「なぁ、頼むよ。ふみぃ……いや、二三さん! 二三様! この通り! このままじゃ俺、金欠で美雪についていけねぇんだって! 後でバイトして利子つけて返すからさぁ!」
「知るか! と言うかまたあたしを置いて美雪さんと2人で旅行だぁ? ますますお金を貸す理由がなくなったわ! この間のジュース代も返してもらってないし! あれは倍にして返すって言ってたはずだけど?」
東京都不動山市の閑静な住宅街に情けない男の声と可愛らしい女の子の声が響いていた。
男の方は不動高校の制服を着ており、小さな女の子に情けなく両手を合わせて腰まで曲げて金の無心をしていた。
女の子の方は、ぴょんっと可愛らしい少し短めのツインテールが頭の上で揺れ、ほんの少しつり上がった目元が気の強さと目の前の男に対しての怒りを感じさせる。服装はシャツにオーバーオールと動きやすいと言うよりも作業がしやすそうな格好をしていた。
「はぁぁぁ……まぁ、貸すだけ貸してやるけどさ……その代わり、こっちの頼みも聞いてもらうから」
「さっすが二三! 話がわかる。んで? 頼みってなんだよ? じっちゃんの名にかけてなんでもやってやるよ」
「あたしのお祖父様でもあるんだけど? とりあえず、屈んで耳貸せ」
この2人はこの辺りでは少しだけ有名人である。男の方は金田一一、女の子の方は金田一二三。兄妹ではないが、ふたりの祖父は有名な名探偵なのだ。その血を色濃く受け継いだのか、一の方は何度か警察の調査に貢献しているなんて話も出るし……かと思えば警察に追われていたこともあるし、少しの間捕まっていたなんていう噂話もある。
一がすこし屈み、二三が少し背伸びをして耳元で内緒話をするのだが、一はそれを聞いた途端にぶふっと大きく吹き出してしまう。
「ぶあっっっっはははははっ。お、お前にストーカーだぁ? 下着もなくなってる? 捨てられたんじゃ無いのかよ」
「ぎゃー! 声が大きいバカはじめ!!!!」
「げふぅっ!?」
二三は赤くなりながら一の鳩尾にきつい一発をたたき込む。一は悶絶しながらも何とか倒れるのは堪えて少しずつ息を整える。二三は一がぜいぜいと息を整えているのもお構いなしに歩きながら小さな声で話を続ける。
「あたしのお気に入りの下着もなくなってるの! 買ったばっかりで捨てるのにも早いし、おばさんはあたしのものを捨てるときは例え穴あき靴下でも事前に確認してくれるんだから捨てられてない!」
「わぁった、わぁった。じゃあ、ストーカーの方は? 大方美雪と一緒にいるときに視線を感じたとかじゃねぇの?」
「なぁんか、最近つけられてるっていうか視線を感じるんだよ。私だって最初は美雪さんとかが狙われてるんじゃって思ったけど……あ、こんにちはー」
険しい顔をしていた二三の顔が人とすれ違うと一瞬で笑顔になる。二三は身内以外の人間には常に猫を被って生きているのだ。身内の一に対しての反応が素であるが、外の人に対しては第一印象を最大限に良くするためにとりあえず百点満点の笑顔の営業スマイルを見せつけていく。
2人の声が徐々に遠くに聞こえてくる。もう会話の内容はわからないが……2人の会話を聞いた男はにやりと笑顔を浮かべる。
その数日後、一は突如として近所の人から割の良いバイトを頼まれて一はさくさくとそれをこなしお金を得ると美雪の遠出に勝手に付いていくのだが……それはまた別のお話。
天井や壁にはあきらかに隠し撮りだとわかる大量の自分の写真が貼ってあり、額縁のようなモノに飾ってあるのは自分のお気に入りだったパンツや靴下たち、その近くに置いてある歯ブラシのデザインはかつて自分が使っていた覚えのあるデザインをしている……金田一二三が目覚めた部屋は異常だった。
二三は全身に鳥肌を立てながら、扉を見つけると一目散に駆け出していく。
「ぐえっ!?」
しかし、首輪とそれに繋がっている鎖のせいで二三は扉にたどり着くことすら出来なかった。
