※この作品はR-18です。

ANOTHER WORLD『レイヤー・ゼロ』   作:坂本太郎

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 堅書 直実(かたがき なおみ)(2033年)
 勘解由小路 三鈴(かでのこうじ みすず)(猫好きの同級生)(2033年)


第六話:絶対零度のシェルター(2033年)

(――意識の底、絶対零度の暗闇のなかで、僕の心臓は緩やかにそのテンポを落としていた。

大学の講義で聞いた、あの「脳死したネズミの復活実験」。量子計算によってシミュレートした精神データを逆ハッキングの形で流し込み、機能を完全復活させるという奇跡の数式。それだけを盲信し、京斗大学の千古恒久教授の研究室で死に物狂いで脳科学と『アルタラ』のシステムを貪り食った日々。

すべては、あの宇治川の夜、僕の手の手前で魂をハッキングし去られてしまった一行瑠璃を現実(リアル)の世界に引き戻すため。

だけど、現実の壁はあまりにも冷たく、厚かった)

 

2033年、冬。現実世界の堅書直実は、独学で構築したサルベージ機構の演算を走らせるため、京都の片隅にある築古のボロアパートに引きこもっていた。

 

暖房器具も満足にない、底冷えのする四畳半の部屋。机の上には膨大な脳科学の論文、数式が書かれたノート、そして怪しく駆動する自作の演算端末だけが転がっている。

 

限界を超えた三日三晩の徹夜の果てに、直実はキーボードに指を置いたまま、机に突っ伏して意識を失いかけていた。

 

(暗い……冷たい……。あの日、僕の手が届かなかったから。僕が、瑠璃を――)

 

直実の凍てつきかけた脳裏に、あの宇治川の鮮烈な落雷の光がリフレインする。瑠璃の身体を焼き尽くした衝撃波と、病院のモニターが鳴らす無機質な電子音。

『はい。……やってやりました!』

そう言って図書準備室で胸を張った彼女の瑞々しい温もりはどこへ行ってしまったのだろう。絶望の寒さに心が完全に破壊され、このまま孤独な研究の果てに凍死しようとしていた、その瞬間。

 

「……堅書くん? 入るよ?」

 

カチカチに凍りついたドアを開けて入ってきたのは、かつて高校時代に図書委員を共に務め、直実と、そして瑠璃も含めた3人で淫らな秘密(第三話・第五話)を共有した親友――勘解由小路三鈴だった。最近大学に全く顔を出さない直実を心配してやってきた彼女の目に飛び込んできたのは、机に突っ伏したまま、凍えるような寒さの中でピクリとも動かず意識を失っている直実の姿だった。

 

「嘘……っ、体、冷たすぎる……! 堅書くん、しっかりして!」

 

頬を叩いても反応がない。このままでは凍死してしまう――。

焦った三鈴は、部屋の隅にある薄い布団を引っ張り出すと、直実をそこへ引きずり込んだ。しかし、部屋全体の空気が氷点下に近く、布団だけでは全く体温が上がらない。

 

(このままじゃダメ……。私の体温を直接移さなきゃ……っ!)

 

三鈴は迷わなかった。高校時代、瑠璃と一緒に3人で直実のモノをしゃぶり、ドロドロに交わり合ったあの頃の熱い記憶が脳裏をよぎる。彼女は凍える指先で自らのコートを脱ぎ捨て、ニットも、スカートも、下着のすべてを剥ぎ取って完全な素肌になった。そして、直実の衣服もすべて素早く脱がせ、冷え切った彼の細い肉体を、自身の裸体で正面から強く、強く抱きしめながら布団に潜り込んだ。

 

「ん……っ、冷た……。がんばれ、堅書くん、死んじゃダメ……っ」

 

絶対零度の密室のなか、2人の剥き出しの肌がぴったりと密着する。

三鈴の豊かな胸の柔らかさと、お腹、太ももの温もりが、じわじわと直実の凍てついた肉体を侵食していく。やがて、彼女の心臓の鼓動と、愛おしい男を慈しむような優しい手のぬくもりによって、直実の意識がゆっくりと覚醒を始めた。

 

「……あ、れ……。僕、は……」

「あ……よかった、気がついた……!」

 

目を開けた直実の視界に飛び込んできたのは、至近距離にある三鈴の潤んだ瞳と、自分を包み込んでいる尋常ではない「女の子の肌の熱」だった。お互いの下腹部や胸が擦れ合い、直実の頭は一気にパニックになる。

