薄暗いシーザーさんの自室。
背中に感じるいつもと違うシーツの感触と、手首にまとわりつく重い冷たさで、私はようやく意識を浮上させた。
「……ッ、げほっ、」
喉の奥がまだ干からびたように熱い。初めてまともに喰らったガスガスの実の能力。まさか酸素を奪って気絶させてくるとは。
身を起こそうとした瞬間、チャリ、と金属の擦れ合う音が静かな部屋に響いた。
見上げると、両手首がベッドのヘッドボードに黒い手錠でガッチリと固定されている。
「シュロロロ……! やっと目が覚めたか、クソガキ」
白衣を脱ぎ捨て、紫の作業着姿になったシーザーさんが、ベッドの脇でこれ以上ないほど満足げな笑みを浮かべて足を組んでいた。
正論でボコボコにされた男の顔ではない。完全に主導権を握ったと確信している、余裕に満ちた顔。
彼はゆっくりとベッドの端に腰を下ろし、マットレスを沈めながら私を見下ろしてくる。
「どんなに澄ましたツラしてようが、俺の能力一つで簡単にこうして転がされる……それがテメェの現実だ。思い知ったか、〇〇」
手錠の冷たさと、初めて向けられた能力者としての圧倒的な力。
(……本当に、何をしてくるか分からない人)
心臓がうるさいくらいに跳ねる。けれど、その恐怖の裏側で、この後の展開をほんの少しだけ期待してしまっている自分にも気付いていた。もちろん、そんなこと口が裂けても言わないけれど。
私はあえて、シーザーさんを静かに見つめ返した。
「……わざわざ能力まで使って拉致して、手錠ですか。口喧嘩で勝てないからって、ずいぶんと大がかりな仕返しなんですね、シーザーさん」
「シュロロロ……何とでも言え。負け惜しみにしか聞こえねェよ」
いつもなら青筋を立てて怒るはずのシーザーさんが、今日はニヤニヤと笑ったまま、私の頬を大きな手で愛おしそうに撫で上げてくる。完全に優越感に浸っている。
「その減らない口を、どうやって塞いでやろうかって考えてたところだ……〇〇。悪魔の実能力の使い道ってのはな、相手の息の根を止めるだけじゃあねェんだぜ?」
シーザーさんがニヤリと不敵に笑った瞬間、彼の指先から、ほんのりと甘い匂いのする、薄紫色の煙が揺らめき出した。
その煙が私の鼻腔をかすめた瞬間、頭の芯がカッと熱くなり、全身の皮膚が恐ろしいほど敏感に跳ね上がる。
「な、に……これ……っ」
「俺の特製ガスだ。神経を刺激して、感覚を何倍にも跳ね上げる。……ほら、ただ触るだけで、ビクビク跳ねてやがるぜ」
シーザーさんは手袋を外し、私の鎖骨をひとなぞりした。
ただそれだけなのに、脳裏に直接稲妻が落ちたような、激しい快感が身体を駆け抜ける。衣服のボタンを外される微かな摩擦や、シーツが素肌に擦れることすら、すべてが強烈な愛撫になって襲いかかってくる。
「あ、は……ぁっ! や、だ……っ、シーザーさ、」
手錠のせいで身をよじることすらできず、強制的に快感の波に溺れさせられていく。
彼の大きな手のひらが、汗ばんだ私の脇腹から太腿へと滑り降りていくたび、背中が弓なりに跳ねた。
いつもならもっと強引で、私の抵抗を楽しむように手荒なはずなのに。今日のシーザーさんは、恐ろしいほど丁寧だった。
「シュロロロ……足閉じんじゃねェよ」
シーザーさんが低く笑いながら無意識に閉じようとしていた私の両膝に大きな手をかけ、ぐいっと左右に押し開いた。
抵抗しようにも、手錠のせいで踏ん張りが利かない。ほんの少し力を込められただけで私の膝はあっけなく割られ、その隙間に滑り込むようにしてシーザーさんがするりと身体を寄せてきた。
シーザーさんの指先が、私の下着を静かに引っ掛ける。
ニヤニヤと私の顔を見つめたまま、ただ、布地が肌を擦る摩擦をじっくり楽しむように、滑らかな手つきでゆっくりと下へと引き下げていく。
私の太腿から、膝、そして足首へと、いつになく丁寧に下着が取り払われた。
少し離れた位置から、遮るもののなくなった私の脚の間を楽しそうにじっと見つめている彼の金色の瞳に、すべてを観察されているという圧倒的な羞恥。どく、どく、と顔に熱が集まっていくのが分かった。
シーザーさんは私の顔の赤さに気づいたのか、ニヤニヤと意地の悪い笑みを深めて、上から見下ろすように煽ってきた。
「シュロロロ……! なんだァ、そのツラは。テメーも期待してんじゃねェか」
まだそこに触れられてもいないのに、ガスの効果か、彼の視線が肌をなぞるだけで熱を帯びていく。
その私の拒めない様子をたっぷり視覚で堪能して満足した彼が、ようやく右手を伸ばした。
けれどその手が向かったのは、私が身構えていた場所ではなく、衣服の隙間からはだけた私の胸元だった。
