夜…
廊下を歩く一人の少年がいた…
苗木誠だった。
苗木はドアの前で立ち止まった。
ネームプレートには「フジサキ」と書いてあった。
そしてインターホンを押す。
「…誰?」
「苗木だけど」
「あっ、苗木クン…今開けるね」
不二咲がドアを開けて苗木を招き入れた。
「今日もいい?」
「・・・うん」
「不二咲さん、ゴメンね…不二咲さんは本当は男の子で、女の子にしか興味がないっていうのはわかってるんだけど…」
「ううん、いいよ…。苗木クンが喜んでくれるなら僕、ガンバルね…」
2人はベッドの近くに移動した。
いきなり、苗木が不二咲をベッドに押し倒した。両方の手で不二咲の手をつかむ。
「あっ…苗木クン…っ!!」
「不二咲さんっ!!」
そして不二咲の唇を奪う。
「んふっ…んっ…」
ちゅっ…ちゅっ…という音が部屋に小さくこだまする。
「不二咲さん…キス上手くなったよね」
「ンっ…ンぅ…、苗木クンがあんまりするから慣れちゃったんだよぉ…」
「不二咲さんっ…!!」
よくないことをしているというのはわかっているが…このいつやられるかわからないコロシアイ学園で生きていくには…ストレスや不安、孤独感を癒す方法や手段が必要だった。
そのために苗木が選んだのが不二咲と肉体的に触れ合うという選択だった。
舞薗や霧切を誘ってみるというテもあったが…ロクに女の子と付き合ったこともない苗木にとってそれは難易度が高かった…。
そこで不二咲に声をかけてみたのだ。
不二咲は自分の弱さが嫌だった…。
だが、それは苗木も同じだった。憧れの舞薗さやかより手の届く存在である不二咲千尋をターゲットに選んだ時点で…
最初は寂しいというのが主な理由だった。寂しいから仕方なく男である不二咲と触れ合っているのだと心のどこかで言い訳をしていた。だが、不二咲のかわいらしい容姿や態度を見ていると…だんだん不二咲に本気になっていく自分を苗木は感じていた。
苗木が不二咲の制服の中に手を入れ、彼の乳首を軽く指で撫でる。
「アッ…!!」
不二咲の口から吐息が漏れた。
「不二咲さん、本当に可愛いね、男だとわかっていても夢中になっちゃいそう」
「んっ…苗木クンの意地悪っ…!!」
不二咲が悶えた…。そして苗木の上着をぎゅっと掴む…。
「本当に可愛いっ!!抱きしめてもいい?」
「い…いいよ…」
「本当に可愛いね…本物の女の子より可愛いかも…」
「や、やめてよ…」
不二咲は複雑な気分だった。
親友の苗木がそう言ってくれるのは嬉しい。
だけど、不二咲が本当になりたい自分とするのは大和田のような男らしい男…。
そんなことを言われても…そう思いつつ…苗木の腕のぬくもりに誘惑に負けてしまいそうだ…。
苗木クンがこうして抱きしめてくれるなら…このままでもいいかもしれない…と。
苗木も同じだった。
だが
あくまで触れ合うだけだ…性行為はしない…。
苗木はある程度不二咲を愛撫すると最後にまたキスをして、彼を解放した。
不二咲はしばらく呆けた顔でベッドに横たわっていた…。
「ありがとうね、不二咲さん、また来るね」
「うん…またするから、…僕のこと見捨てないでね…苗木クン」
「み、見捨てるなんて…!!そんなことしないよ!!絶対にキミのことを守るから…早くここから脱出しようね」
「ありがとう、苗木クン…」
「じゃあね、みんなにバレないように早めに部屋に戻るよ」
「うん、気を付けてね」
不二咲と別れて何食わぬ顔で部屋に戻る苗木…。
自分の弱さとおそらくあまりやりたくないであろう行為を不二咲にさせている自分に罪悪感を感じながら眠りにつく苗木…。
ボクは悪くないんだ…ボクに不二咲さんを抱かせるような不安で孤独な精神状態にしたモノクマが悪い…あいつが悪い…そう言い訳をしながら眠りについた…。
「オマエラーッ!朝ですよーーっ!!」
モノクマの声で目が覚める。
そして朝の朝食会…
「おはよう苗木クン!!」
「おはよー!苗木!!」
「おはようございます。苗木クン」
みんなにおはようの挨拶をされながら気まずそうに笑いながら席につく苗木。
不二咲もいた。
なんとなく目を合わせずらい…
そして朝食が終わり
…昼が終わり
…また夕方になった…。
今日も殺されずにすんだし…誰も死ななかった…そう思いホッすると同時に無事、明日を迎えられるかどうか…そう不安になる。
そして、また不二咲に声をかけてしまう。
「不二咲さん…きょ、今日の夜もいいかな…?」
「うん…いいよ、みんなにバレないようにきてね…?」
「う、うん…ありがとう」
また今夜も…不二咲千尋の部屋のチャイムが鳴るのだった…。