【CP】
アラスター×ニフティ
※原作改変・キャラ崩壊・性描写あり。
ご理解のうえ、お楽しみください。
ペンタグラムシティで数年ぶりに「ラジオ放送」が再開してしばらくのこと、この日もノイズがかった声が街に響いた。
―ごきげんよう、地獄の皆さんッ!―
その声は地獄の怒声や悲鳴をかき消して罪人たちの耳を奪う。
「ラジオデーモンの放送よ!」「やめろッ!恐ろしいッ!!」
ある者はラジオの前で続きが語られるのを心待ちにし、またある者は耳を塞いで遠くへ走って逃げていく。今では地獄の名物だ。
ホテルのラジオ放送室では一人の悪魔がティーカップを片手にマイクを握っていた。鼻歌交じりに得意げに、ひとしきり喋った後、男は満足したようにマイクをオフにして部屋から出ようとした――その時だった。椅子から立ち上がった瞬間自分のお尻からモゾッと何かが動いたのを感じた。普段は出ていない尻尾が顔を覗かせている。
「ピィッ!」
甲高いノイズ音と共に男は一瞬立ち止まり、そして冷静に尻尾を仕舞った。
(おっと・・・・。いけませんねぇ。)
身なりを整えるように、ジャケットの裾をはたいて襟を正し、背筋を伸ばして部屋を後にした。
「ねぇアラスター!今日の放送も素晴らしかったわ!」
ホテルオーナーのチャーリー・モーニングスターだ。目を輝かせてアラスターにかけよる。次に来る言葉を予想してアラスターは一歩下がった。
「今ちょうど、グループ・セラピーをやってるところなの!アラs」
「いえ、私は忙しいものでッ!」
話を遮るようにそう言って、アラスターはチャーリーの肩をすり抜けた。
「待ってお願い!あなたの話術があればきっと素晴らしい会になると思うの!それにあなただって悩みの一つくらいあるでしょう?」
振り向いて食い下がるチャーリーに、片眉を引きつらせながらアラスターは振り向いた。
「悩み?!ハッ!ご冗談!それよりご自分の身を案じてはどうですか?プリンセス。」
ズイッとチャーリーの懐まで近づいて杖の先でチャーリーの顎を持ち上げた。チャーリーは目に力を込めてじっとアラスターを見つめた。
「分かってるわ。」
ージジッ・・・!ー
チャーリーに見つめられて一瞬、小さなノイズ音を発生させた後、アラスターは一歩後ずさりして体はそのままに顔だけ後ろを向いた。
「?」
「私にセラピーは必要ありませんし、罪人の面倒を見るのはあなたの仕事では?」
そう言い残してアラスターは影の中に消えてしまった。
「なんだ今の?」
口を開いたのはハスクだった。酒瓶を片手に訝し気に首を傾げた。
「別にいつも通りでしょ。」
ヴァギーが興味なさそうに答えた。
「ハスク!!良い所に来たわね!グループセラピーのことなんだけど!」
チャーリーはパッと顔を明るくして(しまった)という顔をしたハスクに駆け寄った。
そして、その場でアラスターのことを気に留める者はいなくなった。
アラスターが現れたのはキッチンだった。煮込み途中の鍋を見に来たのだ。
「ニフティ!ナゲッツは食材じゃないっ!」
「あはははは!!!」
エンジェルがナゲッツを愛おしそうに抱き上げながらニフティから逃げ回っている。
―ジジッ―
ため息のようなノイズ音を漏らしてアラスターは目を細めて肩をすくめた。そして首を振って鍋の前に立つ。ぐつぐつと沸く鍋を底からかき混ぜて騒音をかき消すように鼻歌を口ずさんだ。
「おいっ!アラスター!ニフティをどうにかしてくれっ!俺のナゲッツが食われそうだ!」
「・・・そのへんにしておきなさい、ニフティ。」
「分かった!」
「はぁ、まったく油断も隙もないな。いいかニフティ、こいつは俺のルームメイトなんだ。」
「ふうん?じゃあセックスすんの?」
「するか!!!!なんでそうなるんだよ!」
アラスターは一瞬だけ視線を逸らし、喉の奥で小さくノイズを鳴らした。
それから、鍋を必要以上の力でかき回し始めた。
「ルームメイトなのに?てかナゲッツって男?」
「やめろ!ナゲッツをそんな目で見るな!まだ子供なんだぞ!」
「あはは!」
アラスターの手元で、鍋の取っ手がわずかにずれた。
そのまま、
―ガシャンッ!!!―
鍋が床に落ちて大きな音がキッチンに響いた。
