仮面ライダー(新)より 美也の叫び、私はサソランジンじゃない! 作:shpfive03
原作:仮面ライダー(スカイライダー)
タグ:R-18 クロスオーバー 仮面ライダー スカイライダー サソランジン 上村美也
おっさん提督さんにpixiv上で作品が閲覧することが出来なくなった現状を説明した上で、あらためてハーメルンさんに投稿する許可をいたたいたので投稿させていただきます。
なおも他にもpixivでリクエストにより投稿した小説は五本ありますが、依頼主様のご許可がないものはこちらでは投稿しないことにしています。
上村美也は手術台に全裸で寝かされている自分に気づいた。
「ここはどこ?、い、いやあっ!!、止めてえっ」
意識を取り戻した美也は、自分が全裸のまま白いベッドの上で寝かされており、その両手、両足が鉄製の拘束具によって身動きが出来ないよう固定されているのに否応なく気づかされたのだ。
そして彼女の周囲にいたのは、というと …
「ヒャイーッ!」
白いタイツのようなもので全身を覆われ、目だけが露出しており、額に退化した触角が生えた覆面のようなものを被っているように見える、腰には怪しげなエンブレムの入った銀色のバックルのあるベルトを着用し、手には黒のロンググローブ、足には黒のブーツを履いた、人間のものとも思われぬ奇怪な叫び声をあげている何人かの男たちに囲まれていることを知った。
「きゃあああああっ!」
美也は急いで起き上がろうとするのだが、拘束具によって手術台にくくりつけられている彼女は当然ながら起き上がることさえ出来ずにいる。
キュウウウウーンッ!!
その場に無機質な機械音が響き、全裸の美也の体に赤い赤外線と思われる光線が当てられていた。
そして、それをニヤニヤしながら眺めていたのは白いスーツに身を包み蝶ネクタイをしている、恐らくは初老と思われる科学者
志度博士の組織からの脱走後、正式にネオショッカー科学班主任研究員として改造人間製造を責任者となっていた悪の科学者プロフェッサー・ドクがその名前であった。
「よし、いい感じだ。」
彼はそんな美也の様子を観察しながら嬉しそうに言う。
ここは最近有名になった北海道の観光地の一つ台場山
その地下にある悪の秘密結社ネオショッカーの秘密基地である。
ここでネオショッカーは、台場山に観光に来ていた、女性ながらスポーツで鍛えた身体と、高いIQを持つ明晰で優秀な頭脳の持ち主である事がわかった女子大生上村美也を強制的に拉致し
ある実験的な目的により、彼女をネオショッカーの主力戦力であり、『怪人』と呼ばれることもある二種動物融合型改造人間として作り替えようとしていたのだ。
「お、お願いです、私を助けてください!、家族の元へ帰りたいんです!!」
美也の必死の懇願は、だが空しく無視されたまま
手術台にくくりつけられた彼女の身体に電流が走った。
バリバリバリバリバリバリバリバリッ!!!
「きゃあああああああああっ!!!」
大きな悲鳴を上げた美也だが、そこで力尽きたようにぐったりと意識を失い、ピクリとも動かなくなる。
勿論、彼女は死んだわけではなく、麻酔にかけられたのと同様の昏睡状態となっただけである。
美也の呼吸そのものはしっかりとしているのをネオショッカー科学班の白アリコマンドたちは念入りに確認する。
この程度のショックで絶命してしまうようなら、改造人間にするだけの価値もないということでもある。
「ヒャイーッ!」
白アリコマンドの一人が右手を前に上げて、この場の責任者であるプロフェッサー・ドクに向かって最大限の敬意を示す。
「プロフェッサー・ドク様、この女の改造手術の準備が整いました!」
「よし、手術を開始しろ!」
それを確認した白いスーツに蝶ネクタイが印象的な悪の科学者であるプロフェッサー・ドクは、周囲の技術者、つまり白アリコマンドたちに号令をかける。
そして、その時である。
「プロフェッサー・ドク、手術は順調のようだな」
手術中であるにもかかわらず、黒を基調とする軍帽をかぶり、同じく黒を基調とした上着に、白を基調とするズボン、黒のブーツという軍服姿で眼帯をつけた爬虫類的な冷たさを感じさせる威厳のある男性が平然と手術室に入ってくる。
「ゼネラルモンスター様!」
白いスーツと蝶ネクタイに身を包んだ悪の科学者プロフェッサー・ドクは、その威厳ある男性に向かって、恭しく敬礼をした。
「プロフェッサー・ドク、今回の試みには期待しているぞ!!」
軍服姿に眼帯をした、その威厳のある男性は
かつて世界征服を狙った悪の秘密結社である『ショッカー』の後継組織として、自ら『ネオショッカー』の称号を誇らしげに名乗る強大な悪の組織、その日本支部全権を掌握する大幹部ゼネラルモンスターであった。
そのゼネラルモンスターは手術台の上で、今なお抵抗しようとする上村美也を面白いものでも見るかのような嫌らしい目つきで、じっと眺める。
増え続ける世界人口、そして、それにともなう食糧危機などの問題を、自らの虐殺と支配によって解決しようという歪んだ選民思想を持つネオショッカー、そして、その最高幹部の一人として、手始めに日本国征服の計画を実行しようとする彼、ゼネラルモンスターではあったが
組織から脱走した科学者志度敬太郎、そして、その助手である叶みどりと
その二人によって脳改造手術の直前で助け出された、
ネオショッカーの新たなる二種動物融合型改造人間、つまり『ネオショッカー改造人間イナゴジン』とされる予定だった青年筑波洋が自ら名乗る『仮面ライダー』
そして、その新たなる仲間たちによって
ことごとく、日本国制圧のための作戦計画を妨害され続けているのが現状であったのだ。
が、ゼネラルモンスターは強大なネオショッカーの改造人間たちを実力で次々と倒し続ける『仮面ライダー』に興味を持っており
彼を生け捕りにした上で、ネオショッカーによる新たなるコントロールを行い、日本制圧のための有力な戦力にする方法はないかと考えてもいたのだ。
実は今回の改造人間の素体となる上村美也については、そのテストケースとすることを考えていた。
