※この作品はR-18です。

外伝 - 栄光の手   作:ベリアサーシャ


原作:Limbus Company
タグ:R-18 オリ主 残酷な描写 Limbus conpany
お互い幸せになりましょうね。

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栄光の手

 

 

 

「……は?」

 

 頭が真っ白になった。

 嘘だ、そんなことはない。何度も自分を納得させるように、その言葉を脳内で繰り返す。

 だって、その為に女として産まれてきたんだ。今までは運が、そう、致命的に運が悪かっただけで。今度こそ、皆を守れると。救えると、そう思っていた。

 この物語を変えるのは、自分なのだと。

 ……目の前の紙には、「早発卵巣不全」の文字が淡々と刻まれていた。

 自分も馬鹿では無い。この言葉の意味など、とうに理解している。

 

 僕は二度と、子供を望めない身体になってしまったのだ。

 

 

 

 このままの史実を辿れば、ヨルは望まぬ子を孕むだろう。そしてその事に絶望し、この世の全てを憎むだろう。

 自由だった頃を惜しみ、不自由を呪うだろう。

 そんな未来を回避するために、自分が女として生まれたのだと。彼女の露払いとして塩見家に転がり込めたのだろうと。

 思っていた。

 

 そもそも、期間が不定期だった。

 促進を行わないと3ヶ月以上排卵しない事もザラで、自分はそれを便利だと思っていた。

 別に普通だと、そう思っていた。

 何度も流産を繰り返し、何度も不妊を味わい。ただ運が悪いのだと、ただ間が悪かったのだと。

 そう考えながら、ようやくそこで違和感に気がついた。

 その結果が、これだ。

 

 指令は、都市の意思は。これを分かった上で、僕が邪魔をしないように、これを差し向けたのだ。

 それを理解した瞬間、僕の脳裏に過ぎったもの。

 僕の父親の顔。

 あの、白痴で、傲慢で、人の心を理解しない、自分の興味関心以外無いものとして扱う、次元の魔王。

 全てこれも、想定通りだと。そう嘲笑うあの顔が浮かんで、僕は、

 

 

 

「……どうか」

 

 唇から零れたのは、自分でも情けないと思う声だった。

 

「どうか、妹には」

 

 視界が下に下がっていく。温度のない畳の感覚が膝につく。

 

「妹には、手を出さないでくれ」

 

 そこで自分が、床にへたりこんでいることに気が付いた。

 

「お願いだ」

 

 体から熱が引けていく。視界がモノクロになっていく。

 

「お願い、お願いなんだ」

 

 力が保てなくなって、視野がどんどん狭くなっていく。

 

「……お願い、します」

 

 ……そうして、自分は。

 床に頭を擦り付けていた。

 懇願していた。自分の尊厳はとうに無くなっていた。

 そんなものより、守りたいものがあった。

 過去の追憶が頭に浮かぶ。昔むかしの話だった。

 不器用に笑う横顔。

 笑うと目が糸のように細くなって、それが可愛くないと拗ねる声。

 花冠を戴せてやった時の手の温度。

 そして。

 ……そんなものが、いまさら、

 どうしようもなかった。

 

「どうか」

 

 あの子には、幸せな人生を歩ませてやってくださ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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