 

「三鈴、なんで、裸……っ!?」

「しょうがないでしょ! 堅書くんが凍え死にそうだったんだから……っ。でも、よかった……本当に、よかった……っ」

 

安堵からポロポロと涙を流す三鈴の姿と、布団の中で密着する素肌の官能。

直実は、瑠璃を救うという過酷な使命の重圧と、孤独な極寒の生活の中で、心が完全に限界を迎えていた。かつて高校時代に何度も肌を重ね、3Pまで行った気心の知れた三鈴が差し出してくれた圧倒的な「生」の温もりと、優しさに、彼の防壁は簡単に崩壊してしまう。

 

「……温かい、よ……。ありがとう……っ」

直実は本能のままに三鈴の細い肩を抱き寄せ、その温かい唇を強く奪った。

 

部屋の寒さとは裏腹に、布団の中の熱量は一気に臨界点を突破する。

三鈴もまた、あの日以来ずっと直実を狂おしく想っていた。衣服をすべて脱ぎ捨てた2人の肉体は、凍えた魂を融かし合うように、激しく狂おしい抱擁のセックスへと雪崩れ込んでいった――。

 

彼女の唇が直実の唇と重なる。最初は温もりを確かめるような、そっと押し当てるだけの口づけだった。しかし直実はすぐに、その温かさを求めて舌を差し入れた。凍えた神経が熱い舌に触れた瞬間、再びあの落雷の記憶が脳内をパチパチと駆け巡る。しかしそれは恐怖ではなく、強烈な快感のトリガーへと変換されていく。

 

「ん……ふぅ……っ」

 

三鈴の甘い吐息が口腔内で溶ける。直実の舌は貪るように彼女の舌を求め、唾液を交換し合う。冷え切っていた唇が燃えるように熱くなっていく。その間にも、彼女の手は直実の冷たい皮膚を優しく、しかし執拗に撫で回していた。それはまるで、かつて図書準備室で直実を甘やかした時のように、安心させるための優しい愛撫。

 

「堅書くん……もっと、温かくなるよ……」

 

三鈴の囁きが耳朶を撫でる。直実は夢中で彼女の胸に顔を埋めた。柔らかく弾力のある双丘に顔を挟まれ、鼻腔に甘い匂いが満ちる。心臓の鼓動が直実の頬を打ち、生命そのものを伝えているようだった。

 

「君の……体……熱すぎる……」

 

呟きながらも、直実の手は勝手に動き、彼女の腰を掴み、さらに強く自身の冷えた体に押し付けた。彼女の脚が直実の脚に絡みつき、二人の肉体は隙間なく密着する。布団の中は外の極寒とは無縁の蒸し暑さに満ち始めていた。

 

直実は顔を上げ、彼女の潤んだ瞳を間近で見た。瑠璃とは違う、けれど確かに生きている瞳。その中に映る自分が、あまりにも情けない顔をしていることに気づく。涙が勝手に溢れそうになる。これは安心なのか、罪悪感なのか、それともただの生理的な反応なのか。

 

「ごめん……君に……こんなことさせて……」

 

「謝らないで」

 

三鈴は直実の額に口づけを落とすと、彼の冷たいペニスをそっと握った。凍りついていたはずのそれは、彼女の体温と愛情でゆっくりと、けれど確実に芯を持ち始めている。

 

「私が……したいの。堅書くんのこと、ずっと……こうしたかったから」

 

彼女の手が上下に動き始める。直実のすべてを慈しむような優しいタッチから、だんだんと強弱をつけた大胆な扱きへと変化していく。その度に直実の背筋を快感が駆け上がり、腰がビクビクと震える。

 

「く……うぅ……っ」

 

「堅書くんのここ……すごく熱くなってきた……嬉しい……」

 

三鈴の嬉しそうな声が、さらに直実の興奮を煽る。彼女は直実の胸板に顔を寄せ、乳首に舌を這わせた。氷のように冷たかった突起が、彼女の唾液で濡れ、ピンと尖る。

 

「あ……んっ……ダメだ……僕…おかしくなりそうだ……」

 

「おかしくなっていいんだよ。私が全部、受け止めてあげるから」

 

三鈴は直実の下半身に移動し、完全に勃ち上がったペニスに顔を近づける。そして躊躇なく、その熱い先端を口に含んだ。生暖かい粘膜が亀頭を包み込み、舌がウロコのように這い回る。ぬるぬる とした感触が直実の脳を灼く。

