ユニとモノにウィークとピークを呼んできて貰うと、何故か二人とルル、更には新顔の女の子三人までやってきてしまった。
盗賊に攫われて母親を犯されていた子達だ、奴隷について聞く事を気にするのも今更ズレているかと判断したシゲンは、六人の子ども達に知る限りの奴隷の話を聞いた。
「ルルはあんまり見たことないよぉ?」
「ルル? マスターの膝の上は私の場所なのですが??」
「はんぶんこー!」
マテリアはルルのことを割と甘やかす。なんだかんだで今も膝を分け合ってくれる程度には、ルルを可愛がっているのだ。それでも不満ですと言うアピールはするあたりが特にシゲンはマテリアが好きだ。
「私もロスではあんまり見た覚え無いかも……。シゲン兄は知らないかもだけど、ロスの街の偉い人は善良で有名だったから。それでもゴミは溜まっていったし、貧困な人は貧しいままだったけどね」
ふむふむと証言をノートに纏めながら、ロスの街の支配層って綺麗だったのかと疑問符を頭に浮かべるシゲン。
「俺は何回か見たことあるな。この国じゃ奴隷は認められてっし。店の商品運んだり、掃除したり、裏方の作業を主にやらされんだけどな? なんだかんだ活気はある街だから、奴隷達も笑顔で働いてる奴が多かったと思う」
奴隷の扱いは良好。精を出して働ける環境ならそう悪い立場でも無いのかもしれない。
奴隷を連れているから悪、奴隷商人は悪、と言うのは先入観が邪魔した結果の判断だったかと反省し、シゲンは思考を切り替えた。
そも善でも悪でもダンジョンにとっては関係の無い事ではあるのだが。
最後に三人の少女達に聞くと、隣に住んでたお姉ちゃんが奴隷になっただとか、友達が奴隷じゃないけど下働きに家族総出で出て行ったとか、お貴族様に気に入られて帰って来なかったと言う話が出てくる。
シビアな世界だ。奴隷よりも余程しんどい仕事がこの世にはあるのだろうなとシゲンは察した。
現在のマテリアとシゲンにとっては、悪行を為している人間の方が色んな意味で殺しやすい。消えても問題の無い人間というのは得てしてそう言うものだ。
シゲンはメモ書きを終えると、お礼と称してジュースを提供する。
うままうままとマテリア節を見せながらジュースを飲み干した子達を解放し、暫くはヴィロードからロスへと向かう奴隷商人を追跡しながら定期探査で調査する事を決めた。
「おにーちゃん。ルル、お外出て見てこよーか? どれーしょーにんさん、調べるよ?」
「何を言っているのですかルル。貴方にそんなことをさせられません。私達はダンジョンとして、殺しやすい人間を探しているんです。貴方達は関わらなくて結構!」
一人残ったルルが膝の上で協力を申し出てくれるが、善悪を認識出来ているかも怪しい彼女に、ましてやこんな小さな子に危ない事など任せられない。
シゲンはルルの額にデコピンを喰らわせ、自分を大切にしなさいと怒る。
「ゔぅ……ごべんなざい……」
手伝いたいと言ってくれるのは嬉しいしありがたい。でも、今はまだ学び成長するべき時。それでも力になりたいというなら、もっと強くなって賢くなってから。ダンジョンの事もちゃんと教えてからだ。
シゲンはルルの背中を摩って、その為にもお勉強の時間を今から二倍にするかと問う。
ルルは全力で首を横に振った。それで良いのだとシゲンは頷いた。
今は目一杯遊んでおいでと送り出し、マテリアを両膝に乗せ直す。
「……ヒトは不思議です。環境や状況によってはダンジョンにすら加担する。生存本能と言う意味では優秀ですが、信用が置けないと言う意味では頭抜けて恐ろしい。彼らが大繁殖した理由がよくわかりますよ」