高い知性を持ち、悪の心に容易に洗脳されない強い意思を持つ人間を、組織の思いどおりに動く改造人間として生まれ変わらせるにはどうすればよいのかという疑問に対する一つの回答として…
ところが、思わぬことが起こった。
電撃のショックで気を失ったはずの美也が意識を取り戻したのだ。
そして、またしても手術台から逃げ出そうと、抵抗をはじめる。
「ほうっ、気がついたのか。お前の精神力は大したものだな」
ゼネラルモンスターは、そんな美也に興味を示す。
勿論、観察対象としてだが…
「止めてくださいっ!、いや、改造人間なんて嫌ですっ!」
なおも美也は絶叫するが、それを眺めていたゼネラルモンスターは冷笑する。
「ハハハハッ、お前は私の手で自由にコントロールできる改造人間になるのだ!」
「いやあっー」
美也の大きな悲鳴が手術室にこだまする。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
今、この場にいるのは、もはや上村美也という女性ではない。
赤い甲殻に覆われ、毒サソリの化物のような容姿をしたネオショッカーの改造人間サソランジンが、そこにはいた。
その首にはペンダント型の装置がかかっている。
このペンダント型の装置こそは、今回サソランジンの素体となった女性、上村美也の自我を必要に応じてコントロールするための回路を備えたものであった。
サソランジンには脳改造手術も施されているが、それは今回、意図して最小限度に抑えられている。
これは、ゆくゆくは『仮面ライダー』こと、その素体となった人間、筑波洋、その能力を最大限に活かしたまま、いかにしてネオショッカーの方でコントロールすることが出来るのか
という実験的な意図からである。
プロフェッサー・ドクからの提案であった。
彼は、例えばアリコマンドのように完全な形での脳改造手術を施されたものは、自由な意思を失った分、能力も制限されると考えており、実際にもそうだったので
その素体となった人間の能力を生かしたまま、自由にコントロールすることが出来る改造人間の可能性を模索していたのだ。
今回は、いわば、そのテストケースでもある。
そんなサソランジンをゼネラルモンスターは注視しながら、目の前の端末の画面を見る。
その端末の画面に映った老科学者を指差すゼネラルモンスターは、サソランジンに向かって早速の指示を与えた。
「これが本田博士だ、この顔、よく覚えておけ!」
「カアァーッ!!」
サソランジンは、その鳴き声をあげる。
ゼネラルモンスターはサソランジンに向かって命令する。
「この本田はロボット工学の権威だ、奴のところへ行けっ!」
「カアァーッ!!」
再びサソランジンは叫ぶ。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「本田博士、我々ネオショッカーに協力する決心はついたのかな?」
「その声はっ!! 」
「ゼネラルモンスター!」
「私の研究はたとえ大金を積まれてもあなた方に渡すことは出来ないっ!、断る」
電話の相手、ネオショッカーの大幹部ゼネラルモンスターに向かってロボット工学の権威である本田博士は断固として言いきった。
そして、怒りに任せて受話器をガチャリッ、と置いた本田博士は、次の瞬間に自分以外の何者かの気配を感じた。
その気配の方へと振り向くと、そこには白いワンピースを着た女性がいる。
「き、君は誰だっ!、どこから入ったんだ?」
震える本田博士の声。
受話器は切ったはずなのに、本田博士の耳にはゼネラルモンスターの陰気な声が否応なく聞こえる。
「その男の死は決定した。サソランジン、その男を始末しろ!」
白いワンピースを着た女性は本田博士の前で次の瞬間には
赤い装甲に覆われたサソリの化物のような異形の怪人の姿に変貌していたのだ。
「や、止めろっ!、止めてくれえっー!!」
本田博士の必死の叫びも、だが何の意味もなかった。
必死に叫ぶ 拒絶の言葉を放つ前に、サソランジンの爪が本田博士を襲う。
この怪人の体内で精製された猛毒は、その爪を通じて本田博士に注ぎ込まれたのだ。
あっという間に本田博士は倒れ、白い煙と共に消滅した。
「カアァーッ!!」
サソランジンは勝ち誇ったように叫び声をあげると
自分が殺した本田博士の遺した、その研究データを奪い、そして近くに停めてあった乗用車に乗り込む。
「ゼネラルモンスター様、ご命令通り、本田博士を抹殺し、書類を奪いました」
上村美也の姿をしたネオショッカー怪人サソランジンは、ゼネラルモンスターにそう報告する。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
次の標的、石渡教授の抹殺の指令を受け、その勤務先である城北大学へ車で向かった上村美也の姿をしたサソランジン。
城北大学は元々上村美也の通っていた大学でもあり、なんなく到着すると、城北大学の来客用駐車場に車を停め、何事もないかのように降り立つ。
城北大学のキャンパス内を上村美也の姿をしたサソランジンは歩いていた。
白いワンピース姿の美しい女性の姿をした上村美也、いやサソランジンだが
その様子をじっと観察していた青年がいた。
ネオショッカーの敵、筑波洋である。
ちょうど彼は石渡博士の研究室に勤務する旧知の山本助手に、石渡教授の最近の様子を聞いていたところだった。
実は筑波洋は、先の本田博士が何者かに殺害されていた現場の近くに偶然居合わせており、その場から車に乗って立ち去った女性、つまり上村美也の姿をしたサソランジンを、それと知らずに目撃していたのだった。
そして本田博士の研究仲間でもあり、関係するプロジェクトに関わっていた石渡教授が危険である可能性が高いことを志度会長から教えられた洋はここまで来ていたのだ。
あの女性、やはり・・・・・・
洋が白いワンピースを着た女性を注視しているその時だった。
「お姉ちゃあん!」
ランドセルを背負った小学生の女の子が、その白いワンピースの女性に向かって、大きな声で叫んだのだ。
「お姉ちゃんっ!、お姉ちゃんっ!、可也よっ。お姉ちゃん!」
ランドセルを背負った少女は必死の思いで白いワンピースの女性にすがり付く。
だが、白いワンピースの女性は機械のように無表情のまま、少女を、まるでゴミのように振り払った。
