ご不便をおかけしてすみませんm(_ _)m
翌日
薄着のワンピース姿で泥のように眠ってしまった俺は、今日もまた、両脇から押し寄せる圧倒的な質量と熱量によって目を覚まさせられた。
右には人類最強の鬼神たるリーシェが、左には年齢不詳の神様にして重度のお姉様大好きっ娘・ユミルが、それぞれ俺の比類なき超絶美少女ボディをがっちりとホールドしている。
「おはよう、アトラス」
「おはよう、お姉様」
朝の陽光よりも眩しい、しかしどこか捕食者のようなギラつきを隠しきれない二人の笑顔が、至近距離で俺を出迎えた。
そのまま有無を言わさず始まる、揉みくちゃタイム。
寝起きのぼんやりとした頭に、ちゅっ、ちゅっ、とひっきりなしに落とされるキスの雨と、柔らかい身体の擦れ合い。
俺は朝の目覚めからわずか数分で、早くも精神的に完全に疲れ果てていた。
乱れたベッドのシーツを横目に、俺はもはや抵抗する気力すら湧かず、完全に死んだ魚の目をしたまま、なすがままに二人に服を脱がされていく。
スルスルとワンピースが剥ぎ取られ、朝の涼しい空気が素肌に触れる。
「…ねぇ二人とも……ちょっと朝から元気すぎない?」
俺はなんとか声を振り絞るが、その声すらも寝起き特有の甘く掠れたものになってしまい、逆に二人を興奮させる燃料にしかならない。
「───こら、キスしようとしてこないで…!ちょっとリーシェも対抗して来なくて良いから!」
俺の唇を奪おうと迫り来るユミルを必死に手で押し除けると、それに張り合うようにリーシェが俺の首筋に吸い付こうとしてくる。
まじで、隙あらば俺を捕食してこようとする猛獣が二匹もいる。
正直なところ、このいびつな共同生活が始まる前、俺はもっと殺伐とした、血で血を洗うようなドロドロの修羅場が展開されるだろうと胃を痛めながら考えていた。
アトラス至上主義のヤンデレことリーシェと、お姉様大好きっ娘の始祖ユミル。
どう考えても混ぜるな危険の組み合わせだ。
だが、蓋を開けてみればどうだ?
殺伐とした空気など微塵もなく、あるのはただ、底なしの甘さと過剰な性欲の嵐だった。
朝から美女と美少女二人に体を弄られながら甘いキスを落とされ、着替えという名の愛撫であちらこちらを触られ、俺の口からは意図せず情けない嬌声があげさせられる。
そして隙あらば、俺のこの比類なき美少女フェイスを貪るが如く、左右から蹂躙してくるのだ。
傍から見れば、絶世の美少女三人が一つ屋根の下で激甘な爛れた一日を送っている、まるで一枚の宗教画のような眼福の光景に思えるだろう。
ただ、当事者である俺からすれば、常に脳の処理限界を超える甘い刺激を送られ続け、まるで全力疾走した後かのように心臓の鼓動を激しく打ち鳴らされるという、拷問に近い状態なのだ。
そうして、耐えきれずに涙目になりながら、意図せず「……うぅ…っ…///」と弱々しくも扇情的な仕草を見せてしまえば、彼女らは「可愛い!」とさらに理性を飛ばして獣のように襲ってくる。
刺激を与えられる→喘ぐ→二人が興奮してさらに刺激を与える→さらに喘ぐ。
おめでとう、永久機関の完成だ。
さようなら、俺の前世から持ち越した男としての矜持と尊厳。
「あぁ…!お姉様!可愛いぃ!可愛い過ぎる!これが尊いという気持ちなんだね!」
俺が内心で絶望していると、ユミルが両手を頬に当て、目をキラキラと輝かせながら身悶えし始めた。
ずっと孤独だった彼女は、俺が『道』で布教したオタク文化を見事に吸収し、すっかり立派な美少女オタクへと成長してしまったようだ。
「くっ…!見えっ…!見え…ないっ!その絶対領域がもどかしい!…アトラス、捲るわね」
ユミルの歓喜の声に被せるように、リーシェが荒い鼻息と共に恐ろしい宣言をしてくる。
そうして現在、俺はどういう状況に陥っているかと言うと。
かつて巨大樹の森の中で、現実逃避のために衣装製作に没頭していた際に作ってしまった、あの黒歴史の産物の一つ───短いプリーツスカートに、お腹がチラリと見える丈の短いトップスを合わせた、非常に官能的でけしからんセーラー服を何処からともなく見つけ出した二人により強制的に着用させられていた。
