※この作品はR-18です。

柔肌に泥濘んで、僕は裏返る   作:秋野リヒト

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5話 滲む境界

葵の水着撮影があってから3日間、葵から撮った画像が送られて来なかったので、裕樹はメッセージを送ることにした。

 

「こんばんは。この間撮った水着の画像、数枚でもいいから送ってくれたりしない?」

 

葵はすぐ既読になったが、返事が返ってきたのは十数分後であった。

 

「画像欲しいの?なんで?」

 

葵からの返信を待っていた裕樹はすぐに文字を入力した。

 

「あの時の水着姿を見返したいからかな。」

 

「いっぱい見たからもういいでしょ?」

 

「確かに見たけど!ふとした瞬間に見返したいじゃん!」

 

「ふとした瞬間って笑 恥ずかしいからやだ。」

 

「他の人とかに絶対送らないから!自分の観賞用として!お願い!」

 

「えー?かなり恥ずかしいんだけど。てか撮りすぎだし。」

 

消したか消していないかを確認したわけではないが、葵は画像を消したとははっきりと言わなかった。

 

「葵ちゃんの水着姿、他に誰も見たことないし、持っておきたい!」

 

「写真の撮り方とかすごくいやらしいよね。裕樹くんがいつもジロジロ見てくるのってこういう感じなんだって思っちゃった。」

 

「写真の撮り方がエロいんじゃなくて、葵ちゃんの身体がエロいんだよ。視線は確かにああいう感じかな。多分俺だけじゃなくてすれ違う男は全員葵ちゃんが水着姿だったらああいう感じで身体を見てるよ?」

 

「えーやだー笑 変態じゃん!」

 

「お願い!3枚だけでいいから葵ちゃんが選んで俺に送ってよ!」

 

葵の既読がついたが、またしばらく返信が途絶えた。

 

返信が来ない間、スマホでゲームをやっていると「葵から写真が送られました」という通知が画面上部に表示される。

 

いつもは優先度の高いゲームを強制終了して、通知をタップする。

 

葵が選んだ3枚の画像がそこには添付されていた。

 

メッセージからどんな画像が来たのかは大体わかっているが、それでも裕樹の心臓は鼓動を強く早く高鳴り、チャット上で展開はせず、全ての画像を保存する。

 

揺れる指でカメラロールのアプリをタップすると、3日前の刺激が強すぎる光景が鮮明にフラッシュバックする。

 

「これを選んだの…?マジ?」

 

葵の送ってきた写真のチョイスは、まるであの日の挑戦的な雰囲気を今でも継続しているかのようなものだった。

 

こういうのが好きなんでしょう、と言わんばかりの画像3枚を確認して、思わず息を呑む。

 

葵の顔こそ映ってはいないが、水着纏った体の凹凸がはっきりとわかるもの、白いシャツがヴェールのように残っているもの、そして背後からのアングル。

 

胸元やウエスト、水着から溢れる白い肌を拡大したり、指をなぞったりしていた。

 

「ありがとう。めっちゃエッチで印象的な画像をこんなピンポイントで選んでくると思わなかったよ。」

 

「ここら辺すっごい興奮してたもんね。絶対他の人に見せないでね。」

 

「ありがとう!この辺の写真めっちゃ欲しかった。水着グラビアみたいでめっちゃエロいよ。オカズにさせてもらいます!」

 

裕樹は興奮のあまり、葵の身体を自慰行為の際の妄想に使用していることに口を滑らせてしまったが、それに気付いたのは返信が来たタイミングだった。

 

「オカズ?私の写真を?」

 

裕樹はまずいと思い、前のメッセージの文を削除しようとしたがその指は止まった。

 

「うん…葵ちゃんの写真や身体、オカズにしてるよ。」

 

その日はもうすでに夜も更けていたせいなのか、自分が自慰行為のネタにされていると知った嫌悪感のせいなのか、葵からの既読も、返信もなかった。

 

葵に引かれたのではないか──

 

今更そんなことで。

 

頭の中で永遠と回り続ける決して答えの出ない問いに、僅かな睡眠不足を抱えて登校する。

 

葵は既に席に座っていた。

 

「おはよう」と声をかけると葵はいつものように

 

「ん、おはよ」とこちらをチラッと見て挨拶を返す。

 

(別に引いてはないのか…?)

