※この作品はR-18です。

綾乃先輩が手取り足取り教えてくださるそうですよ?――金利・貨幣・政策をめぐって   作:アジの塩焼き

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第3話:貨幣とは何か――信用創造と万年筆マネーをめぐって

 

 深夜二時を回り、窓の外では依然として激しい雨風が吹き荒れていた。

 

 外界から完全に遮断された研究室の床には、司が仮眠用にロッカーから引っ張り出してきた厚手の毛布と、いくつかのクッションが敷き詰められている。

 机上のアームライトが落とす斜光の端が、毛布の柔らかな起伏と、そこに重なり合う二人の生肌を柔らかく照らしていた。

 

 本棚での情事を終えた二人は、汗ばんだ身体をタオルで丁寧に拭い、毛布の上へと場所を移していた。

 綾乃はラベンダー色のサマーニットを脱ぎ捨て、ブラジャーも外して、艶やかな上半身を惜しげもなく露わにしている。

 

 床に並んで座り、綾乃はクッションに少し身体を預けながら、隣にいる司を見上げていた。

 豊かな厚みを持つ胸元を片腕でそっと隠すように抱え、細く引き締まったウエストから、投げ出されたしなやかな太腿へと続く曲線が、薄暗い照明の下で艶やかに浮かび上がっている。

 たれ目がちの大きな瞳には、快感の微熱とともに、探求心に満ちた光が宿っていた。

 

「……中央銀行が金利を操作する仕組みの次は、いよいよ経済学最大の謎ね、司くん」

 

「ええ。そもそも銀行が貸し出している『貨幣』の正体は何なのか、という問題ですね」

 

 司は隣に座ったまま、綾乃のきめ細やかな太腿の内側にそっと手を滑らせた。

 汗を拭った素肌は熱を帯びたすべすべとした肌触りで、指先を這わせるだけで吸い付くような温もりを感じる。

 

「高校の政経や大学の入門テキストだとね……『銀行は預金者からお金を集めて、それを企業に又貸ししている』って説明されるでしょ? 銀行は資金の仲介業者(インターミディアリー)だって」

 

「預金という元手があって初めて貸出ができる、という又貸しモデルですね。でも先輩、そんな説明、現場の実務では完全に否定されていますよ」

 

 司が太腿の付け根へ指を滑らせ、秘唇の合わせ目をそっとなぞると、綾乃の喉から「んっ……」と甘い吐息が零れた。

 

◇

 

「ふふ……否定されていると言い切るのね。……いいわ、じゃあ司くんの言う『現場の真実』を聞かせてもらおうかしら」

 

 綾乃はクッションから背を離し、毛布の上へとゆっくり仰向けに身体を横たえた。

 司を誘い込むように、柔らかな両脚を艶めかしく左右へと割り開く。

 惜しげもなく晒された秘所は、先ほど拭いきれなかった蜜が薄暗い光を浴びて艶めき、熱を帯びて薄桃色に充血していた。

 

 男の欲望を無言で煽り立てる、無防備で扇情的な姿。

 司はその開かれた脚の間に身体を進め、片手を毛布につきながら、もう片方の手を綾乃の細い腰へと添えた。

 吐息が触れ合う至近距離で、二人の視線が熱く絡み合う。

 

「……先輩、そんな姿で見つめられたら、議論どころではなくなりますよ」

 

「ふふ、見つめ返すだけじゃなくて……早く入ってきて、わたしの頭を納得させてみて」

 

 綾乃は待ちきれないように腰をわずかに浮かせ、司を受け入れる姿勢を示した。

 だが、司はすぐに腰を進めることはせず、腰に添えていた手をゆっくりと太腿の付け根へ滑らせた。

 熱く充血した包皮を指腹で割り開き、露わになった陰核を優しく撫で転がす。

 

 びくん、と綾乃の下腹部が小さく跳ね、豊かな双丘が波打つように揺れた。

 

「ん……っ。司くん、すぐに入れてくれないなんて……焦らすのね」

 

 綾乃は頬をほんのりと赤らめ、恨めしそうに目を細めながらも、指先で撫で転がされる刺激に甘い吐息を漏らして身をわずかによじらせた。

 

「焦らしているわけじゃありませんよ。信用創造と同じで、事前の準備と審査のプロセスを飛ばすわけにはいかないでしょう?」

 

「審査だなんて……ふふ、言ってくれるじゃない……っ」

 

「銀行は預金を集めてから貸し出しているんじゃない。『銀行が貸出を行う瞬間に、預金という貨幣が無から生み出される』んです。これが信用創造の本質です」

 

「あ……んっ……! いわゆる……内生的貨幣供給論ね……っ。万年筆マネー……キーストローク・マネーとも呼ばれる考え方……っ」

 

「そうです。企業が銀行に融資を申し込んで審査が通ったら、銀行員は何をしますか? 金庫から札束を運んでくるわけじゃない。ただパソコンのキーボードを叩いて、企業の預金口座の残高欄に『一億円』と数字をタイピングするだけです」

 

