そんな麻衣子には裏の顔があり、それをひょんなことから知ってしまった佐山颯馬の学生生活は一変してしまう。
牧村麻衣子は優等生である。
学業優秀、品行方正、周囲の模範となる理想の学生である。
黒縁のメガネに長い髪をヘアゴムでまとめたシンプルなポニーテール、制服の着こなしも校則を遵守した絵に描いたような優等生スタイルだ。
そのため、教員たちからの信頼も厚い。
しかし、佐山颯馬は知っている。
この牧村麻衣子の姿が『表の顔』であることを。
***
二人の出会いは中学生時代に遡る。
二人はクラスメイトであったが、直接的なやり取りは殆どなかった。
麻衣子は当時から今と同じく優等生で学級委員長を務めており、颯馬はクラスの輪から少し離れたところで一人佇んでいる影が薄い生徒であった。
麻衣子と対極にいるような颯馬が、彼女の『裏の顔』を知ることとなったのはある出来事がきっかけであった。
ある日の放課後、颯馬は教師から頼まれ備品室の整理をしていた。
授業などで使う小物や用具が所狭しと並んでいる部屋で作業に没頭していると、颯馬はふと、どこからかギシギシと物音がすることに気がついた。
どこかの棚のネジが緩んでいるのかと思い、念のため耳を澄ませて音の出どころを探した。
すると颯馬は、物音はどうやらとなりの部屋からすることに気がついた。
となりの部屋は確か今は使われていない宿直室であることを思い出し、颯馬は少し興味が湧き、音のする壁に近づき耳を澄ませた。
「……うぅんっ、……ぐむぅ」
壁からは物音に混じり、微かに人の声のようなものが聞こえ、颯馬は驚いた。
もしかすると誰かが部屋で倒れて苦しんでいるのでは、或いはどこからか忍び込んだ不審者かもしれない。
そう思った颯馬はどうするべきか悩んだ。
教師や誰か大人に報告して確認すべきか、それとも意を決して自分の目で確かめるか、もちろん恐らく気づいているのは自分だけ、見て見ぬふりをして知らぬ存ぜぬを決め込むことだってできる、と。
颯馬は少し逡巡した末、考えを決めた。
中学生特有の向こう見ずな精神と、非日常的な出来事に遭遇するかもしれないという淡い期待感から、颯馬は隣室の音の謎を自らの手で解明することを決断した。
颯馬は備品室を出て、となりの宿直室のドアの前に立った。
元々、人気のない場所のため、颯馬の行動を見ている者はいない。
颯馬は慎重にドアノブに手をかけると、鍵は掛かっていないらしいことに気づいた。
ほんの少しドアを開け、隙間からこっそりと中の様子を確かめた。
すると、颯馬は室内に広がる光景に驚愕し、我が目を疑うこととなった。
そこにいたのは、なんと牧村麻衣子であった。
しかし、颯馬が本当に驚いたのは麻衣子がそこにいたことではなく、麻衣子のしていたことに驚いていた。
なんと麻衣子は一糸纏わぬ裸に、いわゆる亀甲縛りと呼ばれているような形で縄で縛られていた。
そして、麻衣子の両手はそれぞれ自身の胸と秘部を愛撫しているようだった。
麻衣子の顔を見ると、彼女の口はピンポン玉サイズの球体を加える形でベルトで固定されており、上手く喋られないようになっているようで口枷の奥から唸り声のような声が漏れ出ていた。
颯馬が備品室から聞いた声は、恐らくこの声であろうと気がついた。
麻衣子は宿直室の畳の上にその身体を預け、必死に快楽を貪っているようだった。
麻衣子は乳首が潰れるぐらい力一杯指でつまんでおり、反対の手も縄を避けて水音が立つぐらい秘部をかき乱している。
しばらく、室内に広がるあまりの光景に颯馬が目を奪われていると、突然麻衣子の動きが止まった。
颯馬はどうしたのかと思い、麻衣子の顔を見やると、驚きの表情を浮かべた彼女と目が合った。
どうやら覗かれていたことに気がついたらしく、慌てた様子で麻衣子は口癖を外し、むせながら震える声で颯馬に話しかけた。
「ごほっ!?ごほっ!?いっ、いつからそこに!?」
「えっと、たぶん結構前から、かな?」
颯馬の返答に、自身の痴態が完全に見られていたことを察した麻衣子は絶望に打ちひしがれた。
「あはは……、もう終わりだわ……」
「あ〜、その、今日見たことは誰にも言わないし忘れるから安心して?そもそも僕、伝える友達とかもいないし……」
