女達を確保してから一週間が経った。
毎回二キロ以上も歩かせるのを可哀想に思ったシゲンは家の位置をウィーク達の暮らす家の向かいに移した。
同時に顔合わせも行うと、ウィークは立派なガキ大将に。性的な事に関する感情の発露はまだ先なのか、女に囲まれても特に気にした様子は無い。唯一ユニにはぎこちなさを見せるが、そちらは当てのない道行だ。彼の人生に幸多からん事を。
だが子ども達にはとても懐かれており、新しくやってきた三人の女の子達を連れて草原の案内や畑自慢をしていた。孤児院で兄貴分をやっていた影響だろうか。
ピークとルルは七人の女達と交流を始めて礼儀正しいと可愛がられる。
陵辱されていた女達に取って、乱暴な男の居ないこの場所は理想的だった。シゲンもまともそうで、ウィークはまだまだ子ども。
帰る場所はあれど、夫も家族も仲間も失った身。心安らぐこの世界に救いを見出してしまう程度には心はまだ疲弊している。
そんな荒んだ精神にこのダンジョンの有り様はよく染み入った。
穏やかな空気が流れるその横では、遂にユニとモノが邂逅を果たしていた。
モノはユニが内包する途轍もない力を鋭敏に感じ取り、己の圧倒的敗北を悟ると同時、魔力注入の件を鑑みて尊敬の念を抱く。
「アレをして頂いたのですね。……如何でしたか、モノ」
「幸福と興奮でおかしくなりそうでしたわ。ユニ先輩にはあの時から一目お会いしたかったのです。会えて光栄ですわ」
二人は腕相撲をする時のような力強い握手を交わし、主の魔力についての談義を始めた。
注がれる瞬間の異物感。身体の内側を埋め尽くされる感覚。徐々に満たされていく器の満足感。そして敬愛すると主との肉体的接触。
金と銀のホムンクルス。傍目には絵になるホムンクルス達は、こっそりと息を荒げる。二人は知能と知性の進化によってすっかり煩悩に塗れていた。
そんな交流会をモニター越しに眺めていたシゲンとマテリアは、この一週間で行った現実への侵攻の成果を纏めていた。
「宿場町は二十キロ間隔で三つ。途中小中規模の村や町はありましたが、こちらは一旦スルー。そうしてロスの街から実に八十キロ先に次なる都市が見えました。生成した地図によると、ロスの街を有する領地を超えた、隣の領地にある街ヴィロード。……はふぅ。ほんと遠かったです」
シゲンもまた同様にため息をこぼす。
出費は大きく嵩んだ。二十キロ支配領域を伸ばす度に二十万魔力の消費。宿場町に根を張ったら探査と並行して周辺に領域を伸ばしてさらに探査で追加二十万。
宿場町一つにつき四十万の魔力出費で懐は大ダメージ。現在の保有魔力量はおよそ四百五十万前後と言った所。
まあ異世界の性質を思えば都市のこの距離感も致し方無い。
自然発生する魔物と言う脅威。これに対抗する為には大勢がひと所に集まるのが一番効率が良い。
小規模な村や街を至る所に作っても魔物の餌になるだけ。しっかりと防壁を築いて、衛兵を立てて、産業も起こして農耕もしないと生きていけないのだから。
一応、人間達には結界と言う、魔物や害ある物を退ける技術がある様だが、それも全ての街にある訳では無い。
それと途中でスルーした小規模な町や村。ああ言った場所ではそもそもゴミが発生しにくいようだった。発生してもしっかりと対処出来る量であったり、そも無駄が無かったり。ダンジョンが介入するメリットが先ずもって少なかったのでスルーした。
人間のインフラ基盤に介入出来たら本当の意味で安泰だろうと画策していたシゲンだったが、そう上手く行く事ばかりでは無かった。
「マスターにも想定外や失敗があって、マテリアはほんのり安心しましたよ?」
それで良いのかと苦笑するシゲンだったが、そう言って貰えて気分は楽になった。
「さて。早速ヴィロードに根を張りますか? それとも道中に目を向けますか? マテリア的には宿場町で稼ぐのも一興かと」
シゲンもまた同じ考えだったが、先ずはマテリアに提案の意図を問う。
「ではご説明しましょー! 人間の宿場町はですね、謂わば交差点です。街の中の交差点では無く、領地の中の交差点。だから人が集まり、休む場所ができ、商売人が店を構えているのです。交通の要所である此処は人の出入りが激しく、滞在する人間の数と関係無くゴミがわんさか集まります! つまり宿場町こそ、次なる私達の主食ですよ、マスター!」
両手足をグッと前に伸ばしてはしゃぐマテリア。
そんな彼女の頭を撫で回し、概ね同意見だと伝える。
「本当ですかぁ! むへへぇ。マスターと一緒だと嬉しいですねっ」
今日も可愛いマテリアに癒されながら、シゲンは一日ごとに発生するゴミの量をノートにまとめ、各街の下に大きなゴミ穴を一つずつ作る案を説明する。
「え!? ダンジョンの魔力吸収機能を止めるのですか!?」
エルフの女性……ニルナル。彼女が言った事を先日モノが教えてくれた。
『漂う魔力が無いから此処はダンジョンだと思った』と。
