ロカリー・ミグルディア凌辱物です

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魔大陸の夜

一歩踏み出すごとに、乾いた赤い土が靴底で不気味な鳴き声をあげる。

風が運んでくるのは硫黄の臭いと、どこか遠くで魔獣に狩られた獲物の断末魔の悲鳴だ。

「……おい。足元を見ろ」

御者台の横、トカゲ車の車輪に手をかけながら、俺は低く鋭い声を絞り出した。

視線の先には半ば砂に埋もれた巨大な骨。人間のものではない。

だが、その傍らに転がる、引き裂かれた布切れと錆びついた鉄の胸当ては、かつてここを通った同業者の成れの果てを雄弁に物語っていた。

魔大陸の商売は、命がけだ。

中央大陸のように整備された街道もなければ、騎士団の巡回もない。

少しでも油断すれば飢えた魔獣の餌になるか、余所者を敵としか見ない排他的な魔族の集団に囲まれて身ぐるみを剥がされる。

それがこの地における絶対の法則だった。

 

しかし、俺と仲間達で組んだ商隊が、見渡す限りの荒野にへばりつく一塊の集落を見つけたとき、俺の胸を突き動かしたのは強烈な歓喜だった。

「おい、あれが……ミグルド族の村か? 話に聞いてたより酷いな」

護衛の戦士が眉をひそめる。

青い髪に小柄な体躯。彼らは今、餓死を待つばかりの限界を迎えていた。

枯れ果てた畑。力なく地面に座り込む子供たち。

男たちは彼らをかろうじて守るように槍を握るものの、その腕は細く震えている。

このミグルド族の村のある魔大陸ビエゴヤ地方を襲った、大飢饉。

普通の商人なら関われば巻き添えを食らうと判断して回れ右をする地獄絵図。

だが、俺はこれを「最大の商機」だと判断して、遥々やってきたのだ。

「おい、本当にやるのか? 相手は弱ってるとはいえ魔族だぞ。逆上して襲いかかってきたら――」

「馬鹿を言うな」

怯える仲間の御者を、俺は一言で一蹴した。

「彼らが今、喉から手が出るほど欲しがっているのは何だ? 武器か? 魔法具か? 違う。――食い物だ。

今この車に積んである、安い麦と、日持ちだけが取り柄の干し肉。これが奴らにとっては、命そのものなんだよ」

俺はニヤリと、乾いた唇を歪めて笑った。

魔大陸の商売は命がけだ。だからこそ、リターンもまた中央大陸の比ではない。

綺麗事ではこの焦土は渡れないのだ。

「どんなに高く売りつけても、奴らは支払うに違いない。命の値段に比べれば、金貨や魔力結晶なんてただの石ころだ。全財産を叩き売ってでも、子供に一口の粥を食わせたい。それが親って生き物だろ?」

同情ではない。純然たる計算だった。

相手の弱みに付け込み、骨の髄までしゃぶり尽くす。

俺は荷台の覆いを軽く叩き、飢えた最高の顧客たちが待つ村へとトカゲ車を進めさせた。

 

狙った通り、奴らは村中にある金品や魔石を血眼になって掻き集め、俺たちの運んだ食料を買い取ろうとした。

差し出されたのは、中央大陸の貴族が喜びそうな意匠の古い金貨や、魔大陸の奥地でしか採れない高純度の魔石。どれもこれも、二束三文で買い入れた穀物や干し肉とは比較にならない価値がある。

持ち込まれた財宝の山を前に、商隊の馬車の中は笑いが止まらない。

「おい見ろよ、この魔石の輝きを! これ一つでアスラに家が建つぞ!」

「穀物を持ってきただけで、これだけの金が手に入るなんてな……!」

仲間達は興奮で顔を紅潮させ、戦利品を貪るように検分している。

既に十分すぎるほどの儲けは出ていた。

普通の商人なら、ここで満面の笑みを浮かべて取引を終了し、そそくさとこの村をおさらばする。

その方が安全だからだ。

だが、そこで俺はちょっとした気まぐれを起こした。

懐が満たされたことで、底意地の悪い嗜虐心が鎌首をもたげたのだ。

限界まで追い詰められた魔族が、生き延びるためにどこまでプライドを捨てて縋り付いてくるか、

試したくなったのだ。

 