 

いつも通りの会話に少し安堵するものの、自身がオカズにされているということを知って、葵は何を思うのかを裕樹は知りたいと思っていた。

 

裕樹が葵が席からいなくなっていることに気付いたのは、5時間目の授業のことだった。

 

理科の実験室に移動してから授業が終わって自席に戻ってくると、葵の姿はない。

 

今日は5時間授業で終わる日だったので、そのままHRは進むがやはり姿は見当たらなかった。

 

葵の机の横にはいつも登校に使っているバッグがかけられていて、学校にいることだけは確かだった。

 

「葵ちゃん、どこにいるの?もう授業終わったけど。」

 

チャットで葵の場所を尋ねると、返信はすぐに来た。

 

「あ、今保健室で寝てた。もう終わったんだね。悪いけど、私のカバン、持ってきてくれないかな?」

 

「分かった。そっちに行く。」

 

葵のカバンを持って教室を後にする。

 

4時間目まではいたはず…

 

いつ葵は体調が悪くなったのだろうと考えながら、保健室前まで辿り着いた。

 

扉の前には保健医不在の札が貼ってある。

 

ゆっくりと扉を引いて、保健室の中にはいると、右奥の並んでいるベッドの一つがカーテンで覆われていて、そこに葵がいるのだとすぐに裕樹は理解した。

 

「葵ちゃん、入るよ?大丈夫?」

 

白いカーテンの向こう側から「良いよ」と声が返ってきたのでカーテンを開ける。

 

「カバン、持ってきてくれてありがとう」

 

葵はベッドの上で仰向けで寝転びながら右手を挙げた。

 

顔色が悪い様子もなく、見た目はどこも悪くなさそうに見える。

 

「大丈夫?どっか辛いの?」

 

裕樹は葵のカバンをベッドの横に置いて、後方から椅子を取り出してそれに腰掛けた。

 

「今は大丈夫。たまーに起きる貧血。それで寝てた。」

 

「そうなんだ、今は平気なんだね。よかった。」

 

保健室は美術部の備品室とは違った、整頓されていて清潔な空間。

 

部屋は適度な温度で保たれていて、保健室には葵と裕樹以外は誰もいない。

 

葵をいつも観察する備品室は、雑多な備品たちが不規則に並べられてきて、2人を外部から隠しているが、保健室はこの白い厚手のカーテンだけなのが対照的だった。

 

葵は背を丸くして横になっていて、座っている時よりも体の輪郭は少し曖昧になっているように見える。

 

(葵ちゃんを観察するのには保健室もピッタリだな…)

 

そんなふうに裕樹が思っているのを、葵は少し感じ取ったかのように口を開く。

 

「先生は6時間目の終わりまで、戻ってこないみたい。それまでにもう良ければ帰っていいって言われてて、もう帰ろうかと思ってるんだけど、どうする?」

 

「どうする?って俺に聞く?」

 

「そういう気分じゃないなら、帰るよ。むっつりの裕樹くん。」

 

「すごく見たい……です。」

 

それは自身の内を完全に見透かされていて、敗北宣言になった。

 

裕樹のその言葉に葵は返さず、ただ横目で見つめてくる。

 

そのまま2人の視線だけの時間が続いて、葵がゆっくりと身体を左側にずらした。

 

ちょうど1人分が横になれるスペースができていて、それは裕樹を迎え入れるための儀式のようなものにさえ感じられた。

 

言葉を発していない葵が「おいで」と無言で招いているようなその所作に、心臓を掴まれているかのような緊張感が走り、裕樹の理性の輪郭は、墨が水に溶けるように、静かに滲んでいった。

 

裕樹は息を殺しながらベッドの端に腰掛ける。

 

