キスしないと出られない部屋って書いた紙を部屋に貼ってみた 作:上り坂は下り坂
オリジナル:現代/ノンジャンル
タグ:R-18 妹 妹の友達 キス魔 ♡有り ただの貼り紙 効果は無い 筈だった
実際には有り得ない。普通に考えて頭がおかしい。でもエロい。性行為を強要されて、少しずつのめり込んでいく様は倒錯的でめっちゃ良い。
これは、そんな作品に影響された主人公の深夜のテンションから始まるお話。
「えっっっど。透き通るような世界観が売りの作品でショッキングピンクなこの部屋はベストマッチ過ぎだろ」
真っ暗な部屋の中、スマホのライトが一人の男の顔を照らす。
男のズボンとパンツは脱ぎ捨てられ、シャツも胸元まで捲り上げられている。左手でスマホを持って食い入る様に覗く傍ら、右手は硬く勃起した男根を勢い良く扱いていた。
男の名は
実家で暮らす二十歳の大学生。
今は夜中で自慰行為の真っ最中だった。
好きな作品の二次創作作品を購入し、それを眺めて扱く日々。童貞ではあるが童貞である事を気にした事は無い。女の味は知らないが、最近はAVで抜けなくて同人作品を漁る日々。
そしてそんな自分もまた良しと肯定する自己肯定感の高さを自他共に認め、自らの長所と認識する図太い男。
無事迫り上がってきた精をぴゅっぴゅと放ち、せっせとティッシュで拭く。ゴミ箱へと3Pシュートを決めて満足したのか、吐息と共に目を閉じる。
……目を閉じて、そして。なんか目が覚めてオールした。そして徹夜の悪ノリでドアの内側に『キスしないと出られない部屋』と書いた張り紙を張った。セックスとまで書くのは恥ずかし過ぎて自重したのだ。
そして注意書きとして、『※このルールを破ると和泉聖の事を意識してしまうようになります』と、至極当たり前の事まで書いて満足すると、敷き布団に倒れ込んで寝落ちした。
こんな頭のおかしいことする奴、そうそう記憶から消えないだろう。だからこそ明確に記述する事でプラシーボ的な、バーナム的な、なんかそう言うのを刺激してやろうと言う魂胆だった。
ただし、明確な相手は居ない。部屋に上げる女子は居らず、そこまで仲の良い女友達も居ないのだから当然だ。
===
聖がぐーすか寝息を立てる部屋に続く廊下。そこに足音が響く。
トントントンっ、と軽い足音。スラリと伸びた足、ふわりと揺れる膝上スカート。ブレザーは着ず、カッターシャツとネクタイ、そして着慣れた春ニットを身に纏うは、聖の妹である雫。
雫は黒髪を肩口でカットしており、後ろ髪を小さなポニーテールに纏めている。ちょこんとしたポニテは雫の友人にも可愛いと評判で、雫自身気に入っていた。
ぱっちりと開いた丸い瞳、小ぶりな鼻、薄く小さい唇、そして小顔。自己評価としてもまあまあ可愛い方の顔。
この妹、兄である聖と同様にそこそこ自己肯定感が高く、その明るさも相まって人懐こく、非常に人気の高い美少女だった。
そんな妹が今の聖の部屋に近付いてくる。
足音は聖の部屋の前で止まり、拳を軽く当てるコンコンコンっと言う軽い音が鳴らされた。
「おにい〜、朝〜。起きてるー? ご飯はー? ……寝てるのかな。入るよー?」
兄妹仲は良好。人並みに喧嘩も言い合いもするが、世間一般よりもずっと仲の良い関係性を築いている。
偏に、お互いの自己肯定感の高さからくる精神的な余裕の影響だろう。基本的に互いの要求は飲み、無理なお願いや乱暴は働かない。
程良い精神的距離感と、互いの趣味嗜好への理解によって、二次元的な兄妹ムーブを平素から行っているのだ。
朝に起こし合うなど日常。同じコップを使い回す事にも抵抗は無い。外食の際も互いの料理を食べさせ合える。異性として微塵も意識していないからこそ出来る日常ムーブの一環としての交流。
しかし、今の聖の部屋は非日常であるッ!
たった一言の文章と、その注意書きによって、この部屋はシンギュラリティポイントに一歩踏み入れかけていた!!