「ひ、あ……っ、」
予測が外れた衝撃と、ガスのせいで極限まで敏感になった先端を、彼のてのひらが上から包み込んできた。
手錠のせいで隠すこともできない。私の柔らかい膨らみを、シーザーさんは優しく、けれどどこか楽しむように形を変えて弄んでいく。
「シュロロロ! どこ触られてもビクビク跳ねやがって……!こっちはもうこんなに零してんぞォ?」
一番敏感なところをカリ、とわざと意地悪く弾くたび、頭の芯が真っ白になるような快感が背筋を駆け抜けた。
まだ奥には指一本入れられていないのに、太腿の内側を熱い液体が伝い落ちていくのが自分でも分かってしまう。恥ずかしくて、涙が止まらない。
そんな様子を上から見下ろし、シーザーは男としての絶対的な優位に、これ以上ないほど満足げに鼻を鳴らした。
「ねぇ、……シーザー、さん……っ、そっち、じゃなくて……」
あまりの快感に、自分から恥ずかしい弱音を漏らしそうになる。
「そっちじゃねェ? シュロロロ……。じゃあ、どこを触ってほしいんだ?〇〇」
分かっていて、わざと私の逃げ場をなくすように問いかけてくる。私はただ手錠の鎖を小さく鳴らすことしかできない。
「シュロロロロ、自分でよく見ろよ。俺の力で、どんなふうにされてるか」
触れてもないそこに空気の微かな流れすら愛撫に変わり刺激する。じっと見つめてくる彼の金色の瞳の前で、これ以上は耐えられないとばかりに、私の身体からまたひとしずく、熱い液体が溢れてシーツを汚した。
「シュロロロ……! 本当に、素直な身体だぜェ」
たっぷり視覚で焦らし、私のプライドを完全にへし折ったと確信したシーザーさんが、ついに、指先をそこへと近づける。
「ん、あ……ぁ、っ!!」
彼の指先から伝わる生々しい体温が、ガスの過敏化によってダイレクトに脳髄へと響いた。
シーザーさんは勝ち誇ったように笑いながら、ぬちゅ、と、私の最奥へとゆっくりと指を滑り込ませる。
彼の指のざらついた感触や、ごつごつした節の形が、通常の何倍もの生々しさで内壁を擦り上げていく。
「あーーーーっ、っ!、しーざ、さん……っ!」
内壁を粟立たせるような熱が容赦なく体内へ広がっていく。手錠のせいで逃げ出すこともできず、私はただ、内側を支配していく彼の体温に翻弄されるしかない。
「シュロロロ…… まだ1本だぜ? ほら、もっと力を抜け」
そう言って、彼は容赦なくもう1本、私の最奥へと滑り込ませてきた。
「ひ、あ……っ! もう、無理ぃ……っ」
内側を強引に割り開かれる圧倒的な存在感と、ぬちぬちと容赦なく掻き回される生々しい水音。
さらに彼は、私が一番突かれたくないそこの輪郭を、わざとすり、と掠めるように撫で上げてきた。
「あ、っ!、だめ、そこ……っ、しーざ、さんっ」
思わず腰が跳ねる。絶頂がすぐ目の前まで迫ってきて、触れるたびに視界がチカチカと明滅する。
あと一突き、そこを深く突かれたら、みっともなく果ててしまう。そう身構えて、私は奥をぎゅっと締め付けた。
けれど、シーザーは私のそんな懇願するような鳴き声を聞いて、
「そこがそんなにいいかァ? ──じゃあ、まだお預けだなァ」
「え、……っ、」
一番欲しいはずのその場所をわざと避けて、周辺だけをネチネチと生殺しにするように抉られる。
頭がどうにかなりそうなほど焦らされ、快感の行き場を失ってドロドロに悶えているところで、その2本の指が、ぬぷ、と名残惜しげな水音を立てて一気に引き抜かれた。
「あ、……っ、」
中を埋めていた熱が一気になくなった猛烈な喪失感と、いちばんいいところを突かれずに生殺しにされた内壁が、ズキズキと熱を孕んで疼く。
私は手錠の鎖を小さくガチャガチャと鳴らしながら、無意識に次の刺激を求めて腰を揺らしてしまう。
シーザーさんは私のそのみっともない反応を見逃さず、ニヤニヤと意地の悪い笑みを深めて、自身の熱を入り口にぴったりと押し当てて焦らしてきた。
「シュロロロ…… 指だけでそんなに欲しがってんじゃねェよ、〇〇」
大人の男の質量が、ぬちりと膣壁を押し潰しながら迫ってくる。
彼はゆっくりと、けれど有無を言わせない強さで、自身のすべてを私の最奥へと押し進めてきた。
「んーーーーっ、っ、!!! は……っ!」
あまりの快感に、声にならない悲鳴が口から溢れる。彼が中に入ってきた瞬間の容赦ない質量、ギリギリまで押し広げられる圧迫感、粘膜が擦れ合う熱が、通常の何倍もの強烈な衝撃になって脳髄を殴りつけてくる。
「シュロロロ……! 最高の締め付けだぜ、〇〇……!」
シーザーさんは、私が快感に悶えているの見て、激しく腰を振り始めた。