「まだ足りないな。金がないなら女をよこせ。俺達一人に一人づつ、一晩相手をしたら食料を渡そう」

 

その要求に、青い髪の魔族どもは一瞬で色めき立った。

張り詰めた空気の中、奴らは声を一切出さず、ただ恐ろしい形相でこちらを睨んでいた。

何をしているのかは知っている。

奴らは『念話』の網を張り巡らせ、俺達をここで皆殺しにするか、それとも要求を飲むかを天秤にかけているのだ。

「おい、野郎ども。いつでもいけるようにしておけよ」

俺の合図で、商隊の仲間たちも一斉に剥き出しの武器に手を掛け、奴らを睨み返した。

当然、この魔大陸で商売をやるにはこういう一触即発の争いなど日常茶飯事だ。

だからこそ俺達も傭兵崩れの荒くれ者を多数雇って集団で行動し、最新の武具を揃えている。

兵と武装の質ならば、飢えに苦しむ一集落ごときに負けるはずがなかった。

沈黙が荒野を支配する。

ミグルド族の男たちの拳から血が滲み、女たちは恐怖と屈辱に震えながら子供たちを背後に隠した。

彼らの脳内で行われているであろう、声なき議論の激しさが、殺気となって肌にチクチクと刺さる。

(さあ、どうする? 誇りを取って飢え死にするか。泥をすすってでも生き延びるか、選べよ……)

俺は剣の柄に手を置いたまま、不敵な笑みを崩さずに奴らの決断を待った。

 

夜の帳が降りた魔大陸の荒野に、俺たちの野営地が赤々と篝火を燃え立たせていた。

「おい、見ろよ! 本当に来やがった!」

「へへ、上等じゃねえか。痩せてても、肌のハリは悪くないぜ!」

見張りの傭兵たちが、卑しい歓声を上げて口笛を吹く。

暗闇から現れたのは、ミグルド族の女たちだった。

奴らは要求通り村中の女を送り込んできたのだ。

どれもこれも、中央大陸の人間なら誰もが目を剥くような若い娘ばかりだ。

もっとも、この魔族は年齢を重ねても外見がほとんど変化しないが。

生き延びるためにプライドをへし折られ、ただ恐怖と屈辱に身体を震わせている魔族の女たち。

その姿を見つめていると、五臓六腑が歪んだ全能感で満たされていく。

 

極限まで追い詰められた魔族のプライドを完璧に踏みにじり、手に入れた最高の戦利品。

荒くれ者の傭兵たちは、すでにめぼしい女の腕を掴み、それぞれ自分の天幕へと引きずり込み始めている。

「さあ、俺も選ぶとするか」

俺は集団の中で一際強くこちらを睨みつけてくる一人の女の顎を掴み、ねっとりとした笑みを向けた。

「……お前、こっちへ来い」

俺は集められた女たちの中から、ひときわ小柄な一人の腕を乱暴に掴み取った。

ミグルド族特有の、吸い込まれそうな長く青い髪。

それを丁寧に一つに結び、肩の前に垂らしている。

手首を掴むと、驚くほど細く、そして酷く冷たかった。

女は言葉を発しなかった。

ただ、怯えと憎悪が混ざり合った双眸で、じっと俺の顔を睨みつけてくる。

「おいおい、そんな目で俺を見るなよ。これは正当な商取引だ」

俺は鼻で笑い、抵抗する力すら残っていないその身体を、自分の天幕へと引きずり込んだ。

 

