葵にかけていた体重を抜いて、腕をついてゆっくりと上体を起こした。
抱きしめていて、顔を見ていなかった葵を改めて見つめる。
髪は汗ばんだ肌に貼り付き、額にじんわりと汗が滲んでいる。
熱の余韻があって、僅かに蕩けているが、裕樹をまっすぐ見つめる瞳だった。
裕樹も目を逸らさず、瞳の奥を覗き込む。
お互いが見つめ合う時間が少しだけ流れて、ふいに葵は顔を背けた。
髪が揺れて、肩が僅かに動く。
その横顔は何も語らなかったが、拒絶するわけではなく、何かを隠すような、そんな気配があった。
裕樹は名残惜しさを胸に感じつつ、ゆっくりと腰を引いた。
結ばれた紐が、静かに解けるように──
ひとつだった身体はふたつに還っていく。
先端からぶら下がるゴムは、裕樹の興奮を視覚化したように白濁液を溜め込んでいた。
息を整えて、ついていたそれを外す。
リュックからティッシュを数枚取り出して、葵に渡す。
葵はぐったりとした身体を起こすこともせず、横たわったまま裕樹の差し出したティッシュを受け取った。
焦点の合わない瞳に、まだ快楽の余韻が滲んでいる。
汗と体液でむせ返る小屋の空気が、二人の肌にまとわりつく。
汗が額と背中を伝い、裕樹は小屋の空気がこもっているのを悟った。
「ちょっと暑いよね。」
そう言って裕樹は立ち上がり、軋む音を立てながら扉を開いた。
少しだけ扉を開くと、外は雨粒が地面を叩きつけるような土砂降りで、閃光と激しい雷鳴が空気を揺らした。
冷たい風が小屋に吹き込み、湿った空気を掻き回す。
蒸し返すような熱気を押し退けて、空気の膜が全身を包み込むように裕樹の肌を撫でていく。
新鮮な風に一瞬の心地良さを覚えながら、裕樹は雨に沈む公園を見渡すが、そこに人影はどこにもなかった。
プレーパークの小屋は雨風こそ凌げるが、屋外にいるのと大差はない。
常ならば、互いの家か、あるいはホテルを選んだのだろう。
だが葵とも、家に上がり込むような間柄ではなかった。
ホテルは金もかかれば、年齢的に入れる保証もない。
そうした現実を秤にかけ、裕樹はこの場所を選んだ。
これは、明らかに普通ではない──
裕樹は俯瞰した意識の中で、この空間の異様さと退廃的な何かを察していた。
そして今、裕樹も葵も生まれたままの姿でここにいる。
少しだけ空いていた扉を完全に開け放つと、背筋を這い上がるようなゾクゾクとした感触に、裕樹の身体は震えた。
それは寒さによる震えではない。
(外で裸になっているこの状況……すごく興奮する……)
誰かが通りかかったら、一瞬で露見してしまう。
危うさと隣り合わせの背徳の予感が、裕樹の胸を熱くする。
ふと葵を見ると、バスタオルの上に腰を落として、両膝を花弁のように左右に崩していた。
力なく身を預けた姿の無防備さと妖艶なシルエットが、裕樹の欲望を綻ばせた。
ぺたんと座る葵の元へと裕樹は歩いていく。
葵を見下ろすように視線を下げると、葵は頬を上げて裕樹を上目で見つめ返す。
快楽と疲労が目の奥に宿っていて、その表情は戸惑いながらも抗う事を放棄しているようだった。
「こっちきて……」
細い腕を掴むと、葵は小さく息を呑んで、従順にゆっくりと立ち上がった。
肩に手を添えて、小屋の扉の方へと導くと、夜気が二人の体を撫でる。
外からは死角になる位置で、裕樹は立ち止まる。
お互い向き合うようになると、葵は眉を下げて、瞳を揺らしながら裕樹を見つめ返す。
それは拒絶の視線ではなく、これから何が起きるのかを測りかねているような目だった。
両腕を伸ばし、葵の肩に触れている手に力を込めると、葵の身体は緩やかに後ろへと追いやられた。
まるで、逃げ道を塞がれた獲物が、狩り場の隅へと追い込まれていくように。
背中が冷たい木の板に触れた瞬間、葵の肩はびくりと跳ねた。
「っ……見えちゃうよ……」
葵の肩は強張って、小さく吐き出した声は怯えの感情が滲む。
裕樹は葵の言葉を無視して、さらに身体を押し付ける。
木の扉に背を縫い止められた葵のデコルテに、頬を埋めると柔らかい肌の感触が伝わってくる。