 

「あああっ! ダメだ……っ! こんなの……っ!」

 

瑠璃以外の口の中にあるという事実が、直実の理性をギリギリで引き裂こうとする。しかし、三鈴の舌技は巧みで、かつて3Pの時にも見せた細やかな動きで裏筋を舐め上げ、鈴口を吸い上げる。罪悪感よりも、今この瞬間の快楽が勝っていく。

 

「んっ……ふぅ……堅書くんのおちんちん……美味しい……もっと……出して……」

 

彼女の言葉に、直実の理性の最後の糸がぷつりと切れた。彼は彼女の頭を両手で掴むと、無我夢中で腰を突き出した。彼女の口を犯すように、激しく抽送を繰り返す。

 

「ごめん……っ! 君の口の中に……出る……っ!」

 

どくん、と脈打ち、直実は彼女の口内に大量の精液をぶちまけた。脳が焼き切れるような快感と共に、意識がホワイトアウトする。しかし三鈴はそれを嫌がらず、嬉しそうに嚥下していく。

 

「んく……ん…いっぱい……出たね……」

 

射精が終わった後も、彼女の手は直実のペニスを優しく包み込み、慈しむように揉みほぐす。一度果てても収まらない情欲が、再び直実の体を火照らせる。

 

「君も……温めてあげたい……」

 

直実は三鈴を仰向けに押し倒すと、濡れそぼった秘部に指を這わせた。そこはすでに熱く潤んでおり、直実を待ち侘びているかのようにひくついている。

 

「あん……っ! 堅書くん……そこ……っ」

 

「君のなかも……すごく熱い……。僕が全部冷やしてあげる……」

 

直実は自分の冷たい指を彼女の蜜壺に沈み込ませた。熱い膣壁が指に絡みつき、快感が指先から全身に伝わってくる。彼女の中は燃えるように熱く、直実の冷えた体との温度差がさらに快感を増幅させる。

 

「ああっ……堅書くんの指……冷たくて気持ちいい……っ!」

 

三鈴の嬌声が、直実の罪悪感を麻痺させていく。直実は指を増やし、彼女が感じる場所を執拗に責め続ける。彼女の腰が浮き上がり、白い喉を反らせて絶頂が近いことを告げる。

 

「ダメ……っ! もう……イッちゃう……堅書くんの指で……イく……っ!」

 

びくんびくんと彼女の身体が激しく痙攣する。直実の指を強く締め付けながら、彼女は快楽の波に飲まれていった。絶頂の余韻で朦朧とする三鈴を見下ろしながら、直実は再び硬度を取り戻した己のペニスを、彼女の濡れた秘部にあてがった。

 

「挿れるよ……」

 

「うん……来て……堅書くんの……私の中に……全部……」

 

直実がゆっくりと腰を沈めていく。彼女の熱い膣が、彼を歓迎するように包み込む。温かさと柔らかさが直実を飲み込み、全身が融解していくような錯覚に陥る。

 

「ああ……っ! すごい……温かい……っ」

 

「んんっ……! 堅書くんのが……奥まで……っ!」

 

根元まで深く繋がり、二人は抱き合ったまましばらく動きを止めた。互いの体温を分け合い、鼓動を一つにするように。しかしすぐに、直実は三鈴の細い腰を掴み、緩やかなピストン運動を開始した。

 

「動くよ……」

 

「あんっ……! いいよ……っと……激しくして……っ!」

 

彼女の要求に応え、直実は抽送の速度を上げていく。ぬるぬる とした秘部がペニスを締め付け、その度に新たな快感が生まれる。冷えていた直実の体は、いつの間にか彼女と同じくらい熱くなっていた。

 

「君のなかも……すごく熱くて……僕のほうが溶けそうだ……」

 

「溶けちゃえばいい……っ! 堅書くんの全部……私の中に……っ!」

 

三鈴の言葉に後押しされるように、直実はさらに激しく腰を打ち付ける。ぱちゅん、ぱちゅんと卑猥な水音が布団の中で響き渡り、二人の汗と体液が混ざり合っていく。

 

「ああっ……! やっぱりダメだ……君のなかも気持ちよすぎる……っ!」

 

直実の目から、とうとう涙が溢れ出した。それは快感のあまりか、罪悪感のあまりか、あるいはその両方か。それでも腰の動きは止まらず、彼女を突き上げ続けた。

 

「泣かないで……堅書くん……。今は……私だけを見て……っ!」

 