そこに重ねて全裸で眠る聖の姿……! 睡眠中に時折起こる勃起が偶々今日は発生しており、さしもの妹も兄の全裸と勃起チンポの姿は拝んだ事が無かった。
見てるこっちが恥ずかしくなるあられもない兄の姿に雫が思考を停止させ、ほんのりと頬を染めて立ち去ろうとする最中、部屋から見えるドアには例の文言。
今や多少ネットに触れていれば知らない者は居ないと言っても過言では無い程に、〇〇しないと出られない部屋と言う設定は浸透しているが為に、雫もこれがなにを意味するかは瞬時に察した。
「ばっ、馬鹿馬鹿しッ……おにいのアホ。変態。そんなんだから彼女出来ないんだよ」
あまりにも荒唐無稽過ぎてすぐに部屋を出ようとドアノブに手を掛けた雫の眼前に注意書きがあった。
「おにいの事を、意識する……? なわけ——」
——あるかもしれない。
雫の脳内にフラッシュバックするのは、未だ後ろで眠りこける全裸の兄のフル勃起チンポ。次いで普段の優しい兄がぶわっと溢れ返り、兄のイメージが一気に大人の雄へと変貌する……!
(え、まじで……? は? 嘘……だよね? フィクションの見過ぎだって……。でも、これが消えなかったら……やばい、かも)
雫は見事なまでに深夜テンションの兄の術中に嵌っていた。
そして兄は都合良く眠りこけている。
雫は——閃いてしまった!
「今、キス、なら、バレない……か」
万が一にも兄を意識する訳にはいかない雫は、思い付いたが吉日。振り返って即行動に移すが、ビキビキに血管が浮き出るチンポに意識を奪われる。
高校時代に部活で鍛えていた名残りの、薄らと割れた腹筋が格好良く見える。
普段は優しいだけの兄の、兄では無い部分に心拍が跳ね上がる。
雫は頭を振ってズンズンと歩みを進めると、勢いのままに兄の顔の上に四つん這いになってゆっくりと顔の位置を下げ始めていく。
「か、家族でキスとか、挨拶、だしッ。なんてこたねえしッ。ちゅってしてバッ、そんで出る。そんだけだしッ!」
(あたしのファーストキス……ノーカンノーカン。挨拶なんだっつの。やっちまえ!)
雫の荒ぶる精神を示す様に、荒くなって生温かい吐息が聖の顔に吹きかかる。
「ううんなぁぁぁ……」
それがくすぐったくて聖が呻いた。
「うえああぁぁ!? あっ、ちょっ——むちゅうぅぅぅ♡♡」
聖の突然の声に驚き過ぎた雫はバランスを崩し、そして挨拶を交わす。唇を強く押し付け合うそれは雫からすれば予定外の想定外。生娘には些か刺激の強いハリウッド的なキッス。
感触やら味やら、状況もなにも理解出来ないままに混乱した雫は、急いで部屋から出て行った。
閉め切った兄の部屋のドアに背中を預けて、跳ね上がった心臓を落ち着ける。
落ち着くと今度は唇の感触や兄の部屋の匂い、兄の匂いへとどんどん意識が移り変わって行き、ドキドキの全てが兄に適応され始めていく。
「やばい、やばいやばいやばいっ! したのに……! めっちゃしちゃったのに意識しちゃってんじゃん……!?」
触れ合ってしまった、交わしてしまった唇を指でなぞる。存外嫌では無かった、と思ってしまった事実に赤面し、背を預けながらずるずると腰を下ろして膝を抱え込む雫。
「ぅぁぁぁぁ〜〜〜〜……なにやってんのあたしぃぃ〜〜」
扉越し、気配が動く。むにゃむにゃと起き上がった兄が欠伸をしながら自分が全裸である事に驚く声が聞こえてきた。
再度跳ねる心臓を胸の上から押さえつけ、いつもを装った声を掛ける。
「おにいー、朝。ご飯はー?」
『お、しずくかー? 悪いけど部屋入んないでくれなー。すぐ降りっから。飯は要るー!』