分厚い革の幕が外界の喧騒を遮断し、中にはランプの仄暗い光だけが満ちている。

どさりと毛皮の寝床に突き飛ばされた女は、なおも起き上がろうとしたが、俺はその細い肩を容赦なく組み敷いた。

中央大陸の上質な布とは違う、粗末な布地を乱暴に引きむしり、その下に隠されていた白い肌を剥き出しにする。

「嫌、か? だがな、お前たちが今夜俺たちを満足させれば、明日には村のガキどもが腹一杯に飯を食えるんだ。感謝してほしいくらいだな」

耳元でそう囁きながら、俺は逃げ場をなくした小柄な身体を、上から完全に抑え込んだ。

女の呼吸が激しく乱れ、その青い髪が、俺の腕の隙間で激しく揺れていた。

外見は、人族で言えば十代半ば――まだ身体の凹凸も未成熟な少女にしか見えない。

人形のように滑らかな白い肌と、小柄で華奢な体躯。鎖骨は折れそうなほど細い。

しかし中に入ると抵抗はなく、あきらかに経験がある女だった。

 

野営地は静まり返っていた。

こういう「遊び」は今までにもあった。

女を攫った夜や、魔族の集落を力でねじ伏せた夜。

そうした夜には、分厚い天幕の革でも防げない女の悲鳴や、絶望に満ちた泣き声が外から聞こえてきたものだ。

それが、俺たちの征服感をより一層掻き立てる極上のスパイスだった。

しかし、今夜は違った。

テントの外からも、そしてこの内からも、女の声は一切聞こえない。

隣の天幕からの、傭兵たちの下卑た笑い声の隙間に、あるはずの女の肉声が完全に欠落していた。

この天幕の、静まり返った暗がりに響いているのも、俺の荒い息遣いだけ。

俺は、指先が食い込むほどに女の細い腰をがっしりと鷲掴みにし、

その肢体を執拗に前後に揺さぶりながら、女の股間を突いていた。

十分な準備も整わぬまま、乾いた肌を割り進むような膣への強引な侵入に、女の身体は悲鳴を上げていた。

触れ合う場所からは潤いなど微塵も感じられず、ただ摩擦による鈍い熱量と軋むような

逃げ場のない痛みがその最奥を貫いているのだろう。

俺に突きあげられ上下に動く女の顔は、眉毛を寄せ目をむくように苦痛に満ちていた。

しかしミグルド族の女は、俺の欲望のままに身体を弄ばれながらも、声一つ立てずに俺を睨みつけていた。

どれだけ乱暴に扱おうが、その唇は固く結ばれたままだ。

悲鳴も、命乞いも、すすり泣きすらもない。

ただ、暗闇の中で青い髪が静かに揺れ、その双眸だけが、燃え盛るような憎悪を宿して俺の顔をじっと見つめ返してくる。

その頑なな態度が、逆に俺の嗜虐心を刺激する。

 

嫌がり必死に顔を背け、逃れようとするおとがいを、容赦のない力で掴み上げる。

指先が骨に食い込むほどの強さで強引にこちらを向かせると、有無を言わさずにその唇を奪い、深く口を吸った。

歯を食いしばり舌の侵入は防ごうとしたので、強引にこじ開けるのをやめ、あえて唇を離す。

代わりに、逃げ場を失って強張るその顔の輪郭を、舌の先でじっくりとなぞり始めた。

尖ったおとがいから、緊張で硬くなったエラ(下顎角)の骨へ。

這わせるたびにびくりと跳ねる肌の質感を、指先で顎を固定したまま、心ゆくまで吟味する。

ひとしきり顔の輪郭を濡らし終えると、次は細い首筋へと舌を滑り降ろした。

ビクリと喉が跳ね、必死に息を詰める手応えが伝わってくる。

顎を掴んだ手にはさらに力を込め、逃げ場を無くしたまま、今度は鎖骨の窪みへと容赦なく舌を這わせた。

白い肌に自分の痕跡を焼き付けていく。

 