泥濘みのように沈む葵の肌は、甘美で、あまりにも無防備だった。
上質なクッションのように柔らかな肉房が、裕樹の胸板を受け止め、わずかな弾力で押し返してくる。
裕樹の身体に挟まれた葵の指先は、覆いかぶさる裕樹の胸を押しのけようと力を込めるが──
そのささやかな抵抗すら欲望を逆撫でした。
裕樹は首筋に歯を立て、掌は葵の乳肉を鷲掴みにして、潰すように揉みしだいた。
「んっっ!」
短い悲鳴と共に、葵の肩がびくりと跳ねた。
その声は、痛覚と快感が綯い交ぜになり、甘い余韻が残る。
押し返していた指先は、吸血鬼に血を抜かれる人間のように力を失い、裕樹の胸板に触れるだけになった。
揉みしだいていた裕樹の指先が、葵の身体を中心に線を描くように下腹部へと下りていく。
葵の太腿は反射的に閉じようとするが、裕樹はそれを許さず、脚を絡めて逃げ場を奪った。
行き場を失った葵の濡れ柘榴は、指先の侵入を拒めず、意思に反するように受け入れてしまう。
(葵ちゃん、脚もすべすべで温かい……こうやって足絡めるの、少しだけくすぐったくて気持ちいい……)
葵の内側は再び熱く湿っていて、裕樹の指先にイソギンチャクのように絡みつく。
「あ゛っ……、だめっ、ほんとに……」
葵の甘い声も、粘膜が擦れる音も、外の雷雨に溶けて誰にも届かない。
それを独占するかのように、裕樹だけが聴いていた。
「あっ……、だめっ……」
葵が震えて、膝から力が抜ける。
倒れまいとするように、葵の腕が裕樹の首へと必死にしがみついた。
その体重を丸ごと裕樹は受け止め、抱え込むよう扉際へとそっと座らせる。
扉を背に、体を小刻みに震わせていた葵は、外から丸見えであることに気づいて、力なく自身の体を両腕で隠した。
快楽に溺れながら、外から見られているかもしれないという葵の焦燥感が裕樹にも伝染し、心拍数が上がっていくのを感じる。
(葵ちゃんも多分そうだけど、ここにいるのが、すごくドキドキする……)
誰もが抗えず破滅へと引きずり込まれるその快楽に、裕樹はむしろ身を委ねたいと渇望していた。
裕樹はカメラの前まで向かい、葵と交わっていた湿ったバスタオルとクッションを拾い上げる。
もう録画のことなど、考えてはいなかった。
3つ目のコンドームを片手に持ち、崩れ落ちた葵の前に歩み寄る。
蕩けた表情で沈み込む葵の傍らで、焦燥に駆られるように、タオルとクッションを無造作に投げ出す。
「葵ちゃん、ここにきて。」
裕樹が指さすバスタオルは、葵のすぐ目の前に敷かれていた。
立ち上がる気力が残っていない葵は、両手に床をつき、四つん這いのまま床を伝うように進む。
わずかな前進のたびに、豊かな質量が左右、上下に揺さぶられ
その姿は横にいる裕樹に、雌の体を見せつけているようだった。
背中から腰にかけての曲線は汗に濡れて光り、揺れる双丘がその下で存在を主張する。
(四つん這いでぶら下がったおっぱいがエロすぎる……)
仰向けの時の姿とは違う、生物としての艶めかしさを目にして、裕樹は息を呑んだ。
葵は前髪が頬に張り付くほど汗ばんでいて、唇が僅かに開いて、乱れた吐息を漏らしていた。
蕩けた瞳の中は力を失って、焦点が合っていない。
小屋の内側へと葵が向かってきたので「待って」と裕樹は制止する。
立ち上がった裕樹は、葵の腰を両手で掴んで、じりじりと葵を外に向かせるように誘導する。
外に向かって四つん這いになった葵の背後に腰を落とし、ゴムの封を裂いた。
裕樹は先ほどよりも、躊躇いもなくゴムを愚息に絡ませた。
葵のさらけ出された桃尻に押し付け、その柔らかい感触を確かめるようにゆっくりとなぞる。
二人の視線の先には、白い煙のように降り注ぐ雨と時折閃く轟雷があった。
先ほど初めて交わった時と同じように、硬さ極まる肉棒で、葵の奥への入り口を探すようになぞる。
「あっ……待って……、お願い……」
振り返った葵の瞳は、怯えと羞恥で揺れていた。
このまま見られるかもしれないという、恐怖と背中合わせの状況下で本当に続けるの?