「きゃあっ!」
ランドセルを背負った少女はその場に倒れ
「えええっ~ん!!!」
と大きな声で泣き叫ぶ。
洋は我を忘れて、泣き叫ぶ少女の元へと慌てて駆け寄った。
「大丈夫かいっ!」
少女は自分を助けてくれた洋を見ると、大きな声で泣きながら震える手で指差した。
「お姉ちゃんがっ!、お姉ちゃんがあっ!」
少女の指差した方向には
再び車に乗り込んでその場から去っていく白いワンピースの女性がいた。
ここから離れたネオショッカーのアジトで騒ぎにより目立つのはまずいと判断の上で計画の中止を指令したゼネラルモンスターの命令に彼女は忠実に従っただけのことである。
「君、大丈夫かい?」
洋は少女を抱き起こす。
「……うん。でも、お姉ちゃんが……」
くすん、くすん、と泣きながらも、少女は洋に向かって言う。
白いワンピースの女性の乗った車は既にその場から姿を消していた。
「あの人は君のお姉さん?」
洋は少女に向かって尋ねる。
「行方不明になったの!」
少女は洋をしっかりと見つめて、そう答える。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「お姉ちゃんは、北海道の台場山ってところへ山登りに行って、そこで行方不明になったの!」
ここは志度ハングライダー・クラブの応接室。
表向きはこの志度ハングライダー・クラブという団体の会長であり、その実は国際的組織『ネオショッカー対策会議』(旧名はアンチショッカー同盟)の日本支部のマネージャーをつとめる志度敬太郎という人物がそこにはいた。
そして、このハングライダー・クラブの事務員をつとめる叶みどり、杉村ミチ、野崎ユミという三人の若い女性が
ランドセルを背負った小学生の女の子を連れてきた筑波洋を囲む。
その洋が連れてきた小学生の女の子は上村可也という名前だった。
「可也ちゃんっていうのね、大丈夫よ。私たちに事情を話して」
三人の女性の中ではリーダー格ともいえる叶みどりが、少女、可也に向かって優しく話しかける。
可也はゆっくりと話し始めた。
失踪した姉の美也の姿を近くで見かけたという学校の友だちの話を聞いて、姉の通っていた城北大学に藁にも縋るような思いでやって来て
そして、本当に姉の『美也』の姿を見つけることか出来たのだ。
だが、実際に会うことが出来た可也の姉、美也は、まるで機械人形のように無表情で、心を失ったかのようだった。
可也には、それが無性に悲しかった。
そもそも北海道の台場山で行方不明になったはずの姉、美也が何故東京の、それも在校していた城北大学まで車で来ていたのか?
それに可也と出会ったときの様子も、あまりにも不自然だった。
そうしたことを、たどたどしく、しかし一生懸命語る可也の話を志度敬太郎、みどり、ミチ、ユミ、そして洋の四人は辛抱強く聞く。
そして可也の話を聞きながら、洋は、ある可能性を考えていたのだ。
「美也さんは、もしかしたら奴らに改造人間にされてしまったのではないだろうか?…」
洋は、先ほど見かけた彼女からは自分と同じ改造人間である気配を敏感に感じ取っていたのだ。
考えたくはないのだが、もし彼女が既にネオショッカーの改造人間とされてしまったのだとしたら
自分は目の前にいる可也の姉と改造人間同士として、他のネオショッカー怪人たちと同様に戦わなければならないのだろうか?
いや、今まで戦ってきたネオショッカー怪人たちも、元々は人間であり、それぞれの人生もあったのである。
別に可也ちゃんのお姉さんだけが特別ではない…
だが、自分は、元々はネオショッカーの科学者であり、現在はここの会長でもある志度敬太郎の
脳改造手術を施されてネオショッカーの怪人や戦闘員とされてしまった者たちは、もう、元の人間には戻れない
という言葉を信じて、せめて、その魂だけでも救うことを考えて戦ってきたのだ。
今、自分の目の前にいる少女、可也の姉が、やはりネオショッカーの怪人、ないし戦闘員として、自分に襲いかかってした時に
自分は本当にそれを倒せるのか?
洋がそんなことを考えていた時だった。
志度敬太郎はゆっくりと洋に向かって言う。
「洋、気持ちはわかるが、今は石渡先生のことを考えるのが先決だ」
まるで洋の胸中を察しているかのように、志度敬太郎はいうと、今度は泣きそうになりながら姉のことを話す可也に向かって微笑む。
「可也ちゃん、私たちはお姉さんのことについて、
志度敬太郎のその言葉を聞いた可也は嬉しそうに微笑む。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
サソランジンは城北大学の建物の中へと侵入すると、目的の研究室の扉に向かって、その頭部から毒液を放った。
「カアァーッ!!」
サソランジンは難なく扉を溶かしてしまうと、研究室の中にいた白衣に眼鏡をかけた初老の男性を睨み付ける。
あれが石渡博士か・・・・・・
「石渡博士っ、ネオショッカーに逆らうものは殺すっ!」
サソランジンはそう叫ぶと、再び頭部から毒液を放った。
眼鏡をかけた初老の男性の目の前にあった机があっという間に溶かされ、消滅する。
「うわあっ!」
初老の男性の悲鳴
だが、それを合図にしたかのように現れた人影。
「待てえっ!」
全身が緑色のイナゴをモチーフとした昆虫型改造人間、いや仮面ライダーが、ネオショッカー怪人サソランジンの目の前に姿を現す。
そして、初老の男性に向かって襲いかかろうとするサソランジンを振り払った。
「洋、ヒヤヒヤしたぞ!」
初老の男性はそういって笑うとつけ髭とカツラ、そして眼鏡を取る。
それは石渡博士に変装していた志度敬太郎だったのだ。
「とうとう罠に落ちたな、怪人!、ネオショッカーなんかに石渡博士を殺させたりなんかしないぞ!」
「とうっ!」
仮面ライダーはサソランジンと組み合い、これを投げ飛ばした。
「カアァーッ!!」
サソランジンは悲鳴をあげながらも、直ぐに立ち上がり、仮面ライダーに飛びかかろうとするが
「やあっ!」
仮面ライダーのパンチに退く。
そして仮面ライダーはネオショッカー怪人サソランジンと戦う中で、その首にかかったペンダントに気がつく。