しみじみとした人外存在からの人間評価。概ねその通りで返す言葉も無い。前の世界でも裏切りやスパイ、寝返りなんて山の様にあったのだから。
背もたれに深く身を預けたシゲンは探査情報を改めて探りながら、もしもの時には容赦無く切り捨てる覚悟と、何があっても守り抜く覚悟を天秤にかけ……そして結論を出せずにマテリアに甘えた。
「少しだけ。分かりますよ、マスターの気持ち。マテリアはコアなのに、不思議です。今はもう少し様子を見ましょう。生ある者はその未来を自らの力で掴み取るべきなのです。彼らはまだその為の力と知識を蓄えている最中。でしょう?」
良い女すぎて惚れ直したシゲンからのアピールに流されてイチャイチャを始めた二人。
玉座の座面がドロドロになるまで二人の営みは続いた。
それから暫くは穏やかな日々が続く。
新たにダンジョン内に住む事になった十人の女達を加えて畑作り。
各々に異世界野菜の種を好きに選ばせ、耕した土地に撒く。
共に汗水を垂らし、暑くなれば川で水遊び。
ウィークとピークが子どもの面倒を見てくれるお陰で母親は心底幸せそうにその光景を見つめる。
川に足先を浸すユニの膝にはルルが乗り、モノは自然と共に生きると言われるエルフであるエルナルに畑について尋ねるが、異世界畑に揃って首を傾げる。
犬獣人三人娘はシゲンが投げたフリスビーを取っては持ってくる。
マテリアは専用畑にジョウロで愛情を込めながらポーション水を撒いていた。
そうして仲を深めたからだろうか。勉学に子どもだけでなく大人達も参加し始め、青空教室となった。四則演算を習い、文字の読み書きを習い、ユニによる戦術理論と独自兵法を習う。戦闘関連技能にぶち込まれた魔力が多過ぎた影響なのだろう。シゲン視点、非常に納得の行く解説がなされていた。
戦闘訓練に関しては全員が意欲的だった。
ウィークとピークとルルは強くなる事や出来る事が増える事を楽しみ。
エルナルや犬獣人達は自分の身を守り抜ける様にと。
母親と子ども達は、互いを守れるように。
各々が戦う理由を見出し、ユニ教官の下、厳しい訓練に必死で食らいついていた。
折角なので、モノにもユニと同じだけの百万魔力を使った強化を施す。
身体性能に二十五万、魔力容量に二十五万、戦闘能力に五十万の魔力。これによってモノを戦いのプロへと押し上げたシゲン。
主からの膨大な
豊満な乳房を押し当てて彼の首筋や胸元に大量のキスマークを残すという方法で。
「うっふふ……これが私のチュー誠ですわ」
「寒いですよ、モノ」
「シゲン様、貴方様からの確かな愛……受け取りました。身命を賭してお仕え致します」
「無視ですか!?」
シゲンはいつもと変わらぬ様子でモノの頭を撫でる。
(あっ好き……この撫で撫ですきぃ! 今まではわからなかったですが、今なら分かります! これ、絶妙に各人の頭に合わせて撫で方が違いますのよ! 私専用撫で撫でハマっちゃうぅ!)
モノの内心など露知らず、シゲンはモノを可愛がると、ユニと二人で模擬戦を行う様に指示を出す。
ダンジョン機能で魔力による強制進化を施して来たが、二人には実戦経験が無い。それを模擬戦と言う形で補う様にと言う指示だった。
「承知致しました。その際、大きく魔力を消耗すると思われます。シゲン様……魔力の注入、楽しみにしておりますわね」
モノはウキウキで玉座の間を出て行った。
シゲンは扉が閉まるまで見送ると、玉座に腰掛ける。
そして即座に向かい合う様に乗ってくるマテリアを受け止めた。
「フーッ……フーッ……マテリアのマスターなんです。ユニにもモノにも、譲りませんっ!」
息を荒げたマテリアからの熱烈アピールに屈したシゲンだったが、やはりキスマークが増える事はなかった。
マテリアはしくしくと泣いた。