まるで今にも死にそうな顔をしている麻衣子を見て、颯馬は盗み見をしていた後ろめたさからか自虐を交えたフォローをした。
「……そんな言葉、信じられないわ」
「そう言われても、本当に誰かに言うつもりなんてないよ」
仮にボッチの僕が誰かに言ったとしても優等生の牧村さんがそんな事するなんて信じてくれるわけないよ、と颯馬は頭の中で一人ごちた。
颯馬の言葉を信じられない麻衣子はしばらく俯いて何か考え事をしているようであった。
「佐山君、とりあえず部屋に入ってドアを閉めて鍵を掛けてくれる?」
突然、顔を上げた麻衣子は未だに部屋の外でこちらを見ている颯馬に伝えた。
颯馬を恐る恐る室内に入り指示通りドアを閉め、鍵を掛けた。
部屋の中は甘い匂いに包まれており、颯馬は颯馬は頭がクラクラするのを感じた。
「私、佐山君のことをよく知らないから、何を言われても信用できないの」
そう言うと、麻衣子は立ち上がり颯馬の方へと近づく。
颯馬は近づいてくる麻衣子から嫌な予感を感じ、離れるようにじわじわと後ずさるがすぐに背中にドアが当たり逃げ場をなくした。
それでも距離を詰めてくる麻衣子に思わず目をつむり立ち竦む颯馬。
プルプル震えている颯馬を気にせず目前まで近づいた麻衣子は口を彼の耳に寄せてこう呟いた。
「信用できないから、代わりに
***
気がつくと颯馬は畳の上に正座をさせられ、その膝の上では未だ裸で緊縛している麻衣子が腹這いになっていた。
近づいた麻衣子に耳元で突然、
麻衣子の言う
今から麻衣子の尻を叩き、真っ赤になった尻を颯馬と一緒に写真を撮り、もし事態が発覚した際は、その写真を公開して麻衣子はあくまで彼に脅され変態プレイを強要されたことにする。
もし麻衣子の痴態がバレたら連鎖的に颯馬も社会的に死ぬという、まさかの死なば諸共の策であった。
予想外の提案に颯馬は面食らった。
一時の冒険心で宿直室のドアを開けてしまった颯馬だが、本来は気弱で大人しい性分の少年であり、誰かに暴力を奮ったことも奮おうとしたこともない人畜無害な人間である。
そんな彼に尻を叩けと命じた麻衣子は彼の手を引っ張り、流れるように尻を叩かせる姿勢へともっていこうとする。
実はこのとき、同級生のとんでもない痴態を目にして頭が一杯一杯になっており、颯馬は麻衣子に為されるがままであった。
そして、颯馬の頭の中が落ち着き、少し冷静さを取り戻した頃には、いつでも麻衣子の尻を叩ける体勢になっていた。
「あの、本当に叩く必要性ある?他にも方法あるんじゃないかな?もちろん僕は誰にも言うつもりなんてないし……」
「私には、叩かれる必要性があるの!それにさっきも言ったけど信用できないから
「仮にその
「うるさいわね!もうなんでもいいからはやく叩きなさい!さぁ!ほら!」
膝の上で必死になって叩かれようとしている麻衣子の気迫に押され、颯馬は促されるまま、彼女の尻へ手を振り下ろした。
ペチンッ!
「ちょっと!佐山君、やる気あるの!?そんな力じゃ私のお尻は赤くならないわよ!」
誰かの尻を叩いた経験など当然ないので、恐る恐る叩いた結果、颯馬は麻衣子に怒鳴られてしまった。
やる気なんてあるわけないじゃん、と思いながら颯馬は先程よりも少し力を込めて手を振り下ろした。
ベチンッ!
「っつ!まだ弱いわ!こんなのじゃいつまで経っても終わらないわよ!意気地なし!」
一打目よりかは強い打擲ではあったが、依然としてまだまだ物足りないと麻衣子は颯馬を罵った。
颯馬は麻衣子の言葉に少し苛立ちを感じ始めた。
そもそも、事の発端はこんな所で変態行為に耽っていた麻衣子が悪いのであって、何故自分は悪く言われながら彼女に弱みを握られるためにこんなことをしないといけないのか?
颯馬がそんなことを考えて手を止めていると、またしても麻衣子から催促の言葉が飛んでくる。
「佐山君、さては叩くふりしてお尻の感触を楽しんでいるんじゃないでしょうね!?この変態!ちゃんと叩きな、っんぎゃぁ!?」
麻衣子の言葉は唐突に悲鳴に変わった。
その原因は颯馬が彼女の尻へと力強く振り下ろした手であった。
麻衣子の罵声に、遂に堪忍袋の緒が切れた颯馬は先程までとは比べものにならない威力で彼女の尻を打擲した。
「変態なのはっ!そっちのっ!!ほうだろっ!!!」
バチィーン!バチィーン!バチィーン!