これの困った所は、魔力溜まりが解消されて魔物が発生しなくなると言う事。魔物はこのダンジョンの魔力資源だ。ゴミを溜め込み、魔力溜まりを作り上げ、魔物を増殖させ、蠱毒をつくってそれを平らげる。
その為に、宿場町ごとに一つのゴミ穴を作り、魔力吸収を止めて、ダンジョン内にゴミと魔力溜まりを蓄積させようと言うのだ。
シゲンは両手足をグッと前に伸ばして説明し終える。
「真似しないで下さいよぉ! ……もう、理屈は分かりましたし、必要性も理解しました。それならロスの街のゴミ穴も同様に吸収を止めましょうか? 魔物が死亡時のみ機能が作動するように出来ますよ」
マテリアの提案に乗り、全てのゴミ穴で魔力吸収を中止する。
おそらくこれで第六進化体の発生も早まると思われるので、改めて検証や調整が必要になってくるだろう。
「忙しくなりますが、やり甲斐もありますね! マスター!」
マテリアと二人、充実した笑みを浮かべてシゲンは精力的に動き出した。
それからさらに一週間後。
第六進化した個体を溶かし殺し、時にはダンジョン機能で溶解吸収させ、ダンジョンで生成しようと思ったらどれだけ費用が掛かるのかを見て、それを見なかった事にしていると、宿場町で人間達のきな臭い動きが見受けられた。
「探査結果によると、奴隷商人と言う者たちのようですね。正規の者なら身売りした者や借金で堕ちた者、犯罪者などが奴隷とされる様です。中には非合法な奴隷狩りと呼ばれる者も居て、村や町で罪なき人を攫っては首輪を嵌めて売っているとか」
マテリアからの情報を受け、奴隷商人が何処から流れてどこへ行くのかを暫く調べる事にした。
すると、どうもヴィロードからロスの方へと移動している様子。
マテリアに頼んで、配下の魔物へ指示を与える力を使ってもらいユニを玉座の間へと呼び出す。
「ホムンクルスのユニ、ただいま参上致しました」
「近くに居りましたので同行させて頂きました、同じくモノですわ」
何故か二人ともが急いでやってきてくれたが、シゲンはウィークとピークを呼んで欲しかっただけなので二人に軽く謝罪する。
「そんな!? 謝らないで下さい! 主様方のお役に立てる事、ユニは心より嬉しく思います」
「私など、ただついてきただけに過ぎませんわ。シゲン様はお優しすぎます。……そんな所も素敵かと存じますが……うふふ」
「マスター……照れないでください?」
「むくれるマテリア様もお可愛いですわ」
「何故でしょう、モノに舐められている気がします」
「その様な事は……おほほほほ」
ともあれ、折角呼び出したので二人に魔力を注いだ後にウィーク達を呼んできてもらう事にした。
二人は魔力を注入されて艶っぽい声を上げながら、これみよがしにシゲンにしなだれかかる。魔力の器は身体の内側にあるのでもっと深く触って欲しいと、二人の腕がシゲンの手を谷間の奥へと誘っていく。
乳に腕を挟み込まれ、胸筋に触れながら魔力を流すこと十数秒。モノの器が埋まるが、ユニはまだまだ空きが多い。
シゲン同様に二十五万魔力を用いて容量を六万程まで拡張した結果なのである意味、自業自得だ。
ユニにはもっと勢いよく魔力を注ぐべく、強く抱きしめて触れる場所全てから魔力を注ぐシゲン。
ユニの顔が紅潮し、自らもシゲンの背中へ腕を回すと、口は首筋へと吸い付く。
「シゲン……さまぁっ。んっ、ちゅ……。しげんひゃまぁ……! いっぱいにしてくらはいっ、ちゅぴ、ちゅぱっ……もっとはげしくぅ、ちゅっ……ちゅぅっ」
シゲンの魔力がほぼ空になった頃、ようやくユニの魔力容量が埋まった。
やけに消費が激しいのは、子どもたちとの戦闘訓練で魔力を消費する機会が多いからのようだ。
魔力注入が終わってもなお吸い付いて離れないユニにシゲンが苦笑をこぼすが、悪い気はしないので無理には離そうとしない。
側で羨ましそうに眺めていたモノが力づくで離そうとするが微動だにせず、マテリアが命令する事でようやく惜しみながらも離れたユニ。
シゲンの首筋や鎖骨には彼女によりつけられたキスマークが五箇所も残っていた。
「ユニ! 今度お仕置きしますからね! 私も怒るんですから! マスターは私のマスターなんです!」
「申し訳ございません……魔力注入で昂ってしまいました」
「ユニ先輩……強かと言うより普通に強すぎますわよ!? それに……私、キスなんてしたこともございませんのに…………うぅ」
「モノも狙わなーい! 私のマスターなんですぅぅ!」
その後、二人は物欲しげにしながらも玉座の間から出て行った。
シゲンが玉座に腰掛けると、怒ったマテリアが向かい合う形で膝に乗っかる。
「ウィーク達が来るまでに、マテリアがマスターにいっぱい痕をつけます。覚悟してくださいっ! ……んちゅう!」
身体性能を進化させたシゲンの肌に、マテリアがどれだけキスをして吸い付こうともキスマークがつくことは無かった。