驚いた二人が同時にアラスターの方を向くが、彼はその場に立ったまま、ただ床に広がる真っ赤なスープを見つめている。
「・・・・失礼。」
一拍置いてようやく口を開いた。
「ニフティ、これを片付けてもらえますか?」
「あ、うん、いいよ。」
ニフティとエンジェルは互いに顔を見合わせた。アラスターは口角を持ち上げたまま、瞬きもせずに立ち尽くしている。
「じ、じゃあ、俺はナゲッツを部屋に連れて帰るよ。」
エンジェルが気まずそうにナゲッツを抱きしめキッチンを後にした。
「ニフ。」
雑巾を持ってスープを拭くニフティの髪が床につきそうになり、アラスターは一瞬だけ眉を寄た。それから無言でそっと髪の毛を持ち上げた。
「?」
ニフティは目だけでアラスターをチラッと見て、気にせず床を拭き続けた。
―ジジッ―
ノイズ音だけが静かなキッチンに小さく響く。アラスターはニフティの横にしゃがんでじっと見ている。
「ボス・・・どうかした?」
ニフティが手を留めてアラスターを向いた。
「・・・いえ、別に。」
そう言って立ち上がると、キッチンの周りをぐるぐると歩き始めた。
「じゃあ、終わったし行くよ。」
ニフティがそう言って、キッチンの出口に向かって一歩踏み出した。
その背中を見た瞬間、アラスターの喉から言葉にならない音がこぼれた。
―ピィッ―
思わず口を手で覆った。そしてかき消すように咳ばらいをした。
「ニフ。」
さっきと同じ呼び方だったのに、ノイズ交じりの上ずった声で呼び止めた。
呼び止めるつもりはなかったが自分でもそうする以外に誤魔化しようがなかった。
「なに?」
振り返るニフティに答えようとして、アラスターは口を開いたまま言葉を失った。
何を言うつもりだったのか、自分でも分からない。
「いえ、ありがとうございます。」
ようやく出たのは、床掃除のお礼だった。
ニフティは首を傾げてアラスターを見ている。
アラスターはニフティから視線を逸らして、一歩近づいた。
近づくほどに、頭の中がうるさくなる。
ノイズが増え、鼓動が耳に響く。
(まずい……)
離れなければならない。
分かっているのに、距離だけが縮まっていく。
アラスターは、ぎこちなくまた一歩近づく。目が小刻みに揺れて時折ダイヤルになっては元に戻る。呼吸が荒れる。
「……ジジッ!うっ、やはり——」
小さなうめき声と共にアラスターが一歩後ろに後ずさりした瞬間だった。
「あっ!!虫!!!」
ニフティの横を一匹の虫が走り去り、瞳孔を開かせたニフティが後を追おうと振り向いた。
ナイフを片手に今にも走り出しそうなニフティのスカートの裾を、咄嗟にアラスターが捉えた。
「待て!!!」
ガクンッ!と後ろに引っ張られニフティはそのまま後ろに倒れそうになり、アラスターがそのまま掬うように抱き上げた。
「虫が逃げる!」
アラスターの腕を押しのけて虫を追おうとするニフティを、アラスターはより強く抱きしめて逃がすまいとした。
「ちょっと!・・・アル?」
ニフティは抱きしめられたまま上体をひねってアラスターの顔を覗いた。彼は目を黒白させて言葉に詰まっている様子だ。ニフティは大きな単眼でアラスターの顔をじっと見つめた後、大きく息を吸って吐いた。そして力を抜いて彼に身を委ねることにした。
「掃除がまだ?」
「・・・えぇ、来てください。」
アラスターは瞳のダイヤルを震わせながらゆっくりと立ち上がった。背中の触手が伸び掛けては引き戻され、また伸び掛けては戻ってゆく・・・そんな彼の後ろで影がにんまりと笑っている。
「うん。」
ニフティは下を向いて力なく相槌をした。針金のような小さな手でアラスターのジャケットの袖をぎゅっと握った。
アラスターはニフティを抱えたまま自室へと向かった。そこは部屋というよりも“家具のある屋外”と言った方がふさわしいだろう。誰もここを掃除すべきだとは思わない。
―ピィッ!―
甲高い声がアラスターの喉から発せられた。その瞬間、目を見開いて咄嗟にニフティを半ば投げるような形でベッドに下した。そして、片手で頭を押さえよろけながらドレッサーに寄りかかる。
「クソッ・・・・」
ニフティに聞こえるかどうかの小さな声で呟くと、ドレッサーの端に置いていたウイスキーボトルが指先に当たった。
―ジジッ!!—
