額面上は稼げるが、魔力酔いで狂うやつが多い。
それにここは奥多摩のゴブリンとスライムしか出ないようなダンジョンじゃない。ろくな準備もせずに挑めば死に戻って借金で首が回らなくなるだろう。
次にお前が見るべきは初心者向けビルド構築ガイドのページだ。またそこで会おう。
▼日本 東京都 ダンジョン管理局 会議室
東京の中心部に聳え立つ摩星楼。
その地上数百メートルに位置する会議室からは、眼下に煌びやかな首都の夜景が広がっている。空調の効いた室内。最高級の天然木で設えられた円卓を囲むのは、日本の
テーブルの中央で、ホログラムプロジェクターが青白い光を放ち、空中に日本列島のダンジョン分布図を浮かび上がらせている。
「……以上が、今四半期における関東ブロックのDM結晶産出量推移です」
眼鏡を押し上げながら、データ分析官が淡々と報告を締めくくった。
葉巻を燻らせていた白髪の男、統括局長が、ホログラムの特定部位を指差す。
「群馬の様子はどうだ?」
「はい。桐生はやはり比較的安定しており、結晶納品量は純度換算で前年比112%を記録しています。しかし……」
「問題は他だな」
「毛無峠の事件が尾を引いているものと推察します」
分析官が答えた。三か月前、毛無峠ダンジョンにおいて、トップ・ランナーのチームが一時遭難する事件が起こっていた。
管理局とアイギス・プライムによる合同調査で、毛無峠ダンジョンの深層において、既存の想定を遥かに上回る高濃度の『濃縮瘴気』が突如として噴出したことが判明している。これにより帰還用アイテムや通信装置が使えなくなったことで、ランナーチームは一時的に遭難する事態となった。
「彼らは深層探索の必須MODである『活動時間増加』を積んでいました。これは体内の魔力取り込み速度を強制的に低下させることで、活動時間を増加させるというメカニズムです。……しかし、想定外の濃度の前では気休めに過ぎませんでした」
後に彼らは一人を除いて帰還したが、現在は重度の魔力酔いで全員が病院のベッドの上だ。
「……最高級の浄化液を投与したものの、一歩も動けない状態が続いています。彼らの魔力キャパシティが並外れて広かったからこそ即死は免れましたが、戦力としては当面使い物になりません」
分析官の言葉を、別の幹部が引き継いだ。
「それでランナーの間に萎縮する動きが広がったようです。そのため、毛無峠以外の高難度ダンジョンでも資源産出量は半分以下に落ち込みました」
「赤城、浅間、榛名、妙義、全てか」
「はい」
重役たちの唸り声が会議室に響き渡る。対策を打て、と言われてもどうしようもないのが現実だった。ダンジョンの気まぐれな環境変化を外部から制御することなど不可能である。
「アメリカのD&D製薬から『毛無茸の在庫が消尽する』というクレームが来ていますが……」
「……」
高難度ダンジョンの深層でしか採取できない極めて希少な植物で、高額で取引される毛無峠産の特産素材である。そこから作られる高級な薬品は世界的な需要があり、それが滞るということは、管理局にとってもかなり痛い話だ。
「また、桐生のオサフネから看過できないレポートが上がっています。毛無峠の件以降、両毛(群馬・栃木)・信越(長野・新潟)エリアで魔力濃度が急上昇。そして長野と群馬で魔力嵐の観測が頻発しています。……これに伴うデトックス・ポーションの在庫予測がこちらです」
ホログラムに、急速に右肩下がりを描く在庫グラフが踊った。
「約2ヶ月後、桐生の備蓄は完全に払底します」
その報告に、重役たちの顔に深い焦燥が走った。
純正浄化液の枯渇は富裕層の不満を買うが、緩和剤の需要は常に底なしである。何せ使うのはランナーだけではない。一般人も魔力酔いを発症すればクリアブルーを買いに走るのだ。
緩和剤の供給不安による治安の悪化も深刻な懸念ではあるが、彼らが真に恐れているのは暴動ではない。労働力の完全な停止である。
DM結晶はエネルギー資源だ。現在、関東エリアでそれを最も安定して供給しているのは、他でもない桐生ダンジョンである。そして、その桐生で結晶を拾い集めているのは、底辺ランナーたちなのだ。彼らが魔力酔いで倒れれば、エネルギー供給網に不安が生じることになる。桐生の安定稼働を維持するためには、底辺の労働力たるランナーたちにバラ撒くための緩和剤を何としてでも確保し続けなければならない。
「厳しいな。桐生に優先して備蓄を回すようにしろ。それと、アヤカ君には動向を注視するよう指示を出しておきたまえ」
「承知しました。それともう一つ……」
「ピュアとかいう偽薬の件か」
「はい。アイギスによる密輸ルート掃討作戦の承認申請が来ています」
「許可する。徹底的にやらせろ。偽薬でランナーが使い物にならなくなっては困る。……そもそもだ。重要なのはその源流だ。製造拠点の特定調査はどうなっている?」
「難航しております」
担当者が答えると、重役はこれみよがしに舌打ちをした。
「アヤカ君に指揮を取らせろ。管轄外の捜査権も一時的に許可するよう通達を出す」
「承知しました」
重役は話は終わりだとばかりに大きく息を吐くと、深く椅子に腰掛け、眉間を揉んだ。
「次の報告へ移ろう。次はどこだ?」
これ以上の懸案事項はないだろう。そう思いながら、続きを促した。