どう考えてもまずい状況だ。普通の誘拐であれば身代金を要求するものだが……今回の誘拐の場合、目的そのものが自分の可能性がある。その場合、事件の発覚は遅れてしまうだろう。二三は冷静になるようにできるだけゆっくりと深呼吸をする。自分だって名探偵の血が流れているのだ。事件のひとつやふたつ解決できるはずだと言い聞かせて勇気を振り絞ると状況整理を始める。
とりあえず、今、衣服には乱暴された痕跡は見当たらず、体に痛むところは無い。自分の行動を阻害するのは首輪だけだが……これは簡単に外せるようなモノではないようだ。これを壊しての脱出は不可能だ。
次に周り……自分の写真や額縁のせいで見えにくいが打ちっぱなしのコンクリートが見える。床も絨毯を敷いているが叩くと硬い感触が伝わってくるので間違いなく絨毯の下はコンクリートだろう。窓もなく、光源は天井にいくつかつけられているランプ。天井にはランプの他に小さなダクトのようなモノがあるので……おそらくここは地下である。大きな声を出しても誰にも届かないかもしれない。
部屋自体はそこまで広くはないが、鎖のせいで動ける範囲は半径5歩分、右手側にはパックジュースとサンドイッチなどの簡単な食料、左手側にはバケツが用意されている。おそらくこれがトイレなのだろう。
状況を確認すればするほどに状況が絶望的だと言うことがわかってくる。二三は少し悩んだが、お腹も空いていたし喉も渇いたので用意されていたサンドイッチとパックジュースで軽く腹ごしらえをする。
「うぇ、少し苦くてしょっぱくてイカ臭い……なにこれ……」
酷い味に辟易しながらもなんとかパックジュースで流し込むと二三はいつ助けが来るかを考え始める。学校帰りの通学路……その家の直前までは歩いていた記憶がある。時間としては夕方の16時前後だ。自分が一体どれほど眠っていたかわからないが……腹時計的には夕飯ぐらいの時間に思える。
夕飯の時間に自分が戻らなかったらきっと心配しているはず……警察に連絡しているかは微妙なところだ。こんな時に一がいてくれたらもう少し早く気が付いたかもしれないが……あいつは今、美雪と旅行中である。そのことを思い出して苛立ちを募らせているとかちゃりと扉が開く。
「おや、起きてましたか……おはようございます。二三さん」
扉から部屋の中に入ってきた中肉中背の男の顔には目出し帽が着けられていて誰だかわからない。しかし、全裸でおちんぽをフル勃起させていることからこいつが犯人である事は間違いなかった。
「ぎゃあっ!? お、おまえがあたしを攫った犯人だな……下着泥棒もストーカーもお前だろ!」
「えぇ、その通りです。二三さんがとても可愛らしかったのでつい……猫を被っているときも素敵でしたが、そうして怒りを露わにしているところも素敵ですねぇ。とりあえず、全裸になってもらえますか?」
「お前の言うことなんて聞くかっ!」
二三にはいくつか選択肢があった。これだけ自分のことが好きなのであれば籠絡するように甘えて首輪を外させて逃げ出すコースもあったはずだ。しかし、男があまりにやる気満々で救いようのない悪意を感じたので二三は思わずその選択肢を自ら潰してしまった。
「そうですか……ではもう一度、脱いでもらえますか?」
男は二三が拒否することを見越していたのか、扉の外へ一度出ると棒状の何かを持って戻ってきた。言うことを聞かなかったらアレで殴るつもりなのかもしれない……しかし、男が近づいてきてくれるなら……弱点丸出しの股間に蹴りを入れられればまだ勝機はあるかもしれない。
「誰が犯罪者の言うことなんか聞くか、ひとりでマスでもかいてるばーか」
二三の発言に男が近寄ってくる。きっと大ぶりの攻撃が来るはずだと考えて二三は最速の前蹴りを股間に浴びせようとするが……男の動きは意外にも棒を二三の体にこつんっと軽く当てる程度の小さな動きだった。
ばちばちばちっっっ。
「ひっっっぎゃああっっっっ!?」