颯馬は変態に変態呼ばわりされた怒りで、力任せに麻衣子の尻を立て続けに叩いた。
「んぎぃ!っあぁ!イイ!!」
「何がイイだ!この変態!」
バチィーン!バチィーン!バチィーン!
力強い殴打に気持ちよさを感じている麻衣子に更に苛立ちを重ねた颯馬はまるで敵のように尻を打ち続けた。
「弱みが欲しいとか言って!本当は叩かれたいだけじゃないのか!」
バチィーン!
「んぎぃ!そ、そんなわけないでしょ!」
「じゃあ!なんでそんな媚びるようにお尻を振っているんだ!」
「そ、それは叩かれた勢いで、振っているように見えるだけ、っひぎぃ!」
麻衣子が喋っている最中でもお構いなしに颯馬は手を振り下ろす。
「表情だって!童貞でも感じているのが分かる位だらしない顔になってるぞ!」
バチィーン!
「んあぁ!それは、童貞特有の勘違っいぃぃっ!?」
「うるさい!馬鹿にするな!!」
バチィーン!バチィーン!
「んぎぃ!うほぉぉ!」
麻衣子の火に油を注ぐような言葉で更に颯馬はヒートアップする。
「この変態!さっさと認めろ!」
「んぎぃ!私は変態じゃな、っあぁぁ!?」
何回も繰り返される打擲で、既に当初の予定通り麻衣子の尻は赤く腫れていた。
しかし颯馬の腹の虫は未だ治まらず、更に麻衣子の尻を叩き続けた。
「おい!股から愛液がこぼれてるぞ!僕の制服汚しやがって!!」
バチィーン!バチィーン!バチィーン!
「んぎぃ!ひぎぃ!ごめんなさいぃぃ!!」
「やっぱり感じているじゃないか!変態!」
バチィーン!
「っひぃぃぃん!!」
幾度なく繰り返される罵倒と打擲に麻衣子は身悶えしながら膝の上で跳ねる。
それからも尻叩きは続き、尻は余す所なく真っ赤に染められ、回数が百回を大きく超えた頃、突如麻衣子の身に異変が起きた。
「おらぁ!」
バチィーン!
「んぎぃぃーー!イ、イクゥゥ!!」
麻衣子は尻を叩かれた衝撃で身体がエビ反りをしたかと思えば、大きな嬌声を上げた。
突然のことで颯馬は驚いたが、これが絶頂であることに間もなく気付いた。
颯馬の膝の上で気を果てた麻衣子は肩で息をしながら、彼の膝に身体を預けていた。
初めて見た女性の絶頂を見た衝撃で理性を取り戻した颯馬はそれ以上麻衣子の尻を叩くことはなく、どうすればいいか分からず混乱していた。
とりあえず麻衣子に声をかけるも未だ絶頂の余韻から帰ってこない彼女からは返事はなく、颯馬はいよいよ困り果てた。
しばらくして下校時間が近づいていた頃、麻衣子はようやく余韻から抜け出し、預けていた身体をゆっくり起こした。
「あ、あのぉ~牧村さん?……大丈夫?」
「えぇ、もう大丈夫よ。膝、重かったでしょう?ごめんなさいね」
「いや、そんなことないよ!そ、それよりお尻は痛くない?」
颯馬の言葉にハッとした麻衣子は部屋にあった姿見で自身の臀部の状態を確認した。
麻衣子の尻は絶頂前に比べ、少し赤みや腫れは引いていたものの依然として赤く染まっていた。
「せっかく叩いて貰ったのに、跡が薄くなってしまうわ」
麻衣子は臀部の確認を終えると、部屋の片隅に置いていた鞄からスマートフォンを取り出すとそれを颯馬に手渡した。
「牧村さん?これは?」
「忘れたの?
そういえばそんな話だったな、と颯馬を思い出した。
スマートフォンを手渡した後、麻衣子は姿見の位置を調整し、颯馬をその前に立たせて自身も横に並んだ。
「佐山君、自撮りモードにして。画角はこうね」
颯馬は麻衣子の指示通りにスマートフォンを操作しながら、細かい位置調整をした。
カシャッ!