そして志度敬太郎に向かって叫んだ。
「会長、じゃあ、これが!」
仮面ライダーは志度敬太郎に向かって大声をあげる。
「そうだ、洋っ!、恐らくそのペンダントこそがこの怪人を制御するコントロール装置に違いない。ふっ、プロフェッサー・ドクめ、お前の考えてることなんか、こっちはお見通しさ!」
志度敬太郎は元々ネオショッカーの科学者であり、そのライバルでもあったプロフェッサー・ドクの研究や論理展開なども知悉していた。
「逆にいうと、そのペンダントがあるということは、美也さんが、その意識だけでも取り返す可能性があるということだっ。恐らく彼女は完全な脳改造手術を受けていない!!」
この志度会長の言葉に勇気付けられた仮面ライダーはサソランジンに向かって優位に戦いを進める。
そして仮面ライダーとの戦いに不利を感じたサソランジンは逃げ出すように窓から飛び降りた。
「待てえっ!」
逃げるサソランジンを追う仮面ライダー。
そして、その前に立ちはだかったのは
「ヒャイーッ!」
「ケイーッ!」
「ヒャイーッ!」
仮面ライダーを足止めしようとするネオショッカーの戦闘員アリコマンドたち。
四人ほどの黒づくめの戦闘員たちを、だが仮面ライダーは難なく蹴散らすと
「カアァーッ!」
再び飛びかかってきたサソランジンにすかさずキックを放つ仮面ライダー。
その首にかかるペンダント、いや、制御回路をめかけて仮面ライダーのキックは命中した。
それを、ここから離れたネオショッカー・アジトのモニターで見ていたゼネラルモンスターは
「くそっ!」
思わず舌打ちする。
志度の奴、コントロール装置のことに気づいたのか…
サソランジンはその場にドウッと倒れ、その首にかかっていたペンダントは外れて、少し離れた場所に落ちた。
その場に追っかけで駆けつけた志度敬太郎はペンダント型のコントロール装置を手に取ると
「思った通りだ!」
そう呟く。
そしてペンダント型のコントロール装置を志度敬太郎から手渡された仮面ライダーは
「おのれっ、ネオショッカーめ!」
怒りに我を忘れて、思わずそのペンダント型コントロール装置を地面に向かって叩きつける。
だが、そこで予期せぬことが怒った。
ペンダント型のコントロール装置はその瞬間に爆発したのだ。
スカアーンッ!!
そして、その次の瞬間には
その場に倒れていた醜悪なサソリ型のネオショッカー怪人サソランジンは、みるみるうちに
若く美しい女性、白いワンピースを着た上村美也の姿に変貌していたのだ。
「美也さんっ!」
思わず彼女に駆け寄る仮面ライダーと志度敬太郎。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「じゃあ、美也さん、しっかり掴まっているんだよ」
洋が乗るバイク、いやスカイターボの後部座席に乗る上村美也。
志度ハングライダー・クラブから車で叶みどりが迎えに来ることになっており、志度敬太郎はそれを待とうとしたのだが
直ぐにでもここから立ち去りたいという美也の希望で、先に洋がスカイターボでハングライダー・クラブの方まで急いで行くことにしたのだ。
バイクで山道を走る洋と美也。
だが記憶を取り戻した美也は、洋に掴まりながらも後部座席で
「いやあっー!」
と悲鳴をあげ
「停めて、停めてくださいっ!」
と洋に向かって懇願する。
洋は美也の苦しみを察してスカイターボを停める。
そして
「どうかしたんですか?」
美也を気遣って、洋が声をかける。
「あ、あたしは…、あたしは改造されたんです!、ネオショッカーによって…、自由に操られる改造人間…、あたしは…、もう、家族のところには帰れません」
美也は苦悩を吐き出すかのように言うと、下をうつ向き
「えっ、えっ、えっ、えっ・・・・・」
と透明な涙を流しながら慟哭する。
嗚咽する美也の後ろ姿を見ながら、だが、洋はキッパリと彼女に向かって言った。
「美也さん、それを言うなら、僕もあなたと同じようにネオショッカーによって改造された『改造人間』なんです!」
美也はハッとして振り向く。
「あ、貴方も!」
その美也の瞳をじっと見つめた洋は
「美也さん、僕の姿を見てください!」
そこまで言うと変身ポーズを取り
「変身っ!」
大きく跳躍する。
そして着地した彼の姿は変貌していた。
美也の目の前には
その全身が緑色、だが目は赤い色、手には黒いロンググローブ、足には黒のライターブーツをはいたイナゴをモチーフとする昆虫型改造人間、いや仮面ライダーの姿がそこにいたのだ。
「これが改造された姿です。今の僕は人ならざる改造人間、仮面ライダーです。でも、例え、この身体は改造されたとしても、魂まで奴らに渡したわけではない!」
美也は愕然としながら、仮面ライダーを見つめる。
そんな美也に向かって、青年、筑波洋の心を持つ改造人間である仮面ライダーは
「貴女の魂は、もう、あいつらの物じゃない。貴女は上村美也さんなんだっ!」
力強く美也を励ますために断言した。
「ああっ…」
美也の両目から涙がこぼれ落ちる。
「美也さん、行きましょう!、可也さんが、妹さんが、貴女を待っています!、貴女は例え身体は改造されても、心までネオショッカーに売り渡したわけではない。可也さんだってきっと分かってくれます!」
その仮面ライダーの言葉に勇気づけられた美也は決意を新たに頷く。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
志度ハングライダー・クラブで再会の喜びと共に抱擁しあう美也と妹の可也。
「お姉ちゃん、もう、どこへも行っちゃ嫌よ!」
妹、可也の言葉に、美也も笑顔で
「うんっ、約束する!」
と言い切った。
その美也と可也、二人の様子を見ながら、志度敬太郎、叶みどり、杉村ミチ、野崎ユミの四人も手を取り合って喜ぶ。
筑波洋はネオショッカーの動きが心配だからと仮面ライダーに変身の上、現在は空を飛んで偵察を行っているので、この場にはいない。
「先ずは良かった!」
と志度敬太郎。
「でも、会長、美也さんは…」
ミチが何かいいかけるが、黙った。
美也さんが『ネオショッカーの怪人』である現実は何も変わっていないんじゃないですか?