掛け布団の隙間に手を差し入れて、葵の世界に侵入するかのように、ゆっくりと身体を滑り込ませていく。

 

指先や身体に先ほどまで葵がそこに寝ていた体温の余熱が伝わり、僅かにシャンプーの香りが漂う。

 

かつてないほどの至近距離に、鼓動が早くなるのを感じる。

 

葵と顔の高さが同じだと、見つめ合うようになってお互い恥ずかしさを感じていた。

 

裕樹は頭の高さを下げれば、葵の胸が顔の前に来るということに気付き、身体が触れないようにゆっくりと頭の位置を下げる。

 

裕樹の眼前に聳え立つIカップの双丘。

 

あと数センチ顔を近づければ、その柔肌に埋もれる距離感だった。

 

「デカっ…」

 

裕樹は思わず心の声が漏れる。

 

その質量は服の上からでもよく感じ取ることができて、今にも溢れ出しそうな大量の水をダムが堰き止めているような感覚だった。

 

脱がせたら勢いよく飛び出してきて、あっという間に呑まれてしまいそうだ。

 

「すっごい重そうだね。

 

「うん、重い。ブラも苦しい。」

 

裕樹が目線だけ上を向けると、葵と目が合った。

 

「苦しいなら…外しちゃえば?」

 

葵の瞳は驚いたかのように僅かに大きくなったが、またいつもの表情に戻る。

 

(またあの時と同じ表情だ…)

 

裕樹から決して視線を逸らさない葵は、この間の競泳水着のストラップを外した時の面影があった。

 

ゆっくりと上半身を起こし、熱を帯びた視線で裕樹捉えて離さないまま、葵はニットベストとワイシャツの裾を少しまくる。

 

背中に手を回し、ホックはカウントダウンのように外れていく。

 

最後のホックがプツッと外れた時、ニットベストが大きく動いた。

 

締め付けから解放されたのか、目を瞑ってゆっくりと息を吐く。

 

「本当に外したんだ…」

 

胸のカーブはいつもよりも丸を描いているような気がした。

 

ここ最近の葵の大胆さは、裕樹の想像を遥かに超えていて、上手く言葉をかけられずにいた。

 

「おっぱい苦しいから、帰るまで外しておく。」

 

葵の慣れた手つきや動作は迷いがなかった。

 

裕樹に見られることすら、演目の一部であるかのように。

 

圧倒される裕樹を他所に、何度か腕を出し入れしていると、葵のシャツの裾から舞台の幕が開くかのようにピンクのブラジャーが現れた。

 

「え……やば……エロ……」

 

裕樹を見下ろすような目で見つめる葵は、静かに裕樹の顔のすぐ横にブラジャーを置いた。

 

たった今まで葵の胸につけられていたブラは、未だ葵の体温を宿しているのが裕樹の頬に伝わる。

 

「デカすぎね……?」

 

男の本能として頭で考えるより先に、脱ぎ捨てられたブラジャーに手を伸ばした。

 

ふわふわの猫を見かけると、思わず顔を埋めてその感触を確かめたくなるように、手に取ってブラジャーの内側に鼻や頬を擦り付ける。

 

内側の生地は葵の肌の余韻を閉じ込めたかのような、滑らかな生地。

 

微かな甘い匂いが鼻腔を撫でて、葵に備わる母性が身体に入っていくような感覚があった。

 

レースの縁はざらつくような感触で、薄い生地を通して透ける光が、淡い花びらのような色合いを際立たせていた。

 

葵のブラジャーに夢中になっていると、置いてけぼりにされていた本人が再び横になって目が合い、裕樹は我に帰った。

 

「ブラジャーの匂いを嗅いでるなんて本当に変態なんだね。」

 

少し冷ややかな目線を送られたが、そこに嫌悪感はなさそうに見える。

 

「葵ちゃんのブラジャー、可愛いデザインだし、いい匂いがする。こういうのつけてるってなんかエロい…」

 

「私のブラジャー、大好きすぎない?おっぱいとどっちが好きなのかな?」

 

