※この作品はR-18です。

綾乃先輩が手取り足取り教えてくださるそうですよ?――金利・貨幣・政策をめぐって   作:アジの塩焼き

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第4話:自然利子率は実在するか――潜在的均衡点と不可観測変数をめぐって

 

 午前三時半を回り、窓を激しく打ち据えていた暴風雨の気配に、わずかな変化が訪れていた。

 

 あれほど荒れ狂っていた風の咆哮が一段落し、窓ガラスを叩く雨音は規則的なしずくの音へと弱まり始めている。

 分厚い遮光カーテンの隙間から漏れ入る外の気配は、暗黒の夜から、青黒い未明の静寂へと静かに移り変わろうとしていた。

 

 研究室の隅に置かれた、二人掛けの黒革のソファ。

 毛布から抜け出した綾乃は、汗ばんだ身体に司の薄手の白シャツを一枚だけ羽織り、革の肘掛けに深く腰を預けていた。

 ボタンはひとつも留められておらず、前合わせの隙間から、先ほどの情事で薄桃色に上気した豊かな双丘と、細く引き締まった腹部、そして濡れた太腿の内側が惜しげもなく露わになっている。

 

 司はソファの前に立ち、棚から取ってきたペットボトルのミネラルウォーターのキャップを開けて、綾乃へと手渡した。

 

「先輩、喉が渇いたでしょう。少し潤してください」

 

「ふふ、ありがとう。……ずいぶん汗をかいちゃったものね」

 

 綾乃はボトルを受け取り、小さく喉を鳴らして冷たい水を飲んだ。

 濡れた唇からこぼれた透明なしずくが一筋、滑らかな顎から鎖骨を伝い、豊かな胸の谷間へと滑り落ちていく。

 ボトルをローテーブルに置くと、綾乃はシャツの裾をそっと広げ、ソファの奥へと腰を引いて司を見上げた。

 

「……金利の本質、中央銀行の誘導実務、そして貨幣の信用創造。ここまで基礎を丁寧に積み上げてきたら、最後に避けて通れない最大の難問が残っているわね」

 

「自然利子率ですね」

 

 司が答えると、綾乃の濡れた瞳に、年上の才媛としての挑戦的な光が灯った。

 

「そう。経済を過熱も冷却もさせない、理論上の実質均衡金利――自然利子率。中央銀行が現在の政策金利を引き締め的と判断すべきか、緩和的と判断すべきかを測るための、唯一の基準線よ」

 

「その基準線が、本当に客観的な実体を持っているのか……それとも理論の生み出した幻影にすぎないのか、という問題ですね」

 

 司はソファの横に腰を下ろし、綾乃の隣へと身体を寄せた。

 

◇

 

 司の手が、綾乃の羽織る白シャツの裾をそっと持ち上げる。

 露わになった柔らかな太腿の内側に指先を這わせると、先ほどまで毛布の上で交わっていた体温が、そのまま熱く肌に残っていた。

 

 指先をゆっくりと付け根へ滑らせ、濡れそぼった秘唇の合わせ目を優しく押し開く。

 包皮の奥で熱く充血した陰核に指腹をあてがい、円を描くように撫で転がすと、綾乃の喉から「あっ……」と小さく震える吐息が零れた。

 

「んっ……あ……。司くん……また、そうやって……すぐに触るんだから……っ」

 

「先輩が魅力的な問いを投げかけてくるからですよ。……自然利子率は、本当に客観的に実在するんですか?」

 

 司は人差し指をゆっくりと膣口へ割り込ませ、第一関節、第二関節と窄まりの中へ沈めていった。

 じゅぷ、と濡れた粘着音がソファの革の軋みと重なり、綾乃の腰が敏感に浮き上がる。

 

「主流派ではね……自然利子率は客観的に実在する前提よ……っ。十九世紀末にクヌート・ヴィクセルが提唱した通り、資本の限界生産力と貯蓄投資バランスが一致する実物的な均衡点……。潜在成長率や人口動態、それに人々の時間選好といった基礎的条件によって、実物経済の側で決定されるの……っ。あ、んんっ、司くん……そこ……っ」

 

「でも先輩、テイラー・ルールで政策金利を決める際、目標金利は自然利子率と期待インフレ率、そしてGDPギャップとインフレギャップの合計で計算されますよね。しかし、その根幹である自然利子率そのものは、GDPやCPIのように直接観測することができません」

 

 司は指をくの字に曲げ、前壁の奥にある敏感な天井を探るようにじっくりと撫で上げた。

 綾乃の背中が小さく跳ね、シャツの襟元をギュッと握り締める。

 

「ひゃぅっ……! か、観測できなくても……っ、統計モデルで推計できるわ……っ! ローバックとウィリアムズのモデルのように……ISバランスとフィリップス曲線の構造方程式を用いて、観測可能なマクロデータからカルマンフィルターで潜在的な均衡点を逆算するのよ……っ!」