抵抗を許さぬ強引さでうつ伏せに圧じ伏せ、剥き出しになった白い首筋から背中の中心へと、舌を滑らせる。

骨盤へと向かう滑らかな曲線を執拗になぞるたび、女の背筋が ビクリと小刻みに震え、 拒絶と羞恥に震えるのが手に取るように伝わってきた。

うつ伏せに伏した彼女の背後から、両腕を滑り込ませ、その細やかな胸元へと手を回した。

人族の女のそれと比べれば物足りない、掌にすっぽりと収まってしまうほどの慎ましやかな二つの膨らみ。

しかし女としての柔らかさは備えている乳房を、下からすくい上げるようにしてじっくりと手のひらで包み込み、その重みと熱を味わうように 揉み上げる。

さらに、膨らみの頂点――その繊細な尖端へと狙いを定めると、親指と人差し指で挟むようにして、焦らすような微細な刺激を執拗に与え始めた。

指先が擦れ合うたびに、硬質な静寂を保っていた女の呼吸が、わずかに乱れ始める。

人族の女のような豊かな肉感はないものの、触れた肌は驚くほど滑らかで、舌と指先から伝わってくる肉体の弾力は、まるで成熟へ向かう途上のような瑞々しさを宿している。

見た目通りの年齢ではないはずなのに。

長寿の魔族だ、おそらく目の前のこの女は実際には俺より年上なのだろうが、

まるで無垢な少女を泥靴で踏みにじっているかのような錯覚を俺に抱かせた。

人族の一部でミグルド族の女奴隷が高値で取引される理由だった。

 

床に伏せられた女の腰を無理矢理高く持ち上げた。

無防備に曝け出されたその秘所へと、己の滾る陰茎を狙い澄まして圧し当て、楔のように再び深深と割り進んでいく。

肉壁を抉るようにして最奥へと貫かれた結合は、逃げ場のない密着を生み出し、固く締め付けてくるが、

今度は衝動に任せた荒い律動を収め、互いの肌がもっとも深く密着する位置で、円を描くようにじっくりと腰を動かし始める。

直截的な衝撃の代わりに訪れた、粘りつくような摩擦と重み。

その執拗な動きに、女の入り口はいつしか柔らかさと湿り気を帯びていた。

女の表情を捉えようと、顔を覗き込もうとした瞬間、頑なな拒絶を示すように顔を背けられた。

そのささやかな抵抗が、俺の内に燻る支配欲をさらに燃え上がらせる。

俺は躊躇うことなく手を伸ばすと、一つにまとめられていた彼女の髪を容赦なく引っ張り、その顔を無理矢理こちらへと向かせると、

未だ頑なな心が身体の奥から湧き上がる感覚に裏切られていく様は、女の表情に克明に映し出されていた。

こちらの視線から逃れるように泳ぐ瞳は潤み、火照った頬がその熱量を雄弁に物語る。

荒くなった吐息が首筋を白く波打たせ、静かだった天幕の空気を小刻みに震わせていた。

「身体は正直だな。どうだ、ミグルドの男より人族の男のほうが、ずっと良いだろう」

昼間会った子供のような体格の男たちを脳裏に浮かべながら囁くと、女はキッとこちらを睨んだ。

言葉を話さないからといって、言葉がわからない訳ではないようだ

 