さすがに、その言葉を発することは出来なかったのだ。
その気持ちはユミも同じだったと見え、言葉こそ出さないものの不安げな表情を見せる。
だが志度敬太郎は落ち着いた表情で、側にいた叶みどりに声をかけた。
「みどりくん、私はこれから緑川博士に国際電話をかけてみるつもりだ。ついては資料、報告書の準備なども進めたいので、また手伝ってほしい」
志度敬太郎のその言葉にみどりは頷くと
「では、会長、ネオショッカー対策会議の方へ美也さんを…」
と、あらためて問いかける。
「ああ、いい機会かもしれない」
志度敬太郎は何事かを再確認するように、みどりに対して、そのように答えた。
ネオショッカー対策会議、それは、かつて世界中を荒らし回ったショッカー、ゲルショッカーという組織に対抗するため、国際社会が共同で設立したアンチショッカー同盟という組織を母体とする特別団体であった。
今、新たなネオショッカー組織が出現し、世界に脅威を与える存在になりつつあることを受け
ネオショッカー対策会議として再編成され、世界各地のネオショッカーとも戦いを続けている。
そのネオショッカー対策会議にある科学部門の主要メンバーの一人が緑川ルリ子博士。
現在ではショッカー関連組織によって改造人間とされた者たちを、元の人間に戻すための研究を続けている。
彼女の父親は緑川弘博士、志度敬太郎のかつての恩師でもあり、既に故人であった。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
一方、ここはネオショッカーのアジトの一つ。
先ほど上村美也がサソランジンに改造された、その場所でもあった。
ここでゼネラルモンスターから今回の顛末についての報告を受けたネオショッカー大首領は、アジト内の特別室にあるネオショッカーのシンボルマークから見える、その赤い巨眼を輝かせて、目の前にいる大幹部を叱責しようとする。
「ゼネラルモンスター、作戦は失敗したようだな!」
と、自らに報告をあげたゼネラルモンスターをとがめようとする大首領だが
ゼネラル・モンスターはニヤリと笑うと
「いえ、大首領、これからです」
と悪びれることもなく、大首領に向かって答える。
「例えリモート・コントロールが切れても、あと数時間もすれば、あの女は再びサソランジンに自動的になります。そうなれば油断しているであろう仮面ライダー、志度敬太郎一味に襲いかかり、一網打尽に片付けることも出来るかと」
ゼネラルモンスターの説明に気を取り直したのか、大首領の声は
「ふむ、ならば期待しているぞ、ゼネラルモンスター!」
そう締め括った。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「くっ、く、苦しいっ!!」
突然、美也が苦しみ出す。
「お姉ちゃん、どうしたの?」
突然の姉の苦しみ方に驚く可也。
「か、可也ちゃん、来ないでっ!、見ないでえっ!!」
美也はそう叫ぶと、いきなり扉を開けて、凄い勢いで部屋から飛び出した。
彼女の両腕は既にネオショッカー怪人サソランジンのものに変わっていた。
恐らくサソランジンの姿に戻るのも間もなくだろう。
そんな醜いサソランジンの姿を可也には見られたくない・・・・・・
私はもう二度と可也には会えない。私は二度とネオショッカーに改造人間を作らせないよう、ゼネラルモンスターを倒すっ!
強い決意と共に走るサソランジンの姿に変わり果てた上村美也。
改造人間である彼女の動きは素早く、俊足であり、その場から姿を消すのもあっという間だった。
「お姉ちゃーん」
不安げに泣き出しそうな顔をする可也。
「いかんっ!」
志度敬太郎は直ぐに行動を起こす。
上村美也の身体はサソランジンに戻ろうとしている。
彼女はそれが分かったからこそ、ここから飛び出していったのだ。
敬太郎は直ぐに偵察に出ている仮面ライダーに無線で連絡を取る。
「洋かっ!、すまん、美也さんがサソランジンの姿に戻りはじめて、そのまま、ここからいなくなってしまったんだ!」
そして仮面ライダーに伝えるだけ伝えた敬太郎は目の前の三人の女性たちに向かって言う。
「みどりくん、ミチくん、ユミくん、行くぞ!」
その敬太郎の言葉に三人の女性は応える。
「はいっ!」
「ええっ!」
「会長、行きましょう!」
だが、敬太郎とみどり、ミチ、ユミの三人に向かって、可也が大きな声で言った。
「おじさんっ、お姉さんたち、あたしも連れてってください!」
その可也の言葉に敬太郎は驚きの表情を見せる。
「可也ちゃん、君は…」
だが、まだ小学生でしかない可也は、自分よりもずっと歳上の敬太郎の瞳をじっと見つめながら、これ以上ないくらい、しっかりと、こう答える。
「お姉ちゃんが苦しんでいたのは、あたしだって分かります。だからこそ行きたいんです!」
その可也に向かって、敬太郎は愛情をこめて問いかける。
「可也ちゃん、もしかしたら君は見るのもおぞましいものを見せられるごとになるかもしれないよ?」
だが可也は強情だった。
「お姉ちゃんがそれで苦しんでいるのに!、あたしだって何かしてあげたいのっ!」
その可也の言葉で敬太郎は決心した。
「分かったよ可也ちゃん、一緒に行こう。覚悟はいいね!」
その敬太郎の言葉に、可也は顔を真っ赤にしながら
「はいっ!」
と頷いた。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ここはネオショッカー・アジトの手前にある山の麓である。
コントロール装置はネオショッカー怪人サソランジンの能力増幅装置の役割も果たしており、今のサソランジンは汎用戦闘員であるアリコマンドよりも多少は強い程度でしかなかった上、ネオショッカーからの強力な洗脳圧力と戦い続けながらここまでやって来たため、体力も著しく消耗していた。
それでも自分はやらなければいけないのだ!
もう、妹の可也、いや、お父さん、お母さんのところへもこんな体で二度と帰ることは出来ない。
ならば、自分をこんな体に改造したネオショッカーの指導者ゼネラルモンスターを自分の手で倒し、自分と同じような悲劇を起こさせないようにするしかない!