シャッター音がなり、撮影した写真を確認するとそこには二人が写ったツーショットがしっかりと撮れていた。
そこには腕を伸ばし自撮りをする颯馬と、裸身に亀甲縛りをされ、ダブルピースをする麻衣子が写っていた。
そして二人の背後に写っている姿見には、麻衣子の後ろ姿を映し出されており、その臀部は赤く腫れ上がっていることが確認できる。
何も知らない第三者が見たら、二人がノリノリで変態プレイに興じていたと思うような写真であった。
「……これ、僕が襲ったというより、同意の上でやっているように見えない?」
颯馬は当初の思惑とは少しずれた写真ではないかと疑問を口にした。
「えぇ、そうね。そう見えるわ。でも、この写真を見た人は
颯馬からの疑問に答えつつ、麻衣子もまた颯馬へと問い返す。
「……そうだね」
もしこの写真が流出されたら、今まで誰にも見向きもされなかった日々が、針のむしろの日々に変わることは想像に難くなかった。
「一応、この写真あなたにも送ってあげるから連絡先を交換しましょう?」
変態扱いされる日々を想像し気落ちする颯馬に、麻衣子は連絡先の交換を促す。
「えーっと、どうやるんだったかな?」
今まで誰かと連絡先の交換をする経験が殆どなかった颯馬は慣れない操作に四苦八苦した。
見かねた麻衣子は颯馬からスマートフォンを借り、慣れた手つき代わりに設定していく。
「はい、これで連絡先の登録が終わったわ。
メールアドレス、電話番号、L〇NE、あとついでにSNSの私のアカウントもフォローしといたから」
スマートフォンを返された颯馬が確認すると、確かに電話帳などに見慣れない連絡先が登録されていた。
しかし、何故か牧村の
「……牧村さん、名前間違っているよ」
「いいえ、それで合っているわよ。連絡した時、画面にその名前が大きく出るから、早く電話取らないと他の人にバレてしまうかもね」
「絶対に連絡してこないでね」
とんでもない罠を仕掛けてきた麻衣子に颯馬は冷たい言葉を返した。
そもそも、『変態♡奴隷』の表記が周りの人に見られてもダメージがあるのは自分だけではないか、と颯馬は憤慨する。
キンコーン、カンコーン
連絡先の交換で盛り上がっていると、気づけば下校時間を迎えていた。
「あら、急がないと不味いわね。この部屋の片付けは私がやるから、あなたは怪しまれないよう早く下校しなさい」
「そう?じゃあ先に帰るね。……さっきも言ったけど連絡してこないでね!」
麻衣子の提案で、先に宿直室を後にすることにした颯馬は、彼女に別れと拒絶の言葉を口にしながら部屋を出た。
そんな颯馬の背を見ながら、麻衣子は小さく呟いた。
「……えぇ、また明日。
***
遅い帰宅となった颯馬は、自分の部屋へ入るなりベットへ倒れ込んだ。
「……ふぅ~、今日あったこと実は全部夢だったりしないかなぁ〜」
とても濃い一日を過ごした颯馬は、全ては悪い夢だったと現実逃避をした。
ピコン!
スマートフォンから通知を知らせる電子音が鳴る。
横になりながら、スマートフォンを見るとチャットが一件届いており、送り主は『変態♡奴隷』。
せっかく現実逃避していたのに、無理矢理ふざけた現実を突きつけてきたスマートフォンを投げ飛ばしたくなる衝動を押さえ、颯馬はチャットの内容を確認した。
その内容は、短い一文と添付ファイルが一件。
『明日も放課後、あの部屋にきて』
そして、添付ファイルの中身はあの時撮った
「連絡するなって言ったでしょ、僕……、それにこんな写真貰っても困るよ」
そう言って、颯馬は貰った写真をながめると、改めて今日の出来事を思い返した。
(牧村さん、クールでちょっと憧れてたのになぁ、まさか、中身があんな変態だったとは)
誰もいない部屋で裸になって身体を縄で縛り自慰に耽る麻衣子の姿を思い出し、颯馬は少し顔を赤らめた。
(玉のように綺麗な肌に、程よく膨らんだ胸、股間は縄でよく見えなかったけど陰毛がチラッと見えたなぁ。お尻も女性らしい丸みを帯びていて柔らかかったよなぁ。思えば僕はあのお尻は何度も何度も叩いたのかぁ)
麻衣子のお尻に何度も触れた手を見つめながら、颯馬はあの時の感触を思い出していた。
しばらく思い出に浸っていた颯馬であったが、これでは自分も変態ではないかと我に返った。
麻衣子の裸体から意識を逸らすため、颯馬はとりあえずSNSアプリを起動した。
タイムラインやトレンドを流し見しながら、今日の出来事を頭の片隅に追いやっていると、あるアカウントが目に留まった。
そのアカウント名は『変態♡奴隷』。
まさかとは思いつつ、そのアカウントの投稿を見ると、過激な自撮り写真と共に自身がやった変態行為について熱く語っている投稿ばかりであった。
顔はモザイクでぼかしているが、写真に写る裸体と今日見たばかりの麻衣子の裸体は同じようなスタイルであることに颯馬は気付いていた。
それでも、颯馬は否定したかった。
(こんなふざけた名前のやつが世界に二人もいるとは思いたくないけど、どうか別人であってくれ!)