「ほーい……」
雫はこの後めちゃくちゃ深呼吸をしながら階段を降りた。
===
全裸から服を着た聖はすぐに部屋を出る。その際に、書いた覚えが薄らとしか無い『キスしないと出られない部屋』と言う張り紙とその注意書きを目にして朝からアホらしすぎて笑えた。
聖はちょっと面白かったのと、なんか面白いので当分置いておく事にした。
リビングに降りると、妙にソワソワした雫がパンを焼いてくれており、目玉焼きでも作るかと雫の居るキッチンに歩いていく。
「うおっ、おにい……おはよ」
「おー。どしたんお前。落ち着きないし、ちょっと顔赤くね? 熱測ったか?」
「…………無いよ、熱は」
「ほんとかよ……普通に心配なんだが」
前述の通り、二人は仲の良い兄妹だ。故に、聖が雫と額を突き合わせて温度を測る程度、なんて事は無い————筈だった。
「んー、熱くはない、か? よくわかんね〜」
「な、な、な、なな、なぁなな……」
「イケナイたいよ◯?」
「近過ぎぃッ!!!!」
「ぶべらっ!?」
困惑した雫による照れ隠しのビンタが唐突に聖を襲った。
見事に左頬に紅葉を作られた聖は、あまりの異常事態に思考が追い付かず、数秒呆然とする。
異常事態はお前の部屋だと言いたい。
「あ、ごめ……いや違う! おにいが近過ぎなの!! あ、あたしだってもう大人だし!? おでこごっつんことかダメじゃ無い!?」
「あ、あぁ……まあ確かに、ガキ臭くはあったか。なんか、ごめん」
「いや、その……あたしも、ごめん……だいじょぶ?」
「おお。問題ねえ。良いのもらって目が覚めたくらいだ。気にすんなよ、雫」
髪を崩さない様にと優しく頭に置かれた手の心地に、雫はまたしても顔が熱くなった。
手を上げたのに怒りもせずに受け止めてくれる兄の度量が、今は格好良く感じてしまった。
不幸中の幸いは、兄がキスの事を憶えていない様子だけ。
雫は高鳴る心臓を抑えながらバターを塗って食パンを齧り、手早く食べ終えると聖にぎこちなく「行ってきます」を伝えた後、家を出た。
聖は雫の様子に思い当たる事は微塵も無い。なので、女の子の日か嫌な事でもあったのだろうとスルーしていく。
それはそれとして短時間睡眠の反動で眠気に頭をやられながら、支度をしたあと大学へと向かったのだった。
===
時は過ぎて午後四時。
激しい体育の運動や、頭が痛くなる数々の授業を乗り終えた雫の頭には兄の部屋の事など無かった。いや、忘れるべく学校生活に没入したと言う方が正しいだろうか。
放課後、雫は仲の良い友人と共に下校していた。
中学時代からの友人である、
「最近面白い漫画が多くてさー、お小遣い足んないよ〜」
「そうなんですか? 雫の今日のオススメが楽しみですね♪」
「今度アニメ化が決定した奴が良いかも。初版の頃から追ってた身としては感慨深い想いがありますよぉ。うんうん。ももちんにも是非読んで貰いたい! タイトルは『玉ねぎの花言葉』ってやつでねぇ——……」
兄に引き摺られる様にしてサブカルチャーにも造詣の深い雫は、育ちの良い桃華に、彼女の知らない漫画を教えて感想を聞くのが好きだった。
桃華もまた雫の家でしか楽しめない漫画の分かりやすい面白さが好きで、様々な感動を教えてくれる雫の紹介する漫画を心待ちにしていた。
「ただいまー」
「お邪魔致しますー」
雫が玄関を開けると、兄の靴が既にあった。
自分よりも遅く出た癖に、自分よりも早く帰ってくるとは。雫は時間ブルジョワめと大学生を羨んだ。