全身に痛みが駆け巡る。棒の周りから全身が跳ねるように勝手に動く。二三は気が付いたらその場に倒れていた。痛みは一瞬だったが二三に強烈な恐怖を植え付けるには十分な時間だった。
「これスタンガンなんですよ。二三ちゃんの体に大きな傷をつけたくなかったので……しつけ用に買いました」
「はぁっ、はっ、はぁっ。」
「もう一度聞きますね。脱いでもらえますね? 10秒以内です。出来なかったらお仕置きしますからね」
ばちばちっ。
二三の目の前で青色の小さな電気がほとばしる。その光景に二三は触れられてもいないのに体をびくんっと反応させてすぐさま立ち上がるとオーバーオールの金具を外そうとする。しかし、恐怖としびれが少し残っているせいかうまく外すことが出来ない。
「あ、ま、まって、は、外そうとしてる! 外そうとしてるから!」
二三の必死の言葉も虚しく男のカウントダウンは続いていく。カウントが半分ほど進んだところで二三はようやくオーバーオールの金具を外すことが出来た。急いでオーバーオールを下ろすと同時にショーツも一緒に下ろしていく。羞恥心は全くない、あるのはあのスタンガンに対する恐怖だけだ。
続いて二三はシャツに手をかける。今日に限ってボタンで留めるタイプのシャツを着てきてしまった。二三はボタンを外している時間はないとボタンを引きちぎるようにシャツを開けると急いで脱いでいく。
「2、1、0」
「おわっ、おわりました! もう、裸になったから!」
二三は思わず気をつけの姿勢をとって裸になったことをアピールする。
シャツの下に何もつける必要が無いほどに小さな胸を晒す。クラスの早い子はもう少しずつ大きくなり始めていてジュニアブラをつける子もいるのだが二三はまだまだその兆候すら来ない……男のなめ回すような視線を感じると恐怖で感じなかった羞恥心が蘇ってくる。しかし、ここで隠してしまうとまたあのビリビリが来るかと思うと隠すことが出来ない。
割れ目も大事な部分だから綺麗に洗っているつもりだが……こんな男に見せるために綺麗に洗っているわけではないので恥ずかしさと悔しさがこみ上げてくる。
「こんな状態でも少し睨む元気がある何て流石、二三ちゃんですね……お仕置きは2回でいいでしょう」
「はぁっ!? なんっ……あっ」
二三は文句を言おうと口を開いたが、大事な割れ目よりも下にある事に気が付いて自分も釣られて下を見ると……そこには靴下があった。靴下の分で2回のお仕置き。あのびりびりが2回も……顔から血の気が引いていくのがわかる。恐怖のあまり奥歯ががたがたと震えて足から力が抜けてへたり込んでしまう。
「選ばせてあげますね? スタンガン2回か酷いお仕置きを1回受けるかどっちがいいですか? 10秒だけあげますよ」
「あ、あっ……1回の方! 1回の方で!」
選んでいる時間は無い。それでもビリビリを2回も喰らうよりは酷いお仕置きとやらを1回受ける方が今の二三にはマシに思えたのだ。
二三の言葉に男はにこりと微笑むと靴下も脱いでおくように指示しながら部屋を出て行く。
「やばい、あいつ、本当にやばいよ……に、逃げないと……でもどうやって」
二三は震えながらしばらく動けなかったが……もしも、靴下を脱いでいなかったらまたビリビリをされるのではないかと思うと靴下を脱いで完全な全裸にならざるを得なかった。二三はささやかな抵抗として自分の脱いだものを畳んでショーツは一番下において隠しておく。
どんなお仕置きが待ち受けているのか二三は震えながら待つことしか出来なかった。
あとがきという名の語り
お世話になっております。とりあえず、全5話ぐらいで考えておりますが、予定は未定。少なくともタグの中のものは少しずつ消化していく予定です。
最初はプロローグ的なモノなのでジャブになりますが、次から本格的にハードにやっていきたいと思いますのでよろしくお願いします。
前回のシリーズとは違い……かなりハードにしていきたいなぁ……(願望)
少しでも楽しんでいただければ幸いです。