葵は少し不満そうに言って、ニットベストとワイシャツの下は何もつけていない胸元を、裕樹の顔の前に突き出すようにした。

 

ブラジャーのないニットベストはいつもよりも大きく膨らんでいるように見えた。

 

「葵ちゃんのおっぱいが1番好きだ…」

 

左胸が右胸の重さに押しつぶされているのか、右胸の方が大きく前方に溢れているように見えた。

 

ワイシャツ1枚だけなら、乳首の色や位置、乳輪の大きさや色も透けて簡単に判明するのだろうが、ニットベストがギリギリでそれらをカモフラージュしている。

 

ニットベスト越しに見ているのは。乳首の突起なのか服の皺なのか、その曖昧さが妄想をより掻き立てていく。

 

「葵ちゃんがノーブラ……どうしていいか分からなくなるよ……」

 

興奮のあまり、脳が発する言葉を選ぶことを放棄しているかのようだった。

 

「いつも見てるだけだけど、触りたいとか思わないの?」

 

「めっちゃ触りたいよ。たくさん揉みたいし、ブラジャーの代わりに支えてあげたい。指で感触を確かめたい。乳首をコリコリしたり、摘んだり、指で弾いたり、擦ったり、舐めたり、吸ったり、甘噛みしたり。でもね……」

 

「すごいたくさんあるね。でも?」

 

裕樹のやりたいことは葵が考えていたより、だいぶたくさんあったのか、思わず笑っていた。

 

「きっと、それをやってしまったら、俺は自分を抑えられなくなって、めちゃくちゃにしてしまうと思う。」

 

裕樹は低く、静かにそう言った。

 

自分自身のことのはずなのに、どこか客観的な物言いだった。

 

笑っていた葵は沈黙し、視線を落とした。

 

その表情が気になり、葵と目が合った。

 

いつもよりも瞬きの回数が増え、肩が強張っているように感じた。

 

お互いその後に続く言葉を探して、口元が動いているが、言葉にはならない。

 

あと少し手を伸ばせば触れられる柔肌。

 

ここが保健室ではなく、自宅、葵の部屋のような2人だけの空間なら、裕樹の理性はとっくに崩壊していたかもしれない。

 

言葉を探している途中で、再び葵の膨らみに惹き込まれる。

 

ブラジャーの匂い、生地の感触を頬で感じながら観察を続けていると、葵がポツリと口を開く。

 

「私をオカズにしてる時も、そういうことを考えているの?」

 

妄想の中で葵を汚している事への罪悪感からか、裕樹は一瞬だけ言葉に詰まった。

 

「こうやって見せてくれるようになってからは、よりリアリティが増して捗ってるよ。この間の送ってくれた写真でもたくさん妄想したし。今ここで起きてることも……オカズにする」

 

「そう……なんだ……。」

 

葵は肩をすくめて、裕樹の目をじっと覗き込む。

 

「そんなに妄想してるならさ…今抜いちゃえば?」

 

「へ……?今!?」

 

裕樹の声は思わず裏返る。

 

先ほどの沈黙が、これ以上は行ってはいけないという暗黙の了解を定義したはずだった。

 

それを全て無視しているのか、他人事だと思っているのか、その軽さに裕樹は戸惑った。

 

声が裏返る裕樹の様子を葵は何も言わずに見つめている。

 

その目には驚きや拒絶反応はなく、これから起きる事を全て観察しようとするような、熱を帯びた視線が向けられていた。

 

その視線にどう応えたら良いのか分からず、裕樹は言葉を失う。

 

葵が何も言わないことが、逆に全てを許されているようだった。

 

そして裕樹は気付く。

 

この葵から向けられる視線は、普段は自身が葵に向けているものと同じということに。

 

裕樹はゆっくりと息を吐いた。

 

その息は諦めや覚悟ともつかない、舞台の本番の前のような緊張も含まれていた。

 

「ティッシュって、あるかな?」

 

葵はしばらく考えると「私のカバンの外ポケットに入ってる」と言った。

 

裕樹はベッドの傍に置いたカバンに手を伸ばして、外ポケットをゆっくりと開ける。

 