「先に部屋行ってて。飲み物とお菓子持ってくから」
「はい、お待ちしてますね」
慣れた足取りで廊下突き当たりの階段を登った桃華は、聖の部屋の少し開いた扉から、ローテーブルの上が見えた。
そこには件の『玉ねぎの花言葉』の一巻から五巻が置かれており、三巻だけが机の上に無かった。
そして部屋から漏れ聞こえる聞き慣れた殿方の涙ぐんだ声。
「うぅ〜心に沁みるぜぇ〜。玉ねぎだけに」
聖はアニメ化情報を見て、妹が読んでいた事を思い出して勝手に借りて読んでいたのだ。
桃華は少し迷ったが、読み終えたらしい一巻と二巻は貰っても良いだろうと、ドアを少し開けて控えめにノックをする。
「お兄様、お邪魔しております、桃華です」
桃華の声に、部屋の隅で人をダメにする深く沈むでかクッションに埋もれて漫画を読んでいた聖が気付く。
「んお? おー、桃華ちゃん。いらっしゃい。どしたの」
「その漫画の読み終えた分をお借り出来ればと。今日のオススメがそれでして」
「あー、そっかそっか。良いよ、持ってっちゃって〜」
「ありがとうございます」
桃華はしっかりと開けたドアを閉め、膝を折って丁寧に漫画を二冊取ると再度立ち上がってドアの方へと戻っていく。
その際に、当然張り紙が目に入る。
『キスをしないと出られない部屋』
注意書きにまで目を通した桃華は困った様子でドアノブに手を掛けて、躊躇しながらも無視しようとした——その時。
「桃華ちゃん。……ちょっと待ってよ」
聖に声をかけられて肩を跳ねさせる。なんだか嫌な予感がする中、恐る恐る返事をしながら振り返ると……。
「今、丁度三巻も読み終えたからさ! これもどーぞ! 良い作品だよ、これ!」
肩透かしのように軽い声と、なんでも無い親切な内容にホッと息を吐きつつ、疑った自分を戒めながら桃華は聖の方へと歩み寄る。
聖もダメでかクッションから立ちあがろうとして——バランスを崩す。
一瞬持ち上がった腰と、前に持って行けなかった重心で、クッションに倒れ込む様な態勢。
桃華は反射的に手を伸ばし、そして聖の体重を支え切れずに共にクッションに重なる様に倒れ込んでしまった。
そも、別に危険でも何でも無かったのだ。桃華の善人気質がちょっとしたハプニングにしただけで誰が悪いでも無い。
強いて言うなら、張り紙が悪い。もっと言うなら、張り紙を放置した聖が悪い。そして張り紙を張った聖が悪い。
と言うのも、聖と桃華は重なる様にクッションに倒れ込んだが、幸いキスには至っていない。しかし、キスには至って居ないだけで、キス寸前の状態だった。
至近で瞳を見つめ合い、雫と違って長く伸びた栗色の髪が聖の顔に垂れてくすぐる。鼻は既に触れ合っており、唇は触れ合う寸前で止まった状態。
互いの匂いと熱を感じ合い、咄嗟の状況に身動きが止まる。
動いているのは瞬きと呼吸と心臓だけ。
この時、聖の脳内は桃華をめちゃくちゃ褒めていた。
すんげーかわい。顔整いすぎ。肌綺麗。良い匂い。息熱い。桃華ちゃん……なんか良いなぁ。
男としては控えめにも思える程度の心情。雫との暮らしで若干の感覚の麻痺が見受けられる。
逆に桃華の脳内は荒れまくっていた。
張り紙を無視しようとしたから? 強制力? あれは本物? お兄様が気にした様子が無かった以上、目に見えているのは自分だけ……?
それはそれとして、お兄様が近い。身体が大きくて、逞しくて、少し汗っぽい匂い。泣いていた跡が残っていて少し唆られ、濡れたまつ毛が可愛らしい。キスしなければ意識する……なら、キスした方が、後腐れは……無い?
