ーーー生と死の間にセックスがある。
をテーマに書いた18禁短編小説。
私は狭霧。江戸吉原の花魁で年は22。今日、最愛の殿方に身請けされる。
・・・はずだった。何もかもが幸せに見えて輝いていた世界は一瞬で赤に染まった。
最愛の殿方の、端女が私の首に短刀を突き立てていた。
「若様は私のモノなのに!」
意識が遠のき暗くなる。
幸い私の亡骸は故郷の鹿児島へと運ばれて手厚く葬られた。美しい着物に美しい化粧を施され、悠久の時を眠った。
次に目が覚めると空を大きなトンボのようなものが飛び交い、互いに打ち合っていた。
その抜けるような青い空に潰されたトンボが墨絵のごとく黒雲を飾る。
どうして、死んだわたしが生きているの?
なんだか見つかってはいけない気がして繁みに隠れていた。
皆、不思議な格好をしていた。
夜になる。
蛍が舞っていた。
きれい。
そんなことを考えながら一匹の蛍を捕まえた時だった。
「誰だ?!」
不思議な恰好をした青年が私を見つけた。
青年の持つ蝋燭の火がお互いを照らす。青年と言いつつ、まだ幼さの残る彼。
「私は江戸吉原で花魁をしていた狭霧と申す者です。」
青年は火を狭霧に近づけその姿をまじまじと見る。
其の無遠慮すぎる視線に私は思わず目を背けた。
「アンタ、花魁なのか?」
「そうです。」
私の返答にしばし、彼は沈黙したがやがて顔を赤くし、
「いくらで買える?」
と呟いた。
「買うなんて・・・私はもう死んでるんです。だから値段なんてつけれませんよ。」
「俺。童貞なんだ。もし、アンタみたいな女神様にもらってもらえるなら、死んでもかまわない。どうせ、明日には散る命だけど。」
「自殺でもお考えですか?」
私がそういうと彼はふっと鼻で笑い
「そんなもんさ。」
と言った。
「本気?私、死んでるんだけど。」
「かまわないさ。」
そうして、青年は私の唇を奪った。
強く口中を弄られ姿勢を保てなくなった私はヨロとその場にうずくまった。
「あぁ、なんて柔らかくすべらかな肌だろう。好きだ。狭霧。答えてくれよ。お前も俺が好きだって。」
着物の打ち合わせはとうに開(はだ)け、その時代の遊女にしては大きな胸があらわになる。剥いた梨の実ように瑞々しい肌に桃の花びらのような乳首が誘うように震えていた。
「・・・アンタ、怖いよ。」
弱弱しく抵抗をするも、それが却って男の欲に火をつけた。
「歴戦の花魁がエピソードゼロを怖がるのか」
男の瞳にゆらりと揺れるろうそくの火と私が映る。
再び口づけされ、それはゆっくりゆっくりと乳房の頂へと降りてゆく。
敏感なソコに意地悪なほどゆるりと舌を絡められ、「ん」と思わず、甘い吐息が漏れた。
「ほらほらほらほら!」
「ああん!」
「もっとよがれよ。花魁だろ?楽しませてくれよ?」
男の唾液で湿った山の頂を乱暴にこすられ痛みと快楽に失神しそうになる私には、男が悪魔のようにも見えた。
しかし、遊女としての生を受けていた時には感じることのなかった「女の悦び」というものを私は確かに感じていた。
「そろそろ本丸を攻めるか。」
でろりと手を舐めると、男は私の着物の下を分け、下半身を露にした。そして、私の薄い繁みに手を差し入れた。
「や、やめて!」
稲妻が走ったような快楽に帰って拒否の言葉が出る。
「なんだよう。やめて、と言いながらここはもう湿りすぎて愛液が川となっているじゃないか。」
「ち、違うの、違うの!」
「何が、違う。」
この感覚は何?花魁の私を多くの殿方が駆け抜けていった。でも、この人は…この男は、若様とも違う。
心もとない蝋燭の火の元、カチャカチャという金属音がする。
「おい、しゃぶれよ。」
それは腕ほどのイチモツであった。
遊女の技の一つであったがこれほどのモノを口にするのは…ゴクリと唾をのんだ時に頭を押さえられ強引にソレを口に押し込められた。其の切っ先は喉の奥を貫き思わず押しのけた。
「ゴフッグフッ、堪忍してください。」
「わかったよ。前菜はこんなものか。少し痛いかもしれないがアンタも花魁だろ?耐えてくれよ?」
今までの空気とは打って変わって、優しく笑む彼。その優しい顔に私の胸中はぽっと赤い実がはじけた。そっと私に覆いかぶさるとその巨根をつぷと私の秘裂へと差し入れてきた。
あぁ・・・。
遊女は感じることは恥であった。
だから意地でもかんじたことはなかった。
だけど、今は遊女としてではなく一人の女として男とまぐわっている。
