「F1・ピットクルー」:0.1秒を削る究極のピット作業 作:坂本太郎
サーキットの照明が落とされた午前2時。ピットガレージには、冷却されゆくチタンの収縮音と、拭いきれないハイオクタン燃料の芳香だけが停滞していた。
私は、カーボンファイバー製のバケットシートを模した処置台に固定されていた。四肢を拘束するベルトは、サベルト製の6点式ハーネスと同様の強固さで彼の自由を奪い、皮膚に冷徹な圧をかけている。
「バイタル、安定。心拍数、アイドリング状態の60bpm。……セットアップを開始します」
チーフ・エンジニアの冷ややかな声が、静寂を切り裂いた。彼女たちの指先には、外科医の正確さと、マシニングセンターの無機質な熱が宿っている。
トルク管理:初期負荷の均等化
私の大腿部を、二人の女性エンジニアが左右から挟み込む。彼女たちは愛を囁くことはない。ただ、マシンのサスペンション・ジオメトリを確認するように、淡々と彼の筋肉の「しなり」を測定していく。
「左大腿筋、緊張を確認。プリロードをかけます」
一人が、私のペニスに特注のコックリングを滑らせた。それは医療用シリコンと航空宇宙グレードのチタンを組み合わせた、可変式の拘束具だ。
カチリ、と硬質なラチェット音が響く。
「規定トルクまで締め付け。15Nm(ニュートンメートル)から開始。……18……22。内圧上昇を確認」
「くっ……!」
私の喉から漏れた呼気は、過給機(ターボチャージャー)が吐き出す熱い排気のように湿っていた。リングが海綿体を締め上げ、血液の戻りを精密に遮断する。逃げ場を失った血液が、彼の楔を不自然なほど硬質に、かつ凶暴に膨張させていく。それは、予選アタックを控えたタイヤが、ウォーマーの中で限界まで内圧を高められている状態に酷似していた。
テレメトリー:肉体のデジタル化
「ブースト圧、上昇。設定値まで残り0.5bar」
もう一人のエンジニアが、私の胸部に貼り付けられた電極パッドの数値をモニターで追う。彼女の視線は私の顔を見ることなく、ただ刻々と変化する心拍数と血圧のグラフだけを「解析」していた。
彼女の冷たい指先が、私の乳頭を摘まみ、指腹で鋭く転がす。
「神経伝達速度、正常。感覚センサーの感度を上げます。……オイル(潤滑液)を塗布」
高粘度の、糸を引くような合成オイルが彼のペニス先端に滴り落ちた。それは摩擦係数を極限までゼロに近づけるための、冷徹なまでの機能美。
「これより、マルチ・タスク・ピット作業に移行します。各員、同期を確認してください」
「コピー(了解)」
無機質な返答が重なり、私の視界が火花を散らす。脳裏には、先ほどまで戦っていたコースの残像がフラッシュバックした。バックストレートを駆け抜けるV12エンジンの咆哮が、幻聴となって耳の奥で鳴り響き始める。
私の心臓というピストンが、官能という名の燃料を吸い込み、爆発的な出力を生み出す準備を整えていた。
「カウントダウン開始。……3、2、1。ジャッキアップ(挿入)」