数少ない気を許している殿方だからこそ、どんどんとたがが外れやすくなっていく桃華。
ここで今一度言おう。二人は重なる様にクッションに倒れ込んだ。バランスを崩した聖の手を取った桃華が上に乗っかる形で、だ。
妹の友人相手にセクハラ出来ない聖はまるで身動きの取れない状態にある。
「あの……お兄様、失礼……致します。部屋を出る為ですから……ちゅぅ♡」
よって、回避も抵抗もクソも無い聖は何かを勘違いした桃華にキスをされた。
ぽぅっとした様子の桃華は触れ合った唇をなぞると、未だかつて無い未知の刺激に心を昂らせる。
「あの、念の為。もう一度……ちゅ♡ も、もう一度……ちゅうぅぅぱっ♡ はふぅ……すごい……これがキス……♡」
何度も唇に吸い付いては、念の為と言い続けてキスを敢行し続ける桃華。
聖は訳もわからないままに状況に流され、どうでもいいかと投げやりになって桃華の唇を楽しんでみた。
ぷるりとした艶と張りのある桃華の唇。それが何度も押し当てられ、クッションに沈みながら、二人は二人の世界に沈んでいく。
唇を啄み合い、身体を抱き寄せ合う中で、もっと互いを感じ合うために密着していく。
「お兄、さまっ、ちゅぅ、ちゅ、ちゅっ♡ はむ、ちぅぅぅ〜♡ おにい、ひゃまぁ♡ くちびりゅ、ひっぱっれぇ♡ あぅぅ♡ 舌ぁ、べろもぉ♡」
どんどんとエスカレートしていくキスに、二人は外界からの音を遮断してお互いの事だけに集中していた。
二人が貪り合うようにキスし合うその最中、雫の足音が近付いて来るが気付かない。
自室に向かった足音は、桃華を呼ぶ声を発しながら徐々に兄の部屋に近づいて来ると、今朝の事を思い出して足音が駆けてくる。
息を呑んだ雫は恐る恐る兄の部屋のドアを開けた。
そして中から聞こえてくる二人の求め合う声と水音に、——パキリ。雫の心にヒビが入る。
(あたしのおにいなのに。何で? 桃華は何してるの? 何で、なんでなんでなんで……??)
兄と友に裏切られた。そのショックが感情となって雫の瞳から溢れ出す。
許容し切れない膨大な感情によって呆然とする雫の内から、沸々と湧き出でてくる堪え切れない激情。
今朝抱いたドキドキの全てが怒りとなって心を染める。
(あたしの、おにいだもんっ!!)
それでも兄への暴力や友人への恨み辛みにはせず、自分の気持ちを表現する事に思考が飛ぶあたり、雫の善い人間性が透けて見えてくるようだ。
ズンズンと今朝の様に歩み寄り、兄にしがみ付く桃華を引き剥がして自らが兄の上へと飛び乗り唇を奪っていく。
「んん!? 雫!? ちょ、ちょちょちょ待った!!」
「待たない!! 馬鹿おにい! ちゅう、れろぉ、れる……ちゅるぅぅ♡♡ あたひのおにいなのぉっ、ちゅぅ♡ おにいは、あたしだけ見てて!」
「だ、ダメです雫! 私がお部屋を出られなくなるので……その、お兄様は私とキスするんですぅ!」
ダメにするクッションに雫と桃華がのし掛かり、より深く沈んだ聖は本格的に身動きが取れなくなっていく。
顔中に降り掛かるキスの雨。気を引こうと聖の指を口に咥えてしゃぶる桃華を見て、雫は聖の耳を咥えて舐め出し、聖はもがいた拍子に二人のおっぱいやお尻を揉んでは刺激してしまう。
熱狂の渦の中で冷静さを失くした雫と桃華が徐々に服装を乱していく。
雫はニットを脱ぎ捨ててシャツのボタンを上から三つ目まで開け放つ。水色の可愛らしい下着が覗き、小さ過ぎず大き過ぎない乳房が聖の視界に入り込む。
桃華はブレザーとシャツのボタンを全て解放し、黒い扇状的な下着と、それに収まり切らぬ盛り上がった豊かな乳房を見せつける。そして引き締まった縦に伸びるおへそと腹筋まで晒していた。
「ちょっと、待て……お前ら! すてーい!」
徐々にヒートアップしていく二人の様子を冷静に見ていた聖は、大きな声で二人の意識を引き戻す。
そして二人の頭を思い切りワシャワシャと撫で回して髪をぐちゃぐちゃにすると、流石にそれを嫌がった二人が手から逃れようと身体を引く。その好きにクッションから起き上がった聖は急いでドアの前へと向かうと、張り紙を引っぺがした。
