「はぁ……ハメにオリ小説投稿するの緊張するな……」
僕は趣味で小説投稿するのが日課になっていて、スイカプで作業通話として執筆相談をする事が多かった。
今、通話しているのは官能小説を書いているお姉さん。
お姉さんとはツイーターの文筆家さんと繋がりたいというハッシュタグで知り合って間もないが、馬が合い沈黙が苦にならなかった。
『確かエッチなやつ書いてるんだっけ?』
そうなのである。
ツイーターで『濡れ場を描く』と宣言してしまっていたのだ。
「はい……歴史物なので……」
女性の口から『エッチなやつ』という言葉を聞いて、目の前にいるわけでもないのにカーっと顔が赤くなるのを感じた。
ハメの規定では『著しく性的感情を刺激する行動描写』*1がR-18相当になっている。
別に生々しい性行為の描写を中心にした隠語や喘ぎ声にまみれた官能小説を書くつもりはない。
けれど、心理描写や抱いている相手への感情表現だったり、争いの後の重苦しい空気だったり出陣前の鼓舞として験担ぎとしての性行為や支配欲の象徴として濡れ場を書かなければならないのだ。
『もしかして、R-18になるのかR-15になるのか分からない感じ?』
実のところ、そうなのである。
今迄健全小説ばかりを書いてきたから、挿入があると認識されればR-18なのか、ぼかしていればR-15になるのかが分からない。
それに、セーフかアウトかの判断を相談できる友人がいない。
「そうなんですよね……僕的には擬音や部位を示していないからR-18にはならないとは思ってるんですけど……優柔不断ですね」
それならいっそのことR-18として投稿してしまえばいいのだが、露出が減るのが痛い。
やっぱりR-18は別で投稿したほうが良さそうか……。
『そうだ、私もR-18からR-15に作風を変えてみた作品があってね!やっぱり何事も挑戦するのが大切だからさ』
意外だった。
お姉さんは『官能小説で食っていくぞ!!』と宣言していたから軽いものは書かないとばかり。
「そうなんですね!きっと情景描写や言葉だけで魅せてくれるシナリオなんだろうな……」
正直、お姉さんの官能小説は丁寧過ぎて逆に薄味というか、言葉を選ばなければ『抜けない』のであまり進んで読んで来なかった。
『今書いているもの、R-18について著しく性的感情を刺激する行動描写ってあるでしょ?これ直接描写でなくとも普通に抵触するかもしれなくて……私も確認して欲しかったんだ。』
するとスイカプのテキストチャットにURLリンクが貼られた。
『……よかったらどんなのか見てみる?』
生唾を飲み込んだ。
まだ世に出していない……お姉さんのエッチな小説を本人と通話が繋がった状態で読むことになる。
「……読ませてもらいますね」
心臓が高鳴った。
震える指でリンクをダブルクリックするとテキストファイルが表示された。
内容を恐る恐る確認すると『見知らぬ男女が通話しながら疑似性行為をする』内容で、登場人物は二十代女性と男子学生……。
まるで僕とお姉さんを題材にしたような話。
『あの……ふ……読んで……どう思った?』
イヤホンから聞こえる声は、明らかに上擦っている。
僕は思わず手を動かした。
「す…すごく……いいです……」
エッチな小説の中では、互いの小説を交換しながら……。
===中断===
読み合いをして、表向きは意見交換のていで……そういうことをしている。
『この……女性がさ……自分の服の中に手を滑らせて……形と……柔らかさを確かめるっ……の……想像できる?』
吐息を多く含んだ声色と扇情的な衣擦れの音は、甘ったるく熱を持って耳をくすぐった。
「柔らかさ……」
顔も知らない関係性ではあるものの『肩が凝りやすい』『ウエストを絞る服じゃないと太って見える』といった過去の呟きから、バストサイズが豊満である事は伺い知れる。
それに加えて小説の中の女性は『テーブルに胸が乗る』『胸でスマホを挟める』といった巨乳を示唆する描写が著しい。
小説をスクロールして読み進めていくと『たわわに実った柔らかな胸は指が沈み込むほどで、弾力とハリがあるが……少年との会話で声により愛される期待に熟れてしまい先端は固く存在感を増した』との一文に思わず前のめりになってしまった。
「はっ……はい……想像……できます……」
女性の姿を思い浮かべて動いてしまう手を止められない。
『ね……ん…声、変だよ……?』
問いかけるお姉さんの声はすっかり媚びたように、僕の苛立ちを煽ってくる。
「お姉さんだって……"人に聞かれてするのが好きなんでしょう?"」
小説の中で少年が女性を責めるセリフを読み上げると、イヤホンから聞こえる声がくぐもった。
『んっ……違うから……や、やっぱりショタおねより、おねショタにした方が……』
お姉さんの声は震えて、衣擦れの音以外の秘めるべき音が微かに聴こえてくる。
この後は、女性が少年に『R-18とR-15の違い』を通話しながら手取り足取り教える内容になっている。
