※この作品はR-18です。

退役軍人のヒーロー生活   作:山門門山

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6.講義1限

第三話 爆発物講義

 

 講義室。

 

 ヴァンデスは教壇の前に立ち、集まったヒーローたちと捜査関係者を眺めていた。

 

「さて」

 

 手元の資料を閉じる。

 

「まず最初に、今日の講義で使う教材を配る」

 

 ヴァンデスが指を鳴らす。

 

 後方に用意されていた箱が運び込まれる。

 

「一人一個。前から順番に取りに来い」

 

 ヒーローたちは顔を見合わせながら、箱から教材を受け取っていく。

 

「これ……爆弾?」

 

「訓練用?」

 

「本物じゃないよね?」

 

 ざわざわとした声が広がる。

 

 ヴァンデスは腕を組んだまま待っていた。

 

 全員に行き渡ったところで、ようやく口を開く。

 

「今日の一つ目の目標は――」

 

 教壇の上に置かれた同型の教材を見る。

 

「こいつを解体することだ」

 

「……」

 

 空気が少し変わった。

 

「ただし、馬鹿みたいに力任せに弄るな。構造を理解してから触れろ」

 

 ヴァンデスは教材を手に取る。

 

 外見上の特徴。

 

 内部にある各部品の役割。

 

 起爆に至るまでの基本的な考え方。

 

 実物を示しながら、専門家らしい口調で淡々と説明していく。

 

 先ほどまで眠そうだったヒーローたちも、次第に真剣な顔になっていく。

 

 ジェシカも教材を覗き込みながら、必死にメモを取っていた。

 

「いいか」

 

 ヴァンデスが全員を見渡す。

 

「爆発物は見た目だけで判断するな」

 

 そこで――。

 

 講義室の外から、大きな音が響いた。

 

 ドンッ!!

 

「――っ!?」

 

 窓の向こう。

 

 安全な距離を取った実演スペースから、黒い煙が立ち上っている。

 

 ヴァンデスが先ほど説明したものと同型。

 

 ただし、講義用に渡したものよりも強力なものだ。

 

 その爆発音に、何人かのヒーローが思わず身を引いた。

 

「えっ……」

 

「今の、同じ形だったよな?」

 

「……あれと同じ?」

 

 手元の教材を見る。

 

 そして爆発したものを見る。

 

 明らかに違う。

 

 ジェシカも自分の手元の教材を見た。

 

「……これ、結構危ないんじゃ?」

 

 ヒーローの一人が距離を取る。

 

 それを見たヴァンデスは、ため息を吐いた。

 

「おいおい」

 

 呆れたように全員を見る。

 

「さっきまで普通に持ってただろ」

 

「いや、だって今の爆発……」

 

「そうだな」

 

 ヴァンデスは窓の外を見る。

 

「だから勉強してるんだろ」

 

 そして何でもないことのように言った。

 

「隣の奴の首につけろ」

 

「…………は?」

 

 教室が静まり返る。

 

 ジェシカが目を丸くする。

 

「ヴァンデスさん?」

 

「それを解除するのが今日の講義だ」

 

 ヴァンデスは淡々としている。

 

「もちろん」

 

 爆発したものを意味ありげに見る。

 

「失敗したら――」

 

 少しだけ間を置く。

 

「……ご友人は」

 

 ニヤリ。

 

「さっきのと同じ目に遭う」

 

「…………」

 

 誰も笑わなかった。

 

 ヴァンデスは数秒黙ってから、肩をすくめる。

 

「……言わなくても分かるか」

 

 そしてケラケラと笑った。

 

「ははははっ」

 

 ジェシカは引きつった笑顔を浮かべた。

 

「……この人、やっぱり怖い」

 

 しかしヴァンデス本人は楽しんでいるわけではない。

 

 爆発物の話をしている時だけ、戦場の記憶に押し潰されそうになっていた男の思考が、ほんの少しだけ整理されている。

 

 彼にとってこれは冗談ではない。

 

 生き残るために叩き込まれた、ただの知識だった。

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