駅前で配られていた未使用のポケットティッシュが出てきたので、それを手に取る。

 

本当に良いのか、と言葉にはせずに葵に目を向けたが、先ほどと葵の視線の熱は変わっていなかった。

 

パンツのベルトのバックルを力を入れて外す。

 

すでにパンツを押し上げて痛くなるほど隆起している愚息が熱を帯びていた。

 

下着はすでに溢れ出したカウパーがところどころに滲み出ていて、熱くてジメジメした空間から解放されて楽になった。

 

葵の胸の位置まで頭を下げているため、葵からどこまで見えているかは分からなかった。

 

葵は何も言わずにただ静観しているのみだった。

 

ポケットティッシュのミシン目を両手の親指でこじ開ける。

 

一枚ずつゆっくりと取り出して、折りたたまれている状態から大きく広げる。

 

これを二枚、三枚と繰り返す。

 

六枚目になったところで足りるだろうと思い、ティッシュを綺麗に重ねていた時にぽつりと声がした。

 

「…そんなに使うんだ?」

 

裕樹は一瞬だけ動きを止めて葵の方を見る。

 

葵は目を逸らすことなく、少しだけ口元を緩めていた。

 

「いや…念の為…」

 

いつもの儀式が見られていることに、裕樹は照れ臭そうに笑いながらそう言った。

 

重ねたティッシュをゆっくりと下半身へと運んでいく。

 

熱を帯びた先端にそっと覆い被せ、迸る白濁を全て吸収してくれるようにしっかりと愚息を握り込んだ。

 

もう片方の手でブラジャーを握り締め、葵の膨らみを見つめながら手を動かす。

 

手を動かすたびに、溢れ出たカウパーをティッシュが吸収していく。

 

裕樹の妄想が一気に溢れ出す。

 

ニットベストとワイシャツを剥いて、その凶悪な柔肌を揉みしだく。

 

両手で右胸を包み込むように触って、乳搾りのように乳首を突出させる。

 

今までその豊満な体を守っていた全ての鎧を取っ払い、生まれたままの姿を曝け出し、喘ぎ声を出させる。

 

氷の女王がドロドロに溶けて恍惚と恐怖が入り混じるその姿を観察する。

 

その全ては今、この手の動きに乗っている。

 

体の内側から爆発するようなエネルギーが込み上げようとしていた。

 

「葵ちゃん……っ……イキそう……」

 

葵は無言で頷き、視線を逸らさずに見つめ続けた。

 

その沈黙は、裕樹の鼓動を加速させる。

 

葵と裕樹の2人だけの静寂の空間に、上下する腕とベッドが擦れる音だけがうるさく聞こえる。

 

「……見てるよ」

 

ぽつりと呟いた葵のその一言が最後の引き金になった。

 

「イクっ……!」

 

腰が跳ねて、熱い白濁がティッシュに叩きつけられる。

 

葵と視線が重なって、何度も愚息は強く脈動する。

 

息が漏れて身体が揺れていた。

 

頭が痺れるような感覚が起こった後、意識が真っ白になる。

 

脈動の余韻にただ身を任せ、静かにベッドに体が沈んでいく。

 

保健室の空気が、本来の静けさを取り戻した。

 

上下する腕も落ち着いて、ベッドの軋みも消え、裕樹はゆっくりと息を吐く。

 

妄想の中で葵の肉体を貪りつくしたにも関わらず、葵の目は何も責めず、何も問わず、ただ静かに裕基を見つめていた。

 

包容力のある眼差しで、優しく包むようなその視線は逃げ場のない安心感があった。

 

最後まで見ていたよ──

 

そう言わんばかりに。

 

「恥ずかしいな……。」

 

ぽつりと漏れたその一言は、蚊が鳴くより小さな声だった。

 

裕樹は体を少し寄せて、葵の胸に顔を埋めた。

 

その柔肌に泥濘み、永遠の時間を乞い願う。

 

葵は拒絶はせず、沈黙したままであったが、それが優しさのように思えた。

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