 

「その推計値、前提とするマクロモデルの定式化や期間設定を少し変えるだけで、平気で一〜二パーセントも上下にブレますよね。カルマンフィルターによるフィルタリング推計と平滑化推計の間ですら大きな乖離が出る。信頼区間が広すぎて、プラスなのかマイナスなのかすら定かではない数値を、現実の金融政策の絶対的な基準線として過信するのは危険ではありませんか?」

 

 司は指をゆっくりと抜き差ししながら、親指でぷっくりと膨らんだ陰核を軽く挟み込んで刺激した。

 綾乃の口から切ない嬌声が漏れ、爪先がソファの革を強く擦る。

 

「推計誤差があるからって……概念そのものを否定することにはならないわ……っ! 不可観測だからこそ……中銀のエコノミストたちは複数のモデルを組み合わせて慎重に見極めているのよ……っ。不確実な経済の舵取りをする以上……誤差を自覚しながらも、理論的な座標軸を頼りに進むしかないじゃない……っ!」

 

「なるほど。では、その推計値が指し示しているとされる『超低金利の必然性』について、先輩はどう考えますか?」

 

 司が指を静かに引き抜くと、蜜口から透明な愛液が糸を引いて太腿を伝い落ちた。

 綾乃は乱れた息を整えようと胸を上下させながら、自ら司の腰に手を伸ばし、固く猛り立った熱塊をそっと握りしめてきた。

 

「司くん……言葉で問い詰めるだけじゃなくて……身体でも確かめさせてあげるわ……っ」

 

 綾乃は司の膝の上に跨がるようにして、ソファの上でゆっくりと膝立ちになった。

 シャツの前が完全に開き、豊かな双丘が重力に従って艶やかに揺れる。

 

「ほら……司くん、動かないで。……わたしが確かめてあげる」

 

◇

 

 綾乃は自ら腰を落とし、濡れそぼった秘所の入り口に司の先端をあてがった。

 熱い吐息を漏らしながら、ゆっくりと体重を沈めていく。

 

 ぐちゅ、と肉を押し広げる濃密な湿り気と圧迫感が生まれ、司の熱塊が綾乃の最奥へと吸い込まれていった。

 

「ああっ……! んんっ……ふ、深くまで……全部入ったわ……っ!」

 

「……先輩、自分から全部飲み込みましたね。内側が熱くて、先端を逃さないように締めつけてきてます」

 

「司くんが……意地悪な反論ばかりするからよ……っ」

 

 綾乃は司の肩に両手を置き、騎乗位の体勢のまま、ゆっくりと腰を上下に動かし始めた。

 火照った素肌にうっすらと汗が滲み、上下するたびに豊かな双丘が大きく波打ち、二人の結合部から泡立った蜜が音を立てて溢れ出る。

 

「自然利子率はね……中銀が勝手に決めたものじゃないの……。冷戦終結後のグローバル化や、世界的な少子高齢化、それに新興国の台頭による過剰貯蓄……ローレンス・サマーズが指摘した長期停滞論(Secular Stagnation)の通りよ。資本の需要に対して供給が過剰になり、自然利子率そのものが世界的にゼロ近傍、あるいはマイナスへと沈み込んでしまった……。だから中央銀行は、ゼロ金利やマイナス金利、大規模な量的緩和を選ばざるを得なかったのよ……っ!」

 

「それは中央銀行の後講釈ですよ、先輩」

 

 司は綾乃の細い腰を両手で支え、下から突き上げるように腰を力強く押し上げた。

 

 ぱんっ、ずちゅ、と激しい結合音が静まり返った研究室に響く。

 

「ひゃぅっ……! 司くん……っ、動かないでって言ったのに……っ、下から突かないで……っ!」

 

「先輩が上からじっくり焦らしてくるからですよ。サマーズの長期停滞論は一見もっともらしいですが、国際決済銀行(BIS)のクラウディオ・ボリオたちが批判している通りです。自然利子率という不可観測な概念を都合よく持ち出して、『我々の超低金利は自然利子率の低下に追随しただけだ』と中銀が正当化に使ってきた面がある」

 

「い、正当化だなんて……っ! あぅっ、んんっ、理論的な整合性を保つための……っ!」

 

「現実に目を向けてください。自然利子率が低下しているという前提に縛られ、実物均衡だけを追いかけて超低金利を長期にわたって続けた結果、何が起きたか。金融機関のリスクテイクは過剰になり、不動産や株式市場にバブルが膨らみ、莫大な民間債務が積み上がった。実物均衡を達成しようとする政策そのものが、金融システムの不均衡――金融循環の歪みを極限まで蓄積させてしまったんです」

 

 司は下から突き上げる角度をわずかに変え、綾乃の前壁にある最も敏感な天井を抉るように押し当てた。

 

「……先輩、いま奥で擦れたところ、ここが先輩にとっての『実物均衡点』ですか?」

 

