お前みたいな性悪女と付き合うくらいなら、性転換した幼馴染とセックスするわ! 作:cuddle
俺こと伊吹透の人生は幼馴染である蓮野明日香に振り回されている。
「今日、買いたい物があるから、放課後付き合いなさいよね」
「いや俺、今日は帰ってテスト勉強したいんだけど」
「はぁ? あんたが勉強したって良い点数取れるわけないでしょう」
嘲笑付きでこっちのやりたい事を否定してくる。
この女はいつもこうだった。
「まぁ、買い物に付き合ってくれたらあたしが勉強を教えてあげるわよ」
「いいよ。一人で勉強したいから」
確かに明日香は成績は良いが、俺に教えるのは上手くない。
解答を間違えたら罵詈雑言が飛び、解くのに時間がかかると不機嫌になり、最悪手が出る。
俺もそんな明日香の態度にビクビクして緊張から頭が上手く働かなくなるのだ。
そんな相手に勉強教わっても捗る筈がない。
しかし、その態度を明日香の友人達が許さない。
「明日香の善意を断るとかサイテー!」
「そうよ! それに買い物くらい付き合ってあげてもいいじゃない!」
「たく伊吹よぉ! 蓮野さんみたいな美人に誘われて断れる立場だと思ってんのか? えぇおい!」
明日香の友人だけでなく、同じクラスの男子からもブーイングが飛ぶ。
明日香は見た目が良い。
長い栗色の髪を左右に束ね、ややツリ目気味だが大きな目。
整った顔立ちに背も高くスタイルも良い、モデルとしてスカウトされた事もある。
幼馴染、という先入観から俺が明日香の好意を照れ隠しで無碍にしているように周囲には映るらしい。
だから周囲の圧力もからかい半分でもあった。
でも。
(正直、疲れる……)
明日香に自分を否定される毎日。
自分も服を買おうとして選ぶと、こっちにしろと無理やり変えさせられる。ファミレス等のメニューで食べたい物を明日香に決めされられる事も毎度だ。
ここで明日香の誘いを断ると、周囲に無いこと無いこと悪評を流される可能性が高い。
「わかった。買い物に付き合えばいいんだな」
「ふん。最初からそう言えばいいのよ。透に断る権利なんてないんだからね!」
こういう態度が地味にイラッときて、それが積み重なって苦手意識が強くなるのだが、周囲も明日香本人も気付かない。
朝のホームルームのチャイムが鳴り、数分後に担任の先生がやって来た。
「今日は先日言った通り転校生を紹介します。小鳥遊さん、入って」
入ってきたのは青みのある黒髪を肩まで伸ばした可愛いらしい女の子だった。
背は女子としてはやや高めでパッチリとした目。
小鳥遊と呼ばれた女子は鞄を抱えたまま先生の隣まで歩くと渡されたチョークで黒板に名前を書く。
「小鳥遊歩です。昔はこっちに住んでたんですけど、母の仕事の都合で五年程アメリカで暮らしてました。色々と迷惑をかけるかもしれませんが、よろしくお願いします」
そう言って頭を下げる。
頭を上げると小鳥遊さんはクラスを見回し、こっちと目が合うと小さく手を振ってきた。
キョトンと不思議そうに小鳥遊さんを見ると彼女は残念そうに苦笑した。
十分休みになると小鳥遊さんが俺に近付いてきた。
「ひさしぶりーとおるー。私のこと覚えてる?」
「は?」
小鳥遊が親しげに話しかけてきて頭がフリーズした。
その反応に小鳥遊がやっぱりと言った感じに笑う。
「あぁ、やっぱり分からないかぁ。小学校の頃は毎日一緒に遊んでたのにね」
そんな小鳥遊さんの態度に明日香の奴が不機嫌そうに絡んでくる。
「ちょっとあんた誰よ! 透に馴れ馴れしくしないで!」
明日香も小鳥遊さんの事を知らないらしい。
しかし小鳥遊さんの方は違ったようだ。
「わぁ、蓮野さんも久し振りだね。相変わらずとおるにベッタリなんだぁ」
「なっ!?」
ニコニコと笑ってそう返す小鳥遊さん。
ただし、どこかその声音は敵意のような物を感じた。
動揺してる明日香を無視して小鳥遊がこっちを向く。
「とおる。ちょっと二人きりで話せないかな?」