俺の内に燻り続けていた情欲の火種が、もはや制御を失い、ドロドロとした熱い奔流となって肉体の内側を焼き焦がし始めていた。

身体の芯から突き上げる衝動が、「今すぐに解き放て」と執拗に命令を下していた。

「俺の子種をくれてやるからな。」

俺がそう言い、再度ひと際激しく腰を打ち付け始めると、我に戻った女の瞳に、恐怖と明確な拒絶が走る。

女は俺の下から逃れようと足掻き始めた。

だが、その程度の悪足掻きで、俺の腕が 弛むはずもなかった。

がっちりとその小柄な身体を 絡め取り、逃げ場を完全に塞いだ俺の腕は、鉄の枷のように女の自由を奪い去っている。

俺は女の 暴れる肢体をさらに強く圧じ伏せ、繋がった下腹部の最奥へと、再度容赦のない衝撃を 幾度も小気味良く叩き込み続ける。

俺が激しい律動を唐突に止め、女の最奥まで貫いたままの状態で、腰を細かく痙攣させるような小刻みな震えを始めると、

「――ひ、あ……ッ、いああ、ああぁッ……!!」

頑なな沈黙を守り続けていた女の喉から、この夜初めて、高らかな悲鳴のような声が迸り出た。

俺は己の内に 滾っていた熱い精のすべてを、容赦なく、そして深く 穿つように注ぎ込んだ。

逃げ場のない女の肉体の深奥が、溢れ出す圧倒的な質量によって満たされていき、逆流した分が女の中から床に垂れ落ちる。

それはこの魔族の女の胎を人族の男の血で完全に染め上げ、未来ごと縛り付ける、決定的な一撃だった。

 

地平線から昇る不気味な赤い太陽が、赤い荒野を照らし出していく。

振り返れば、ミグルド族の集落は陽炎の向こうに小さく霞んでいた。

手に入れた魔石や古い金貨は、トカゲ車が揺れるたびに荷台の奥でジャラジャラと重厚な音を立てている。

商隊の男たちも溜まっていた物を全部吐き出したせいか、足取りも軽やかだ。

最悪の環境の魔大陸だが、これだから商売はやめられない。

一歩間違えれば死が待つ焦土だからこそ、他人の弱みに付け込んだときの見返りは中央大陸の比ではないのだ。

御者台で手綱を握りながら、俺は乾いた風を胸いっぱいに吸い込み、満足感に浸っていた。

あの村の女たちの腹には、俺達の人族の種が植え付けられたはずだ。

あの女には念入りに朝までたっぷりと注いでやった。

数か月後、産まれるだろう人族の血を引く子供を村のやつらがどうするかなんて俺達が知った事ではない。

 

「おい、頭! 次の街に着いたら、この金貨で盛大にやろうじゃねえか!」 

後方のトカゲ車から、護衛の荒くれ者が上機嫌な声を上げてくる。

「ああ、好きなだけ飲んで構わん。だが、警戒の目だけは曇らせるなよ」 

俺は前方を睨み据え、トカゲの手綱を強く引いた。 

赤く染まった地平線の先には、また別の、飢えと乾きに喘ぐ哀れな犠牲者が待っているはずだ。 

魔大陸の過酷なルールを呪う奴らを尻目に、俺たちはその歪みを利用してどこまでも肥え太ってやる。

背後に残してきたミグルド族の村や女のことなど、すでに俺の頭からは消え去っていた。

 

**********

 

私は、自分が村の他の人や子供とは違うのではないかと思っていた。

村の誰もが、口を動かさずに意志を伝え合っている。

広場で楽しそうに笑う子供たちも、家の前で深刻な顔をして話し合う大人たちも、ただ目と目を合わせるだけで全てを理解し合っていた。

だが、私にだけは、その『声』が聞こえない。

どれだけ耳を澄ませても、私の頭の中に語りかけてくる声はなかった。

世界の半分が、私にだけ隠されているかのような奇妙な感覚。

耐えかねて私が声を張り上げても、彼らはただ困惑したような、あるいはどこか哀れむような目でこちらを見つめるだけだった。

「ロキシー……」

母が口を動かして、不器用に私の名前を呼ぶ。

それは、念話が使えない私を気遣っての、ひどく回りくどい、彼らにとっては不自然な『発声』だった。

優しくされればされるほど、自分が異物であることを突きつけられる。

静寂に包まれた村の中で、自分だけが完全に切り離されている。

青い髪も、その容姿も、周りのミグルド族と何一つ変わらないはずだった。

しかし、私の中に流れる何かが決定的に違っているという確信だけが、私の胸に重くのしかかっていた。

(私は、ここにいてはいけないのかもしれない……)