「良いか、桃華! これはただの張り紙! キス要りません! 俺の悪ノリ! んで雫! 流石に不味い! とにかく二人とも落ちつけーー!!」
性欲旺盛な男の聖が何故か場を収める事態となり、なんとかその場は事なきを得た。いや、事が進み過ぎる前に止める事が出来たのだった。
===
あの後、二人は冷静になった頭で羞恥に襲われ、軽い後悔と共に一旦今日は解散する運びとなった。
雫と桃華の仲直り自体はその場で行われた為に後を引く事は無いだろう。
桃華が髪を整えて服装を直し、和泉家を出て行く。さっきの今で一人で返すのは少し心配だった聖は、家まで送ると進み出る。
雫には風呂にでも入ってもう少し頭を冷やしておけと言い含め、聖は桃華と連れたって道を歩いていた。
当然の様に車道側に立つ聖の姿に桃華が腹の底を疼かせているとも知らずに。
「お兄様、先程はお目汚し申し訳御座いませんでした」
「いやいや。普通に眼福でしたけど。って言うか、何で急にあんなことしたんだ? 俺、そんなに優良物件じゃないよ?」
「……あの張り紙の魔力、でしょうか。ですが、それ抜きにしても嫌だとは思いませんでした。途中からは楽しくもあって……今も、唇が寂しいくらいで……ふふ♡」
まるで誘うかの様に艶めく唇と、艶やかな表情。
聖は人知れず桃華の唇に目をやっており、話す度に動く様を目で追ってしまっていた。
徐々に近付いていく二人の距離感。肩が触れ合う辺りまで来て、桃華は人差し指を聖の小指に引っ掛けた。
いじらしいアピールに聖の心拍が速まる。
外で出来る精一杯のアピールに桃華もまた胸を痛めていた。
「あ……もう、着いてしまいました。お兄様、わざわざ送って下さりありがとうございました」
「ああ、うん。その、なに……。また、おいでよ。今度はちゃんと歓迎するからさ」
「……ええ。ですが、今日の歓迎も大変私好みでしたよ♡ お兄様、また必ず……♡」
「おう。待ってる」
気付けば辿り着いていた豪邸。敷地に入る為の門から玄関ドアまで十数メートルはある良家。
桃華はその道で何度も振り返っては寂しそうに手を振り、家に入る寸前まで聖に手を振っていた。
(惚れてまうやろぉぉぉぉ!! 可愛すぎんか!? 妹の友達背徳的過ぎんか!? そんでえっち過ぎん!? 教えはどうなってんだ教えはよぉ! けしからんなあ! これも賜物か!?)
聖は悶々としながら歩き、気付けば帰り着いていた。キング◯リムゾンされた気分だった。
桃華の一挙一動を思い出し、彼女との濃厚で濃密なキスや、彼女の豊満な身体の感触を思い出すだけでムラムラが止まらなかった。
玄関で靴を脱いで上がると、丁度風呂上がりの雫が階段を上る姿が見える。
「おにい、おにいの部屋で待ってるね。ちょっとお話し、しよ」
聖の方を見ずにそう告げた雫はスタスタと上がっていってしまった。
聖はとりあえず手を洗い、渇いていた喉を潤すなりしてから部屋へと戻る。
しかし、部屋に雫の姿は無い。自室に戻ったのかと思い後ろ手にドアを閉める。すると、死角、開いたドアと壁の間に雫が隠れていた。
「アイムニンジャ、アイエェ」
「うぇい!? ……欧米が思う忍者かよ」
「おにい、改めてキスしたい。挨拶みたいなもんでしょ」
「欧米かっての」
「チップは要らないよ?」
「欧米かて」
「じゃあ……あたしとは、したくない……の?」
「別にそうじゃないけど……」
「じゃあ、ドア見て」
やけに冷静な雫に促されてドアを見ると、俺が剥がして捨てた紙を拾い上げたのか、くしゃくしゃの折り目がついた貼り紙が再度貼っつけられていた。
そしてドアの前に仁王立ちで立ち塞がる雫。
「キスしてくんないと、あたしが出してあげない。だからね、おにい……して♡」
風呂上がりの雫は髪も乾かしていないのか、濡れた髪が肌に張り付いていた。シャツには乳首のポッチが浮き出ており、雫が太ももを擦り合わせる度にくちゅりといやらしい水音がしている。
