「F1・ピットクルー」:0.1秒を削る究極のピット作業 作:坂本太郎
「全気筒、点火タイミングを極限まで進角。……これより、フィニッシュ・シーケンスへ移行します」
チーフ・エンジニアの冷徹な宣告が、大気中に放電するようなジリジリとした緊張感をもたらす。私の肉体は、もはや一つの生命体としての恒常性を失い、限界まで熱を帯びた「パワーユニット」そのものへと完全に入れ替わっていた。
リミッターの解除:ECUのマスターキー
彼女たちの指先には、躊躇(ためら)いも慈悲もない。 私のアヌスに深く潜り込み、前立腺という名の出力制御ユニットを執拗に圧迫していた指が、迷うことなく最奥の「ある一点」を鋭く突いた。
それは、生体が自己防衛のために設定している安全リミッターを強制的に解除する、禁断のマスターキーだった。
バチバチと脳裏で回路がショートするような感覚とともに、私の背筋を、数万ボルトの電流が駆け抜けるような凄まじい衝撃が突き抜けた。
「ぐ、あああああッ!!」
声にならない絶叫が喉を焼き、サベルト製の6点式ハーネスがミシミシと不穏な悲鳴を上げる。 私の腰が、カーボン製のバケットシートから弾け飛ぶような勢いで、何度も、何度も上方に跳ね上がった。強靭なハーネスが皮膚に深く食い込み、拘束された四肢が限界まで引き絞られる。
しかし、三人のエンジニアたちは微動だにしない。 暴走し、激しくのたうち回ろうとする私の肉体を、マシンのサスペンションが路面を強力にホールドするように、冷徹な握力と体重をかけて完全にグリップ(制御)し続けている。
「車体(生体)振動、許容限界(グラウンド・リミット)に到達。ですが、強度はまだ保てます。ストロークを最終段階(ファイナル・ステージ)へ」
圧力充填:オーバーブースト・モード
「燃料圧力、最大。バルブ全開(フル・スロットル)」
口腔(エア・インテーク)を蹂躙する彼女の舌が、私の漏れ出す悲鳴を肉壁ごと力任せに吸い込み、気密性を極限まで高める。酸素の供給を完全に断たれた脳が、窒息の恐怖でさらに狂乱の快感パルスを撒き散らした。
同時に、ペニスの根元を締め付ける可変式チタンリングのダイヤルが、カチリ、カチリと非情な音を立てて最後の一刻み――「オーバーブースト・モード」へと回された。
「内圧、定格の180%をマーク。血液の逆流、完全遮断完了」
その瞬間、私の楔は限界を超えて膨張した。海綿体の毛細血管の一本一本が引き千切れんばかりに張り詰め、皮膚の表面には、高圧パイプのような禍々しい血管が不自然に浮き上がる。 熱い。内部の圧力が文字通り破裂寸前まで高まり、一触即発のニトロ化合物のように、脳からのわずかな点火信号を待つ状態に陥る。
「感覚センサーのフィードバック、飽和状態(サチュレーション)を確認。これより、全アクチュエーターを同期した最終アタックを開始」
破滅への全開走行
一人がシャフトを握る手の速度を、肉眼では捉えきれないほどの超高速ストロークへと引き上げる。無潤滑に近い乾いた摩擦熱がペニスを焼き、激痛と恍惚の境界線が完全にドロドロに溶けて一体化していく。
背後では、前立腺のコアをグリグリと抉るような、容赦のない指の回転運動が私の腰の神経をダイレクトに蹂躙する。
「心拍数、21,000rpm 相当! パワーユニット、焼き付き(ブロー)寸前!」 「構いません。このままチェッカーまで全開で回し続けなさい。限界を突破させ、真の『最高出力』をデータに刻むのです」
耳の奥で鳴り響く V12 エンジンの咆哮が、キィィィンという鼓膜を引き裂くような高周波の金属悲鳴へと変貌していく。 視界はもはや、激しいデジタルノイズと真っ白な火花(スパーク)に覆われ、自分がどこにいるのか、何をされているのかさえ判別できない。
ただ、背筋を貫く圧倒的なエネルギーの奔流が、私の肉体というパワーユニットを、物理法則の向こう側へと強引に引きずり回していることだけが分かった。 一滴の燃料も、一瞬の猶予も残さない。 完璧に計算され尽くした「搾取」のシーケンスが、今、私を人生で最も最速、かつ最も苛烈な破滅の瞬間へと加速させていく。