十分以上に思い詰めたネオショッカー怪人サソランジンの姿に変わり果てた上村美也は、自分の目の前にゼネラルモンスターが配下のアリコマンドたちと共に現れたのを見る。
「サソランジンっ、こちらから出迎えてやったぞ!」
「ゼネラルモンスター!」
怪人の姿をした上村美也は叫んだ。
「私はサソランジンなんかじゃない!、たとえ姿はこんなでも、私には上村美也という名前がちゃんとあるんだ!」
その美也の叫びをゼネラルモンスターはせせら笑う。
「サソランジン、どうやら今回のプロジェクトは失敗だったようだな」
そのゼネラルモンスターのセリフに、サソランジンの姿をした上村美也は、更に怒りをつのらせる。
「私はもう、お前たちに二度と改造人間を作らせないために、刺し違えてもお前を倒す!」
そんなサソランジンの姿をした上村美也に向かって、ゼネラルモンスターは冷酷にいい放つ。
「サソランジン、お前は我がネオショッカーにとって、今や出来損ないの裏切者に過ぎない。死ね!」
そして右手を上にあげてアリコマンドたちに合図する。
十人ほどのアリコマンドたちが一斉にボウガンを構え、サソランジンの姿をした上村美也を狙っていた。
「飛び道具相手では勝負になるまい」
ゼネラルモンスターは嘲笑するかのように、サソランジンの姿をした上村美也に向かって、いわば最後通告を告げた。
たが
「なめるなああいっ!!」
サソランジンの姿をした上村美也は、自らを狙うアリコマンドたちのボウガンをものともせず、その左腕からゼネラルモンスターに向かって毒針を放ったのだ。
ゼネラルモンスターさえ倒せれば…
美也の一念だったが
「ヒャイーッ!」
「ヒャイーッ!」
その毒針は、ゼネラルモンスターの前に盾代わりに立った二人のアリコマンドの心臓に命中しただけだった。
それを無表情のまま確認したゼネラルモンスターは、そのままボウガンを構えたアリコマンドたちに命令を下した。
「撃て!」
「ヒャイーッ!」
「ヒャイーッ!」
「ケイーッ!」
十人ほどのアリコマンドたちが一斉にボウガンから改造人間をも貫く事が出来るだけの強力さを持った毒矢をサソランジンの姿をした上村美也に向かって放った。
こんなところで負けられない!
自分めがけて放たれた毒矢に向けて、サソランジンの姿をした上村美也は、その頭部から溶解液を放つ。
ブッシューーー
何本かの矢はそれで溶かすことによって防げたものの、残念ながら三本ほどの毒矢がサソランジンの姿をした上村美也に命中した。
その装甲に包まれているはずの体が毒矢がよって貫かれる。
「あっ、ぐうっ!」
サソランジンの姿をした美也は崩れ落ちるようにしてその場にドウッと倒れた。
そして、どういうわけかサソランジンの姿から、人間態である上村美也の姿になってしまったのだ。
まるで力尽きたかのように。
「ふっ、これで終わりだサソランジン」
ゼネラルモンスターはそう言うと、再び右手を上にあげてアリコマンドたちに合図する。
アリコマンドたちは再びボウガンを構え直す。
これだけの人数のアリコマンドが一斉にボウガンから矢を放てば、確実に上村美也は死ぬ。
ゼネラルモンスターは冷酷に宣告した。
「撃て!」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「待てえっ」
突然、空から仮面ライダーの大きな声。
志度敬太郎から連絡を受けた仮面ライダーは、改造人間として、先に記憶にインプットしたサソランジンこと上村美也の気配を頼りに、ここを探し当ててやって来たのだ。
「仮面ライダーっ!」
さすがのゼネラルモンスターも、突然現れた仮面ライダーの姿に動揺を隠せない。
そして
空から降りてきた仮面ライダーはアリコマンドたちが放ったボウガンからの毒矢をあっという間に全部払いのける。
「お前たちに美也さんは殺させないっ!」
地上に降り立った仮面ライダーは毒矢に傷つき、倒れている上村美也の前で、まるで彼女を庇うようにして仁王立ちする。
そこへ
プップッ、プーッ!
一台の車が走ってクラクションを鳴らしながら、勢いよくこの場に入ってくる。
志度ハングライダー・クラブの車ではないか!
仮面ライダーはすぐに気がついた。
そして、その車の中から大きな声で
「洋ーいっ!、来たぞ~!!」
という志度敬太郎の大きな叫び声が聞こえてくる。
当然のごとく、運転しているのは叶みどりである。
「会長、どうしてここへ!」
思わず振り向く仮面ライダー。
ギュワンッ!!
車はすぐに仮面ライダーと、倒れている上村美也の側に猛烈な勢いで突っ込んでくると急停車した。
直ぐに車から志度敬太郎と、二人の若い女性、そして小学生くらいの女の子が一目散に降りてくる。
その小学生くらいの女の子を見て驚く仮面ライダー。
「可也ちゃんっ!、まさか?」
だが、勿論、見間違いではない。
今、ここに倒れている上村美也の妹で、小学生の少女可也が、志度ハングライダー・クラブの皆と一緒にここまで来たのだ。
直ぐに四人はこちらまで走ってくる。
「洋さーん!」
呼びかけるユミの声。
「洋さんっ、美也さんを迎えに来たのよ!」
これはミチの声である。
「お姉ちゃーん!!」
可也は傷つき倒れている自分の姉の姿を見て、思わず泣きながら叫んでいた。
そんな三人に志度敬太郎が言って聞かせる。
「みんな、話は後。とにかく怪我をしている美也さんの容態が危険だ。早くここから連れたそう!!」
「会長っ!」
とユミ。
「分かったわ!!」
とミチ。
志度敬太郎とユミ、ミチの三人は、あっという間に傷つき、動けなくなっている美也の体を担ぐと車の後部座席に乗せようとする。
志度敬太郎は瀕死の美也を抱え起こしながら
「美也さん、しっかりしろ!、ここで死んじゃ駄目だ。それじゃ、何もならない。ただの犬死だ!」
そう言って彼女を勇気づける。
「わ、私は…」
そう呟いたきり、美也は気を失ってしまった。
その様子を見て、怒りに震えるゼネラルモンスターはアリコマンドたちに指令する。
「何をしている!、さっさと邪魔なあいつらを射殺せえっ!!」
そのゼネラルモンスターの激にアリコマンドたちは一斉に
「ヒャイーッ!!」
と奇声をあげると、ボウガンを構え、毒矢を射ようとするのだが
「させるかあっ!!」
仮面ライダーは大きく跳躍し、そんなアリコマンドたち目掛けてキックの体勢で突っ込んでくる。
「たあああああっーーー!!」
あっという間にボウガンを構えていたアリコマンドたちを蹴散らす仮面ライダー。
「何をしている!、怯むな!」
いきり立つゼネラルモンスターはアリコマンドたちに向かってそう叫ぶのだが、何しろ仮面ライダーとは実力が違いすぎる。
アリコマンドたちは仮面ライダーによって蹴散らされていくばかり。
その間に志度敬太郎、ユミ、可也の三人は傷つき、気を失った美也を車の後部座席にどうやら乗せる。
車の助手席にはミチが座った。
傷つき意識を失った美也の右側に志度敬太郎が座り、左側には妹の可也、そして、その可也を横でユミがしっかりと支える。
可也は傷つき、気を失っている姉の美也の手をぎゅっと掴まえて呟く。
「お姉ちゃん…、死んじゃやだ…」
それを確認した運転席の叶みどりは後部座席で美也の様子を診る志度敬太郎に向かって確認する。
「会長、美也さんの介抱、お願いします。ちょっと荒っぽく行きますので!」
そのみどりの言葉に志度敬太郎は頷く。
「ああ、分かってる」
その敬太郎の返事を確認したみどりは、今度は助手席のミチに向かって言う。
「ミチ、ナビをお願い。とにかく、ここから早く脱出しないと!」
そのみどりの言葉にミチはウインクで応える。
「任しといて!」
その言葉を聞くなり、みどりはいきなり車を急発進させる。
ギュッ、ギュッ、ギュワンッ!!!