心の中で叫ぶ颯馬をよそに、『変態♡奴隷』から新しい投稿が届いた。
恐る恐るその投稿を確認すると、一枚の写真と、これまた短い文章が添えられていた。
その写真は全裸に亀甲縛りされている変態がダブルピースをしており、背後にある姿見には真っ赤に染まった尻が映っていた。
どう見ても先程見たばかりの、宿直室で撮った写真であった。
颯馬が写っていたところは上手くトリミングされて切り取られており、背景も姿見以外はぼかされているので撮られた場所が分からないようにされていた。
颯馬は写真から自身の情報に繋がるようなものが写っていないことに一応安心しつつ、この写真をSNSに流したであろう麻衣子へ対して怒りが芽生えた。
颯馬は怒りに震えながら、添えられていた文章を読んだ。
『ご主人様に初めてお仕置きしてもらいました♡』
「誰がご主人様だっ!!」
颯馬は叫びながらスマートフォンを投げ飛ばした。
***
翌日の放課後、颯馬は言われた通りに宿直室へと赴いた。
登校して直ぐにでも颯馬は麻衣子を問い詰めたかったが、人前で話すには憚られる内容であり、周りの生徒の視線も気になって声をかけられなかった。
仕方がなく放課後まで待ち、渋々、宿直室で話すことを決めたのである。
颯馬が宿直室のドアに手をかけるとやはり鍵は掛かっていなかったので、静かに室内へと入った。
室内には既に麻衣子がおり、畳の上に腰を掛けていた。
昨日のことがあったので颯馬は心配していたが、麻衣子はちゃんと制服を着ていた。
「佐山くん、立ったままでは大変でしょう?こちらに座ったら?」
畳の上には、昨日は隅に片付けられていたのか、ちゃぶ台が置かれていた。
麻衣子に促され、ドアの前で身構えていた颯馬はちゃぶ台の前に腰を下ろした。
「紅茶をいれるから、少し待ってて」
腰を下ろした颯馬と入れ替わるように、麻衣子は立ち上がると、備え付けの台所でお茶を入れ始めた。
「お待たせ」
「……ありがとう」
目の前のちゃぶ台にティーカップが置かれ、紅茶のいい香りが鼻腔をくすぐった。
淹れたての紅茶を味わいながら、何から話し始めるか颯馬は逡巡した。
すると、徐ろに麻衣子が口を開いた。
「この宿直室ね、しばらく使われていなかったんだけど、ある日気になって先生に聞いてみたの」
麻衣子は宿直室を我が物顔で利用している理由を教えてくれた。
彼女の話をまとめると、宿直制度がなくなって誰も使わなくなり、教員たちも殆ど管理していない状態だったらしい。
そこで彼女は自分が定期的に掃除をしたり管理をするので放課後、使わせてほしいと提案した。
先生からの信任が厚い彼女の提案はあっさりと受け入れられ、彼女はまんまと部屋を手に入れたわけである。
優等生の特権ね、と麻衣子は微笑んだ。
疑問の一つが解消された颯馬だが、まだまだ聞きたいことはあった。
「この部屋を自由に使えている理由は分かったけど、人気が無い場所とはいえ、なんで昨日あんなことをしていたの?」
「昨日だけではないわ。週に何度もああいったことをしているわ」
「……まさか、誰かに脅されてたりしないよね」
「しないわね。全て私の意志よ」
颯馬の言葉ははっきりと否定され、麻衣子が変態ではないという僅かな可能性が完全になくなった。
「……じゃあ、なんであんなことを?」
「気持ちいいからよ。私、被虐体質、いわゆるドMというものなの」
麻衣子はあっけからんと自身の性癖を暴露した。
麻衣子が初めて自身の性癖に気づいたのは小学生のころ。
体育の授業でドッチボールをしていた際、男子の投げたボールがお腹に当たり、悶絶した。
あまりの衝撃に、思わず失禁してしまい慌てて保健室へと連れて行かれた。
教師や同級生たちに心配され、ボールを投げた男子からも謝罪されたりと周りがバタバタしている中、保健室のベットで寝かされていた麻衣子の頭の中は、腹部の痛みとは別の下腹部から伝わる未知の快楽でいっぱいだった。
今にして思えば、あの失禁は軽い絶頂だったのではないかと麻衣子は考えている。
あの時感じた快楽は何だったのか、幼い麻衣子は本やネットで色々と調べているうちにSMの世界に行き着いた。
そこでは、女性があられもない姿になって鞭で打たれたり、杖のようなもので身体中を叩かれたり、縄で身体中を締め上げたりと凄い光景が広がっていた。
麻衣子は自分が本やネットで見た女性たちのように嬲られたらと想像すると、身体が火照ってくるのを感じた。