すぐさま栓を抜いて、瓶のまま煽った。舌先から喉奥、そして胃まで…一直線に流し込まれたウイスキーはまるで炎が体内で燃え広がるようだった。
「ビビッ!?・・・ハッ!ハハッ!」
頭の中は真っ白だった。ただ、胸の奥に針が刺さったかのような痛みがシクシクと続いている。思春期に知らない大人に叱られた時のような気分とでもいうべきか、アラスターはその場でしゃがみ込んで頭を抱えた。
「アラスター・・・」
ニフティは首のスカーフを握りしめながら一歩近づいた。
頭を抱えたままアラスターは片目で少しだけ振り向いた。陰で隠れたその顔は彼の鋭い目とにんまりと笑った口角から零れる尖った牙だけがかろうじて見える。しかしすぐにアラスターは背中を丸めて顔を背けた。伸びかけた角を押さえるように手で掴んでいる。
「くっ・・・!」
頭が回らない。視界がゆがむ。
衝動を抑えるのは、もはや無理だと悟った瞬間、アラスターの背中から黒い触手が伸びた。
伸びた二本の触手は一直線にニフティの両腕を捉えた。そして彼女をベッドに押し倒し、更に二本の触手が足首を捉えた。
「・・・ピィ・・・。」
ニフティは何も言わず、小さな鳴き声を上げて微動だにしないアラスターを見つめた。そして小さくため息をついて天井のない空を見上げた。・・・次第に空が狭くなってゆく、ふと、部屋のドアを見る。まだ間に合いそうだ・・・・しかし、再び空を向いて大きく深呼吸をした。
(助けるよ、アル)
胸の中でそう呟いた。しばらくして視界が黒い影に包まれた。そこで自分が完全に「アラスターの影の中」にいることが分かった。
真っ暗闇の中、ニフティは自身の体が浮きあげられているのを感じた。背中で触手が蠢いている。手足からも触手が巻き付き、肌を滑りドレスの中に入ってくる。少し暖かい触手は不思議な感覚だった。
一本の触手が首筋をなぞる。シュルンッ、と首のスカーフがほつれて落とされた。そして―、スカーフをほどいた触手はそのまま背筋に入り込み、ドレスを背中心に沿って一気に引き裂いた。そこからは早かった。手袋、ペチコート、ビスチェ、そしてタイツ・・・・、衣類が次々と剥がされる。
最後の布が落とされた時、ニフティの両手に、触手ではなく“手”が乗せられた。そしてその手は指を絡めて握りしめた。長く鋭い爪が手の甲に食い込み血をにじませる。
「痛ッ・・・悪い子ね。」
ニフティはにんまりと笑って見せた。見上げた顔の先には、同じくにんまりと笑う口元がうっすらと見える。
ーズルッ―
両足に巻きついた触手がニフティの足を一層強くからめとった。針金のような足はもう少しで折れそうになりながらも耐えている。触手はそのまま足を持ち上げて腰を浮かせた。それと同時に重いものがお腹の上に圧し掛かり、大きな硬い触手がへその上を這った。
ージッ・・ジジッ・・・―
ニフティはぐっと瞼に力を込めて目を閉じた。両手に刺さる爪が更に食い込み、その触手はついにニフティの入り口を見つけ押し込もうとした。
―フーッ…フーッ…―
ニフティの頬に柔らかく細い毛が当たる。耳元で吐息が聞こえる。手の甲に刺さった爪が抜かれ、その手が背中と頭を抱え込んだ。全身を柔らかな毛が包んでいるようだった。
「!!!」
ニフティは歯を食いしばった。
同時に、―ゴツン!!—と鈍器で殴られたような衝撃が走る。
「・・・んぎッッ!!!!」
体を突き刺したそれはすぐに抜かれ、再び―ゴツンッ!―と奥を貫く。腹をえぐるような突き刺す痛みが波のように何度も押し寄せる。
―ハッ・・・・ジジジッ―
吐息とノイズの入り混じったような音が耳元で鳴っている。まるでダイヤルの壊れたラジオのように。
「あはっ!あはははは!!!!!」
ニフティは歓喜した。あわや全身を貫くかと思うほどの鋭い痛みが、脳天に響き我を忘れそうになるほどだった。
しかし、目を見開いた先にあったのは、今にも泣きそうな男の顔だった。
一筋の水滴がニフティの頬に落ちる。それが汗か涙か、はたまた血なのか、この暗がりでは分からない。ただ目の前には、いつもの上がり切った口角と、それとは対照的な八の字眉でこちらを見る自己嫌悪の混じった瞳があるのだった。
ふっと、契約の鎖が浮き上がる。ニフティの首に繋がれた鎖はアラスターの手元に続いている。