そんな雫が聖の胸に手を置き、潤んだ瞳で上目遣いに見上げる。
口を窄めてキスを催促する様は可愛いなどと言う言葉では表現し切れず、聖が受け入れて雫の頬に手を添えるだけで雫は嬉しそうに頬を緩めて見せた。
「ちゅ♡ まぁだ。もっとくっつけるの。……ちゅうぅ♡ はぁむ、むちゅぅ、ちゅ、ちゅっちゅ♡ あむ、はむ……おにぃ♡ おにい〜♡ ちゅ〜う♡」
「まだダメなのか?」
「らーめ♡ あたしが満足するまで、だめなのぉ! だって、おにいはあたしのおにいだもん。だからあたしを見て、おにい♡」
甘えてくる妹。キスをおねだりされ、独占欲剥き出しで自分を欲される感覚。聖の中の何かが満たされていく。
柔らかいおっぱいがむにゅりむにゅりと腕の中で形を変え、何をしても嬉しそうに目を細めて受け入れる妹が雌として目覚めていく。聖の中の何かが外れていく。
発情しているのか、独特な鼻をつく匂いが雫から立ち込めており、身体で、香りで、唾液で、媚びた声で、五感全てが雫に染められていく。
「おにぃ……おにい、好き♡ あたし、おにいが好きぃ♡ 桃華には譲れない……あたしだけのおにい♡」
何がどうなってこうなったのだろう。聖は雫に流されながら考えた。考えた末に分からない事が分かって、流される事にした。
——最後の一線を超えない理性を温存する為に。
唇に飽き足らず、雫は首筋にも口付けを落とし、舌で舐ってくる。耳たぶを咥え、舌でもて遊び、耳穴の奥までぐぽぐぽと舌を入れ込んでは耳元で「すき♡ すき♡ おにいだーいすき♡」と囁かれ続ける。
頭を撫でてやれば、雫は自分から手に頭を擦り付け、もう片方の手を取るとそちらの指まで舐めしゃぶる。
聖の全てに自らの痕跡を残すべく、雫は聖の服を脱がしていく。
ヘソ、脇腹、乳首、鎖骨、腋、肩、腕、肘、かいた汗すら舐め取っていく。至る所に雫はキスマークまでつけて行った。強く強く吸い上げて、雫の物だと誰の目にも分かるように。特に桃華に分かるように。
上半身が終われば当然下半身。ズボンだけを脱がして、足にも口付けをしていくのかと思いきや、雫は濃い雄の匂いに意識を奪われていた。
聖のボクサーパンツに鼻をスンスンと鳴らしては延々と嗅いでいるのだ。
「あ゛ぁ゛〜〜♡ やっば♡ おにい、っお゛♡ これ、女の子に嗅がせちゃダメなやつぅ♡♡」
それもその筈。聖はまだ今日は風呂に入っておらず、昨夜のオナニー、昼の桃華とのキス、雫と桃華との奪い合い、それらの際にもしっかり勃起していた。我慢汁が幾度も溢れ、雄の、精の臭いをこれでもかと溜め込んでいたのだ。
雌として開花したばかりの雫には強過ぎる程の雄臭に、雫の身体が勝手に準備を始めて疼きだす。
一人でにマンコを指で擦りだし、乳首の突起を指で摘み出す雫の姿に、さらに聖の興奮と背徳がせめぎ合って更なる勃起を促す。
「雫、キスは? しないの?」
「しゅる♡ まっへぇ♡ すぐちゅーするからぁ♡」
チン嗅ぎオナニーで気持ち良く喘ぎ始めた雫は直ぐにパンツ越しのチンキスをする。
亀頭の染みが出来ている部分を狙って口付けし、都度、濃厚な雄臭で自分が喘ぐ。
丹念に何度も何度もキスすると、しまいにはパンツ越しに亀頭を咥えて舐め回すように舌を這わせる。
聖は事ここに至って、ある程度冷静だった。
(性行為さえしなければ問題無い。射精すれば賢者になるのが男。その後に俺が雫の方を手伝う形でまた収められる筈)
究極、中出ししなければいい。ゴムを付ければいい。挿入しなければいい。これらを越えなければ問題にはなり得ない。
既に理性が限界に近い中で、これ程までに耐えられているのは偏にお兄ちゃんだから。
「いたらきま〜す♡」
雫が勝手にチンポをパンツの隙間から取り出し、直接亀頭を咥えて舐めしゃぶって来ようとも。
「はぶぅ、じゅるるる♡ ちゅぱ、ちゅぽっ、じゅぷ、じゅぽ♡♡」
「うあ、射精る!」