あまたの男が通ってきたこの体は実はまだ半玉のごとく快楽には慣れていないのだ。
「あぁ、セックスとはこんなにも快楽を与えるのか!アンタのここが俺に絡みついてくる。狭霧、もっと喘いでくれ。お前も感じてるのだろう。」
「そうです。私も…あぁ、ぼぼが貴男を放さない。」
「そうかそうか、嬉しい、気持ちいい、喜ばしい。すべての悦びの感情があふれて俺は溺れてしまいそうだ。ああ、俺は明日死ぬ。だけど、なんの後悔もない。」
無限と思えるような抜き差しもやがて男の生理現象とともに終わりを迎えた。
「狭霧、狭霧、狭霧!もっと俺のことを好きだと言ってくれ!愛していると言ってくれ!」
「あぁ、いかれるのですね。愛してますとも!好きですとも!」
狭霧は絶頂を合わせその女穴を締め上げた。それが最後だった。男は果てた。
***
「途中で乱暴なことしてごめんね。」
青年は私の頭をいとおしそうに撫でる。
「あなたが明日死ぬのをやめてくれればいいのに。」
「それは無理な話さ。なんせ国からの命令だから。」
「…。」
「そんな恨めしそうな目で見ないでくれよ。そうだ、俺の服をあげるよ。その着物だと目立ちすぎるから。あと、お金。俺にはもう不要な物だから。」
「離れたくない。」
「ごめんね。連れてはいけないから。」
青年は私の唇に自身のそれを落とした。口づけの時間は永くとも一瞬とも時が流れたような気がした。
「この短刀を俺だと思ってくれ。」
腰の砕けた私に青年は短刀を渡した。
「ごめんね!」
そして夜の蛍と霧のなか青年は消えていきました。
私は青年のくれた服を着て、結い上げた髪を彼の短刀でバッサリと切った。
***
東の空が白むころ、あの巨大なトンボがたくさんいるところに来た。
きのう彼が消えていったのもここらだった。
また、会いたかった。
抱きしめてほしかった。
その一心で私は兵舎から出てきた青年の姿を見つけた。
その後ろから青年よりもさらに幼い、少年がついてきていた。
「俺たちは250キロ爆弾を抱いて行く。運転は俺がする、お前は後方の機銃で寄ってくる米機を打ち落としてくれ。」
「わかったよ、兄さん」
よかった。あの人のトンボは二人乗りだ。
私は彼が目を離したすきに、弟分を兵舎の裏へと呼び出した。
「お前、女なのに、なんで兵服きてるんだい?」
純粋な質問。それにこたえることなく、私はその少年の腹を一刺しした。
「ひ、ひどいよ・・・!」
「安心しな、それくらいじゃあ死なないよ。アンタは生きな。」
むしろ命拾いをしているんだ…。私は少年の服をはぎ取り着た。
大きめの眼鏡があったからそれを顔につけて私はあの人のトンボへと乗った。
「さぁ!国に報いるときだ。気張っていこう。」
彼の運転でトンボは飛んだ。他のトンボも続く。
***
空の上で彼が叫ぶ。
「どうした!機銃が全く当たってないようだが」
私は向き直り彼の頭を叩いた。
「…!おいっ、なぜ俺を殴る…!?狭霧!?」
「あなた一人死なせたくなくて付いてきてしまいました。」
「馬鹿なことをして!せっかく生き返ったのに!」
「でも、もう戻れないでしょ?」
「あぁ…。」
「来世は私と夫婦になってください。神様が引き離せないように一緒に煙になりましょう。」
なんの返答もないが、思いは伝わったのだろう。彼は握った拳を上げた。
敵のトンボの鉄砲玉を抜け、大きな鉄の船が浮いている海原へと出た。
とたん、急加速、急落下したトンボ。
巨大な火柱となり、敵の船に穴をあけたことまで意識はあった。
皮膚を失った手で彼へと手を伸ばす。愛しい人…。
***
桜の舞い散る佐世保の坂の上を私は真新しい制服を着て登っていた。
私が通っている学校は毎年修学旅行のようなものがあってそれで佐世保に来ているのだ。
豊かな日本、平和な日本。
そこに今私はいる。
前世を誓った彼とはまだ出会っていない。
会いたいような会うのが怖いような。
のっしのっしと坂を上っているときだった。
「狭霧?」
後ろ頭に名を呼ばれ振り返る。そこには身の丈2メートルはあろうかと思わせる巨体の米兵が立っていた。
「あぁ、やっぱり狭霧だ。その首の傷、其のままなんだ。」
「あ、あなた…!?」
私は思わず口を手で覆った。
そして、次の瞬間私たちは固く抱き合っていた。
「狭霧…もう放さない。今度こそ幸せになろう。」
「うん…うん…。」
涙があふれて止まらない。私たちを祝福するように長崎の遅咲きの桜が舞っていた。
おわり