そして、親にバレないように自室で自身の尻を定規で叩いていると、下腹部からあの時と同じ快楽を感じ、それを貪るため更に力強く尻を殴打すると、遂に快楽の波に呑まれ絶頂を迎えた。
これが牧村麻衣子の初めての自慰であった。
そこからは、まるで盛った猿のように被虐行為の伴った自慰に耽り、そして内容もどんどんエスカレートしていった。
そして遂には、学び舎で自縛しながら自慰行為をするようにまで至った。
麻衣子の告白を聞き、颯馬は愕然とした。
そして、彼女は筋金入りの変態だと再認識した。
「……牧村さんがドMなのはよく分かったけど、どうして僕を
颯馬は、ある意味一番聞きたかったことを麻衣子へ問いかけた。
「月が明るく光るには太陽の光が必要なのと一緒で、ドMには躾けてくれるドSのご主人様が必要なの」
唐突に詩的なことを言い出した麻衣子に、少しイラッとしたが颯馬はぐっと押さえて質問を続ける。
「SMって言葉があるように、ドMにはドSのパートナーがいるっていうのはなんとなく分かるけど、どうして僕なの?たまたま覗いてしまっただけの男でしょ?」
「あら?自覚はないの?あなたドSでしょう?」
麻衣子の言葉に颯馬は耳を疑った。
「僕はドSなんかじゃあないよ!?」
「そうかしら?昨日、私の痴態をを覗いて興奮していたじゃない?」
「そ、それは、かわいい女子の裸を見たら、誰だって……」
「私が叩いてとお願いした時、無視して回れ右で立ち去ることもできたのに、あなた受け入れたでしょう?」
「あ、あれも、あの時、パニック状態で冷静じゃなかったからで……」
「でも、実際にたくさん叩いたでしょう?」
「だって、あれは……罵倒されて、頭に血がのぼって……」
「昨日、送った写真は見た?あなたの顔、すごく笑っているわよ」
自分はドSではないと否定するも、麻衣子の反論に颯馬の声は力を失っていく。
それに麻衣子がいうように、昨日写真をみた時、自分の顔が笑っていたことに颯馬は気付いていた。
「か、仮に、僕がドSだったとしても、君のご主人様になる必要性はないよね!?」
「確かに、そうね」
「ほ、ほら!」
勝ち誇ったかのような声をあげる颯馬をよそに、麻衣子は急に立ち上がった。
そして、何食わぬ顔で自身が着ている服を一枚ずつ脱ぎだした。
麻衣子は制服を脱ぎ終わると、驚いてこちらを見上げることしかできない颯馬に近づき耳元に口を寄せる。
「でも別に必要性なんて要らないでしょう?あなたがしたいかどうかでしょう?」
そう囁きながら颯馬の両手を握り、自身の胸と秘部へと誘う。
「あなたが可愛いといった女の身体を無茶苦茶にしていいのよ。……それにドSであることを自覚したあなたは今後、ドMの女を欲するわ。私のような都合のいい女見つかるかしら」
紅茶とは別の甘い香りが鼻腔をくすぐり、颯馬は脳が蕩けそうになっていた。
「あなたは別に何も考えず、私を虐めてくれたらいいの。それだけで私は気持ちよくなれるし、あなたの欲望もきっと満たされるわ」
悪魔のような囁きに、颯馬はもう抵抗することができなくなっていた。
「……本当に、僕がご主人様でいいの?どんな酷いことをするか分からないよ?」
「ふふふ、望むところよ」
***
颯馬の説得に成功した麻衣子は、颯馬から身体を離すと鞄から一枚の紙を取り出した。
「これは?」
「奴隷契約書よ」
颯馬が内容を確認すると、確かに麻衣子のいうように一番上にデカデカと奴隷契約書と記載されていた。
奴隷契約書
本書は佐山颯馬様(以下、御主人様)と、御主人様の奴隷である牧村麻衣子(以下、奴隷)との間で交わされた誓約の内容、条件等について定めたものです。
奴隷は御主人様の命令に絶対に従います。
奴隷は人権を含めた全ての権利を破棄し、御主人様の所有物となります。
奴隷は御主人様により淫乱な身体に作り変えられても、異議を唱えることはありません。
奴隷は御主人様以外と重複して奴隷契約を結ぶことはありません。
奴隷は御主人様の奴隷として、生涯尽くすことを誓います。
調教やお仕置きにかかる費用等は全て奴隷が負担いたします。
本契約は奴隷から破棄することはできません。
令和〇年△月◇日
御主人様
奴隷 牧村麻衣子
颯馬は想像以上に本格的な契約書類に度肝を抜かれた。
署名欄の奴隷と書かれている箇所には既に麻衣子の署名がされており、御主人様の欄はまだ空欄になっていた。