そんなふうに縋るような、問いかけの目をしていた。
裕樹はその視線を受け止めながら、探し当てた入り口の肉ひだを押し広げる。
まるで咲き誇る花びらに、無遠慮に足を踏み入れるように。
「ぁあ゛っ……!だめぇ……っ」
踏みにじられた花びらが舞うように、葵の黒髪は揺れて、背中が弓なりに反った。
両手でしっかりと葵の腰を抱え込み、逃げ場を奪うように体を引き寄せて、愚息を根元まで沈め込んだ。
葵の腰を抱きしめるようにして、根元まで裕樹のモノを加え込むように抱えると、体温の膜で覆われているように錯覚する。
釣り鐘のようになった胸が、ストロークに合わせて重たく揺れ、雫を垂らしながら外気に晒されている。
その姿は、仮想のギャラリーを集めたストリップショーのようだった。
打ち付ける土砂降りの雨と、ぱちゅんぱちゅんと肉同士がぶつかり合う音が、扉の敷居を境界線に旋律を奏でる。
「あっ、……んっ……はぁっ……!」
1回目の時のように、快楽に圧倒されるのとは一線を画し、突き上げる肉棒が葵の中の肉壁の形を一つずつなぞりながら滑っていく。
揺れて暴れる乳肉を後ろから鷲掴みにして、誰かに見せつけているかのような背徳感に、裕樹の理性が灼けていく。
葵は両手を床について、肩を震わせながら、必死に声を殺しているように見えた。
外気に晒されている今、その抑え込もうとする感情は、裕樹にも伝わってくる。
誰かに見られる、誰かに聞かれる──
その恐怖心が、葵をきつく縛っているようで、さらに背徳感が募っていく。
裕樹は後ろから覆いかぶさるように、葵の耳元で口を開く。
「葵ちゃん、こんな嵐の中、誰も見てないよ。だから、安心して。」
「んんっ、……はずか……しぃ……っ」
葵の奥を押し広げたまま、裕樹は動きを止める。
肩と背中が荒い呼吸で波打ち、ぶらさがった乳肉が小刻みに揺れていた。
その柔らかい輪郭を指先でなぞると、葵の身体がビクッと震え、最後の一押しをするように囁く。
「この雨の音で、僕らの音は誰にも聞こえない。だから、大丈夫。」
その言葉が免罪符になったのか、葵は堰を切ったように押し殺していた声が溢れ出す。
「あ゛っ……、ひっ」
喉を詰まらせるような、短い嗚咽。
一度漏れた声は、葵自身も抑えが効かなかった。
もっと鳴け──
そう言わんばかりに、葵の腰を揺らすように、深く肉茎で奥をノックした。
「ひっ……く、あっ……んぁっ、……やぁっ……ひぐっ…」
涙声が混ざる舌足らずな甘い声が、土砂降りの雨音と瞬く雷鳴にかき消されていく。
二人の中の理性と羞恥が、この雨に押し流されて、地面に溶けていくようだった。
(葵ちゃん、泣いてる……?)
葵の涙混じりの艶声が、裕樹の胸を抉った。
無限に続けられると錯覚していたピストンが、ふいに込み上げてくる射精感に揺らいだ。
根元まで絡みつく感覚が、絶頂へのカウントダウンを一気に早めていく。
葵の揺れる肉房を押し潰すように揉みながら、覆い被さるように体を抱きしめる。
「ああっ……くるっ、出るっ!」
「ひっ…転送、やあぁっ……うぅん……っ、ぅ……」
根元から吸い出されるようにして、ドクドクと葵の中へと注ぎ込まれる。
ビクンビクンと脈動する下半身は、裕樹の意思では制御できない。
ただ葵の身体を抱きしめて、その嵐をやり過ごすしかなかった。
外の雨音は全てをかき消して、初めから何もなかったかのように小屋は沈黙した。
二人の呼吸の音を除いて。