 司は指腹に愛液を絡めながら、膣口の縁をゆっくりとなぞり、第一関節までを窄まりの中へと沈めた。

 ぬち、と濡れた音が毛布の上に響き、熱い肉襞が指をきつく締めつけてくる。

 

「その瞬間……世の中に今まで存在しなかった一億円という『預金通貨』が無から誕生する。又貸しなんてどこにも存在しない。貸出が預金を生み出しているんです」

 

「はぁっ……あ……っ! 確かに……会計の実務記帳としては、貸出と同時に預金という負債が両建てで発生するわ……っ。でもね、司くん……だからといって、銀行が『無制限にお金を生み出せる』わけじゃないでしょ……っ?」

 

 綾乃は息を上擦らせながらも、司の首筋に腕を回し、耳元で反論を囁いた。

 

「もし銀行が何のリスクもなくキーボードを叩くだけでお金を作れるなら……なぜ銀行は無限に貸出をして儲けようとしないの? なぜ世の中のマネーサプライは無限に膨張しないのかしら……っ。あ、んんっ、司くん……指、深く……っ」

 

 司は指を第二関節まで沈め、前壁の敏感な凹凸をじっくりと撫で上げた。

 綾乃の背中が弓なりに反り、息を呑むような甘い声が零れる。

 

「ひゃぅっ……! あ、そこ……っ、だめ……っ」

 

 熱い内壁が司の指をキュッと締め上げ、綾乃の足の爪先が毛布を強く掴んだ。

 

◇

 

「……先輩の言う通り、銀行の信用創造には厳格な制約があります。でもそれは『預金の量』という制約じゃなく、借り手の返済能力と、銀行の自己資本比率規制という制約です」

 

 司は指をゆっくりと引き抜き、自身の固く猛り立った熱塊の先端を、濡れそぼった秘唇の合わせ目へとあてがった。

 

 待ち望んでいた硬い熱が触れた瞬間、綾乃の喉から「ひゃ……っ」と小さく震える吐息が零れる。

 指で散々焦らされ、蜜で溢れかえった窄まりが、侵入者を求めてひくひくと切なげに脈打っていた。

 司はすぐには押し込まず、滴る愛液を先端に絡めながら、濡れた秘口の縁をじっくりと撫で回して焦らす。

 

「返済されない焦げ付きリスクがあるから、銀行は審査をする。そして国際的なバーゼル規制によって、リスク資産に対する自己資本比率を維持しなければならない。制約はそこにあるのであって、事前に預金を集める必要なんて最初からないんです」

 

「くっ……! 実務の記帳プロセスはその通りよ……っ。でも、主流派の貨幣乗数モデルだって、完全に無意味なわけじゃないわ……っ」

 

 綾乃はしなやかな両脚を司の腰にしっかりと絡め、逃げ場をなくすように腰を擦り寄せてきた。

 潤んだ瞳で司をじっと見上げ、吐息交じりに甘くねだる。

 

「……司くん。もう……審査は、充分に通ったでしょう……? 早く……っ」

 

「ええ。満額承認です、先輩」

 

 司は綾乃の細い腰をしっかりと引き寄せ、腰をゆっくりと沈めていった。

 固く猛り立った先端が、熱く湿った窄まりを押し広げ、じっくりと最奥へと吸い込まれていく。

 

 じゅぷ、ぐちゅ、と肉を割る重く濃密な結合音が、静まり返った毛布の上に響き渡った。

 

「あぁっ……! んんっ……入ってきて……っ、深い……っ!」

 

「……先輩、自分から腰を浮かせて引き込みましたね。内側が熱く絡みついてきて、離してくれそうにありません」

 

「なっ……! そんなこと……っ、言わないで……っ、ひゃぅっ!」

 

 司が根元まで完全に結合させると、綾乃の膣内が熱く脈打ち、先端を逃すまいと全方位から吸い付くように締め上げた。

 

「……ふふ、でも……貨幣乗数モデルの意義を、忘れてもらっちゃ困るわね……っ」

 

 息を乱しながらも、綾乃は負けじと言葉を紡ぐ。

 

「貨幣乗数モデルはね……実務の記帳順序を説明するものじゃないの。中央銀行が供給するベースマネーと、民間のマネーストックの間に、長期的なマクロ制約と安定的な比率が存在することを示す近似モデルなのよ……っ! 中銀がベースマネーを絞れば、長期的には銀行の信用創造も制約を受ける……っ!」

 

「ですが先輩、その近似モデルを前提にした政策が、現実の金融実務でどう機能したか覚えていますよね」

 

 司は綾乃の骨盤を両手でしっかりと支え、正常位の体勢のまま、深く力強いストロークを開始した。

 

◇

 

 ぱんっ、ずちゅ、と肌と肌が激しく打ち合わされる音が、嵐の研究室に響き渡る。

 

「ああっ……! あぁっ、そんなに……っ、深く突かれたら……っ!」

 

「日銀が異次元緩和でベースマネーを四倍に増やしても、銀行の貸出は四倍にならなかった。なぜか? 銀行はベースマネーを元手に貸し出しているわけじゃないからです。民間に資金需要がなければ、いくら準備預金を積んでもマネーは銀行の外へ出ない」

