※この作品はR-18です。

「F1・ピットクルー」:0.1秒を削る究極のピット作業   作:坂本太郎

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第9章:エンデュランス・モード(耐久走行の極致)

「心拍数、15,000rpmで固定。これより30分間の定常負荷テスト(ロングラン・シミュレーション)に移行します」

 

チーフ・エンジニアの冷徹な宣告とともに、ピットガレージの大型空調システムが重低音を立てて駆動した。設定温度は一気に「クリーンルーム」並みの低温へと引き下げられ、ガレージ内には容赦のない極寒の冷気が吹き荒れ始める。

 

熱力学的ストレス(サーマル・ショック)

私の拘束された皮膚表面を、冷酷な冷気が容赦なく撫で上げ、鳥肌を立たせて体温を奪っていく。その一方で、彼女たちが私のペニスや乳頭に装着した各種デバイスやアクチュエーターは、その特定の局所に対してのみ、集中的かつ凶暴な「摩擦熱」を絶え間なく発生させ続けていた。

 

局所的な灼熱と、全身を包む極寒。

この極端な温度差は、時速 300km/h を超える超高速走行中に、氷点下に近い走行風で冷やされる冷却水と、1,000℃に達する排気熱との間で激しくせめぎ合う、パワーユニットの過酷な熱力学的ストレスを完全に再現していた。

 

「あ……が……、熱い……いや、冷たいのか……っ!? 脳が、感覚が、おかしくなる……ッ!」

 

私の感覚受容体は、あまりの過負荷と矛盾する信号の同時入力によって、完全にシステムエラーを起こし始めていた。神経の末端が焼き切れるような熱さと、凍りつくような痛みが交互に脳幹を殴りつける。脳内のテレメトリー画面には、限界値(レブリミット)突破を告げる赤色のインジケーターが激しく点滅し、警告音が鳴り響いていた。

 

圧力勾配の制御:バックプレッシャー

「生体インプット、混乱(バグ)を確認。ですが、メイン・ブロックの形状維持には影響ありません。……これより圧力勾配の制御に移行」

 

背後に回った一人のエンジニアが、私の会陰部に設置された油圧式加圧ポンプのバルブを静かに開放した。

 

「前立腺周囲の内圧を 1.2bar で固定維持。……下半身の血流に『バックプレッシャー(背圧)』を発生させ、疑似的な充血状態を強制的にホールドします」

 

グ、と下腹部の奥深くへ強烈な内圧が加わる。

それは、先ほどのセッションで一度すべての「燃料」を放出し、本来ならば休息を求めて縮小していくはずの肉体(パーツ)に対し、物理的な圧力の壁を築くことで、無理やり「勃起」の形状と硬度を維持させる処置だった。

 

逃げ道を塞がれた血液が、無理やり海綿体へと押し込められ、ペニスをどす黒く充血させていく。それは、燃料を完全に喪失し、自力での駆動が不可能なマシンに対し、外部の超高圧ポンプから強制的にオイルを循環させることで、無理やりアイドリング状態を維持させているかのような、工学的で残酷なまでの機能維持であった。

 

「内部圧力、安定。安全弁の作動はありません。……ターゲット、この状態で2,000秒の定常振動(ストローク)に耐えなさい」

 

「うあ、あ……あぁっ! 中が、内側から破裂する……! 止めて、くれ……っ!」

 

私の懇願を、エンジニアはただの「排気音の乱れ」として片付ける。

彼女たちの指先は、再び一定のストロークを刻み始めた。1分間に150回という、寸分の狂いもない正確なピストン運動が、バックプレッシャーによって極限まで張り詰めた私の粘膜を削っていく。

 

冷気によって麻痺していく皮膚と、内部で限界まで高まる圧力。そして局所を襲う無慈悲な摩擦熱。私は、自分がただの肉体を持った人間であることを完全に否定され、過酷な耐久レースの過渡特性を計測するためだけの、実験用パワーユニットとして、暗闇の中で激しく軋みを上げ続けるしかなかった。

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