と、小鳥遊さんが手を引っ張ってくる。
それを明日香が遮った。
「あたしの許可なく透を連れて行くなんて許さないんだからね!」
「別に蓮野さんの許可は要らないと思うけどなぁ?」
人懐っこい笑顔の筈なのに声音だけは隠れた敵意がある。
「あーその……そろそろ休み時間終わるから……」
情けない事にそう言うのが精一杯だった。
「そっか。じゃあお昼休みに」
そう言って手を離すと自分の席に戻って行った。
明日香の刺すような視線が痛かった。
昼休み。
付いてこようとする明日香を撒いて屋上の扉前の階段に座っていた。
「本当にひさしぶり。この高校に通ってるのは知ってたけど、同じクラスになれて良かったよ」
気さくに話しかけてくる小鳥遊さん。
しかしやはり俺にこの女子の記憶はない。
「あのさ。ごめん、覚えてないんだ。本当に俺と小鳥遊さんは知り合いなの?」
申し訳無さからそう質問すると、楽しそうに笑う。
揶揄われているようで少しだけムッとした。
「気付かないよね。でもこっちの名前ならどうかな。
胸に手を当てて再度自己紹介する。
その名前に俺は目を見開いた。
「歩! あの、えっ!?」
やっと分かったかぁ、と嬉しそうに歩が笑った。
小清水歩。
それは小五の時に引っ越して行ったもう一人の幼馴染の
「いや、だって……」
おかしい。歩は確かに男だった。
お互いの両親が仲が良く、小さい頃には一緒に風呂だって入った。その時に男のアレだってちゃんと生えてた。
「お前、女装して転校してきたの?」
「失礼だなぁ。今はちゃんと女の子だよ。これだって本物なんだから」
そう言って自分の胸を持ち上げる。
それは偽物とは思えなかった。
顔を赤くして見ていた俺に歩は口元をつり上げた。
「揉んでみる?」
「揉まねぇよっ!?」
思った以上に声が出てしまい、慌てて口を手で塞ぐ。
今のが聞かれていたら間違いなく学校での立場が死ぬ。
それでも歩に対しての疑問に戸惑っていると、躊躇いがちに話す。
「とおるは後天的性転換症って知ってる?」
「……名前だけは」
それは、数年前に発見された最新の病気だ。
十から十五の子供の性別が突然反転するという。
ただ、その病気に罹る患者が少なく、未だに多くの事が解明されていない。
「まいったよ。二週間くらい熱にうなされて、ようやく良くなってきたと思ったら女の子になってるんだもん。おかげで両親も離婚しちゃってさ。それで母さんの旧姓の小鳥遊になったんだ」
困った困ったとおどけて笑う歩。
それからちょうど良く母の海外赴任の話が来ていて事もあり、後天的性転換症の研究をしているアメリカに移住したらしい。
これには、歩が周囲からどんな扱いを受けるか判らず、いっそのこと環境を一新した方が歩にとって良いだろうという判断もあったそうだ。
「大変、だったんだな……」
「まぁね」
そんな事しか言えない自分を恥じていると、歩が話題を変える。
「それより、蓮野さんは相変わらずだねぇ。とおるは昔からあの子苦手でしょ?」
言葉に詰まる。
はっきり言って明日香の事は苦手だ。
あの女には昔から色々と酷い目に遭わされてきた。
幼馴染と言っても本当に付き合いの長いだけの間柄なのだ。
歩が人差し指を立てる。
「そこでなんだけど。しばらくは一緒に行動しない?」
「あん?」
「そうすればとおるは蓮野さんを遠ざけられるし、僕は久し振りの日本でサポートしてくれる人が欲しくてさ。ダメかな?」
「いや、それは……」
良いか悪いかで言えば願ってもない提案だ。
明日香の相手ははっきり言って疲れる。
ただ、それで歩に危害が及ぶ可能性も。
歩が手を差し出してくる。
「大丈夫だよ。蓮野さんの扱いは心得てるから。だから、僕を助けてよ」
俺の心を軽くする為にそう言ってくれる。
俺はその手を握った。
「よろしく頼む……」
「うん。こちらこそ、親友♪」
久し振りの再会に俺は心から笑った気がした。
次は歩と明日香の両視点の予定です。