――それは、ほんの気紛れだった。
12月24日のクリスマス・イブ。その日は深々と雪が舞い落ちるホワイトクリスマスだったということもあり、世間にもどこか浮足立った空気が流れていた。
が、自分には関係のない話――そう思い、イルミネーションで飾り立てられた街を、目的もなく歩いていた時だった。数人の20代と思しき青年達に声をかけられたのは。
暇だったこともあり少しだけ話を聞いてみれば、これから他の友人達が待っているカラオケルームに行くのだが一緒にどうか、という事だった。
要するにナンパである。
最初は断ろうと思ったが、『もちろん料金は自分達が出すし、折角のクリスマスに女性の一人もいないのは寂しい』という理由で、やたらと積極的に誘われた。
とはいえ、普段であれば、どれほど熱心に誘われようが冷たく断って歩き去っていただろう。
だが、この日の自分の対応は、少々違った。
特に予定も無かったために、「たまにはいいか」と思ったのだ。気紛れを起こしたというよりは、気分転換に近いかもしれない。あるいは、世の中の浮かれた空気に、自分でも気づかぬ内に酔ってしまっていたのか。
自分の胸に新たに現れた烙印は、一刻も早く何とかしたい。だが、手掛かりとなる
それに今のところは、堕天使やそれと手を組んだアルカナに目立った動きはなく、新たな聖戦が始まる気配もない。純血からも、特に依頼や情報を受けてはいなかった。
つまりは、暇だったのである。
どうせ奢りという事だし、自宅で見通しの立たない状況に鬱々としたり、ストレス発散に当てもなく街を歩き回るよりは、歌って飲み食いをして夜を過ごすこちらの方が、まだしも建設的であろう。そんな風に考えて、彼らの誘いに応じることにした。
それを伝えると、男達は大いに盛り上がった。そういう反応をされると、やはり悪い気はしない。喜び勇んだ彼らと共に、夜の街を歩き始める。
もちろん己の容姿が優れているのは自覚しているので、この男達が、あわよくば美味しい思いも――などと考えているのは承知している。
だが、相手は所詮ただの人間。会話や一緒に食事をするだけで満足すればそれで良し。調子に乗って不埒な行為に及ぶのであれば、相応の対処をするだけだ。いざとなれば、何人いようと叩き伏せてしまえばいい――この時は、そう考えていたのだ。