「……このままだと……著しく性的感情を刺激する行動描写になってしまいます……これはちょっと抵触して……してしまいますよ」
===中断===
『そんな……私、ただ君と読み合わせがしたいだけだよ?』
嘘ばっかり。
まるでエロイプじゃないか。
「っ……僕も……お姉さんと……」
そう頭では理解していても、僕の怒りを帯びた下半身が言うことを聞かない。
『ね……一緒に読もう?……少しでいいから……』
イヤホン越しの吐息がリアルな熱を帯びて、あたかも隣で耳を喰まれているような錯覚に陥った。
「はい……でも」
僕は手を止めて、テキストファイルをもう一度確認した。
「これ……本当にR-15で大丈夫なんですか?」
お姉さんが書いた自称R-15相当の小説内の擬音は、彼女の作風を加味しても矢鱈と多かった。
『胸を揉んだ時のマシマロのような感触』『彼女の指が自らの身体を撫でていく度に鳥肌が立つ感覚に襲われた』『ソコに辿り着いた時、水音が響き渡った』という表現。
そして何より『自らの中指が彼女自身の秘密を暴き、自分自身へと侵入を許した瞬間に甘い痺れが全身を駆け巡った』という具体性。
『だっ……大丈夫……だから……』
お姉さんは僕の質問に対して何か反論を言いかけたが、口ごもったような囁き声になった。
「R-18にならないんですか?」
強めな言い方で問いかけると、声は更に小さくなった。
『なる……かも……』
すんなりと非を認めた事に驚いて、ついつい意地悪な言葉を選んでしまう。
「お姉さんって、嘘つきなんですね」
するとシュンとしたな震え声になり、あまりの態度の豹変を耳にして、フッと笑みを漏らした。
『ごめんなさい……』
謝罪を口にする声は艶っぽく、同時に愛らしい。
……もっとお姉さんのことを知りたい。
「僕のR-15小説も渡すので……一緒に見てもらえませんか?」
イヤホンの向こうから聴こえる衣擦れの音はモゾモゾと激しくなっている。
『……うん……見てあげる……一緒に見よう……』
書きかけのテキストファイルをスイカプのテキストチャットに貼り付けると、カチカチというダブルクリックの音が聞こえた。
お姉さんも、僕も……ソレを期待している。
「この……『テントが張った』という表現……問題になりますか?」
お互いの呼吸が荒くなっているのを肌で感じた。
『んっ、張ってるの……?張ったらいけないことなの?』
こちらの様子を伺っているお姉さんに向けて、あえて責めたような言葉を向ける。
「どういう意味がわかってるくせに……」
浅い呼吸を交わし、同じ行を読むたびに体温が熱くなる。
『……だってえ』
喘ぐように猫撫で声を出して、ナニカを強請るお姉さんに構わず言葉を続ける。
「今からお姉さんに……イれますね……」
R-15として、最後のラインだ。
『はぁっ……きてっ』
お姉さんの甘えた声に昂りが抑えきれず、声と妄想、物語をリンクさせながら手を動かしていく。
その後の事は、何も書いていない。
しかし迸る情熱を抑えきれず、即興でテキストを打ちながら通話を続けた。
『ハイったよ……私……すごく濡れてる……君のこと考えるだけで下着がぐしょぐしょ……んんっ、だめ』
小説内ではお互いに気持ちを伝えた後に繋がった。
R-18ではないから当たり前で、だからこそR-15なんだ。
繋がるならば、互いのことを理解しなわなければ意味がない。
「お姉さん……僕のハジメテを奪ってください」
まだ告白はしていないけれど……。
とうとう言ってしまった。
『んっ……いいの?初めてもらうのが私で……』
お互いの吐息を聞きながら、お姉さんが打ち込んだテキスト通りの手順で、ゆっくりと指を身体に沿わせていく。
お姉さんの指として自分の指を自分のものを添えるように触れて、ゆっくりと上下に擦ると頭の奥に痺れが走った。
『気持ちいい……?もうすぐ……だから』
苦しみにも似た声はどんどん余裕を失っていった。
「お姉さんっ……」
限界を迎えそうになると、慌ててティッシュ箱に手を伸ばした。
勢いよく飛び出たものが受け止められる間に、お姉さんも高ぶりの最高潮を迎えたようだった。
「はぁっ……はぁ……あ、あれ?……もしもし……通話切れちゃいました?」
満足感と達成感に浸った後、お姉さんは既にスイカプから退室しており、チャットの最後にはこう書かれていた。
『……エッチだった?』
そんなの言うまでもない……。
「……はい……すごくエッチでした」
○R-18
R-15に加え、著しく性的感情を刺激する行動描写、著しく反社会的な行動や行為、麻薬・覚醒剤の使用を賛美するなど極めて刺激の強い表現など、いわゆる「18禁」的要素が含まれる場合。
ただのエロイプになった(技量不足)
中断地点から別ルートに行かせた方がいいかも
①R-15の上品さが足りない
②物書きお姉さんと物書き学生というシチュが活かせていない