言葉の通じない、静かな檻。

私は独り、自分の青い髪の毛先を指で弄びながら、果てしない荒野へと続く村の出口をじっと見つめていた。

 

理由がわかったのは、ある出来事からだった。

村の子供の一人が、私をいじめるためだけに、わざわざ不器用な言葉を使ってこう言ったのです。

「お前なんかミグルド族じゃないくせに」

――頭を殴られたような衝撃だった。

村の大人たちは、ひょっとして私のことを裏で噂していたのかもしれません。

しかし、念話の使えない私は、これまでまったく気がつかないことでした。

それを聞いていた子供が、そのまま残酷な悪意として私に告げたのです。

私は涙を堪えきれず、泣きながら家に駆け帰りました。

そして、溢れる涙を拭いもせず、両親にその真相を尋ねました。

「私は、本当はこの村の子じゃないの?」

二人はひどく傷ついたような、そして酷く哀れむような表情で顔を見合わせました。

沈黙が流れる中、母が優しく私の手を握り、父が意を決したように口を開きました。

そして、ためらいながらも、私が産まれる前にこのミグルド族の村を襲った、あまりにも残酷な悲劇の歴史を私に教えてくれたのです。

 

母は、私の小さな手を両手で包み込むように握りしめ、痛々しいほど不器用に口を動かした。

「あの夜のあと、村の中で、人族の子供が出来てしまった者が何人もいたの……」

母の声は震えていた。

二人とも思い出すことすら恐ろしい記憶を、私に伝えるために、必死に言葉を紡いでいる。

「ロインと結婚したばかりだった私も、その一人だった。……村のほとんどの女は、お腹の子を消したわ。毒草を使って、あるいは自らの身体を傷つけてでも」

一瞬、母は言葉を詰まらせ、愛おしそうに私の顔を見つめた。

「でもね、ロキシー。私はそれが出来なかったの。どんなに憎い男の血を引いていても、私のお腹の中で確かに動き始めた小さな命を、どうしても自分の手で殺すことができなかった……。ロインもね、私の決意をすべて受け入れてくれたの。『お前が産む子供なら、俺が育てる』って、そう言ってくれたわ」

母の目から、大粒の涙が溢れ落ちた。

「あなたが生まれたとき、髪の色も姿も、私たちと同じ綺麗な青色だった。だから、私たちは本当に嬉しかったのよ。……でも、あなたには念話の『声』が聞こえなかった。それは、あなたの中に、あの人族の血が半分、流れているからなの。ロキシー、村の子供の言葉に傷つかせてごめんなさい。でもね、あなたは私たちが、命をかけて望んで産んだ大切な子供なのよ」

すべては、母様の口から語られた残酷な真実だった。

私が念話を使えない理由。世界の半分から切り離されている理由。

それは、かつてこの村を蹂躙した人族が残していった、消されるはずだった呪わしい記憶の残り滓――それが、私という存在の正体だったのだ。

 

「ロキシー、私たちは、あなたを愛している……! どんな血が流れていようと、あなたは私たちの娘よ!」

父母が泣きながら私を抱きしめてくる。その温もりは本物だった。

不器用な言葉で私を育ててくれた両親の愛に、嘘など一寸もなかった。

しかし、両親の腕に包まれながらも、私の心はどこまでも冷たく、静かに凍りついていくのを感じていた。

(ああ……やっぱり、私はここにいてはいけないんだ)

どれだけ愛されても、私はこの静寂の村において、かつて一族が味わった最大の屈辱を体現する「異物」でしかない。

私がここに留まり続ける限り、両親は、そして村の人々は、私を見るたびにあの過去を思い出し続けるのだ。

私は二人の背中にそっと手を回し、涙を流しながらも、心の中でひとつの決意を固めていました。

この言葉の通じない、静かな檻を出よう。

私を縛る青い髪をなびかせ、私の中に流れる、まだ見ぬ「人間の世界」へと、自分の足で一歩を踏み出すために。


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