限界が近い所にそんなねっとりと熱い刺激を咥えられてたっぷり口内射精してしまったとしても。
「んっ……♡♡ ん゛ん゛ッ♡ んぐっ、んぐっ、んんぐっ……ゴクン♡」
雫も合わせて絶頂しながら精飲したとしても、まだギリギリ大丈夫なのだ。
「おにーい♡ ぜーんぶ飲んだよぉ♡」
「偉い偉い。すげえ気持ち良かったぞ、頑張ったな雫」
「〜〜〜っ! うんっ!」
まるで飼い慣らされた犬のように従順な様は、普段の雫から出力される事の無い、雄に媚び切った物だった。
妹としての雫では無いのだと言う悲しみと、この雫を自分が引き出したのだと言う自覚が、聖の情緒を深く狂わせていく。
『雫〜! 聖〜! ごはーん!』
そんな折に階下から響く親の声。倒錯した現実から、本来の現実へと引き戻してくれる鶴の一声。
聖は急いで雫の背中を押して、律儀に部屋のドアの前でちゅっと軽いキスを交わしてからドアを開けて着替えて来いと静かに言い含める。
雫もまた理解しているが、親の声などどうでも良く感じる程の強烈な感情に聖への視線を切れず、足を動かせずに居た。
「だぁー、もう! 寝る前も、起きた後も、帰ってきても俺達は一緒に居るだろ? ちょっとくらい我慢しなさい!」
「おにい……嫌いに、なった?」
「なるかボケ。ちゃんと好きだから着替えて来い」
慰め程度の言葉でも、今の雫には何よりも重い言葉となる。
『ちゃんと好き』その一言で雫は先程までの自分の醜体を許す事が出来た。兄に懸想してしまった自分すらも許された気がして、ルンルン気分で頷き部屋へと戻って行った。
「……はぁ。これ、どこに行き着くんだ……?」
聖はドアの内側に貼られたボロボロの張り紙を改めて剥がす。
『キスしないと出られない部屋』
『※このルールを破ると和泉聖の事を意識してしまうようになります』
聖はこれをビリビリに破いてから再度捨てた。
たったの二枚の張り紙から始まった謎の三角関係の行き着く先は、まだ誰も知らない。
===
とある朝。
「おにい♡ おーきーて! 起きないとキスするよぉ♡ ちゅっ。ちゅっちゅうっちゅー♡」
唇に当たる感触と、まだ耳慣れない妹の少し高い甘え声に、意識がようやく覚醒する。
「起きたらおはよーのキスだよ、おにい♡」
ギャルゲーの妹みたいな妹になってしまった可愛い妹、雫。
せめて雫が現実を受け止められるようになるまでは、と付き合う事を選んだ聖。
今朝もねっとりとした甘ラブキスから朝を始める二人。
その最中、聖は横目に部屋のドアを見た。
『雫が満足するまでキスしないと出られない部屋♡』
『※このルールを破ったら、雫がおにいを食べちゃいます』
剥がした貼り紙は結局、新調されてしまった。そして脅し文句がただの脅しになっていた。
「失礼致します、そしておはようございます、お兄様。あら、邪魔な貼り紙ですね」
唐突に開いたらドアからは栗色の髪の巨乳美少女な桃華がやってきて、早速雫が作った貼り紙を破り捨てた。
そして素早く新たな貼り紙が貼られた。
『桃華とキスしないと出られないお部屋』
『※このルールを破ると、桃華とお兄様の交際が始まります』
「なに、ももちん。バカみたいな事書いて。そんなんでおにいと付き合える訳ないじゃん。漫画の読み過ぎだよ」
「っ……へぇ? 禁断の恋をしている分際でほざきましたね? それに? お兄様は私の大きな胸が大好きなのです。雫の様に小ぶりな物では些か物足りません。そうでしょう、お兄様♡」
「おにい、辞めときなよ。ももちん、綺麗な顔して身体的特徴を比べるタイプの女子だよ」
「お兄様、人を卑下する事で相対的価値を高めようとしているのがどちらか、今のでお分かりになりましたよね?」
「おにい!」
「お兄様!」
和泉 聖は決意した。近い内に家を出ようと。それが最も丸く収まる形であると、直感したのである。
この三人の爛れた日常は、いつか来るその日まで飽きること無く続いたのだった。……いつかのその後も続く事は、火を見るよりも明らかだったが。