ただでさえ布面積が少なくスースーして落ち着かないのに、そんな格好で部屋の真ん中の椅子に座らされているのだ。
俺が羞恥に顔を真っ赤にしながら太ももをギュッと閉じていると、俺の目の前でしゃがみ込んだリーシェが、躊躇うことなくその短いスカートの裾に手を伸ばしてきた。
ペラッ。
「白ね、なるほど」
リーシェは真剣な、まるで世界の真理を解明した学者のような口調でそう呟くと、ポタッ、ポタッ、と床に無様に鼻血を垂らし始めた。
いや、なるほどじゃない。そして拭え、その血を。
人類最強の鬼神たる調査兵団の特別班長が、愛する美少女のパンチラを見て鼻血を流している。
俺はもはや抵抗するのもアホらしくなり、無抵抗のまま、目の前で下着をガン見する変態を、正真正銘の『ゴミを見る目』で冷ややかに見下ろしていた。
だが、そんな俺の僅かな油断が命取りだった。
「ひゃっ…ぅう……!」
不意に、背後に回っていたユミルが、セーラー服の丈が短いために無防備に晒されていた俺の柔らかいお腹に、冷たい手をヌルリと這わせてきたのだ。
びくっ、と背筋が跳ね上がり、本日何度目か分からない情けない嬌声をあげながら、俺は反射的に身体を丸めて蹲った。
過敏すぎるこの超絶美少女ボディは、ほんの少しの刺激でも大袈裟に反応してしまう。
羞恥と快感に震えながら身を縮じこませた俺だが、蹲ったことで最悪の事態を引き起こしてしまった。
目の前でしゃがみ込み、俺の下着をガン見していた鼻血まみれの変態(リーシェ)と、顔の距離が急接近してしまったのだ。
「あっ───」
俺が声を上げる暇もなかった。
リーシェの両手が、俺の頬をガッツリとホールドする。
逃げ場を失った俺の唇に、彼女は垂れる血など全く気にする様子もなく、貪欲で深い口付けをしてきた。
「んん…っ!……ちゅっ……っんむ……はぅ……///」
唇が重なり、舌が侵入してくる。
リーシェの体温と、強引な舌の動き。
そして、彼女の鼻血から滴った生臭い鉄の匂いと、今朝二人で飲んだばかりの甘い紅茶の香りが混ざり合い、俺の口腔内に広がっていく。
ちゅるり、と舌が絡み合うたびに、背筋を駆け上がる電撃のような快感が脳髄を貫く。
鉄の不快感と、それを遥かに上回る圧倒的で甘美な快感が俺の脳を激しく混乱させ、思考能力を根こそぎ奪い去っていく。
だが、地獄(天国?)のコンボはこれで終わりではなかった。
前からはリーシェによる激しいディープキスで脳を溶かされている最中。
俺の背後に立つユミルが、セーラー服の襟足から覗く俺の項(うなじ)へと指を滑らせたのだ。
ツーっ、と。触れるか触れないかぐらいの、絶妙で焦らすような加減でなぞりあげる指先。
うなじ。それは巨人の弱点であり、この受肉した肉体にとっても、あらゆる神経が集中している最大の急所だった。
「あ゛ッ……!?」
その瞬間。背筋を強烈な電流が駆け抜け、目の前が真っ白に弾けた。
俺の意思とは裏腹に、この比類なき美少女ボディが、ビクンッ、ビクンッ! と、ひどく下品な痙攣を起してしまったのだ。
腰が跳ね、つま先が反り返る。リーシェの口内に熱い息を吐き出しながら、俺は椅子の座面で小さくびくついた。
ゆっくりと唇が離れ、銀色の糸が切れる。
肩で荒い息をする俺の耳元で、ユミルが信じられないものを見たというような、けれどどこか意地悪な興奮を含んだ声で囁いた。
「…お姉様……今の動き…………もしかして……///」
頼む。頼むから言わないでくれ。
そんな、朝から、女の子二人にちょっと触れられてキスされただけで、軽く達してしまっただなんて。
元男としての、いや、人間としての尊厳が粉々に砕け散る。
恥ずかしすぎて、今すぐ全身硬質化してこの場から消え去って死んでしまいたいッ……!
顔から火が出るほどの羞恥に全身を真っ赤に染め上げ、瞳に大粒の涙を溜めた俺は、せめてもの抵抗とばかりに、俺をこんな身体にした張本人たちに向けて、震える声で精一杯の罵倒の言葉を放った。
「……うぅ…っ…!…バカっ!」
だが、その涙声の罵倒すらも、完全に理性を吹き飛ばした二人にとっては、ただの極上のご褒美でしかなかったのだ。