車は舗装されていない悪路を勢いよく発進した。
ゼネラルモンスターはアリコマンドたちに向かって叫ぶ。
「ええいっ!、奴らを逃がすな!!」
「ヒャイーッ!」
「ケイーッ!」
「ヒャイーッ、」
「ケイーッ!」
何人かのアリコマンドが車に向かって飛びかかるのだが
ギュッーウンッ!!
アクセル全開っ!、急ハンドルっ!
みどりの荒っぽい運転は、飛びかかって来ようとするアリコマンドたちを寄せ付けない。
まるで乱気流のように走る車。
そして
「アリコマンドっ!、お前らの相手はこの俺だ!」
仮面ライダーが走り去ろうとする車を守りながら、アリコマンドたちを次々と投げ飛ばす。
「ケイーッ!」
「ヒャイーッ!」
投げ飛ばされ、その場に倒れていくアリコマンドたち。
そして、みどりが運転する車がこの場から走り去っていくのを見届けた仮面ライダーは
「ゼネラルモンスター、今は勝負を預ける!」
そう言って
「とうっ!」
とセーリングジャンプにより宙を舞った。
仮面ライダー、別名スカイライダーは空を飛ぶことが出来る。
ゼネラルモンスターとアリコマンドたちには、それを追いかける術はなかった。
「くっそおっ!、仮面ライダーめ、今に見ろ!」
ゼネラルモンスターは忌々しそうに、そう言い捨てると
「引き上げるぞ!」
配下であるアリコマンドたちに、そう命じた。
「ケイーッ!」
思考能力をオミットされたアリコマンドたちは組織の指導者の命令に対しては、何も考えずに、ただ、ただ言われた通りに、忠実に従うのみ。
ゼネラルモンスターを筆頭とするネオショッカー軍団はその場から引き上げていった。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「気がついたようだね、美也さん」
ここは志度ハンググライダークラブの地下にある秘密のメンテナンス室である。
秘密と言っても、それは外部の人間に対してだけの話で、無論、関係者である志度敬太郎、筑波洋、叶みどり、野崎ユミ、杉村ミチの四人は当然のごとく、この部屋の存在は知っている。
五人の中では『手術室』と通称されていた。
何故なら、戦いにより傷つくこともある仮面ライダーのメンテナンス、修復作業もこの部屋で行われていたからだ。
ただ、外部の人間であった上村美也、そして、この部屋の外で姉を待っている可也の姉妹にとっては、いささか別の話だったかもしれない。
いずれにせよ、今、この部屋には志度敬太郎と、助手の叶みどり、そして手術台に横たわる上村美也の三人しかいない。
改造人間のメンテナンスが出来る技術者は、結局のところ志度敬太郎自身と、その助手である叶みどりしかいないのだ。
美也の妹可也だけではなく、野崎ユミ、杉村ミチ、そして筑波洋でさえも、部屋の外で手術の成功を待っている状態だった。
まあ、筑波洋の場合には、これまでメンテナンスされることはあっても、自分が何かをする機会もなかったわけだが…
「手術は、まあ、成功といえば成功だ。少なくとも美也さん、君の一命は取り留める事が出来た。それと怪人態への変異を司る装置は除去したから、君がサソランジンに突然変身してしまうようなことも、もう、ない」
志度敬太郎の説明に美也は瞳に涙を浮かべて
「わ、私、ゼネラルモンスターを…」
倒して、二度とネオショッカーによる悪の改造人間なんか作らせないようにしたかったのに…
そう呟くように言った美也に、だが志度敬太郎はキッパリ言い聞かせる。
「美也さん、ゼネラルモンスターはネオショッカーの大幹部ではあっても最高責任者じゃないんだ。真のネオショッカー大首領が更にその上にいる。たから、仮に君があの時ゼネラルモンスターを倒していたとしても、ネオショッカーは直ぐに新たな大幹部をたてて、新たな改造人間を作り続けるだろう。だから、あえて言うと意味はないんだ」
「ああっ…」
美也は思わず顔を覆う。
そして気がついた。
自分の両手、両足が拘束具などによって縛られておらず、自由であると言うことに。
そして思わず、手術台に横たわる自分の体をまじまじと見る。
まだ、ところどころ、例えば腕の部分や、腹部など皮膚の上から透けて機械が動作する箇所が見えてしまうところなども分かってしまい、美也は悲しい気持ちになった。
やっぱり自分は人ならざる改造人間のままなんだ…
こんな体になるなら……
「美也さん、手術はまだ、完全ではないんだ。人工皮膚の移植と言うのはそれなりに大変なんでね…」
志度敬太郎が申し訳なさそうに説明する。
「私、もう人間じゃないんですよね…」
美也は泣き出したい気持ちを堪えながら、志度敬太郎に向かって言った。
「ああ、ネオショッカーの改造人間を元の人間にもどす方法は現在存在しない」
志度敬太郎は、あえて残酷な現実を美也に告げた。
「それだけじゃないです」
なおも美也は苦しそうに敬太郎に向かって言う。
「私はネオショッカーの怪人として本田博士を、人を、殺してしまいました。そして自分を改造したゼネラルモンスターにコントロールされてしまった改造人間なんです。もう、家族の、可也のところには戻れません!!」
だが志度敬太郎は、そんな美也に向かって頭を横に振る。
「可也ちゃんは貴女が苦しんでいるなら、自分も何かをしてあげたいと言って、私たちと一緒にあそこまで行ったんだよ」
その志度敬太郎の言葉に、美也は思わず
「えっ?」
と叫んでしまった。
「それだけじゃない」
志度敬太郎は、更に美也に向かって言う。
「可也ちゃんは、あのみどりくんの乱暴な運転で車の中が大揺れだった時にも、ずうっと、貴女の手をぎゅっと力強く握りしめて、こう言っていたんだよ」
お姉ちゃん、死なないで!