「何も問題なければ、御主人様の欄に署名していただけないかしら?もし、追加で必要な誓約や条件があれば作り直すわ」
「……いや、問題ないよ」
颯馬は、ペンを取り出すと迷うことなく自身の名前を書いた。
そしてどこから取り出したのか麻衣子から朱肉を渡され、先程書いた自身の名前の横に拇印をした。
「私も拇印するから、手を貸してくれる?」
颯馬が拇印をし終え、麻衣子のほうに顔を向けると何故か麻衣子はこちらにお尻を向けていた。
「これを肛門に塗ってくれないかしら?」
そう言って、麻衣子は颯馬に赤い口紅を渡した。
どうやら指での拇印ではなく、口紅を塗った肛門で指のかわりとして押印するようだ。
意図を察した颯馬は、麻衣子に肛門がよく見えるよう尻を開かせた。
「ずいぶん間抜けな格好だね。変態の牧村さんにはお似合いだよ」
「っはい♡」
颯馬は無様な姿を晒している麻衣子に遠慮することなく、肛門に口紅を塗りたくる。
「ケツの穴の周りに生えてる毛、邪魔だから契約結んだら引っこ抜くからね」
「はっ、はい!処理できてなくて申し訳ありません!」
颯馬はわざと時間をかけて、麻衣子を悦ばせていたがようやく口紅を塗り終えた。
「ちゃんと押せるようもっとお尻を広げろ!」
「は、はい!もっと広げます!」
今は無き、ぎょう虫検査を彷彿させる格好で麻衣子が目一杯広げている尻に颯馬は契約書を力強く押し当てた。
契約書を尻から離すと、麻衣子の名前の横に上手く肛門印が押されているのが確認できた。
この瞬間、颯馬は正式にご主人様となった。
「これで私の全ては正式にご主人様のモノよ」
「そうだね、
今までとは違う呼ばれ方に麻衣子は自身の胸が高鳴るのを感じた。
「誰の所有物か分かるように、自分のモノにはちゃんと名前書かないとね」
麻衣子が内心悦に浸っていると、颯馬は鞄からマジックペンを一本取り出した。
「この変態の身体がご主人様のモノだと分かるようにしてください!」
颯馬がやろうとしていることを理解した麻衣子は、腕を背中にやり前身を颯馬に差し出した。
察しの良い奴隷に満足する颯馬は、マジックペンを奴隷の身体に走らせた。
「んんっ、んふ!」
身体中を駆け巡るペンの感触に身を捩るそうになるのを麻衣子は必死にこらえようとする。
「……おい!動くな!上手くかけないだろ!」
しかし、颯馬は震える麻衣子に叱りつけ、むき出しの乳首を捻り上げた。
「んぎいぃぃ!ご、ごめんなさいご主人様!」
突然の痛みに思わず声をあげる麻衣子だが、それでも素直に身体を差し出し続けた。
しばらく、颯馬はペンを走らせ続けたが
ようやく書き終えたのか手を止めた。
麻衣子は自身の身体を姿見で確認する。
そこには、『奴隷』や『変態』といった言葉がかかれており、下腹部には大きく『ご主人様専用』の文字があり、麻衣子はこれ以上ない充足感に包まれた。
「どうせ今日のこともSNSに投稿するんだろ。せっかくだしSNS用の写真も撮ってやるよ」
颯馬は姿見の前で堪能している麻衣子を立たせると先ほどの奴隷契約書を持たせた。
颯馬は麻衣子へスマートフォンを向け、何回もシャッターを切った。
写真には恥ずかしい落書きが描かれた身体を全て晒した女が嬉しそうに笑いながらこちらを向く姿が写し出されていた。
***
颯馬と麻衣子の関係はこうして始まり、中学校を卒業後、同じ高校に進学した今でも二人の関係は続いている。
日中、麻衣子は優等生を上手に演じている。
しかし、放課後になれば優等生の仮面の下の本性があらわになる。
校内の人気のない場所でお尻を叩かれたり、公衆トイレで露出に興じたりと己の欲望を満たしている。
今日も、日の落ちた暗い公園で野外露出を堪能している。
初めて宿直室であった時と同じ、裸に亀甲縛りの格好で夜風を全身に浴びている。
一つ、あの日と異なるのは、麻衣子の首にはペットにつけるような赤い首輪が着けられており、その首輪にはリールが伸びていた。
そして、そのリールを握っているのはご主人様である颯馬であった。
二人は公園をぐるりと一周すると、公園内にある男子トイレへと向かった。
トイレ内はアンモニア臭が広がっており、お世辞にも清潔とは言えない有り様であった。
「ほら、いつもみたいに尻を向けろ」
「はい♡」
颯馬の一言で、麻衣子はタイル張りの床に手をつき、尻が上を向くように頭を下げた体勢になる。
目の前に差し出された尻に向かって、スナップを効かせて手を振り下ろした。
バチィィィィン!