 

 司は腰のストロークに緩急をつけ、浅く引いては、子宮口をノックするように深く突き入れた。

 

「信用創造は、中銀の指示で動く機械じゃない。企業や個人の『投資したい、借りたい』という需要と、銀行の『この相手なら貸せる』という信認が一致したときにだけ、内生的に発生するんです」

 

「はぁっ、く……っ! 需要の制約……ポストケインジアンの主張ね……っ! でも……っ、中銀が金利を下げて利鞘を操作することで……その資金需要を刺激できるじゃない……っ! 中銀が完全に無力なわけじゃないわ……っ! あぁっ、そこ……擦れてるぅっ!」

 

 綾乃は毛布をシーツ代わりに強く握り締め、激しいピストンに合わせて腰を跳ねさせていた。

 汗に濡れた黒髪が額に張り付き、豊かな胸元が激しく波打つ。

 

「ええ、中銀は無力じゃない。でも中銀が操作できるのは、さっき議論した通り金利という価格だけであって、信用創造の引き金を引くのは常に民間の経済主体です」

 

 司は綾乃の片脚を高く持ち上げ、さらに深い角度で最奥を抉るように腰を打ち付けた。

 ぐちゅぐちゅと泡立つ愛液が二人の太腿を濡らし、熱い粘着音が室内に充満する。

 

「……ほら、先輩。この愛液だって同じです。僕が無理やり外から注ぎ込んだものじゃない。触れ合って、互いに求め合う刺激の中で、先輩の身体の内側から自発的に生み出されたものですよ。まさに無からの信用創造だ」

 

「ひゃうんっ……! も、もう……っ、そんな例え……やめてってば……っ! ああっ、んんっ!」

 

「嫌ですか? こんなに身体中で信用創造を繰り返しているのに」

 

「嫌なわけ……ないでしょ……っ! 司くんの……ぜんぶ……受け止めてるんだから……っ! あぁっ、あぁっ!」

 

 綾乃の口から、切ない嬌声が溢れ出す。

 内壁のひだが司の熱塊に何重にも絡みつき、細かく痙攣しながら締めつけてくる。

 

「先輩、貨幣の正体が見えてきましたね。貨幣とは金や銀のような実物商品じゃない。社会的な信認に支えられた、債権と債務の記帳関係そのものです」

 

「そうよ……っ! 信認があるからこそ……単なる数字のデータが……万能の購買力を持つ……っ! そして信認を失えば……どんな通貨も崩壊する……っ! 司くん……っ、もう、わたし……いっちゃう……っ!」

 

 綾乃の全身が硬直し、極限の収縮が司の熱塊を押し包んだ。

 司もまた、腰を密着させたまま最奥へと全体重を預け、熱い白濁を幾度も勢いよく注ぎ込んだ。

 

「あぁぁぁぁっ――!!」

 

 毛布の上で、綾乃の甲高い絶頂の叫びが暴風雨の夜に溶けていく。

 溢れ出た熱い蜜と白濁が混ざり合い、二人の結合部を濡らしながら毛布へと染み込んでいった。

 

◇

 

 静寂が研究室を満たしていた。

 

 毛布の上で重なり合ったまま、二人は荒い呼吸を重ねていた。

 綾乃の柔らかな胸が司の胸板に押し当てられ、互いの速い鼓動がひとつに重なって響いている。

 

「……ふぅ。……毛布の上だと、身体の芯まで熱が伝わってくるわね」

 

 綾乃は司の首筋に顔を埋め、微かに息を整えながら甘い声を漏らした。

 汗に濡れた肌が触れ合う感触が、心地よい温もりとなって身体を包んでいる。

 

「信用創造の議論、綺麗に整理できましたね。貨幣は又貸しされる実物ではなく、貸出によって内生的に生まれる信用の記録であり、その限界は借り手の返済能力と自己資本比率にある」

 

「ええ……。主流派の数理モデルも、この内生的貨幣供給の現実を組み込んだニューケインジアンモデルへと進化しているわ。貨幣を『商品』として見るか、『制度的な信用』として見るかで、政策の処方箋はまるで違ってくるのよ」

 

 司は毛布を引き上げ、冷えないように二人をすっぽりと包み込んだ。

 二人の間にあった理論の対立は、体温と充実感の中で心地よい納得へと落ち着いている。

 

「さて、金利の正体、中央銀行の役割、そして貨幣の信用創造と話してきました。……となると、基礎的な概念を突き詰める上で、避けて通れない問題が残っていますね」

 

「……自然利子率ね」

 

 綾乃は毛布の中で司の胸に指を這わせながら、静かに微笑んだ。

 

「金融政策の基準線とされる『自然利子率』は、客観的に実在するのか、それとも単なるモデル上の幻影なのか。……夜明け前の議論にふさわしいわ」

 

 時計の針は午前三時を回ろうとしていた。

 台風の風雨が遠のき始める気配の中、二人は毛布の中で温もりを確かめ合いながら、次の議論へと静かに息を潜めていた。

 

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