三鈴が直実の首に腕を回し、深く口づけてくる。舌を絡め合いながら、直実は絶頂に向けてラストスパートをかけた。彼女の膣内が痙攣し始め、限界が近いことを知らせる。

 

「出る……っ! 君のなかに……全部出す……っ!」

 

「きて……っ! 私のなかで……果てて……っ!」

 

二人の動きがシンクロし、同時に絶頂を迎えた。直実は彼女の奥深くで果て、大量の精液を注ぎ込む。彼女の膣はそれを搾り取るように収縮し、最後の一滴まで飲み干しようとする。二人は繋がったまま、布団の中で互いの体温を確かめ合いながら、激しい呼吸を繰り返した。

 

「……はぁ、はぁ、っ……。堅書、くん……なか、すっごく、熱かった……っ」

「……ごめん。僕、どうかしてた……。君に、こんな……っ」

 

布団の中は、激しいピストンによって2人が流した汗と、お互いの秘部から溢れ出た愛液が混ざり合い、濃厚な熱気に満たされていた。直実が三鈴の奥深くに何度もブチ撒けた中出し精液のせいで、彼女の太ももの内側は白くドロドロに汚れている。

 

直実は我に返り、病院で眠る瑠璃への誓いを裏切ってしまったという凄まじい絶望感に顔を覆った。

しかし、三鈴は、そんな直実の震える身体を、再び裸のまま後ろから優しく包み込んだ。

 

「謝らないで、堅書くん。私がしたくて、したんだから……。それに、堅書くんの体、もうすっかりポカポカだよ?」

彼女はお腹を直実の背中にぴったりと押し当て、クスクスと愛おしそうに微笑んだ。

 

彼女にとっては、直実が誰を想って戦っていようと関係なかった。今この瞬間、凍えそうな世界の中で、大好きな彼の命を繋ぎ止め、その最初で最後の「男の熱」を自分のなかに全て注いでもらえたことだけで、十分に満たされていたのだ。

 

「……風邪、ひかないように、今日はこのまま一緒に寝よ?」

 

翌朝。少しだけ暖かくなった光が差し込むアパートの部屋で、三鈴は身支度を整えていた。その腕には、大学の敷地で行き倒れそうになっていたところを直実が拾い、彼が引きこもるにあたって三鈴が預かって連れ帰ることになった黒猫の『ヤタ』が静かに抱かれていた。

 

「この子は私がちゃんと連れて帰って育てるから。堅書くんは、安心して瑠璃ちゃんを助けるための研究、頑張りなよ」

 

ヤタが「にゃあ」と小さく鳴き、三鈴は悪戯っぽく微笑んでアパートを後にした。

直実は何も言えず、けれど彼女の身体が残していった確かな温もりを背中に感じながら、再び孤独な量子計算のレイヤーへと戻っていくのだった。

 

(第六話・完)




第六話までお読みいただき、本当にありがとうございました!

今回は2033年、瑠璃を救うために極寒の四畳半で命を削る大人直実の絶望と執念、そして限界を迎えた彼を文字通り全身の体温と愛で救い出した三鈴との、切なくも濃密な一夜を描かせていただきました。

さて、この「第六話」のシーン、そして物語全体を通して、ひとつ大きな独自の考察・解釈を組み込んでおります。

公式スピンオフアニメ『ANOTHER WORLD』において、ヤタ(黒猫)を連れて帰った「名も無き茶髪の女性」(CV:黒沢ともよさん)。

作中では詳細が語られていない彼女の正体ですが、当作では「あの女性こそが、かつて直実や瑠璃と深すぎる秘密を共有した勘解由小路三鈴である」と(少々無理矢理ではありますが!)解釈・設定して物語を構築しております。

高校時代に直実と瑠璃の間に立ち、あの忘れられない時間を共にした彼女だからこそ担える役割。そして2033年、孤独と絶望の中で凍死しかけていた直実の命を繋ぎ止め、彼の相棒であったヤタを引き取っていく……という因果の糸を描きたく、このようなIF設定・解釈を取り入れさせていただきました。黒沢ともよさんのあの声で脳内再生しながらお楽しみいただけていれば幸いです。

三鈴が残していった熱と温もりを胸に、直実の狂おしいサルベージ計画はここからいよいよ本格動行していきます。

壊れた世界を修復するための狂おしい計画と、過去の瑞々しい記憶がどう交錯していくのか、引き続き見守っていただければ嬉しく思います!
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