お姉ちゃん、死なないで!
お姉ちゃん、死なないで!
「そう言いなからね…」
美也は思わず嗚咽した。
うっ、ううっ!
「可也ちゃんは、あんな小さな子供でも、お姉さんを守るために、気持ちは『ネオショッカーと戦っていた』んだよ」
『か、可也…』
泣きじゃくる美也。
「だから美也さん、貴女は死んじゃ駄目だ」
泣き崩れる美也に言い聞かせる志度敬太郎。
「一つ、ひとつ、教えてください!」
美也は途切れ途切れに志度敬太郎に問いかける。
「美也さん、どうぞ」
志度敬太郎は微笑んだ。
「可也は、私の、サソランジンの、あの醜い姿を見たのでしょうか?」
美也の、この問いかけに対して、志度敬太郎は正直に答える。
「いや、可也ちゃんはサソランジンの姿は結果的に見ていない」
志度敬太郎の、その返事に、美也は
「そう…、良かった…」
と呟くように言った。
「でも可也ちゃんは、美也さん、貴女がサソランジンという怪人に変貌したということは知っているし、それを直視する決心をして、私たちと一緒に車に乗って、あそこまで来たんだ。その可也ちゃんの気持ち、美也さんには分かってほしいと思う」
その志度敬太郎の言葉に、美也は短く
「はい…」
と呟くように答えた。
「これからの事は手術が終わり、十分に傷が癒えてから、私たち、可也ちゃん、そして貴女のお父さんやお母さんなど家族も交えて相談しよう。今はまだ、休む時だ」
そのように穏やかに言う志度敬太郎の言葉に
美也は目に涙を浮かべながら頷いて見せる。
「あと言っておく」
志度敬太郎は考えた末に
「本田博士を殺したのはネオショッカーだ。貴女はその時には上村美也ではなかった。だが、その事を、自らの『罪』のことを思うのであれば」
そこで一旦言葉を切ると
「美也さん、貴女は自分に何が出来るのかを考えて見てほしい。貴女が闇雲に自らの命を断とう、ゼネラルモンスターと刺し違えよう、そのようなことをするのが正解ではない、私はそう思っているんだ。いいね」
美也の瞳をしっかりと見つめて、そう言った。
それに対して美也は
「はいっ!」
あえて言葉に力を込めて敬太郎に返事をする。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「緑川博士、それにしても今回はわざわざスイス・ネオショッカー対策会議の本部から、ご多忙の中、わざわざ日本までお越しいただき、本当にありがとうございました」
志度敬太郎はそう言うと、目の前の銀縁眼鏡をかけた長い髪の女性に向かって、深々と頭を下げた。
その周囲には筑波洋、叶みどり、杉村ミチ、野崎ユミ、そして
上村美也の父、母、そして妹の可也の姿も見える。
一方、敬太郎の言葉を受けた女性はベージュ色のコートに、やや長めのスカート、そしてブーツという姿。
明らかに目の前の志度敬太郎よりも二十歳くらいは年下に見えるのだが、見るものには何か威厳のようなものを感じさせる女性であった。
いかにも科学者といった雰囲気の女性は微笑みながら、志度敬太郎に向かって頷いて見せる。
ここは国際空港の出発ロビー前。
志度博士から連絡を受けたネオショッカー対策会議の主要メンバーであると共に、欧州で博士号を取得し、今ではネオショッカー対策のための研究をしている女性科学者、緑川ルリ子は、隣に立っている上村美也と握手をし
『美也さん、これからよろしくね』
恭しく美也に向かって挨拶する。
上村美也は
難病にかかり、その治療、克服という名目のもと
ネオショッカー対策会議のヨーロッパ本部にしばらく預けられることになったのだ。
志度博士は上村美也に対して言った。
正直、貴女を元の人間に戻せる可能性は少ない。
だが、それでも可能性があるなら、やってみる価値はあるはずだ。
と。
一方で志度敬太郎から連絡を受けたネオショッカー対策会議の方でも
要するにその美也さんという女性は研究材料ということにもなるんですけど、本当にいいんですね
と念を押してきたのだった…
緑川ルリ子は上村美也に対して、あらためて念を押す。
「私たちは既に旧ショッカーの系譜につながる組織の技術について、ある程度の把握、解明は出来ていますが、ネオショッカーについては、まだまだブラックボックスの部分も多く、その意味では美也さんのことを研究出来るのは、正直に言うと、私たちネオショッカー対策会議にとってもメリットはあります。で、美也さんはそれでも構わないのですよね?」
その緑川ルリ子の言葉に対して、美也は力強く
「はいっ!、私でお役に立てるなら」
そう返事をする。
「そして美也さん、貴女は将来的には科学の道に進み、自分と同じようにネオショッカーの犠牲になった人たちを救うための勉強をしたいという」
ルリ子は美也の決意を確かめるように言ったが
「はい、その気持ちに偽りはありません!」
美也はルリ子に向かって力強く返事をするのだった。
そして美也はあらためて決心する。
あの憎いゼネラルモンスターが率いるネオショッカー日本支部は依然として健在であり、こうしている間にも、どのような悪事を行っているかもわからないのだ。
こうしている間にも、誰かが、自分と同じように改造人間に強制的にされているかもしれない…
自分は一人じゃない!
洋さん、仮面ライダーが
志度さんをはじめ、みどりさん、ミチさん、ユミさんが
皆の力で私の命を助けてくれたのだ。
そしてお父さん、お母さん、妹の可也をはじめ、皆の笑顔を守るためにも…
美也は決意を新たにするのであった。
「じゃあ行きましょう、美也さん」
ルリ子は美也の手を取った。