彼が下から突き上げるたび、私の身体がベッドの上でガタガタと跳ね、手錠がヘッドボードに激しくぶつかって金属音を立てる。
私は快感から逃れようと無意識に身体を上に逃がそうとした。けれどガチリ、と手錠の鎖が限界まで張り詰め、私の手首を引き留める。
逃げ場なんて、最初からどこにもない。
「シュロロロ……! なに逃げようとしてんだ。テメェの居場所はここだろ」
シーザーさんは私の腰を掴み、さらに深く容赦のない角度で突き上げてくる。
開かされた脚の間、何度も内側を激しく蹂躙していくなかで彼の熱の先端が、先ほど指でわざと避けられたいちばんいいところへ、ズン、と真っ直ぐに突き当たった。
「っあーーーーっ、っ!!!しーざ、さん……っ、そこ、っ」
弱点を彼の剥き出しの熱量で抉られる。全身の神経が一気に沸騰するような衝撃に、視界が涙で完全に歪んだ。
(……くやしい、のに、……ッ、)
激しい衣擦れ、水音、手錠がガシャガシャと鳴り響く部屋。
昼間は私の態度ひとつで彼を揺さぶることができたのに。心のどこかで私は、この天才を手のひらで転がせている気になって調子に乗っていた。
けれどこうして、能力と暴力的なまでの男の肉体で真っ向からねじ伏せられたら、私には抗う術なんて何一つない。
全部快感で溶かされて、冷静な助手のフリを保つことすらできず、ただ彼の手の中で狂わされ、何度も何度もみっともなく果てさせられていく。
その私の壊れた姿を見下ろして、シーザーさんはこれ以上ないほど愉悦に満ちた、男としての絶対的な優位に浸りきった顔で激しく腰を動かした。
「テメェは一生、俺から逃げられねェんだよ……っ!」
激しく腰を振るたびに、私の名前を何度も何度も呪詛のように、愛おしそうに呼ぶ声。
本人はただ「生意気なガキを分からせてやった」と独占欲を満たして調子に乗っているだけ。
けれど、熱い塊が最奥に注ぎ込まれ、意識が完全に白濁していく視界の端で、私はその無自覚な熱を、悔しさと共に全身で受け止めるしかなかった。
◆◆◆
ベッドの軋みがようやく収まった頃、手首を拘束していた重みがガシャリと外された。
シーザーさんは、服を整えながら、ベッドの端に偉そうに腰を下ろして私を見下ろしてくる。
完全に主導権を握り、私が快感に耐えかねて声を枯らしていた姿を特等席で見届けた勝者の余裕がその顔に張り付いていた。
「シュロロロ……! なんだァ、そのツラは。さっきのあの偉そうな口はどこ行っちまったんだよ、助手様ァ」
楽しそうに肩を揺らし、私の濡れた髪を長い指先で意地悪く弄んでくる。
「能力がどうの、口喧嘩で勝てないから大がかりな仕返しだの、ぬかしてたよなァ? ……今のテメェはどうだ。俺の力に泣かされて、指一本動かせねェでベッドに転がされてる。── 勝負あったな、〇〇」
やっぱり、私の態度を根に持って、自分が勝ったことを確認したくてたまらないのだ、この男は。
だからこそ、今回は「確実に芯まで折ってやった」という手応えに、脳汁を出し尽くしている。
悔しいけれど、本当に身体が動かない。ガスの残熱のせいで、彼の指が髪に触れるだけでまだ微かに背筋が震えてしまう。
そんな私の様子をじっくり堪能して満足したシーザーさんが、白衣のポケットから、小さなカプセルを取り出した。
「テメェの身体にこれ以上余計な負担がかからねェように、俺が新しく調合した薬だ。ありがたくさっさと飲め」
今回は投げ渡すんじゃない。シーザーさんはニヤニヤと笑いながら、カプセルを私の唇に直接押し当ててきた。
「前みたいに、次の日にすましたツラで流せると思うなよォ? テメェは俺にめちゃくちゃにされて、俺の薬を飲まされる立場なんだ。……シュロロロ! ほら、拒否してみろよ」
唇に触れる薬の感触。私の態度をよほど根に持っていたからこそ、今回はわざわざ「自分の手で直接口に含ませる」という形で、私のプライドを最後の一片までへし折ろうとしてきているのだ。
悔しくてたまらないけれど、これを飲まなければ本当に困るのは私だ。
私が覚悟を決めてカプセルを唇で受け取ると、シーザーさんはふっと満足そうに口元を緩めた。
「待ってろ」
そう短く残してベッドを離れたシーザーさんは、部屋の隅から、水の入ったグラスを持って戻ってきた。
そして、クタクタになってまだ身動きが取れない私の手元へ、そのグラスを無造作に突き出してきた。
私はグラスを受け取り、じっと彼を睨みつけたまま、水を一気に煽る。
ゴクリ、と喉が鳴るのを、シーザーさんはこれ以上ないほど満足げな顔で見届けて、上機嫌に鼻を鳴らした。