「なっ……! そんな……っ、身体の急所と……自然利子率を一緒にしないで……っ! あぁっ、ひゃぅっ、そこ……擦れすぎてる……っ!」

 

 綾乃の口から甘い嬌声が零れ、腰の動きが乱れる。

 自らコントロールしようとしていた上下のリズムが完全に崩れ、司の下からの力強い突き上げにただ翻弄されるようになっていった。

 

◇

 

「……でも、先輩の言う通り、自然利子率という概念そのものを完全に無価値として捨てることはできません」

 

 司は綾乃の華奢な身体を抱きかかえ、ソファの上にゆっくりと仰向けに寝かせた。

 しなやかに開かれた太腿の間に身体を沈め、正常位の体勢で奥深くへと力強く突き入れる。

 

「ああっ……! んぁっ、だ、め……っ、奥まで……一気に……っ!」

 

「名目金利から期待インフレ率を引いた実質金利が、経済にとって引き締め的なのか緩和的なのかを評価する理論的な物差しは絶対に必要です。物差しを完全に放棄してしまえば、中銀の金融政策は完全な暗中模索、単なる裁量主義の泥沼に陥ってしまう」

 

「そうよ……っ! 完全無欠な物差しじゃなくても……モデルの前提と限界を自覚しながら使いこなすのが……真のエコノミストの知性よ……っ! 司くん……っ、そこ、奥を突かれすぎると……頭が真っ白に……っ!」

 

 綾乃は司の首筋にきつく腕を回し、背中に爪を立てながら甘い吐息を漏らした。

 二人の汗が混ざり合い、肌と肌が激しくぶつかり合う音が室内に熱く反響する。

 

「ええ。自然利子率は、実物経済の奥底に固定されて眠る不変の物理定数じゃない。実物と金融の相互作用の中で揺れ動く、不確実な経済の海を渡るための仮説の道標です」

 

「そう……っ! 固定された真理じゃないからこそ……常に推計を疑い、金融循環の歪みにも目を配りながら……検証し続けなきゃいけないの……っ! 司くん……っ、もう、くる……っ、いっちゃう……っ!」

 

 綾乃の内壁が極限の力で収縮し、司の熱塊を締め上げるように激しく脈打ち始めた。

 司もまた、腰を強く引き寄せて最深部へと完全に密着させ、衝動のすべてを解き放った。

 

「先輩……っ!」

 

「あぁぁぁぁっ――!!」

 

 ソファの上で、綾乃の甲高い絶頂の叫びが響き渡る。

 熱い白濁が幾度も勢いよく奥底へと注ぎ込まれ、溢れ出した蜜とともに二人の結合部を濡らしながらソファの革へと滴り落ちていった。

 

◇

 

 ふと窓の外を見ると、遮光カーテンの隙間から、薄青い朝の光が静かに差し込んでいた。

 

 台風は完全に通り過ぎ、窓を叩く雨音はすっかり途絶えている。

 雲の切れ間から射し込む夜明けの澄んだ光が、研究室の床や本棚、そしてソファに横たわる二人の肌を白く照らし出していた。

 

 ソファの上で、綾乃はシャツの前を合わせ、司の腕の中に顔を埋めて静かに息を整えていた。

 その表情には、朝まで議論と快感を尽くした深い充足感が漂っている。

 

「……ふぅ。……夜が、完全に明けちゃったわね」

 

 綾乃は窓の外を見つめ、小さく微笑みながら司の頬にそっと手を添えた。

 

「ええ。台風もすっかり去って、いい天気になりそうです」

 

「金利の本質から始まって、中央銀行のオペレーション、貨幣の信用創造、そして自然利子率まで……。一晩で、マクロ経済学の最も根源的な基礎論点を一通り整理できたわね」

 

「そうですね。主流派が描く精緻な均衡モデルの美しさと、構造派が重視する決済実務・内生的貨幣供給・金融循環の現実。どちらか一方を絶対視するのではなく、両者の視点を噛み合わせることで、初めて現実の経済の輪郭が立体的に見えてきました」

 

 司が答えると、綾乃は嬉しそうに目を細め、司の唇にそっと自身の唇を重ねた。

 柔らかな感触と、微かに甘い吐息が触れ合う。

 

「及第点どころか、満点よ、司くん。……でも、基礎的な論争が一巡したからといって、これで探求が終わったわけじゃないわ」

 

「ええ。次は現実の政策論争――量的緩和の真の効果や財政赤字の持続可能性、そしてインフレの真因についての議論ですね」

 

「ふふ、そうよ。来週のゼミ合宿……地方の遠征先でも、じっくり議論の続きをしましょうね」

 

 綾乃は艶やかに微笑み、朝の光を浴びながら司の胸にそっと身体を預けた。

 窓の外には、台風一過の澄み渡る青空が静かに広がり始めていた。

 

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