「んほぉぉぉ!!」
乾いた音と麻衣子の嬌声がトイレ内に響き渡る。
一度の打擲で麻衣子の尻には見事な紅葉が浮かび上がる。
しかし、麻衣子は足りないとばかりに尻を振って更なる刺激を要求する。
そんな麻衣子の要求を汲んでか、颯馬は一度と同様に鋭い打擲をお見舞いする。
バチィィィィン!
「んぎぃぃぃ!!」
期待していた刺激に麻衣子はまた嬌声を上げた。
バチィィィィン!バチィィィィン!バチィィィィン!
「んぎぃ!んひぃぃ!うぎぃぃぃ!!」
痛みを甘受しているところに今度は立て続けに手が振り下ろされ、麻衣子は思わず床に倒れてしまった。
「おい!何勝手に体勢崩してんだ!」
颯馬は倒れている麻衣子を一喝すると、リールを引っ張って無理矢理頭を上げさせた。
「ぐぎぃぃ!?ご、ごめ゙ん゙な゙ざい゙!!」
麻衣子は突然の息の苦しさに目を剥きながらも、潰れた声で直ぐに謝罪のことばを口にする。
「駄目だ!罰を与えてやる!」
しかし、颯馬は麻衣子を許すことはなく、更に辱めるために命令を出す。
麻衣子は颯馬の命令に従い、今度は手を頭の後ろで組み、足はガニ股で開いた姿勢をとった。
颯馬は荷物から一本鞭を取り出すと、それを麻衣子の秘部に振り下ろした。
ビチィィィィン!!
「んぎゃあぁぁ!!!」
先ほどまでとは比べ物にならない激痛に麻衣子は今日一番の悲鳴を上げた。
それでも手は頭の後ろのまま、足も閉じずにアソコを差し出し続けた。
麻衣子の殊勝な態度に颯馬は満足した。
しかし、麻衣子はまだ満たされていないのか次の一打を待つように秘部を差し出し続けている。
それならばと、麻衣子の欲求に応えるべく颯馬は鞭を振るい続けた。
ビチィィィーン!バチィィィィン!ビチィィィーン!
「うぎぃっ!ぐうぅぅ!ひぃぃ!!」
幾度となく打ち下ろされる鞭の雨を、麻衣子は健気にも体勢を崩さないように耐え続けた。
それから十回以上打ち続けた鞭の手を止めると、麻衣子の大事な所は真っ赤に腫れ上がり見るも無残な状態になっていた。
それでも、麻衣子は一度も鞭を避けたり庇うようなことをしなかった。
そんな麻衣子を労うように颯馬は彼女の頭を一撫でする。
麻衣子はくすぐったそうに身を捩る。
「んはぁ、もっと……。もっと虐めてくださぁい」
甘ったるい声で催促する自分の奴隷の強欲さに、颯馬は呆れながらも口元に笑みを浮かべる。
「おい!奴隷風情が誰に指図している!」
颯馬は麻衣子を小便器の縁に手をつかせて、顔を便器に近づかせる。
そして、尻を大きく突き出す体勢を取らせるとその尻に目掛けて勢いよく鞭で打ちつけた。
ビチィィィーン!!
「んほぉぉぉ!!」
尻から脳天にまで駆け巡る強烈な刺激に麻衣子は獣のような声をあげた。
アンモニア臭で目が染みる位、便器に顔を近づけた状態で尻を滅多打ちにされる惨めな自分の姿を想像して、麻衣子はイきそうになる。
そんな麻衣子に颯馬は楽しそうに鞭を飛ばし続けた。
ビチィィィーン!バチィィィィン!ビチィィィーン!!
既に手形で赤い尻に無数のミミズ腫れが上塗りされていく。
「んぎいぃぃ!!もっと!もっとぉぉー!!」
「おらぁ!!お望み通り鞭をくれてやる!」
ビチィィィーン!!
「んがぁぁぁぁぁー!!ありがとうございますぅぅぅぅ!!!」
二人の秘め事は夜が更けるまで続いた。